説明

積層シート及び発泡積層シート

【課題】樹脂成分としてエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を含む発泡剤含有樹脂層を有する積層シートであって、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂を含む樹脂混練物の流動性の変動を抑制し安定して生産可能な積層シート及びそれを用いて得られる発泡積層シートを提供する。
【解決手段】基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層が形成されている積層シートであって、
前記発泡剤含有樹脂層が、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂及び表面処理していない酸化チタンを含有することを特徴とする積層シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート及び発泡積層シートに関する。前記発泡積層シートは、発泡樹脂層を有しており、発泡壁紙、各種装飾材等として有用である。また、前記積層シートは、前記発泡積層シートの発泡前の状態であり、いわゆる未発泡原反を意味する。
【背景技術】
【0002】
発泡積層シート(例えば、発泡壁紙)としては、繊維質シートに塩化ビニル樹脂の発泡樹脂層を形成し、更に絵柄模様層を形成したものが知られている。また、塩化ビニル樹脂等のハロゲンを含む樹脂組成物は、火災時や焼却時に有害なガスを発生するという欠点を考慮し、近年では、環境に配慮し、ハロゲンを含まない樹脂としてエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)及びエチレン−アクリル酸共重合体(EAA)等の非塩化ビニル樹脂を用いた建築内装材が知られている(特許文献1〜3等)。これらの中でも、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体(EAA及びEMAA)を使用する場合には、発泡積層シートに優れた耐傷性が得られる点で好ましい。
【0003】
しかしながら、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体は極性基を有しているため、発泡積層シートに白色又は隠蔽を付与するための無機成分と共に混錬された状態で湿度環境下に保管していると混練物の流動性が低下し、混練物の溶融押出時(押出し製膜時)に押出し機内で発泡する等の不具合が発生するという問題がある。
【0004】
そこで、樹脂成分としてエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を含む発泡剤含有樹脂層を有する積層シートであって、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂を含む樹脂混練物の流動性の変動を抑制し安定して生産可能な積層シート及びそれを用いて得られる発泡積層シートの開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−47875号公報
【特許文献2】特開2000−255011号公報
【特許文献3】特開2001−347611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、樹脂成分としてエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を含む発泡剤含有樹脂層を有する積層シートであって、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂を含む樹脂混練物の流動性の変動を抑制し安定して生産可能な積層シート及びそれを用いて得られる発泡積層シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、発泡剤含有樹脂層に含まれる白色又は隠蔽を付与する無機成分として特定の無機成分を使用することにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の積層シート及び発泡積層シートに関する。
1.基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層が形成されている積層シートであって、
前記発泡剤含有樹脂層が、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂及び表面処理していない酸化チタンを含有することを特徴とする積層シート。
2.前記発泡剤含有樹脂層中における前記表面処理していない酸化チタンの含有量が、前記発泡剤含有樹脂層の樹脂成分100質量部に対して10〜60質量部である、上記項1に記載の積層シート。
3.前記基材は、繊維質シートである、上記項1又は2に記載の積層シート。
4.上記項1〜3のいずれかに記載の積層シートの前記発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得られる発泡積層シート。
5.最表面層の上からエンボス加工が施されている、上記項4に記載の発泡積層シート。
6.基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層が形成されている積層シートの製造方法であって、
(1)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂及び表面処理していない酸化チタンを含有する発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する工程1、及び
(2)前記発泡剤含有樹脂層を前記基材上に貼着する工程2、
を有する積層シートの製造方法。
7.上記項6に記載の製造方法により得られた積層シートの発泡剤含有樹脂層を発泡させる、発泡積層シートの製造方法。
8.発泡剤含有樹脂層を発泡させた後にエンボス加工を施す工程を有する、上記項7に記載の発泡積層シートの製造方法。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
≪積層シート≫
本発明の積層シートは、基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層が形成されており、前記発泡剤含有樹脂層が、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂及び表面処理していない酸化チタンを含有することを特徴とする。
【0011】
基材
基材としては限定されず、公知の壁紙基材(裏打紙)などが利用できる。
【0012】
具体的には、壁紙用一般紙(パルプ主体のシートを既知のサイズ剤でサイズ処理したもの);難燃紙(パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理したもの);水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙;上質紙;薄用紙などが挙げられる。
【0013】
紙質基材の坪量は限定的ではないが、50〜300g/m程度が好ましく、50〜120g/m程度がより好ましい。
【0014】
発泡剤含有樹脂層
本発明で用いる発泡剤含有樹脂層は、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂及び表面処理していない酸化チタンを含有する。なお、発泡剤含有樹脂層とは、熱処理する前の未発泡状態の発泡樹脂層である。
【0015】
樹脂成分としては、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂を用いる。これは、アクリル酸(CH=CHCOOH)及びメタクリル酸(CH=C(CH)COOH)の少なくとも1種をモノマーとして得られるエチレン共重合体である。この樹脂成分を用いることで、樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができ、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得られる。
【0016】
なお、本発明では、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂と表記するとき、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂及びエチレン−メタクリル酸共重合体樹脂の両方を意味する。
【0017】
本発明では、上記エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂以外の樹脂を併用してもよい。例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン及びエチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂(EVA)等のポリオレフィン系樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン共重合体樹脂(ABS)、アクリロニトリル−スチレン系共重合体樹脂、ナイロン、ポリアセタール系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びポリ塩化ビニル系樹脂等の少なくとも1種が挙げられる。
【0018】
上記の他の樹脂を併用する場合には、発泡剤含有樹脂層の樹脂成分中のエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂の含有量は、60質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、100質量%であっても良い。エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂含有樹脂層の樹脂成分として、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂を主成分として用いることで、以下に説明する発泡積層シートの発泡樹脂層の表面強度を向上させることができる。
【0019】
エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体のメルトフローレート値(MFR)(JIS K7210:190℃,2.16kg)は、用いる重合体の種類等によるが、通常は150g/10分以下とすることが好ましい。加工性及び以下に説明する発泡樹脂層とした場合の発泡状態を考慮すると10〜100g/10分の範囲に設定することが好ましい。このような数値範囲のものを使用することにより、より優れた耐スクラッチ性、摩耗性等を得ることができる。MFRが上記範囲内の場合には、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂含有樹脂層を押出し製膜により形成する際の温度上昇が少なく、非発泡状態で製膜できるため、後に絵柄模様層を形成する際に平滑な面に印刷処理をすることができて柄抜け等が少ない。また、MFRが大きすぎる場合は、樹脂が軟らかすぎることにより、発泡樹脂層として形成した場合の耐傷性が不十分となるおそれがある。
【0020】
本発明では、積層シートに白色又は隠蔽を付与することを目的として、表面処理してない酸化チタンを使用する。
【0021】
表面処理してない酸化チタンを使用することで、樹脂混練物の流動性の変動を抑制して生産することができる積層シートを得ることができる。
【0022】
前記発泡剤含有樹脂層中における前記表面処理してない酸化チタンの含有量は、隠蔽性及び樹脂混練物の流動性の変動を抑制して生産できるという理由から、発泡剤含有樹脂層の樹脂成分100質量部に対して、10〜60質量部が好ましく、20〜50質量部がより好ましく、30〜45質量部が更に好ましい。
【0023】
発泡剤含有樹脂層中に表面処理していない酸化チタン及び表面処理酸化チタンを配合する場合、樹脂混練物の流動性の変動を抑制して生産できるという理由から、表面処理していない酸化チタン及び表面処理酸化チタンの合計配合量に対して、表面処理していない酸化チタンの含有率は65〜100質量%が好ましく、90〜100質量%がより好ましく、酸化チタンとして表面処理していない酸化チタンのみを配合することが更に好ましい。
【0024】
本発明で使用する表面処理していない酸化チタンの平均粒子径は、隠蔽性という理由から、0.1〜0.6μmが好ましく、0.15〜0.4μmがより好ましい。また、粒子径は電子顕微鏡により測定することができる。
【0025】
発泡剤は、公知又は市販のものを使用することができる。例えば、前記したポリオレフィン系樹脂のプラスチゾル、オルガノゾル等の組成物に起泡剤を添加し、プラネタリーミキサー等の攪拌機により攪拌して機械的に発泡させる場合は、市販の起泡剤を使用すれば良い。発泡剤としては熱分解型発泡剤及びマイクロカプセル型発泡剤などが挙げられる。熱分解型発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等のアゾ化合物;オキシベンゼンスルホニルヒドラジド(OBSH)、パラトルエンスルホニルヒドラジド等のヒドラジド化合物;N,N′−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;炭酸アンモニウム、ソジウムボロンハイドライト、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどが挙げられる。マイクロカプセル型発泡剤としては、例えば、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル等からなる樹脂皮殻にヘキサン、ヘプタン、ブタン、空気等の熱膨張性気体を内包させた発泡剤などが挙げられる。これらは1種又は2種以上で用いることができる。
【0026】
発泡剤の含有量は、発泡剤の種類、発泡倍率等に応じて適宜設定できる。発泡倍率の観点からは、1.5倍以上、好ましくは3〜7倍程度であり、発泡剤は、樹脂成分100質量部に対して、1〜20質量部程度とすることが好ましい。
【0027】
発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物には、更に、発泡助剤を使用することができる。
【0028】
発泡助剤としては、特に限定はないが、金属化合物(金属酸化物、脂肪酸金属)以外のものを使用するのが好ましい。金属化合物を発泡助剤として使用すると発泡促進効果が損なわれる他、発泡剤含有樹脂層中の極性基と反応して着色し易い。そのため、発泡助剤としては、下記のヒドラジド系化合物が好適に用いられる。
【0029】
ヒドラジド系化合物として、一般式(1):
R−CO−NHNH (1)
に示されるモノヒドラジド化合物、及び一般式(2):
NHN−X−NHNH (2)
に示されるジヒドラジド化合物を好適に使用することができる。
【0030】
前記一般式(1)のヒドラジド化合物としては、より具体的には、ラウリル酸ヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、ホルムヒドラジド、アセトヒドラジド、プロピオン酸ヒドラジド、p−ヒドロキシ安息香酸ヒドラジド、ナフトエ酸ヒドラジド、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸ヒドラジド等を例示できる。
【0031】
前記一般式(2)のジヒドラジド化合物は、具体的には、例えば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、アゼライン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカン−2酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、ジグリコール酸ジヒドラジド、酒石酸ジヒドラジド、リンゴ酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、ダイマー酸ジヒドラジド、2,6−ナフトエ酸ジヒドラジド等の2塩基酸ジヒドラジド等が挙げられる。更に、特公平2−4607号公報に記載の各種2塩基酸ジヒドラジド化合物、2,4−ジヒドラジノ−6−メチルアミノ−sym−トリアジン等も本発明のジヒドラジドとして用いることができる。
【0032】
発泡助剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、0.3〜10質量部程度が好ましく、1〜6質量部程度がより好ましい。
【0033】
発泡剤含有樹脂層を形成する樹脂組成物には、上記エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体を主成分とする樹脂成分、表面処理していない酸化チタン、発泡剤及び発泡助剤以外にも、例えば、無機充填剤、顔料、架橋助剤、安定剤及び滑剤等を使用することができる。
【0034】
無機充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、三酸化アンチモン、モリブデン化合物等が挙げられる。無機充填剤を含むことにより、目透き抑制効果、表面特性向上効果等が得られる。無機充填剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して0〜100質量部程度が好ましく、20〜70質量部程度がより好ましい。
【0035】
顔料については、無機顔料として、例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄、黄色酸化鉄、黄鉛、モリブデートオレンジ、カドミウムイエロー、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、酸化鉄(弁柄)、カドミウムレッド、群青、紺青、コバルトブルー、酸化クロム、コバルトグリーン、アルミニウム粉、ブロンズ粉、雲母チタン等が挙げられる。また、有機顔料として、例えば、アニリンブラック、ペリレンブラック、アゾ系(アゾレーキ、不溶性アゾ、縮合アゾ)、多環式(イソインドリノン、イソインドリン、キノフタロン、ペリノン、フラバントロン、アントラピリミジン、アントラキノン、キナクリドン、ペリレン、ジケトピロロピロール、ジブロムアンザントロン、ジオキサジン、チオインジゴ、フタロシアニン、インダントロン、ハロゲン化フタロシアニン)等が挙げられる。顔料の含有量は、樹脂成分100質量部に対して3〜50質量部程度が好ましく、15〜30質量部程度がより好ましい。
【0036】
発泡剤含有樹脂層に対して電子線を照射してもよい。その方法としては、後記の製造方法に記載された方法に従って実施すればよい。
【0037】
なお、発泡剤含有樹脂層の厚さは40〜100μm程度が好ましい。
【0038】
非発泡樹脂層A及びB
発泡剤含有樹脂層は、その片面又は両面に非発泡樹脂層を有していてもよい。
【0039】
例えば、発泡剤含有樹脂層の裏面(基材が積層される面)には、基材との接着力を向上させる目的で非発泡樹脂層B(接着樹脂層)を有してもよい。
【0040】
接着樹脂層の樹脂成分としては、特に限定はないが、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。EVAは公知又は市販のものを使用することができる。特に、酢酸ビニル成分(VA成分)が10〜46質量%であるものが好ましく、15〜41質量%であるものがより好ましい。
【0041】
接着樹脂層の厚さは限定的ではないが、5〜50μm程度が好ましい。
【0042】
発泡剤含有樹脂層の上面には、絵柄模様層を形成する際の絵柄模様を鮮明にしたり発泡樹脂層の耐傷性を向上させたりする目的で非発泡樹脂層Aを有してもよい。
【0043】
非発泡樹脂層Aの樹脂成分としては、ポリオレフィン系樹脂、メタクリル系樹脂、熱可塑性ポリエステル系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられ、その中でもポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0044】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリイソプレン等の樹脂単体、炭素数が4以上のαオレフィンの共重合体(線状低密度ポリエチレン)、エチレン−アクリル酸共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸メチル共重合体樹脂、エチレン−アクリル酸エチル共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂等のエチレン(メタ)アクリル酸系共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂ケン化物、アイオノマー等の少なくとも1種が挙げられる。
【0045】
非発泡樹脂層Aの厚さは限定的ではないが、5〜50μm程度が好ましい。
【0046】
本発明では、後記製造上の観点からも、基材上に非発泡樹脂層B、発泡剤含有樹脂層及非泡樹脂層Aが順に形成された態様が好ましい。
【0047】
絵柄模様層
発泡剤含有樹脂層上(又は非発泡樹脂層A上)には、絵柄模様層を形成してもよい。
【0048】
絵柄模様層は、樹脂積層体に意匠性を付与する。絵柄模様としては、例えば木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、抽象模様等が挙げられる。絵柄模様は、発泡壁紙の種類に応じて選択できる。
【0049】
絵柄模様層は、例えば、絵柄模様を印刷することで形成できる。印刷手法としては、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等が挙げられる。印刷インキとしては、着色剤、結着材樹脂、溶剤を含む印刷インキが使用できる。これらのインキは公知又は市販のものを使用してもよい。
【0050】
着色剤としては、例えば、前記の発泡剤含有樹脂層で使用されるような顔料を適宜使用することができる。
【0051】
結着材樹脂は、基材シートの種類に応じて設定できる。例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等が挙げられる。
【0052】
溶剤(又は分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水などが挙げられる。これらの溶剤(又は分散媒)は、単独又は混合物の状態で使用できる。
【0053】
絵柄模様層の厚みは、絵柄模様の種類より異なるが、一般には0.1〜10μm程度とすることが好ましい。
【0054】
表面保護層(オーバーコート層)
本発明では、発泡剤含有樹脂層又は絵柄模様層の表面に艶調整及び/又は絵柄模様層の保護を意図して表面保護層を有してもよい。
【0055】
表面保護層の種類は限定的ではない。艶調整を目的とする表面保護層であれば、例えば、シリカなどの既知フィラーを含む表面保護層がある。表面保護層の形成方法としては、グラビア印刷などの公知の方法が採用できる。なお、絵柄模様層と表面保護層との密着性が十分に得られない場合には、絵柄模様層の表面を易接着処理(プライマー処理)した後に表面保護層を設けることもできる。
【0056】
積層シート又は後記の発泡積層シートの表面強度(耐スクラッチ性など)、耐汚染性、絵柄模様層の保護等を目的として表面保護層を形成する場合には、電離放射線硬化型樹脂を樹脂成分として含有するものが好適である。電離放射線硬化型樹脂としては、電子線照射によってラジカル重合(硬化)するものが好ましい。
【0057】
表面保護層の厚みは限定的ではないが、0.1〜15μm程度が好ましい。
【0058】
≪積層シートの製造方法≫
本発明の積層シートは、基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層が形成されている積層シートであり、
(1)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂及び表面処理していない酸化チタンを含有する発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する工程1、及び
(2)前記発泡剤含有樹脂層を前記基材上に貼着する工程2、
を有する製造方法により製造される。
【0059】
先ず、工程1では、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂及び表面処理していない酸化チタンを含有する発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する。例えば、前記エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂及び表面処理していない酸化チタンを含有する発泡剤含有樹脂層形成用組成物を溶融押出しして発泡剤含有樹脂層を形成することができる。
【0060】
発泡剤含有樹脂層がその片面又は両面に非発泡樹脂層を有する場合には、Tダイ押出し機による同時押出し製膜が好適である。例えば、両面に非発泡樹脂層を有する場合には、3つの層に対応する溶融樹脂を同時に押出すことにより3層の同時製膜が可能なマルチマニホールドタイプのTダイを用いることができる。
【0061】
次に、工程2では、前記発泡剤含有樹脂層を前記基材上に貼着する。基材上に発泡剤含有樹脂層を貼着する方法は限定的ではないが、例えば、前記成分を含有する発泡剤含有樹脂層形成用組成物をTダイ押出し機により押出し製膜した後に基材上に貼着することにより形成することが好ましい。なお、押出し製膜時のシリンダー温度及びダイス温度は樹脂の種類に応じて適宜設定すればよいが、一般に100〜140℃程度である。
【0062】
≪発泡積層シート及び発泡積層シートの製造方法≫
本発明の発泡積層シートは、上記積層シートの発泡剤含有樹脂層を加熱発泡させることにより得られる。
【0063】
発泡時の加熱条件は、熱分解型発泡剤の分解により発泡樹脂層が形成される条件ならば限定されない。加熱温度は210〜240℃程度が好ましく、加熱時間は20〜80秒程度が好ましい。
【0064】
発泡樹脂層の発泡倍率(発泡剤含有樹脂層からみた倍率)は、特に限定されないが、通常4倍以上、好ましくは4〜8倍程度である。発泡倍率が低すぎると優れた外観意匠を付与し難い。また、発泡倍率が高すぎると発泡樹脂層が機械的に弱くなり、耐スクラッチ性が低下しやすい。
【0065】
発泡積層シートを製造する際、発泡剤含有樹脂層を加熱発泡する前に、発泡剤含有樹脂層に対して、発泡前に電子線照射を行うことができる。これにより樹脂成分を架橋して発泡樹脂層の表面強度、発泡特性等を調整することができる。電子線のエネルギーは、150〜250kV程度が好ましく、175〜200kV程度がより好ましい。照射量は、10〜100kGy程度が好ましく、10〜50kGy程度がより好ましい。電子線源としては、公知の電子線照射装置が使用できる。
【0066】
更に、非発泡樹脂層の表面にコロナ放電処理を施しても良い。コロナ放電処理は、公知の方法に従って実施することができる。
【0067】
本発明の発泡積層シートは、最表面層の上からエンボス加工が施されていてもよい。エンボス加工は、エンボス版等の公知の手段により実施することができる。例えば、最表面層が上記表面保護層である場合に、表面樹脂層を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、例えば、木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
【発明の効果】
【0068】
本発明の積層シートによれば、樹脂成分としエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂を含む発泡剤含有樹脂層を有する場合に、そのエチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂を含む樹脂混練物の流動性の変動を抑制して生産できる積層シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されない。
【0070】
実施例1
発泡剤含有樹脂層形成用組成物(エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂(EMAA樹脂)配合)を40℃90%の環境下にて7日保管した。
【0071】
次に、層厚が100μmになるように、120℃にて、発泡剤含有樹脂層形成用組成物を溶融押出しして発泡剤含有樹脂層を形成し、当該発泡剤含有樹脂層樹脂層を基材(裏打紙)と貼り合せた。次いで、発泡剤含有樹脂層に電子線(200kV、50kGy)を照射して、EMAA樹脂を架橋させた後、前記発泡剤含有樹脂層上にグラビア印刷機により絵柄印刷を行うことで、積層シートを得た。
【0072】
次いで、発泡炉にて加熱し、前記発泡剤含有樹脂層に含有する発泡剤を発泡させ、更に最表面層の上から布目パターンの凹凸エンボスを施すことで、発泡積層シートを得た。
【0073】
下記表1に、発泡剤含有樹脂層形成用組成物の配合組成を示した。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例2
酸化チタンとして、「CR−EL(石原産業製)」を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、発泡積層シートを作製した。
【0076】
実施例3
酸化チタンの配合量を「20質量部」用いた以外は、実施例2と同様の方法により、発泡積層シートを作製した。
【0077】
実施例4
酸化チタンの配合量を「60質量部」用いた以外は、実施例2と同様の方法により、発泡積層シートを作製した。
【0078】
実施例5
酸化チタンとして、「CR−63 15質量部、CR−EL 45質量部」を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、発泡積層シートを作製した。
【0079】
比較例1
酸化チタンとして、「A−220:石原産業製」を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、発泡積層シートを作製した。
【0080】
比較例2
酸化チタンとして、「CR−63:石原産業製」を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、発泡積層シートを作製した。
【0081】
比較例3
酸化チタンとして、「CR−60−2:石原産業製」を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、発泡積層シートを作製した。
【0082】
比較例4
酸化チタンとして、「CR−60:石原産業製」を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、発泡積層シートを作製した。
【0083】
比較例5
酸化チタンとして、「PF−740:石原産業製」を用いた以外は、実施例1と同様の方法により、発泡積層シートを作製した。
【0084】
実施例及び比較例で使用した酸化チタンの物性を以下の表2に記載した。
【0085】
【表2】

【0086】
試験例1(流動性変化)
各酸化チタン種を混錬した発泡剤含有樹脂層形成用組成物を「東洋精機製メルトインデクサー」を用いて、120℃/2.16kgfにて測定し、保管前後での流動性の変化を算出した。
【0087】
評価基準は以下の通りである。
【0088】
流動性変化△ 0より大きい:問題なし
流動性変化△ −1〜0:やや流動性低下
流動性変化△ −1より小さい:流動性低下
【0089】
試験例2(押出機内発泡)
シリンダー温度120℃に設定し、一定速度にて押出し引き取った際の発泡剤含有樹脂層中の発泡有無を目視確認した。
【0090】
評価基準は以下の通りである。
【0091】
○:発泡が認められない。
△:僅かに発泡が認められる。
×:発泡が認められる。
【0092】
試験例1及び2の結果を表3及び4に示した。
【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
表3で示す様に、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂からなる発泡剤含有樹脂層に添加する酸化チタンとして、表面未処理の酸化チタンを配合することにより、高湿度下で樹脂を保管してもMFRの低下を生じさせず、押出機内での発泡を防ぐことができ、積層シートを安定に生産することができた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層が形成されている積層シートであって、
前記発泡剤含有樹脂層が、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂及び表面処理していない酸化チタンを含有することを特徴とする積層シート。
【請求項2】
前記発泡剤含有樹脂層中における前記表面処理していない酸化チタンの含有量が、前記発泡剤含有樹脂層の樹脂成分100質量部に対して10〜60質量部である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記基材は、繊維質シートである、請求項1又は2に記載の積層シート。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の積層シートの前記発泡剤含有樹脂層を発泡させることにより得られる発泡積層シート。
【請求項5】
最表面層の上からエンボス加工が施されている、請求項4に記載の発泡積層シート。
【請求項6】
基材上に、少なくとも発泡剤含有樹脂層が形成されている積層シートの製造方法であって、
(1)エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体樹脂及び表面処理していない酸化チタンを含有する発泡剤含有樹脂層を押出し製膜により形成する工程1、及び
(2)前記発泡剤含有樹脂層を前記基材上に貼着する工程2、
を有する積層シートの製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の製造方法により得られた積層シートの発泡剤含有樹脂層を発泡させる、発泡積層シートの製造方法。
【請求項8】
発泡剤含有樹脂層を発泡させた後にエンボス加工を施す工程を有する、請求項7に記載の発泡積層シートの製造方法。

【公開番号】特開2012−213940(P2012−213940A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81309(P2011−81309)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】