説明

積層シート

【課題】 本発明は、任意の場所に貼り付けることが可能で、圧電フィルムの両面で発生する電圧を効率よく体表面に伝えることができる健康シートを実現できる。また圧電フィルムの両面で発生した電圧に関して、片面は導電性粘着剤を介して、片面は直接体表面に伝えることができるため、圧電フィルムに貫通電極、側壁電極などが不要であり、安価で小型の健康シートを提供する。
【解決手段】 片面に導電性粘着剤を有する支持シートで、該導電性粘着剤を介して少なくとも1枚の圧電フィルムが貼り合わされており、該圧電フィルムが前記支持シートよりも小さい大きさであることを特徴とする積層シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、体表面に貼り付けて、身体の一部を電気的に刺激して、体調改善に効果を有する積層シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から身体表面には、東洋医学で言うところのツボが数多く存在しており、このツボを刺激することが健康を維持する上で有用であることはよく知られている。また、人体にはその生体を維持するために、生体電流が流れており細胞活動や筋肉の収縮運動を行っており、人為的に外部から人体にパルス電流を供給しても、生体電流が流れたときと同様の作用を生じることが知られている。
【0003】
このようなことから、低周波治療器として、足裏や腰部などを電気的に刺激する機能を備えたものが数多く提供されてきた。
【特許文献1】 特開2003−18795
【特許文献2】 特開2001−95929
【0004】
一方で、足裏を電気的刺激するシューズが知られている。これは、シューズの底部に取り付けた圧電素子に瞬間的に体重が作用したときに電圧が発生し、足裏を電気的に刺激するものがある。
【特許文献3】 昭54−146148
【特許文献4】 特開2001−224403
【0005】
身体に密着させるシートとして、健康の維持や増進に寄与する健康具として磁石を利用して血行を促進する磁気治療機や、特殊な化学物質を湿布として使用するものなどがある。
【特許文献5】 特開2000−342698
【特許文献6】 特開平10−316529
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の低周波治療器は、ACコンセントや電池などの電源を必要とするために持ち運び性が悪く、大掛かりとなるため日常生活を行いながらの治療は困難であった。また、電極パッドを用いるため、大掛かりであり常に刺激を与えることは困難であった。さらに圧電素子を内蔵したシューズは、大掛かりな仕掛けを有する中敷や靴が必要であり、かつ足以外の任意の場所を刺激することが容易ではないという問題があった。
磁気治療機や湿布などは電気的な刺激を体表面に与えるものではなかった。
【0007】
本発明は人体表面、ツボ部又はツボ近傍、さらには腱や肩、筋肉近傍などの任意の場所に容易に貼り付けることが可能であって、日常生活をすごしながら効果的な電気的刺激を上記部位に与え、身体の血行の改善、筋肉の緊張をほぐすなどの体調改善の効性が出るような安価な積層シートを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は本発明者の鋭意研究により、本研究の目的は下記(1)から(7)の積層シートによって実現された。
(1)片面に導電性粘着剤を有する支持シートで、該導電性粘着剤を介して少なくとも1枚の圧電フィルムが貼り合わされており、該圧電フィルムが前記支持シートよりも小さい大きさであることを特徴とする積層シート。
(2)前記圧電フィルムにおいて、少なくとも導電性の粘着剤を介して支持シートと貼り合わされている面と反対の面に電極が形成されていることを特徴とする前記(1)に記載の積層シート。
(3)記電極が導電性粘着剤であることを特徴とする(2)に記載の積層シート。
(4)前記導電性粘着剤の表面抵抗が1E10Ω以下であることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載の積層シート。
(5)前記導電性粘着剤の表面抵抗が1E7Ω以下であることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載の積層シート。
(6)両面に電極が形成された圧電フィルムが、支持シートに折り曲げあるいは捻った状態で貼り合わされている積層シートであって、支持シートに貼り合わされていない方向に圧電体フィルムの両面の電極が現れていることを特徴とする積層シート。
(7)前記(1)から(6)のいずれかに記載のシートを用いた健康具であって、圧電フィルム側を体表面に貼りつけて使用することを特徴とする積層シート。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、任意の場所に貼り付けることが可能で、圧電フィルムの両面で発生する電圧を効率よく体表面に伝えることができる健康シートを実現できる。また圧電フィルムの両面で発生した電圧に関して、片面は導電性粘着剤を介して、片面は直接体表面に伝えることができるため、圧電フィルムに貫通電極、側壁電極などが不要であり、安価で小型の健康シートを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
以下、本発明の実施の形態について、本発明で奏する作用効果をも含めて、詳細に説明する。
【0010】
圧電体は、例えば「圧電/電歪アクチュエータ −基礎から応用まで−」内野研二著、森北出版や、「誘電体現象論」株式会社オーム社に記載されているように、圧電体に歪が生じると電圧が発生することが知られている。圧電体の歪みによる電圧発生は、圧縮、引張り、捩れなどがあげられる。特にフィルム状の圧電体を用いた場合、該圧電体が屈曲した際には、屈曲の山側では引張り、屈曲の谷側では圧縮の歪みが生じるため、圧電体表裏面に大きな電圧が発生する。
【0011】
本発明ではフィルム状の圧電体を体表面に密着させて、身体が動くと同時に、圧電体フィルムに歪が加わるようにすることにより、圧電体フィルムに電圧を発生させる。発生した電圧は導電性粘着剤、電極あるいは直接圧電フィルムから取り出し、体表面に接することで体表面を電気的に刺激する。また、電気的に刺激する体表面は、一般的にツボと呼ばれている部分や筋肉疲労がある部分の近傍であることが好ましい。このような部分は、電気刺激によってマッサージ効果あるいは血行を改善する効果を得やすい。
【0012】
本発明で用いる圧電体材料は可撓性フィルムであることが好ましい。フィルムは電気材料等を含めた厚みで10μm以上、1mm以下であることが好ましい。10μm未満であると圧電体フィルムから発生する電流値が少なく、1mm以上であると体表面に貼り付けたときに屈曲性能が悪く、また、足裏、靴底、衣服等に貼り付けたときに違和感が生じ好ましくない。より好ましくは、30μm以上300μm以下である。
また、圧電体フィルムの形状に関しては特にこだわらないが、屈曲しやすい形状であることが好ましく、例えば長方形などである。
【0013】
圧電材料としては、未処理のポリフッ化ビニリデン等に延伸処理、分極処理等を施すことによって得られる高分子圧電体フィルム、あるいはエポキシ系樹脂、塩素化ポリエチレンなどのゴム等の有機高分子にチタン酸鉛、ジルコン酸鉛などを含む金属酸化物よりなる圧電体セラミックス粒子を混在させて成型した圧電体フィルム等を用いることができる。圧電性を有する材料であれば特に材質にはこだわらない。フィルムに歪を与えたときの発生電圧の指標となる圧電定数g33は高い方が望ましく、0.01Vm/N未満では効果が乏しい。そのため、好ましくは0.01Vm/N以上あることが好ましく、より好ましくは、0.3Vm/N以上あることである。
【0014】
圧電体フィルムはその厚み方向に分極処理を施してあることが好ましい。また、厚み方向に分極処理を施した2枚の圧電体フィルムを、電極を介して分極方向が正反対になるように積層し、バイモルフ構造としてもよい。このような構造にし、バイモルフ構造に適した電極配置にすることによって、1枚の構造のものよりも、より高い電圧を発生することができる。
【0015】
圧電体フィルムが発生する電圧は、1kV以下であることが好ましい。1kVよりも大きい電圧を連続して体表面に印加すると、体質によっては人体へ悪影響を及ぼす場合があるためである。特に、連続して使用する場合には100V以下であることが好ましい。より好ましくは10V以下である。このような電圧であれば、人体への有害性および危険性は皆無である。
【0016】
本発明で用いる導電性粘着剤(あるいは導電性粘着材)の種類には特にはこだわらない。アクリル系のものでも構わないし、ゲル状のものでも構わない。導電性粘着剤の表面抵抗としては、1E10Ωよりおおきければ体表面に効率的に電圧を伝えることができないため、1E10Ω以下であることが好ましい。より好ましくは1E7Ω以下であることである。さらに好ましくは1E4Ω以下であることである。表面抵抗が低い方が、より効率的に圧電フィルムで発生した電圧を体表面に伝えることができる。
【0017】
圧電体フィルムに形成する電極材料は特にその材質はこだわらないが、Ag、Al、Pt、Cr、Cu、Ti、Cr、Ni、W、Au、Ag、Cなどの様々な金属材料あるいはそれらの合金材料、さらにそれらを混合した樹脂材料、導電性の高分子などを用いることができる。特に、人体への金属アレルギーなどを引き起こさない材料であることが好ましく、人体と接する部分にTiを含む金属はより好ましい。また、電極材料は耐食性を持つことが好ましい。さらに、電極は多層のものでもかまわない。電極の形成方法は、特にこだわらない。
【0018】
本発明に用いる支持シートは可塑性のあるシート状のものであれば特に材質にはこだわらない。また、シート状になっていれば、繊維質でもかまわないし、不織布でも構わないし、プラスチックフィルムでも構わない。体表面に貼り付けて使用するため、人体に毒性のないものが好ましい。
【0019】
圧電フィルムと支持シートを、導電性粘着剤を介して貼り付けることにより、圧電フィルムの導電性粘着剤に貼り付けた側に別途電極を形成したものを用いたり、表裏面を貫通する電極や側面電極などを用いたりすることなくフィルム表裏面で発生した電圧を体表面に効率よく伝えることができ、コスト的に安価となる。
圧電フィルムの両面で発生した電圧は導電性粘着剤や電極を介して短絡していないことが好ましい。また、短絡を防止するために、保護フィルムを貼り付けることや、圧電フィルムの端部付近には電極を形成しない部分があってもよい。
【0020】
導電性粘着剤を有する支持シートのサイズを圧電フィルムよりも大きくすることにより、体表面に貼り付けたときに、圧電フィルムの片側の面で発生した電圧は導電性粘着剤を通して、圧電フィルムのもう一方の面で発生した電圧は電極あるいは直接的に体表面に作用し効率がよい。
【0021】
両面に電極が形成された圧電フィルムを折り曲げる、あるいは捻りを加えて折り曲げることにより、体表面に貼り付ける片方側に圧電フィルムの両面に形成された電極を現れるようにすることができる。このようにすることにより、貫通電極や、側壁電極などを用いることなく、体表面に圧電フィルムの厚み方向で発生した電圧を効率よく体表面に伝えることが可能となる。
【0022】
本発明の積層シートに用いる電極あるいは圧電体フィルムに関して、体表面に接していない面には、ポリエチレンや塩化ビニールなどの高分子フィルムによって絶縁コーティングあるいは劣化防止の保護膜を形成してもよい。
【0023】
本発明の積層シートの粘着剤には湿布薬などの薬を混ぜ込んで用いてもかまわない。また、磁力による健康器具と併用してもよい。
【0024】
本発明の積層シートの表面すなわち体表面に接する面に凹凸加工を施して、体表面に貼り付けたときに該凹凸加工の凸部によってツボや筋肉を刺激するようにしてもよい。また、凹凸のサイズに関してはこだわらない。
【実施例】
以下本発明の実施形態を図面に示す実施例により詳述する。なお、図面に関しては、説明をわかりやすくするためにサイズを変更して記載している。
【0025】
(実施例1)
支持フィルムとして1cm×3cmの大きさの高密度ウレタン不織布を用いた。この支持フィルムの片面にアクリル系の導電性粘着剤を塗布した。さらに導電性粘着剤の上に、圧電体フィルムとして0.5cm×2cmの厚み約50μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムを貼り付け積層シートを作製した。図1はこの積層シートの概略図である。この積層シートを足の甲の部分に前記導電性粘着剤を介して貼り付けて、約10分間ゆっくりと歩いた。このとき、圧電フィルムからは最大で約5Vの電圧が体表面に印加された。このとき足の表面温度は、歩行前で34.5℃であったものが、徐々に上昇し36.0℃となった。この温度上昇は実験終了後約40分で元に戻った。なお、比較のため反対側の足の表面温度を同時に測定したが、変化はなかった。このように本発明によると効率よく体表面に電圧を伝えることができた。
【0026】
(実施例2)
支持フィルムとして1cm×3cmの大きさの高密度ウレタン不織布を用いた。この支持フィルムの片面にアクリル系の導電性粘着剤を塗布した。さらに導電性粘着剤の上に、圧電体フィルムとして片面にTi電極が蒸着にて形成された0.5cm×2cmの厚み約50μmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムを電極面とは反対の面を貼り付け積層シートを作製した。図2はこの積層シートの概略図である。この積層シートを足の甲の部分に貼り付けて、約10分間ゆっくりと歩いた。このとき、圧電フィルムからは最大で約5Vの電圧が体表面に印加された。このとき足の表面温度は、歩行前で34.7℃であったものが、徐々に上昇し36.7℃となった。この温度上昇は実験終了後約40分で元に戻った。なお、比較のため反対側の足の表面温度を同時に測定したが、変化はなかった。このように本発明によると効率よく体表面に電圧を伝えることができた。
【0027】
(実施例3)
支持フィルムとして1cm×3cmの大きさの高密度ウレタン不織布を用いた。この支持フィルムの片面に粘着剤を塗布した。両面にTi電極が形成された0.5cm×2cmのポリフッ化ビニリデン(PVDF)フィルムの長辺1.5cmとなるように0.5cm折りたたんだ。圧電フィルムの両面の電極が現れている面とは反対側の面を前記高密度ウレタン不織布に粘着材を介して貼り付け図3に示すような積層シートを作製した。この積層シートを肩の部分に貼り付けて、約10分間ゆっくりと歩いた。このとき、圧電フィルムからは最大で約3Vの電圧が体表面に印加された。良好に体表面に電圧が印加されていることが確認された。
以上の結果から、本発明の積層シートを体表面に貼り付けることにより、日常生活をすごしながら効果的な電気的刺激を貼り付け部位に与えることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態による積層シートの概略図
【図2】 本発明の第2の実施の形態による積層シートの概略図
【図3】 本発明の第3の実施の形態による積層シートの概略図
【符号の説明】
【0028】
10 支持フィルム
20 導電性粘着剤
30 圧電フィルム
40 電極
50 粘着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
片面に導電性粘着剤を有する支持シートで、該導電性粘着剤を介して少なくとも1枚の圧電フィルムが貼り合わされており、該圧電フィルムが前記支持シートよりも小さい大きさであることを特徴とする積層シート。
【請求項2】
前記圧電フィルムにおいて、少なくとも導電性の粘着剤を介して支持シートと貼り合わされている面と反対の面に電極が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記電極が導電性粘着剤であることを特徴とする請求項2に記載の積層シート。
【請求項4】
前記導電性粘着剤の表面抵抗が1E10Ω以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層シート。
【請求項5】
前記導電性粘着剤の表面抵抗が1E7Ω以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層シート。
【請求項6】
両面に電極が形成された圧電フィルムが、支持シートに折り曲げあるいは捻った状態で貼り合わされている積層シートであって、支持シートに貼り合わされていない方向に圧電体フィルムの両面の電極が現れていることを特徴とする積層シート。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のシートを用いた健康具であって、圧電フィルム側を体表面に貼りつけて使用することを特徴とする積層シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−306001(P2006−306001A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−160387(P2005−160387)
【出願日】平成17年5月1日(2005.5.1)
【出願人】(303036876)
【Fターム(参考)】