説明

移動通信システムにおける基地局及びスケジューリング方法

【課題】個々のユーザ装置の通信状況を考慮しつつ音声容量を向上させること。
【解決手段】基地局は、ユーザ装置の無線チャネル状態を示す品質情報を取得する品質情報取得部と、複数の品質情報に対応する異なる複数の重み付け関数の中から、個々のユーザ装置の品質情報に対応する重み付け関数をそれぞれ選択する関数選択部と、重み付け関数にしたがって変化するスケジューリング係数を、1人以上のユーザ装置各々について算出し、少なくともスケジューリング係数の大きさにしたがってユーザ装置に無線リソースを割り当てるスケジューリング部と、無線リソースが割り当てられたことをユーザ装置に通知する通知部とを有し、重み付け関数はユーザ装置のデータ滞留時間の関数であり、相対的に良い値の品質情報に対応する重み付け関数の値が所定値に達するまでのデータ滞留時間は、相対的に悪い値の品質情報に対応する重み付け関数の値がその所定値に達するまでのデータ滞留時間よりも長い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動通信システムにおける基地局及びスケジューリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動通信システムにおける周波数利用効率を向上させる技術の1つとして、周波数スケジューリングがある。例えば、周波数スケジューリングは、ロングタームエボリューション(Long Term Evolution:LTE)方式等の移動通信システムにおいて採用されている。LTE方式は、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)の拡張技術であるHSPA(High Speed Packet Access)から更に発展した標準規格である。LTE方式の仕様については、W-CDMAの標準化団体3GPP(3rd Generation Partnership Project)により作成されている。LTE方式の移動通信システムでは、下りリンクにおいて100Mbps以上、上りリンクにおいて50Mbps以上の高速通信が実現され、遅延の改善や周波数の利用効率の向上等が図られている。上記の周波数スケジューリングは、ダイナミックスケジューリング方式(Dynamic Scheduling)とセミパーシステントスケジューリング方式(Semi−Persistent Scheduling:SPS)に大別される。
【0003】
ダイナミックスケジューリング方式の場合、データ種別に応じた優先度及び無線チャネル状態の良否に応じて、無線リソースがユーザに動的に割り当てられる。例えば、どのユーザにどの無線リソースを割り当てるかが、1msのサブフレーム(TTI)毎に決定される。ユーザに対する無線リソースの割り当て方が頻繁に変わるので、無線リソースを柔軟に活用できる。
【0004】
一方、ユーザがやり取りするデータ種別は様々であり、音声パケット(VoIP)等のようにデータ量は少ないが遅延が短く制限されるものや、データ通信等のようにデータ量は多いが遅延はそれほど短くは制限されないものがある。音声パケットの場合、データ量の少ないデータが周期的に発生する。このような音声パケットについて、上記のダイナミックスケジューリング方式によりスケジューリングを行うと、周期的に発生する少ないデータ量の音声パケット各々について、無線リソースを一々指定しなければならなくなる。この場合、通信するデータ全体に対して、無線リソースの通知に要するシグナリングのオーバーヘッド(PDCCH)の占める割合が大きくなり、無線リソースの利用効率が悪化してしまうことが懸念される。
【0005】
セミパーシステントスケジューリング方式(SPS)は、このような懸念に対応できる方式である。セミパーシステントスケジューリング方式の場合、1回の無線リソースの割り当てが、1サブフレームだけでなく、以後の多数のサブフレームにも適用されるようにする。すなわち、ある一定の無線リソースを周期的に割り当てることで、無線リソースのシグナリングに要するオーバーヘッドを削減する。したがって、移動通信システムにおける全てのユーザ装置が、セミパーシステントスケジューリング方式(SPS)に対応していれば、音声パケットについてSPSを使用することで、上記の懸念を解消できる。
【0006】
しかしながら、移動通信システムにおける全てのユーザ装置が、セミパーシステントスケジューリング方式(SPS)に対応していない状況も考えられる。この場合、無線リソースの割り当てはダイナミックスケジューリング方式によることとなるが、そうすると、周期的に発生する少ないデータ量の音声パケット各々について無線リソースを一々指定しなければならず、オーバーヘッドが大きくなってしまうという上記の問題が懸念される。
【0007】
さらに、オーバーヘッドが大きくなることに起因して、音声サービスを利用できるユーザ数が少なく制限されてしまうという問題も懸念される。1msのサブフレーム(TTI)毎にスケジューリングが行われ、1サブフレームにおいて無線リソースを指定できるユーザ数がNであったとする。音声パケットは、周期的に発生するので、その周期をTとすると、同時に音声サービスを利用できるユーザ数(すなわち、音声容量)は、N×Tとなる。例えば、N=3人及びT=20msの場合、音声容量は、3×20=60人となる。この音声容量を増やす技術の1つに、ディレイパッキング方式(delay packing)がある。ディレイパッキング方式の場合、人間が耳にする音声パケットは、発生周期20msより長い周期で送信しても品質に影響はない、という事実に基づいて、発生周期より長い周期で音声パケットを送信する。例えば、あるユーザの音声パケットがT=20ms毎に音声パケットが発生したとしても、そのユーザには3T=60ms毎にしか音声パケットを送信しないようにする。このようにすることで、音声容量を3倍に増やすことができる。ディレイパッキングについては、非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Oscar Fresan, et al., "Dynamic Packet Bundling for VoIP Transmission Over Rel'7 HSUPA with 10ms TTI Length,"IEEE ISWCS 2007, pp.5008-512
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ディレイパッキング方式は、音声パケットを送信する周期を、音声パケットの発生周期よりも長くすることで、音声容量を向上させている。この場合、音声容量が向上する一方、一度に送信する音声パケットの量も増える。例えば、20ms毎に発生する音声パケットを20ms毎に送信する場合、一度に送信する音声パケットは1つであるが、60ms毎に送信する場合、一度に送信する音声パケットは3つである。すなわち、音声パケットを送信する周期を長くするほど、一度に送信する音声パケット(データ量)は多くなる。一度に送受信するデータ量が多いことは、無線チャネル状態が良いユーザにとっては有利であるが、無線チャネル状態が良くないユーザにとっては不利である。このため、例えば、無線チャネル状態が悪いユーザに対して一度に多くの音声パケットを送信した結果、多くの再送が必要となり、却ってスループットが下がってしまうことが懸念される。このように、従来のディレイパッキング方式は、ユーザ各々の通信状況を考慮していない。
【0010】
本発明の課題は、個々のユーザの通信状況を考慮しつつ音声容量を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一実施例による基地局は、
ユーザ装置の無線チャネル状態を示す品質情報を取得する品質情報取得部と、
複数の品質情報に対応する異なる複数の重み付け関数の中から、個々のユーザ装置の品質情報に対応する重み付け関数をそれぞれ選択する関数選択部と、
重み付け関数にしたがって変化するスケジューリング係数を、1人以上のユーザ装置各々について算出し、少なくともスケジューリング係数の大きさにしたがってユーザ装置に無線リソースを割り当てるスケジューリング部と、
無線リソースが割り当てられたことをユーザ装置に通知する通知部と
を有し、前記重み付け関数はユーザ装置のデータ滞留時間の関数であり、相対的に良い値の品質情報に対応する重み付け関数の値が所定値に達するまでのデータ滞留時間は、相対的に悪い値の品質情報に対応する重み付け関数の値が該所定値に達するまでのデータ滞留時間よりも長い、移動通信システムにおける基地局である。
【発明の効果】
【0012】
一実施例によれば、個々のユーザの通信状況を考慮しつつ音声容量を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例において使用される基地局の機能ブロック図。
【図2】品質情報及び重み付け関数の対応関係のテーブルを示す図。
【図3】重み付け関数の一例を示す図。
【図4】実施例において使用されるスケジューリング方法のフローチャート。
【図5】重み付け関数の他の例を示す図。
【図6】重み付け関数の他の例を示す図。
【図7】重み付け関数の他の例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に説明する実施例は、ユーザ毎に算出するスケジューリング係数の算出法を工夫することで、例えば下り音声パケットの送信タイミングを遅延させる。さらに、ユーザの品質情報に応じた重み付け関数を選択し、その重み付け関数に応じてスケジューリング係数が変化するようにすることで、ユーザの通信状況に応じて、送信タイミングの遅延量を制御することができる。これにより、セル中央のように品質情報が良い値のユーザの下りデータは、長い時間だけ遅延させられ、その分だけ音声容量を増やすことができる。逆に、セル端のように品質情報が良くないユーザの下りデータは、短い時間だけ遅延させ、そのようなユーザに一度に多くのデータが送信されてしまうことを効果的に防ぐ。
【0015】
以下の観点から実施例を説明する。
【0016】
1.基地局
2.動作例
3.変形例
【実施例1】
【0017】
<1.基地局>
図1は、実施例において使用される基地局の機能ブロック図を示す。図1には、移動通信システムの基地局に備わる様々な機能を実現する処理部の内、実施例に特に関連する処理部が示されている。図示の基地局は、説明の便宜上、例えばロングタームエボリューション(LTE)方式の移動通信システムにおける基地局であるとするが、他の移動通信システムの基地局でもよい。図1には、UL信号受信部101、品質情報取得部103、記憶部105、関数選択部107、スケジューリング部109、制御チャネル生成部111、データチャネル生成部113及びDL信号送信部115が示されている。
【0018】
UL信号受信部101は、ユーザ装置からの上り信号(UL信号)を受信し、ベースバンド信号に変換する。したがって、UL信号受信部101は、受信した無線信号をフィルタリングする機能、アナログ信号をディジタル信号に変換する機能、受信した信号をデータ復調する機能、受信した信号をチャネル復号化する機能等を有する。上り信号は、一般的には制御チャネル、パイロットチャネル及びデータチャネル等を含む。
【0019】
品質情報取得部103は、上り信号(UL信号)から、無線チャネル状態の良否を示す品質情報を取得する。品質情報は制御チャネルに含まれている。品質情報は、下りリンクの無線チャネル状態を示す情報でもよいし、上りリンクの無線チャネル状態を示す情報でもよいし、それら双方を含む情報でもよい。下りリンクの無線チャネル状態は、例えば、ユーザ装置が受信したパイロット信号の受信レベルから導出されたチャネル状態インジケータ(CQI)により表現されてもよい。上りリンクの無線チャネル状態は、基地局が受信したパイロット信号の受信レベルから導出されてもよい。基地局及びユーザ装置が受信したパイロット信号の受信レベルは、当業者に既知の適切な如何なる量で表現されてもよい。一例として、受信レベルは、瞬時値であるか平均値であるかを問わず、広く、無線チャネル状態の良否を表す量として定義され、例えば、受信電力、電界強度RSSI、希望波受信電力RSCP、パスロス、SNR、SIR、Ec/N等により表現されてもよい。
【0020】
記憶部105は、複数の品質情報と複数の重み付け関数との対応関係を記憶する。
【0021】
図2は、そのような対応関係をテーブル形式で表現したものを示す。一例として、品質情報が、CQIにより表現されているが、上述したように品質情報は別の量により表現されてもよい。説明の便宜上、CQIは、CQI1、CQI2、CQI3、...の順に悪くなっているものとする。これらの品質情報各々に重み付け関数が対応付けられている。図示の例の場合、CQI1にF1(t)が対応付けられ、CQI2にF2(t)が対応付けられ、CQI3にF3(t)が対応付けられ、以下同様にCQIiにFi(t)が対応付けられている。
【0022】
図3は、重み付け関数F1(t)、F2(t)、F3(t)の一例を示す。概して、重み付け関数は、データ滞留時間の観点からユーザ間の公平性を図るために、スケジューリング係数に重み付けを行うためのものである。重み付け関数は、ユーザのデータ滞留時間に関する単調増加関数である。本願において、xの関数F(x)が単調増加関数であるならば、任意のx1<x2に対して、F(x1)≦F(x2)が成立するものとする。図示の例の場合、重み付け関数は、階段関数により表現されている。データの滞留時間とは、送信を待機している下り又は上りのデータが、バッファに留まっている期間を意味する。「3.変形例」において説明するように、重み付け関数の関数形は適切な如何なるものでもよいが、単調増加関数であることを要する。図示されているように、品質情報CQIiに対応する重み付け関数Fi(t)は、データ滞留時間がtiに至るまでは低い値(例えば、0)をとり、データ滞留時間がtiに至った後は高い値(例えば、1)をとる。ただし、i=1、2、3である。このように、良い値の品質情報に対応する重み付け関数の値が所定値(例えば、1)に達するまでのデータ滞留時間tiは、相対的に悪い値の品質情報に対応する重み付け関数の値がその所定値(例えば、1)に達するまでのデータ滞留時間よりも長い(t1>t2>t3)。便宜上、関数の値が変化するデータ滞留時間tiを「臨界データ滞留時間」と呼ぶことにする。
【0023】
図示の簡明化のため、3つの重み付け関数しか示していないが、より多い数の重み付け関数も、品質情報CQIの良否に応じて同様に考えることができる。一般に、品質情報が良い値をとるほど臨界データ滞留時間は長い値をとる。あるいは、品質情報が悪い値をとるほど臨界データ滞留時間は短い値をとる。説明の便宜上、1つの品質情報CQIiについて、1つの重み付け関数Fi(t)が対応しているが、このような1対1の対応関係は必須ではない。1つ以上の任意の数の品質情報CQIiについて、1つ以上の任意の数の重み付け関数が対応付けられてもよい。さらに、1つの重み付け関数において臨界データ滞留時間が複数個存在してもよい。
【0024】
図1の関数選択部107は、記憶部105に記憶されている品質情報と重み付け関数の対応関係を参照することで、個々のユーザの品質情報に対応する重み付け関数をそれぞれ選択する。例えば、あるユーザの品質情報がCQI2であった場合、そのユーザに対応する重み付け関数はF2(t)である(図2に示されているような対応関係を想定している)。
【0025】
なお、品質情報はユーザ装置から反復的に得られるが、ユーザ装置から異なる品質情報が得られる度に重み付け関数を変更することは、動作の安定性等の観点からは好ましくない。そこで、ユーザ装置から得られたいくつかの品質情報を平均化し、その平均的な品質情報に対応する重み付け関数が選択されてもよい。平均化は、算術平均でもよいし、忘却係数を用いた平均等でもよい。あるいは、複数回得られた品質情報が同じ値を示した場合に限って、重み付け関数をその品質情報に対応するものに更新してもよい。
【0026】
スケジューリング部109は、重み付け関数にしたがって変化するスケジューリング係数を、1人以上のユーザ各々について算出し、スケジューリング係数の値が相対的に大きい(または、硬判定的に優先度が高いと判定された)ユーザを選択し、そのユーザに優先的に無線リソースを割り当てる。スケジューリング係数は、適切な如何なる方法で計算されてもよい。一例として、MaxC/I法やプロポーショナルフェアネス法(Proportional Fairness)により、スケジューリング係数が計算されてもよい。一例として、スケジューリング係数は以下の因子Cに比例するものである。
【0027】
【数1】

ここで、Aは、対象のユーザが通信するデータの種別に対応する優先度係数を表す。優先度係数はデータの種別毎に予め決定されている。例えば、音声パケットやリアルタイムデータについての優先度は、データ通信や電子メール等の優先度よりも高く設定されている。また、緊急用の通信とそうでない通信の優先度が異なっていてもよい。Rnは、対象のユーザが送信可能な瞬時伝送レートを表す。Raveは、対象のユーザの平均的な伝送レートを表す。Rtargetは、対象のユーザに対する目標伝送レートを表す。F(t)は、上記の重み付け関数を表す。tは、対象のユーザのデータ滞留時間を表す。重み付け関数F(t)が、「1+F(t)」の形式で乗算されているのは、「1+F(t)」が1以上になることを保証するためである。一例として、重み付け関数は、0以上1以下の値をとる。上記のスケジューリング係数の形式は単なる一例にすぎず、適切な如何なる数式により算出されてもよいが、スケジューリング係数は重み付け関数F(t)に応じて変化することを要する。
【0028】
制御チャネル生成部111は、無線リソースがユーザにどのように割り当てられているかを示す制御チャネルを生成する。LTE方式の移動通信システムの場合、この制御チャネルは、物理下りリンク制御チャネル(PDCCH)に対応する。制御チャネルは、無線リソースが割り当てられているユーザの識別子、下りリンク及び/又は上りリンクにおいて割り当てられたリソースブロック、データフォーマット(データ変調方式及びチャネル符号化率)等の情報を含む。
【0029】
データチャネル生成部113は、下りリンクにおいてユーザのデータを送信するデータチャネルを生成する。ユーザのデータは、一般的には、音声パケット(VoIP)、リアルタイムデータ、データ通信用のデータ等である。LTE方式の移動通信システムの場合、このデータチャネルは、物理下りリンク共有チャネル(PDSCH)に対応する。
【0030】
DL信号送信部115は、ユーザ装置に対する下り信号(DL信号)を送信する。したがって、DL信号送信部119は、送信するデータをチャネル符号化する機能、送信するデータをデータ変調する機能、ディジタル信号をアナログ信号に変換する機能 送信する信号をフィルタリングする機能、送信する信号を増幅する機能等を有する。
【0031】
<2.動作例>
図4は、実施例において使用されるスケジューリング方法のフローチャートを示す。このスケジューリング方法は、図1に示されているような基地局により使用可能である。フローの開始前に、基地局は、セルに在圏しているユーザから、無線チャネル状態の品質情報を取得している。フローはステップS401から始まり、ステップS403に進む。
【0032】
ステップS403において、ユーザインデックスのパラメータnを初期値である1に設定する。パラメータnは、1以上N以下の値をとる。Nは、移動通信システムにおいて既にベアラを確立しているユーザの総数を表す。実際に送受信するデータを有するユーザの数は、N以下である。
【0033】
ステップS405において、基地局は、パラメータnに対応するユーザに下りリンクで送信するデータが有るか否かを判定する。説明の簡明化のため、基地局が下りリンクのスケジューリングを行う場合を想定しているが、このことは本実施例に必須ではない。上りリンクに対するスケジューリングを同様に行うことが可能である。その場合、ステップS405において、ユーザがアップリンクにおいて送信するデータを有するか否かが判定される。パラメータnに対応するユーザに送信するデータが有った場合、フローはステップS407に進む。
【0034】
ステップS407において、基地局は、パラメータnに対応するユーザの品質情報(下りリンクの場合は、CQI)に対応する重み付け関数F(t)を選択する。
【0035】
ステップS409において、基地局は、パラメータnに対応するユーザのスケジューリング係数を計算する。スケジューリング係数は、適切な如何なる方法で計算されてもよいが、少なくとも重み付け関数にしたがって変化することを要する。一例として、MaxC/I法やプロポーショナルフェアネス法(Proportional Fairness)により、スケジューリング係数が計算されてもよい。
【0036】
ステップS411において、パラメータnの値がインクリメントされる。ステップS405において、ユーザに送信するデータが無かった場合も、フローはステップS411に至り、パラメータnの値がインクリメントされる。したがって、通信すべきデータが無いユーザについては、ステップS409におけるスケジューリング係数の計算は行われず、それらのユーザは無線リソースの割り当て候補から除外される。
【0037】
ステップS413において、ユーザインデックスのパラメータnの値が、既にベアラを確立しているユーザの総数N以下であるか否かが判定される。パラメータnの値が、既にベアラを確立しているユーザの総数N以下であった場合、フローはステップS405に戻り、説明済みの処理が行われる。パラメータnの値が、既にベアラを確立しているユーザの総数Nより大きかった場合、フローはステップS415に進む。
【0038】
ステップS415において、基地局は、スケジューリング係数の値が相対的に大きい(または、硬判定的に優先度が高いと判定された)ユーザを選択し、そのユーザに優先的に無線リソースを割り当てる。基地局は、無線リソースが割り当てられたことをユーザに通知する。
【0039】
以後フローはステップS417に進み、スケジューリング方法のフローは終了する。これにより、スケジューリング対象のサブフレーム(TTI)における無線リソースの割り当てが終了する。次のサブフレームについてのスケジューリングは、ステップS401から始まる。
【0040】
図3及び図4を参照しながら、本実施例による動作をさらに説明する。図4に示すスケジューリング方法を実行する際、ステップS407において、ユーザの品質情報CQIに対応する重み付け関数F(t)が選択される。例えば、ユーザ#1の品質情報CQI1に対応する重み付け関数F1(t)が選択される。このユーザ#1の場合、図3に示されているように、データ滞留時間がt1以前ならば重み付け関数F1(t)は低い値をとる。したがって、この期間内にユーザ#1に送信するデータがあったとしても、ユーザ#1のスケジューリング係数は、t1以前の重み付け関数F1(t)により小さな値になる(スケジューリング係数は重み係数だけでなく、他の様々な量(瞬時データレート等)からの影響も受けるが、重み付け係数の観点から説明する)。したがって、データ滞留時間がt1に達していない場合、小さな値の重み付け関数F1(t)により、ユーザ#1のスケジューリング係数は小さくなり、ユーザ#1に無線リソースが割り当てられにくくなる。データ滞留時間がt1に達すると、重み付け関数F1(t)は大きな値をとるので、データ滞留時間がt1に達すると、ユーザ#1に無線リソースが割り当てられやすくなる。したがって、無線チャネル状態が良好なユーザ(例えば、セル中央付近にいるユーザ)に対して、F1(t)のように長い期間低い値をとる重み付け関数を使用することで、無線リソースの割り当て周期を長くし、音声容量を増やすことができる。
【0041】
別の例として、例えば、ユーザ#3の品質情報CQI3に対応する重み付け関数F3(t)が選択されたとする。図3に示されているように、臨界データ滞留時間t3は、臨界データ滞留時間t1よりも短い。このユーザ#3の場合、データ滞留時間がt3以前ならば重み付け関数F3(t)は低い値をとる。この期間内にユーザ#3に送信するデータがあったとしても、ユーザ#3のスケジューリング係数は、t3以前の重み付け関数F3(t)により小さな値になる。したがって、データ滞留時間がt3に達していない場合、ユーザ#3に無線リソースは割り当てられにくくなる。データ滞留時間がt3に達すると、重み付け関数F3(t)は大きな値をとるので、データ滞留時間がt3に達すると、ユーザ#3に無線リソースが割り当てられやすくなる。したがって、無線チャネル状態が良好でないユーザ(例えば、セル端付近にいるユーザ)に対して、F3(t)のように短い期間しか低い値をとらない重み付け関数を使用することで、そのようなユーザに一度に多くのデータを送信しないようにすることができる。
【0042】
<3.変形例>
上述したように、重み付け関数の関数形は、階段関数に限定されない。単調増加関数を実現する適切な如何なる関数が使用されてもよい。ただし、複数の関数値を設定することで関数を簡易に表現できる等の観点からは、重み付け関数を階段関数で表現することが好ましい。
【0043】
図5は、例えばCQIである品質情報の値が良い場合の重み付け関数F1(t)と、品質情報の値が悪い場合の重み付け関数F2(t)とを例示的に示す。F2(t)は図3に示す場合と同様な階段関数である。しかしながら、F1(t)はt1に至るまでは低い値(例えば、0)をとり、t1以降は線形に増加している。
【0044】
図6も、品質情報の値が良い場合の重み付け関数F1(t)と、品質情報の値が悪い場合の重み付け関数F2(t)とを例示的に示す。F2(t)は図3に示す場合と同様な階段関数である。しかしながら、F1(t)は、例えばexp(t)のように指数関数的に増加している。
【0045】
図7も、品質情報の値が良い場合の重み付け関数F1(t)と、品質情報の値が悪い場合の重み付け関数F2(t)とを例示的に示す。F2(t)は図3に示す場合と同様な階段関数である。しかしながら、F1(t)は複数の臨界データ滞留時間を有し、t11、t12、t3、t14、T15 において段階的に変化する多段の階段関数である。
【0046】
図5ないし図7の何れのF1(t)も、高低の単なる2値だけでなく、様々な値をとることができ、ユーザのデータ滞留時間に応じたスケジューリング係数を算出する等の観点から好ましい。各図の比較を容易にするため、F2(t)が共通の階段関数として示されているが、F2(t)の関数形も任意である。さらに、図示及び説明の簡明化のため、図5ないし図7に示す例は、例えばCQIである品質情報が良い値であるか否かの2つの状態の重み付け関数しか示していないが、このとは必須でない。2つより多い数の重み付け関数が、任意の関数形により表現されてもよい。
【0047】
本実施例によれば、基地局は、移動機から報告される品質情報(例えば、CQI)に基づいて、移動機毎にデータ滞留時間により変化する重み付け関数F(t)を選択し、それを用いてスケジューリング係数を計算する。その結果、セル中央のように無線品質が良好な移動機の音声データの送信タイミングの遅延量を、セル端のように無線品質が良好でない移動機よりも長くすることができる。これにより、セル中央のユーザに対しては音声容量を増やすことができる一方、セル端のユーザに対しては一度に多数の音声パケットが送信されないようにすることができる。
【0048】
以上本発明は特定の実施例を参照しながら説明されてきたが、それらは単なる例示に過ぎず、当業者は様々な変形例、修正例、代替例、置換例等を理解するであろう。例えば、本発明は、スケジューリングを行う適切な如何なる移動通信システムに適用されてもよい。例えば本発明は、W−CDMA方式のシステム、HSDPA/HSUPA方式のW−CDMAシステム、LTE方式のシステム、LTE−Advanced方式のシステム、IMT−Advanced方式のシステム、WiMAX、Wi−Fi方式のシステム等に適用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数値例を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数値は単なる一例に過ぎず適切な如何なる値が使用されてもよい。発明の理解を促すため具体的な数式を用いて説明がなされたが、特に断りのない限り、それらの数式は単なる一例に過ぎず適切な如何なる数式が使用されてもよい。実施例又は項目の区分けは本発明に本質的ではなく、2以上の項目に記載された事項が必要に応じて組み合わせて使用されてよいし、ある項目に記載された事項が、別の項目に記載された事項に(矛盾しない限り)適用されてよい。説明の便宜上、本発明の実施例に係る装置は機能的なブロック図を用いて説明されたが、そのような装置はハードウェアで、ソフトウェアで又はそれらの組み合わせで実現されてもよい。ソフトウェアは、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、EPROM、EEPROM、レジスタ、ハードディスク(HDD)、リムーバブルディスク、CD−ROM、データベース、サーバその他の適切な如何なる記憶媒体に用意されてもよい。本発明は上記実施例に限定されず、本発明の精神から逸脱することなく、様々な変形例、修正例、代替例、置換例等が本発明に包含される。
【符号の説明】
【0049】
101 UL信号受信部
103 品質情報取得部
105 記憶部
107 関数選択部
109 スケジューリング部
111 制御チャネル生成部
113 データチャネル生成部
115 DL信号送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザ装置の無線チャネル状態を示す品質情報を取得する品質情報取得部と、
複数の品質情報に対応する異なる複数の重み付け関数の中から、個々のユーザ装置の品質情報に対応する重み付け関数をそれぞれ選択する関数選択部と、
重み付け関数にしたがって変化するスケジューリング係数を、1人以上のユーザ装置各々について算出し、少なくともスケジューリング係数の大きさにしたがってユーザ装置に無線リソースを割り当てるスケジューリング部と、
無線リソースが割り当てられたことをユーザ装置に通知する通知部と
を有し、前記重み付け関数はユーザ装置のデータ滞留時間の関数であり、相対的に良い値の品質情報に対応する重み付け関数の値が所定値に達するまでのデータ滞留時間は、相対的に悪い値の品質情報に対応する重み付け関数の値が該所定値に達するまでのデータ滞留時間よりも長い、移動通信システムにおける基地局。
【請求項2】
前記関数選択部が、個々のユーザ装置の品質情報の平均値に対応する重み付け関数をそれぞれ選択する、請求項1記載の基地局。
【請求項3】
前記重み付け関数がデータ滞留時間に関する単調増加関数である、請求項1又は2に記載の基地局。
【請求項4】
前記重み付け関数が階段関数である、請求項3記載の基地局。
【請求項5】
前記重み付け関数が指数関数である、請求項3記載の基地局。
【請求項6】
前記複数の品質情報と前記複数の重み付け関数との対応関係を記憶する記憶部をさらに有する請求項1ないし5の何れか1項に記載の基地局。
【請求項7】
前記品質情報取得部により取得される前記品質情報が、下りリンクの無線チャネル状態を示すチャネル品質インジケータにより表現されている、請求項1ないし6の何れか1項に記載の基地局。
【請求項8】
前記品質情報取得部により取得される前記品質情報が、上りリンクの無線チャネル状態の良否を示す、請求項1ないし6の何れか1項に記載の基地局。
【請求項9】
ユーザ装置の無線チャネル状態を示す品質情報を取得し、
複数の品質情報に対応する異なる複数の重み付け関数の中から、個々のユーザ装置の品質情報に対応する重み付け関数をそれぞれ選択し、
重み付け関数にしたがって変化するスケジューリング係数を、1人以上のユーザ装置各々について算出し、少なくともスケジューリング係数の大きさにしたがってユーザ装置に無線リソースを割り当て、
無線リソースが割り当てられたことをユーザ装置に通知するステップ
を有し、前記重み付け関数はユーザ装置のデータ滞留時間の関数であり、相対的に良い値の品質情報に対応する重み付け関数の値が所定値に達するまでのデータ滞留時間は、相対的に悪い値の品質情報に対応する重み付け関数の値が該所定値に達するまでのデータ滞留時間よりも長い、移動通信システムにおけるスケジューリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−199662(P2012−199662A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61200(P2011−61200)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】