積分型センシング装置
【構成】 本装置は、第1の手段1と、第2の手段2と、第1、第2の手段の出力差を演算する出力差演算手段3と、その出力差の変化率を演算し、その変化率により第1の手段1の誤差を推定する誤差推定手段5とを有する。第1の手段1は、微分量計測手段6と、誤差推定手段5の誤差推定量をもとに誤差補正する誤差補正手段7と、信号を時間積分する時間積分手段8とを有する。上記において、物理量9の誤差は積分により増大する。そこで、第2の手段2を基準にして差を出力差演算手段3でとり、その変化率を誤差推定手段5で算出することにより誤差推定し、誤差補正手段7で計測微分量の誤差を補正する。
【効果】 計測微分量に含まれる誤差を補正することが可能となり、積分によって本来累積するはずであった誤差を小さくすることができ、信頼性が向上する。
【効果】 計測微分量に含まれる誤差を補正することが可能となり、積分によって本来累積するはずであった誤差を小さくすることができ、信頼性が向上する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、微分量を計測しそれを積分することにより所要量を算出する積分型センシング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】微分量を計測しそれを積分することにより所要量を算出する積分型センシング装置は、各分野において利用されている。
【0003】以下、車載用ナビゲーション装置を例に積分型センシング装置の従来技術の説明を行う。
【0004】従来から道路交通網の任意の個所を走行している車両の位置を検出する方式としては、距離センサと、方位センサと、両センサからの出力信号に必要な処理を施す処理装置とを具備し、車両の走行に伴って生ずる距離変化量および方位変化量を積算しながら車両の現在位置データを得る推測航法が提案されているが、距離センサおよび方位センサが必然的に有している誤差が走行距離に伴って累積され、得られる現在位置データに含まれる誤差も累積されてしまうという問題がある。
【0005】特に、方位センサにおいては、従来から車両の絶対方位を検出することのできる地磁気センサと、車両の相対的方位変化を検出することのできるジャイロセンサとを組み合わせて用いることにより、車両の走行方位を検出しているが、各々センサ特有の誤差特性を持っている。
【0006】地磁気センサは、高圧線やビルディング等の影響により磁場環境の悪い場所において短期的なノイズが発生するが、長期的には正しい方位を出力する。一方、ジャイロセンサは、磁場環境の影響は全く受けず、短期的には正しい相対的方位変化を出力するが、長期的にはドリフト(角速度バイアスの変動)の影響により時間の経過とともに方位誤差が累積する。
【0007】このような問題点を解決する一方法として、特開昭61−258112号公報に示されているセンサ信号をフィルタリングする方法があり、図2を用いて説明する。差動走行距離計20は左右の車輪の回転差から車両回転角を検出するセンサであり、ジャイロセンサと同様な誤差特性を持っている。コンパス22は地磁気センサに代表される絶対方位センサであり、マップ21は車両に搭載されたディジタル道路データベースであり、現在位置が道路上に特定されている場合、センサ同様、道路方位を車両方位として出力することができる。
【0008】コンパス22またはマップ21からの方位と差動走行距離計20からの方位との差をとり、それにローパスフィルタをかけてコンパス22等(地磁気センサ)に含まれる高周波ノイズを除去する。その信号を差動走行距離計20の出力から差し引くことにより、差動走行距離計20等(ジャイロセンサ)に含まれるバイアス誤差を取り除く。従って、最終的に出力される方位信号は各々のセンサの誤差成分を補正した信号が出力される。
【0009】また、同様のフィルタリング方式で、カルマンフィルタを適用した特開平3−188316号公報の例もある。
【0010】また別の解決法として、車両が道路上を走行することを前提として、上記推測航法に基づいて得られた現在位置データと、予めメモリに格納されている道路交通網データとを比較し、現在位置データの道路からのずれ量を累積誤差として算出し、上記現在位置データに対して累積誤差分の補正を行い、現在位置データを道路データに一致させるようにした、例えば特開昭63−148115号公報に示されるような地図マッチング方式が提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記の例のような、微分量を計測し、それを積分することにより所要量を算出する積分型センシング装置の場合、微分量に含まれる誤差は、積分操作により累積されるため、仮りに、その誤差が微量であっても多大な誤差を引き起こす可能性がある。
【0012】その上、上記車載用ナビゲーション装置の例の場合、フィルタリング方式においては、例えば高速道路等の連続した構造物の上を走行する場合などは、地磁気センサ出力にも定常的な誤差が発生するため、それに基づいてジャイロセンサのバイアスを精度良く補正することは困難となる。
【0013】また、地図マッチング方式においては、ドライバに示す最終的な表示を修正するに過ぎず、センサ誤差発生の根本的解決にはならない。
【0014】すなわち、例えば、方位センサにジャイロなどの角速度を計測するレートセンサを用いる場合、計測角速度にバイアス誤差が含まれてくると、角度誤差は時間とともに増大する。これは最終的な角度表示を修正しても、その後またすぐ同様な誤差が発生してしまう。
【0015】また、例えば、距離センサに車輪の回転数を周期的に計測する車速センサを用いる場合、タイヤの空気圧変化などにより、車輪の回転数から車速を算出するスケールファクタが変化し、距離誤差が走行距離の増加とともに増大する。これも上記地図マッチング方式により位置が修正された場合でも、その後またすぐに同様な誤差が発生してしまう。
【0016】前述のようにこの種の誤差は、車載用ナビゲーション装置に限ったものではなく、センシング対象である物理量の微分量を計測し、その後それを積分して所要量を算出する方式においては共通の課題である。
【0017】本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、積分により累積する誤差をできる限り減少させ、より精度の高い積分センシング装置を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、センシング対象である物理量を得る第1の手段を有し、前記第1の手段は、前記物理量の微分量を計測する計測手段と、前記微分量を積分する積分手段とを有する積分型センシング装置において、前記物理量を得る第2の手段と、前記第1及び第2の手段により得られた各々の物理量の差の変化率から前記第1の手段における計測微分量の誤差を推定する誤差推定手段と、前記誤差に基づき前記第1の手段における計測微分量を補正する手段とを有することとしたものである。
【0019】前記物理量の差の変化率は、時間変化率であってもよい。
【0020】前記誤差が前記第1の手段における計測微分量のバイアス誤差であってもよい。
【0021】前記物理量の差の時間に対する変化を回帰直線にて表し、前記回帰直線の傾きを前記第1の手段における計測微分量の一定バイアス誤差としてもよい。
【0022】前記物理量が車両の走行方位角であり、前記第1の手段がジャイロセンサによる走行方位検出であり、前記第2の手段が車両に搭載された道路地図メモリに記憶された対応する道路方位角を走行方位角として出力することとしてもよい。
【0023】前記第2の手段が衛星信号を基に地球上の位置及び方位を検出するGPS装置であってもよい。
【0024】前記第2の手段が地球磁場を検出する地磁気センサによる方位を検出するものであってもよい。
【0025】前記物理量が車両の走行距離であり、前記第1の手段が車速を周期的に計測して、走行距離を検出し、前記第2の手段が車両に搭載された道路地図メモリに記憶された対応する道路長を走行距離として検出し、前記第1の手段と前記第2の手段により得られた各々の物理量の差の走行距離による変化率から前記第1の手段における計測微分量のスケールファクタ誤差を算出し、前記スケールファクタ誤差に基づき前記第1の手段における計測微分量を補正するものとしてもよい。
【0026】前記第2の手段が衛星信号を基に地球上の位置及び方位を検出するGPS装置による走行距離検出であってもよい。
【0027】前記物理量が車両の走行速度であり、前記第1の手段が車体に固定した加速度センサにより、走行速度を検出し、前記第2の手段が車輪の回転数を周期的に計測して走行速度を検出するものであってもよい。
【0028】
【作用】以上の積分型センシング装置であれば、センシング対象である物理量の変化率である微分量を計測し、前記微分量を表す信号を積分することにより前記物理量を得る第1の手段を備えた積分型センシング装置において、前記第1の手段とは別の前記物理量を得る第2の手段を備え、前記第1及び第2の手段により得られた各々の物理量の差の変化率から前記第1の手段における計測微分量の誤差を推定し、前記誤差に基づき前記第1の手段における計測微分量を補正することができる。
【0029】すなわち、前記物理量の差の変化率を時間変化率とした場合、その時間変化率により計測微分量のバイアス誤差が推定可能である。例えば、前記物理量の差の時間に対する変化を回帰直線にて表した場合、前記回帰直線の一定の傾きを前記第1の手段における計測微分量の一定バイアス誤差と見ることができる。
【0030】前記物理量が車両の走行方位角とし、また前記第1の手段が車体に固定したジャイロセンサにより走行方位を検出し、前記第2の手段が車両に搭載された道路地図メモリに記憶された対応する道路方位角を走行方位角とする場合、あるいは、衛星信号を基に地球上の絶対位置及び絶対方位を検出するGPS装置による走行方位の検出かもしくは、地球磁場を検出する地磁気センサによる方位の検出とした場合、上記同様、走行方位角の角速度におけるバイアス誤差を算出でき、その誤差を補正した精度の高い走行方位角を求めることができる。
【0031】前記物理量を車両の走行距離とし、前記第1の手段が車速を計測して、走行距離を検出し、前記第2の手段が車両に搭載された道路地図メモリに記憶された対応する道路長を走行距離とする場合、あるいは、衛星信号を基に地球上の絶対位置及び絶対方位を検出するGPS装置で走行距離を検出する場合でも、前記第1の手段と前記第2の手段により得られた各々の物理量の差の走行距離による変化率から前記第1の手段における計測微分量のスケールファクタ誤差を算出し、前記スケールファクタ誤差に基づき前記第1の手段における計測微分量を補正することが可能である。
【0032】前記物理量を車両の走行速度とし、前記第1の手段が車体に固体した加速度センサで走行速度を検出し、前記第2の手段が車速を計測して、走行速度を検出する場合でも、上記と全く同様の精度改善が達成可能である。
【0033】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明に係わる装置の実施例を説明する。はじめに、図1、3により本発明に係わる装置の原理を説明する。
【0034】図1は、本発明が適用された積分型センシング装置の構成図である。本装置は、第1の手段1と、第2の手段2と、第1の手段と第2の手段の出力差を演算する出力差演算手段3と、その出力差の変化率を演算し、その変化率により第1の手段1の誤差を推定する誤差推定手段5とを有する。
【0035】第1の手段1は、対象である物理量の時間微分量を計測する微分量計測手段6と、誤差推定手段5の誤差推定量をもとに誤差補正する誤差補正手段7と、微分量計測手段6と誤差補正手段7の処理を経た信号を時間積分する時間積分手段8とを有する。以上の処理により対象である物理量9が得られる。
【0036】すなわち、第1の手段1は微分量計測手段6で微分量を計測し、時間積分手段8で積分することにより対象とする物理量9を得るため、計測した微分量に誤差が生じると対象とする物理量9の誤差は積分により徐々に増大する。そこで、別の第2の手段2を基準にして差を出力差演算手段3でとり、その変化率を誤差推定手段4で算出することにより誤差推定し、それから誤差補正手段7で計測微分量の誤差を補正することで最終的な対象とする物理量9の精度を向上させる。
【0037】図3は、第1の手段31と第2の手段2の信号にカルマンフィルタリング13を施して対象とする物理量が算出する方式において、カルマンフィルタゲインを算出するために必要な誤差(ノイズ)成分を測定する手段に本発明を適用した構成図である。
【0038】図1と同様に誤差測定手段10で算出した変化率をもとに、第1の手段における誤差(ノイズ)成分を測定し、それからカルマンフィルタゲイン算出手段11でカルマンフィルタゲインを算出し、各手段から求めた対象とする物理量に、カルマンフィルタゲインに基づいた重み付け処理をすることにより、対象とする物理量を所要物理量推定手段12で推定することができる。
【0039】次に、具体的にカルマンフィルタ処理について説明する。
【0040】まず対象とするシステムをモデル化して立てた状態方程式は次式のようになる
【0041】。
【数1】X(k+1)=AX+BU(K)+v(k)ここで、X(k)は状態ベクトルであり、所要物理量を含む時刻kにおける推定量である。Aは状態遷移行列、Bは駆動行列、U(k)はブラント雑音、v(k)はシステム雑音である。
【0042】また、各センサからの観測量と上記状態量との間の関係を示す観測方程式は次式のようになる。
【0043】
【数2】Y(k)=f(x(k))+W(k)
ここで、Y(K)は観測ベクトル、fは状態量との関係を表す関数式、W(k)は観測雑音である。
【0044】上記モデルに対してカルマンフィルタ処理を適用する。カルマンフィルタによる最適推定値X(k|k)は次の漸化式により求められる。なお、観測方程式が非線形の場合は拡張カルマンフィルタのアルゴリズムを用いる。
【0045】
【数3】X(k+1|k)=AX(k|k)+BU(k)
【0046】
【数4】X(k|k)=X(k|k-1)+K(k)[Y(k)-f(X(k|k-1))]
【0047】
【数5】P(k+1|k)=AP(k|k)A'+V(k)
【0048】
【数6】P(k|k)=P(k|k-1)-K(k)C(k)P(k|k-1)
【0049】
【数7】
K(k)=P(k|k-1)C'(k)[C(k)P(k|k-1)C'(k)+W(k)]~1ただし、添字(k|k)は時刻kでの観測値を基づいたカルマンフィルタによる最適値で、(k|k-1)は時刻K-1での値から時刻kでの値を状態方程式により予測したものである。また、V(k)、W(k)はそれぞれシステム雑音、観測雑音の共分散行列である。
【0050】Pは推定誤差の共分散行列であり、カルマンフィルタによる推定の精度の目安になる。kはカルマンフィルタゲインであり、観測量が得られたときに計算され、システム雑音と観測雑音の統計量を比較し、状態方程式と観測値のどちらに重みをかけるかを決定する量である。数4は最適推定値を計算する式である。時刻k-1における最適推定値を用いて状態方程式に従い、時刻kでの値を予測する。この予測値と時刻kにおける観測値のカルマンフィルタゲインkによる内分点が最適推定値となる。なお、行列C(k)は観測方程式の線形化に用いるf(X(k|k-1))のヤコビアンである。
【0051】以上のようなカルマンフィルタ処理において、誤差測定手段10から得られたノイズ成分の大きさをもとに、V(k)、W(k)、もしくはPのそれに対応する成分を適宜変更することにより、その条件で最適な重み付けを行うカルマンフィルタゲインKを算出することができる。
【0052】次に第1の実施例について述べる。
【0053】図4は、図1の構成を飛行機の慣性航法装置における飛行距離検出に適用した例である。第1の手段45は速度センサ14を有し、速度を速度センサ14にて計測する。第2の手段402は、ロランC等の電波航法による位置検出手段16を有する。その第2の手段402の位置出力から算出した飛行距離を基準にして、速度センサ14の出力による飛行距離の時間変化をバイアス誤差推定手段42で調べる。さらに、バイアス誤差推定手段42は、その時の時間変化率を後述する回帰分析等の統計処理により算出し、それを速度センサのバイアス誤差とみなし、バイアス誤差補正手段41において計測速度のバイアス誤差を補正する。従って、最終的に出力される飛行距離15は、バイアス誤差を補正した分だけ精度を向上させることができる。
【0054】次に第2の実施例について述べる。
【0055】図14は、本発明が適用された車両のナビゲーション装置の構成図であり、車輪の回転数に比例したパルス信号を出力する光電式または電磁式等のセンサからなる車輪の走行距離に応じた信号を発生する距離センサ601と、車両の進行方向に応じた絶対方位の信号を出力する地磁気センサ602と、車両の走行方位に応じてその方位または方位変化量に比例した信号を出力するレート式のジャイロセンサ603とを有し、これらの出力はコントローラ604に入力されるように構成されている。
【0056】コントローラ604は、図1の際1の手段1のうちの誤差補正手段7と時間積分手段8の機能を有し、さらに、出力差演算手段3と、誤差推定手段5の機能を有する。
【0057】一方、コントローラ604は、距離センサ601からのパルス信号数をカウントして、車両の走行距離を検出するとともに、地磁気センサ602及びジャイロセンサ603から出力される方位信号等によって車両の走行方位を検出し、それらの検出結果に応じて車両の単位走行距離毎の二次元座標上の位置を演算によって求めるよう構成されている。
【0058】また605は、上記コントローラ604によって求められた刻々変化する二次元座標上の位置データに基づいて車両の現在地を刻々更新表示させるCRT表示装置、液晶表示装置などからなる表示装置である。
【0059】図5は、図1の構成を車両のナビゲーション装置における走行方位検出に適用した例である。第1の手段501はジャイロセンサ40を有し、角速度をジャイロセンサ40にて計測する。第2の手段502は、図2の従来例と同様の地図21、地磁気センサ22と、衛星信号を基に地球上の絶対位置及び絶対方位を検出するGPS装置45の3つを組み合わせ、アドレスセレクタ(ADS SEL)23により状況に応じて最も精度の高いセンサを選択して方位を出力する仕組みになっている。その第2の手段502の方位出力を基準にして、ジャイロセンサ出力による方位の時間変化をバイアス誤差推定手段42において調べる。その時の時間変化率を後述する回帰分析等の統計処理により算出し、それをジャイロセンサのバイアス誤差とみなし、バイアス誤差補正手段41において計測角速度のバイアス誤差を補正する。従って、最終的に出力される走行方位44は、バイアス誤差を補正した分だけ精度を向上させることができる。
【0060】次に第3の実施例について述べる。
【0061】図6は、図3の構成を車両のナビゲーション装置における走行方位検出に適用した例である。図5同様、第1の手段601はジャイロセンサ40を有し、角速度をジャイロセンサ40にて計測する。第2の手段502は、図2の従来例と同様の地図21、地磁気センサ22と、衛星信号を基に地球上の絶対位置及び絶対方位を検出するGPS装置545の3つの組み合わせ、ADS SEL23により状況に応じて最も精度の高いセンサを選択して方位を出力する仕組みになっている。
【0062】バイアス誤差補正手段642で算出した変化率をもとに、第1の手段601における誤差(ノイズ)成分を測定し、それからカルマンフィルタゲイン算出手段611でカルマンフィルタゲインを算出し、第1及び第2の手段601,502から求めた走行方位に、カルマンフィルタゲインに基づいた重み付け処理を所要物理量推定手段612ですることにより、走行方位44を推定することができる。
【0063】次に第4の実施例について述べる。
【0064】図7は、図1の構成を車両のナビゲーション装置における走行距離検出に適用した例である。第1の手段701は、車輪の回転数を定期的にカウントすることにより車速相当量を計測する車速計測手段750を有し、時間積分手段78により時間積分することにより走行距離を算出する。第2の手段702は、地図データ21とGPS装置545のいずれか精度の高いデータをADS SEL723により選択して走行距離を出力する仕組みになっている。その第2の手段702の距離出力を基準にして、第1の手段701による距離出力の、走行距離の増加に伴う変化をスケール誤差推定手段752により調べる。その時の距離変化率(スケールファクタ誤差)αを後述する回帰分析等の統計処理により算出し、第1の手段1のスケールファクタ誤差とみなす。そして以下の数1により
【0065】
【数1】 車速=車速相当量×(1+α)
車速算出のためのスケール誤差を補正する。従って、最終的に出力される走行距離54はスケール誤差を補正した分だけ精度を向上させることができる。
【0066】次に第5の実施例について述べる。
【0067】図8は、図1の構成を車両のナビゲーション装置における走行速度検出に適用した例である。第1の手段801には加速度センサ860を適用し、加速度を加速度センサ860にて計測する。第2の手段802は、車輪の回転数をカウントして車速を算出する車輪速センサ62と、衛星信号を基に地球上の移動体の速度を検出するGPS装置545の2つを組み合わせ、ADS SEL823により状況に応じて最も精度の高いセンサを選択して車速を出力する仕組みになっている。その第2の手段802の車速出力を基準にして、加速度センサ出力による車速の時間変化をバイアス誤差推定手段842において調べる。その時の時間変化率を後述する回帰分析等統計処理により算出し、それを加速度センサのバイアス誤差とみなし、バイアス誤差補正手段841により計測加速度のバイアス誤差を補正する。従って、最終的に出力される走行速度61は、バイアス誤差を補正した分だけ精度を向上させることができる。
【0068】以上のような例は一例に過ぎず、本発明は積分型のセンシング装置に共通して適用できるものである。
【0069】次に、車両のナビゲーション装置を例にとり、図5に示したような走行方位の精度向上を図る場合を対象にして、本発明の動作を図9〜13のフローチャートに従って説明する。
【0070】システムがスタートすると、まず初期処理が行われ(ステップ100)、キー入力により現在地が設定されると(ステップ102)、表示装置605上には車両の現在地及び周辺の地図が表示される(ステップ104)。
【0071】次に、ステップ106により、ステップ108以下の割り込みを許可し、以下のメインループに入ることになる。
【0072】このメインループでは、単位距離走行毎の走行量を積分加算して車両現在地と地図が更新されており、走行ベクトル積分割り込み処理(ステップ108)、方位演算割り込み処理(ステップ110)、及びバイアス誤差演算割り込み処理(ステップ112)により現在地が移動した場合(ステップ114でYes)、車両現在地及び周辺地図が更新されるようになっている(ステップ116)。
【0073】図10は、上記ステップ108における走行ベクトル積分割り込み処理の処理手順を示すフローチャートで、その処理は車両が所定距離ΔDを走行して車速パルスが発生する毎に実行されている。
【0074】すなわち、まずステップ200により車両方位θが読み込まれるが、このθは、後述するステップ110の処理により検出されて記憶されているものを読み込むことによって行われている。
【0075】これにより、距離ΔDのX方向成分とY方向成分が求められ(ステップ202)、各々の成分をX方向積算距離とY方向積算距離とに加算し、積算距離が更新される(ステップ204)。
【0076】以上の図10の処理が行われると、上記図9R>9の処理で、最新のX方向積算距離とY方向積算距離で示される座標位置が車両の現在走行位置として取り扱われる。
【0077】ステップ108で使用される車両走行方位θは、ステップ110の方位演算割り込み処理により行われる。この処理は、所定時間Δt経過毎に行われるタイマー割り込み処理であり、図11のフローチャートにより処理手順を説明する。
【0078】当処理に入ると、まずジャイロセンサ603から車両の角速度ωを読み込む(ステップ300)。
【0079】これは、ジャイロセンサ603からは角速度ωに比例した電圧が出力されるので、A/D変換後、所定の係数を乗じることによって求められる。
【0080】次にステップ302において、ジャイロセンサ603のバイアス誤差を読み込む。これは、後述するステップ112において算出されるものであり、算出されるまでは、バイアス誤差b=0と置く。
【0081】以上、読み込まれたω、bとΔtを用い、ステップ304の演算により前回処理時から今回処理時までの方位変化量Δθgを算出する。その後、その他の方位出力と306でフィルタリング後方位出力する。
【0082】次に、ステップ112に示したバイアス誤差演算割り込み処理の処理手順を図12、13により説明する。
【0083】図12は、比較的短時間(数十秒)の間にジャイロバイアス誤差を算出する処理であり、一定時間T経過毎に起動されるタイマー割り込み処理である。
【0084】まず、ステップ402において、割り込み回数をカウントする。次に、ステップ404、406において、それぞれ地磁気センサ、ジャイロからの現時点での出力を読み込み、地磁気センサ出力を基準にしたジャイロ回転角(ジャイロ方位)により走行方位を算出する、ステップ408では現在位置のある道路の方位を読み込む。ステップ410では、ジャイロ方位、道路方位それぞれについて前回値との差をとり角速度ωとし、また現時点での道路方位を基準にしたジャイロ角度差、道路角速度を基準にしたジャイロ角速度差を、それぞれΔθ、Δωとして算出する。ステップ412において所定割り込み回数N(メモリサイズ)を超えたかどうかの判定をし、超えた場合は、メモリサイズがいっぱいになったので以下の処理を行う。
【0085】ステップ414で前回までのデータを1つずつメモリ位置をずらし、新データをN番目に入力する。ステップ416において、ジャイロ角速度、道路角速度が小さい場合を選び(多きいと、曲がり角が大きいことを意味し、バイアス誤差ではない、スケール誤差による誤差が支配的になるからである)、ステップ418においては、Δθがある程度以上変化した場合を選ぶ(直線の場合を除くためである)。且つまた、ステップ420では、バイアス誤差が一方向に生じていることを判定し(1方向でないとハンドル操作により生じた現象を誤差と誤認する場合がある)、ステップ422においては、Δωの変動幅が小さいことを判定する。大きいときは、ハンドル操作の可能性がある。
【0086】以上の判定を満たした場合、ジャイロ角度差Δθの変化量を経過時間NTで除した値をバイアス誤差bとみなし(ステップ424)、割り込み処理を終了する。
【0087】図13は、比較的長時間(数十分)の間にジャイロバイアス誤差を算出する処理であり、一定時間T経過毎に起動されるタイマー割り込み処理である。
【0088】ステップ502〜514は、それぞれ図12R>2のステップ402〜414と同様の処理である。ステップ516においては、道路角を基準にしたジャイロ角度差Δθ(ステップ510にて算出)の長時間変化を統計処理し、回帰直線の傾きを算出し、それをバイアス誤差bと見なしている。そしてステップ518において、そのバイアス誤差bの変動幅が小さい場合に、ステップ520のように最大と最小の平均をあらためてバイアス誤差bとしている。
【0089】ステップ518以下の手順は以下の理由から決定した。ジャイロバイアスを表す傾きb(図15参照)は統計計算(回帰直線)から求めるため、ある程度情報量がたまらないと精度良く計算できない。そこで、N−kまで情報を蓄積して、N−kからbの計算を始めるようにする。その後Nまで毎回増えた情報を加えて毎回b(n)を計算してゆく。そして、時間の経過とともに変動するb(n)がある一定幅に収束するか否かをステップ518で判定し、Yesであれば、ステップ520で、その最大値と最小値の平均をとってジャイロバイアスbとする。
【0090】これは、bの算出は傾きの変動が小さい時に行わないと逆効果になる恐れがあるからである。
【0091】以上のようなバイアス誤差演算割り込み処理は、図3のフィルタリング方式における誤差測定手段10の変化率算出4にもそのまま適用できる。
【0092】
【発明の効果】本発明の積分型センシング装置によれば、対象である物理量の微分量を計測し、その後それを積分して対象とする量を算出する方式において、計測微分量に含まれる誤差、例えばバイアス誤差等を推定し、補正することが可能となり、積分によって本来累積するはずであった誤差を小さくすることができる。
【0093】これにより、センサによる計測信号そのものの誤差を小さくできるため、例えば、車両用ナビゲーション装置における地図マッチング方式の誤差補正のような最終段の補正とは異なり、補正した後に同様な誤差がまたすぐに発生するようなことはない。従って、本発明は精度の高いセンサを用いていることと等価になり、システム的な信頼性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積分型センシング装置の原理を説明するブロック図である。
【図2】車両用ナビゲーション装置の従来例を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の積分型センシング装置(フィルタ処理)の原理を説明するブロック図である。
【図4】図1の構成を飛行機の慣性航法装置における飛行距離検出に適用した一実施例を示すブロック図である。
【図5】図1の構成を車両用ナビゲーション装置における走行方位検出に適用した一実施例を示すブロック図である。
【図6】図3の構成を車両用ナビゲーション装置における走行方位検出に適用した一実施例を示すブロック図である。
【図7】図1の構成を車両用ナビゲーション装置における走行距離検出に適用した一実施例を示すブロック図である。
【図8】図1の構成を車両用ナビゲーション装置における走行速度検出に適用した一実施例を示すブロック図である。
【図9】本発明を適用した車両用ナビゲーション装置のゼネラルフローである。
【図10】図7中の走行ベクトル積分割り込み処理のフローチャートである。
【図11】図7中の方位演算割り込み処理のフローチャートである。
【図12】図7中のバイアス誤差演算割り込み処理(短期)のフローチャートである。
【図13】図7中のバイアス誤差演算割り込み処理(長期)のフローチャートである。
【図14】本発明が適用されたナビゲーションシステムを示すブロック図である。
【図15】バイアス誤差の求め方の説明図である。
【符号の説明】
1 第1の手段
2 第2の手段
3 加算器(減算器)
5 誤差推定部
6 微分量計測部
7 誤差補正部
8 時間積分部
9 所用物理量
10 誤差測定手段
11 フィルタゲイン算出手段
12 対象とする物理量推定手段
13 カルマンフィルタ
21 地図
22 地磁気センサ
24 フィルタ
40 角速度計測部
41 バイアス誤差補正部
44 走行方位
45 GPS装置
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、微分量を計測しそれを積分することにより所要量を算出する積分型センシング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】微分量を計測しそれを積分することにより所要量を算出する積分型センシング装置は、各分野において利用されている。
【0003】以下、車載用ナビゲーション装置を例に積分型センシング装置の従来技術の説明を行う。
【0004】従来から道路交通網の任意の個所を走行している車両の位置を検出する方式としては、距離センサと、方位センサと、両センサからの出力信号に必要な処理を施す処理装置とを具備し、車両の走行に伴って生ずる距離変化量および方位変化量を積算しながら車両の現在位置データを得る推測航法が提案されているが、距離センサおよび方位センサが必然的に有している誤差が走行距離に伴って累積され、得られる現在位置データに含まれる誤差も累積されてしまうという問題がある。
【0005】特に、方位センサにおいては、従来から車両の絶対方位を検出することのできる地磁気センサと、車両の相対的方位変化を検出することのできるジャイロセンサとを組み合わせて用いることにより、車両の走行方位を検出しているが、各々センサ特有の誤差特性を持っている。
【0006】地磁気センサは、高圧線やビルディング等の影響により磁場環境の悪い場所において短期的なノイズが発生するが、長期的には正しい方位を出力する。一方、ジャイロセンサは、磁場環境の影響は全く受けず、短期的には正しい相対的方位変化を出力するが、長期的にはドリフト(角速度バイアスの変動)の影響により時間の経過とともに方位誤差が累積する。
【0007】このような問題点を解決する一方法として、特開昭61−258112号公報に示されているセンサ信号をフィルタリングする方法があり、図2を用いて説明する。差動走行距離計20は左右の車輪の回転差から車両回転角を検出するセンサであり、ジャイロセンサと同様な誤差特性を持っている。コンパス22は地磁気センサに代表される絶対方位センサであり、マップ21は車両に搭載されたディジタル道路データベースであり、現在位置が道路上に特定されている場合、センサ同様、道路方位を車両方位として出力することができる。
【0008】コンパス22またはマップ21からの方位と差動走行距離計20からの方位との差をとり、それにローパスフィルタをかけてコンパス22等(地磁気センサ)に含まれる高周波ノイズを除去する。その信号を差動走行距離計20の出力から差し引くことにより、差動走行距離計20等(ジャイロセンサ)に含まれるバイアス誤差を取り除く。従って、最終的に出力される方位信号は各々のセンサの誤差成分を補正した信号が出力される。
【0009】また、同様のフィルタリング方式で、カルマンフィルタを適用した特開平3−188316号公報の例もある。
【0010】また別の解決法として、車両が道路上を走行することを前提として、上記推測航法に基づいて得られた現在位置データと、予めメモリに格納されている道路交通網データとを比較し、現在位置データの道路からのずれ量を累積誤差として算出し、上記現在位置データに対して累積誤差分の補正を行い、現在位置データを道路データに一致させるようにした、例えば特開昭63−148115号公報に示されるような地図マッチング方式が提案されている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記の例のような、微分量を計測し、それを積分することにより所要量を算出する積分型センシング装置の場合、微分量に含まれる誤差は、積分操作により累積されるため、仮りに、その誤差が微量であっても多大な誤差を引き起こす可能性がある。
【0012】その上、上記車載用ナビゲーション装置の例の場合、フィルタリング方式においては、例えば高速道路等の連続した構造物の上を走行する場合などは、地磁気センサ出力にも定常的な誤差が発生するため、それに基づいてジャイロセンサのバイアスを精度良く補正することは困難となる。
【0013】また、地図マッチング方式においては、ドライバに示す最終的な表示を修正するに過ぎず、センサ誤差発生の根本的解決にはならない。
【0014】すなわち、例えば、方位センサにジャイロなどの角速度を計測するレートセンサを用いる場合、計測角速度にバイアス誤差が含まれてくると、角度誤差は時間とともに増大する。これは最終的な角度表示を修正しても、その後またすぐ同様な誤差が発生してしまう。
【0015】また、例えば、距離センサに車輪の回転数を周期的に計測する車速センサを用いる場合、タイヤの空気圧変化などにより、車輪の回転数から車速を算出するスケールファクタが変化し、距離誤差が走行距離の増加とともに増大する。これも上記地図マッチング方式により位置が修正された場合でも、その後またすぐに同様な誤差が発生してしまう。
【0016】前述のようにこの種の誤差は、車載用ナビゲーション装置に限ったものではなく、センシング対象である物理量の微分量を計測し、その後それを積分して所要量を算出する方式においては共通の課題である。
【0017】本発明は上記の問題点を鑑みてなされたものであり、積分により累積する誤差をできる限り減少させ、より精度の高い積分センシング装置を提供することを目的としている。
【0018】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、センシング対象である物理量を得る第1の手段を有し、前記第1の手段は、前記物理量の微分量を計測する計測手段と、前記微分量を積分する積分手段とを有する積分型センシング装置において、前記物理量を得る第2の手段と、前記第1及び第2の手段により得られた各々の物理量の差の変化率から前記第1の手段における計測微分量の誤差を推定する誤差推定手段と、前記誤差に基づき前記第1の手段における計測微分量を補正する手段とを有することとしたものである。
【0019】前記物理量の差の変化率は、時間変化率であってもよい。
【0020】前記誤差が前記第1の手段における計測微分量のバイアス誤差であってもよい。
【0021】前記物理量の差の時間に対する変化を回帰直線にて表し、前記回帰直線の傾きを前記第1の手段における計測微分量の一定バイアス誤差としてもよい。
【0022】前記物理量が車両の走行方位角であり、前記第1の手段がジャイロセンサによる走行方位検出であり、前記第2の手段が車両に搭載された道路地図メモリに記憶された対応する道路方位角を走行方位角として出力することとしてもよい。
【0023】前記第2の手段が衛星信号を基に地球上の位置及び方位を検出するGPS装置であってもよい。
【0024】前記第2の手段が地球磁場を検出する地磁気センサによる方位を検出するものであってもよい。
【0025】前記物理量が車両の走行距離であり、前記第1の手段が車速を周期的に計測して、走行距離を検出し、前記第2の手段が車両に搭載された道路地図メモリに記憶された対応する道路長を走行距離として検出し、前記第1の手段と前記第2の手段により得られた各々の物理量の差の走行距離による変化率から前記第1の手段における計測微分量のスケールファクタ誤差を算出し、前記スケールファクタ誤差に基づき前記第1の手段における計測微分量を補正するものとしてもよい。
【0026】前記第2の手段が衛星信号を基に地球上の位置及び方位を検出するGPS装置による走行距離検出であってもよい。
【0027】前記物理量が車両の走行速度であり、前記第1の手段が車体に固定した加速度センサにより、走行速度を検出し、前記第2の手段が車輪の回転数を周期的に計測して走行速度を検出するものであってもよい。
【0028】
【作用】以上の積分型センシング装置であれば、センシング対象である物理量の変化率である微分量を計測し、前記微分量を表す信号を積分することにより前記物理量を得る第1の手段を備えた積分型センシング装置において、前記第1の手段とは別の前記物理量を得る第2の手段を備え、前記第1及び第2の手段により得られた各々の物理量の差の変化率から前記第1の手段における計測微分量の誤差を推定し、前記誤差に基づき前記第1の手段における計測微分量を補正することができる。
【0029】すなわち、前記物理量の差の変化率を時間変化率とした場合、その時間変化率により計測微分量のバイアス誤差が推定可能である。例えば、前記物理量の差の時間に対する変化を回帰直線にて表した場合、前記回帰直線の一定の傾きを前記第1の手段における計測微分量の一定バイアス誤差と見ることができる。
【0030】前記物理量が車両の走行方位角とし、また前記第1の手段が車体に固定したジャイロセンサにより走行方位を検出し、前記第2の手段が車両に搭載された道路地図メモリに記憶された対応する道路方位角を走行方位角とする場合、あるいは、衛星信号を基に地球上の絶対位置及び絶対方位を検出するGPS装置による走行方位の検出かもしくは、地球磁場を検出する地磁気センサによる方位の検出とした場合、上記同様、走行方位角の角速度におけるバイアス誤差を算出でき、その誤差を補正した精度の高い走行方位角を求めることができる。
【0031】前記物理量を車両の走行距離とし、前記第1の手段が車速を計測して、走行距離を検出し、前記第2の手段が車両に搭載された道路地図メモリに記憶された対応する道路長を走行距離とする場合、あるいは、衛星信号を基に地球上の絶対位置及び絶対方位を検出するGPS装置で走行距離を検出する場合でも、前記第1の手段と前記第2の手段により得られた各々の物理量の差の走行距離による変化率から前記第1の手段における計測微分量のスケールファクタ誤差を算出し、前記スケールファクタ誤差に基づき前記第1の手段における計測微分量を補正することが可能である。
【0032】前記物理量を車両の走行速度とし、前記第1の手段が車体に固体した加速度センサで走行速度を検出し、前記第2の手段が車速を計測して、走行速度を検出する場合でも、上記と全く同様の精度改善が達成可能である。
【0033】
【実施例】以下、図面に基づいて本発明に係わる装置の実施例を説明する。はじめに、図1、3により本発明に係わる装置の原理を説明する。
【0034】図1は、本発明が適用された積分型センシング装置の構成図である。本装置は、第1の手段1と、第2の手段2と、第1の手段と第2の手段の出力差を演算する出力差演算手段3と、その出力差の変化率を演算し、その変化率により第1の手段1の誤差を推定する誤差推定手段5とを有する。
【0035】第1の手段1は、対象である物理量の時間微分量を計測する微分量計測手段6と、誤差推定手段5の誤差推定量をもとに誤差補正する誤差補正手段7と、微分量計測手段6と誤差補正手段7の処理を経た信号を時間積分する時間積分手段8とを有する。以上の処理により対象である物理量9が得られる。
【0036】すなわち、第1の手段1は微分量計測手段6で微分量を計測し、時間積分手段8で積分することにより対象とする物理量9を得るため、計測した微分量に誤差が生じると対象とする物理量9の誤差は積分により徐々に増大する。そこで、別の第2の手段2を基準にして差を出力差演算手段3でとり、その変化率を誤差推定手段4で算出することにより誤差推定し、それから誤差補正手段7で計測微分量の誤差を補正することで最終的な対象とする物理量9の精度を向上させる。
【0037】図3は、第1の手段31と第2の手段2の信号にカルマンフィルタリング13を施して対象とする物理量が算出する方式において、カルマンフィルタゲインを算出するために必要な誤差(ノイズ)成分を測定する手段に本発明を適用した構成図である。
【0038】図1と同様に誤差測定手段10で算出した変化率をもとに、第1の手段における誤差(ノイズ)成分を測定し、それからカルマンフィルタゲイン算出手段11でカルマンフィルタゲインを算出し、各手段から求めた対象とする物理量に、カルマンフィルタゲインに基づいた重み付け処理をすることにより、対象とする物理量を所要物理量推定手段12で推定することができる。
【0039】次に、具体的にカルマンフィルタ処理について説明する。
【0040】まず対象とするシステムをモデル化して立てた状態方程式は次式のようになる
【0041】。
【数1】X(k+1)=AX+BU(K)+v(k)ここで、X(k)は状態ベクトルであり、所要物理量を含む時刻kにおける推定量である。Aは状態遷移行列、Bは駆動行列、U(k)はブラント雑音、v(k)はシステム雑音である。
【0042】また、各センサからの観測量と上記状態量との間の関係を示す観測方程式は次式のようになる。
【0043】
【数2】Y(k)=f(x(k))+W(k)
ここで、Y(K)は観測ベクトル、fは状態量との関係を表す関数式、W(k)は観測雑音である。
【0044】上記モデルに対してカルマンフィルタ処理を適用する。カルマンフィルタによる最適推定値X(k|k)は次の漸化式により求められる。なお、観測方程式が非線形の場合は拡張カルマンフィルタのアルゴリズムを用いる。
【0045】
【数3】X(k+1|k)=AX(k|k)+BU(k)
【0046】
【数4】X(k|k)=X(k|k-1)+K(k)[Y(k)-f(X(k|k-1))]
【0047】
【数5】P(k+1|k)=AP(k|k)A'+V(k)
【0048】
【数6】P(k|k)=P(k|k-1)-K(k)C(k)P(k|k-1)
【0049】
【数7】
K(k)=P(k|k-1)C'(k)[C(k)P(k|k-1)C'(k)+W(k)]~1ただし、添字(k|k)は時刻kでの観測値を基づいたカルマンフィルタによる最適値で、(k|k-1)は時刻K-1での値から時刻kでの値を状態方程式により予測したものである。また、V(k)、W(k)はそれぞれシステム雑音、観測雑音の共分散行列である。
【0050】Pは推定誤差の共分散行列であり、カルマンフィルタによる推定の精度の目安になる。kはカルマンフィルタゲインであり、観測量が得られたときに計算され、システム雑音と観測雑音の統計量を比較し、状態方程式と観測値のどちらに重みをかけるかを決定する量である。数4は最適推定値を計算する式である。時刻k-1における最適推定値を用いて状態方程式に従い、時刻kでの値を予測する。この予測値と時刻kにおける観測値のカルマンフィルタゲインkによる内分点が最適推定値となる。なお、行列C(k)は観測方程式の線形化に用いるf(X(k|k-1))のヤコビアンである。
【0051】以上のようなカルマンフィルタ処理において、誤差測定手段10から得られたノイズ成分の大きさをもとに、V(k)、W(k)、もしくはPのそれに対応する成分を適宜変更することにより、その条件で最適な重み付けを行うカルマンフィルタゲインKを算出することができる。
【0052】次に第1の実施例について述べる。
【0053】図4は、図1の構成を飛行機の慣性航法装置における飛行距離検出に適用した例である。第1の手段45は速度センサ14を有し、速度を速度センサ14にて計測する。第2の手段402は、ロランC等の電波航法による位置検出手段16を有する。その第2の手段402の位置出力から算出した飛行距離を基準にして、速度センサ14の出力による飛行距離の時間変化をバイアス誤差推定手段42で調べる。さらに、バイアス誤差推定手段42は、その時の時間変化率を後述する回帰分析等の統計処理により算出し、それを速度センサのバイアス誤差とみなし、バイアス誤差補正手段41において計測速度のバイアス誤差を補正する。従って、最終的に出力される飛行距離15は、バイアス誤差を補正した分だけ精度を向上させることができる。
【0054】次に第2の実施例について述べる。
【0055】図14は、本発明が適用された車両のナビゲーション装置の構成図であり、車輪の回転数に比例したパルス信号を出力する光電式または電磁式等のセンサからなる車輪の走行距離に応じた信号を発生する距離センサ601と、車両の進行方向に応じた絶対方位の信号を出力する地磁気センサ602と、車両の走行方位に応じてその方位または方位変化量に比例した信号を出力するレート式のジャイロセンサ603とを有し、これらの出力はコントローラ604に入力されるように構成されている。
【0056】コントローラ604は、図1の際1の手段1のうちの誤差補正手段7と時間積分手段8の機能を有し、さらに、出力差演算手段3と、誤差推定手段5の機能を有する。
【0057】一方、コントローラ604は、距離センサ601からのパルス信号数をカウントして、車両の走行距離を検出するとともに、地磁気センサ602及びジャイロセンサ603から出力される方位信号等によって車両の走行方位を検出し、それらの検出結果に応じて車両の単位走行距離毎の二次元座標上の位置を演算によって求めるよう構成されている。
【0058】また605は、上記コントローラ604によって求められた刻々変化する二次元座標上の位置データに基づいて車両の現在地を刻々更新表示させるCRT表示装置、液晶表示装置などからなる表示装置である。
【0059】図5は、図1の構成を車両のナビゲーション装置における走行方位検出に適用した例である。第1の手段501はジャイロセンサ40を有し、角速度をジャイロセンサ40にて計測する。第2の手段502は、図2の従来例と同様の地図21、地磁気センサ22と、衛星信号を基に地球上の絶対位置及び絶対方位を検出するGPS装置45の3つを組み合わせ、アドレスセレクタ(ADS SEL)23により状況に応じて最も精度の高いセンサを選択して方位を出力する仕組みになっている。その第2の手段502の方位出力を基準にして、ジャイロセンサ出力による方位の時間変化をバイアス誤差推定手段42において調べる。その時の時間変化率を後述する回帰分析等の統計処理により算出し、それをジャイロセンサのバイアス誤差とみなし、バイアス誤差補正手段41において計測角速度のバイアス誤差を補正する。従って、最終的に出力される走行方位44は、バイアス誤差を補正した分だけ精度を向上させることができる。
【0060】次に第3の実施例について述べる。
【0061】図6は、図3の構成を車両のナビゲーション装置における走行方位検出に適用した例である。図5同様、第1の手段601はジャイロセンサ40を有し、角速度をジャイロセンサ40にて計測する。第2の手段502は、図2の従来例と同様の地図21、地磁気センサ22と、衛星信号を基に地球上の絶対位置及び絶対方位を検出するGPS装置545の3つの組み合わせ、ADS SEL23により状況に応じて最も精度の高いセンサを選択して方位を出力する仕組みになっている。
【0062】バイアス誤差補正手段642で算出した変化率をもとに、第1の手段601における誤差(ノイズ)成分を測定し、それからカルマンフィルタゲイン算出手段611でカルマンフィルタゲインを算出し、第1及び第2の手段601,502から求めた走行方位に、カルマンフィルタゲインに基づいた重み付け処理を所要物理量推定手段612ですることにより、走行方位44を推定することができる。
【0063】次に第4の実施例について述べる。
【0064】図7は、図1の構成を車両のナビゲーション装置における走行距離検出に適用した例である。第1の手段701は、車輪の回転数を定期的にカウントすることにより車速相当量を計測する車速計測手段750を有し、時間積分手段78により時間積分することにより走行距離を算出する。第2の手段702は、地図データ21とGPS装置545のいずれか精度の高いデータをADS SEL723により選択して走行距離を出力する仕組みになっている。その第2の手段702の距離出力を基準にして、第1の手段701による距離出力の、走行距離の増加に伴う変化をスケール誤差推定手段752により調べる。その時の距離変化率(スケールファクタ誤差)αを後述する回帰分析等の統計処理により算出し、第1の手段1のスケールファクタ誤差とみなす。そして以下の数1により
【0065】
【数1】 車速=車速相当量×(1+α)
車速算出のためのスケール誤差を補正する。従って、最終的に出力される走行距離54はスケール誤差を補正した分だけ精度を向上させることができる。
【0066】次に第5の実施例について述べる。
【0067】図8は、図1の構成を車両のナビゲーション装置における走行速度検出に適用した例である。第1の手段801には加速度センサ860を適用し、加速度を加速度センサ860にて計測する。第2の手段802は、車輪の回転数をカウントして車速を算出する車輪速センサ62と、衛星信号を基に地球上の移動体の速度を検出するGPS装置545の2つを組み合わせ、ADS SEL823により状況に応じて最も精度の高いセンサを選択して車速を出力する仕組みになっている。その第2の手段802の車速出力を基準にして、加速度センサ出力による車速の時間変化をバイアス誤差推定手段842において調べる。その時の時間変化率を後述する回帰分析等統計処理により算出し、それを加速度センサのバイアス誤差とみなし、バイアス誤差補正手段841により計測加速度のバイアス誤差を補正する。従って、最終的に出力される走行速度61は、バイアス誤差を補正した分だけ精度を向上させることができる。
【0068】以上のような例は一例に過ぎず、本発明は積分型のセンシング装置に共通して適用できるものである。
【0069】次に、車両のナビゲーション装置を例にとり、図5に示したような走行方位の精度向上を図る場合を対象にして、本発明の動作を図9〜13のフローチャートに従って説明する。
【0070】システムがスタートすると、まず初期処理が行われ(ステップ100)、キー入力により現在地が設定されると(ステップ102)、表示装置605上には車両の現在地及び周辺の地図が表示される(ステップ104)。
【0071】次に、ステップ106により、ステップ108以下の割り込みを許可し、以下のメインループに入ることになる。
【0072】このメインループでは、単位距離走行毎の走行量を積分加算して車両現在地と地図が更新されており、走行ベクトル積分割り込み処理(ステップ108)、方位演算割り込み処理(ステップ110)、及びバイアス誤差演算割り込み処理(ステップ112)により現在地が移動した場合(ステップ114でYes)、車両現在地及び周辺地図が更新されるようになっている(ステップ116)。
【0073】図10は、上記ステップ108における走行ベクトル積分割り込み処理の処理手順を示すフローチャートで、その処理は車両が所定距離ΔDを走行して車速パルスが発生する毎に実行されている。
【0074】すなわち、まずステップ200により車両方位θが読み込まれるが、このθは、後述するステップ110の処理により検出されて記憶されているものを読み込むことによって行われている。
【0075】これにより、距離ΔDのX方向成分とY方向成分が求められ(ステップ202)、各々の成分をX方向積算距離とY方向積算距離とに加算し、積算距離が更新される(ステップ204)。
【0076】以上の図10の処理が行われると、上記図9R>9の処理で、最新のX方向積算距離とY方向積算距離で示される座標位置が車両の現在走行位置として取り扱われる。
【0077】ステップ108で使用される車両走行方位θは、ステップ110の方位演算割り込み処理により行われる。この処理は、所定時間Δt経過毎に行われるタイマー割り込み処理であり、図11のフローチャートにより処理手順を説明する。
【0078】当処理に入ると、まずジャイロセンサ603から車両の角速度ωを読み込む(ステップ300)。
【0079】これは、ジャイロセンサ603からは角速度ωに比例した電圧が出力されるので、A/D変換後、所定の係数を乗じることによって求められる。
【0080】次にステップ302において、ジャイロセンサ603のバイアス誤差を読み込む。これは、後述するステップ112において算出されるものであり、算出されるまでは、バイアス誤差b=0と置く。
【0081】以上、読み込まれたω、bとΔtを用い、ステップ304の演算により前回処理時から今回処理時までの方位変化量Δθgを算出する。その後、その他の方位出力と306でフィルタリング後方位出力する。
【0082】次に、ステップ112に示したバイアス誤差演算割り込み処理の処理手順を図12、13により説明する。
【0083】図12は、比較的短時間(数十秒)の間にジャイロバイアス誤差を算出する処理であり、一定時間T経過毎に起動されるタイマー割り込み処理である。
【0084】まず、ステップ402において、割り込み回数をカウントする。次に、ステップ404、406において、それぞれ地磁気センサ、ジャイロからの現時点での出力を読み込み、地磁気センサ出力を基準にしたジャイロ回転角(ジャイロ方位)により走行方位を算出する、ステップ408では現在位置のある道路の方位を読み込む。ステップ410では、ジャイロ方位、道路方位それぞれについて前回値との差をとり角速度ωとし、また現時点での道路方位を基準にしたジャイロ角度差、道路角速度を基準にしたジャイロ角速度差を、それぞれΔθ、Δωとして算出する。ステップ412において所定割り込み回数N(メモリサイズ)を超えたかどうかの判定をし、超えた場合は、メモリサイズがいっぱいになったので以下の処理を行う。
【0085】ステップ414で前回までのデータを1つずつメモリ位置をずらし、新データをN番目に入力する。ステップ416において、ジャイロ角速度、道路角速度が小さい場合を選び(多きいと、曲がり角が大きいことを意味し、バイアス誤差ではない、スケール誤差による誤差が支配的になるからである)、ステップ418においては、Δθがある程度以上変化した場合を選ぶ(直線の場合を除くためである)。且つまた、ステップ420では、バイアス誤差が一方向に生じていることを判定し(1方向でないとハンドル操作により生じた現象を誤差と誤認する場合がある)、ステップ422においては、Δωの変動幅が小さいことを判定する。大きいときは、ハンドル操作の可能性がある。
【0086】以上の判定を満たした場合、ジャイロ角度差Δθの変化量を経過時間NTで除した値をバイアス誤差bとみなし(ステップ424)、割り込み処理を終了する。
【0087】図13は、比較的長時間(数十分)の間にジャイロバイアス誤差を算出する処理であり、一定時間T経過毎に起動されるタイマー割り込み処理である。
【0088】ステップ502〜514は、それぞれ図12R>2のステップ402〜414と同様の処理である。ステップ516においては、道路角を基準にしたジャイロ角度差Δθ(ステップ510にて算出)の長時間変化を統計処理し、回帰直線の傾きを算出し、それをバイアス誤差bと見なしている。そしてステップ518において、そのバイアス誤差bの変動幅が小さい場合に、ステップ520のように最大と最小の平均をあらためてバイアス誤差bとしている。
【0089】ステップ518以下の手順は以下の理由から決定した。ジャイロバイアスを表す傾きb(図15参照)は統計計算(回帰直線)から求めるため、ある程度情報量がたまらないと精度良く計算できない。そこで、N−kまで情報を蓄積して、N−kからbの計算を始めるようにする。その後Nまで毎回増えた情報を加えて毎回b(n)を計算してゆく。そして、時間の経過とともに変動するb(n)がある一定幅に収束するか否かをステップ518で判定し、Yesであれば、ステップ520で、その最大値と最小値の平均をとってジャイロバイアスbとする。
【0090】これは、bの算出は傾きの変動が小さい時に行わないと逆効果になる恐れがあるからである。
【0091】以上のようなバイアス誤差演算割り込み処理は、図3のフィルタリング方式における誤差測定手段10の変化率算出4にもそのまま適用できる。
【0092】
【発明の効果】本発明の積分型センシング装置によれば、対象である物理量の微分量を計測し、その後それを積分して対象とする量を算出する方式において、計測微分量に含まれる誤差、例えばバイアス誤差等を推定し、補正することが可能となり、積分によって本来累積するはずであった誤差を小さくすることができる。
【0093】これにより、センサによる計測信号そのものの誤差を小さくできるため、例えば、車両用ナビゲーション装置における地図マッチング方式の誤差補正のような最終段の補正とは異なり、補正した後に同様な誤差がまたすぐに発生するようなことはない。従って、本発明は精度の高いセンサを用いていることと等価になり、システム的な信頼性も向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の積分型センシング装置の原理を説明するブロック図である。
【図2】車両用ナビゲーション装置の従来例を説明するためのブロック図である。
【図3】本発明の積分型センシング装置(フィルタ処理)の原理を説明するブロック図である。
【図4】図1の構成を飛行機の慣性航法装置における飛行距離検出に適用した一実施例を示すブロック図である。
【図5】図1の構成を車両用ナビゲーション装置における走行方位検出に適用した一実施例を示すブロック図である。
【図6】図3の構成を車両用ナビゲーション装置における走行方位検出に適用した一実施例を示すブロック図である。
【図7】図1の構成を車両用ナビゲーション装置における走行距離検出に適用した一実施例を示すブロック図である。
【図8】図1の構成を車両用ナビゲーション装置における走行速度検出に適用した一実施例を示すブロック図である。
【図9】本発明を適用した車両用ナビゲーション装置のゼネラルフローである。
【図10】図7中の走行ベクトル積分割り込み処理のフローチャートである。
【図11】図7中の方位演算割り込み処理のフローチャートである。
【図12】図7中のバイアス誤差演算割り込み処理(短期)のフローチャートである。
【図13】図7中のバイアス誤差演算割り込み処理(長期)のフローチャートである。
【図14】本発明が適用されたナビゲーションシステムを示すブロック図である。
【図15】バイアス誤差の求め方の説明図である。
【符号の説明】
1 第1の手段
2 第2の手段
3 加算器(減算器)
5 誤差推定部
6 微分量計測部
7 誤差補正部
8 時間積分部
9 所用物理量
10 誤差測定手段
11 フィルタゲイン算出手段
12 対象とする物理量推定手段
13 カルマンフィルタ
21 地図
22 地磁気センサ
24 フィルタ
40 角速度計測部
41 バイアス誤差補正部
44 走行方位
45 GPS装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】センシング対象である物理量を得る第1の手段を有し、前記第1の手段は、前記物理量の微分量を計測する計測手段と、前記微分量を積分する積分手段とを有する積分型センシング装置において、前記物理量を得る第2の手段と、前記第1及び第2の手段により得られた各々の物理量の差の変化率から前記第1の手段における計測微分量の誤差を推定する誤差推定手段と、前記誤差に基づき前記第1の手段における計測微分量を補正する手段とを有することを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項2】センシング対象である物理量を得る第1の手段と、前記物理量を得る第2の手段と、前記第1及び第2の手段から得られる2つの物理量に、前記物理量の誤差の影響を低減するカルマンフィルタを施すことにより物理量を推定する物理量推定手段とを有し、前記第1の手段は、前記物理量の微分量を計測する計測手段と、前記微分量を積分する積分手段とを有する積分型センシング装置において、前記第1及び第2の手段により得られた各々の物理量の差の変化率を基に前記第1、第2の手段の誤差成分を抽出する誤差測定手段と、前記誤差測定手段により測定された誤差成分を用いてカルマンフィルタゲインを算出するフィルタゲイン算出手段とを有し、前記物理量推定手段は、前記第1及び第2の手段から求めた物理量に、前記カルマンフィルタゲインに基づいた重み付け処理をすることにより、物理量を推定することを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項3】請求項1または2記載の積分型センシング装置において、前記物理量の差の変化率が時間による変化率であることを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項4】請求項1、2または3記載の積分型センシング装置において、前記誤差が前記第1の手段における計測微分量のバイアス誤差であることを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項5】請求項4記載の積分型センシング装置において、前記物理量の差の時間に対する変化を回帰直線にて表し、前記回帰直線の傾きを前記第1の手段における計測微分量のバイアス誤差とすることを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項6】請求項1、2、3、4または5記載の積分型センシング装置において、前記物理量が車両の走行方位角であり、前記第1の手段は、ジャイロセンサにより走行方位を検出し、前記第2の手段は、位置を検出し、道路地図メモリに記憶された対応する道路方位角を走行方位角として出力することを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項7】請求項6記載の積分型センシング装置において、前記第2の手段が衛星信号を基に位置及び方位を検出するGPS装置であることを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項8】請求項6記載の積分型センシング装置において、前記第2の手段が地球磁場を検出する地磁気センサであることを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項9】請求項1または2記載の積分型センシング装置において、前記物理量が車両の走行距離であり、前記第1の手段は、車速より走行距離を求め、前記第2の手段は、位置を検出し、道路地図メモリに記憶された対応する道路長を走行距離として出力し、前記第1の手段と前記第2の手段により得られた各々の物理量の差の走行距離による変化率から前記第1の手段における計測微分量のスケールファクタ誤差を算出する手段と、前記スケールファクタ誤差に基づき前記第1の手段における計測微分量を補正する手段とを有することを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項10】請求項9記載の積分型センシング装置において、前記第2の手段が衛星信号を基に位置及び方位を検出するGPS装置であることを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項11】請求項3、4または5記載の積分型センシング装置において、前記物理量が車両の走行速度であり、前記第1の手段は、加速度センサにより、走行速度を検出し、前記第2の手段は、車輪の回転数を計測して、走行速度を検出するか、または衛星からの信号により移動体の速度を検出するGPS装置で走行速度を検出することを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項1】センシング対象である物理量を得る第1の手段を有し、前記第1の手段は、前記物理量の微分量を計測する計測手段と、前記微分量を積分する積分手段とを有する積分型センシング装置において、前記物理量を得る第2の手段と、前記第1及び第2の手段により得られた各々の物理量の差の変化率から前記第1の手段における計測微分量の誤差を推定する誤差推定手段と、前記誤差に基づき前記第1の手段における計測微分量を補正する手段とを有することを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項2】センシング対象である物理量を得る第1の手段と、前記物理量を得る第2の手段と、前記第1及び第2の手段から得られる2つの物理量に、前記物理量の誤差の影響を低減するカルマンフィルタを施すことにより物理量を推定する物理量推定手段とを有し、前記第1の手段は、前記物理量の微分量を計測する計測手段と、前記微分量を積分する積分手段とを有する積分型センシング装置において、前記第1及び第2の手段により得られた各々の物理量の差の変化率を基に前記第1、第2の手段の誤差成分を抽出する誤差測定手段と、前記誤差測定手段により測定された誤差成分を用いてカルマンフィルタゲインを算出するフィルタゲイン算出手段とを有し、前記物理量推定手段は、前記第1及び第2の手段から求めた物理量に、前記カルマンフィルタゲインに基づいた重み付け処理をすることにより、物理量を推定することを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項3】請求項1または2記載の積分型センシング装置において、前記物理量の差の変化率が時間による変化率であることを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項4】請求項1、2または3記載の積分型センシング装置において、前記誤差が前記第1の手段における計測微分量のバイアス誤差であることを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項5】請求項4記載の積分型センシング装置において、前記物理量の差の時間に対する変化を回帰直線にて表し、前記回帰直線の傾きを前記第1の手段における計測微分量のバイアス誤差とすることを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項6】請求項1、2、3、4または5記載の積分型センシング装置において、前記物理量が車両の走行方位角であり、前記第1の手段は、ジャイロセンサにより走行方位を検出し、前記第2の手段は、位置を検出し、道路地図メモリに記憶された対応する道路方位角を走行方位角として出力することを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項7】請求項6記載の積分型センシング装置において、前記第2の手段が衛星信号を基に位置及び方位を検出するGPS装置であることを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項8】請求項6記載の積分型センシング装置において、前記第2の手段が地球磁場を検出する地磁気センサであることを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項9】請求項1または2記載の積分型センシング装置において、前記物理量が車両の走行距離であり、前記第1の手段は、車速より走行距離を求め、前記第2の手段は、位置を検出し、道路地図メモリに記憶された対応する道路長を走行距離として出力し、前記第1の手段と前記第2の手段により得られた各々の物理量の差の走行距離による変化率から前記第1の手段における計測微分量のスケールファクタ誤差を算出する手段と、前記スケールファクタ誤差に基づき前記第1の手段における計測微分量を補正する手段とを有することを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項10】請求項9記載の積分型センシング装置において、前記第2の手段が衛星信号を基に位置及び方位を検出するGPS装置であることを特徴とする積分型センシング装置。
【請求項11】請求項3、4または5記載の積分型センシング装置において、前記物理量が車両の走行速度であり、前記第1の手段は、加速度センサにより、走行速度を検出し、前記第2の手段は、車輪の回転数を計測して、走行速度を検出するか、または衛星からの信号により移動体の速度を検出するGPS装置で走行速度を検出することを特徴とする積分型センシング装置。
【図14】
【図15】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図15】
【図1】
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【公開番号】特開平6−229772
【公開日】平成6年(1994)8月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−17421
【出願日】平成5年(1993)2月4日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【公開日】平成6年(1994)8月19日
【国際特許分類】
【出願日】平成5年(1993)2月4日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
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