説明

移植機

【課題】苗の植付け作業において、的確な条止め操作を行うことができる移植機を提供する。
【解決手段】移植機は、複数条A、B、C、D、E、F、G、Hの苗を圃場40に植付ける植付け装置と、該植付け装置の駆動を少数条ごとに停止させる条止め装置と、旋回後の次行程で機体の中心が通る走行予定中心線43を引くマーカ32とを備え、前記マーカ32を支持するマーカアーム31に条止め予定位置を示す指33a、33b、33c、33dを設け、最後の植付け行程で全条A、B、C、D、E、F、G、H分の苗を植付けられるように予め圃場40に引かれた最終植付け行程用走行予定中心線42と、該最終植付け行程の前植付け行程における前記指標32a、32b、32c、32dとを比較して前記条止め装置で条止めする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場を往復して苗を植付ける移植機に係り、詳しくは、最終工程時に全条植付けすることが出来るように植付け装置を少数条ごとに停止することが可能な移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、圃場を往復しながら植付け装置によって苗を植付ける移植機において、該植付け装置の駆動を少数条ごとに停止可能に構成し、圃場の大きさ、形状などに合わせて条止めすることができるようにした移植機が案出されている(特許文献1参照)。
【0003】
また、次の植付け工程において、機体が走行する際の指標となるセンターラインを引くマーカ装置を備えた条止め可能な移植機が案出されている(特許文献2参照)。
【0004】
上記マーカ装置は、圃場にセンターラインを引くマーカと、機体側方に揺動自在に支持されると共にその先端にマーカが取付けられた棒状部材からなるマーカアームと、を有していると共に、該マーカアームに補助マーカアームを取付けることによって、機体側方に全条分の植付け幅が残っている事を確認できるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−259708号公報
【特許文献2】特開2002−95309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に移植機は、圃場の幅が植付け装置の植付け幅の整数倍でない場合、圃場を往復しつつ苗を植えつけると最終植付け工程において苗の植付けが重複してしまうため、最終植付け工程の1つ前の工程で条止め作業を行うが、上記特許文献1及び2記載のような、条止めする条数を判定するための指標がない移植機の場合、作業者が圃場の未植付け部分と植付部の植付け幅とを比較して判断する必要があった。
【0007】
しかしながら、条止め数を作業者の経験により判断すると適切な条止めするよりも、条止めした条数が多すぎたり、少なすぎたりすることがあり、適切な条数だけ条止めすることが難しいという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、マーカアームに条止め位置を判断するための指標を設け、この指標と圃場に予め引かれた最終植付け行程用走行予定中心線とを比較することによって、上記課題を解決した移植機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、請求項1に係る本発明は、複数条(A、B、C、D、E、F、G、H)の苗を圃場(40)に植付ける植付け装置(6)と、該植付け装置(6)の駆動を少数条ごとに停止させる条止め装置(15)と、旋回後の次行程で機体の中心が通る走行予定中心線(43)を引くマーカ(32)と、を備えた移植機(1)において、
前記マーカ(32)を支持するマーカアーム(31)に条止め予定位置を示す指標(33a、33b、33c、33d)を設け、
最後の植付け行程で全条(A、B、C、D、E、F、G、H)分の苗を植付けられるように予め圃場(40)に引かれた最終植付け行程用走行予定中心線(42)と、該最終植付け行程の前植付け行程における前記指標(33a、33b、33c、33d)と、を比較して前記条止め装置(15)で条止めする植付け条数の目安とする、
ことを特徴とする移植機。
【0010】
なお、前記した括弧内の符号等は、図面を参照するためのものであって、本発明を何ら限定するものではない。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明によると、圃場にあらかじめ引かれた最終植付け行程用走行予定中心線とマーカアームに配置された指標との位置を比較することにより、簡単な構成で容易かつ正確な条止めすべき植付け条数を判別することができ、オペレータの経験に頼ることなく的確な条数だけ条止めすることができる。それにより、最終工程において先に植付けた苗の上を走行してしまうことがないと共に、圃場全面に無駄なく苗を植付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施形態に係る移植機の側面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】本発明の実施形態に係る植付け装置の正面図。
【図4】圃場への苗の植付け状態を示す平面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[移植機の全体構成]
以下、図面に基づき本発明の実施形態を説明する。図1及び図2に示すように、移植機1は、前輪2及び後輪3に支持された機体5を有していると共に、該機体の後部には、圃場に苗を植付ける植付け装置6が昇降機構7を介して接続されている。機体5の前方にはボンネット9に覆われたエンジン(図示せず)が搭載されていると共に、該ボンネット9の前部には、センターポール10が立設している。また、機体5の中央部には運転操作部11が設けられており、作業者が着座する運転座席12、ハンドル13および操作レバー類などが配設されている。更に、運転座席12の後部左右には、詳しくは後述する複数の条止めレバー15が設けられており、これら条止めレバー(条止め装置)15を操作することによって植付け装置20の条止め操作が可能になっている。
【0014】
上記昇降機構7は、アッパーリンク及びロアリンクからなるリンク機構16と油圧シリンダ17とを備えており、リンク機構16はその前端が機体5の後部に揺動自在に支持されている。また、リンク機構16の他端は、植付け装置6の植付けフレーム19に固定されたリンクホルダ20に取付けられており、油圧シリンダ17が伸縮することにより植付け装置6を昇降させる。
【0015】
一方、上記植付けフレーム19には機体幅方向に複数(本実施の形態では4個)のプランタケース21が等間隔で配置されていると共に、プランタケース21の先端にはその両側でロータリケース22がプランタシャフト(不図示)に回転自在に支持されている。また、ロータリケース22のプランタアーム23には、苗を載置する苗載せ台24から苗を掻き取るフォーク25が取付けられており、これらプランタケース21、ロータリケース22からなる植付け伝動系及び苗を掻き取るプランタアーム23、フォーク25により植付け部26が形成されている。なお、プランタケース21の下方には複数のフロート27が設けらており、上記植付部26の植付け深さが調整できるように構成されている。
【0016】
また、各プランタケース21のプランタシャフトには条止めクラッチ(条止め装置)(不図示)がそれぞれ設けられており、該条止めクラッチが切断されるとエンジンからプランタシャフトへの動力伝達が切断されて、植付け部26の駆動が停止する。更に、この条止めクラッチはワイヤにより上記条止めレバー15と接続しており、上記条止めレバー15を操作することによって、一つの植付部26の駆動を停止させて2条分(少数条分)の植付けを停止することができる。なお、条止めクラッチは定位置停止クラッチであり、フォーク25が圃場に入ったまま引き摺ることがないように構成されている。
【0017】
[マーカ装置の構成]
次に、本発明の要部であるマーカ装置30の構成について説明をする。図1ないし図3に示すように、上記植付けフレーム19の両端部には、機体側方に延びた棒状部材からなるマーカアーム31が揺動自在に支持されていると共に、その自由端には、それぞれ圃場に次の植付け工程において機体中心が走行する目安となる走行予定中心線を引くマーカ32が回転自在に設けられている。
【0018】
これら左右のマーカアーム31,31は、図3に二点鎖線で示す上方に回動した待機位置Tと、図3に実線で示す機体側方に延びた作動位置Sと、に切換え自在に構成されており、走行機体が旋回したことを感知すると不図示の制御部からの信号によりこれら左右のマーカアーム31,31の状態が入れ代わり、常に苗の植付けが終了した側にあるマーカアーム31は待機位置Tに保持され、次行程側にあるマーカアーム31が作動位置Sになるように構成されている。
【0019】
また、上記左右のマーカアーム31,31には、それぞれ前記移植機1により圃場に植付けされる苗の条間隔と略同じ間隔で複数の指標33a、33b、33c、33dが設けられており、作業者が次工程においてどの位置に苗を植付けられるか一目で分かるように構成されている。
【0020】
[作用]
次に、本実施の形態に係る移植機の作用について図4に基づいて説明をする。作業者は、苗の植付けを行うに際して、まず予め圃場40に最終植付け行程となる側の畔41に沿って、最終植付け行程で全条(本実施の形態では8条)植付けを行う場合の走行予定中心線42を引く。
【0021】
そして、最終工程用の走行予定中心線42を引き終わると機体5に乗込み、上記畦41とは反対側の畦際から圃場内に入ると共に、圃場を往復しつつ植付け装置6により植付け作業を開始する。この時、マーカ装置30は、非植付け側のマーカアーム(機体進行方向左側のマーカアーム)31が作動位置Sとなって、走行しながら圃場に次工程における走行予定中心線43を引き、作業者はセンターポール10が走行予定中心線43上を沿うように走行することによって、圃場に略々整列して無駄なく苗を植付けていく。
【0022】
植付け作業が進み、最終植付け行程の1行程前の植付け工程(図4の中央の工程)になると、作業者は、作動位置にある機体右側のマーカアーム31に設けられた指標33a,33b,33c,33dの位置と、予め前記圃場40に引かれた最終植付け行程の前記走行予定中心線42とを比較し、これら指標を目安として条止め位置(数)を判断する。
【0023】
作業者は、上記指標33a,33b,33c,33dのうち、指標32a,32bが前記走行予定中心線42を超えて前記畔41側に位置していることから、このまま全条植付けを行うと最終植付け工程において2条分の苗が重複すると判断し、前記指標32a、指標32bに対応する破線で示した条A、条Bの植付けを、対応する条止めレバー15(図1、図2参照)を操作して停止する。
【0024】
そして、これら条A、条Bを除く6条分(条C、条D、条E、条F、条G、条H)の植付けを行うと共に、最終工程では条止めを解除して全条植付けを行い、圃場外へと移動して植付け作業を終了する。
【0025】
上述したように、指標33a,33b,33c,33dを最終植付け行程における走行予定中心線42と比較することにより、これら指標が条止め予定位置を示す指標となり、オペレータの経験や勘に頼らず的確な条止め操作を行うことができる。
【0026】
なお、本実施の形態では、出入り口が2つの圃場について説明をしたが、このような圃場に限るものではなく、出入り口が1つの圃場でも当然に使用することができる。その際には、作業者は、最終植付け工程の走行予定中心線として、枕地を走行する際の走行予定中心線を予め引いておくこととなる。
【0027】
また、マーカ装置30は、植付け装置6ではなく機体5側に設けても良いと共に、マーカアーム31に設けられた指標33a、33b、33c、33dは、該マーカアーム30とは異なる色で認識しやすいように、テープやシールの貼付け、塗料の塗布、鍍金等適宜の方法で形成してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 移植機
15 条止めレバー(条止め装置)
6 植付け装置
31 マーカアーム
32 マーカ
33a、33b、33c、33d 指標
40 圃場
42 走行予定中心線
A、B、C、D、E、F、G、H 条

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数条の苗を圃場に植付ける植付け装置と、該植付け装置の駆動を少数条ごとに停止させる条止め装置と、旋回後の次行程で機体の中心が通る走行予定中心線を引くマーカと、を備えた移植機において、
前記マーカを支持するマーカアームに条止め予定位置を示す指標を設け、
最後の植付け行程で全条分の苗を植付けられるように予め圃場に引かれた最終植付け行程用走行予定中心線と、該最終植付け行程の前植付け行程における前記指標と、を比較して前記条止め装置で条止めする植付け条数の目安とする、
ことを特徴とする移植機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−220497(P2010−220497A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69023(P2009−69023)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】