説明

積層シート

【課題】 調整が困難な擬似接着状態を用いずとも、一の基材層を人手で容易かつ確実に引き剥がすことができ、かつ、基材層の引剥強度の正確な調整が可能な積層シートの提供を目的とするものである。
【解決手段】 一対の基材層2、4と、この一対の基材層2、4の間に配設される非粘着性易破壊層3とを備えている積層シート1である。この積層シート1において、非粘着性易破壊層3の層間破壊による一対の基材層2、4の引剥強度としては0.02N/5cm以上16N/5cm以下が好ましい。この非粘着性易破壊層3は、バインダー5と該バインダー5中に含まれる充填剤6とを有し、バインダー5に対する充填剤6の体積比としては50%以上500%以下が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カード作製シート、配送用伝票、親展ハガキなどに好適な、一部の層を引き剥がして用いる積層シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】今日、インクジェット方式等のプリンター、コピー機などの汎用印刷装置が普及しており、かかる汎用印刷装置を用いて名刺、パーティー券などの各種カードを多数作製するためのカード作製用の積層シートが市販されている。
【0003】このカード作製用の積層シートとしては、カード部に区分するための略方形の切込みを有するカード用基材層と、合成樹脂製のラミネート層と、支持用基材層とを備え、このカード用基材層とラミネート層とが擬似接着状態で積層されたものが開発されている。かかるカード作製用の積層シートは、カード用基材層表面のカード部に汎用印刷装置を用いて種々の印刷を施した後に、カード用基材層のカード部のみを擬似接着状態のラミネート層から剥離することで、種々の情報、模様等が任意に印刷されたカードを作製することができる。
【0004】その他に、使用時に剥離する配送用伝票や親展ハガキなどにも、複数の基材層がラミネート層と擬似接着状態で積層された上記同様の構成の積層シートが用いられている。
【0005】ここで、「擬似接着状態」とは、両層が通常の使用状態では接着しているが、両層を剥離させる場合に特に工具等を用いずとも人手で引っ張るのみで容易に剥離し、単に重ね合わせて押圧するのみでは再接着できない状態を意味する。この「単に重ね合わせて押圧するのみでは再接着できない状態」という点において、疑似接着状態は通常の粘着剤による積層とは異なる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述のような一部の層を引き剥がして用いる上記従来の積層シートは、押出ラミネート法等を用いて基材層間に溶融合成樹脂を積層することで製造されるが、このときの溶融合成樹脂の温度を所定の低温に制御すること等の方法によって基材層とラミネート層との間が擬似接着状態とされている。しかし、かかる押出ラミネート法等による積層時に、溶融合成樹脂の温度等を正確に制御することは困難であるため、基材層とラミネート層との剥離強度の調製が困難であり、その結果、基材層が簡単に剥離できない場合や印刷時や運搬時等に意図せぬ剥離を起こしてしまう場合がある。
【0007】本発明はこれらの不都合に鑑みてなされたものであり、調整が困難な擬似接着状態を用いずとも、一の基材層を人手で容易かつ確実に引き剥がすことができ、かつ、基材層の引剥強度の正確な調整が可能な積層シートの提供を目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するためになされた発明は、一対の基材層と、この一対の基材層の間に配設される非粘着性易破壊層とを備えている積層シートである。ここで「非粘着性易破壊層」とは、通常の使用状態では両側に配設される一対の基材層の積層状態を保持することができるが、特に工具等を用いずとも人手により一対の基材層を引き剥がすよう外力を作用させることで容易に2層に破壊(層間破壊)される層であり、その破壊面に粘着性がない層を意味する。
【0009】当該積層シートによれば、非粘着性易破壊層の層間破壊により一対の基材層を人手で容易かつ確実に引き剥がすことができ、さらに一対の基材層の引剥し面、つまり非粘着性易破壊層の破壊面に粘着性がないので引剥し後の一対の基材層を管理、整理等の便に供することができる。従って、当該積層シートは、一部の基材層を引き剥がして用いるカード作製シート、配送用伝票、親展ハガキなどの積層シートに好適である。なお、当該積層シートによれば、単に非粘着性易破壊層を構成する樹脂組成物を積層することで達成され、従来の積層シートのように正確な温度制御等によって擬似接着状態とする必要がないので、これらの基材層を引き剥がして用いる積層シートを容易に製造することができる。
【0010】当該積層シートにおいて、上記非粘着性易破壊層の層間破壊による一対の基材層の引剥強度としては0.02N/5cm以上16N/5cm以下が好ましい。この程度の引剥強度とすることで、当該積層シートの表面への印刷時等において一対の基材層が意図せぬ剥離を起こしてしまうことがなく、かつ、基材層の剥離時には一対の基材層を人手で容易かつ確実に引き剥がすことができる。
【0011】当該積層シートにおける非粘着性易破壊層は、バインダーと、このバインダー中に含まれる充填剤とを有するとよい。かかるバインダーにより一対の基材層の積層状態を保持することができ、かつ、バインダーに含まれる充填剤により非粘着性易破壊層の層間破壊性及び破壊面の非粘着性を獲得することができる。
【0012】上記バインダーに対する充填剤の体積比としては50%以上500%以下が好ましい。バインダーに対する充填剤の含有体積比を上記範囲とし、比較的大量に充填剤を配合することで、非粘着性易破壊層の層間破壊性が促進され、人手による一対の基材層の引き剥がしが容易になる。
【0013】上記充填剤の粒径(平均粒子直径)としては10nm以上30μm以下が好ましい。充填剤の粒径を上記範囲とすることで、上記非粘着性易破壊層の層間破壊性を効果的に奏することができる。
【0014】上記充填剤として無機フィラーを用いるとよい。かかる無機フィラーとバインダーとは比較的接着性が低く、バインダーと無機フィラーとの界面をきっかけにして非粘着性易破壊層が比較的容易に破壊されるため、上記非粘着性易破壊層の層間破壊性を促進することができる。
【0015】上記無機フィラーとしては、コロイダルシリカ、酸化チタン及び炭酸カルシウムからなる群より選択される1又は2種以上のものを用いるとよい。これらの無機フィラーは、上記非粘着性易破壊層の層間破壊性の促進作用を効果的に奏することができる。また、これらの無機フィラーは白色であり、この非粘着性易破壊層の層間破壊面への印刷適性を付与することができる。
【0016】バインダー中に充填剤を含む上記非粘着性易破壊層において、このバインダー中にさらに気泡を含ませるとよい。この手段のように、バインダー中に充填剤に加えて気泡を含有させることで、上記非粘着性易破壊層の層間破壊性を格段に向上させることができる。
【0017】一方、当該積層シートにおける非粘着性易破壊層としては、基材ポリマーと、この基材ポリマー中に含まれる気泡とを有する層とすることも可能である。この手段によれば、基材ポリマー中に含まれる気泡が起点となり当該非粘着性易破壊層が容易に層間破壊される。
【0018】上記気泡のバインダー又は基材ポリマーに対する体積比としては20%以上70%以下が好ましい。このように気泡の体積比を上記範囲とすることで、上記非粘着性易破壊層の層間破壊性を効果的に奏することができる。なお、非粘着性易破壊層がバインダー中に充填剤と共に気泡を含有する場合は、気泡の体積比が少なくても良好な層間破壊性が奏される。
【0019】上記バインダーのベースポリマーとしては親水性樹脂が好ましい。この親水性樹脂は、一般的に強度が小さく、平均分子量も小さいので、上記層間破壊性を促進することができ、充填剤の充填により上記層間破壊性がさらに促進される。また、この手段によれば、非粘着性易破壊層が親水性樹脂をベースポリマーとするバインダー中に充填剤が含まれている構造となるため、このベースポリマーとしてIJインク受像層に用いられるような水性インクの吸収性及び初期乾燥性が良好な親水性樹脂を選択すると、一方の基材層を引き剥がした後の非粘着性易破壊層の層間破壊面に汎用のインクジェット方式のプリンターを用いて容易かつ確実に印刷を施すことができる。
【0020】当該積層シートにおいて、一方の基材層と非粘着性易破壊層との間に接着層を積層するとよい。上記非粘着性易破壊層は、押出ラミネート法等によって一対の基材層間へ直接積層することも可能であるが、この手段によれば、一方の基材層側に当該非粘着性易破壊層を構成する樹脂組成物を塗工等の簡易な手段で積層しておき、接着層を介して他方の基材層と積層することで当該積層シートを製造することができる。従って、当該手段を採用することで製造の容易性を促進することができる。
【0021】また、一方又は双方の基材層の外面にIJインク(インクジェット方式の印刷に用いるインクを意味する)受像層を積層するとよい。このように基材層の外面にIJインク受像層を積層することで、一般的に市販されているインクジェットプリンターを用いて当該積層シートの外面に容易に任意の印刷を施すことができる。
【0022】さらに、一方の基材層を自己発色性感圧記録シートとするとよい。この手段によれば、当該積層シートの積層状態のまま他方の基材層の外面に圧力印字することで、一方の基材層の内面側に同様の印字情報を転写することができる。そのため、当該手段は、複数の基材層に同じ文字情報等が印字される配送用伝票、親展ハガキなどに好適である。
【0023】また、一方の基材層にカード部に区分するための切込みを形成するとよい。この手段によれば、当該積層シートにおける一方の基材層のカード部に汎用の印刷装置を用いて任意の情報、模様等を印刷した後に、この一方の基材層のうち切込みで区分されたカード部のみを上記非粘着性易破壊層の層間破壊により引き剥がすことで、個人的に各種カードを容易に作製することができる。
【0024】さらに、上記手段に加えて、他方の基材層(上記切込みが形成されている一方の基材層以外の他方の基材層)における上記カード部に対応する領域の内方部分を上記非粘着性易破壊層の層間破壊により引き剥がすとよい。他方の基材層における上記カード部に対応する領域の内方部分が引き剥がされているので、上記一方の基材層のカード部の裏面側が露出されており、上記カード部の裏面へも印刷が可能になる。従って、当該手段によれば、両面印刷が施された各種カードを容易に作製することができる。
【0025】また、他方の基材層における上記切込みに対応する部分の一部分を上記非粘着性易破壊層の層間破壊により引き剥がすとよい。上記カード部を区分する切込みの一部分が他方の基材層によって支持されていないので、この貫かれた切込みの一部分をきっかけにしてカード部を容易に引き剥がすことができる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、適宜図面を参照しつつ本発明の実施の形態を詳説する。図1(a)は本発明の一実施形態に係る積層シートを示す模式的断面図で、図1(b)は(a)の積層シートの基材層引剥状態を示す模式的断面図である。また、図2(a)、(b)及び(c)は図1の積層シートとは異なる形態のカード作製シート用の積層シートを示す平面図、模式的断面図及び裏面図である。
【0027】図1の積層シート1は、第1基材層2と非粘着性易破壊層3と第2基材層4とが表面側からこの順に積層された構造である。
【0028】この第1基材層2及び第2基材層4は、使用時に引き剥がすことでカード、配送用伝票、親展ハガキなどの基材となる層であり、紙素材、合成樹脂フィルム等を用いることができる。使用可能な紙素材としては、例えば未晒クラフト紙、晒クラフト紙、上質紙、中質紙、片艶未晒クラフト紙、純白ロール、グラシン紙、感熱紙、感圧紙、合成紙、和紙、トレーシングペーパー、各種コート紙、板紙、ライナー紙等が挙げられる。また、使用可能な合成樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン酢酸ビニル樹脂、エチレンエチルアクリレート樹脂、エチレンアクリル酸樹脂、エチレンメタクリル酸樹脂、エチレンアクリル酸メチル樹脂、アイオノマー樹脂、ポリビニルアルコール、ポリエステル等が挙げられる。また、いわゆるメタロセン触媒を用いて重合されたポリエチレン、ポリプロピレン等も、好適に用いることができる。
【0029】第1基材層2及び第2基材層4に紙素材を用いる場合、この紙素材の秤量は、特には限定されず、用途に合わせて適宜選択するとよく、一般的には30g/m以上450g/m以下程度とされる。また、第1基材層2及び第2基材層4に合成樹脂フィルムを用いる場合の厚みも、同様に用途に合わせて適宜選択するとよく、一般的には8μm以上100μm以下程度とされる。
【0030】非粘着性易破壊層3は、バインダー5と、バインダー5中に略均一に含まれる充填剤6とから形成されている。
【0031】このバインダー5のベースポリマーとしては、特に限定されるものではなく種々の合成樹脂を用いることができるが、中でも比較的強度が小さく、上記層間破壊性が良好な親水性樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂又は各種樹脂のエマルジョンが好ましく、親水性樹脂が特に好ましい。この親水性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、メチルセルロース、ポリアクリルアミド、水溶性ポリエステル系樹脂、ポリ酢酸ビニル、水溶性ポリアミド系樹脂、ポリエチレンイミン、ポリエチレンポリアミン、ポリアリルアミン等が挙げられ、これらが単独で又は混合して用いられる。特に、当該積層シート1の第1基材層2と第2基材層4を引き剥がし後、第1基材層2及び第2基材層4の内面側(引剥面側)にインクジェットプリンターで印刷を施す場合、水性インクの吸収性及び初期乾燥性に優れるポリアクリル酸、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、ポリビニルピロリドンが好適に用いられる。なお、バインダー5には、上記ベースポリマーの他に、帯電防止剤、界面活性剤、染料固着剤、酸化防止剤、pH調整剤などが適宜配合される。
【0032】充填剤6としては、特に限定されるものではなく無機フィラー及び有機フィラーを用いることができるが、上記非粘着性易破壊層の層間破壊性を促進させる観点からは無機フィラーが好ましい。この無機フィラーとしては、例えば、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、カリウム、ケイ素、ナトリウム、カルシウム、タンタル、チタン、ジルコニウム、セリウム、スズ、インジウム、ランタン等の酸化物、塩化物、硫化物、水酸化物、炭化物等が挙げられ、これらの群より選択される1種又は2種以上のものを用いるとよい。但し、非粘着性易破壊層3の層間破壊面への印刷適性を考慮すると、コロイダルシリカ、酸化チタン及び炭酸カルシウムが特に好ましい。
【0033】充填剤6の粒径は、10nm以上30μm以下が好ましく、1μm以上20μm以下が特に好ましい。充填剤6の粒径を上記範囲とすることで、上記非粘着性易破壊層3の層間破壊性をさらに高めることができる。なお、上記充填剤6の粒径の下限は製造上の観点からである。
【0034】充填剤6の形状は、特に限定されるものではなく、例えば、球状、立方状、針状、棒状、紡錘形状、板状、鱗片状、繊維状などが挙げられる。中でも、球状及び紡錘形状が、バインダー5との引剥性が良好であり、上記層間破壊性の面から好ましい。
【0035】充填剤6のバインダー5に対する体積比としては、50%以上500%以下が好ましく、100%以上300%以下が特に好ましい。これは、充填剤6の体積比が上記範囲未満であると、層間破壊に寄与するバインダー5と充填剤6との界面が低減し、上記非粘着性易破壊層3の層間破壊性を十分に達成できなくなることからであり、逆に、当該体積比が上記範囲を超えると、バインダー5中への混合が困難になり、さらには一対の基材層2、4の積層状態を維持できなくなってしまうことからである。
【0036】なお、図示していないが、非粘着性易破壊層3のバインダー5中には充填剤6に加えて気泡を含ませることができる。かかる気泡をバインダー5中に含ませることで、非粘着性易破壊層3の層間破壊の起点が増大し、かつ、非粘着性易破壊層3の層状態を維持するバインダー5が相対的に減少することから、上記非粘着性易破壊層3の層間破壊性を格段に促進することができる。
【0037】この気泡のバインダー5に対する体積比としては、20%以上70%以下、特に30%以上60%以下、さらに40%以上50%以下が好ましい。これは、気泡の体積比が上記範囲より小さいと、上記気泡による非粘着性易破壊層3の層間破壊促進効果を十分に奏することができないことからであり、逆に、気泡の体積比が上記範囲を超えると、非粘着性易破壊層3の層間破壊性が大きくなりすぎ、当該積層シート1が意図せぬ剥離を起こしてしまうことからである。
【0038】この気泡の形状としては、特に限定されず、球状等の独立気泡でも上記層間破壊性の促進効果を奏することができるが、連続気泡の方が上記層間破壊性の促進効果の面からは好ましい。特に、シート面と略平行に配設される層状に扁平した気泡や、充填剤6とバインダー5との間に存在する気泡がより大きな層間破壊性の促進効果を示す。
【0039】かかる気泡をバインダー5中に形成する手段としては、バインダー5中に発泡剤を分散混合し、この発泡剤を発泡させる手段や、塗工前にバインダー5を撹拌する手段などがある。
【0040】当該積層シート1における非粘着性易破壊層3の層間破壊による一対の基材層2、4の引剥強度としては、0.02N/5cm以上16N/5cm以下が好ましく、0.05N/5cm以上10N/5cm以下が特に好ましい。この程度の引剥強度とすることで、当該積層シート1の使用時、例えば表面への印刷時等において一対の基材層2、4が意図せぬ剥離を起こしてしまうことがなく、かつ、引剥時には一対の基材層2、4を人手で容易かつ確実に引き剥がすことができる。
【0041】ここで、上記引剥強度の測定方法について説明する。まず、一対の基材層2、4を非粘着性易破壊層3を介して積層し、幅50mm、長さ200mmに裁断して試験片を得る。この試験片の片側面を両面テープで金属板に貼着し、試験片の長さ方向が鉛直方向となるように金属板をセットする。そして、試験片の下側部分の一方の基材層を引き剥がし、ある程度上方に巻き上げてチャックする。このチャック部分を上方に300mm/minの引張速度で引っ張って引き剥がしを進行させ、この間の応力を測定する。この応力の平均値が引剥強度とされる。
【0042】当該積層シート1は、バインダー5と充填剤6とからなる非粘着性易破壊層3を構成する樹脂組成物を一対の基材層2、4の間に積層することで製造される。この樹脂組成物の積層方法としては押出ラミネート法や一対の基材層2、4表面へのコーティングなどが採用される。コーティング手段としては、例えばバーコーター、ロールコーター、ブレードコーター、キスコーター、コンマコーター等を用いる既知の各種手段を採用することができる。このように、当該積層シート1は、非粘着性易破壊層3を構成する組成の樹脂組成物を単に基材層2、4間に積層することで容易に製造することができ、上記従来の剥離用の積層シートのように正確な温度制御等によって擬似接着状態とする必要はない。なお、この樹脂組成物の塗工量は、積層シート1の用途等にもよるが、一般的には固形分換算で2g/m以上100g/m以下程度である。また、非粘着性易破壊層3の厚さは、上記層間破壊性を考慮すると、一般的には8μm以上100μm以下程度とされる。
【0043】当該積層シート1は、図1(b)に示すように、一方の基材層2に引き剥がすよう人手で外力を作用させると、非粘着性易破壊層3がその層の中間部で2層に破壊され、一方の基材層2を他方の基材層4から容易かつ確実に引き剥がすことができる。また、非粘着性易破壊層3の層間破壊面に粘着性がないので、引き剥がし後の基材層2、4の保存、管理等が容易になる。さらに、非粘着性易破壊層3を構成するバインダー5のベースポリマーに親水性樹脂を用いた場合、基材層2、4の引剥面側に鮮明にインクジェット印刷を施すことができる。
【0044】図2(a)、(b)及び(c)の積層シート11は、カード作製用のものであり、汎用のインクジェットプリンターで印刷できるよう、B5サイズ、A4サイズ(図2ではハガキサイズを例示)等の所定の大きさに形成されたものである。この積層シート11は、IJインク受像層12、カード用基材層13、非粘着性易破壊層14、接着層15及び支持用基材層16が表面側からこの順に積層された構造である。
【0045】IJインク受像層12は、親水性樹脂組成物から形成されており、水性インクの吸収性及び初期乾燥性が良好である。このIJインク受像層12により当該積層シート11の表面へのインクジェットプリンターによる鮮明な印刷が可能になる。この親水性樹脂組成物としては、上記バインダー5の親水性樹脂と同様のものが用いられ、その他に無機顔料、帯電防止剤、界面活性剤、染料固着剤、酸化防止剤、pH調整剤等が適宜配合される。
【0046】カード用基材層13は引き剥がした後にカードとなる層であり、支持用基材層16はこのカード用基材層13を支持するための層である。これらのカード用基材層13及び支持用基材層16は、上記図1の積層シート1の一対の基材層2、4と同様のものである。また、非粘着性易破壊層14も上記図1の積層シート1の非粘着性易破壊層3と同様のものである。
【0047】接着層15は、接着剤から構成されており、非粘着性易破壊層14と支持用基材層16とを接着するための層である。この接着層15に用いられる接着剤としては、例えば、デンプン,にかわ,カゼイン,天然ゴム等の天然物、熱可塑性や熱硬化性の合成樹脂、合成ゴム、反応型接着剤、瞬間接着剤、ホットメルト接着剤などが挙げられる。この接着層15の積層方法としては、用いられる接着剤によって適宜選択され、例えば、接着剤を非粘着性易破壊層14又は支持用基材層16に塗布する方法、両層間に合成樹脂を押出ラミネート法やドライラミネート法により積層する方法などがある。
【0048】上記IJインク受像層12及びカード用基材層13の積層体には、カード部17に区分するための略方形の切込み18が複数(図2では2カ所)形成されている。
【0049】また、接着層15及び支持用基材層16の積層体は、上記カード部17に対応する領域の内方部分19が非粘着性易破壊層14の層間破壊によって引き剥がされている。そのため、上記カード用基材層13のカード部17裏面の内方部分19が露出されており、このカード部17の裏面に対しても汎用の印刷装置を用いて印刷が可能となる。なお、このカード部17の裏面には層間破壊された非粘着性易破壊層14の一部が層状に残存しているため、この非粘着性易破壊層14のバインダー5に親水性樹脂を用いた場合はインクジェット印刷に好適となる。
【0050】さらに、接着層15及び支持用基材層16の積層体は、上記カード用基材層13の切込み18に対応する部分の一部分20が非粘着性易破壊層14の層間破壊により引き剥がされている。そのため、カード部17を区分する切込み18が上記一部分20において支持用基材層16により支持されていないので、この一部分20において表裏に貫かれた切込み18をきっかけにしてカード部17を容易に引き剥がすことができる。
【0051】次に、上記構造の積層シート11の製造方法について説明する。まず、カード用基材層13の表面に上記親水性樹脂組成物をコーティングすることで、カード用基材層13の表面にIJインク受像層12を積層する。また、カード用基材層13の裏面に非粘着性易破壊層14用の上記樹脂組成物を塗工することで、カード用基材層13の裏面に非粘着性易破壊層14を積層する。次に、上記IJインク受像層12、カード用基材層13及び非粘着性易破壊層14からなる積層体と支持用基材層16とを接着層15を介して接着する。最後に、IJインク受像層12とカード用基材層13とにカード部17に区分するための切込み18を形成し、支持用基材層16及び接着層15のうち上記内方部分19及び一部分20を非粘着性易破壊層14の層間破壊により引き剥がすことで、当該積層シート11が完成する。
【0052】当該積層シート11によれば、カード部17の表面にインクジェットプリンターによって所定の印刷を施し、露出したカード部17の裏面に同様のインクジェットプリンターで所定の印刷を施した後に、切込み18で区分されたカード部17を剥がすことで、両面に印刷が施された複数のカードが完成する。
【0053】なお、本発明の積層シートは、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、カード作製用のもの以外に、複数の基材層が引き剥がし可能に積層された配送用伝票や親展ハガキなどに適用可能である。また、一方の基材層を自己発色性感圧記録シートとすることで、他方の基材層表面への加圧印字と同時に同様の記載内容を一方の基材層へ転写することができる。さらに、上記非粘着性易破壊層としては、バインダー5中に充填剤6を含むものに限定されず、人手により一対の基材層が引き剥がせる程度の層間破壊性を有するものであればその構成は問わない。例えば、基材ポリマーと、この基材ポリマー中に含まれる気泡とを有する構造の層も可能である。かかる基材ポリマーとしては上記バインダー5と同様であり、基材ポリマーに対する気泡の体積比としても上記と同様である。
【0054】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の積層シートによれば、調整が困難な擬似接着状態を用いずとも、一の基材層を人手で容易かつ確実に引き剥がすことができ、さらに、基材層の引剥強度の正確な調整が可能となる。従って、当該積層シートはカード作製シート、配送用伝票、親展ハガキなどの引き剥がして用いられるものに好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係る積層シートを示す模式的断面図で、(b)は(a)の積層シートの基材層引剥状態を示す模式的断面図である。
【図2】(a)、(b)及び(c)は、図1の積層シートとは異なる形態のカード作製シート用の積層シートを示す平面図、模式的断面図及び裏面図である。
【符号の説明】
1 積層シート
2 第1基材層
3 非粘着性易破壊層
4 第2基材層
5 バインダー
6 充填剤
11 積層シート
12 IJインク受像層
13 カード用基材層
14 非粘着性易破壊層
15 接着層
16 支持用基材層
17 カード部
18 切込み
19 内方部分
20 一部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の基材層と、この一対の基材層の間に配設される非粘着性易破壊層とを備えている積層シート。
【請求項2】 上記非粘着性易破壊層の層間破壊による一対の基材層の引剥強度が0.02N/5cm以上16N/5cm以下である請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】 上記非粘着性易破壊層が、バインダーと、このバインダー中に含まれる充填剤とを有する請求項1又は請求項2に記載の積層シート。
【請求項4】 上記充填剤のバインダーに対する体積比が50%以上500%以下である請求項3に記載の積層シート。
【請求項5】 上記充填剤の粒径が10nm以上30μm以下である請求項3又は請求項4に記載の積層シート。
【請求項6】 上記充填剤として無機フィラーが用いられている請求項3、請求項4又は請求項5に記載の積層シート。
【請求項7】 上記無機フィラーとして、コロイダルシリカ、酸化チタン及び炭酸カルシウムからなる群より選択される1又は2種以上のものが用いられている請求項6に記載の積層シート。
【請求項8】 上記バインダー中にさらに気泡が含まれている請求項3から請求項7のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項9】 上記非粘着性易破壊層が、基材ポリマーと、この基材ポリマー中に含まれる気泡とを有する請求項1又は請求項2に記載の積層シート。
【請求項10】 上記気泡のバインダー又は基材ポリマーに対する体積比が20%以上70%以下である請求項8又は請求項9に記載の積層シート。
【請求項11】 上記バインダー又は基材ポリマーとして親水性樹脂が用いられている請求項3から請求項10のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項12】 一方の基材層と非粘着性易破壊層との間に接着層が積層されている請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項13】 一方又は双方の基材層の外面にIJインク受像層が積層されている請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項14】 一方の基材層が自己発色性感圧記録シートである請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項15】 一方の基材層にカード部に区分するための切込みが形成されている請求項1から請求項14のいずれか1項に記載の積層シート。
【請求項16】 他方の基材層における上記カード部に対応する領域の内方部分が上記非粘着性易破壊層の層間破壊により引き剥がされている請求項15に記載の積層シート。
【請求項17】 他方の基材層における上記切込みに対応する部分の一部分が上記非粘着性易破壊層の層間破壊により引き剥がされている請求項15又は請求項16に記載の積層シート。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2002−264240(P2002−264240A)
【公開日】平成14年9月18日(2002.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−64263(P2001−64263)
【出願日】平成13年3月8日(2001.3.8)
【出願人】(000165088)恵和株式会社 (63)
【Fターム(参考)】