説明

穀粉の製造方法

第一態様において、本発明は穀物胚芽で富化された穀粉を生産する方法に関し、穀物胚芽から胚芽油を分離する主工程と、胚芽油で富化した穀粉を得るような方式で、型式0、00、1、2、及び全麦穀粉を富化するため、前記油を使用する主工程と、を含む。発明の好ましい態様によれば、前記穀物胚芽から胚芽油を分離する工程は、穀物胚芽をプレスする工程を含み、胚芽油と、胚芽粉を生じさせるため粉砕される脱油胚芽残留物と、を生じさせる。更なる本発明の好ましい態様において、前記の方法は、胚芽粉を胚芽油富化穀粉及び穀物の粉砕で得られる穀粉と混合して、穀物胚芽で富化された穀粉を生じさせる工程を含む。本発明は、更に、前記の方法を用いて得られる製品、すなわち穀物胚芽富化穀粉にも関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀粉(穀物粉)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦胚芽は、主としてビタミンE又はα−トコフェロールを、ビタミンB群、微量のビタミンC、A、及びD、レシチン、澱粉、単糖類、粗繊維、鉄、カルシウム、燐、カリウム、マグネシウム、亜鉛、マンガン、銅、コバルト、セレン、モリブデン、必須多価不飽和脂肪酸(リノール酸、オレイン酸、リノレン酸、パルミチン酸、ステアリン酸が含まれる)、並びにオクトサノールなど以下のその他の物質と共に、含有することが知られている。
【0003】
ビタミンEは、我々の体内に存在し、細胞内で起こる酸化過程の原因となり、目や神経系の変性疾患、心循環器疾患、癌、及び皮膚の老化などの病状の発生の一因となるフリー・ラジカル(遊離基)と反応する、天然の抗酸化剤である。ビタミンFは、必須多価不飽和脂肪酸の、主としてリノール酸(オメガ−6)とリノレン酸(オメガ−3)の混合物から構成される。ビタミンFは、我々の体内では合成されないので、その機能が必須であるだけに、食事を通して取り入れなければならない。実際に、オメガ−6酸とオメガ−3酸は、細胞膜の形成及びそれを流動体に保つのに不可欠であり、動脈壁の弾力性を保ち、動脈内における中性脂肪(トリグリセリド)とコレステロールの堆積を妨げアテローム性動脈硬化を防ぎ、皮膚と毛の完全性及び体重減少を助長し、内分泌腺の活動を刺激する。
【0004】
最後に、長鎖脂質アルコールであるオクトサノールは、身体的持久力、筋肉グリコーゲン、細胞の酸素の使用に著しい効果があり、乳酸から生成する毒素の破壊を助長する。それ故、長期間の集中した仕事でストレスを受ける人、心身の極度の疲労に苦しむ人、スポーツに携わっている人に推奨される。
【0005】
小麦胚芽は、それ故、我々の体の良好な機能発揮と健康に欠かせない一連の物質を提供する、完全な食物である。かつては、胚芽を含む全穀粒の粉砕によって得られる全麦粉が、毎日の食事に用いられた。現今は、全穀粒の粉砕によって得られる全麦粉は、その保存性の悪さのためにほとんど使用されない。代って、内果皮(種の最も内側の部分)のみを粉砕して得られ、ほとんど澱粉のみを含み、それ故タンパク質、無機塩類、ビタミン、及び繊維が少ない、型式0、00、1、2、及び「全麦」粉が用いられる。従って、我々の毎日の食事を、小麦胚芽内やその他の穀物胚芽内に含有される非常に重要な要素で、補うことが欠かせない。この問題は、穀粉を穀物胚芽で栄養強化することができる方法を例示する本発明によって解決される。実際に、これらの穀粉は、型式0、00、1、及び2穀粉の色と風味の正確な特徴を保っており、更に人体の健康と良好な機能発揮に欠かせない要素の主な供給源である、穀物胚芽をも含有している。
【0006】
第一態様において、本発明は穀物胚芽で栄養価を高めた穀粉を生産する方法に関し、穀物胚芽から胚芽油を分離する工程と、胚芽油で栄養価を高めた穀粉を得るような方式で、穀粉を栄養強化するために前記油を使用する工程と、を含む。
【0007】
発明の好ましい態様によれば、前記穀物胚芽から胚芽油を分離する工程は、穀物胚芽をプレスして、胚芽油と、胚芽粉を生じさせるために粉砕される脱油胚芽残留物と、を生じさせる工程を含む。
【0008】
更なる本発明の好ましい態様において、前記の方法は、胚芽粉を胚芽油栄養強化穀粉及び穀物の粉砕で得られる穀粉と混合して、穀物胚芽で栄養価を高めた穀粉を生じさせる工程を含む。
【0009】
本発明による、型式0、00、1、2、及び全麦穀粉を小麦胚芽で栄養強化する方法の更なる特徴と利点は、以下の図を参照して、非制限的な指示として後述した実施例の説明から、大部分が理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、上述の方法を実施するプラントの概略図を示す。
【0011】
胚芽が、収集ホッパー1に収集される。プラントの処理能力は、例えば、80kg/時間でよい。ホッパーから胚芽が乾燥機2内へ装入され、30℃から60℃の間の温度、好ましくは約30℃まで加熱される。胚芽は、2分から15分の間の時間、好ましくは約3分間加熱コンテナの壁と接触して、30℃から60℃の間の最終温度、好ましくは約33℃に達する。この操作は、胚芽内に存在する水の割合を低減するために必要とされ、油抽出過程を改善する。出口で、胚芽は、3〜11パーセントの減量で2%から10%の間の湿度、好ましくは4〜5パーセントの減量で約8%の湿度を有する。好ましくは、胚芽の加熱は回転する赤外線ランプを供えたシリンダ内で行なわれる。
【0012】
乾燥された胚芽は、プレス3、好ましくは横型プレス、に入れられ、脱油胚芽残留物と油が浸透した工程廃棄物とを得ると共に、胚芽から胚芽油を分離できる。前記プレス工程は、70℃から100℃の間、好ましくは90℃から95℃の間の温度で、更に好ましくは約91.5℃で行なわれる。前記油が浸透した工程廃棄物は、全胚芽の重量で1%から6%まで、好ましくは約3%に相当し、初期(スターティング)生成物は20秒から60秒の間の時間間隔以内で、好ましくは約30秒以内で、プレスを通る。
【0013】
脱油胚芽残留物は、次いで穀粒粉砕機4に好ましくは押出形状で入れられ、当業者に周知のように、石臼で粉砕されるのに理想的な粒度分布に達するまで、混合機(ブレンダー)を用いて粉砕される。粉砕された生成物は、次いで石臼5に装入され、その後プランシフター6に送られ、そこで胚芽粉の較正(キャリブレーション)による選別、即ち存在する可能性のある微粒子不純物からの分離、が行なわれる。
【0014】
同時に、工程廃棄物は、残留油を抽出するためにプレス7で圧搾され、残留油は、油内に存在する可能性のある残留物を分離するのに必要なフィルタープレス(圧搾ろ過器)8に送られる。好ましくは、廃棄物の圧搾は種子圧搾機及びダイサーで行なう。
【0015】
脱油廃棄物は、プランシフター6に入れられ、較正された胚芽粉を得るために(胚芽粉に対して)重量で1%から6%の間の量、好ましくは重量で約3%の量、胚芽粉と混合される。
【0016】
ろ過に続いて、胚芽油は、穀物の粉砕によって得られる型式0、00、1、2、及び全麦粉を栄養強化(富化)するために使用される。前記栄養強化は、穀粉との接触面積を最大化するような方式で油を霧状にする噴霧化システムから構成される、噴霧機9を用いて行なわれる。胚芽油で富化された穀粉は、このようにして得られる。好ましくは、胚芽油は、重量で3%から20%の間の量が、更に好ましくは重量で約10%の量が、噴霧機中で穀粉と混合される。
【0017】
最後に、較正された胚芽粉と胚芽油で富化された穀粉は、1:1から5:1の間の割合、好ましくは2:1の割合でコンテナ10中において予混合され、次いで最終製品、即ち小麦胚芽を富化した穀粉を提供するために、重量で1%から6%の間の量、好ましくは重量で約1.5%の量、穀物の粉砕で得られた穀粉とバッチフィーダー(供給機)11内で混合される。好ましくは、前記最終製品は、小麦胚芽で富化された型式0、00、1、2、及び全粒軟質小麦粉(薄力粉)である。
【0018】
第二の態様において、本発明は、以上で述べた方法によって得られる製品に適用され、それは穀粉(穀物の粉末)であるが、前記穀物は、軟質小麦、硬質小麦、米、トウモロコシ、大麦、オート麦、ライ麦、キビ、モロコシ、及び/又はそれらの混合物から選ばれ、穀粉は穀物胚芽で富化されており、前記穀物は、軟質小麦、硬質小麦、米、トウモロコシ、大麦、オート麦、ライ麦、キビ、モロコシ、及び/又はそれらの混合物から選ばれるが、より好ましくは軟質小麦粉であって小麦胚芽を富化された好ましくは型式0、00、1、2、及び全麦のものである。第三の態様において、本発明は、本発明の方法によって得られた穀粉を用いて調理した、例えばパン、スティックパン、クラッカー、などのオーブンで焼いた製品に適用される。
【0019】
本発明による方法は、穀物胚芽の存在のおかげで栄養的な観点から富化されており、且つ嫌な臭いを発する現象を起こさないで長期間保存のできる、穀粉を得ることを可能にする。更に、これらの穀粉は淡い白/黄色をしているので現在市場にある穀粉に非常に似ているが、優れた感覚受容性の(感覚器を刺激する)品質(例えば、改善された味や改善された香り)を有している。これらの穀粉は、穀物胚芽内に含有される物質が(パンの)膨らむ過程の原因となる微生物に対して不可欠な栄養素を構成すると同時に、レオロジー的及び(パンの)膨張的見地からみて改善された練り粉(パン生地)を得ることを可能にする。この穀粉を用いて得られたオーブンで焼く製品は、より風味豊かで、より柔らかで、且つ長期間にわたってより良い状態に保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明の方法を実施するプラントの概略図を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物胚芽で富化された穀粉を製造する方法であって
a)穀物胚芽から胚芽油を分離する工程と、
b)穀物胚芽油で富化された穀粉を生じさせるために、穀物の粉砕から得た穀粉を工程a)からの油を用いて富化する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
穀物胚芽から胚芽油を分離する前記工程a)が、
)胚芽油及び脱油胚芽残留物を生じさせるために穀物胚芽を圧搾する工程と、
)胚芽粉を生じさせるために前記脱油胚芽残留物を粉砕する工程と、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
c)前記胚芽粉を、胚芽油で富化された穀粉と、並びに穀物の粉砕によって得た穀粉と混合し、穀物胚芽で富化された穀粉を生じさせる工程、
を更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記穀物胚芽を圧搾する工程(工程a))が、穀物胚芽を好ましくは30℃から60℃の間の温度で乾燥する工程を含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記穀物胚芽の乾燥工程が、約30℃の温度で行なわれる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記乾燥工程が、赤外線ランプ(2)を備えた回転シリンダ内で行なわれる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記乾燥工程が、2分から15分の間の持続時間を有する、請求項4から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記乾燥工程が、約3分の持続時間を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記乾燥工程において、胚芽が30℃から60℃の間の最終温度に達する、請求項4から8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記乾燥工程において、胚芽が約33℃の最終温度に達する、請求項4から9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記乾燥工程から出て来たとき、胚芽が2%から10%の間の湿度を有する、請求項4から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記乾燥工程から出て来たとき、胚芽が約8%の湿度を有する、請求項4から11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記穀物胚芽を圧搾する工程(工程a))が、プレスする工程を含む、請求項2から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記プレスする工程が、横型プレス(3)で行なわれる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記プレスする工程が、70℃から100℃の間の温度で行なわれる、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記プレスする工程が、90℃から95℃の間の温度、好ましくは約91.5℃で行なわれる、請求項13から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記プレスする工程において、胚芽油が胚芽から分離され、それにより脱油胚芽残留物を得る、請求項13から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
前記脱油胚芽残留物が押出された形態をしている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記プレスする工程において、胚芽油が浸透した工程廃棄物の一部が更に分離される、請求項13から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記油が浸透した工程廃棄物が、重量で胚芽全体の1%から6%である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記油が浸透した工程廃棄物が、重量で胚芽全体の約3%である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記プレスする工程において、穀物胚芽が20秒から60秒の間の時間間隔内でプレス(3)に入れられる、請求項13から21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
前記プレスする工程において、穀物胚芽が約30秒以内でプレス(3)に入れられる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
胚芽油の回収のため前記廃棄物をプレスする工程を更に含む、請求項19から23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
胚芽油のろ過工程を更に含む、請求項1から24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
前記胚芽油ろ過工程が、請求項17により得られた油と請求項24によって得られた油とを混合する工程を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記油ろ過工程がフィルタープレス(8)で行なわれる、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記富化工程(工程b))が、穀物胚芽油を穀粉と混合する工程を含む、請求項1から27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
前記胚芽油が、重量で3%から20%の間の量、好ましくは重量で約10%の量、前記穀粉と混合される、請求項1から28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
前記胚芽油と穀粉の混合工程が、前記胚芽油を噴霧化するための噴霧機(9)で行なわれる、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記脱油胚芽残留物を粉砕する工程(工程a))が、前記脱油胚芽残留物の破砕工程(4)を含む、請求項2から30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
前記脱油胚芽残留物を粉砕する工程(工程a))が、前記破砕された脱油胚芽残留物の石臼(5)による粉砕工程を更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記混合する工程(工程c))が、胚芽粉を生じさせるために、請求項32による粗引き粉と請求項24による脱油廃棄物との混合物から得られた製品を、プランシフター(6)で選別する工程を含む、請求項3から32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
前記混合する工程において、胚芽粉を生じさせるため、請求項24による脱油廃棄物が、重量で1%から6%の間の量、好ましくは重量で約3%の量、請求項32による粗引き粉と混合される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記混合する工程(工程c))が、1:1から5:1の間の割合、好ましくは2:1の割合で、胚芽粉を胚芽油富化穀粉と予混合する工程を含む、請求項3から34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
前記混合する工程(工程c))が、請求項35により得られた前記穀粉を、重量で1%から6%の間の量、好ましくは重量で約1.5%の量、穀粉と更に混合する工程を含む、請求項3から35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
前記穀物が、軟質小麦、硬質小麦、米、トウモロコシ、大麦、オート麦、ライ麦、キビ、モロコシ、及び/又はそれらの混合物から選ばれる、請求項1から36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
請求項1から37のいずれか1項に記載の方法を用いて得られる穀粉。
【請求項39】
小麦胚芽を富化した小麦粉である、請求項38に記載の穀粉。
【請求項40】
小麦胚芽を富化した、型式0、00、1、2、全粒軟質小麦粉である、請求項38又は39に記載の穀粉。
【請求項41】
請求項38から40のいずれか1項に記載の穀粉を用いて得られるオーブンで焼いた製品。

【図1】
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【公表番号】特表2007−527195(P2007−527195A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512298(P2005−512298)
【出願日】平成15年12月12日(2003.12.12)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005895
【国際公開番号】WO2005/060758
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(506198470)
【Fターム(参考)】