説明

穀粒水分センサ

【課題】 多角電極ロールで水分測定する形態では、多角電極ロールの偏平面位置で穀粒を挾持圧砕して、水分測定を行うため、測定時の電極ロール間の間隙は一定であり、供給する穀粒が異なり、穀粒径が大、小に大きく変化するときは、穀粒の圧砕状態や、この電極ロール間における挾持圧の変化により、水分検出状態を大きく変えて、正確で安定した水分検出を維持し難い。
【解決手段】 相対向して逆回転する一対の電極ロール1、2間に穀粒を繰込挾持しながら圧砕して、この電極ロール1、2間に生ずる電気抵抗値によって圧砕穀粒の水分値を検出可能に設け、このいずれか一側の電極ロール1の回転周面を、偏心回転面3、楕円形状回転面4、又は、複数段の異径円形状回転面5に形成して、供給穀粒の粒径に応じたロール間隙A位置を選択可能に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、一対の電極ロール間で穀粒を挾持圧砕しながら、この穀粒の水分を検出する穀粒センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一対の八角ロールの回転により、ロール間に繰込穀粒を挾持圧砕して水分を検出する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−294664号公報(第1頁、図10)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、穀粒の種類や、粒径の大小に拘らず、電極ロールのロール間隙部への穀粒繰込性を良好にすると共に、穀粒の挾持圧砕を正確に行わせて、精度の高い穀粒水分を検出させるものである。前記引例の如き多角電極ロールでは、穀粒の繰込性は良好であるが、この水分測定時は、多角電極ロールの偏平面位置で穀粒を挾持圧砕して、水分測定を行うため、測定時の電極ロール間の間隙は一定であり、供給する穀粒が異なり、穀粒径が大、小に大きく変化するときは、穀粒の圧砕状態や、この電極ロール間における挾持圧の変化により、水分検出状態を大きく変えて、正確で安定した水分検出を維持し難い。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、相対向して逆回転する一対の電極ロール1、2間に穀粒を繰込挾持しながら圧砕して、この電極ロール1、2間に生ずる電気抵抗値によって圧砕穀粒の水分値を検出可能に設け、このいずれか一側の電極ロール1の回転周面を、偏心回転面3、楕円形状回転面4、又は、複数段の異径円形状回転面5に形成して、供給穀粒の粒径に応じたロール間隙A位置を選択可能に設けたことを特徴とする穀粒水分センサの構成とする。水分検出しようとする穀粒の種類、乃至粒径等を指定して、スタート位置の一対の電極ロール1、2間に穀粒を供給すると、前記スタート位置にある電極ロール1の繰込回転によって、供給された穀粒をロール間隙A部へ繰込むと共に、この偏心回転面3、楕円形状回転面4、又は異径円形状回転面5を有した電極ロール1の指定のロール間隙A位置への回転により、これら両電極ロール1、2間のロール間隙A部に穀粒を挾持して圧砕し、この穀粒を圧砕挾持した状態でロール回転を停止すると共に、この挾持圧砕した穀粒における電極ロール1、2間の電気抵抗値を計測して、穀粒の水分値として検出処理する。この水分検出後は、これら電極ロール1、2の排出回転により、挾持していた穀粒を排出して、初期スタート位置に戻る。又、粒径の異なる穀粒の水分を検出するときは、これを変更、指定することにより、前記のようにこの変更後のロール間隙A位置による水分検出作用を行わせることができる。このロール間隙A位置の変更によって、前記偏心回転面3、楕円形状回転面4、又は異径円形状回転面5の位相位置が変るため、ロール間隙が広、狭に切換えられて、供給穀粒に適応したロール間隙A位置において水分検出作用が行われる。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明は、電極ロール1が偏心回転面3、楕円形状回転面4、又は異径円形状回転面5に形成されるため、粒径の異なる穀粒に適応したロール間隙Aへの切換、及び穀粒の繰込や、排出等を円滑に行わせることができる。又、穀粒の水分検出作用が粒径に適応したロール間隙Aにおいて行われるため、穀粒の挾持圧砕状態等を一定にして、正確で、精度のよい安定した水分検出を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】偏心回転面を形成した電極ロールの側面図。
【図2】その一部別例を示す側面図。
【図3】楕円形状回転面を形成した電極ロールの側面図。
【図4】異径円形状回転面を形成した電極ロールの側面図。
【図5】水分センサの取付側面図。
【図6】穀粒乾燥機の操作盤の正面図。
【図7】乾燥制御装置一部のブロック図。
【図8】その穀粒水分測定制御のフローチャート。
【図9】その一部別例を示すフローチャート。
【図10】穀粒乾燥槽部の正断面図と、乾燥機のブロック図。
【図11】そのフローチャート。
【図12】除塵装置例を示す正面図。
【図13】その側面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面に基づいて、穀粒水分を検出する水分センサ6は、穀粒を乾燥する穀粒乾燥機に取付けて使用する。穀粒を収容する穀粒室から、熱風を通して加熱乾燥する乾燥室へ流下させるように、循環搬送しながら乾燥する循環形態の穀粒乾燥機であって、この穀粒を循環搬送するエレベータ7の搬送行程の途中箇所から、適数粒の穀粒を採取しながら水分の検出処理を行わせるものである。又、この乾燥機は、籾米だけではなく、麦や、大豆のような異種、異径の穀粒をも供給して乾燥することができる。
【0009】
前記エレベータ7の昇穀途中位置に取付孔8を形成し、この取付穴8の外側部に水分センサ6を取付ける。この水分センサ6は、エレベータ7内にのぞむ穀粒受ホッパー9、及び繰込オーガ10を有し、この繰込オーガ10から取込む穀粒を受けて水分検出する一対の電極ロール1、2を軸支する。これら電極ロール1、2間から排出される圧砕穀粒を受けて、エレベータ7へ還元させる戻し口11等を設ける。
【0010】
又、乾燥機の運転操作のため、操作盤12に、各種のスイッチSW0〜SW11や、表示窓13、インジケータ14、15、16及びモニタ19、20等を配置する。スイッチとしては、前記エレベータ7等を駆動して乾燥機に穀粒を張込むための張込スイッチSW0や、ブロワー等を駆動して乾燥室等に通風したり排塵する通風スイッチSW1、バーナや、乾燥室の繰出バルブ等を駆動して乾燥作用を行わせる乾燥スイッチSW2、乾燥後の穀粒を機外へ排出するように搬送経路を切換える排出スイッチSW3、乾燥、穀粒搬送等を停止する停止スイッチSW4、乾燥機に供給する穀粒量や、乾燥する穀粒の種類等を設定する乾燥設定スイッチSW6、穀粒水分値を設定する水分設定スイッチSW7、乾燥機に張込むための穀粒量を設定するための張込量スイッチSW8、乾燥時間等のタイマーを増減調節するタイマー設定スイッチSW9、SW10、及び緊急時に乾燥作用等を停止させるための緊急停止スイッチSW11等を配置している。又、前記インジケータ14は、張込量スイッチSW8による設定穀粒量を表示し、インジケータ15は、水分設定スイッチSW7により設定される水分値を表示し、又、インジケータ16は、乾燥設定スイッチSW6によって設定された穀粒の種類18や、乾燥速度17等を表示する。又、モニター19は、乾燥機の作動箇所を表示するインジケータ21や、異常表示するパイロットランプ22等を配置し、モニター20は、穀粒水分のばらつきや、未熟粒の混入量の多少等を表示することができる。
【0011】
ここにおいて、水分センサ6は、相対向して逆回転する一対の電極ロール1、2間の穀粒を繰込挾持しながら圧砕して、この電極ロール1、2間に生ずる電気抵抗値によって圧砕穀粒の水分値を検出可能に設け、このいずれか一側の電極ロール1の回転周面を、偏心回転面3、楕円形状回転面4、又は、複数段の異径円形状回転面5に形成して、供給穀粒の粒径に応じたロール間隙A位置を選択可能に設ける。水分検出しようとする穀粒の種類、乃至粒径等を指定して、一対の初期位置の電極ロール1、2間に穀粒を供給すると、前記初期位置にある電極ロール1の繰込回転によって、供給された穀粒をロール間隙部へ繰込むと共に、この偏心回転面3、楕円形状回転面4、又は異径円形状回転面5を有した電極ロール1の指定のロール間隙A位置への回転により、これら両電極ロール1、2間の指定ロール間隙A部に穀粒を挾持して圧砕し、この穀粒を圧砕した状態で回転をロール間隙A位置に停止すると共に、この挾持圧砕した穀粒における電気抵抗値を計測して、穀粒の水分値として検出処理する。この水分検出の電極ロール1、2の排出回転により、挾持していた穀粒を排出して初期のスタート位置に戻る。又、粒径の異なる穀粒の水分を検出するときは、これを変更、指定することにより、前記のようにこの変更後のロール間隙A位置による水分検出作用を行わせることができる。このロール間隙A位置の変更によって、前記偏心回転面3、楕円形状回転面4、又は異径円形状回転面5の位相位置が変るため、ロール間隙Aが広、狭に切換えられて、供給穀粒に適応したロール間隙A位置において水分検出作用が行われる。
【0012】
前記水分センサ6は、コントローラ23からの出力によってギヤドモータ24が駆動されると、駆動軸25が回転されて、電極ロール2のロール軸26と、電極ロール1のロール軸27がギヤ噛合により互に逆方向へ回転される伝動構成としている。又、前記駆動軸25から繰込オーガ軸28を連動して、前記穀粒ホッパー9受けた穀粒を一粒毎取込搬送して、電極ロール1、2間の繰込口29にのぞむ供給パイプ30へ案内する。
【0013】
前記、図1のように、偏心回転面3を有する電極ロール1にあっては、円形ロールを対向方向線XーX上に沿った偏心H位置のロール軸26の周りに回転するように駆動回転することができる。この電極ロール1の回転位相位置によって、対向する心円回転面の電極ロール2外周面との間のロール間隙A位置をA1、A2(A1<A2)のように異にする。A1:籾粒の圧砕に適するロール間隙とし、A2:大豆粒の圧砕に適するロール間隙とする。このような電極ロール1、2は、スタート位置Sに停止していて、水分検出スイッチ31がONされることによって、指定のロール間隙A位置に繰込回転されて停止される。このロール間隙A位置は、前記乾燥機の乾燥設定スイッチSW6によって設定される穀粒の種類によって自動的に決められる。籾粒ではA1、大豆粒ではA2としてロール間隙位置に繰込回転されて停止される。このときの繰込回転によってロール間隙A位置に繰込まれる一粒、又は数粒の穀粒が両電極ロール1、2間に挾持されて圧砕されると共に、この挾持状態を維持する。このとき、両電極ロール1、2間にわたって通電されるときの電気抵抗値を水分検出回路32で測定することによって穀粒水分値を検出する。この水分値は表示窓13に表示される。このような穀粒水分の検出が行われると、電極ロール1、2は停止位置から同方向へ排出回転されてスタート位置Sに戻って停止する。この排出回転によって水分値検出を受けた圧砕穀粒が、ロール間隙Aから排出されて、戻し口11からエレベータ7内へ還元される。
【0014】
このような、ロール間隙A位置は、偏心側の電極ロール1の偏心長径位相位置、又は偏心短径位相位置を、ロール軸26、27間方向線XーXに沿った位置に設定することができる。又、このような偏心長径位相位置、又は短径位相位置以外の位相位置を選定して、穀粒の粒径に適応するロール間隙に設定することも可能である。
【0015】
前記ロール間隙Aの最大間隙A2においては、大豆粒が漏下しないで、又、ロール間隙Aが最小間隙A1においては、籾粒が漏下しないで、しかも、これらの間隙A2においては大豆を挾持圧砕し、間隙A1においては籾粒を挾持圧砕することができるように間隙A設定している。又、電極ロール1、2の水分作用行程の回転スタート位置Sは、前記ロール間隙の水分検出位置XーXよりも適宜回転角度α手前の位置に設定して停止させ、穀粒水分を検出した後は、このスタート位置Sに回動して停止し、続く水分検出のタイミングを待機させるように構成する。
【0016】
このような電極ロール1、2のスタート位置S、及びロール間隙A位置での停止等は、この乾燥しようとする穀粒の種類を、乾燥設定スイッチSW6より設定することによって決められる。
【0017】
前記電極ロール1、2は、位置側の電極ロール1のみ偏心回転面3の形態としたが、図2のように他方の電極ロール2をも同様に偏心回転面に形成することも可能である。この形態では、各電極ロール1、2の偏心量を小さくすることができる。
【0018】
又、このような電極ロール1、2のロール間隙A位置の設定、制御は、図3のように回転周面を楕円形状回転面4の形態とすることもできる。この電極ロール1の長径位相位置を、ロール軸26、27間方向線XーXに沿わせて、籾粒水分を検出可能にしたり、短径位相位置を、ロール軸26、27間方向線XーXに沿わせて、大豆粒水分を検出可能にすることができる。
【0019】
次に、図4のように、電極ロール1、2の回転周面を、異径円形状回転面5に形成することも可能で、この形態では、大径回転面Lをロール軸間の水分検出位置XーX上で対向させることによって籾粒水分検出用とすることができ中間径回転面Mをロール軸間の水分検出位置XーX上で対向させることによって中粒径の大豆水分検出用とし、又、小径回転面Nをロール軸間の水分検出位置XーX上で対向させることによって大粒径の大豆水分検出用として設定し、又は選択することができる。このような、異径円形状回転面5の各径回転面L、M、Nの切換えは、前記乾燥設定スイッチSW6による穀粒種類の選定に伴って、スタート位置S、及び水分検出位置XーXでの停止制御を行わせる形態とすることができる。又、図示のように電極ロール1、2の軸穴とロール軸26、27を六角形態としておき、これらロール軸26、27に対する電極ロール1、2の嵌合位相位置を差し変えることによって、穀粒の種類、粒径に応じたロール間隙Aを選択可能の構成とすることも可能である。又、前記スタート位置Sは、これら選択された回転面と同一回転面L、M、Nの領域内において設定することができる。
【0020】
穀粒乾燥機や、コンバイン、或は籾摺、精米、選別等の穀粒調整機等の穀粒処理装置での水分測定時に夾雑物や、塵埃混入による異常低水分データ除去数が多い場合、有効データ数が不足し、信頼性が良好なリアルタイム測定にならない。又、水分測定装置への塵埃堆積により水分測定電極の短絡の発生や、機械的固着などの発生により、安定した測定を維持できない。
【0021】
そこで、図8、図9のように、前記のような測定水分測定電極対の近傍に塵埃量を検出する塵埃センサ34を設けて、この塵埃センサ34による検出塵埃量により、一時的に水分測定を中断すること、或は、信頼性不十分な測定値の算出を回避すべく除塵装置35の除塵能力を増加制御等を実施することによって、水分測定装置の信頼性を向上し、穀粒処理装置による仕上品質を向上する。
【0022】
又、前記塵埃センサ34による検出値が所定値以上のときは水分測定不可と判断して、測定を中断する信号を発することができる(図9のサブルーチン)。
又、前記塵埃センア34による検出値が所定値1より低く、所定値2以上のときは、塵埃量過多と判断し、水分測定装置を付設した穀粒処理装置の除塵装置35を制御すべく信号を発する。
【0023】
次に、主として図10〜図13に基づいて、前記循環形態の穀粒乾燥機における除塵装置に関するもので、乾燥中の単粒、もしくは複数粒水分測定を径時的に行い、所定粒数の平均値を演算し、乾燥の進行状態を評価する水分センサ6(測定装置)を有する穀粒乾燥制御において、この水分センサ6には塵埃センサ34を設けて、検出塵量が所定値1よりも低く、所定値2以上であれば、循環形乾燥機36の貯留部37上方の空間部、もしくは上部搬送装置38近傍に個別に作動可能な、夾雑物の大きさや、塵埃量に対応すべく除塵埃装置35A、35Bを複数個設け、単独駆動、或は連動駆動可能な構成として、前記検出塵埃量のとき複数個の除塵装置35を連動運転するものである。乾燥室39の底部に繰出バルブ40が設けられて、この繰出バルブ40のモータ41駆動によって、穀粒が流下されエレベータ7等を経て上昇循環搬送される。
【0024】
又、前記乾燥制御において、水分センサ6による水分測定部には塵埃量を検出する塵埃センサ34を設けて、この検出塵埃量が所定値1以上であれば、所定時間にわたる送風機42駆動による通風乾燥を実行し、その後熱風乾燥に移行するように制御するものである(図11、サブルーチン)。
【0025】
又、前記検出塵埃量が所定値1以上である場合は、水分測定が不可と判断して、水分測定制御を中断する共に、タイマー運転乾燥制御に切り替えるように制御する。
【符号の説明】
【0026】
1 電極ロール
2 電極ロール
3 偏心回転面
4 楕円形状回転面
5 異径円形状回転面
6 水分センサ
7 エレベータ
A ロール間隙
A1 小(籾粒)間隙
A2 大(大豆粒)間隙
S スタート位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
相対向して逆回転する一対の電極ロール(1)、(2)間の穀粒を繰込挾持しながら圧砕して、この電極ロール(1)、(2)間に生ずる電気抵抗値によって圧砕穀粒の水分値を検出可能に設け、このいずれか一側の電極ロール(1)の回転周面を、偏心回転面(3)、楕円形状回転面(4)、又は、複数段の異径円形状回転面(5)に形成して、供給穀粒の粒径に応じたロール間障(A)位置を選択可能に設けたことを特徴とする穀粒水分センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−256084(P2010−256084A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−104240(P2009−104240)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】