説明

移植機

【課題】 苗載台折畳み時は、マーカを制限幅内に収めることができ、また、作業時は、他部材と干渉を回避しつつ、マーカの振り出しを規制できるようにする。
【解決手段】 植付部3の左右両側部に、起倒自在なマーカ11L、11Rを備えると共に、植付部3に設けられる苗載台7を、所定の制限幅内に格納できるように折畳み可能に構成した乗用田植機において、マーカ11L、11Rのアーム部13は、制限幅内に収まるように格納される苗載台折畳み時の係止格納位置と、それよりも外側方に倒れるように格納される作業時の係止格納位置とに選択的に係止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植付部の左右両側部に、起倒自在なマーカを備えると共に、植付部に設けられる苗載台を、所定の制限幅内に格納できるように折畳み可能に構成した乗用田植機などの移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、乗用田植機などの移植機は、苗の植付条間を適正に保つために、次行程に走行基準線を引くマーカを備えている。この種のマーカは、通常、植付部の左右両側に起倒自在に設けられており、植付部の昇降に伴って自動的に格納・振り出し動作が行われるだけでなく、植付部が昇降するごとに、振り出されるマーカが左右交互に切り換えられるように構成されている。
【0003】
また、植付部の左右両側部には、通常、マーカのアーム部を起立姿勢で係止するマーカフックが設けられている。このマーカフックは、主に、非作業時に使用されるが、作業中もマーカの振り出しを規制する場合に使用される。例えば、畔際を植付走行する際に、畔側のマーカをマーカフックに係止し、畔との接触を防止している。
【特許文献1】実公平6−46247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、多条植えの乗用田植機などでは、車両運搬時における植付部幅を所定の制限幅内に収めるために、苗載台を折畳み可能に構成することが提案されており、この場合には、マーカの格納位置も制限幅内に収めることが求められる。そこで、前記マーカフックによるマーカの係止位置を、従来よりも内側にシフトさせることが考えられるが、このようにすると、マーカの振り出しを規制すべく作業中にマーカを格納係止したとき、格納したマーカが他部材(粒状施肥装置など)に干渉し、植付部のローリングを阻害する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、植付部の左右両側部に、起倒自在なマーカを備えると共に、前記植付部に設けられる苗載台を、所定の制限幅内に格納できるように折畳み可能に構成した移植機において、前記マーカのアーム部は、前記制限幅内に収まるように格納される苗載台折畳み時の係止格納位置と、それよりも外側方に倒れるように格納される作業時の係止格納位置とに選択的に係止されることを特徴とする。このように構成すれば、苗載台折畳み時は、マーカを制限幅内に収めることができ、また、作業時は、他部材と干渉を回避しつつマーカの振り出しを規制することができる。
また、前記マーカのアーム部は、少なくとも2位置にスライド可能なマーカフックで係止されることを特徴とする。このように構成すれば、一つのマーカフックによって、マーカを二つの格納位置に係止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は乗用田植機の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付部3が連結されている。走行機体1と昇降リンク2との間には、リフトシリンダ(図示せず)が介設されており、その伸縮に基づいて植付部3の昇降動作が行われる。また、本実施形態の乗用田植機は、機体後部に粒状施肥装置4を備えており、植付けと同時に粒状肥料を施すが、粒状施肥装置4の有無は任意である。
【0007】
植付部3は、昇降リンク機構2の後端部に対し、ローリング自在に連結される植付部フレーム5と、該植付部フレーム5から立ち上がる左右一対の苗載台ステー6と、苗載台ステー6などにより左右往復動自在に支持される苗載台7と、植付部フレーム5から後方に延出する複数の植付伝動ケース8と、該植付伝動ケース8の後端部に設けられる植付機構9と、植付伝動ケース8の下方に上下揺動自在に設けられるフロート10とを備えており、苗載台7に載置された苗を、機体走行に伴って圃場に植え付けるように構成されている。
【0008】
本実施形態の植付部3は、多条植え(例えば8条)であり、左右幅が広くなっている。通常、この種の乗用田植機では、車両運搬時における植付部幅を所定の制限幅内に収めるために、苗載台7が折畳み可能に構成される。本実施形態では、苗載台7の一端部に構成される一条分を、苗載台7の後側に重なり合うように折り畳むが、苗載台7の両端部を折り畳むように構成してもよい。尚、苗載台7の折畳み構造は、本発明の要旨ではないため、詳細な説明は省略する。
【0009】
植付部3の左右両側部には、次行程又は前行程に走行基準線を引くためのマーカ11L、11Rが設けられている。各マーカ11L、11Rは、左右外側方に振り出される線引姿勢と、植付部3の側部に沿って起立する格納姿勢とに起倒自在であり、振り出し方向に付勢されている。一方、走行機体1には、マーカ動作機構(図示せず)が設けられている。このマーカ動作機構は、それぞれワイヤ12L、12Rを介して、マーカ11L、11Rの基端部に連結されており、植付部3の上昇に伴ってマーカ11L、11Rを自動的に格納動作させると共に、植付部3の下降に伴ってマーカ11L、11Rを自動的に振り出し動作させ、さらには、振り出されるマーカ11L、11Rを左右交互に切り換えるように構成されている。
【0010】
マーカ11L、11Rは、植付部フレーム5に回動自在に支持されるアーム部13と、該アーム部13の先端部に設けられる線引部14とを備えて構成されている。本実施形態の線引部14は、回転自在な輪体15を有し、この輪体15が田面を転動することにより、田面に走行基準線が引かれるようになっている。また、本実施形態の線引部14は、パイプからなるアーム部13の先端部に対して回動可能に嵌合され、抜け止めピン(Rピン)16にて回動及び抜けが規制される。このようなマーカ構造によれば、抜け止めピン16を抜くことにより、線引部14の方向を反転させることができるので、線引部14を前記制限幅内に収めることが容易になる。
【0011】
植付部3の左右両側部(苗載台ステー6)には、マーカ11L、11Rのアーム部13を起立姿勢で係止するマーカフック17が設けられている。このマーカフック17は、主に、非作業時に使用されるが、作業中もマーカ11L、11Rの振り出しを規制する場合に使用される。例えば、畔際を植付走行する際に、畔側のマーカ11L、11Rをマーカフック17に係止し、畔との接触を防止している。
【0012】
マーカ11L、11Rのアーム部13は、前記制限幅内に収まるように格納される苗載台折畳み時の係止格納位置と、それよりも外側方に倒れるように格納される作業時の係止格納位置とに選択的に係止できるようになっている。このようにすると、苗載台折畳み時は、マーカ11L、11Rを制限幅内に収めることができ、また、作業時は、他部材(例えば粒状施肥装置4)と干渉を回避しつつ、マーカ11L、11Rの振り出しを規制することができる。
【0013】
具体的には、マーカ11L、11Rのアーム部13を、少なくとも2位置にスライド可能なマーカフック17で係止するようにしてある。このようにすると、マーカフック17を増やすことなく、マーカ11L、11Rを二つの格納位置に係止することが可能になる。
【0014】
次に、マーカフック17のスライド構造について説明する。図5〜図8に示すように、苗載台ステー6には、マーカフック17を支持するためのブラケット18が溶着されている。このブラケット18は、苗載台ステー6から前方に突出する左右一対の側板19と、左右の側板19間に一体的に架設される天板20とを備える。左右の側板19には、鍵穴状の長孔19aが形成されており、天板20には、ボス部20aが形成されている。
【0015】
一方、マーカフック17は、線材を曲げ加工したフック21と、フック21の直線部に溶着されたプレート22とを備える。そして、マーカフック17は、ブラケット18の長孔19aに外側からスライド自在に挿入され、Rピン23で抜止めされる。このようにブラケット18に装着されたマーカフック17は、回止め状態で左右方向のスライドが許容される。
【0016】
ブラケット18のボス部20aには、セットピン24がスライド自在に挿入される。セットピン24の先端部には、Cリング25が装着され、また、Cリング25と天板20との間には、セットピン24を下方に付勢するスプリング26が介装される。マーカフック17のプレート22には、左右方向に所定の間隔を存して2つのセット孔22aが形成されている。そして、外側のセット孔22aに前記セットピン24を嵌合させると、マーカフック17が内側のスライド位置、即ち、苗載台折畳み時におけるマーカ係止格納位置にセットされる。また、内側のセット孔22aにセットピン24を嵌合させると、マーカフック17が外側のスライド位置、即ち、作業時におけるマーカ係止格納位置にセットされる。このとき、セットピン24とセット孔22aの嵌合解除は、セットピン24を上方へ引くだけで行うことができ、また、セットピン24とセット孔22aの嵌合は、両者の位置が一致したとき、スプリング26の付勢力で自動的に行われる。尚、セットピン24やマーカフック17の操作は、植付部3を上昇させれば、走行機体1上から行うことができる。
【0017】
叙述の如く構成された本実施形態の乗用田植機は、植付部3の左右両側部に、起倒自在なマーカ11L、11Rを備えると共に、植付部3に設けられる苗載台7を、所定の制限幅内に格納できるように折畳み可能に構成したものであるが、マーカ11L、11Rのアーム部13は、制限幅内に収まるように格納される苗載台折畳み時の係止格納位置と、それよりも外側方に倒れるように格納される作業時の係止格納位置とに選択的に係止されるので、苗載台折畳み時は、マーカ11L、11Rを制限幅内に収めることができ、また、作業時は、他部材と干渉を回避しつつ、マーカ11L、11Rの振り出しを規制することができる。
【0018】
また、マーカ11L、11Rのアーム部13は、少なくとも2位置にスライド可能なマーカフック17で係止されるので、一つのマーカフック17によって、マーカ11L、11Rを二つの格納位置に係止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】作業状態を示す乗用田植機の側面図である。
【図2】苗載台折畳み状態を示す乗用田植機の側面図である。
【図3】作業状態を示す植付部の正面図である。
【図4】苗載台折畳み状態を示す植付部の正面図である。
【図5】係止格納状態を示すマーカの側面図である。
【図6】苗載台ステーの側面図である。
【図7】苗載台ステーの分解斜視図である。
【図8】(A)は苗載台折畳み時の係止格納位置に対応させたマーカフックの平面図、(B)は作業時の係止格納位置に対応させたマーカフックの平面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 走行機体
3 植付部
4 粒状施肥装置
6 苗載台ステー
7 苗載台
11 マーカ
13 アーム部
14 線引部
17 マーカフック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植付部の左右両側部に、起倒自在なマーカを備えると共に、前記植付部に設けられる苗載台を、所定の制限幅内に格納できるように折畳み可能に構成した移植機において、
前記マーカのアーム部は、前記制限幅内に収まるように格納される苗載台折畳み時の係止格納位置と、それよりも外側方に倒れるように格納される作業時の係止格納位置とに選択的に係止されることを特徴とする移植機。
【請求項2】
前記マーカのアーム部は、少なくとも2位置にスライド可能なマーカフックで係止されることを特徴とする請求項1記載の移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−158217(P2006−158217A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−349670(P2004−349670)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】