説明

穀物・乾物害虫幼虫用誘引剤

【課題】 本発明は、捕獲器に使用する誘引剤として、一般家庭でも使用でき、安全であり、しかも穀物害虫の幼虫、特に鱗翅目メイガ科の幼虫に対して十分な誘引効果を有する誘引剤を提供する。
【解決手段】 バジル、ローズマリー、パセリシードオイル、ラベンダーの抽出物若しくは精油又は1−オクテン−3−オールの1種若しくは2種以上を有効成分として含有する穀物害虫の幼虫用誘引剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米等の穀物や乾物の害虫の幼虫用誘引剤に関し、詳しくは、一般家庭においても手軽に使用できかつ、人体に安全であり、しかも貯蔵された穀物や乾物に発生する害虫の幼虫に対し優れた防虫効果を有する、穀物・乾物害虫の幼虫用誘引剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、穀物倉庫内で保管されている米、小麦、大麦、豆類や、一般家庭において保管されている米、小麦粉、豆類等の穀物あるいはパスタ、煮干し、鰹節、ふ、かんぴょう等の乾物(以下「穀物類」という)にはコクゾウ、ココクゾウ、コナマダラメイガ等の害虫が繁殖し、穀物類に被害を及ぼすという問題点があった。
【0003】
このような穀物類害虫の被害を防止するために、穀物倉庫では倉庫内をリン化アルミニウム、ホスフィンなどの燻蒸剤により薫蒸し、低温で貯蔵する方法が行われている。また、農薬成分やピレスロイド系化合物を散布することが行われている。なお、これまで主に燻蒸処理に広く使われてきた臭化メチルは、1992年に国連よりオゾン層破壊物質として指定され、2005年までに先進国での使用を全廃することがモントリオール議定書締結会議により決定されたことにより、2005年に日本国内での使用が原則禁止されている。
【0004】
一方、穀物類の流通段階や、一般家庭における穀物類の貯蔵に対しては、上記のような穀物倉庫でおこなわれているような方法はコスト、設備、安全性の点で困難であるのが現状である。また、上記穀物類は食品であるために、特に使用する薬剤の安全性に関しては十分な考慮が必要である。
【0005】
そこで、近年では、一般家庭でも簡単に穀物類害虫の被害を防止できる防虫剤が種々提案されている。たとえば、わさび、カラシ、ショウガ、トウガラシ、ニンニクなどを使用した米用の防虫剤が市販されている。
【0006】
また、通気性容器にアリシン成分及びカプサイシン成分を含む香辛料成分を収容し、この容器を米と一緒に米びつや米包装袋などの米容器内に収容する米の品質保存剤(特許文献1)や、有効成分として天然物由来のティートリーオイル及び/又はパインオイルを含有してなるコクゾウムシに対する忌避剤(特許文献2)も提案されている。
【0007】
これらの防虫剤は、天然物もしくは食品に用いられている薬剤を使用しているため、安全性については問題ないが、穀物類害虫に対しての効果が低く、十分な防虫効力が得られないのが現状である。
【0008】
また、本出願人は、穀物類害虫の忌避剤としてカリオフィレン、オイゲノール、メチルチャビコール、メチルシンナメート、p−サイメンから選ばれる化合物の1種もしくは2種以上を有効成分として含有する穀物・乾物用防虫剤(特許文献3)、テルペン系化合物の1種又は2種以上を有効成分として含有する穀物・乾物用防虫剤(特許文献4)、セージ、ローズマリー、バジル、キャラウェー、ユーカリ、シトロネラ、アニス、オレンジまたはラベンダーから得られる精油の一種又は二種以上を有効成分として含有する穀物・乾物用防虫剤(特許文献5)、 炭素数1〜10のアルコールの一種又は二種以上を有効成分として含有することを特徴とする穀物・乾物用防虫剤(特許文献6)等を提案している。
【0009】
これらは、穀物類害虫の成虫に対する忌避効果について開示されているが、それらの幼虫に対する作用は確認されていない。
【0010】
また、例えば、鱗翅目メイガ科の害虫では、成虫は直接穀物類を食害するものではないが、成虫が穀物類に産卵し、これが孵化して幼虫になって食害することを防ぐために、成虫を忌避することは防虫効果としては有用であり、直接穀物類に対して食害を行う鱗翅目メイガ科の幼虫に対して誘引効果を有すると共に、その成虫を忌避する薬剤の開発も求められていた。
【0011】
一方で、捕獲器を用いて害虫を捕獲する防虫方法も提案されており、例えば、アリ用の捕獲器(特許文献7)や、コクヌストモドキ類の捕獲器(特許文献8)が開示されている。そして、このような捕獲器には、害虫の誘引剤が利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平6−38678号
【特許文献2】特開平11−222409号
【特許文献3】特開2005−9165号
【特許文献4】特開2005-82502号
【特許文献5】特開2004-182704号
【特許文献6】特開2004−175745
【特許文献7】実公昭54−36061号
【特許文献8】特開平3−91431号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、捕獲器に使用する誘引剤として、一般家庭でも使用でき、安全であり、しかも穀物類害虫の幼虫、特に鱗翅目メイガ科の幼虫に対して十分な誘引効果を有する誘引剤の開発を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、上記問題点を解決するために、鋭意研究を行ったところ、特定の植物の抽出物又は精油あるいはこれから導かれる成分が穀物類害虫の幼虫に対して優れた誘引効果を有することを見いだし、本発明に至った。
【0015】
すなわち、本発明は、バジル、ローズマリー、パセリシードオイル若しくはラベンダーの抽出物若しくはその精油又は1−オクテン−3−オールの1種若しくは2種以上を有効成分として含有する穀物類害虫の幼虫用誘引剤を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、穀物類保存容器内に、本発明の誘引剤を適用することを特徴とする穀物類害虫の防虫方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の穀物類害虫の幼虫用誘引剤によれば、穀物類に繁殖する害虫の幼虫を捕獲器等に誘引することができ、上記穀物類害虫を効果的に防虫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1における防虫試験に使用された試験装置の概略図である。
【図2】図1の試験装置を構成するパイプ4を上方向(図1の矢印方向)から見た拡大図である。
【図3】実施例2における試験装置の概略図である。
【図4】実施例2において使用される試験容器の概略図である。
【図5】試験容器の蓋の概略図である。
【図6】保存容器蓋の平面外略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の穀物類害虫の幼虫用誘引剤(以下、「誘引剤」という)の有効成分は、バジル、ローズマリー、パセリシードオイル若しくはラベンダーの抽出物、これら植物の精油(以下、「植物成分」と総称することがある)または1−オクテン−3−オールであり、これらは1種若しくは2種以上を使用することができる。
【0020】
本発明に用いられるバジルは、シソ科の植物で、その精油や抽出物は、既に食粉香料としても用いられており、リナロール、メチルチャビコール、オイゲノール、1,8−シネオール、シトロネロール、フェンキルアルコール等の成分を含有する。
【0021】
また、本発明に用いられるローズマリーは、シソ科の植物で、その精油や抽出物は、α−ピネン、カンフェン、シネオール、ジペンテン、カンファー、ボルネオール、カリオフィレン等の成分を含有する。
【0022】
更に、本発明に用いられるパセリシードオイルは、パセリの種から蒸留や抽出物されたオイル成分である。パセリはセリ科の植物である。その精油や抽出物は、既に調味料等に使用されており、ミリスチン、アピオール、2,3,4,5−テトラメトキシアリルベンゼン等を成分として含有する。
【0023】
更にまた、本発明に用いられるラベンダーは、シソ科の植物で、その精油や抽出物は、既に化粧品香料としても使用されており、リナリルアセテート、リナロール、カンファー、カリオフィレン、テルピネオール、γ−テルピネン等を成分として含有する。
【0024】
これらの植物から抽出物を抽出する方法や精油を得る方法としては、従来公知の方法、例えば、水蒸気蒸留、減圧蒸留等の蒸留法、圧搾法、窒素抽出法、二酸化炭素抽出、溶剤抽出等の抽出法、油脂吸着法等の方法を挙げることができる。
【0025】
また、上記植物からの精油または抽出物には、一般に香料会社等から販売されているものもあり、これらを使用することもできる。
【0026】
一方、本発明に用いられる1−オクテン−3−オールはしいたけ、シメジ、マツタケ等のきのこ類に含まれている成分であり、これらの植物から抽出ないし蒸留して得たものを利用しても良いし、また合成した物を利用しても良い。
【0027】
また、本発明の誘引剤における、植物成分の配合量としては、特に限定されないが0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、更に好ましくは1質量%以上配合すればよい。配合量が10質量%より多くなると、穀物に植物成分のにおいが移ってしまうことがあり、好ましくない。
【0028】
なお、本発明の誘引剤の有効成分のうち、バジル、ローズマリー、ラベンダーの植物成分については、鞘翅目オサゾウムシ科や鱗翅目メイガ科の穀物類害虫の成虫に対する忌避効果も有する。従って、これらの成分は、上記穀物類害虫の成虫に対しては忌避し、幼虫に対しては誘引するので、この相反する性質を利用することにより防虫効果を発揮することができる。
【0029】
本発明の誘引剤において使用される植物成分や1−オクテン−3−オール(以下、「誘引成分」という)は、そのまま使用しても良く、適当な溶媒に必要により界面活性剤を用いて溶解して使用することもできる。また、本発明の誘引剤は、そのまま又は適当な溶媒に溶解したものを、適当な担体に担持させることもできる。
【0030】
上記誘引成分の溶媒としては、水や適当な有機溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、パラフィン等の直鎖炭化水素系化合物、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、シメン、スチレン等の芳香族炭化水素系化合物、リモネン、メンタン、ピネン、ジペンテン等のテルペン系炭化水素系化合物、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等の炭化水素系アルコールや、cis−3−ヘキセノール、トランス−3−ヘキセノール、リナロール、ゲラニオール等のテルペンアルコール、アリルアルコール、ベンジルアルコール、オイゲノール等の芳香族アルコール、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、臭化エチル、臭化プロピル、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、フルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素化合物、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系化合物、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、エチルビニルエーテル、アニソール、フェネトール、ジベンジルエーテル、ジオキサン、トリオキサン、フラン、シネオール、ジエチレングリコールジエチルエーテル、アセタール等のエーテル系化合物、アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘキサノン、シクロヘキサノン等のケトン系化合物、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、オレイン酸、無水酢酸等の脂肪酸系化合物、蟻酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、吉草酸エステル、ヘプチル酸エステル、ヘプテンカルボン酸エステル、オクテンカルボン酸エステル、ラウリン酸エステル、ミリスチン酸エステル、安息香酸エステル、フェニル酢酸エステル、桂皮酸エステル、フタル酸エステル、サリチル酸エステル、アニス酸エステル、アンスラニル酸エステル、メチルアンスラニル酸エステル、菊酸エステル等のエステル系化合物、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル、メチルアミン、ジメチルアミン、アリルアミン、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、トルイジン、ピリジン、キノリン、エチレンジアミン、ホルムアミド、ピロリドン、ε−カプロラクタム等の窒素化合物、二硫化炭素、硫化ジメチル、チオフェン等の硫黄化合物、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール系化合物、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−フェノキシエタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系化合物、ごま油、リノール油、サラダ油等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を混合して用いることも可能である。
【0031】
また、誘引成分を溶解させるために界面活性剤を使用する場合は、陽イオン系界面活性剤、陰イオン系界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン系界面活性剤等の従来公知の界面活性剤が使用できる。
【0032】
また、誘引成分を担持させる担持体としては、特に限定されないが、たとえば、木、紙、布、不織布、シリカ、タルク、活性炭、シリカゲル、ゼオライト、セルロースビーズ、活性炭、セラミック等を挙げることができる。
【0033】
また、本発明誘引剤の好ましい態様としては、誘引成分を適当なゲル化剤を用いてゲル化させたものを挙げることができる。ゲル化剤としては従来公知のものを使用できるが、その例としては、たとえば、カラギーナン、ジェランガム、寒天、ゼラチン、グアーガム、ペクチン、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アルギン酸ソーダ、セルロース誘導体、アクリル酸ナトリウム等の高吸水性樹脂、ジベンジリデン−D−ソルビトール、ヒドロキシプロピル化多糖類等を挙げることができる。
【0034】
本発明の誘引剤に使用される植物成分は液体であるため、ゲル化させることにより、穀物類収納容器内でそれらが流出して収納されている穀物類を濡らしてしまう危険が無く、また、穀物類収納容器内に誘引成分を安定して揮散させることができる。また、ゲルの減少を目視することにより、効果の確認及び有効期間の終了時期を判断することができる。
【0035】
本発明の誘引剤には、他の任意成分を含有させることもできる。他の任意成分としては、たとえば、香料、消臭剤、防かび剤、色素、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を挙げることができる。
【0036】
また、本発明の誘引剤には、前記誘引成分と共に他の穀物類害虫用防虫成分を配合することもできる。この場合、穀物類害虫の成虫は忌避され、穀物類害虫の幼虫は誘引されることにより防虫される。
【0037】
他の穀物類害虫用防虫成分として、たとえば、トウガラシエキス、ワサビエキス、シソエキス、アリシン、カプサイシン、ペリラアルデヒド、タイム、カルダモン、ナツメグ、クローブ、コリアンダー、カリオフィレン、オイゲノール、メチルチャビコール、メチルシンナメート、p−サイメン、セージ、ローズマリー、バジル、キャラウェー、ユーカリ、シトロネラ、アニス、オレンジ、炭素数1〜10のアルコールゲラニオール、シトロネロール、テルピネオール、ネロール、フェンキルアルコール、ボルネオール、リナロール、シトロネラール、シネオール、酢酸フェンキル、テルピニルアセテート、ボニルアセテート、リナリルアセテート、カンファー、α―テルピネン、オシメン、カンフェン、テルピノレン、ミルセン、リモネン、α―ピネン、β―ピネン等のテルペン系化合物等を配合することが可能である。
【0038】
本発明の誘引剤の適用の方法としては、穀物倉庫内もしくは家庭用保存庫、家庭用保存容器内に設置し、自然に又は強制的に揮散、燻蒸させる方法、穀物類を保存する容器、袋に練り込み、含浸、担持させる方法などを挙げることができる。
【0039】
また、本発明の誘引剤は、これを適当な捕獲器内に設置し、この誘引剤で誘引した穀物類害虫を捕獲器で捕獲することにより防虫を行なうことができる。捕獲器については特に制約はないが、例えば、特開平2−128640、実開昭63−173076、実開昭61−197879、特開平3−91431、特開平6−217670、登録実用新案3016221等に開示されている捕獲器を用いることができる。
【0040】
本発明の誘引剤により誘引される穀物類害虫の幼虫としては、例えば鞘翅目オサゾウムシ科:コクゾウムシ、ココクゾウムシ、グラナリヤコクゾウムシ、鱗翅目キバガ科:バクガ、鱗翅目メイガ科:ノシメマダラメイガ、ガイマイツヅリガ、スジマダラメイガ、鞘翅目チビヒラタムシ科:カクムネチビヒラタムシ、鞘翅目ゴミムシダマシ科:コクヌストモドキ、鞘翅目コクヌスト科:オオコクヌスト、鞘翅目ホソヒラタムシ科:ノコギリヒラタムシ等の害虫の幼虫を挙げることができる。
【実施例】
【0041】
以下、本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、本発明は当該実施例によって何ら制限されるものではない。
【0042】
実 施 例 1
図1及び図2に示した試験装置を用いて評価した。すなわち試験装置は、図1の2で示される試験区と3で示される対照区(両方とも、サイズが内径約85mm×深さ110mmで、容量570mlのポリプロピレン製円筒容器)を、通路パイプ4(サイズ:内径12mm×長さ50mm、厚さ3mm)で連通されており、試験害虫が2つの区を自由に行き来できるようになっている。またこの試験装置の試験区2内には、直径4.6cmのシャーレ5と直径4cmの球状虫かご6が、対照区3には、試験区2内に設置されたものと同形のシャーレ5がそれぞれ設置されている。更に、試験装置の通路パイプ4上部には、図2に示されるように、サイズ30mm×20mmの空気孔7(ナイロンメッシュで覆われており、試験害虫の通り抜けはできない)が形成し、試験区2で揮散した誘引剤が通路パイプ4を伝わって対照区3に移動することがないようにしている。
【0043】
上記した試験装置を用いる防虫試験は、まず試験区2及び対照区3のそれぞれの蓋8を開け、それぞれのシャーレ5に穀物として滅菌済み上新粉1gを入れ、図1に示す位置に設置した。次に、虫かご6に各誘引成分50μlを17mm×25mmのろ紙に含浸させたものを入れ、それを試験区2に設置した。そして、対象害虫であるノシメマダラメイガの幼虫を試験区2と対照区3にそれぞれ10匹ずつ計20匹入れた。
【0044】
その後、両区の蓋8を閉め、試験装置を25℃で静置し、4から5日間放置した。放置後、試験区2及び対照区3にいる幼虫の数をそれぞれ数え、全投入幼虫数に対する試験区2内に存在する幼虫の割合(誘引率)を下記の式(1)にしたがって算出し、誘引率80%以上を誘引効果があるものとした。なお、比較品として本発明の誘引成分をいれないものを用いた。
【数1】

【0045】
【表1】

【0046】
この結果、いずれの本発明品もノシメマダラメイガの幼虫を誘引していることが分かった。
【0047】
実 施 例 2
下記の処方にてゲル状穀物類害虫の幼虫用誘引剤を得た。
【0048】
【表2】


高吸水性樹脂・・・サンフレッシュEA−1(三洋化成工業株式会社製)
【0049】
得られた、本発明品6から10のゲル状穀物類害虫の幼虫用誘引剤2gを図4から図6に示すような、上部に試験害虫が通り抜けできる程度の開口を設けた蓋8を有する筒状の試験容器10(直径38mm高さ107mm)に入れ、図3に示す無洗米260gの入った容量570リットル(103mm×9.6mm×114mm)の保存容器9内に設置した。なお、保存容器蓋13上部には、直径30mmの空気孔7(ナイロンメッシュで覆われており、試験害虫の通り抜けはできない)が形成されており、試験容器10内で揮散した誘引剤が保存容器9内部に充満しすぎないようにした。そして、対象害虫であるノシメマダラメイガの幼虫を保存容器9に20匹入れた。
【0050】
その後、蓋を閉め、保存容器9を25℃で静置し、1から5日間放置した。放置後、試験容器10内部にいる幼虫の数をそれぞれ数え、誘引率を下記の式(2)式にしたがって算出した。なお、比較品として本発明の誘引剤を入れないものを用いた。
【数2】

【0051】
【表3】

【0052】
以上の結果より、得られた本発明品6〜10について、ノシメマダラメイガの幼虫を誘引することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明によれば、穀物・乾物に繁殖する害虫の幼虫を誘引することで、穀物・乾物に対する害虫の幼虫を防虫することができる穀物・乾物害虫の幼虫用誘引剤を得ることができる。
【0054】
そして、このものは、人体に安全で、一般家庭においても手軽に使用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1・・・・試験装置
2・・・・試験区
3・・・・対照区
4・・・・通路パイプ
5・・・・シャーレ
6・・・・虫かご
7・・・・空気孔
8・・・・蓋
9・・・・保存容器
10・・・試験容器
11・・・無洗米
12・・・ゲル
13・・・保存容器蓋





【特許請求の範囲】
【請求項1】
バジル、ローズマリー、パセリシードオイル若しくはラベンダーの抽出物若しくは精油又は1−オクテン−3−オールの1種若しくは2種以上を有効成分として含有する穀物・乾物害虫の幼虫用誘引剤。
【請求項2】
穀物・乾物害虫の幼虫が、鱗翅目メイガ科の幼虫である請求項1項記載の穀物・乾物害虫の幼虫用誘引剤。
【請求項3】
ゲル化剤によりゲル化したことを特徴とする請求項1項または2項記載の穀物・乾物害虫の幼虫用誘引剤。
【請求項4】
さらに他の穀物・乾物害虫防除成分を配合した請求項1項ないし3項のいずれかの項記載の穀物・乾物害虫の幼虫用誘引剤。
【請求項5】
穀物・乾物保存容器内に、請求項1項ないし4項のいずれかの項記載の穀物・乾物害虫の幼虫用誘引剤を適用することを特徴とする穀物・乾物害虫の幼虫用誘引方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−31104(P2012−31104A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172319(P2010−172319)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000102544)エステー株式会社 (127)
【Fターム(参考)】