説明

穀物または穀物副生産物由来の機能性脂質の酵素的産生

本発明は、機能性脂質の産生のための脂質含有植物原料、例えば、穀物ふすまにおける脂質の修飾に関する。本発明は、さらに、このような機能性脂質を含む組成物の製造、ならびに、バイオエタノールならびに食品、例えば、パンの製造に適当な組成物の製造のための、脂質修飾酵素の作用由来の機能性脂質および他の機能性化合物を含むこれらの組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、機能性脂質の産生のための脂質含有植物原料、例えば、穀物ふすまにおける脂質の修飾に関する。本発明は、さらに、このような機能性脂質を含む組成物の製造、ならびに、バイオエタノールならびに食品、例えば、パンの製造に適当な組成物の製造のための、脂質修飾酵素の作用由来の機能性脂質および他の機能性化合物を含むこれらの組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
植物原料発酵残留物の加工処理由来の二次生産物(sidestream)、例えば、製粉由来の穀物ふすままたは穀物蒸留粕(DDGS)の利用は、動物飼料における使用以外にほとんど注目されていない。
【0003】
食物および/または食料産業適用における脂肪分解酵素(例えば、3.1.1.x)の有益な使用は長年知られている。
【0004】
しかしながら、多くの先行技術は、産業プロセスの二次生産物または副産物のためでなく穀粉およびドー(Dough)における脂肪分解酵素の使用を記載している。例えば、EP0585988において、ドーへのリパーゼの添加は抗劣化効果における改善をもたらすことが主張されている。WO94/04035は、、ドーへ何らさらなる脂肪/油を添加することなく、リパーゼをドーに加えることにより、パンの柔らかさの改善を得ることができることを示唆している。
【0005】
植物原料中のリパーゼに対する基質は、極性および非極性脂質の複合混合物である。極性脂質は、糖脂質およびリン脂質に分けることができる。これらの脂質は、2つの脂肪酸および極性基とエステル化したグリセロールから構成される。極性基は、これらの脂質の表面活性に寄与する。これらの脂質における1つの脂肪酸の酵素開裂は、非常に高い表面活性を有する脂質をもたらす。高い表面活性を有する乳化剤、例えば、DATEMは、ドーに加えられたとき、非常に機能性であることがよく知られている。
【0006】
脂肪分解酵素は、強力な乳化剤分子の形成をもたらすことができる植物原料に存在する脂質から1またはそれ以上の脂肪酸を加水分解する。
【0007】
EP1193314において、本発明者らは、糖脂質に対して活性な脂肪分解酵素の使用がパン作りにおける適用において特に有益であることを見出した。
【0008】
Morrisonら. J. Sci. Food Agric, 1981, 32, 579-587は、製粉画分における柔らかい小麦穀粒(Kernel)脂質の分配を記載している。
【0009】
当該分野において、家畜飼料のような低価格の用途(application)に回される植物原料が少なくなるような、植物原料の加工処理由来の二次生産物、例えば、製粉由来の穀物ふすま、植物油精製由来のせっけん材料、穀物蒸留粕(DDGS)のより良い利用が求められている。さらに、製品の外観/構造、色および味において有意な影響を及ぼすことなく、穀物由来のふすま画分を既存の穀物製品に利用すること、および既存の製品の健康学的および栄養学的効果を増加させることが、長年にわたり切実に求められている。
【発明の概要】
【0010】
本発明の目的
本発明の目的は、一般的に植物原料、特に産業二次生産物から機能性脂質を産生するための方法を提供する。さらに、本発明の目的は、製品の外観/構造、色および味において有意な影響を及ぼすことなく、食品、例えば、パンまたは穀物製品において植物原料、例えば、従来のふすま由来の機能性脂質を含む組成物の利用を可能にする適当な方法を提供すること、および既存の製品の健康学的および栄養学的効果を増加させることである。
【0011】
発明の概要
広範な局面において、本発明は、植物原料由来の修飾された脂質、例えば、機能性脂質の生産のために、脂質を含む植物原料を脂質修飾酵素で処理するための方法に関する。
【0012】
第1の局面において、本発明は、脂質含有植物原料の処理のための方法であって、少なくとも部分的に可溶化された脂質含有植物原料の液体懸濁液を1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素で処理する工程を含む方法に関する。
【0013】
第2の局面において、本発明は、少なくとも部分的に可溶化された脂質含有植物原料の液体懸濁液を1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素で処理する工程を含む脂質含有植物原料の処理のための方法により生産される脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む組成物に関する。
【0014】
第3の局面において、本発明は、少なくとも部分的に可溶化された脂質含有植物原料の液体懸濁液を1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素で処理する工程を含む脂質含有植物原料の処理のための方法により生産される脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む組成物の食品の生産のための使用に関する。
【0015】
さらなる局面において、本発明は、少なくとも部分的に可溶化された脂質含有植物原料の液体懸濁液を1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素で処理する工程を含む脂質含有植物原料の処理のための方法により生産される脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む組成物のバイオエタノールの生産のための使用に関する。
【0016】
さらなる局面において、本発明は、少なくとも部分的に可溶化された脂質含有植物原料の液体懸濁液を1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素で処理する工程を含む脂質含有植物原料の処理のための方法により生産される脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む組成物の使用により得られる食品に関する。
【0017】
さらなる局面において、本発明は、少なくとも部分的に可溶化された脂質含有植物原料の液体懸濁液を1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素で処理する工程を含む脂質含有植物原料の処理のための方法により生産される脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む組成物の使用により得られるバイオエタノールに関する。
【0018】
さらなる局面において、本発明は、
a)1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素、1つまたはそれ以上の細胞壁修飾酵素、および所望により1つまたはそれ以上のさらなる酵素を含む酵素の組合せ、
b)本発明の方法における使用のための指示書、および
c)所望により食品の製造のための他の成分
を含むパーツを含むキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】ベーキング試験結果。パン 対 ブランクの相対体積(%)。縦列は表5および6の試験番号1−6に対するパン体積を示す。
【図2】得られた可溶性ふすま画分でのベーキングから得られるパン。番号は表5の番号を示す。
【図3】ベーキング試験結果。パン 対 ブランクの相対体積(%)。縦列は表12のベーキング試験実験を示す。
【図4】得られた可溶性ふすま画分でのベーキングから得られるパン。番号は表12の番号を示す。
【図5】ベーキング試験結果。パン 対 ブランクの相対体積(%)。縦列は表17および18のベーキング試験実験を示す。
【図6】得られた可溶性ふすま画分でのベーキングから得られるパン。番号は表18の番号を示す。
【図7】修飾されたふすま画分でのベーキングから得られるパン。番号は表24の番号を示す。
【図8】修飾されたコメふすま抽出物でのベーキングから得られるパン。番号は表30の番号を示す。
【図9】得られた修飾されたふすま画分でのベーキングから得られるパン。番号は表36の番号を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
大量の植物原料の加工処理由来の二次生産物、例えば、製粉由来の穀物ふすま、植物油精製由来のせっけん材料、穀物蒸留粕(DDGS)などは、食物適用、飼料適用のような異なる適用における乳化剤、植物原料などの生産における軟化剤として機能し得る機能性脂質を産生するために、原料として利用することができる。
【0021】
今回、本発明者らは、原料を細胞壁修飾酵素のような他の酵素、いくつかの態様において、また、デンプン修飾酵素と共処理すると、例えば、小麦ふすま中の脂質画分の修飾が有意に増加することを示した。本発明者らは、これらのクラスの酵素を組み合わせることにより、リパーゼだけを使用して得ることができない脂質の機能化を見出した。
【0022】
産生される修飾された脂質は、例えば、パン作りにおいて、単離された可溶性画分を加えることにより、または乳化剤特性を有する修飾された脂質を含む酵素処理されたふすまの完全組成物を加えることにより使用することができる。
【0023】
したがって、本発明の方法により産生される組成物は、単離された可溶性物質として使用され得る。しかしながら、該組成物は、また、可溶性および不溶性、すなわち不溶性植物原料、例えば、残留ふすま原料の混合物として使用され得る。脂質画分の一部がこの残留不溶性画分に存在し続けていることと理解すべきである。
【0024】
本明細書において使用される「脂質含有植物原料」なる用語は、脂質を内部に含む植物由来の有意な量の材料を含むあらゆる材料を示す。適当には、植物原料は、高い量において得ることができ、有意な量の脂質を含み、産業プロセスにおいて使用され得る。
【0025】
いくつかの態様において、脂質含有植物原料は、産業プロセスの二次生産物または副産物である。いくつかの態様において、植物原料は、また、酵母細胞を含み得る非植物原料、例えば、発酵の副産物を含み得る。
【0026】
いくつかの特定の態様において、脂質含有植物原料は、穀物ふすま、例えば、従来の製粉由来の小麦ふすまである。
【0027】
いくつかの態様において、脂質含有原料の乾燥重量100あたり少なくとも約100mg、例えば、少なくとも約200mg、例えば、少なくとも約300mgの量がリン脂質である。
【0028】
いくつかの態様において、脂質含有植物原料の乾燥重量100gあたり少なくとも約10mg、例えば、少なくとも約20mg、例えば、少なくとも約30mgの量がホスファチジルイノシトール(PI)である。
【0029】
本明細書において使用される「部分的に可溶化された脂質含有植物原料」なる句は、脂質を含み、酵素的または機械的作用により少なくとも部分的に可溶化されている植物原料を示す。
【0030】
本明細書において使用される「穀物」なる用語は、イネ科(Poaceae)の植物由来の実を示し、果皮、種皮(seed coat)(あるいは種皮(testa)とも称される)および/または胚芽のさらなる存在を有するか、または有さない、例えば、アリューロンを含む少なくともふすまおよびデンプン内胚乳を含む種子を示す。該用語は、小麦、大麦、オート麦、スペルト小麦、ライ麦、モロコシ、メイズおよびイネのような種を含むが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書において使用される「ふすま」なる用語は、対応する完全な種子と比較して、アリューロン、果皮および種皮から選択される組織のいずれかまたは全てにおいて豊富である穀物由来の製粉画分を示す。
【0032】
本明細書において使用される「可溶化」なる用語は、本発明の方法における植物原料、例えば、穀物ふすまの可溶化を示し、あらゆる程度の可溶化を含むことを意図する。したがって、「可溶化」は、100%の可溶性物質を達成するようにであってよく、また、100%未満、例えば、70%未満、例えば、30%−60%の範囲の可溶化度を達成するようにであってよい。いくつかの態様において、可溶化度は、乾物 対 乾物ふすまで決定される。
【0033】
本明細書において使用される「少なくとも部分的に可溶化された」なる用語は、1%以上、例えば、5以上、例えば、10%以上である可溶化度を示す。植物原料がある程度に可溶化されない場合、脂質修飾酵素の作用が本発明に対して最適に働かないかもしれないことを理解すべきである。脂質修飾酵素を加えて、可溶化するための処理、例えば、1つまたはそれ以上の細胞壁修飾酵素での処理と同時に働かせる本発明の特定の局面において、可溶化および脂質修飾酵素の作用は同時に起こる。
【0034】
本明細書において使用される「製粉画分」なる用語は、例えば、限定はしないが、ふるい(sieving)、スクリーニング、ふるい分け(sifting)、吹き込み(blowing)、吸引、遠心式のふるい分け(centrifugal sifting)、風によるふるい分け(windsifting)、静電分離または電界分離による分別を含むか、または含まない、例えば、限定はしないが、切断、圧延、粉砕、破損(breakage)または製粉による粒子サイズの機械的減少によって生じる画分の全てまたは一部を示す。
【0035】
本発明の文脈において、「機能性脂質」は、機能性脂質が使用される製品において効果を有する脂質を示す。いくつかの特定の態様において、機能性脂質は乳化剤または他の食物改良剤(improver)である。
【0036】
本発明の文脈において「細胞壁修飾酵素」は、植物細胞壁の複合マトリクス多糖類を加水分解または修飾することができるあらゆる酵素、例えば、本明細書における「細胞壁可溶化アッセイ」において活性を有するあらゆる酵素を示す。「細胞壁修飾酵素」の定義に包含されるものは、セルラーゼ、例えば、セロビオヒドロラーゼIおよびセロビオヒドロラーゼII、エンド−グルカナーゼおよびベータ−グルコシダーゼ、ならびにヘミセルロース分解酵素、例えば、キシラナーゼである。
【0037】
本明細書において使用される「セルラーゼ」または「セルロース分解酵素」なる用語は、セロビオヒドロラーゼ(EC3.2.1.91)、例えば、セロビオヒドロラーゼIおよびセロビオヒドロラーゼII、ならびにエンド−グルカナーゼ(EC3.2.1.4)およびベータ−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)を含むと理解される。
【0038】
セルラーゼの定義に包含されるものは、ランダムにセルロース鎖を切断するエンド−グルカナーゼ(EC3.2.1.4)、セルロース鎖末端からセロビオシル単位を開裂するセロビオヒドロラーゼ(EC3.2.1.91)およびセロビオースおよび可溶性セロデキストリンをグルコースに変換するベータ−グルコシダーゼ(EC3.2.1.21)である。セルロースの生物分解に関与する酵素のこれら3つのカテゴリー中、セロビオヒドロラーゼは、天然結晶セルロースの分解のための重要な酵素である。「セロビオヒドロラーゼI」なる用語は、鎖の非還元末端からのセロビオースの遊離により、セルロースおよびセロテトラオースにおける1,4−ベータ−D−グルコシド結合の加水分解を触媒する酵素クラスEC3.2.1.91において定義される、セルロース1,4−ベータ−セロビオシダーゼ(エキソグルカナーゼ、エキソセロビオヒドロラーゼまたは1,4−ベータ−セロビオヒドロラーゼとしも称される)活性として本明細書において定義される。「セロビオヒドロラーゼIl活性」なる用語の定義は、セロビオヒドロラーゼIlが鎖の還元末端から攻撃することを除いて、同一である。
【0039】
セルラーゼは、酵素のセルロース含有繊維への結合を増強し、酵素の触媒活性部分の効力を増加させる炭水化物−結合モジュール(CBM)を含み得る。CBMは、炭水化物−結合活性を有する目立たない折り畳みを有する炭水化物−活性酵素内の隣接するアミノ酸配列として定義される。CBMのさらなる情報のために、CAZyインターネット・サーバー(上記)またはTommeら.(1995) in 酵素 Degradation of Insoluble Polysaccharides (Saddler and Penner, eds.), Cellulose- binding domains: classification and properties, pp. 142-163, American Chemical Society, Washington参照。好ましい態様において、セルラーゼまたはセルロース分解酵素は、米国出願第60/941,251号(出典明示により本明細書に包含させる)に定義されているセルロース分解調製物であり得る。好ましい態様において、セルロース分解調製物は、セルロース分解増強活性を有するポリペプチド(GH61A)、好ましくはWO2005/074656に記載されているものを含む。細胞壁修飾酵素は、さらに、ベータ−グルコシダーゼ、例えば、トリコデルマ、アスペルギルスまたはペニシリウム属の株由来のベータ−グルコシダーゼ、例えば、米国出願第60/832,511号(Novozymes)に記載されているベータ−グルコシダーゼ活性を有する融合タンパク質であり得る。いくつかの態様において、細胞壁修飾酵素は、CBH II、例えば、チエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)セロビオヒドロラーゼIl(CEL6A)である。いくつかの態様において、細胞壁修飾酵素は、セルラーゼ酵素、例えば、トリコデルマ・リーゼイ(Trichoderma reesei)由来のものである。
【0040】
いくつかの態様において、セルロース分解活性は、真菌供給源、例えば、トリコデルマ属の株、例えば、トリコデルマ・リーゼイの株、またはフミコーラ属の株、例えば、フミコーラ・インソレンス(Humicola insolens)の株由来であり得る。
【0041】
いくつかの態様において、細胞壁修飾酵素は、WO2005/074656に記載されているセルロース分解増強活性を有するポリペプチド(GH61A)、セロビオヒドロラーゼ、例えば、チエラビア・テレストリス セロビオヒドロラーゼIl(CEL6A)、ベータ−グルコシダーゼ(例えば、米国出願第60/832,511号に記載されている融合タンパク質)および、例えば、トリコデルマ・リーゼイ由来のセルロース分解酵素である。
【0042】
いくつかの態様において、細胞壁修飾酵素は、WO2005/074656に記載されているセルロース分解増強活性を有するポリペプチド(GH61A)、ベータ−グルコシダーゼ(例えば、米国出願第60/832,511号に記載されている融合タンパク質)および、例えば、トリコデルマ・リーゼイ由来のセルロース分解酵素である。いくつかの態様において、細胞壁修飾酵素は、市販されている産物、例えば、Genencor, A Danisco Division, USから利用できるGC220またはNovozymes A/S, Denmarkから利用できるCELLUCLAST(登録商標)1.5LもしくはCELLUZYMETMである。
【0043】
エンド−グルカナーゼ(ECNo.3.2.1.4)は、セルロース、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース)、リケニンにおける1,4−ベータ−D−グリコシド結合、複合ベータ−1,3グルカン、例えば、穀物ベータ−D−グルカンまたはキシログルカンおよびセルロース部分を含む他の植物原料におけるベータ−1,4結合の内部加水分解(endo hydrolysis)を触媒する。公認名は、エンド1,4−ベータ−D−グルカン 4−グルカノヒドロラーゼであるが、略語エンド−グルカナーゼが本明細書において使用される。エンド−グルカナーゼ活性は、Ghose, 1987, Pure and Appl. Chem. 59: 257-268の方法にしたがってカルボキシメチルセルロース(CMC)加水分解を使用して測定され得る。
【0044】
いくつかの態様において、エンド−グルカナーゼは、トリコデルマ属の株、例えば、トリコデルマ・リーゼイの株、フミコーラ属の株、例えば、フミコーラ・インソレンスの株、またはクリソスポリウム(Chrysosporium)の株、好ましくはクリソスポリウム・ラクノウェンス(Chrysosporium lucknowense)の株由来であり得る。
【0045】
「セロビオヒドロラーゼ」なる用語は、セルロース、セロオリゴ糖、またはあらゆるベータ−1,4−連結グルコース含有ポリマーにおける1,4−ベータ−D−グルコシド結合の加水分解を触媒し、鎖の還元または非還元末端からセロビオースを遊離する1,4−ベータ−D−グルカンセロビオヒドロラーゼ(E.C.3.2.1.91)を意味する。
【0046】
セロビオヒドロラーゼ(cellobiohydrolose)の例は、上記のもの、例えば、トリコデルマ・リーゼイ、フミコーラ・インソレンス由来のCBHIおよびCBHIlならびにチエラビア・テレストリス(Thielavia teπrestris)セロビオヒドロラーゼ由来のCBHIl(CELL6A)である。
【0047】
セロビオヒドロラーゼ活性は、Leverら., 1972, Anal. Biochem. 47: 273-279およびvan Tilbeurghら., 1982, FEBS Letters 149: 152-156; van Tilbeurgh and Claeyssens, 1985, FEBS Letters 187: 283-288により記載されている方法にしたがって測定され得る。Leverらの方法は、トウモロコシ茎葉におけるセルロースの加水分解を評価するために適当であり、van Tilbeurghらの方法は、蛍光二糖類誘導体におけるセロビオヒドロラーゼ活性を測定するために適当である。
【0048】
「ベータ−グルコシダーゼ」なる用語は、ベータ−D−グルコースの遊離を伴う末端の非還元ベータ−D−グルコース残基の加水分解を触媒するベータ−D−グルコシド グルコヒドロラーゼ(E.C.3.2.1.21)を意味する。本発明の目的のために、ベータ−グルコシダーゼ活性は、異なる条件が本明細書に記載されているとおりに使用されることを除いて、Venturiら., 2002, J. Basic Microbiol. 42: 55-66により記載されている基本的方法にしたがって測定される。ベータ−グルコシダーゼ活性の1ユニットは、100mMのクエン酸ナトリウム、0.01%のTWEEN(登録商標)20中で基質として4mMのp−ニトロフェニル−ベータ−D−グルコピラノシドから500Cで、pH5で1分あたり生産される1.0μmolのp−ニトロフェノールとして定義される。
【0049】
いくつかの態様において、ベータ−グルコシダーゼは、真菌起源、例えば、トリコデルマ、アスペルギルスまたはペニシリウム属の株のものである。いくつかの態様において、ベータ−グルコシダーゼは、トリコデルマ・リーゼイ由来であり、例えば、bgl1遺伝子によってコードされるベータ−グルコシダーゼである(EP562003参照)。他の態様において、ベータ−グルコシダーゼは、アスペルギルス・オリザエ(Aspergillus oryzae)(WO02/095014にしたがってアスペルギルス・オリザエにおいて組換え的に生産される)、アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)(WO02/095014の実施例22にしたがってアスペルギルス・オリザエにおいて組換え的に生産される)または黒色アスペルギルス(1981, J. Appl. 3: 157-163)由来である。
【0050】
本明細書において使用される「ヘミセルロース分解酵素(hemicellulolvtic 酵素)」または「ヘミセルラーゼ」なる用語は、ヘミセルロースを分解し得る酵素を示す。
【0051】
好ましくはアラビノキシランオリゴ糖への、ヘミセルロースの加水分解における使用のために適当なあらゆるヘミセルラーゼが使用され得る。好ましいヘミセルラーゼは、キシラナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、フェルロイルエステラーゼ、グルクロニダーゼ、ガラクタナーゼ、エンド−ガラクタナーゼ、マンナーゼ、エンドもしくはエキソアラビナーゼ、エキソ−ガラクタナーゼ、ペクチナーゼ、キシログルカナーゼ、または2つ以上のそれらの混合物を含む。本発明における使用のために適当なヘミセルラーゼの例は、Grindamyl Powerbake 930(Danisco A/S, Denmarkから利用できる)またはVISCOZYM ETM(Novozymes A/S, Denmarkから利用できる)を含む。1つの態様において、ヘミセルラーゼはキシラナーゼである。1つの態様において、キシラナーゼは、微生物起源、例えば、真菌起源(例えば、トリコデルマ、メリピルス(Meripilus)、フミコーラ、アスペルギルス、フザリウム)または細菌(例えば、バチルス)由来である。いくつかの態様において、キシラナーゼは、糸状菌由来、好ましくはアスペルギルスの株、例えば、アスペルギルス・アクレアータス(Aspergillus aculeatus)、またはフミコーラの株、好ましくはフミコーラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)由来である。キシラナーゼは、好ましくはエンド1,4−ベータ−キシラナーゼ、さらに好ましくはGH10またはGH11のエンド1,4−ベータ−キシラナーゼであり得る。市販のキシラナーゼの例は、Danisco A/S, DenmarkからのGrindamyl H121もしくはGrindamyl Powerbake 930またはNovozymes A/S, DenmarkからのSHEARZYMETMおよびBIOFEED WHEATTMを含む。
【0052】
アラビノフラノシダーゼ(EC3.2.1.55)は、アルファ−L−アラビノシドにおける末端の非還元アルファ−L−アラビノフラノシド残基の加水分解を触媒する。アラビノガラクタン エンド−1,4−ベータ−ガラクトシダーゼであるガラクタナーゼ(EC3.2.1.89)は、アラビノガラクタンにおける1,4−D−ガラクトシド結合の内部加水分解を触媒する。
【0053】
ペクチナーゼ(EC3.2.1.15)は、ペクチン酸塩における1,4−アルファ−D−ガラクトシドウロン(galactosiduronic)結合および他のガラクツロナンの加水分解を触媒する。
キシログルカナーゼは、キシログルカンの加水分解を触媒する。
【0054】
本明細書において使用される「キシラナーゼ」なる用語は、キシランまたはアラビノキシランの非末端ベータ−D−キシロピラノシル−1,4−ベータ−D−キシロピラノシル単位におけるベータ−1,4グリコシル結合を加水分解することができる酵素を示す。他の名前は、1,4−ベータ−D−キシラン キシラノヒドロラーゼ、1,4−ベータ−キシラン キシラノヒドロラーゼ、ベータ−1,4−キシラン キシラノヒドロラーゼ、(1−4)−ベータ−キシラン 4−キシラノヒドロラーゼ、エンド−1,4−ベータ−キシラナーゼ、エンド−(1−4)−ベータ−キシラナーゼ、エンド−ベータ−1,4−キシラナーゼ、エンド−1,4−ベータ−D−キシラナーゼ、エンド−1,4−キシラナーゼ、キシラナーゼ、ベータ−1,4−キシラナーゼ、ベータ−キシラナーゼ、ベータ−D−キシラナーゼを含む。キシラナーゼは、種々の生物、例えば、植物、真菌(例えば、アスペルギルス、ペニシリウム、ディスポロトリカム(Disporotrichum)、アカパンカビ、フザリウム、フミコーラ、トリコデルマの種)または細菌種(例えば、バチルス、アエロモナス、ストレプトマイセス、ノカルジオプシス、サーモミセス(Thermomyces)の種)(例えば、WO92/17573、WO92/01793、WO91/19782、WO94/21785参照)由来であり得る。
【0055】
本発明の1つの局面において、本発明の方法において使用されるキシラナーゼは、EC3.2.1.8として分類される酵素である。正式名称はエンド−1,4−ベータ−キシラナーゼである。組織名は1,4−ベータ−D−キシラン キシラノヒドロラーゼである。他の名前は、例えば、エンド−(1−4)−ベータ−キシラナーゼ、(1−4)−ベータ−キシラン 4−キシラノヒドロラーゼ、エンド−1,4−キシラナーゼ、キシラナーゼ、ベータ−1,4−キシラナーゼ、エンド−1,4−キシラナーゼ、エンド−ベータ−1,4−キシラナーゼ、エンド−1,4−ベータ−D−キシラナーゼ、1,4−ベータ−キシラン キシラノヒドロラーゼ、ベータ−キシラナーゼ、ベータ−1,4−キシラン キシラノヒドロラーゼ、エンド−1,4−ベータ−キシラナーゼ、ベータ−D−キシラナーゼで使用され得る。触媒される反応は、キシランにおける1,4−ベータ−D−キシロシド結合の内部加水分解である。
【0056】
本発明の1つの局面において、本発明のキシラナーゼは、グリコシドヒドロラーゼ(hydrolyase)(GH)ファミリー11のキシラナーゼである。「グリコシドヒドロラーゼ(GH)ファミリー11」なる用語は、問題になっているキシラナーゼがGHファミリー11に分類されるか、または分類され得ることを意味する。
【0057】
本発明の1つの局面において、本発明において使用されるキシラナーゼは、本明細書に記載されている「キシラナーゼアッセイ」において測定されるとき、キシラナーゼ活性を有するキシラナーゼである。
【0058】
Cazy(ModO)サイトにしたがって、ファミリー11グリコシドヒドロラーゼは以下のとおりに特徴付けることができる:
既知の活性:キシラナーゼ(EC3.2.1.8
メカニズム:維持
触媒求核原子/塩基:Glu(実験的)
触媒プロトン供与体:Glu(実験的)
3D構造状態:折り畳み:β−ゼリーロール
クラン:GH−C
【0059】
本明細書において使用される「クランC」は、共通の三次元折り畳みおよび同一の触媒機構を共有するファミリーのグループを示す(例えば、Henrissat, B. and Bairoch, A., (1996) Biochem. J.,316, 695-696参照)。
【0060】
本明細書において使用される「ファミリー11」は、Henrissat and Bairoch (1993) Biochem J.,293,781-788(Henrissat and Davies (1997) Current Opinion in Structural Biol. 1997, &:637-644も参照)により確立されている酵素のファミリーを示す。ファミリー11メンバーの一般的な特性は、高い遺伝的相同性、約20kDaのサイズおよび二重置換触媒メカニズムを含む(Tenkanenら., 1992; Wakarchukら., 1994参照)。ファミリー11キシラナーゼの構造は、β−鎖から作られる2つの大型のβ−シートおよびα−ヘリックスを含む。
【0061】
ファミリー11キシラナーゼは、黒色アスペルギルス(Aspergillus niger)XynA、アスペルギルス・カワチ(Aspergillus kawachii)XynC、アスペルギルス・ツビゲンシス(Aspergillus tubigensis)XynA、バチルス・シルクランス(Bacillus circulans)XynA、バチルスプンジルス(Bacilluspunzilus)XynA、枯草菌XynA、ネオカリマスチクスフロンタリス(Neocalliniastix patriciarum)XynA、ストレプトミセス・リビダンス(Streptomyces lividans)XynB、ストレプトミセス・リビダンスXynC、ストレプトミセス・ゼリノビオラセウス(Streptomyces therinoviolaceus)XynII、好熱性放線菌XynA、トリコデルマ・ハルジアナム(Trichoderma harzianum)Xyn、トリコデルマ・リーゼイXynI、トリコデルマ・リーゼイXynII、トリコデルマビリデ(Trichoderma viride)Xynを含む。
【0062】
本発明の文脈において、「デンプン修飾酵素」は、グルコシドにおけるα−1,3および/またはα−1,6グルコシド結合の加水分解を触媒するあらゆる酵素を示す。この用語に包含されるものは、一般的に作用する基質にちなんで命名されるグリコシドヒドロラーゼである。本発明のいくつかの態様において、「デンプン修飾酵素」は、ラクターゼ、アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼ、キチナーゼ、スクラーゼ、マルターゼ、ノイラミニダーゼ、インベルターゼ、ヒアルロニダーゼおよびリゾチームから選択される。
【0063】
いくつかの態様において、デンプン修飾酵素はデンプン脱分枝酵素である。
本発明の1つの局面において、本発明において使用されるデンプン修飾酵素は、本明細書に記載されている「デンプン脱分枝活性アッセイ」において測定されるとき、デンプン脱分枝活性を有する酵素である。
【0064】
デンプン脱分枝酵素は、プルラナーゼ(EC3.2.1.41)およびイソアミラーゼ(EC3.2.1.68)を含む。それらは、アミロペクチン、β−リミットデキストリンおよびプルランにおけるα−l,6−D−グルコシド分岐結合を加水分解する。イソアミラーゼは、プルランを攻撃するイソアミラーゼの無能力により、およびα−リミットデキストリンにおける限界作用により、プルラナーゼ(EC3.2.1.41)と区別することができる。
【0065】
「アミラーゼ」は、あらゆるアミラーゼ、例えば、グルコアミラーゼ、α−アミラーゼ、β−アミラーゼおよびバチルス属、例えば、バチルス・リケニホルミス(B. licheniformis)および枯草菌の野生型α−アミラーゼを含むことを意図する。「アミラーゼ」は、特に、デンプンの分解を触媒することができる酵素を意味する。アミラーゼは、デンプンにおけるα−D−(l→4)O−グリコシド結合を開裂するヒドロラーゼである。一般的に、α−アミラーゼ(EC3.2.1.1;(X−D−(1→4)−グルカン グルカノヒドロラーゼ)は、ランダム様式においてデンプン分子内のα−D−(l→4)O−グリコシド結合を開裂するエンド−作用性酵素として定義される。対照的に、エキソ−作用性デンプン分解酵素、例えば、β−アミラーゼ(EC3.2.1.2;α−D−(l→4)−グルカン マルトヒドロラーゼ)およびいくつかの産物特異的アミラーゼ様マルトース生成型(マルトース生成)α−アミラーゼ(EC3.2.1.133)は、基質の非還元末端からデンプン分子を開裂し、β−アミラーゼ、α−グルコシダーゼ(EC3.2.1.20;α−D−グルコシド グルコヒドロラーゼ)、グルコアミラーゼ(EC3.2.1.3;α−D−(l→4)−グルカン グルコヒドロラーゼ)および産物特異的アミラーゼは、デンプンからグルコースを生産することができる。
【0066】
「α−アミラーゼ変異体」、「α−アミラーゼ変異体ポリペプチド」および「変異体酵素」は、成熟体α−アミラーゼタンパク質のアミノ末端でアミノ酸残基を置き換えることにより修飾されているα−アミラーゼタンパク質を意味する。本明細書において使用される「親酵素」、「親配列」、「親ポリペプチド」、「野生型α−アミラーゼタンパク質」および「親ポリペプチド」は、α−アミラーゼ変異体ポリペプチドが由来する酵素およびポリペプチドを意味する。親酵素は、以前に組換え的に操作されている野生型酵素またはα−アミラーゼであり得る。α−アミラーゼ変異体は、α−アミラーゼ親ポリペプチドのシグナル配列において、またはα−アミラーゼ親ポリペプチドの他の場所において変異をさらに含むことができる。したがって、α−アミラーゼポリペプチドは、組換え的に操作された酵素であり得る。
【0067】
本発明の1つの局面において、本発明において使用されるα−アミラーゼは、本明細書に記載されている「α−アミラーゼアッセイ」において測定されるとき、α−アミラーゼ活性を有するα−アミラーゼである。
【0068】
本発明の1つの局面において、本発明において使用されるベータ−アミラーゼは、本明細書に記載されている「ベータ−アミラーゼアッセイ」において測定されるとき、ベータ−アミラーゼ活性を有するベータ−アミラーゼである。
【0069】
「プルラナーゼ」なる用語は、プルランを分解するデンプン分解内酵素である特定の種類のグルカナーゼを示す。それは、例えば、クレブシエラ(Klebsiella)属のグラム陰性菌により細胞外の細胞表面に固定されたリポタンパク質として生産される。しかしながら、グラム陽性菌は、分泌タンパク質としてプルラナーゼを生産する。I型プルラナーゼは、α−1,6結合を特異的に攻撃するが、II型プルラナーゼは、α−1,4結合も加水分解することができる。それは、また、いくつかの他の細菌および古細菌により生産される。プルラナーゼは、バイオテクノロジーにおいてデタージェントとして使用される。プルラナーゼ(EC3.2.1.41)は、プルラン−6−グルカノヒドロラーゼ(脱分枝酵素)としても知られている。プルランは、α−1,6−グルコシド結合により連結したマルトトリオース単位の鎖と考えられている。プルラナーゼは、プルラン(α−グルカン多糖類)を加水分解的に開裂する。
【0070】
「トランスグリコシル化酵素」は、トランスグルコシダーゼ活性を有するあらゆる酵素、例えば、トランスグルコシダーゼを示す。「トランスグルコシダーゼ」なる用語は、1,4−α−D−グルカンにおけるα−D−グルコシル残基を、遊離しているか、または1,4−α−D−グルカンと結合しているグルコースの第一ヒドロキシ基に移す酵素を示す。本明細書に記載されているトランスグルコシダーゼは、IUBMB酵素命名にしたがってEC2.4.1.24と記載されている活性を有する。本明細書に記載されているトランスグルコシダーゼの組織名は、1,4−α−D−グルカン、すなわち1,4−α−D−グルカン(D−グルコース)6−α−D−グルコシルトランスフェラーゼである。この酵素は、ある文献においてα−グルコシダーゼとして称されている。
【0071】
上記のとおり、トランスグルコシダーゼ酵素は、一般的に、IUBMB酵素命名にしたがってEC2.4.1.24として定義される、あるグルカンにおけるグルコシル残基をグルコースの第一ヒドロキシ基に移す活性を有する。いくつかの態様において、該酵素は、また、糖側鎖を切るか、または内部結合を開裂し、多糖類骨格を破壊することにより、天然ゴム多糖類(例えば、キサンタン、およびガラクトマンナン含有多糖類、例えば、グアーガムまたはライ豆ゴム)を分解する活性を有し得る。あらゆる適当なトランスグルコシダーゼ酵素が本発明における使用に認められる(例えば、Pazurら, Carbohydr. Res. 1986 149:137-47;およびNakamuraら, J. Biotechnol., 53:75-84, 1997参照)。いくつかの態様において、本発明における使用に認められるトランスグルコシダーゼ酵素は、市販されているものである(例えば、Megazyme, Wicklow, Ireland;またはDanisco US Inc., Genencor Division, Palo Alto, CAから得られる酵素を含むが、これらに限定されない)。いくつかの態様において、酵素は、トリコデルマ・リーゼイ細胞において生産される黒色アスペルギルス トランスグルコシダーゼである。いくつかのさらなる態様において、トランスグルコシダーゼは、野生型真菌トランスグルコシダーゼ(例えば、アクセス番号:D45356(GID:2645159;黒色アスペルギルス)、BAD06006.1(GID:4031328;アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori))、BAA08125.1{GlO:\054565;アスペルギルス・オリザエ)、XPJ)Ol 210809.1(GID:1 15492363;アスペルギルス・テレウス(Aspergillus terreus))、XP_001271891.1(GID:121707620;アスペルギルス・クラバタス(Aspergillus clavatus)、XPJ)01266999.1(GID:1 19500484;ネオサルトリア・フィシェリ(Neosartorya fischeri))、XP 75181 1.1(GID:70993928;アスペルギルス・フミガーツス)、XP_659621.1(GID:67523121;アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans))、XP_001216899.1(GID:115433524;アスペルギルス・テレウス)およびXPJ)01258585.1(GID:119473371;ネオサルトリア・フィシェリ)として、NCBIのGENBANK(登録商標)データベースにおいて寄託されているアミノ酸配列を有する真菌トランスグルコシダーゼを含むが、これらに限定されない)、または、野生型真菌トランスグルコシダーゼと少なくとも約70%同一、少なくとも約80%同一、少なくとも約85%同一、少なくとも約90%同一、少なくとも約95%同一または少なくとも約98%同一であるアミノ酸配列を有するそれらの変異体である。
【0072】
本発明の1つの局面において、本発明において使用されるトランスグルコシダーゼは、本明細書に記載されている「トランスグルコシダーゼアッセイ」において測定されるとき、トランスグルコシダーゼ活性を有するトランスグルコシダーゼである。
【0073】
本発明の酵素活性アッセイ
細胞壁可溶化アッセイ
好ましくは、ふすま溶解度は、以下のアッセイを使用して測定される。
【0074】
(0.1M)−リン酸水素二ナトリウム(0.2M)バッファー、pH5.0中の小麦ふすまの懸濁液を、1,33%のふすまの濃度(w/w)に調製する。この懸濁液から、750μlのアリコートを撹拌下でエッペンドルフチューブに移す。それぞれの基質チューブを40℃で5分間予め加熱する。そこに、250μlの酵素溶液を加え、基質1%の最終濃度を作る。各測定時間(0、30、60および240分)に対し、酵素濃度を増加させて(0,33;1,0および3,0μgの酵素/グラムふすま)、本発明の各酵素組成物から3つの希釈物(デュプリケート)を作る。ブランクとして、酵素組成物の熱変性した溶液を使用する。反応は、95℃でチューブをインキュベーターセットに移すことにより、所定の時間に終了する。全酵素反応が終了するまで、熱変性したサンプルを4℃で維持する。全酵素反応が終了したとき、エッペンドルフチューブを遠心し、透明な上清を得る。ふすまを可溶性にする酵素能力は、PAHBAHを使用して測定される末端基の還元の増加として示される(Lever、1972)。
【0075】
使用されるふすまが残留デンプンを含むとき、副活性、例えば、アミラーゼ活性が上記アッセイを妨げ得るため、ふすま可溶化アッセイは、精製された細胞壁修飾酵素(アミラーゼ活性を有さない)でのみ実施されるべきである。
【0076】
あるいは、可溶化度は、以下の方法にしたがって測定され得る。
植物原料、例えば、穀物ふすまの可溶化度は、不溶性植物原料を、酵素を有するか、または有さない抽出バッファー(一般的に、バッファー中10−25%のふすま(w/w))に懸濁し、懸濁液を撹拌下で摂氏40℃で制御時間(例えば、30から1440分)でインキュベートすることにより測定することができる。可溶化後、可溶化された原料を遠心分離(20分、25000×g、室温)により不溶性原料から分離する。上清中の乾物含有量を、サンプルの一部を凍結乾燥することにより、または含水量分析により(Moidture analyser, AND ML-50, Buch & Holm, Denmark)測定する。すべての抽出バッファーを、このプロトコールを使用して回収することはできないが、しかしながら、可溶性物質の濃度は、回収されなかった抽出バッファー中と回収された抽出バッファー中で同じであると考え、補正を使用された全抽出バッファーに対して行う。可溶性画分中の乾物含有量を測定しておき、試験に取り入れた植物原料の量および抽出バッファーの量を知っていると、可溶化度は以下の方程式を使用して決定することができる。
可溶化度=(((乾物のグラム/回収された上清のml)×(使用された抽出バッファーのml))×100%)/試験に取り入れた植物原料のグラム
【0077】
キシラナーゼアッセイ(エンド−β−1,4−キシラナーゼ活性)
このアッセイにおいてOD590=約0.7を得るように、サンプルをクエン酸(0.1M)−リン酸水素二ナトリウム(0.2M)バッファー、pH5.0に希釈した。サンプルの3つの異なる希釈物を5分40℃でプレインキュベートした。時間=5分で、1つのXylazyme錠剤(架橋され、染色されたキシラン基質、Megazyme, Bray, Ireland)を、1mlの反応容量の酵素溶液に加えた。時間=15分で、10mlの2%のTRIS/NaOH、pH12を加えることにより反応を終了した。ブランクは、酵素溶液の代わりに1000μlのバッファーを使用して調製した。反応混合物を遠心し(1500×g、10分、20℃)、上清のODを590nmで測定した。1つのキシラナーゼユニット(XU)は、1分あたりOD590が0.025増加するキシラナーゼ活性として定義される。
【0078】
α−アミラーゼ活性:
α−アミラーゼは、α−D−1,4−グルコシド結合を加水分解し、その活性は、アルファ1,4−D−結合の加水分解によるデンプン−ヨウ素溶液の色の変化率として検出することができる。
【0079】
ベータ−アミラーゼ活性:
ベータ−アミラーゼ活性は、デンプン溶液の非還元末端からのマルトースの遊離として測定することができる。
【0080】
トランスグルコシダーゼ活性:
トランスグルコシダーゼは、α−D−グルコオリゴ糖とのインキュベーションにおける加水分解および移動反応の両方を触媒する。トランスグルコシダーゼ活性は、マルトースまたはマルトデキストリンとのインキュベーション時のイソマルトオリゴ糖、例えば、イソマルトース、パノース(pansose)およびイソマルトトリオースの生成として測定することができる。
【0081】
デンプン脱分枝活性アッセイ:
現在、デンプンにおけるα−D−1,6グルコシド結合に対して特異的な酵素は、イソアミラーゼ(EC3.2.1.68)およびプルラナーゼ(EC3.2.1.41)を含む。デンプンのα−D−1,6グルコシド結合に作用する酵素は、また、プルランに対するそれらの活性により分類され、それらの活性は、デンプンおよびプルランのα−D−1,6グルコシド結合の特異的加水分解として測定される。
【0082】
本明細書において使用される「脂質修飾酵素」なる用語は、脂質を修飾することができるあらゆる酵素を示す。
いくつかの好ましい態様において、脂質修飾酵素は脂肪分解酵素、例えば、リパーゼである。
【0083】
本明細書において使用される「脂肪分解酵素」なる用語は、商業的な価値を提供する穀物副生産物内の機能性脂質の形成をもたらすことができる、植物原料、例えば、穀物副生産物に存在する脂質由来の1またはそれ以上の脂肪酸を加水分解するあらゆる酵素を示す。最も有意な機能効果に寄与する分子は、部分的加水分解産物である乳化剤特性を有する分子、例えば、リゾ−リン脂質、リゾ−糖脂質およびモノ−グリセリド分子である。極性脂質加水分解産物、例えば、リゾ−リン脂質およびリゾ−糖脂質は特に有利である。パン作りにおいて、乳化剤、例えば、DATEMと同等の機能性を与えることができる。
【0084】
穀物副生産物中のリパーゼに対する基質は、極性および非極性脂質の複合混合物であるふすま脂質である。極性脂質は糖脂質およびリン脂質に分けることができる。これらの脂質は、2つの脂肪酸および1つの極性基でエステル化されたグリセロールでできている。極性基は、これらの脂質の表面活性に寄与する。これらの脂質における1つの脂肪酸の酵素開裂は、非常に高い表面活性を有する脂質をもたらす。高い表面活性を有する乳化剤、例えば、DATEMが、食材に加えられたとき、非常に機能的であることがよく知られている。
【0085】
ドー製品におけるリパーゼ(E.C.3.1.1.X)の使用は、酵母活性において有害な影響、および/またはパン体積において悪影響を及ぼし得る。パン体積における悪影響は、しばしば、過剰添加(overdosing)により説明される。過剰添加は、グルテン弾性を低下させ、非常に堅いドーをもたらし、したがってパン体積の減少をもたらし得る。加えて、またはあるいは、このようなリパーゼは、ドーに添加されたショートニング、油または乳脂肪を分解し、ドーおよびベークド製品(baked product)に異臭をもたらし得る。過剰添加および異臭は、ドー中の遊離脂肪酸の蓄積に起因している。本発明に関して、リパーゼは、例えば穀物ふすま懸濁液として穀物副生産物に加えられ、次に機能性脂質が穀物ふすま懸濁液中で生じ、さらに処理されて、またはさらなる処理なしでドー改良剤として使用されるので、これらの望ましくない効果を回避することができる。さらなるプロセスは、機能性脂質の希釈、精製であり得る。さらに、機能性脂質は、脂質製品または乾燥製品、例えば、凍結乾燥製品として提供するために処理され得る。
【0086】
EP1193314、EP0977869、WO02/094123、WO00/32758および、また、WO01/39602において、部分的加水分解産物であるリゾ−糖脂質が非常に高い乳化剤機能性を有し、遊離脂肪酸の有害な蓄積と比較してプラスの乳化剤機能性の割合が明らかにより高くなることが見出されたため、糖脂質に作用する脂肪分解酵素の使用は、パン作りの適用において特に有益であることが報告された。しかしながら、該酵素は、また、トリグリセリドに対してかなり非選択的な活性を有し、不必要に高い遊離脂肪酸を生じることが見出された。パン作りにおけるリパーゼのさらなる適用は、ドーへのリパーゼの添加、次にドー中の乳化剤のin−situ産生である。
【0087】
リパーゼは、あらゆる起源、例えば、動物起源(例えば、哺乳動物)、例えば、膵臓(例えば、ウシまたはブタ膵臓)由来、またはヘビ毒もしくはハチ毒であり得る。あるいは、リパーゼは、微生物起源、例えば、糸状菌(filamentous fungi)、酵母菌または細菌、例えば、アスペルギルス属もしくは種、例えば、A.ニガー(niger)、ジクトステリウム(Dictyostelium)、例えば、キイロタマホコリカビ(D. discoideum);マグナポルテ、例えば、M.グリセア(grisae)、ムコール(Mucor)、例えば、M.ジャバニクス(javanicus)、M.ムセウド(mucedo)、M.スブチリシムス(subtilissimus);ニューロスポラ(Neurospora)、例えば、N.クラッサ(crassa);リゾムコール(Rhizomucor)、例えば、R.プシラス(pusillus);リゾプス(Rhizopus)、例えば、R.アルヒザス(arrhizus)、R.ジャポニクス(japonicus)、R.ストロニファー(stolonifer)、スクレロティニア(Sclerotinia)、例えば、S.リベルティアナ(libertiana);トリコフィトン(Trichophyton)、例えば、T.ルブラム(rubrum);フェトゼリニア(Whetzelinia)、例えば、W.スクレチオラム(sclerotiorum);バチルス(Bacillus)、例えば、B.メガテリウム(megaterium)、枯草菌;シトロバクター(Citrobacter)、例えば、C.フロインディ(freundii);エンテロバクター(Enterobacter)、例えば、E.アエロゲネス(aerogenes)、E.クロアカエ(cloacae)、エドワードシエラ(Edwardsiella)、E.タルダ(tarda);エルウィニア(Erwinia)、例えば、E.ヘルビコラ(herbicola);エシェリキア(Escherichia)、例えば、大腸菌;クレブシエラ、例えば、K.プエウモニアエ(pneumoniae);プロテウス(Proteus)、例えば、P.ブルガリス(vulgaris);プロビデンシア(Providencia)、例えば、P.スチュアルティ(stuartii);サルモネラ、例えば、S.チフムリウム(typhimurium);セラシア(Serratia)、例えば、S.リケファシエンス(liquefasciens)、S.マルセスセンス(marcescens);シゲラ(Shigella)、例えば、S.フレックスネリ(flexneri);ストレプトマイセス(Streptomyces)、例えば、S.バイオラセオルバー(violeceoruber)、エルシニア(Yersinia)、例えば、Y.エンテロコリチカ(enterocolitica)由来であり得る。したがって、リパーゼは、真菌、例えば、核菌綱(Pyrenomycetes)、例えば、フザリウム属、例えば、F.クルモラム(culmorum)、F.ヘテロスポラム(heterosporum)、F.ソラニ(solani)またはF.オキシスポラム(oxysporum)の株由来であり得る。ホスホリパーゼは、また、アスペルギルス属内の糸状菌株、例えば、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フォエティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、黒色アスペルギルスまたはコウジ菌(Aspergillus oryzae)の株由来であり得る。
【0088】
脂肪分解酵素の市販の好ましい供給源は、微生物リパーゼまたはアシルトランスフェラーゼである。
【0089】
いくつかの態様において、リパーゼは、糸状菌、例えば、アスペルギルス属およびフザリウム属由来である。糸状菌から単離されたリパーゼは、産業的に適用できる特性を有することが分かっており、また、異種生産系、例えば、コウジ菌、フザリウムおよび酵母において発現するすることが慣例であることが分かっている。
【0090】
いくつかの態様において、リパーゼは、EP1433852(この特許は出典明示により本明細書に包含させる)に記載されているアスペルギルス・ツビンゲンシス(Aspergillus tubingensis)由来である。
【0091】
いくつかの態様において、リパーゼは、EP1722636(この特許は出典明示により本明細書に包含させる)に記載されているフザリウム・ヘテロスポラム(Fusarium heterosporum)由来である。
【0092】
いくつかの態様において、リパーゼは、EP0130064またはHoshinoら. (1992) Biosci. Biotech. Biochem 56: 660-664において特定されているフザリウム・オキシスポラム(Fusarium oxysporum)由来である。
【0093】
いくつかの態様において、リパーゼは、ブタ膵臓ホスホリパーゼA2、例えば、黒色アスペルギルスにおいて発現するもの(Cakezyme(TM)、DSM)である。
【0094】
いくつかの態様において、リパーゼはEP0869167に記載されており、フザリウム・オキシスポラムリパーゼのクローニングおよび発現ならびにベーキングにおけるその使用が記載されている。該酵素はホスホリパーゼ活性を有すると記載されている。該酵素は、現在、Novozymes A/S(Denmark)によりLipopan FTMとして販売されている。
【0095】
いくつかの態様において、リパーゼはWO02/00852に記載されており、F.ベネナツム(venenatum)、F.スルフレウム(sulphureum)、A.バーケレヤナム(berkeleyanum)、F.クルモラム(culmorum)およびF.ソラニ(solani)から単離された5つのリパーゼ酵素およびそれらをコードするポリヌクレオチドが記載されている。全5つの酵素がトリアシルグリセロール加水分解活性、ホスホリパーゼおよびガラクトリパーゼ活性を有すると記載されている。3つの酵素はEP0869167に教示されるF.オキシスポラム酵素と同等の活性を有する:F.ベネナツム、F.スルフレウム、F.クルモラム。
【0096】
いくつかの態様において、脂質修飾酵素は脂肪分解酵素変異体である。特異的アミノ酸置換および融合を有する脂肪分解酵素変異体が生産されており、これらのいくつかは、野生型親酵素と比較して、極性脂質に対してより増強された活性を有する。WO01/39602は、SP979と称されるこのような変異体を記載しており、これはサーモマイセス・ラヌギノーサス(Thermomyces lanuginosus)リパーゼと、EP0869167に記載されているフザリウム・オキシスポラムリパーゼの融合物である。この変異体は、トリグリセリドと比較して、リン脂質および糖脂質に対して極めて高い活性比を有することが分かっている。
【0097】
いくつかの態様において、脂質修飾酵素は脂質アシルトランスフェラーゼである。
【0098】
本明細書において使用される「脂質アシルトランスフェラーゼ」なる用語は、リパーゼ活性(一般的にEnzyme Nomenclature Recommendations (1992) of the Nomenclature Committee of the International Union of Biochemistry and Molecular BiologyにしたがってE.C.3.1.1.xとして分類される)、また、アシルトランスフェラーゼ活性(一般的にE.C.2.3.1.xとして分類される)を有し、それにより、該酵素は脂質から1またはそれ以上の受容体基質、例えば、1またはそれ以上の以下のもの、ステロール、スタノール、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット、グリセロールにアシル基を移動させることが可能である酵素を意味する。
【0099】
いくつかの態様において、本発明の方法における使用および/または使用のための脂質アシルトランスフェラーゼは、脂質(本明細書において定義されているとおり)から1またはそれ以上の以下のアシル受容体基質、ステロール、スタノール、炭水化物、タンパク質またはそのサブユニット、またはグリセロールにアシル基を移動することができる。
【0100】
いくつかの局面において、アシル受容体は、ヒドロキシ基(−OH)、例えば、グリセロールを含む多価アルコール、ステロール、スタノール、炭水化物、フルーツ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸およびアスコルビン酸を含むヒドロキシ酸、タンパク質またはそのサブユニット、例えば、アミノ酸、タンパク質加水分解物およびペプチド(部分的に加水分解されたタンパク質)、および、例えば、それらの混合物および誘導体を含むあらゆる化合物であり得る。
【0101】
いくつかの態様において、本発明において使用される脂質アシルトランスフェラーゼが作用する脂質基質は、例えば、1またはそれ以上の以下の脂質、リン脂質、例えば、レシチン、例えば、ホスファチジルコリン、トリアシルグリセリド、カルジオリピン、ジグリセリド、または糖脂質、例えば、ジガラクトシルジグリセリド(DGDG)である。本明細書において使用されるレシチンなる用語は、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリンおよびホスファチジルグリセロールを含む。
【0102】
いくつかの局面において、好ましくは、脂質アシルトランスフェラーゼが作用する脂質基質は、リン脂質、例えば、レシチン、例えば、ホスファチジルコリンまたはホスファチジルイノシトールである。
【0103】
いくつかの態様において、脂質基質は、食物脂質、すなわち食材の脂質成分である。
【0104】
適当には、本発明において使用される脂質アシルトランスフェラーゼは、1またはそれ以上の以下のリパーゼ活性、グリコリパーゼ活性(E.C.3.1.1.26)、トリアシルグリセロールリパーゼ活性(E.C.3.1.1.3)、ホスホリパーゼA2活性(E.C.3.1.1.4)またはホスホリパーゼA1活性(E.C.3.1.1.32)を示し得る。本明細書において使用される「グリコリパーゼ活性」なる用語は、「ガラクトリパーゼ活性」を含む。
【0105】
適当には、本発明において使用される脂質アシルトランスフェラーゼは、少なくとも1またはそれ以上の以下の活性、グリコリパーゼ活性(E.C.3.1.1.26)および/またはホスホリパーゼA1活性(E.C.3.1.1.32)および/またはホスホリパーゼA2活性(E.C.3.1.1.4)を有し得る。
【0106】
いくつかの局面において、好ましくは、本発明において使用される脂質アシルトランスフェラーゼは、糖脂質および/またはリン脂質からステロールおよび/またはスタノールにアシル基を移動させ、少なくともステロールエステルおよび/またはスタノールエステルを形成することができる。
【0107】
適当なステロールアシル受容体は、コレステロールおよび植物ステロール、例えば、アルファ−シトステロール、ベータ−シトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、カンペステロール、5,6−ジヒドロステロール、ブラシカステロール、アルファ−スピナステロール、ベータ−スピナステロール、ガンマ−スピナステロール、デルタスピナステロール、フコステロール、デスモステロール、アスコステロール、セレビステロール、エピステロール、アナステロール(anasterol)、ハイポステロール(hyposterol)、コンドリラステロール、デスモステロール、カリノステロール(chalinosterol)、ポリフェラステロール、クリオナステロール、ステロールグリコシド、および他の天然または合成異性体および誘導体を含む。
【0108】
1つの局面において、好ましくは、アシル受容体は、1またはそれ以上のアルファ−シトステロール、ベータ−シトステロール、スチグマステロール、エルゴステロール、ベータ−シトスタノール、ss−シトスタノールまたはカンペステロールである。
【0109】
いくつかの局面において、好ましくは、本発明において使用される脂質アシルトランスフェラーゼは、糖脂質および/またはリン脂質からグリセロールにアシル基を移動させ、少なくともジグリセリドおよび/またはモノグリセリドを形成することができる。
【0110】
いくつかの局面において、脂質含有植物原料に存在する1またはそれ以上のステロールは、脂質アシルトランスフェラーゼが本発明にしたがって添加される前に、または同時に、1またはそれ以上のスタノールに変換され得る。ステロールをスタノールに変換するための任意の適当な方法が使用され得る。例えば、該変換は、例えば、化学的水素化により実施され得る。該変換は、本発明の脂質アシルトランスフェラーゼの添加前に、または本発明の脂質アシルトランスフェラーゼの添加と同時に実施され得る。適当には、スタノールへのステロールの変換のための酵素は、WO00/061771に教示されている。
【0111】
適当には、本発明は、脂質植物原料において植物スタノールエステルを生産するために使用され得る。植物スタノールエステルは、脂質膜を介する増加した溶解度、バイオアベイラビリティ、増強した健康上の利益を有する(例えば、WO92/99640参照)。
【0112】
アシルトランスフェラーゼ活性%の測定のためのプロトコール:
本発明において脂質アシルトランスフェラーゼが加えられる脂質含有植物原料は、酵素反応後にCHCl:CHOH 2:1で抽出され、詳細な本明細書の以下の工程にしたがって、脂質材料を含む有機相が単離され、GLCおよびHPLCにより分析され得る。GLCおよびHPLC分析から、遊離脂肪酸および1またはそれ以上のステロール/スタノールエステル、炭水化物エステル、タンパク質エステル、ジグリセリド、またはモノグリセリドの量を測定する。酵素が加えられていない脂質含有植物原料の対照を同じ方法において分析する。
【0113】
計算:
GLCおよびHPLC分析の結果から、遊離脂肪酸およびステロール/スタノールエステルおよび/または炭水化物エステルおよび/またはタンパク質エステルおよび/またはジグリセリドおよび/またはモノグリセリドの増加を、計算することができる。
Δ%脂肪酸=%脂肪酸(酵素)−%脂肪酸(対照);Mv脂肪酸=脂肪酸の平均分子量;
A=Δ%ステロールエステル/Mvステロールエステル(ここで、Δ%ステロールエステル=ステロール/%スタノールエステル(酵素)−%ステロール/スタノールエステル(対照)およびMvステロールエステル=ステロール/スタノールエステルの平均分子量)−アシル受容体がステロールおよび/またはスタノールである場合に適用可能;
B=Δ%炭水化物エステル/Mv炭水化物エステル(ここで、Δ%炭水化物エステル=%炭水化物エステル(酵素)−%炭水化物エステル(対照)およびMv炭水化物エステル=炭水化物エステルの平均分子量)−アシル受容体が炭水化物である場合に適用可能;
C=Δ%タンパク質エステル/Mvタンパク質エステル(ここで、Δ%タンパク質エステル=%タンパク質エステル(酵素)−%タンパク質エステル(対照)およびMvタンパク質エステル=タンパク質エステルの平均分子量)−アシル受容体がタンパク質である場合に適用可能;ならびに
D=ジグリセリドおよび/またはモノグリセリド/Mvジ/モノグリセリドの絶対値(ここで、Δ%ジグリセリドおよび/またはモノグリセリド=%ジグリセリドおよび/またはモノグリセリド(酵素)−%ジグリセリドおよび/またはモノグリセリド(対照)ならびにMvジ/モノグリセリド=ジグリセリドおよび/またはモノグリセリドの平均分子量)−アシル受容体がグリセリンである場合に適用可能。
【0114】
トランスフェラーゼ活性は、全酵素活性のパーセントとして計算される。
%トランスフェラーゼ活性=+B+C+D×100
+B+C+D+Δ%脂肪酸/(Mv脂肪酸)
−適宜削除)
【0115】
好ましい局面において、本発明は、脂質が脂肪分解酵素の作用により機能性脂質に修飾されている脂質含有植物原料を提供する。これは、機能性脂質を精製するか、または精製しないで食材成分として使用することができる。
【0116】
適当には、本明細書において使用される「食材」なる用語は、消費する準備ができている形態における食材を意味し得る。しかしながら、あるいは、または加えて、本明細書において使用される食材なる用語は、食材の製造において使用される1またはそれ以上の食品材料を意味し得る。ほんの一例として、食材なる用語は、ドーから生産されるベークド食品ならびに該ベークド食品の製造において使用されるドーの両方を含む。
【0117】
適当には、本明細書において使用される「食材」なる用語は、ヒトおよび/または動物消費に適当である物質を意味する。
【0118】
他の局面において、本発明における食材は動物飼料であり得る。
【0119】
いくつかの態様において、本発明において使用される食材は、1またはそれ以上の以下のものから選択される。卵、卵ベースの製品、例えば、限定はしないが、マヨネーズ、サラダドレッシング、ソース、アイスクリーム、卵粉、改質卵黄およびこれらでできた製品、ベークド製品、例えば、パン、ケーキ、甘いドー製品、層状のドー、液状バター、マフィン、ドーナツ、ビスケット、クラッカーおよびクッキー、菓子、例えば、チョコレート、キャンディ、キャラメル、ハラワ(halawa)、ガム、例えば、無糖ガムおよび砂糖入りガム、風船ガム、ソフト風船ガム、チューインガムおよびプディング、冷凍製品、例えば、シャーベット、好ましくは冷凍乳製品、例えば、アイスクリームおよびアイスミルク、乳製品、例えば、チーズ、バター、ミルク、コーヒークリーム、ホイップクリーム、カスタードクリーム、乳飲料およびヨーグルト、ムース、ホイップ野菜クリーム、肉製品、例えば、加工肉製品、食用油および脂肪、発泡および非発泡ホイップ製品、水中油型エマルジョン、油中水型エマルジョン、マーガリン、ショートニングおよびスプレッド(spread)、例えば、低脂肪および超低脂肪スプレッド、ドレッシング、マヨネーズ、ディップ(dip)、クリームベースのソース、クリームベースのスープ、飲料、スパイスエマルジョンおよびソース。
【0120】
適当には、本発明における食材は、「ファインフード」、例えば、ケーキ、ペストリー、菓子、チョコレート、ファッジなどであり得る。
【0121】
1つの局面において、本発明における食材は、ドー製品またはベークド製品、例えば、パン、フライ製品、スナック、ケーキ、パイ、ブラウニー(browny)、クッキー、めん、即席めん、トルティヤ、スナック類、例えば、クラッカー、グラハムクラッカー、プレッツェル、およびポテトチップ、およびパスタ、および朝食用のシリアルであり得る。
【0122】
さらなる局面において、本発明における食材は、植物由来の食品、例えば、穀粉、プレミックス(pre-mix)、油、脂肪、ココアバター、コーヒー用クリーム、サラダドレッシング、マーガリン、スプレッド、ピーナッツバター、ショートニング、アイスクリーム、料理用油であり得る。
【0123】
他の局面において、本発明における食材は、乳製品、例えば、バター、ミルク、クリーム、チーズ、例えば、種々の形態(細切り、ブロック、スライスまたは粉を含む)のナチュラル、プロセスおよび代用チーズ、クリームチーズ、アイスクリーム、凍結デザート、ヨーグルト、ヨーグルト飲料、バター脂肪、無水乳脂肪、他の乳製品であり得る。本発明において使用される酵素は、乳製品における脂肪安定性を改善し得る。
【0124】
他の局面において、本発明における食材は、動物由来の成分を含む食品、例えば、加工肉製品、料理用油、ショートニングであり得る。
【0125】
さらなる局面において、本発明における食材は、飲料、果実、混合果実、野菜またはワインであり得る。いくつかの場合において、飲料は、20g/lまでの本発明由来の添加植物ステロールを含み得る。
【0126】
他の局面において、本発明における食材は、動物飼料であり得る。動物飼料は、植物ステロールおよび/または植物スタノール、好ましくはベータ−シトステロール/スタノールで強化され得る。適当には、動物飼料は家禽飼料であり得る。食材が家禽飼料であるとき、本発明は、本発明の食材で飼育された家禽により生産される卵のコレステロール含有量を低くするために使用され得る。
【0127】
1つの局面において、好ましくは、食材は、1またはそれ以上の卵、卵ベース製品、例えば、マヨネーズ、サラダドレッシング、ソース、アイスクリーム、卵粉、改質卵黄およびそれらでできた製品から選択される。
【0128】
好ましくは、本発明の食材は、水含有食材である。適当には、食材は、10−98%、適当には14−98%、適当には18−98%、適当には20−98%、適当には40−98%、適当には50−98%、適当には70−98%、適当には75−98%の水を含み得る。
【0129】
本発明の1つの局面において、脂質含有植物原料から生産される機能性脂質は乳化剤である。好ましい、少なくとも1つの乳化剤は脂質含有植物原料において産生される。
【0130】
本発明の1つの局面において、少なくとも2つの異なる乳化剤は脂質含有原料において産生される。
【0131】
本発明の1つの局面において、少なくとも3つの異なる乳化剤は脂質含有原料において産生される。
【0132】
本発明の1つの局面において、少なくとも4つの乳化剤は脂質含有原料において産生される。
【0133】
適当には、本発明の乳化剤は、例えば、1またはそれ以上のジグリセリド、モノグリセリド、例えば、1−モノグリセリドまたはリゾレシチン、例えば、リゾホスファチジルコリンまたはホスファチジルイノシトール、例えば、ジガラクトシルモノグリセリド(DGMG)であり得る。乳化剤は、好ましくは、脂質アシル供与体から1またはそれ以上のアシル基の除去後に脂質アシル供与体から生産される。本明細書において使用されるリゾレシチンなる用語は、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リゾホスファチジルイノシトール、リゾホスファチジルセリンおよびリゾホスファチジルグリセロールを含む。本明細書において使用されるリゾホスファチジルコリンなる用語は、リゾレシチンなる用語と同義であり、これらの用語は、本明細書において互換的に使用され得る。
【0134】
乳化剤の1つがタンパク質エステルおよび/またはジグリセリドおよび/またはモノグリセリドであるとき、第2の乳化剤は、例えば、1またはそれ以上のジグリセリド、モノグリセリド、例えば、1−モノグリセリド、リゾホスファチジルコリン、またはジガラクトシルモノグリセリド(DGMG)であり得る。第2の乳化剤は、好ましくは、脂質アシル供与体から1またはそれ以上のアシル基の除去後に脂質アシル供与体から生産される。
【0135】
1つの態様において、本発明の産生された機能性脂質は、食材の製造のためのプロセスにおいて使用することができる。
【0136】
本発明の機能性脂質は、1またはそれ以上の他の適当な食品用酵素と共に使用され得る。したがって、本発明の機能性脂質に加えて、少なくとも1つのさらなる酵素が食材に加えられることは、本発明の範囲内にある。このようなさらなる酵素は、デンプン分解酵素、例えば、エンド−またはエキソアミラーゼ、プルラナーゼ、脱分枝酵素、ヘミセルラーゼ、例えば、キシラナーゼ、セルラーゼ、オキシドレダクターゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、スルフヒドリルオキシダーゼまたは炭水化物オキシダーゼ、例えば、マルトースを酸化する酵素、例えば、ヘキソースオキシダーゼ(HOX)、リパーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼおよびヘキソースオキシダーゼ、およびプロテアーゼを含む。
【0137】
本発明の機能性脂質を産生するために脂肪分解酵素で処理される脂質含有植物原料は、機能性脂質を精製することなく、または機能性脂質を限定的に精製して、1またはそれ以上の他の適当な食品用酵素と共に使用され得る。したがって、本発明の精製された、または精製されていない機能性脂質に加えて、少なくとも1つのさらなる酵素を食材に加えることは、本発明の範囲内にある。このようなさらなる酵素は、デンプン分解酵素、例えば、エンド−またはエキソアミラーゼ、プルラナーゼ、脱分枝酵素、ヘミセルラーゼ、例えば、キシラナーゼ、セルラーゼ、オキシドレダクターゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、スルフヒドリルオキシダーゼまたは炭水化物オキシダーゼ、例えば、マルトースを酸化する酵素、例えば、ヘキソースオキシダーゼ(HOX)、リパーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼおよびヘキソースオキシダーゼ、およびプロテアーゼを含む。
【0138】
1つの好ましい態様において、脂肪分解酵素は、1またはそれ以上のリパーゼ活性:グリコリパーゼ活性(E.C.3.1.1.26、トリアシルグリセロールリパーゼ活性(E.C.3.1.1.3)、ホスホリパーゼA2活性(E.C.3.1.1.4)またはホスホリパーゼA1活性(E.C.3.1.1.32)を有する。適当には、リパーゼ酵素は、当該分野でよく知られており、例として、以下のリパーゼ、Grindamyl Powerbake 4070 or 4080(Danisco A/S)、Lysomax Oil(Danisco A/S)、Lipopan(登録商標)F、Lipopan(登録商標)Xtra、および/またはLECITASE(登録商標)ULTRA(Novozymes A/S、Denmark)、ホスホリパーゼA2(例えば、BiocatalystsからのLIPOMODTM 22L、GenencorからのLIPOMAXTMのホスホリパーゼA2)、LIPOLASE(登録商標)(Novozymes A/S、Denmark)、PanomoreTM(DSM Nutritional Products)、WO03/97835、EP0977869またはEP1193314において教示されているリパーゼを含む。当業者は、脂肪分解酵素の割合を組み合わせることができる。
【0139】
伝統的に、ケーキ産業は、ケーキの生産のためにケーキ改良剤を使用して、味、構造、食感品質および外観に関して高品質を確実にしている。これらのケーキ改良剤は、通常、デンプンおよびマルトデキストリンのような担体上で噴霧乾燥された乳化剤に基づく。いくつかのケーキ改良剤は、また、乳化剤、糖および水に基づくゲル形態であり得る。これらのケーキ改良剤は、高品質のケーキを生産するために、ケーキ産業に対して非常に重要である。しかしながら、ケーキ改良剤は、乳化剤およびEナンバーの他の「非天然」成分を含む。消費者がEナンバーの数の削減を求めているために、ケーキ産業は、乳化剤を使用せず高品質のケーキを生産するための代替方法を求めている。
【0140】
本発明の機能性脂質を産生するために脂肪分解酵素で処理される脂質含有植物原料は、機能性脂質を精製することなく、または機能性脂質を限定的に精製して食物改良剤として、または完全に精製された機能性脂質として使用され得る。
【0141】
本発明の1つの局面において、食物改良剤はケーキ改良剤である。
本発明の1つの局面において、食物改良剤はパン改良剤である。
【0142】
本発明において産生される食物改良剤は、適当には、1またはそれ以上の以下の添加剤を含み得る。
大豆タンパク質材料;カロテノイド、フラボノイド(flavenoid)、抗酸化物質および植物化学物質(とりわけ、アントシアノナイド(anthocyanonide)、カロテノイド、ビオフラボノイド(bioflavinoid)、グルタチオン、カテキン、イソフラボン、リコピン、ジンセノサイド、ピクノジェノール、アルカロイド、ピジウム植物ステロール、スルフォラファン、レスベラトロール、ブドウ種抽出物またはスタノールエステルを含む食品)、ビタミン(とりわけビタミンC、ビタミンA、ビタミンB3、ビタミンD、ビタミンE、チアミン、リボフラビン、ナイアシン、ピリドキシン、シアノコバラミン、葉酸、ビオチン、パントテン酸またはビタミンK)、ミネラル(とりわけ、カルシウム、ヨウ素、マグネシウム、亜鉛、鉄、セレン、マンガン、クロミウム、銅、コバルト、モリブデンまたはリン)、脂肪酸(とりわけ、ガンマ−リノール酸、エイコサペンタエン酸またはドコサヘキサエン酸)、油(とりわけ、ルリヂサ油、高カロテノイドカノーラ油または亜麻油)、グルセロール(glucerol)、ソルビトール、アミノ酸(とりわけ、トリプトファン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、プロリン、ヒドロキシプロリン、セリン、タウリンまたはチロシン)、上記定義の酵素(とりわけ、ブロメライン、パパイン、アミラーゼ、セルラーゼまたは補酵素Q)、リグニン、スタノールエステルまたは良性細菌(とりわけ、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ビフィズス(Lactobacillus bifidus)、ラクトバチルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)またはストレプトコッカス・フェシウム(Streptococcus faecium))、葉酸、不溶性および/または可溶性繊維。
【0143】
本発明は、卵製品、特にマヨネーズにおいて、1またはそれ以上の以下の予測し得ない技術的効果、低温殺菌中の熱安定性の改善、官能特性の改善、粘稠性の改善を提供し得る。
【0144】
本発明は、ドーおよび/またはベークド製品において、1またはそれ以上の以下の以下の予測し得ない技術的効果、ドーまたはベークド製品(例えば、パンおよび/またはケーキ)の比体積の改善、ドー安定性の改善、皮の成績の改善(例えば、薄いおよび/またはぱりぱりしたパンの皮)、身の成績の改善(例えば、より均一な身の分布および/またはより細かい身の構造および/またはより柔らかい身)、外観の改善(例えば、ふくれ、もしくは穴のない、または実質的にふくれ、もしくは穴のない滑らかな表面)、劣化の減少、柔らかさの向上、匂いの改善、味の改善を提供し得る。
【0145】
遊離脂肪酸が対応する脂肪酸エステルよりも酸化されやすいため、機能性脂質は保存中に酸化する食材の能力を減少させる相当量の遊離脂肪酸を形成せずに、食材中で界面活性の高い材料として機能するので、本発明は、機能性脂質から有益な効果を提供し得る。
【0146】
さらなる局面において、本発明は、脂質含有植物原料において本発明の他の機能性化合物を産生するための脂肪分解酵素の使用を提供する。
【0147】
脂質含有植物原料に対する脂質修飾酵素、例えば、脂肪分解酵素の作用は、機能性脂質を産生するだけでなく、例えば、脂質から1またはそれ以上の他の受容体基質、例えば、1またはそれ以上のステロール、スタノール、炭水化物、タンパク質、タンパク質サブユニット、およびグリセロールにアシル基を移動させる脂質トランスフェラーゼの作用で、他の機能性化合物もまた産生させ得ると理解すべきである。
【0148】
いくつかの特定の態様において、本発明の方法において産生される機能性化合物は機能性エステルである。
いくつかの態様において、機能性脂質および他の機能性化合物の両方が本発明の方法により産生される。
【0149】
次に、本発明の方法により産生されるこれらの機能性化合物は、ドーの粘り気の減少、ドーの機械加工性の改良、ベークド製品のベーキング中のふくれの減少、パン体積および/または柔らかさの改善、ベークド製品および/またはドーの保存期間の延長、ベークド製品および/またはドーの抗劣化効果の改善、ベークド製品の身の構造の改善、ベークド製品の孔不均一性の減少、ベークド製品の孔均一性の改善、ベークド製品の平均孔サイズの減少、ドーのグルテン指数の増大、ベークド製品の風味および/または匂いの改善、ベークド製品の皮の色の改善の1またはそれ以上のために、該機能性化合物をドーに加え、(所望により)ドーを焼いてベークド製品を作ることを含むドーおよび/またはベークド製品の製造において使用され得る。
【0150】
1つの局面において、本発明の方法により産生される機能性化合物は、精製されるか、または部分的に精製される。
1つの局面において、本発明の方法により産生される機能性化合物は、食材における使用の前にさらに精製されない。
【0151】
1つの局面において、本発明の方法により産生される機能性化合物は、乾燥製品に調製される。
1つの局面において、機能性化合物は、食材における使用の前に濃縮されるか、または希釈される。
【0152】
本発明の他の局面において、本発明の機能性化合物をめんまたはめんのドーまたはめんベースの製品に加えることを含む、めんまたはめんのドーまたはめんベースの製品を製造する方法を提供する。
【0153】
本発明の1つの局面において、色/黄色の度合いの改善、色特性の安定化、明度の減少、脂肪含有量の減少、テクスチャーおよびかむこと(かみ応え)の改善、水活性の減少、破損の減少、中心硬度の増加および加工中の保形の改善の1またはそれ以上のための、めんまたはめんベースの製品の製造における本発明の機能性化合物の使用を提供する。
【0154】
本発明の他の局面において、本発明において産生される食物改良剤をトルティヤまたはトルティヤのドーへ加えることを含む、トルティヤまたはトルティヤのドーを製造する方法を提供する。
【0155】
本発明の他の局面において、本発明において産生される食物改良剤をパスタまたはパスタのドーへ加えることを含む、パスタまたは全穀物パスタまたはパスタのドーを製造する方法を提供する。
【0156】
本発明のさらなる局面は、トルティヤのころがり性の改善、トルティヤの柔軟性の増加、トルティヤおよび/またはトルティヤのドーの抗劣化特性の改善、トルティヤおよび/またはトルティヤのドーにおける柔らかさの改善および/または異臭の減少のためのトルティヤまたはトルティヤのドーの製造における本発明において産生される食物改良剤の使用を提供する。
【0157】
食物改良剤の機能性は、乳化剤、例えば、DATEMとの組み合わせにより改良され得る。
【0158】
適当には、本発明は、食材において、1またはそれ以上の以下の予測し得ない技術的効果、外観の改善、口当たりの改善、安定性の改善、特に、熱安定性の改善、味の改善、柔軟性の改善、弾性の改善、乳化の改善を提供し得る。
【0159】
適当には、本発明は、乳製品、例えば、アイスクリームにおいて、1またはそれ以上の以下の予測し得ない技術的効果、例えば、口当たりの改善(好ましくはよりクリーミーな口当たり)、味の改善、溶解の改善を提供し得る。
【0160】
適当には、本発明は、卵または卵製品において、1またはそれ以上の以下の予測し得ない技術的効果、エマルジョンの安定性の改善、エマルジョンの熱安定性、味の改善、悪臭の減少、濃化特性の改善、粘稠性の改善を提供し得る。
【0161】
食材の製造における本明細書において定義されているとおりの食物改良剤の使用と関連する特定の技術的効果は、以下の表に挙げられている。
【表1】

【表2】

【0162】
さらなる局面において、本発明は、機能性脂質を製造するプロセスにおける脂肪分解酵素の使用を提供する。
【0163】
本発明の他の局面において、本発明の脂肪分解酵素で脂質含有植物原料を処理することを含む、リゾリン脂質、例えば、リゾレシチンを製造するプロセスを提供する。
【0164】
さらなる局面において、本発明は、本発明の脂肪分解酵素での脂質含有植物原料の処理により、リゾ糖脂質(例えば、ジガラクトシルモノグリセリド(DGMG)またはモノガラクトシルモノグリセリド(MGMG))を製造するプロセスにおける脂肪分解酵素の使用を提供する。
【0165】
本発明のいくつかの態様において、少なくとも部分的に可溶化された脂質含有植物原料の液体懸濁液は本質的にデンプンを含まない。
【0166】
本発明のいくつかの態様において、少なくとも部分的に可溶化された脂質含有植物原料の液体懸濁液の約50%未満、例えば、約40%未満、例えば、約30%未満、例えば、約20%未満、例えば、約10%未満、例えば、約6%未満、例えば、約3%未満、例えば、約1%未満(w/w)は、デンプンまたはデンプンを含む成分、例えば、穀粉である。
【0167】
したがって、いくつかの態様において、酵素が本質的にデンプンを含まないか、または前工程からの残留デンプンのみを含む脂質含有植物原料に対して酵素効果を有するべきであると理解すべきである。本発明は、例えば、in situにおける酵素的パン作り適用において、さらなる添加穀粉調製物での組成物の酵素的処理を包含することを意図しない。
【0168】
ガラクトリパーゼ活性の測定(グリコリパーゼ活性アッセイ):
基質:
0.6%のジガラクトシルジグリセリド(Sigma D 4651)、0.4%のTriton−X100(Sigma X−100)および5mMのCaCl2を、0.05MのHEPESバッファー pH7に溶解させた。
【0169】
アッセイ手順:
400μLの基質を1.5mLエッペンドルフチューブに加え、エッペンドルフサーモミキサーに37℃で5分間置いた。時間t=0分に、50μLの酵素溶液を加えた。また、酵素の代わりに水を用いたブランクを分析した。サンプルを、エッペンドルフサーモミキサーに10*100rpmで37℃で10分間混合した。時間t=10分に、エッペンドルフチューブを別のサーモミキサーに99℃で10分間置き、反応を停止させた。
サンプル中の遊離脂肪酸をWAKO GmbHからのNEFA Cキットを使用することにより分析した。
pH7で酵素活性GLUをアッセイ条件下で1分当たりに生産された脂肪酸のマイクロモルとして計算した。
【0170】
ホスホリパーゼ活性の測定(ホスホリパーゼ活性アッセイ):
ホスホリパーゼ活性を、同程度の結果が得られる2つの異なる方法を使用して測定した。これらの方法のいずれかを使用して、本発明のホスホリパーゼ活性を決定することができる。
【0171】
ホスホリパーゼ活性の測定のための「PLUアッセイ」
基質:
0.6%のL−αホスファチジルコリン 95% Plant(Avanti #441601)、0.4%のTriton−X100(Sigma X−100)および5mMのCaClを0.05MのHEPESバッファー pH7に溶解した。
【0172】
アッセイ手順:
400μLの基質を1.5mLエッペンドルフチューブに加え、エッペンドルフサーモミキサーに37℃で5分間置いた。時間t=0分に、50μLの酵素溶液を加えた。また、酵素の代わりに水を用いたブランクを分析した。サンプルを、エッペンドルフサーモミキサーに10*100rpmで37℃で10分間混合した。時間t=10分に、エッペンドルフチューブを別のサーモミキサーに99℃で10分間置き、反応を停止させた。
サンプル中の遊離脂肪酸をWAKO GmbHからのNEFA Cキットを使用することにより分析した。
pH7で酵素活性PLU−7をアッセイ条件下で1分当たりに生産された脂肪酸のマイクロモルとして計算した。
【0173】
ホスホリパーゼ活性の測定のための「TIPUアッセイ」
1TIPU(滴定ホスホリパーゼ単位)は、アッセイ条件下で1分当たり1μmolの遊離脂肪酸を遊離させる酵素の量として定義する。
【0174】
ホスホリパーゼA1およびA2は、レシチンからリゾレシチンへの変換を触媒し、それぞれの位置1および2から遊離脂肪酸を放出する。ホスホリパーゼ活性は、アルカリの消費が遊離される脂肪酸の量と等しいため、酵素処理中にレシチンから遊離される脂肪酸の連続滴定により測定することができる。
【0175】
基質:
4%のレシチン、4%のTriton−X100、および6mMのCaCl2:12gのレシチン粉末(Avanti Polar Lipids #44160)および12gのTriton−X100(Merck 108643)を、マグネティックスターラーで撹拌しながら約200mlの脱塩水に分散させた。3.0mlの0.6MのCaCl2(p.a. Merck 1.02382)を加えた。体積を脱塩水で300mLに調節し、Ultra Thuraxを使用してエマルジョンを均一化した。基質を毎日新たに調製した。
【0176】
アッセイ手順:
酵素溶液を、300μLの酵素の添加で0.06から0.18ml/分の滴定曲線の傾斜を生じるよう調製した。
既知の活性の対照サンプルを含む。
サンプルを、脱塩水に溶解し、300rpmで15分間撹拌した。
【0177】
25.00mlの基質を10−15分間37.0℃にサーモスタットで調温し、0,05MのNaOHでpHを7.0に調節した。300μLの酵素溶液を基質に加え、0.05MのNaOHでの連続的滴定をpH−Stat滴定装置(Phm 290, Mettler Toledo)を使用して実施した。2つの活性測定を各スケールで行う。
【0178】
8分後、滴定を停止し、滴定曲線の傾斜を5から7分間で計算する。検出限界は3TIPU/ml酵素溶液である。
【0179】
計算:
ホスホリパーゼ活性(TIPU/g酵素)を以下のように計算した:
【数1】

式中、
αは反応時間5から7分の滴定曲線の傾斜である(ml/分)。
Nは使用されるNaOHの規定度である(mol/l)。
V1は酵素を溶解した容量である(ml)。
mはV1に添加した酵素の量である(g)。
V2は基質に添加した酵素溶液の容量である(ml)。
【0180】
トリアシルグリセリドリパーゼ活性の測定:基質としてのトリグリセリド(トリブチリン)に基づくアッセイ(LIPU):
Food Chemical Codex, Forth Edition, National Academy Press, 1996, p 803にしたがって、サンプルを、グリシンバッファーの代わりに脱イオン水に溶解し、pHスタット設定値を7の代わりに5.5とするという修飾を行って、トリブチリンに基づくリパーゼ活性を測定する。
【0181】
1LIPUは、アッセイ条件下で1分当たり1molの酪酸を遊離させることができる酵素の量として定義する。
【0182】
本発明の1つの局面において、本発明において使用される脂肪分解酵素は、糸状菌から得ることができる。さらに好ましくは、真菌脂肪分解酵素は、フザリウム属から得ることができる(好ましくは、得られる)。好ましくは、本発明において使用される真菌脂肪分解酵素は、フザリウム・ヘテロスポラムまたはフザリウム・セミテクタム(Fusarium semitectum)から得ることができる(好ましくは、得られる)。適当には、本発明において使用される真菌脂肪分解酵素は、フザリウム・ヘテロスポラム(CBS 782.83)またはフザリウム・セミテクタム(IBT 9507)から得ることができる(好ましくは、得られる)。
【0183】
したがって、1つの局面において、好ましくは、本発明において使用される脂肪分解酵素は、糸状菌(filamentous fungal)脂肪分解酵素、好ましくは糸状菌野生型脂肪分解酵素である。
【0184】
本明細書において記載されているいくつかの適用、特に食品適用、例えば、ベーカリー適用において、本発明において産生される食物改良剤は、1またはそれ以上の慣用の乳化剤、例えば、モノグリセリド、脂肪酸のモノおよびジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、ナトリウムステアロイルラクチレート(SSL)およびレシチンと共に使用され得る。
【0185】
本発明の方法により産生される食物改良剤は、脂肪を加えたパンレシピにおいてとりわけ好ましい。
【0186】
加えて、またはあるいは、本発明の方法により産生される食物改良剤は、1またはそれ以上の他の適当な食品用酵素と共に使用され得る。したがって、本発明の脂肪分解酵素に加えて、少なくとも1つのさらなる酵素がベークド製品および/またはドーに加えられ得ることは、本発明の範囲内である。このようなさらなる酵素は、デンプン分解酵素、例えば、エンドもしくはエキソアミラーゼ、プルラナーゼ、脱分枝酵素、ヘミセルラーゼ、例えば、キシラナーゼ、セルラーゼ、オキシドレダクターゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、スルフヒドリルオキシダーゼまたは炭水化物オキシダーゼ、例えば、マルトースを酸化するもの、例えば、ヘキソースオキシダーゼ(HOX)、リパーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼおよびヘキソースオキシダーゼ、プロテアーゼ、およびアシルトランスフェラーゼ(例えば、WO04/064987に記載されているもの)を含む。
【0187】
本発明において使用される脂肪分解酵素が、食品の生産においてアルファアミラーゼと組み合わせて使用されることが特に好ましい。特に、アミラーゼは、マルトース非生成アミラーゼ、例えば、マルトース非生成エキソアミラーゼ活性、特に、グルカン1,4−アルファ−マルトテトラヒドロラーゼ(EC3.2.1.60)活性(WO05/003339に記載されている)を有するポリペプチドであり得る。適当なマルトース非生成アミラーゼは、PowersoftTM(Danisco A/S、Denmarkから入手できる)として市販されている。マルトース生成アミラーゼ、例えば、NovamylTM(Novozymes A/S、Denmark)も使用され得る。1つの態様において、アルファアミラーゼと本発明の食物改良剤の組合せ使用は、ドー、および/またはベークド製品、例えば、パン、ケーキ、ドーナツ、ケーキドーナツまたはベーグルの生産において使用され得る。アルファアミラーゼと本発明の食物改良剤の組合せは、また、トルティヤ、例えば、小麦および/またはメイズトルティヤの生産の方法における使用のために好ましいと考えられる。
【0188】
別の好ましい態様において、本発明において産生される食物改良剤は、食品の生産においてキシラナーゼと組み合わせて使用され得る。GRINDAMYLTMおよびPOWERBake 7000は、Danisco A/Sから入手できる市販のキシラナーゼ酵素の例である。キシラナーゼ酵素の他の例は、WO03/020923およびWO01/42433において見いだされ得る。
【0189】
好ましくは、本発明において産生される食物改良剤は、キシラナーゼおよびアルファアミラーゼと組み合わせて使用され得る。適当には、アルファアミラーゼは、マルトース生成、またはマルトース非生成アルファアミラーゼ(例えば、Danisco A/Sから市販されているGRINDAMYLTMまたはPOWERSoft)、またはそれらの組合せであり得る。
【0190】
本発明の食物改良剤は、また、好ましくは、酸化酵素、例えば、マルトース酸化酵素(MOX)、例えば、ヘキソースオキシダーゼ(HOX)と組み合わせて使用することができる。適当な方法は、WO03/099016に記載されている。市販のマルトース酸化酵素のGRINDAMYLTMおよびSUREBakeは、Danisco A/Sから入手できる。
【0191】
所望により、アルファ−アミラーゼ、例えば、マルトース非生成エキソアミラーゼおよび/またはマルトース生成アミラーゼ、および/またはマルトース酸化酵素(MOX)は、酵素と組み合わせて、ドー、ベークド製品、トルティヤ、ケーキ、パスタ、即席めん/揚げスナック食品、または乳製品、例えば、チーズの製造のために本発明の方法において使用され得る。
【0192】
本発明において産生される食物改良剤は、一般的に、当分野で知られている方法により食材または他の組成物に含まれる。このような方法は、食物改良剤を食材または組成物へ直接添加、安定剤および/または担体と組み合わせての食物改良剤の添加、ならびに食物改良剤と安定剤および/または担体を含む混合物の添加を含む。
【0193】
本発明での使用のための適当な安定剤は、無機塩(例えば、NaCl、硫酸アンモニウム)、ソルビトール、乳化剤および界面活性剤(例えば、Tween 20、Tween 80、トリグリセリドを含まないPanodan AB100、ポリグリセロールエステル、ソルビタンモノレエート)、油(例えば、菜種油、ヒマワリ種子油および大豆油)、ペクチン、トレハロース、ソルビトールおよびグリセロールを含むが、これらに限定されない。
【0194】
本発明における使用のために適当な担体は、デンプン、穀粉、粉末小麦、小麦粉、NaClおよびクエン酸塩を含むが、これらに限定されない。
【0195】
ベークド製品、例えば、パン、蒸しパンおよびUS白色パンにおいて、例えば、本発明の食物改良剤の添加は、パン体積および柔らかさの改善、保存期間および/または抗劣化効果の延長、身の構造の改善、孔不均一性の減少、平均孔サイズの減少、グルテン指数の増大、風味および/または匂いの改善、ならびに皮の色の改善の1またはそれ以上をもたらし得る。
【0196】
有利には、本発明において産生される食物改良剤は、食材、例えば、ドーおよび/またはベークド製品における乳化剤と置き換えて使用され得る。
【0197】
本発明において産生される食物改良剤は、乳化剤、例えば、DATEM、SSL、CSL、モノグリセリド、ポリソルベートおよびTweenと相乗効果を有し得る。したがって、本発明において産生される食物改良剤は、1またはそれ以上の乳化剤と組み合わせて使用され得る。有利には、1またはそれ以上の乳化剤と組み合わせての本発明において産生される食物改良剤の使用は、本発明において産生される食物改良剤が使用されないときに必要とする量と比較して、使用される乳化剤の全量を減少させ得る。
【0198】
本発明において産生される食物改良剤は、また、親水コロイド、グアー(Guar)、キサンタンおよびペクチンと、ならびにマルトース酸化酵素、例えば、ヘキソースオキシダーゼと相乗効果を有し得る。
【0199】
ドーナツ、ケーキドーナツ、ベーグル、スナックケーキおよびマフィンにおいて、例えば、本発明の食物改良剤の使用は、アルファ−アミラーゼ、マルトース生成アルファ−アミラーゼおよびマルトース非生成アルファ−アミラーゼの1またはそれ以上と組み合わせて使用されるとき、相乗効果をもたらし得る。
【0200】
ケーキ、スポンジケーキおよびパームケーキにおいて、例えば、本発明の食物改良剤の使用は、1またはそれ以上の親水コロイド、例えば、グアー、および/または1またはそれ以上の乳化剤、例えば、DATEMと組み合わせて使用されるとき、相乗効果をもたらし得る。
【0201】
ビスケットにおいて、例えば、本発明において産生される食物改良剤の使用は、ころがり特性および取扱特性、特に冷却したとき(冷却ころがり性)の改善を与える。
【0202】
有利には、マヨネーズおよび他の卵ベースの製品において、例えば、本発明において産生される食物改良剤の使用は、テクスチャーの改善、平均粒径の減少、および/または平均粒子分布の減少、熱安定性の改善、マイクロ波性能および/または安定性の改善をもたらし得る。
【0203】
ケーキにおいて、本発明の使用は、有利には、柔らかさ、体積、保持特性および保存期間の改善をもたらす。
【0204】
めんまたはめん製品、例えば、即席めんにおいて、例えば、本発明の食物改良剤は、1またはそれ以上の色/黄色の度合いの改善、さらに安定な色特性、明度の減少、脂肪含有量の減少、テクスチャーおよびかむこと(かみ応え)の改善、水活性の減少、破損の減少、中心硬度の増加および加工中の保形の改善を付与し得る。
【0205】
好ましくは、本発明の食物改良剤は、めんまたはめん製品、例えば、即席めんの脂肪含有量を減少させるために使用され得る。
【0206】
トルティヤにおいて、例えば、本発明において産生される食物改良剤の使用は、例えば柔軟性を増加させることによる、トルティヤのころがり性の減少、抗劣化特性の改善、柔らかさの改善および/または異臭の減少の1またはそれ以上をもたらし得る。
【0207】
有利には、ころがり性および/または柔軟性の改善は、ころがすとき、トルティヤが割れる可能性を減少させ得る。
【0208】
本発明において産生される食物改良剤は、ベークド製品、例えば、ドーから製造されるもの、例えば、パン、ケーキ、甘いドー製品、層状のドー、液状バター、マフィン、ドーナツ、ビスケット、クラッカーおよびクッキーの製造において特に有用である。
【0209】
本発明において産生される食物改良剤は、朝食用のシリアル、例えば、ドーから製造されるものの製造において特に有用である。
【0210】
食物改良剤は、また、パン改良添加剤、例えば、ドー組成物、ドー添加剤、ドー調整剤、プレミックス、および改良された特性をパンまたは他のベークド製品に提供するために、パンまたは他のベークド製品の製造プロセス中に穀粉および/またはドーに通常添加される同様の調製物において使用され得る。
【0211】
したがって、本発明は、さらに、本発明において産生される食物改良剤を含むパン改良組成物および/またはドー改良組成物、また、このようなパン改良および/またはドー改良組成物を含むドーまたはベークド製品に関する。
【0212】
パン改良組成物および/またはドー改良組成物は、本発明の真菌脂肪分解酵素に加えて、ベーキングにおいてドーおよび/またはベークド製品の特性を改良するために通常使用される他の物質を含み得る。
【0213】
パン改良組成物および/またはドー改良組成物は、1またはそれ以上の慣用のベーキング剤、例えば、1またはそれ以上の以下の成分を含み得る。
粉乳、グルテン、乳化剤、粒状脂肪、酸化剤、アミノ酸、糖、塩、穀粉またはデンプン。
【0214】
適当な乳化剤の例は、モノグリセリド、脂肪酸のモノおよびジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル、糖エステル、ナトリウムステアロイルラクチレート(SSL)およびレシチンである。
【0215】
パンおよび/またはドー改良組成物は、さらに、別の酵素、例えば、1またはそれ以上の他の適当な食品用酵素、例えば、デンプン分解酵素、例えば、エンドもしくはエキソアミラーゼ、プルラナーゼ、脱分枝酵素、ヘミセルラーゼ、例えば、キシラナーゼ、セルラーゼ、オキシドレダクターゼ、例えば、グルコースオキシダーゼ、ピラノースオキシダーゼ、スルフヒドリルオキシダーゼまたは炭水化物オキシダーゼ、例えば、マルトースを酸化する酵素、例えば、ヘキソースオキシダーゼ(HOX)、リパーゼ、ホスホリパーゼ、ガラクトリパーゼおよびヘキソースオキシダーゼ、プロテアーゼおよびアシルトランスフェラーゼ(例えば、WO04/064987に記載されているもの)を含み得る。
【0216】
本明細書において使用される「ベークド製品」なる用語は、ドーから製造された製品を含む。有利には本発明により生産され得るベークド製品の例は(白色の、明るいまたは暗い型にかかわらず)、パン(白色、全粒およびライ麦パンを含む)、一般的に、ローフまたはロールまたはトーストの型、フレンチバゲット型のパン、ピタパン、トルティヤ、タコス、ケーキ、パンケーキ、ビスケット、クリスプパン、パスタ、めんなどの1またはそれ以上を含む。
【0217】
本発明のドーは、膨らませたドーまたは膨らませるべきドーであり得る。該ドーは、種々の方法、例えば、重炭酸ナトリウムなどを加えるか、または適当な酵母培養物、例えば、出芽酵母の培養物(パン酵母)を加えることにより膨らませ得る。
【0218】
本発明のドーは、乾燥穀物製品、クリスプパン、ビスケットまたはクラッカーの製造のためのドーであり得る。
【0219】
本発明の特定の態様:
上記のとおり、本発明は、脂質含有植物原料の処理のための方法であって、少なくとも部分的に可溶化された脂質含有植物原料の液体懸濁液を1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素で処理する工程を含む方法に関する。
【0220】
いくつかの態様において、該方法は、該少なくとも部分的に可溶化された植物原料を得るために脂質含有植物原料の液体懸濁液を処理する、先立つ工程、または同時の工程をさらに含む。
【0221】
いくつかの態様において、該方法は、さらに可溶化された植物原料を得るために該液体懸濁液を処理する、後の工程をさらに含む。
【0222】
いくつかの態様において、少なくとも部分的に可溶化された植物原料を得るための該処理は、1つまたはそれ以上の細胞壁修飾酵素での処理である。
【0223】
いくつかの態様において、少なくとも部分的に可溶化された植物原料を得るための該処理は、超音波処理による処理、例えば、超音波処理および/または押し出しである。
【0224】
いくつかの態様において、少なくとも部分的に可溶化された植物原料の液体懸濁液は不溶性植物原料を含む。
【0225】
いくつかの態様において、植物原料を該方法工程下で同時に処理する。
【0226】
いくつかの態様において、相当量のいずれの成分も除去することなく、植物原料を本発明の該方法工程下で処理する。
【0227】
いくつかの態様において、該液体懸濁液を1つまたはそれ以上のさらなる酵素でさらに処理する。
【0228】
いくつかの態様において、該1つのさらなる酵素は1またはそれ以上のトランスグリコシル化酵素である。
【0229】
いくつかの態様において、該1つのさらなる酵素はプロテアーゼである。
【0230】
いくつかの態様において、該1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素は、トリアシルグリセロールリパーゼ、ホスホリパーゼおよびガラクトリパーゼからなる群から選択される脂肪分解酵素である。
【0231】
いくつかの態様において、該1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素は、トリアシルグリセロールリパーゼ活性、ホスホリパーゼ活性およびガラクトリパーゼ活性からなる群から選択される2つまたは3つの活性を含む。
【0232】
いくつかの態様において、該1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素は、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの異なる脂質修飾酵素である。
【0233】
いくつかの態様において、本発明の方法は、可溶性画分を単離する工程をさらに含む。
【0234】
いくつかの態様において、該1つまたはそれ以上の細胞壁修飾酵素は、キシラナーゼ、およびセルラーゼ、例えば、セロビオヒドロラーゼ、エンド−グルカナーゼ、およびベータ−グルカナーゼからなる群から選択される。
【0235】
いくつかの態様において、該セルラーゼは、エンドセルラーゼ、エキソセルラーゼ、セロビアーゼ、酸化セルラーゼ、セルロースホスホリラーゼから選択される。
【0236】
いくつかの態様において、該1またはそれ以上のさらなる酵素は、アルファ−アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼおよびベータ−アミラーゼからなる群から選択されるデンプン修飾酵素である。
【0237】
いくつかの態様において、該1またはそれ以上のトランスグリコシル化酵素は、酵素クラスEC3.2.1.20の酵素からなる群から選択される。
【0238】
いくつかの態様において、植物原料は粒子において提供され、該粒子植物原料の平均粒径が3000μm未満、例えば、1000μm未満、例えば、500μm未満である。
【0239】
いくつかの態様において、該植物原料は穀物ふすまである。
【0240】
いくつかの態様において、該穀物ふすまは小麦、大麦、オート麦、ライ麦、ライコムギ、イネおよびトウモロコシから選択される。
【0241】
いくつかの態様において、本発明の方法は、i)穀物を分画して、内胚乳、ふすま、および胚芽を得、ii)内胚乳、ふすま、および胚芽を分離および分配して、それらを処理可能にし、iii)ふすまを製粉する先立つ工程をさらに含む。
【0242】
いくつかの態様において、該穀物ふすまを産業製粉プロセスから得、500μm未満、例えば、400μm未満、例えば、200μm未満の平均粒径を得るためにさらに製粉する。
【0243】
いくつかの態様において、該植物原料は、植物原料の加工処理由来の二次生産物、例えば、植物油精製由来のせっけん材料、醸造業者使用済み穀物または穀物蒸留粕(DDGS)である。
【0244】
いくつかの態様において、さらなる酵素活性を不活性化するために、修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む得られる組成物をさらに処理する。
【0245】
いくつかの態様において、得られる乾物 対 乾物植物原料で決定されるとき、該植物原料の可溶化度は、15%以上、例えば、25%以上、例えば、35%以上、例えば、40%以上、例えば、50%以上、例えば、40%−60%の範囲、例えば、50%−60%の範囲である。
【0246】
いくつかの態様において、得られる可溶性画分中の乾物 対 乾物植物原料で決定されるとき、脂質および修飾された脂質、例えば、機能性脂質の全含有量は、少なくとも約0.05%、例えば、少なくとも約1.0%、例えば、0.05−5%の範囲である。
【0247】
いくつかの態様において、本発明の方法は、脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む得られる組成物を乾燥する工程をさらに含む。
【0248】
いくつかの態様において、本発明の方法は、修飾された脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質脂質を含む得られる組成物を噴霧乾燥する工程をさらに含む。
【0249】
いくつかの態様において、本発明の方法は、脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む得られる組成物脂質を凍結乾燥する工程をさらに含む。
【0250】
いくつかの態様において、1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素での該処理は、機能性脂質、例えば、乳化剤を産生する。
【0251】
いくつかの態様において、1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素での該処理は、他の機能性化合物、例えば、機能性ステロールエステルを産生する。
【0252】
いくつかの態様において、1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素での該処理は、5%以上、例えば、10%以上、例えば、25%以上、例えば、50%以上のホスファチジルイノシトールをリゾホスファチジルイノシトール(リゾ−PI)へ変換する。
【0253】
いくつかの態様において、1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素での該処理は、少なくとも5%のリン脂質、例えば、少なくとも10%のリン脂質、例えば、少なくとも20%のリン脂質、例えば、少なくとも50%のリン脂質、例えば、75%のリン脂質を加水分解する。
【0254】
いくつかの態様において、1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素での該処理は、少なくとも5%の糖脂質、例えば、少なくとも10%の糖脂質、例えば、少なくとも20%の糖脂質、例えば、少なくとも50%の糖脂質、例えば、75%の糖脂質を加水分解する。
【0255】
いくつかの態様において、1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素での該処理は、少なくとも5%のトリグリセリド、例えば、少なくとも10%のトリグリセリド、例えば、少なくとも20%のトリグリセリド、例えば、少なくとも50%のトリグリセリド、例えば、75%のトリグリセリドを加水分解する。
【0256】
いくつかの態様において、本発明の方法において得られる脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む組成物を、食品の生産.食品の生産における可溶性および不溶性植物原料の混合物として直接加える。
【0257】
いくつかの態様において、本発明の食品は、パン、朝食用のシリアル、パスタ、ビスケット、クッキー、スナックおよびビールからなる群から選択される。
【実施例】
【0258】
実施例
実施例1
実施例1。市販の小麦ふすまおよび小麦ふすま脂質の実験室規模の修飾、次にベーキングにおける評価:
ふすま:
商業的製粉から得られる小麦ふすま画分を使用した。該画分は、細粒ふすま画分および粗粒ふすま画分からなった。使用の前に、粗粒ふすま画分を製粉して、より小さい粒径を得、ふすまの比表面積を増加させ、最終的にふすまの酵素的可溶化の効率を増加させた。製粉をRetch製粉機で行い、500μmの平均粒径を得た。しかしながら、可溶化度に関して、より小さい粒径が好ましいであろうことに注意すべきである。
【0259】
酵素:
表1.小麦ふすま修飾のために使用される酵素
【表3】

【0260】
プロトコール:
表2.ふすま修飾のために使用されるプロトコール
【表4】

【0261】
試験:
以下の修飾をふすまに行った(表3)
表3.ふすまの量、g、異なる酵素で処理
【表5】

【0262】
分析:
可溶性ふすま画分(上清)を以下に関して分析する:
乾物含有量(%):
得られる可溶性ふすまの定量的サンプルを凍結乾燥させる。凍結乾燥後、該サンプルサイズを再び定量し、乾物の量を計算する。ブランクとして、該バッファーは、この分析に含まれる。
【0263】
ベーキング試験を使用する脂質修飾の評価:
ベーキングレシピ:
穀粉、修飾された可溶化されたふすまを加えられた穀粉のベーキング性能を、以下のレシピ(表4)を使用して小規模ベーキング試験(50グラムの混合物(mixer)および10グラムのローフ(Loaves))において評価した。
表4.穀粉、可溶化されたふすまを加えられた穀粉および可溶化されていないふすまを加えられた再構成された穀粉のベーキング性能を評価するために使用されるレシピ。塩/糖は、塩および糖の1:1(w/w)混合物である。水は、Farinograph分析により測定される水分吸収である。
【表6】

【0264】
ドー作りおよびベーキング
穀粉(または穀粉およびふすまの混合物)および乾燥成分を1分間混合し、その後、水を加え、混合をさらに5分間続けた。
【0265】
混合後、それぞれ10グラムの穀粉を含む4つのドーの塊を計量した。手動成形機を使用して、これらをパンに成形した。ローフを焼き型に入れ、密閉した容器(ふたを有する)中に置き、テーブルに10分間放置した。その後、パンを34℃で85%のRHで45分間発酵させ、最後にBagoオーブン(Bago-line, Faaborg, Denmark)で230℃で5分間焼く。ドーの測定(scaling)の間に、粘り気を1(非常に粘り気)から5(乾燥)の尺度において主観的に評価した。
パンを、評価(重量、体積測定、ならびに身、皮および官能評価)の前に20分間冷やした。
【0266】
ベーキング試験
以下のベーキング試験を行った(表5)。
表5.ベーキング試験実験構成。IDは、可溶化されたふすまを加えられたか、または不溶性ふすまで再構成された穀粉組成を示し、括弧内の番号は表3のふすま処理を示す。穀粉(g)は、パンにおける穀粉の量である。ふすま(g)は、再構成のために使用されたふすまの量である。可溶化されたふすま(ml)は、水の代わりに穀粉に加えられた可溶化されたふすまの量である。水(ml)は、穀粉に加えられた水の量である。「ふすま」(%)は、穀粉重量に基づく可溶化されたふすま、または不溶性ふすまのいずれかの量である。TIPUは、上記滴定ホスホリパーゼ単位を示す。
【表7】

【0267】
結果:
ふすま可溶化度:
乾物に基づいて、試験において可溶化されたふすまの量は約54%であった。
ベーキング結果:
表6および図1において分かるように、可溶性繊維の添加は、パンの比体積にほとんど影響を及ぼさなかった。しかしながら、可溶化ふすまとホスホリパーゼの混合は、パン体積に有意な影響を及ぼす。
表6.ベーキング試験結果。IDは、可溶化されたふすまを加えられたか、または不溶性ふすまで再構成された穀粉組成を示す。穀粉(g)は、パンにおける穀粉の量である。ふすま(g)は、再構成のために使用されたふすまの量である。比体積(mg/ml)は、パンの真比体積である。相対体積 対 ブランク(%)は、パン 対 パン1(ブランク)の相対体積である。
【表8】

得られたパンは、図2において分かる。
【0268】
実施例2。市販の小麦ふすま脂質の実験室規模の修飾、次にベーキングにおける評価:
脂質画分の修飾の効果を評価するために、乳化性を有する機能性脂質を産生した。異なる用量および異なるリパーゼを使用する別の実験を実施した。
ふすま:
商業的製粉から得られる小麦ふすま画分を使用した。該画分は、細粒ふすま画分および粗粒ふすま画分からなった。使用の前に、粗粒ふすま画分を製粉して、より小さい粒径を得、ふすまの比表面積を増加させ、最終的にふすまの酵素的可溶化の効率を増加させた。製粉をRetch製粉機で行い、500μmの平均粒径を得た。しかしながら、可溶化度に関して、より小さい粒径が好ましいであろうことに注意すべきである。
【0269】
酵素:
表7.小麦ふすま修飾のために使用される酵素
【表9】

【0270】
プロトコール:
表8.ふすま修飾のために使用されるプロトコール
【表10】

【0271】
試験:
以下の修飾をふすまに行った(表9)
表9.ふすまの量、g、異なる酵素で処理
【表11】

【0272】
分析:
可溶性ふすま画分(上清)を以下に関して分析する:
乾物含有量(%):
得られる可溶性ふすまの定量的サンプルを凍結乾燥させる。凍結乾燥後、該サンプルサイズを再び定量し、乾物の量を計算する。ブランクとして、該バッファーは、この分析に含まれる。
【0273】
ベーキング試験を使用する脂質修飾の評価:
ベーキングレシピ:
穀粉、修飾された可溶化されたふすまを加えられた穀粉のベーキング性能を、以下のレシピ(表10)を使用して小規模ベーキング試験(50グラムの混合物(mixer)および10グラムのローフ(Loaves))において評価した。
表10.穀粉、可溶化されたふすまを加えられた穀粉および可溶化されていないふすまを加えられた再構成された穀粉のベーキング性能を評価するために使用されるレシピ。塩/糖は、塩および糖の1:1(w/w)混合物である。水は、Farinograph分析により測定される水分吸収である。
【表12】

【0274】
ドー作りおよびベーキング
穀粉(または穀粉およびふすまの混合物)および乾燥成分を1分間混合し、その後、水を加え、混合をさらに5分間続けた。
【0275】
混合後、それぞれ10グラムの穀粉を含む4つのドーの塊を計量した。手動成形機を使用して、これらをパンに成形した。ローフを焼き型に入れ、密閉した容器(ふたを有する)中に置き、テーブルに10分間放置した。その後、パンを34℃で85%のRHで45分間発酵させ、最後にBagoオーブン(Bago-line, Faaborg, Denmark)で230℃で5分間焼く。パンを、評価(重量、体積測定、ならびに身、皮および官能評価)の前に20分間冷やした。
【0276】
ベーキング試験
以下のベーキング試験を行った(表11)。
表11.ベーキング試験実験構成。IDは、可溶化されたふすままを加えられた穀粉組成を示し、括弧内の番号は表9のふすま処理を示す。穀粉(g)は、パンにおける穀粉の量である。ふすま抽出物(ml)は、水の代わりに穀粉に加えられた可溶化されたふすまの量である。水(ml)は、穀粉に加えられた水の量である。
【表13】

【0277】
結果:
ふすま可溶化度:
乾物に基づいて、試験において可溶化されたふすまの量は約30%であった。
ベーキング結果:
表12および図3において分かるように、可溶性繊維の添加は、パンの比体積にほとんど影響を及ぼさなかった。しかしながら、可溶化ふすまとホスホリパーゼの混合は、パン体積に有意な影響を及ぼす。
表12.ベーキング試験結果。IDは、可溶化されたふすまを加えられた穀粉組成を示し、括弧内の番号は表9のふすま処理を示す。穀粉(g)は、パンにおける穀粉の量である。比体積(mg/ml)は、パンの真比体積である。相対体積 対 ブランク(%)は、パン 対 パン1(ブランク)の相対体積である。
【表14】

得られたパンは、図4において分かる。
【0278】
実験2における上記結果から分かるとおり、この実験のベーキング性能において有意な効果は得られなかった。実施例1と比較して、実施例2における設定は、細胞壁およびデンプン修飾酵素の非存在の点において異なっていた。したがって、小麦ふすまからの機能性脂質の産生に関して、細胞壁−デンプンおよび脂質修飾酵素間で相乗効果があると結論づけることができる。
【0279】
実施例3。市販の小麦ふすまおよび小麦ふすま脂質の実験室規模の修飾、次にベーキングにおける評価−2:
細胞壁−デンプンおよび脂質修飾酵素での小麦ふすまの修飾由来の相乗効果をさらに評価するために、この実験を実施した。
【0280】
ふすま:
商業的製粉から得られる小麦ふすま画分を使用した。該画分は、細粒ふすま画分および粗粒ふすま画分からなった。使用の前に、粗粒ふすま画分を製粉して、より小さい粒径を得、ふすまの比表面積を増加させ、最終的にふすまの酵素的可溶化の効率を増加させた。製粉をRetch製粉機で行い、500μmの平均粒径を得た。しかしながら、可溶化度に関して、より小さい粒径が好ましいであろうことに注意すべきである。
【0281】
酵素:
表13.小麦ふすま修飾のために使用される酵素
【表15】

【0282】
プロトコール:
表14.ふすま修飾のために使用されるプロトコール
【表16】

【0283】
試験:
以下の修飾をふすまに行った(表15)
表15.ふすまの量、g、異なる酵素で処理
【表17】

【0284】
分析:
可溶性ふすま画分(上清)を以下に関して分析する:
乾物含有量(%):
得られる可溶性ふすまの定量的サンプルを凍結乾燥させる。凍結乾燥後、該サンプルサイズを再び定量し、乾物の量を計算する。ブランクとして、該バッファーは、この分析に含まれる。
【0285】
ベーキング試験を使用する脂質修飾の評価:
ベーキングレシピ:
穀粉、修飾された可溶化されたふすまを加えられた穀粉のベーキング性能を、以下のレシピ(表16)を使用して小規模ベーキング試験(50グラムの混合物および10グラムのローフ)において評価した。
表16.穀粉、可溶化されたふすまを加えられた穀粉および可溶化されていないふすまを加えられた再構成された穀粉のベーキング性能を評価するために使用されるレシピ。塩/糖は、塩および糖の1:1(w/w)混合物である。水は、Farinograph分析により測定される水分吸収である。
【表18】

【0286】
ドー作りおよびベーキング
穀粉(または穀粉およびふすまの混合物)および乾燥成分を1分間混合し、その後、水を加え、混合をさらに5分間続けた。
混合後、それぞれ10グラムの穀粉を含む4つのドーの塊を計量した。手動成形機を使用して、これらをパンに成形した。ローフを焼き型に入れ、密閉した容器(ふたを有する)中に置き、テーブルに10分間放置した。その後、パンを34℃で85%のRHで45分間発酵させ、最後にBagoオーブン(Bago-line, Faaborg, Denmark)で230℃で5分間焼く。パンを、評価(重量、体積測定、ならびに身、皮および官能評価)の前に20分間冷やした。
【0287】
ベーキング試験
以下のベーキング試験を行った(表17)。
表17.ベーキング試験実験構成。IDは、可溶化されたふすまを加えられた穀粉組成を示し、括弧内の番号は表15のふすま処理を示す。穀粉(g)は、パンにおける穀粉の量である。ふすま抽出物(ml)は、水の代わりに穀粉に加えられた可溶化されたふすまの量である。水(ml)は、穀粉に加えられた水の量である。ベーキングナンバー9はベーキング5の再現であるが、しかしながら、ドー混合中に穀粉1kgあたり0,2mgのキシラナーゼおよび0,5mgのホスホリパーゼ/kgをさらに加える。
【表19】

【0288】
結果:
ふすま可溶化度:
乾物に基づいて、試験において可溶化されたふすまの量は約30から54%の範囲であった。
ベーキング結果:
表18および図5において分かるように、可溶性繊維の添加は、パンの比体積にほとんど影響を及ぼさなかった。しかしながら、可溶化ふすまとホスホリパーゼの混合は、パン体積に有意な影響を及ぼす。
表18.ベーキング試験結果。IDは、可溶化されたふすまを加えられた穀粉組成を示し、括弧内の番号は表15のふすま処理を示す。穀粉(g)は、パンにおける穀粉の量である。比体積(mg/ml)は、パンの真比体積である。相対体積 対 ブランク(%)は、パン 対 パン1(ブランク)の相対体積である。
【表20】

得られたパンは、図6において分かる。
【0289】
実験3における上記結果から分かるとおり、ふすまの細胞壁、デンプンおよび脂質修飾酵素処理を組み合わせることにより、この実験において、ベーキング性能に対する有意な効果を得た。
【0290】
実施例4。市販の小麦ふすまおよび小麦ふすま脂質の実験室規模の修飾、次にベーキングにおける修飾されたふすまの評価:
細胞壁−デンプンおよび脂質修飾酵素での小麦ふすまの修飾由来の相乗効果をさらに評価するために、ベーキング性能に関して小麦ふすまの添加における乳化性を有する修飾された脂質のin situ産生の効果を試験したい。穀粉または全穀粉へのふすま添加は、内胚乳穀粉よりもベーキング性能が低いことがよく知られている。
【0291】
ふすま:
商業的製粉から得られる小麦ふすま画分を使用した。該画分は、細粒ふすま画分および粗粒ふすま画分からなった。使用の前に、粗粒ふすま画分を製粉して、より小さい粒径を得、ふすまの比表面積を増加させ、最終的にふすまの酵素的可溶化の効率を増加させた。製粉をRetch製粉機で行い、500μmの平均粒径を得た。しかしながら、可溶化度に関して、より小さい粒径が好ましいであろうことに注意すべきである。
【0292】
酵素:
表19.小麦ふすま修飾のために使用される酵素
【表21】

【0293】
プロトコール:
表20.ふすま修飾のために使用されるプロトコール
【表22】

【0294】
試験:
以下の修飾をふすまに行った(表21)
表21.ふすまの量、g、異なる酵素で処理
【表23】

【0295】
ベーキング試験を使用する脂質修飾の評価:
ベーキングレシピ:
修飾されたふすまを加えられた穀粉のベーキング性能を、以下のレシピ(表22)を使用して小規模ベーキング試験(50グラムの混合物および10グラムのローフ)において評価した。
表22.穀粉および修飾されたふすまを加えられた穀粉のベーキング性能を評価するために使用されるレシピ。塩/糖は、塩および糖の1:1(w/w)混合物である。水は、Farinograph分析により測定される水分吸収である。
【表24】

【0296】
ドー作りおよびベーキング
穀粉および乾燥成分を1分間混合し、その後、水(または水および修飾されたふすま)を加え、混合をさらに5分間続けた。
混合後、それぞれ10グラムの穀粉を含む4つのドーの塊を計量した。手動成形機を使用して、これらをパンに成形した。ローフを焼き型に入れ、密閉した容器(ふたを有する)中に置き、テーブルに10分間放置した。その後、パンを34℃で85%のRHで45分間発酵させ、最後にBagoオーブン(Bago-line, Faaborg, Denmark)で230℃で5分間焼く。パンを、評価(重量、体積測定、ならびに身、皮および官能評価)の前に20分間冷やした。
【0297】
ベーキング試験
以下のベーキング試験を行った(表23)。
表23.ベーキング試験実験構成。IDは、ドー組成を示し、括弧内の番号は、表21のふすま処理を示す。穀粉(g)は、パンにおける穀粉の量である。ふすま抽出物(ml)は、水の代わりに穀粉に加えられた可溶化されたふすまの量である。水(ml)は、穀粉に加えられた水の量である。
【表25】

【0298】
結果:
ベーキング結果:
表24および図7において分かるように、修飾された繊維の添加は、パンの比体積に悪影響を及ぼした。しかしながら、ホスホリパーゼでも修飾されたふすまの添加は、機能性脂質を産生し、細胞壁を修飾されたふすまのみの添加と比較して、パン体積においてあまり有害な作用を及ぼさなかった。
表24.ベーキング試験結果。IDはドー組成を示し、括弧内の番号は表21のふすま処理を示す。穀粉(g)は、パンにおける穀粉の量である。比体積(mg/ml)は、パンの真比体積である。相対体積 対 ブランク(%)は、パン 対 パン1(ブランク)の相対体積である。
【表26】

得られたパンは、図7において分かる。
【0299】
上記結果から分かるとおり、ドーへの添加前のふすまの細胞壁、デンプンおよび脂質修飾酵素処理を組み合わせることにより、この実験において、ベーキング性能に対する有意な効果を得た。
【0300】
実施例5。コメふすまおよびコメふすま脂質の実験室規模の修飾、次に、ベーキングにおける可溶化されたふすまおよび修飾されたふすま脂質の評価:
ふすま脂質の修飾と組み合わせたふすま可溶化に関する驚くべき結果をさらに評価するために、ベーキング試験において可溶化されたコメふすまおよび修飾されたコメふすま脂質の効果を試験したい。
【0301】
ふすま:
市販のコメふすま画分を実験のために使用した。
【0302】
酵素:
表25.小麦ふすま修飾のために使用される酵素
【表27】

【0303】
プロトコール:
表26.ふすま修飾のために使用されるプロトコール
【表28】

【0304】
試験:
以下の修飾をコメふすまに行った(表27)
表27.コメふすまの量、g、異なる酵素で処理
【表29】

【0305】
ベーキング試験を使用する脂質修飾の評価:
ベーキングレシピ:
穀粉および可溶化されたふすまを加えられた穀粉および/または修飾された脂質のベーキング性能を、以下のレシピ(表28)を使用して小規模ベーキング試験(50グラムの混合物および10グラムのローフ)において評価した。
表28.異なるドー組成(+/− 可溶化されたふすま)のベーキング性能を評価するために使用されるレシピ。塩/糖は、塩および糖の1:1(w/w)混合物である。水は、Farinograph分析により測定される水分吸収である。
【表30】

【0306】
ドー作りおよびベーキング
穀粉および乾燥成分を1分間混合し、その後、水を加え、混合をさらに5分間続けた。
混合後、それぞれ10グラムの穀粉を含む4つのドーの塊を計量した。手動成形機を使用して、これらをパンに成形した。ローフを焼き型に入れ、密閉した容器(ふたを有する)中に置き、テーブルに10分間放置した。その後、パンを34℃で85%のRHで45分間発酵させ、最後にBagoオーブン(Bago-line, Faaborg, Denmark)で230℃で5分間焼く。パンを、評価(重量、体積測定、ならびに身、皮および官能評価)の前に20分間冷やした。
【0307】
ベーキング試験
以下のベーキング試験を行った(表29)。
表29.ベーキング試験実験構成。IDはドー組成を示し、括弧内の番号は表27のふすま処理を示す。穀粉(g)は、パンにおける穀粉の量である。ふすま抽出物(ml)は、水の代わりに穀粉に加えられた可溶化されたふすまの量である。水(ml)は、穀粉に加えられた水の量である。
【表31】

【0308】
結果:
ベーキング結果:
以下の表30および図8において分かるように、修飾された可溶性繊維の添加は、パンの比体積に悪影響を及ぼさず、実際にパン体積に関してプラス効果を及ぼした。しかしながら、ホスホリパーゼでも修飾された該修飾された可溶性繊維の添加は、機能性脂質を産生し、修飾された可溶性繊維のみの添加と比較して、パン体積においてより良い効果を及ぼした。
表30.ベーキング試験結果。IDはドー組成を示し、括弧内の番号は表27のふすま処理を示す。穀粉(g)は、パンにおける穀粉の量である。比体積(mg/ml)は、パンの真比体積である。相対体積 対 ブランク(%)は、パン 対 パン1(ブランク)の相対体積である。
【表32】

得られたパンは、図8において分かる。
【0309】
上記結果から分かるとおり、事前にコメふすまの細胞壁、デンプンおよび脂質修飾酵素処理処理を組み合わせることにより得られる可溶性ふすまおよび修飾された脂質を添加することにより、この実験において、ベーキング性能に対する有意な効果を得た。
【0310】
実施例6。異なるリパーゼを使用する市販の小麦ふすまおよび小麦ふすま脂質の実験室規模の修飾、次に、ベーキングにおける評価:
ふすま脂質の修飾と組み合わせたふすま可溶化に関する驚くべき結果をさらに評価するために、Daniscoホスホ−ガラクトリパーゼ以外のリパーゼを試験し、次に、ベーキング試験において産生された修飾された脂質の評価を試験したい。
【0311】
ふすま:
商業的製粉から得られる小麦ふすま画分を使用した。該画分は、細粒ふすま画分および粗粒ふすま画分からなった。使用の前に、粗粒ふすま画分を製粉して、より小さい粒径を得、ふすまの比表面積を増加させ、最終的にふすまの酵素的可溶化の効率を増加させた。製粉をRetch製粉機で行い、500μmの平均粒径を得た。しかしながら、可溶化度に関して、より小さい粒径が好ましいであろうことに注意すべきである。
【0312】
酵素:
表31.小麦ふすま修飾のために使用される酵素
【表33】

【0313】
プロトコール:
表32.ふすま修飾のために使用されるプロトコール
【表34】

【0314】
試験:
以下の修飾をふすまに行った(表33)
表33.ふすまの量、g、異なる酵素で処理
【表35】

【0315】
ベーキング試験を使用する脂質修飾の評価:
ベーキングレシピ:
穀粉、修飾された可溶化されたふすまを加えられた穀粉(+/− 修飾された脂質)のベーキング性能を、以下のレシピ(表34)を使用して小規模ベーキング試験(50グラムの混合物および10グラムのローフ)において評価した。
表34.穀粉、可溶化されたふすまを加えられた穀粉および可溶化されたふすまを加えられた穀粉および修飾された脂質のベーキング性能を評価するために使用されるレシピ。塩/糖は、塩および糖の1:1(w/w)混合物である。水は、Farinograph分析により測定される水分吸収である。
【表36】

【0316】
ドー作りおよびベーキング
穀粉および乾燥成分を1分間混合し、その後、水を加え、混合をさらに5分間続けた。
混合後、それぞれ10グラムの穀粉を含む4つのドーの塊を計量した。手動成形機を使用して、これらをパンに成形した。ローフを焼き型に入れ、密閉した容器(ふたを有する)中に置き、テーブルに10分間放置した。その後、パンを34℃で85%のRHで45分間発酵させ、最後にBagoオーブン(Bago-line, Faaborg, Denmark)で230℃で5分間焼く。パンを、評価(重量、体積測定、ならびに身、皮および官能評価)の前に20分間冷やした。
【0317】
ベーキング試験
以下のベーキング試験を行った(表35)。
表35.ベーキング試験実験構成。IDはドー組成を示し、括弧内の番号は表33のふすま処理を示す。穀粉(g)は、パンにおける穀粉の量である。ふすま抽出物(ml)は、水の代わりに穀粉に加えられた可溶化されたふすまの量である。水(ml)は、穀粉に加えられた水の量である。
【表37】

【0318】
結果:
ベーキング結果:
表36および図9において分かるように、可溶性繊維の添加は、パンの比体積にほとんど影響を及ぼさなないか、全く影響を及ぼさなかった。しかしながら、ふすまの可溶化とホスホリパーゼの組み合わせは、パン体積に有意な影響を及ぼし、細胞壁−およびデンプン修飾酵素と組み合わせてリパーゼで処理されたふすまで焼かれたすべてのパンが、穀粉対照と比較して、体積が増加した。
表36.ベーキング試験結果。IDはドー組成を示し、括弧内の番号は表33のふすま処理を示す。穀粉(g)は、パンにおける穀粉の量である。比体積(mg/ml)は、パンの真比体積である。相対体積 対 ブランク(%)は、パン 対 パン1(ブランク)の相対体積である。
【表38】

得られたパンは、図9において分かる。
【0319】
実験6における上記結果から分かるとおり、ふすまの細胞壁、デンプンおよび異なる脂質修飾酵素処理を組み合わせることにより、この実験において、ベーキング性能に対する有意な効果を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質含有植物原料の処理のための方法であって、少なくとも部分的に可溶化された脂質含有植物原料の液体懸濁液を1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素で処理する工程を含む方法。
【請求項2】
少なくとも部分的に可溶化された脂質含有植物原料の液体懸濁液が本質的にデンプンを含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも部分的に可溶化された脂質含有植物原料の液体懸濁液の約50%未満、例えば、約40%未満、例えば、約30%未満、例えば、約20%未満、例えば、約10%未満、例えば、約6%未満、例えば、約3%未満、例えば、約1%未満(w/w)がデンプンまたはデンプンを含む成分、例えば、穀粉である、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
該少なくとも部分的に可溶化された植物原料を得るために脂質含有植物原料の液体懸濁液を処理する、先立つ工程、または同時の工程をさらに含む、請求項1−3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
さらに可溶化された植物原料を得るために該液体懸濁液を処理する、後の工程をさらに含む、請求項1−4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも部分的に可溶化された植物原料を得るための該処理が1つまたはそれ以上の細胞壁修飾酵素での処理である、請求項4または5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
少なくとも部分的に可溶化された植物原料を得るための該処理が、超音波処理による処理、例えば、超音波処理および/または押し出しである、請求項4または5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
該少なくとも部分的に可溶化された植物原料の液体懸濁液が不溶性植物原料を含む、請求項1−7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
植物原料を該方法工程下で同時に処理する、請求項1−8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
相当量のいずれの成分も除去することなく、植物原料を該方法工程下で処理する、請求項1−9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
該液体懸濁液を1つまたはそれ以上のさらなる酵素でさらに処理する、請求項1−10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
該1つのさらなる酵素が1またはそれ以上のトランスグリコシル化酵素である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該1つのさらなる酵素がプロテアーゼである、請求項11または12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
該1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素が、トリアシルグリセロールリパーゼ、ホスホリパーゼおよびガラクトリパーゼからなる群から選択される、請求項1−13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
該1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素が、トリアシルグリセロールリパーゼ活性、ホスホリパーゼ活性およびガラクトリパーゼ活性からなる群から選択される2つまたは3つの活性を含む、請求項1−14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
該1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素が、1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの異なる脂質修飾酵素である、請求項1−15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
可溶性画分を単離する工程をさらに含む、請求項1−16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
該1つまたはそれ以上の細胞壁修飾酵素が、キシラナーゼ、およびセルラーゼ、例えば、セロビオヒドロラーゼ、エンド−グルカナーゼ、およびベータ−グルカナーゼからなる群から選択される、請求項6、8−17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
該セルラーゼが、エンドセルラーゼ、エキソセルラーゼ、セロビアーゼ、酸化セルラーゼ、セルロースホスホリラーゼから選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
該1またはそれ以上のさらなる酵素が、アルファ−アミラーゼ、プルラナーゼ、イソアミラーゼおよびベータ−アミラーゼからなる群から選択されるデンプン修飾酵素である、請求項11−19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
該1またはそれ以上のトランスグリコシル化酵素が酵素クラスEC3.2.1.20の酵素からなる群から選択される、請求項12−20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
植物原料が粒子において提供され、該粒子植物原料の平均粒径が3000μm未満、例えば、1000μm未満、例えば、500μm未満である、請求項1−21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
該植物原料が穀物ふすまである、請求項1−22のいずれかのいずれかに記載の方法。
【請求項24】
穀物ふすまが小麦、大麦、オート麦、ライ麦、ライコムギ、イネおよびトウモロコシから選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
i)穀物を分画して、内胚乳、ふすま、および胚芽を得、ii)内胚乳、ふすま、および胚芽を分離および分配して、それらを処理可能にし、iii)ふすまを製粉する先立つ工程をさらに含む、請求項23または24のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
該穀物ふすまを産業製粉プロセスから得、500μm未満、例えば、400μm未満、例えば、200μm未満の平均粒径を得るためにさらに製粉する、請求項23−25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
該植物原料が、植物原料の加工処理由来の二次生産物、例えば、植物油精製由来のせっけん材料、醸造業者使用済み穀物または穀物蒸留粕(DDGS)である、請求項1−26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
さらなる酵素活性を不活性化するために、修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む得られる組成物をさらに処理する、請求項1−27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
得られる乾物 対 乾物植物原料で決定されるとき、該植物原料の可溶化度が、15%以上、例えば、25%以上、例えば、35%以上、例えば、40%以上、例えば、50%以上、例えば、40%−60%の範囲、例えば、50%−60%の範囲である、請求項1−28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
得られる可溶性画分中の乾物 対 乾物植物原料で決定されるとき、脂質および修飾された脂質、例えば、機能性脂質の全含有量が、少なくとも約0.05%、例えば、少なくとも約1.0%、例えば、0.05−5%の範囲である、請求項1−29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む得られる組成物を乾燥する工程をさらに含む、請求項1−30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む得られる組成物を噴霧乾燥する工程をさらに含む、請求項1−31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む得られる組成物を凍結乾燥する工程をさらに含む、請求項1−32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素での該処理が、改善された健康上の利益を有する機能性脂質、例えば、乳化剤または脂質を産生する、請求項1−33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素での該処理が、他の機能性化合物、例えば、機能性ステロールエステルを産生する、請求項1−34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素での該処理が、5%以上、例えば、10%以上、例えば、25%以上、例えば、50%以上のホスファチジルイノシトールをリゾホスファチジルイノシトール(リゾ−PI)へ変換する、請求項1−35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
請求項1−36のいずれかに記載の方法により生産される脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む組成物。
【請求項38】
食品の生産のための請求項37に記載の脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む組成物の使用。
【請求項39】
バイオエタノールの生産のための請求項37に記載の脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む組成物の使用。
【請求項40】
請求項1−16、18−36のいずれかに記載の方法において得られる脂質および/または修飾された脂質、例えば、機能性脂質を含む組成物を、食品の生産における可溶性および不溶性植物原料の混合物として直接加える、請求項38に記載の使用。
【請求項41】
食品がパン、朝食用のシリアル、パスタ、ビスケット、クッキー、スナックおよびビールからなる群から選択される、請求項38または40のいずれかに記載の使用。
【請求項42】
請求項38、40−41のいずれかに記載の使用により得られる食品。
【請求項43】
請求項39に記載の使用により得られるバイオエタノール。
【請求項44】
a)1つまたはそれ以上の脂質修飾酵素、1つまたはそれ以上の細胞壁修飾酵素、および所望により1つまたはそれ以上のさらなる酵素を含む酵素の組合せ、
b)請求項1−36のいずれかに記載の方法における使用のための指示書、および
c)所望により食品の製造のための他の成分
を含むパーツを含むキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−514988(P2012−514988A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545739(P2011−545739)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050445
【国際公開番号】WO2010/081869
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(508122275)ダニスコ・アクティーゼルスカブ (8)
【氏名又は名称原語表記】Danisco A/S
【Fターム(参考)】