説明

穀粒選別装置

【課題】 チャフシーブを上下二段に構成した穀粒選別装置において、層状選別と風選別のバランスを保ち、良好な選別性能を発揮させる。
【解決手段】 チャフシーブ7、8を備える揺動選別体21と、該揺動選別体21の前側で選別風を起風する圧風ファン12とが設けられると共に、チャフシーブ7、8を複数のフィン7a、7b、8a、8bで構成し、フィン間の隙間から穀粒を漏下させる穀粒選別装置1であって、前記チャフシーブ7、8を上下二段に構成すると共に、各チャフシーブ7、8の後部に、選別風を上方へ案内する導風体7c、8cを設け、さらに、上段チャフシーブ7の導風体7cを、下段チャフシーブ8の導風体8cよりも前方に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインやハーベスタに設けられる穀粒選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
穀粒を揺動選別する揺動選別体と、該揺動選別体の前側で選別風を起風する圧風ファンとを備えた穀粒選別装置が知られている。通常、揺動選別体は、複数のフィンからなるチャフシーブを備えており、該チャフシーブ上に移送された穀粒は、揺動選別体の揺動に伴って層状選別(比重選別)されると共に、フィン間を吹き抜ける選別風によって風選別される。
【0003】
また、チャフシーブを上下二段に構成した穀粒選別装置も知られている(例えば、特許文献1参照。)。このように構成された穀粒選別装置によれば、チャフシーブによる層状選別を二段階で行うことができるため、選別精度や選別効率を向上させることが可能になる。
【特許文献1】特開平6−169633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、チャフシーブを上下二段に構成すると、選別風の吹き上げが悪くなるため、層状選別と風選別のバランスが崩れ、却って選別精度が低下する惧れがある。尚、チャフシーブのフィン開度制御にもとづいて、層状選別と風選別のバランスを調整する方法もあるが、この場合には、調整に時間がかかるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、チャフシーブを備える揺動選別体と、該揺動選別体の前側で選別風を起風する圧風ファンとが設けられると共に、前記チャフシーブを複数のフィンで構成し、フィン間の隙間から穀粒を漏下させる穀粒選別装置において、前記チャフシーブを上下二段に構成すると共に、上段及び下段チャフシーブの後部に、選別風を上方へ案内する導風体を設け、さらに、上段チャフシーブの導風体を、下段チャフシーブの導風体よりも前方に配置したことを特徴とする。このようにすれば、チャフシーブを上下二段に構成したものでありながら、各チャフシーブにおける選別風の吹き上げを促すことができ、しかも、上段チャフシーブの導風体を、下段チャフシーブの導風体よりも前方に配置することにより、選別風を広範囲で効率良く吹き上げさせることができる。これにより、チャフシーブを上下二段に構成しても、層状選別と風選別のバランスを保ち、良好な選別性能を発揮することができる。
また、前記チャフシーブは、フィン角度が可変な可動フィンと、フィン角度が固定された固定フィンとを備え、前記導風体は、上段及び下段チャフシーブの固定フィンに設けられることを特徴とする。このようにすれば、可動フィンによるフィン開度調整を行いつつ、導風体によって一定方向に選別風を吹き上げ、安定した風選別を行うことができる。
また、前記下段チャフシーブの導風体は、一番流板に沿って配置されることを特徴とする。このようにすれば、一番流板上までチャフシーブを配置して、一番口に対する切れ藁などの落下を防止しながらも、一番流板付近の強い選別風を導風体で導き、排塵天板付近まで吹き上げさせることができる。これにより、選別風の吹き上げ高さ不足による三番飛散の増加を防止することができる。
また、前記上段チャフシーブの導風体は、排塵風路天板の先端部に向けて配置されることを特徴とする。このようにすれば、選別風を、四番口に吹き抜けさせることなく、排塵口に導くことができる。これにより、排塵ファンの効率を上げ、排塵ファンの静粛性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
次に、本発明の実施形態について、図面に基づいて説明する。図面において、1は穀粒選別装置であって、該穀粒選別装置1は、茎稈を扱室2に沿って挟持搬送する脱穀フィードチェン3と、搬送茎稈から被選別物(混合物を含む穀粒)を脱穀する扱胴4と、脱穀された被選別物を漏下する受網5と、受網5から漏下した被選別物を順次揺動搬送する揺動流板6と、該揺動流板6の終端部で被選別物を層状選別(比重選別)するチャフシーブ7、8と、該チャフシーブ7、8から漏下した被選別物を篩選別するグレインシーブ9と、前記グレインシーブ9から漏下した穀粒を一番ラセン10に導く前低後高状の一番流板11と、該一番流板11の前方で選別風を起風する圧風ファン12と、前記チャフシーブ7、8の後方に配置されるストロラック13と、該ストロラック13から漏下した被選別物を二番ラセン14に導く前低後高状の二番流板15と、前記二番ラセン14の前方で選別風を起風する二番選別ファン16と、選別室の終端部に構成される排塵室17と、該排塵室17内に設けられる排塵ファン18と、脱穀処理済みの排藁を、四番口19を介して機外に排出搬送する排藁チェン20とを備えて構成されている。
【0007】
揺動流板6、チャフシーブ7、8、グレインシーブ9、一番流板11、ストロラック13及び二番流板15は、揺動選別体21に設けられている。揺動選別体21は、選別室に揺動自在に支持されており、クランク機構又はカム機構からなる揺動機構22によって所定の周期で連続的に往復揺動される。
【0008】
チャフシーブ7、8は、所定の間隔を存して上下二段に構成されている。すなわち、揺動流板6から後方に移送された穀粒は、上段チャフシーブ7で層状選別を受けた後、下段チャフシーブ8上に落下し、ここで第二の層状選別を受けてからグレインシーブ9上に落下する。これにより、チャフシーブ7、8による層状選別を二段階で行い、選別精度や選別効率を向上させることが可能になる。尚、本実施形態では、下段チャフシーブ8から漏下した穀粒を更にグレインシーブ9で篩選別しているが、グレインシーブ9は省略してもよい。
【0009】
各チャフシーブ7、8は、前後方向に所定間隔を存して並列する複数の可動フィン7a、8a及び複数の固定フィン7b、8bを備えて構成されている。可動フィン7a、8aは、フィン角度が調整可能であって、このフィン角度調整に応じてフィン間の隙間調整(開度調整)が行われる。例えば、揺動流板6やチャフシーブ7、8上における被選別物の量に応じて、フィン開度が自動制御される。一方、固定フィン7b、8bは、各チャフシーブ7、8の後端部に設けられており、フィン角度が固定されている。
【0010】
つぎに、穀粒選別装置1における選別風の流れについて、図2を参照して説明する。図2に示すように、圧風ファン12が起風した選別風は、上段チャフシーブ7と下段チャフシーブ8との隙間、下段チャフシーブ8とグレインシーブ9との隙間、更に、グレインシーブ9と一番ラセン10との隙間に吹き込まれる。これらの選別風は、そのまま隙間を通り抜けるか、或いは、チャフシーブ7、8、グレインシーブ9から吹き上がり、排塵室17に到達する。また、二番選別ファン16が起風した二番選別風は、ストロラック13から吹き上がり、排塵室17に到達する。このとき、層状選別と風選別のバランスを考慮すると、各チャフシーブ7、8においては、ある程度の吹き上げ風(フィン間を通過する選別風)が発生することが好ましいが、チャフシーブ7、8を上下二段に構成した場合、選別風の吹き上げが悪くなる可能性がある。
【0011】
本発明の穀粒選別装置1では、各チャフシーブ7、8の後部に、選別風を上方へ案内する導風体7c、8cが設けられ、さらに、上段チャフシーブ7の導風体7cは、下段チャフシーブ8の導風体8cよりも前方に配置される。このように構成すると、チャフシーブ7、8を上下二段に構成しても、各チャフシーブ7、8における選別風の吹き上がりが促進され、また、上段チャフシーブ7の導風体7cを、下段チャフシーブ8の導風体8cよりも前方に配置することにより、選別風を広範囲で効率良く吹き上げさせることが可能になる。その結果、チャフシーブ7、8を上下二段に構成した穀粒選別装置1において、層状選別と風選別のバランスを保ち、良好な選別性能を発揮することができる。
【0012】
導風体7c、8cは、可動フィン7a、8aや固定フィン7b、8bと同等の板材を用いて構成することができる。例えば、板状の導風体7c、8cを可動フィン7a、8aや固定フィン7b、8bと並列に配置すると共に、導風体7c、8cが可動フィン7a、8aや固定フィン7b、8bよりも下方に突出するようにすれば、チャフシーブ7、8の下方に流れる選別風をフィン間に導くことが可能になる。
【0013】
本実施形態では、板材で導風体7c、8cを構成するにあたり、この導風体7c、8cをチャフシーブ7、8の固定フィン7b、8bに設けている。このように構成すると、可動フィン7a、8aによるフィン開度調整を行いつつ、導風体7c、8cによって一定方向に選別風を吹き上げ、安定した風選別を行うことができる。尚、本実施形態では、導風体7c、8cと固定フィン7b、8bを別体で構成しているが、一部材で一体的に構成するようにしてもよい。
【0014】
また、下段チャフシーブ8の導風体8cは、一番流板11の終端部に沿って配置されることが好ましい。このようにすれば、一番流板11上までチャフシーブ8を配置して、一番ラセン10に対する切れ藁などの落下を防止しながらも、一番流板11付近の強い選別風を導風体8cで導き、排塵室17の天板23付近まで吹き上げさせることができる。これにより、選別風の吹き上げ高さ不足による三番飛散の増加を防止することができる。
【0015】
また、上段チャフシーブ7の導風体7cは、排塵室17における天板23の前端部に向けて配置することが好ましい。このようにすれば、選別風を、四番口19に吹き抜けさせることなく、排塵室17に導くことができる。これにより、排塵ファン18の効率を上げ、排塵ファン18の静粛性を高めることができる。
【0016】
また、本実施形態では、二番流板15の終端部に、排塵室17に沿って立ち上がる折曲部15aを形成すると共に、この折曲部15aとストロラック13の後端との間に間隙を確保している。つまり、この折曲部15aは、二番選別風を受けて二番流板15上を駆け上がる穀粒を失速させつつ、前方へ跳ね返すように作用する。これにより、二番選別風を受けて二番流板15上を駆け上がった穀粒が、圧風ファン12の選別風を受けて三番飛散となる不都合が回避される。
【0017】
叙述の如く構成された本実施形態のものは、チャフシーブ7、8を備える揺動選別体21と、該揺動選別体21の前側で選別風を起風する圧風ファン12とが設けられると共に、チャフシーブ7、8を複数のフィン7a、7b、8a、8bで構成し、フィン間の隙間から穀粒を漏下させる穀粒選別装置1であって、前記チャフシーブ7、8を上下二段に構成すると共に、各チャフシーブ7、8の後部に、選別風を上方へ案内する導風体7c、8cを設けたので、各チャフシーブ7、8における選別風の吹き上げを促すことができる。
【0018】
しかも、上段チャフシーブ7の導風体7cを、下段チャフシーブ8の導風体8cよりも前方に配置することにより、選別風を広範囲で効率良く吹き上げさせることができる。これにより、チャフシーブ7、8を上下二段に構成しても、層状選別と風選別のバランスを保ち、良好な選別性能を発揮することができる。
【0019】
また、チャフシーブ7、8は、フィン角度が可変な可動フィン7a、8aと、フィン角度が固定された固定フィン7b、8cとを備え、導風体7c、8cは、各チャフシーブ7、8の固定フィン7b、8bに設けられるので、可動フィン7a、8aによるフィン開度調整を行いつつ、角度が固定された導風体7c、8cによって一定方向に選別風を吹き上げ、安定した風選別を行うことができる。
【0020】
また、下段チャフシーブ8の導風体8cは、一番流板11に沿って配置されるため、一番流板11上までチャフシーブ8を配置して、一番口に対する切れ藁などの落下を防止しながらも、一番流板11付近の強い選別風を導風体8cで導き、排塵室17の天板23付近まで吹き上げさせることができる。これにより、選別風の吹き上げ高さ不足による三番飛散の増加を防止することができる。
【0021】
また、上段チャフシーブ7の導風体7cは、排塵室17における天板23の先端部に向けて配置されるので、選別風を、四番口19に吹き抜けさせることなく、排塵室17に導くことができる。これにより、排塵ファン18の効率を上げ、排塵ファン18の静粛性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】穀粒選別装置の内部側面図である。
【図2】選別風の流れを図示した穀粒選別装置の内部側面図である。
【図3】穀粒選別装置の要部側面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 穀粒選別装置
7 上段チャフシーブ
7a 可動フィン
7b 固定フィン
7c 導風体
8 下段チャフシーブ
8a 可動フィン
8b 固定フィン
8c 導風体
11 一番流板
12 圧風ファン
17 排塵室
18 排塵ファン
19 四番口
21 揺動選別体
23 天板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャフシーブを備える揺動選別体と、該揺動選別体の前側で選別風を起風する圧風ファンとが設けられると共に、前記チャフシーブを複数のフィンで構成し、フィン間の隙間から穀粒を漏下させる穀粒選別装置において、
前記チャフシーブを上下二段に構成すると共に、上段及び下段チャフシーブの後部に、選別風を上方へ案内する導風体を設け、さらに、上段チャフシーブの導風体を、下段チャフシーブの導風体よりも前方に配置したことを特徴とする穀粒選別装置。
【請求項2】
前記チャフシーブは、フィン角度が可変な可動フィンと、フィン角度が固定された固定フィンとを備え、前記導風体は、上段及び下段チャフシーブの固定フィンに設けられることを特徴とする請求項1記載の穀粒選別装置。
【請求項3】
前記下段チャフシーブの導風体は、一番流板に沿って配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の穀粒選別装置。
【請求項4】
前記上段チャフシーブの導風体は、排塵風路天板の先端部に向けて配置されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の穀粒選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−50994(P2006−50994A)
【公開日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−236390(P2004−236390)
【出願日】平成16年8月16日(2004.8.16)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】