説明

穀物乾燥施設

【課題】 被乾燥穀物の張り込みから乾燥仕上がり穀物の搬出に至る工程を連続処理することができる穀物乾燥施設を提供する。
【解決手段】 複数基の乾燥機を備えた穀物乾燥施設である。最前段乾燥機1から最終段乾燥機5まで順に、前段乾燥機の穀物搬出口と後段乾燥機の穀物搬入口とを穀物搬送装置により接続してある。最前段乾燥機1の穀物搬入口24から被乾燥穀物を張り込み、被乾燥穀物を最前段乾燥機1から最終段乾燥機5に至る順次継送過程で所定の仕上がり水分値まで乾燥する。最終段乾燥機5の穀物搬出口25から仕上がり乾燥穀物を搬出するように構成してある。最前段から最終一段前までの各段乾燥機1、2、3、4は、それぞれの後段乾燥機が空になった場合に被乾燥穀物の継送を開始し、最終段乾燥機5は、被乾燥穀物が乾燥停止水分値(仕上がり水分値)に達した場合に搬出を開始するように設定してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数基の乾燥機を備えた穀物乾燥施設であって被乾燥穀物を最前段乾燥機から最終段乾燥機に至る順次継送過程で連続的に乾燥する穀物乾燥施設に関するものである。
【背景技術】
【0002】
大規模な穀物乾燥施設においては、その規模に応じて数基から10数基の乾燥機を設備しており、各乾燥機に対しては被乾燥穀物の投入ラインや搬出ラインを設けている。これら複数基の乾燥機は、被乾燥穀物の張り込みから乾燥仕上げに至るまで各別に稼働させており、被乾燥穀物の張り込みから乾燥仕上げまでの工程において穀物乾燥機相互の連携については何ら考慮されていなかった。
【0003】
このような穀物乾燥施設については、特開平6−174370号公報、特開平6−221756号公報、特開2001−116452公報、特開2002−98478公報等にその態様が開示されている。また、乾燥終了にともなって仕上がり乾燥穀物を自動的に排出する穀物乾燥機の制御装置は、特開平11−132658号公報に開示されている。
【特許文献1】特開平6−174370号公報
【特許文献2】特開平6−221756号公報
【特許文献3】特開2001−116452公報
【特許文献4】特開2002−98478公報
【特許文献5】特開平11−132658号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特許文献1ないし4において紹介されているように、従来の大規模な穀物乾燥施設においては、複数基の穀物乾燥機ごとに被乾燥穀物の投入ラインおよび搬出ラインを必要とするので処理量からみた規模が大掛かりなものとなり、また、複数基の穀物乾燥機を各別に制御するところから、被乾燥穀物の張り込みから乾燥仕上げまでの工程管理が煩雑で施設の管理運営上の問題としてその改善が要望されていた。
【0005】
本発明は、この種の穀物乾燥施設における上述のような課題を解決するものであって、複数基の乾燥機を備えた大規模な施設であっても、複数基の乾燥機を被乾燥穀物の流れからみて直列的に稼働することにより、被乾燥穀物の張り込みから乾燥仕上がり穀物の搬出に至る工程を連続処理することができる穀物乾燥施設を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は請求項1ないし5に係る穀物乾燥施設を提供する。すなわち、請求項1に係る穀物乾燥施設は、複数基の乾燥機を備えた穀物乾燥施設であって、最前段乾燥機から最終段乾燥機まで順に、前段乾燥機の穀物搬出口と後段乾燥機の穀物搬入口とを穀物搬送装置により接続し、最前段乾燥機の穀物搬入口から被乾燥穀物を張り込み、被乾燥穀物を最前段乾燥機から最終段乾燥機に至る順次継送過程で所定の仕上がり水分値まで乾燥し、最終段乾燥機の穀物搬出口から仕上がり乾燥穀物を搬出するように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項2に係る穀物乾燥施設は、請求項1の構成において、最前段から最終段までの各段乾燥機は、張り込まれた被乾燥穀物を各段乾燥機ごとに循環させながら乾燥する構成であることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に係る穀物乾燥施設は、請求項1または2の構成において、最前段から最終一段前までの各段乾燥機は、それぞれの後段乾燥機が空になった場合に被乾燥穀物の継送を開始するように設定してあり、最終段乾燥機は、被乾燥穀物が乾燥停止水分値に達した場合に搬出を開始するように設定してあることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に係る穀物乾燥施設は、請求項1、2または3の構成において、最前段から最終段までの各段乾燥機は、被乾燥穀物の排出完了を検出する機能を備えていて、最前段から最終一段前までの各段乾燥機は、それぞれ後段の乾燥機の排出完了を検出した状態で前段乾燥機から被乾燥穀物の継送を可能とし、かつ最前段乾燥機は排出完了を検出した状態で被乾燥穀物の張り込みを可能とするようにそれぞれ設定してあることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に係る穀物乾燥施設は、請求項1、2、3または4の構成において、最前段から最終段までの各段乾燥機は、それぞれ被乾燥穀物の張り込み最小量を検出する機能を備えていて、各段乾燥機は被乾燥穀物が最小量に達すると乾燥を開始するように設定してあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る連続穀物乾燥方法およびその装置によれば、複数基の乾燥機を被乾燥穀物の流れからみて直列的に稼働することにより、被乾燥穀物の張り込みから乾燥仕上がり穀物の搬出に至る工程を連続処理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1ないし図9は、本発明の一実施の形態に係る穀物乾燥施設を示す模式図であって、それぞれに各工程態様を示している。なお、図面には乾燥機を5基備えた構成を例示しているが、本発明に係る構成においては必ずしもこれに限定されず、乾燥機が2基、3基、4基、あるいは5基を超える構成とすることは任意である。
【0013】
図に示すように、本発明に係る穀物乾燥施設は、複数基の乾燥機すなわち、最前段乾燥機1から順次第2段乾燥機2、第3段乾燥機3、第4段乾燥機4および最終段乾燥機5を備えており、これら各段乾燥機1、2、3、4、5は、張り込まれた被乾燥穀物を各段乾燥機1、2、3、4、5ごとに循環させながら通風乾燥するいずれも同構成のものである。各段乾燥機1、2、3、4、5は、循環通風乾燥方式であるとともに、循環流動する被乾燥穀物に直接または間接に遠赤外線を照射する遠赤外線乾燥機であってもよく、各段乾燥機1、2、3、4、5を遠赤外線乾燥機とすることにより、乾燥効率を大きく向上させることができる。
【0014】
各段乾燥機1、2、3、4、5は、最終段乾燥機5を除いてそれぞれ穀物搬送装置を構成する昇降機6、7、8、9を備えており、最前段乾燥機1の穀物搬出口10と第2段乾燥機2の穀物搬入口11は昇降機6により、第2段乾燥機2の穀物搬出口12と第3段乾燥機3の穀物搬入口13は昇降機7により、第3段乾燥機3の穀物搬出口14と第4段乾燥機4の穀物搬入口15は昇降機8により、第4段乾燥機4の穀物搬出口16と最終段乾燥機5の穀物搬入口17は昇降機9により、それぞれ接続されている。また、昇降機6、7、8、9は、それぞれ切替弁18、19、20、21を備えていて、これら切替弁18、19、20、21の切り替えによって昇降機6、7、8、9はそれぞれ各段乾燥機1、2、3、4の被乾燥穀物循環経路を構成する。
【0015】
22は張り込み昇降機、23は搬出昇降機であって、張り込み昇降機22は最前段乾燥機1の穀物搬入口24に接続されており、搬出昇降機23は最終段乾燥機5の穀物搬出口25に接続されていて、張り込み昇降機22により被乾燥穀物を最前段乾燥機1に張り込み、搬出昇降機23により仕上がり乾燥穀物を最終段乾燥機5から搬出するように構成されている。また、搬出昇降機23は切替弁26を備えていて、この切替弁26の切り替えにより搬出昇降機23が最終段乾燥機5の被乾燥穀物循環経路を構成するようになっている。
【0016】
最前段から最終段までの各段乾燥機1、2、3、4、5は、前記のようにそれぞれ被乾燥穀物を循環させながら乾燥する構成であるが、各段乾燥機1、2、3、4、5はそれぞれ乾燥停止水分値を設定してある。
【0017】
最前段から最終一段前までの各段乾燥機1、2、3、4は、それぞれの後段乾燥機が空になった場合に被乾燥穀物の継送を開始するように設定してあり、最終段乾燥機5は、被乾燥穀物が乾燥停止水分値に達した場合に搬出を開始するように設定してある。すなわち、最前段から最終段までの各段乾燥機1、2、3、4、5は、被乾燥穀物の排出完了を検出する機能を備えていて、最前段から最終一段前までの各段乾燥機1、2、3、4は、それぞれ後段の乾燥機の排出完了を検出した状態で前段乾燥機から被乾燥穀物の継送を可能とし、かつ最前段乾燥機1は排出完了を検出した状態で被乾燥穀物の張り込みを可能とするようにそれぞれ設定してある。
【0018】
また、最前段から最終段までの各段乾燥機1、2、3、4、5は、それぞれ被乾燥穀物の張り込み最小量(下限値)および張り込み最大量(上限値)を検出する機能を備えていて、各段乾燥機1、2、3、4、5は被乾燥穀物が最小量に達するとそれぞれ乾燥を開始するように設定してある。
【0019】
本発明に係る穀物乾燥施設において、張り込み昇降機22により最前段乾燥機1の穀物搬入口24に被乾燥穀物が張り込まれると、最前段から最終段までの各段乾燥機1、2、3、4、5は空であるから(図1)、最前段乾燥機1に張り込まれた被乾燥穀物は第2段乾燥機2に継送され、さらに第3段乾燥機3から最終段乾燥機5まで順次継送される。そして、最終段乾燥機5が張り込み最小量に達した時点で乾燥が開始されるとともに、張り込み上限値に達すると最終段乾燥機5への継送が先ず完了する(図2)。次いで第4段乾燥機4、第3段乾燥機3、第2段乾燥機2の順にそれぞれ張り込み最小量に達した時点でそれぞれの乾燥が開始されるとともに順次継送が完了して、最後に最前段乾燥機1への被乾燥穀物の張り込みが完了する(図3)。最前段から最終段までの各段乾燥機1、2、3、4、5に被乾燥穀物の張り込みが完了した後はそれぞれが循環乾燥状態となる。
【0020】
この状態において乾燥が続けられ、最終段乾燥機5の被乾燥穀物が乾燥仕上がり水分値(例えば15%)に達したならば、最終段乾燥機5から仕上がり乾燥穀物が搬出昇降機23により搬出されて空になるが(図4)、この状態になると第4段乾燥機4から被乾燥穀物が最終段乾燥機5に継送され(図5)、以下第3段乾燥機3から第4段乾燥機4に(図6)、第2段乾燥機2から第3段乾燥機3に(図7)、最前段乾燥機1から第2段乾燥機2に(図8)、被乾燥穀物が順次継送されていき、最前段乾燥機1が空になると張り込み昇降機22により被乾燥穀物が張り込まれる(図9)。そして、このような被乾燥穀物の継送および張り込み工程中であっても、最前段から最終段までの各段乾燥機1、2、3、4、5においては被乾燥穀物が張り込み最小量に達していると乾燥が継続されるので、ほぼ間断なく乾燥処理がなされて、大量の穀物を連続的かつ効率的に乾燥することができる。
【0021】
本発明に係る穀物乾燥施設においては、最前段から最終段までの各段乾燥機1、2、3、4、5を、それぞれ被乾燥穀物を後段乾燥機へ継送可能とする継送可能水分値(例えば25%)を設定可能にし、最終段乾燥機5を、仕上がり水分値(例えば15%)を乾燥停止水分値と仕上がり乾燥穀物の搬出可能水分値として設定可能にしておけば、被乾燥穀物の張り込み、継送および搬出について前述の制御に優先させて被乾燥穀物の水分条件に応じた制御が可能となるので、被乾燥穀物の乾燥をその水分に基づいて適切に制御することができる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係る穀物乾燥施設は、収穫して生脱穀した生籾、収穫後圃場で天日乾燥した半乾燥籾のいずれの連続乾燥処理も可能であるが、特に半乾燥籾の連続乾燥処理に適している。このため、日本国内においても可能な限り圃場において天日乾燥を施したうえ乾燥処理することにより省エネルギーを達成できるものである。
【0023】
また、中国や東南アジア全般においては収穫後の圃場における天日による乾燥が普及しているので、殊に中国においては半乾燥籾を大量に集積して仕上げ乾燥する大規模システムの構築に大いに寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施の形態に係る穀物乾燥施設の模式図であって、各段乾燥機が空の状態を示す。
【図2】同上、図1の状態から最終段乾燥機に被乾燥穀物の継送が完了した状態を示す。
【図3】同上、図2の状態から最前一段後の乾燥機まで被乾燥穀物の継送が完了し、かつ最前段乾燥機に被乾燥穀物が張り込まれた状態を示す。
【図4】同上、図3の状態から最終段乾燥機の仕上がり乾燥穀物の継送が完了した状態を示す。
【図5】同上、図4の状態から第4段乾燥機の被乾燥穀物の継送が完了した状態を示す。
【図6】同上、図5の状態から第3段乾燥機の被乾燥穀物の継送が完了した状態を示す。
【図7】同上、図6の状態から第2段乾燥機の被乾燥穀物の継送が完了した状態を示す。
【図8】同上、図7の状態から第1段乾燥機の被乾燥穀物の継送が完了した状態を示す。
【図9】同上、図8の状態から第1段乾燥機に被乾燥穀物の張り込みが完了した状態を示す。
【符号の説明】
【0025】
1 最前段乾燥機
2 第2段乾燥機
3 第3段乾燥機
4 第4段乾燥機
5 最終段乾燥機
6、7、8、9 昇降機
10、12、14、16、25 穀物搬出口
11、13、15、17、24 穀物搬入口
18、19、20、21、26 切替弁
22 張り込み昇降機
23 搬出昇降機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数基の乾燥機を備えた穀物乾燥施設であって、最前段乾燥機から最終段乾燥機まで順に、前段乾燥機の穀物搬出口と後段乾燥機の穀物搬入口とを穀物搬送装置により接続し、最前段乾燥機の穀物搬入口から被乾燥穀物を張り込み、被乾燥穀物を最前段乾燥機から最終段乾燥機に至る順次継送過程で所定の仕上がり水分値まで乾燥し、最終段乾燥機の穀物搬出口から仕上がり乾燥穀物を搬出するように構成されていることを特徴とする穀物乾燥施設。
【請求項2】
最前段から最終段までの各段乾燥機は、張り込まれた被乾燥穀物を各段乾燥機ごとに循環させながら乾燥する構成であることを特徴とする請求項1記載の穀物乾燥施設。
【請求項3】
最前段から最終一段前までの各段乾燥機は、それぞれの後段乾燥機が空になった場合に被乾燥穀物の継送を開始するように設定してあり、最終段乾燥機は、被乾燥穀物が乾燥停止水分値に達した場合に搬出を開始するように設定してあることを特徴とする請求項1または2記載の穀物乾燥施設。
【請求項4】
最前段から最終段までの各段乾燥機は、被乾燥穀物の排出完了を検出する機能を備えていて、最前段から最終一段前までの各段乾燥機は、それぞれ後段の乾燥機の排出完了を検出した状態で前段乾燥機から被乾燥穀物の継送を可能とし、かつ最前段乾燥機は排出完了を検出した状態で被乾燥穀物の張り込みを可能とするようにそれぞれ設定してあることを特徴とする請求項1、2または3記載の穀物乾燥施設。
【請求項5】
最前段から最終段までの各段乾燥機は、それぞれ被乾燥穀物の張り込み最小量を検出する機能を備えていて、各段乾燥機は被乾燥穀物が最小量に達すると乾燥を開始するように設定してあることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の穀物乾燥施設。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−29641(P2006−29641A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−206521(P2004−206521)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【出願人】(000001465)金子農機株式会社 (53)
【Fターム(参考)】