説明

移植機の植付作業機

【課題】 整地ロータによる前方への泥土の飛びはねが防止された移植機の植付作業機を提供することを課題としている。
【解決手段】 走行機体1に昇降自在に連結される植付作業機7の上昇に連動して、回転駆動により圃場の表面から植付け深さまでの圃場表層の整地作業を行う整地ロータ16の上方の前方側を覆うカバー体を設けた。整地作業時の整地ロータ16の回転による後方側への泥土の飛びはねを防止するように、整地ロータ16の上方の後方側を覆うロータカバー36を回動作動部39によって前方に回動させ、ロータカバー36自体をカバー体にした。又は植付作業機7の上昇に連動して整地ロータ16の上方の前方側を、整地ロータ16に沿って覆うように移動する移動カバー体41をカバー体とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付作業機に整地ロータが備えられた移植機の植付作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
走行機体に昇降自在に連結され、回転駆動により圃場の表面から植付け深さまでの圃場表層の整地作業を行う整地ロータを備え、該整地ロータを走行機体の走行駆動と連動して回転駆動する移植機の植付作業機が公知となっている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−65111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記整地ロータは、植付作業機を上昇させると植付作業機とともに上昇する。例えば走行機体を旋回させる場合は、走行駆動と連動して整地ロータが空回転する。この場合整地ロータの回転に伴い前方側への泥土の飛びはねが発生し、座席に座ったオペレータの泥汚れ等により作業環境が悪化する場合があるという欠点があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するための本発明の移植機の植付作業機は、走行機体1に昇降自在に連結され、回転駆動により圃場の表面から植付け深さまでの圃場表層の整地作業を行う整地ロータ16を備え、該整地ロータ16を走行機体1の走行駆動と連動して回転駆動する移植機の植付作業機において、植付作業機7の上昇に連動して整地ロータ16の上方の前方側を覆うカバー体を設けたことを第1の特徴としている。
【0005】
第2に整地作業時の整地ロータ16の回転による後方側への泥土の飛びはねを防止するように、整地ロータ16の上方の後方側を覆うロータカバー36を設け、該ロータカバー36を前後回動自在に植付作業機7側に支持して取り付け、ロータカバー36と走行機体1との間に、植付作業機7の上昇に連動してロータカバー36を前方に回動させる回動作動部39を設け、ロータカバー36をカバー体として兼用したことを特徴としている。
【0006】
第3に整地作業時の整地ロータ16の回転による後方側への泥土の飛びはねを防止するように、整地ロータ16の上方の後方側を覆うロータカバー36を、植付作業機7側に固定して設け、該ロータカバー36の前方に、ロータカバー36に対して移動可能にカバー体41を取り付け、該カバー体41を、植付作業機7の上昇に連動して、整地ロータ16に沿って整地ロータ16の上方の前方側を覆うように移動するものとしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
以上のように構成される本発明の構造によると、例えば走行機体を旋回させる際に、植付作業機を上昇させると、カバー体が、植付作業機とともに上昇した整地ロータの空回転による前方側への泥土の飛びはねを防止する。これにより座席に座ったオペレータへの整地ロータの回転に起因する泥はねが防止され、オペレータの泥汚れ等を防止することができ、作業環境が向上するという効果がある。
【0008】
整地ロータの上方の後方側を覆い、整地ロータによる整地作業時の整地ロータの回転による後方側への泥土の飛びはねを防止するロータカバーを兼用してカバー体とすることによって、カバー体を簡単に且つローコストで設置することができる。この場合植付作業機の下降時には、整地ロータの上方の前方側を開放することができるため、整地ロータによる整地作業時の泥詰まり等は防止される。
【0009】
植付作業機側に固定して設けられたロータカバーに、植付作業機の上昇に連動して、整地用ロータに沿って整地ロータの上方の前方側を覆うように移動するカバー体を設ける場合も、カバー体を簡単に且つローコストで設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明を採用した移植機である乗用田植機の後方部分の側面図である。該乗用田植機の走行機体1における機体フレーム1aの後部下方には、リヤミッションケース2が一体的に固定されている。リヤミッションケース2の左右両側に後輪3が設けられている。後輪3はリヤミッションケース2から伝動される駆動力により回転駆動される。
【0011】
機体フレーム1aの後部上方には、座席4が設けられている。走行機体1の後方には、下部リンク6aと上部リンク6bとから構成される昇降リンク機構6を介して植付作業機7が昇降自在、且つローリング可能に連結されている。植付作業機7は、後輪3の後方に位置している。
【0012】
上記植付作業機7には、植え付け用の苗を載置する苗載台8が斜設されている。苗載台8の背面(裏面)側には、上下方向の縦フレーム9と、縦フレーム9の下方に左右方向に横設されている横フレーム11とが設けられている。縦フレーム9と横フレーム11とは一体的に固定されている。
【0013】
横フレーム11側には、複数のプランタケース12が取り付けられている。該プランタケース12には植付部13が回転駆動自在に取り付けられている。植付部13は、回転に伴い苗載台8から苗を掻き取り圃場に植え付ける。植付作業機8にはプランタケース12の下方にフロート14が設けられている。
【0014】
植付作業機7には、フロート14の前方位置に乗用田植機の略全幅にわたって整地ロータ16が設けられている。整地ロータ16は、植付作業機7の前方、且つ後輪3の後方位置に配置されている。
【0015】
整地ロータ16は、図2に示されるように、ギヤケース17の左右から突出するロータ軸18に、軸心を中心とした回転方向に対して一体的に軸支された内側ロータ16Iと、ピン19によってロータ軸18に同心で連結された延長軸21に、軸心を中心とした回転方向に対して一体的に軸支された外側ロータ16Oとから構成されている。
【0016】
前述の両縦フレーム9の上方側間には、左右方向の軸23が回動自在に軸支されている。該軸23には、軸23の回動を操作するレバー24が設けられている。該レバー24の揺動により軸23が回動する。上記軸23の左右両側にはアーム26が設けられている。各アーム26の先端側にはそれぞれ中継アーム27が回動自在に軸支連結されている。
【0017】
左右の各中継アーム27の下端側にはそれぞれ支持ロッド28が回動自在に軸支連結されている。支持ロッド28は筒状のガイド29内にスライド自在に挿入されている。ガイド29はブラケット31を介して横フレーム11側に取り付けられている。図2に示されるように、支持ロッド28の下端側には、ベアリングケース32が設けられている。
【0018】
ベアリングケース32内のベアリング33に前述のロータ軸18が軸心を中心とする回転が許容されて挿入されている。ギヤケース17,ロータ軸18,延長軸21が、上記のように支持ロッド28の先端に支持されることによって、整地ロータ16が支持ロッド28の先端に支持されて植付作業機7に取り付けられている。
【0019】
ギヤケース17には、リヤミッションケース2側から伝動シャフト22を介して駆動力が伝動されている。ロータ軸18にはギヤケース17から駆動力が伝動されている。ギヤケース17からの駆動力によってロータ軸18は軸心を中心として回転駆動される。ロータ軸18の回転駆動によって延長軸21も軸心を中心として回転駆動される。ロータ軸18と延長軸21の回転駆動によって整地ロータ16(内側ロータ16I及び外側ロータ16O)が回転駆動される。
【0020】
整地ロータ16は、レバー24を揺動させ、軸23を回動させ、アーム26,中継アーム27を介して支持ロッド28をガイド29に案内された状態で上下にスライド移動させることによって、植付作業機7に対する高さが調節される。
【0021】
整地ロータ16の高さ調節によって、整地ロータ16は、図1に示されるように、フロート14の下面より上方に退避する収納姿勢と、図3に示されるように、フロート14の下面から突出する作業姿勢とに姿勢切換が可能となっている。
【0022】
上記レバー24は縦フレーム9に固定されたレバーガイド34に挿通されており、レバー24をレバーガイド34に設けられた段部に係止することによって整地ロータ16の高さを位置決め調節することができる。作業姿勢と収納姿勢の切り換えの他、作業姿勢においてフロート14の下面からの整地ロータ16の突出量を多段階に調節することによって整地深さを設定調節することができる。
【0023】
本乗用田植機は上記構成により、座席4に座ったオペレータの操作により、フロート14が圃場面上に接地するように植付作業機7を下降させ、植付クラッチを入り作動させて、植付作業機7を植付作動させながら走行機体1を圃場内で走行させることによって、回転駆動される植付部13が苗載台8から苗を掻き取り、掻き取った苗を走行機体1の走行に伴い順に圃場に植え付ける植付作業を行うことができる。
【0024】
前述のギヤケース17には、リヤミッションケースから駆動力が伝動されるため、整地ロータ16は、走行機体1の走行時(後輪3の駆動時)に回転駆動される。このため上記植付作業時に、整地ロータ16を作業姿勢とすることにより、回転駆動される整地ロータ16が圃場に接地するとともに、フロート14の下面からの突出量に応じた深さで圃場の表層部分に挿入されことによって、代掻き後の圃場の植付深さより浅い表層部分のみの整地を行う。
【0025】
ただし植付作業時においても整地ロータ16を収納姿勢とすると、走行機体1の走行時(後輪3の駆動時)に整地ロータ16が回転駆動されても、整地ロータ16が圃場に接地しないため、上記整地作業は行われない。植付作業時に走行機体1の旋回等により荒れた代掻き後の圃場の枕地等において整地ロータ16によって上記枕地等の整地を行い、整地ロータ16による整地後の枕地等に苗を安定して植え付けることができる。
【0026】
整地ロータ16の上方及び後方側は、ロータカバー36によって覆われている。ロータカバー36は、内側ロータ16Iの上方の後方側を覆う内側ロータカバー36Iと、外側ロータ16Oの上方の後方側を覆う外側ロータカバー36Oとによって構成されている。ロータカバー36は、上記のように整地ロータ16の上方の後方側を覆う後方カバー姿勢によって、整地ロータ16による整地作業時の整地ロータ16の回転による後方側(植付作業機7側)への泥土の飛びはねを防止する。
【0027】
図2,図4に示されるように、各ロータカバー36I,36Oは、端部に設けられたボス部37がベアリングケース32に回動自在に外嵌されている。ロータカバー36はベアリングケース32に回動自在に取り付けられている。ロータカバー36(内側ロータカバー36I及び外側ロータカバー36O)の回動中心とロータ軸18の軸心とは一致している。
【0028】
整地ロータ16は、ベアリングケース32の部分は途切れており、この部分においては整地作用がない。ロータカバー36は、この整地ロータ16が途切れた部分において支持されている。ロータカバー36を別の位置で支持する構造とすると、ロータカバー36の支持部分において整地ロータ16が途切れる可能性があるため、整地ロータによる整地作用範囲を犠牲にすることなく、ロータカバー36を支持することができる。
【0029】
上記支持ロッド28にはプレート38が固着されている。該プレート38と内側ロータカバー36I及び外側ロータカバー36Oとの間には、それぞれ引張りバネ40が介設されている。内側ロータカバー36I及び外側ロータカバー36Oには、それぞれ別々のワイヤ39のインナ39Iの一端が連結されている。
【0030】
各ワイヤ39のアウタ39Oの当該インナ39I側は、プレート38に取り付けられている。上記各ワイヤ39のアウタ39Oの反対側は、図1に示されるように下部リンク6aに取り付けられている。各ワイヤ39のインナ39Iの反対側は、図1に示されるように機体フレーム1aの後端部に連結されている。
【0031】
これにより座席4に座ったオペレータの操作等により植付作業機7を上昇させると、図5に示されるように、インナ39Iが引かれ、引張りバネ40の付勢力に抗してロータカバー36(内側ロータカバー36I及び外側ロータカバー36O)が、前方に向かって、整地ロータ16の外周に沿って回動し、ロータカバー36は整地ロータ16の上方の前方側を覆う前方カバー姿勢に姿勢変更を行う。
【0032】
ただしレバー24により整地ロータ16を植付作業機7に対して上下高さ調節する場合は、ワイヤ39の整地ロータ16側のインナ39Iとアウタ39Oとの位置関係が変更されないため、ロータカバー36の姿勢変更は行われない。従って整地深さを調節した場合にロータカバー36の作動や姿勢変更時の回動量が変化することはない。
【0033】
例えば走行機体1を旋回させる際には、図6に示されるように、植付作業機7を上昇させる。この場合上記のようにロータカバー36が前方カバー姿勢をとるため、植付作業機7とともに上昇した整地ロータ16の空回転による前方側(座席4側)への泥土の飛びはねを防止する。これにより座席4に座ったオペレータPへの整地ロータ16の回転に起因する泥はねが防止され、オペレータPの泥汚れ等を防止することができ、作業環境が向上する。
【0034】
なお植付作業機7を植付作業を行うために下降させると、引張りバネ40の付勢力によってワイヤ39のインナ39Iが戻り、ロータカバー36が後方カバー姿勢に維持される。この際整地ロータ16の上方の前方側は開放されるため、整地ロータ16による整地作業時にロータカバー36と整地ロータ16との間の泥はけが良好となり、泥土詰まり等は防止され、整地ロータ16による整地作業が円滑に行われる。
【0035】
以上のように上記ロータカバー16は、姿勢変更することによって、ロータカバー16自体が植付作業機7の上昇に連動して整地ロータ16の上方の前方側を覆うカバー体として機能する。カバー体は従来からあるロータカバー16が兼用して使用されるため、比較的簡単に且つローコストで設置される。構造が簡単であるため故障の可能性も低い。
【0036】
一方図7,図8に示されるように、ロータカバー36(内側ロータカバー36I及び外側ロータカバー36O)を支持ロッド28側に固定的に取り付け、内側ロータカバー36I及び外側ロータカバー36Oに、前方に突出するように前方カバー41を上下回動自在に取り付け、前方カバー41を上記カバー体とすることもできる。
【0037】
この場合前方カバー41の回動支点軸42より後方に、前述のワイヤ39のインナ39Iを連結し、前述の引張りバネ40を、前方カバー41の回動支点軸42より前方とプレート38との間に設ける。
【0038】
これにより上記同様に植付作業機7を上昇させると、図8に示されるように、インナ39Iが引かれ、引張りバネ40の付勢力に抗して前方カバー41が下方に向かって回動し、整地ロータ16の上方の前方側を整地ロータ16の外周に沿って覆い、植付作業機7とともに上昇した整地ロータ16の空回転による前方側(座席4側)への泥土の飛びはねを防止する。これにより座席4に座ったオペレータPへの整地ロータ16の回転に起因する泥はねが防止され、オペレータPの泥汚れ等を防止することができ、作業環境が向上する。
【0039】
なお植付作業機7を植付作業を行うために下降させると、引張りバネ40の付勢力によってワイヤ39のインナ39Iが戻り、前方カバー41は上方に向かって回動し、整地ロータ16による整地作業時に前方カバー41と整地ロータ16との間に泥土が詰まらないように、整地ロータ16の上方の前方側を開放する。前方カバー41は、回動して移動することによって、植付作業機7の上昇に連動して整地ロータ16の上方の前方側を覆うカバー体として機能する。
【0040】
この場合も従来から設置されている植付作業機7側の構造物(ロータカバー36)に前方カバー41を取り付けるだけの簡単な構成で、ローコストでカバー体を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】フロートが圃場に接地し、整地ロータが収納姿勢である乗用田植機の後方部分の側面図である。
【図2】整地ロータ部分の要部平面図である。
【図3】フロートが圃場に接地し、整地ロータが作業姿勢である乗用田植機の後方部分の側面図である。
【図4】ロータカバーが後方カバー姿勢である整地ロータ部分の要部側面図である。
【図5】ロータカバーが前方カバー姿勢である整地ロータ部分の要部側面図である。
【図6】植付作業機を上昇させた状態の乗用田植機の後方部分の側面図である。
【図7】前方カバーが整地ロータの上方の前方側を開放した状態の整地ロータ部分の要部側面図である。
【図8】前方カバーが整地ロータの上方の前方側を覆った状態の整地ロータ部分の要部側面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 走行機体
7 植付作業機
16 整地ロータ
36 ロータカバー
39 ワイヤ(回動作動部)
41 前方カバー(カバー体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体(1)に昇降自在に連結され、回転駆動により圃場の表面から植付け深さまでの圃場表層の整地作業を行う整地ロータ(16)を備え、該整地ロータ(16)を走行機体(1)の走行駆動と連動して回転駆動する移植機の植付作業機において、植付作業機(7)の上昇に連動して整地ロータ(16)の上方の前方側を覆うカバー体を設けた移植機の植付作業機。
【請求項2】
整地作業時の整地ロータ(16)の回転による後方側への泥土の飛びはねを防止するように、整地ロータ(16)の上方の後方側を覆うロータカバー(36)を設け、該ロータカバー(36)を前後回動自在に植付作業機(7)側に支持して取り付け、ロータカバー(36)と走行機体(1)との間に、植付作業機(7)の上昇に連動してロータカバー(36)を前方に回動させる回動作動部(39)を設け、ロータカバー(36)をカバー体として兼用した請求項1の移植機の植付作業機。
【請求項3】
整地作業時の整地ロータ(16)の回転による後方側への泥土の飛びはねを防止するように、整地ロータ(16)の上方の後方側を覆うロータカバー(36)を、植付作業機(7)側に固定して設け、該ロータカバー(36)の前方に、ロータカバー(36)に対して移動可能にカバー体(41)を取り付け、該カバー体(41)を、植付作業機(7)の上昇に連動して、整地ロータ(16)に沿って整地ロータ(16)の上方の前方側を覆うように移動するものとした請求項1の移植機の植付作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−61034(P2007−61034A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−253234(P2005−253234)
【出願日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】