説明

積層シート

【課題】
キャリアテープに適した積層シートであって、帯電防止性、透明性、及び耐折強度や耐衝撃性等の物性バランスに優れ、且つ、シートの一部を原料樹脂にリターンしても、物性バランスへの影響の少ない積層シートおよびエンボスキャリアテープを得る。
【解決手段】
基材層及び表面層からなる積層シートであって、各層がスチレン系単量体単位(St)、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位(MA)を主成分連続相と、スチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる分散相を有し、かつ特定の分子量分布を有するゴム変性スチレン系重合体からなり、表面層は、基材層よりも分散相の含有率が高く、且つポリエーテルエステルアミド系の帯電防止剤を含有している積層シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアテープに適した帯電防止性、透明性、及び耐折強度や耐衝撃性等の物性バランスに優れたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来よりIC、LSI等の電子部品を電子機器に実装するためのエンボスキャリアテープは、塩化ビニル樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等の熱可塑性樹脂で構成されたシートをエンボス形状に熱成形したものが用いられている。これらのエンボスキャリアテープは、前記電子部品への静電気障害防止対策を取ることが必要であるが、例えばICやLSIのような高度の帯電防止性が要求される電子部品用として用いる場合は、前記の熱可塑性樹脂にカーボンブラック等の導電性フィラーを含有させた樹脂組成物からなるシートや、前記の樹脂シート表面に導電性塗料等を塗布したシートで、表面固有抵抗率を10Ω/□以下にしたものが用いられるのが一般的であった。これらのものは一般的には不透明であり、収納した電子部品の有/無および良/不良の確認や、記載された文字の判読は、エンボスキャリアテープの上表面にシールされた透明なカバーテープを通して行なわれる。
一方で、電子部品の中でも、例えばコンデンサーのように静電気障害によって破壊する可能性が少ないものを収納するエンボスキャリアテープは、外から内容物の電子部品を目視することや、該部品に記載された文字を検知する点で有利なことから、前記の比較的透明性の良好な熱可塑性樹脂を基材とした透明タイプのエンボスキャリアテープが用いられていた。
【0003】
しかしながら、これら電子部品の小型化や実装速度の高速化の要望から、静電気障害による部品の破壊だけでなく、静電気による部品のキャリアテープへの付着や移動により、実装不良というトラブルが顕在化してきており、透明タイプにも静電気対策として帯電防止性の付与が求められてきている。
【0004】
透明タイプのエンボスキャリアテープ用のシートとしては、例えばスチレン系樹脂シートとしては、汎用ポリスチレン樹脂とスチレンーブタジエンブロック共重合体とを混合したシートや、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含有するゴム変性スチレン系重合体からなるシートで形成されている。キャリアテープはその使用形態から透明性、耐衝撃性、耐折り曲げ性及び成形性等の物性をバランスさせることが要求されており、これまで、これらの特性の向上と良好な物性バランスを得るために種々の検討がなされてきた。
更に、帯電防止性を付与する技術として、例えば表面に帯電防止剤でコートすることや帯電防止剤を樹脂に練りこむことなどが行われている。
【0005】
シートの透明性という点では、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を含有するゴム変性スチレン系重合体からなる樹脂を用い、表面層に帯電防止剤としてポリエーテルエステルアミドを含有する層を形成した積層シートが優れている(特許文献1〜4)。また表面層に高分子性の帯電防止剤を用いていることで、このシート又はエンボスキャリアテープを高温、多湿の環境にて保管した際の帯電防止性(表面抵抗率)の変化が少ない点でも優れている。
【0006】
しかしながら前記の積層シートは、十分な帯電防止性のエンボスキャリアテープを得ようとすると(帯電防止剤の添加量が増すと)、シートの耐折強度が不足する傾向があるという問題があった。一方このようなシートを共押出成形により製造する際に、ダイより押し出されたシートの両端部がトリミングされる。その際に発生するいわゆる「耳」と呼ばれる部分や、シートを目的の幅にスリットした際に生じるテープ状の部分は、粉砕された上で例えば基材層原料に添加して再利用されるのが一般的であり、このようなリターンが可能であることは、この積層シートの生産性の点で極めて重要である。しかるに、前記の積層シートは、このようなリターンを行った場合、シートの透明性が著しく低下してしまうといった問題があった。
【特許文献1】特開平10−279755号公報
【特許文献2】特開2002−332392号公報
【特許文献3】特開2003−055526号公報
【特許文献4】特開2003−253069号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、キャリアテープに適した積層シートであって、帯電防止性、透明性、及び耐折強度や耐衝撃性等の物性バランスに優れ、且つ、積層シートの製造の際に、シートの一部を原料樹脂にリターンしても、前記物性バランスへの影響の少ない積層シートおよびそのシートを熱成形したエンボスキャリアテープを得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、ゴム変成スチレン共重合体を用いた積層シートにおいて、その基材層及び表面層の構成について鋭意検討した結果として、前記課題を解決した積層シートの構成を見出し、本発明に到達した。
即ち本発明は、基材層及び少なくともその片側の表面に表面層を有する積層シートであって、各層が スチレン系単量体単位(St)、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位(MA)、及びこれらの単量体と共重合可能な他のビニル系単量体単位からなるスチレン系樹脂の連続相と、スチレン系単量体単位(St)とブタジエン単量体単位(Bd)からなるスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる分散相を有するゴム変性スチレン系重合体を主成分とし、下記の(1)〜(4)の要件を具備する積層シートである。
(1)該ゴム変性スチレン共重合体中のスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる分散相の含有率が15〜30質量部であり、表面層が基材層よりも高い含有率である。
(2)該ゴム変性スチレン系重合体の重量平均分子量(Mw)が120,000〜170,000である。
(3)該ゴム変性スチレン系重合体のMwと数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.0〜2.8である。
(4)表面層がポリエーテルエステルアミド系の帯電防止剤をゴム変性スチレン共重合体100質量部に対して5〜25質量部を含有する。
【0009】
更に、表面層を構成するゴム変性スチレン系重合体の分散相が15〜25質量部でかつ、基材層を構成するゴム変性スチレン系重合体の分散相が25〜30質量部であることが好ましい。また、シートの総厚は100μm〜1000μmで、表面層の厚みがシートの総厚の3〜15%であることが好ましい。
【0010】
一方で表面層が含有する帯電防止剤のポリエーテルエステルアミドとしては、下記の(B1)、(B2)及び(B3)を共重合して得られるポリエーテルエステルアミドを含有することが好ましい。
(B1)炭素原子数6以上のアミドカルボン酸もしくはラクタム、又は炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩
(B2)下記の化学式[化4]〜[化6]から選ばれた1種もしくは2種以上のジオール化合物(但し式中、R1はエチレンオキシド基、R2はエチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基を示す。Yは共有結合で炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF3)2又はNHを示し、Xは水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基又はその金属塩を示す。XLのLは0又は1〜4の整数を示し、m及びnは各々16以上の整数を示す。)。
(B3)炭素原子数4〜20のジカルボン酸
【0011】
【化4】


【化5】


【化6】

【0012】
更に、本発明は前記積層シートの全層を含むシートの粉砕物又は再ペレット化した樹脂組成物を基材層に5〜30質量部含有した記載した積層シート、および以上のいずれかの積層シートを真空/圧空成形、プレス成形したエンボスキャリアテープを包含する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によって得られたシートは、(1)表面抵抗率は1012Ω/□以下で静電気によるトラブル防止効果を有し、(2)曇度は20%以下で透明性も良好であり、(3)耐折強度、及び(4)耐衝撃強度のいずれも良好であって、この積層シートを熱成形することによって、前記の(1)〜(4)の全ての特性に関してバランスがとれた透明タイプのエンボスキャリアテープを製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明でいうゴム変成スチレン系重合体の連続相を構成する共重合体は、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位およびこれらの単量体と共重合可能な他のビニル系単量体単位からなる共重合体である。分散相を構成するグラフト共重合体とは、スチレン系単量体単位、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位およびこれらの単量体と共重合可能な他のビニル系単量体単位からなる共重合体がゴム状弾性体にグラフトしてなる共重合体である。
【0015】
スチレン系単量体とは、スチレン、あるいはその誘導体である。誘導体としては、例えばα−メチルスチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等を挙げることができる。好ましくはスチレンである。スチレン系単量体は、単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0016】
(メタ)アクリル酸エステル系単量体とは、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルの誘導体であり、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−メチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等があげられる。(メタ)アクリル酸エステル系単量体は、単独でも、2種類以上を併用してもよい。
【0017】
スチレン系単量体、(メタ)アクリル酸エステル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、メタアクリロニトリル、フマロニトリル、マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。好ましくはメタクリル酸、アクリロニトリル、N−フェニルマレイミドである。
【0018】
ゴム状弾性体としては、例えばポリブタジエン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエンランダム共重合体、スチレン−イソプレンランダム共重合体等が挙げられる。
【0019】
ゴム変性スチレン系共重合体中の分散層の含有率とは、メチルエチルケトン(MEK)にゴム変性スチレン系重合体を溶解・分散させた後に、フィルターで濾別した成分を計量して得た値である。この分散相の含有率は、良好な透明性、衝撃強度を得るためには15〜30質量部である。分散層の含有率が低いと良好な衝撃強度を得ることができない。また、分散層の含有率が高いと透明性が低下してしまう。(尚、本発明において「分散相の含有率」とは、特に断らない限り、ゴム変成スチレン系重合体を100質量部としたときの値である。)
【0020】
ゴム変性スチレン系重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、メチルエチルケトン(MEK)にゴム変性スチレン系重合体を溶解・分散させた後に、フィルターを通過した成分についてGPC測定して得られる値である。 Mw/Mnはそれらの値から算出され、ゴム変成スチレン系重合体のMEK可容成分の分子量分布を表す値である。良好な透明性、衝撃強度の積層シートを得るためには、このMwは120,000〜170,000であり、Mw/Mnは2.0〜2.8であることが必要である。Mwが低いと、成形性が低下すると共に良好な衝撃強度が得ることができない。また、Mwが高いか、あるいは、Mw/Mnが大きいと、分散層の分散が悪く透明性が低下してしまう。
【0021】
本発明者等は、多層シートの場合良好な衝撃強度、特に耐折強度を得るために、その表面層と基材層を構成するゴム変性スチレン系重合体のゴム状弾性体を含む分散層の含有率の効果が大きいことを見出した。そして、表面層を構成するゴム変性スチレン系重合体中の分散層の含有率を、基材層を構成するゴム変性スチレン系重合体中の分散層の含有率より大きくすることにより、良好な耐折強度を得ることができる。具体的には、表面層を構成するゴム変性スチレン系重合体の分散相が15〜25質量部でかつ、基材層を構成するゴム変性スチレン系重合体の分散相が25〜30質量部であることが好ましい。
【0022】
帯電防止剤のポリエーテルエステルアミドは、下記の(B1)、(B2)、(B3)の各成分を共重合することによって得られる。
(B1)炭素原子数6以上のアミドカルボン酸もしくはラクタム、又は炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩
(B2)下記の化学式(1)〜(3)から選ばれた1種もしくは2種以上のジオール化合物(但し式中、R1はエチレンオキシド基、R2はエチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基を示す。Yは共有結合で炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF3)2又はNHを示し、Xは水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基又はその金属塩を示す。XLのLは0又は1〜4の整数を示し、m及びnは各々16以上の整数を示す。)。
(B3)炭素原子数4〜20のジカルボン酸
【化7】


【化8】


【化9】

【0023】
表面層に含有されるポリエーテルエステルアミドの割合は、表面層のゴム変性スチレン系共重合体100質量部に対して5〜25質量部の範囲である。5質量部未満では帯電防止効果が十分で無く、25質量部を超えると、積層シートの衝撃強度や耐折強度が不十分となる。
ゴム変性スチレン系共重合体とポリエーテルエステルアミドの混合方法については特に制限はない。例えば、ヘンシェルミキサーやタンブラーミキサー等の公知の混合装置にて予備混合した後、短軸押出機または二軸押出機等の押出機を用いて溶融混練を行うことにより、均一に混合することができる。
【0024】
本発明の積層シートは、基材層と少なくともその片側の表面に表面層を有する積層シートであって、そして、本発明の積層シートは、その総厚は特に限定されないが通常100〜1000μmで、表面層は総厚の3〜15%の範囲であることが好ましい。表面層の厚み比率が小さいと、十分な耐折強度が得られない場合があり、逆にその比率が高すぎると十分な剛性が得られないことがあり、また透明性が悪くなる恐れがある。
【0025】
シートを構成する樹脂には必要に応じて酸化防止剤、耐候剤、滑剤、可塑剤、着色剤、帯電防止剤、鉱油、難燃化剤等の添加剤を添加することができる。さらに、シートの表面特性を良好にするために帯電防止剤、シリコーン、防曇剤等を表面に塗布しても良い。
【0026】
シートを製造する方法は特に限定されるものではなく一般的な方法で製造することができる。例えば、マルチマニホールドを有する多層Tダイを用いた押出成形や、フィードブロックを用いたTダイ法押出成形によって好適に製造される。
【0027】
本発明の積層シートのもう一つの大きな特徴は、該シートの製膜過程やスリット工程で発生するいわゆる「耳」等のテープ状物を基材層の原料系にリターンして製膜しても、帯電防止性、透明性、及び耐折強度や耐衝撃性等の物性バランスに殆ど影響のないシートを得ることができることである。尚前記のテープ状物を基材層の原料系に戻す方法は一般的な方法で良くて、例えば粉砕して再ペレット化した上で基材層の原料ホッパーに一定量を混合していくような方法でも何ら問題はない。この再ペレットを原料ペレットに混合する割合は特に制限されるものではないが、耐折強度や耐衝撃性等の物性を高く維持するという観点からは、一般的には原料ペレット100質量部に対して50質量部までの範囲が好ましい。
【0028】
本発明の積層シートから真空成形、圧空成形、プレス成形等公知のシートの成形方法(熱成形)を利用することにより、キャリアテープ(エンボスキャリアテープ)、トレイ等の自由な形状の電子部品包装容器を得ることができる。特に透明性と、耐折強度、及び耐衝撃強度のいずれも良好な透明タイプのエンボスキャリアテープを製造するのに極めて有用である。
キャリアテープ(エンボスキャリアテープ)は、前記の成形方法で形成された収納部に電子部品を収納した後に、カバーテープにより蓋をしてリール状に巻き取ったキャリアテープ体として、電子部品の保管および搬送に用いることができる。
【実施例】
【0029】
本発明の各実施例(比較例)で得られたシートの各物性値の評価は、以下の方法により行った。
(1)表面抵抗率:JIS K 6911に準拠して、23℃×50%RH環境下で測定した。
(2)曇度:JIS K 7105に準拠して測定した。
(3)50%破壊エネルギー:東洋精機社製デュポン式衝撃試験機にて、1/2インチ半球状撃芯を用い荷重500gで行った以外は、JISK 7211に準拠して落錘試験を行い、50%破壊エネルギーを(J)の測定を行った。なお、環境温度は23℃で、試験片は150mm×150mmの形状で行った。
(4)耐折強度:JIS P 8115に準拠して、張力を500gfで測定環境は23℃で測定した。また、シート製作時のシートの流れ方向(MD)とそれに直交する方向(TD)で、各々測定した。
【0030】
実施例及び比較例においては、表1に分散相含有率および前記の分子量特性(MwおよびMw/Mn)を示したP1〜P7のゴム変性スチレン系重合体を用いた。
【0031】
【表1】

【0032】
[実施例1〜2、比較例1〜7]
ゴム変性スチレン系樹脂と帯電防止剤であるポリエーテルエステルアミド(ペレスタットNC6321/三洋化成)を表2に示す樹脂組成と層構成で、φ65mm押出機(L/D=32)1台、φ40mm押出機(L/D=26)2台及び600mm幅のTダイによりマルチマニホールド法にて、平均厚300μm、表面層/基材層/表面層:5/90/5の2種3層シートを得た。評価結果を、表3に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
[実施例3、比較例8]
ゴム変性スチレン系樹脂と帯電防止剤であるポリエーテルエステルアミド(ペレスタットNC6321/三洋化成)および積層シートの全層を含むシートの粉砕物又は再ペレット化した樹脂組成物(再生材)を表4に示す樹脂組成と層構成で、φ65mm押出機(L/D=32)1台、φ40mm押出機(L/D=26)2台及び600mm幅のTダイによりマルチマニホールド法にて、平均厚300μm、表面層/基材層/表面層:5/90/5の2種3層シートを得た。評価結果を、表5に示す。
【0036】
【表4】

【0037】
【表5】

【0038】
各実施例のシートは、(1)表面抵抗率は1012Ω/□以下で静電気によるトラブル防止効果を有し、(2)曇度は20%以下で透明性も良好であり、(3)耐折強度、及び(4)耐折強度のいずれも良好であって、透明タイプのキャリアテープの実用上、前記の(1)〜(4)に関して、全ての特性のバランスがとれたものであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層及び少なくともその片側の表面に表面層を有する積層シートであって、各層が スチレン系単量体単位(St)、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位(MA)、及びこれらの単量体と共重合可能な他のビニル系単量体単位からなるスチレン系樹脂の連続相と、スチレン系単量体単位(St)とブタジエン単量体単位(Bd)からなるスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる分散相を有するゴム変性スチレン系重合体を主成分とし、下記の(1)〜(4)の要件を具備する積層シート。
(1)該ゴム変性スチレン共重合体中のスチレン−ブタジエンブロック共重合体からなる分散相の含有率が15〜30質量部であり、表面層が基材層よりも高い含有率である。
(2)該ゴム変性スチレン系重合体の重量平均分子量(Mw)が120,000〜170,000である。
(3)該ゴム変性スチレン系重合体のMwと数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が2.0〜2.8である。
(4)表面層がポリエーテルエステルアミド系の帯電防止剤をゴム変性スチレン共重合体100質量部に対して5〜25質量部を含有する。
【請求項2】
表面層を構成するゴム変性スチレン系重合体の分散相が15〜25質量部でかつ、基材層を構成するゴム変性スチレン系重合体の分散相が25〜30質量部である請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
シートの総厚が100μm〜1000μmで、表面層の厚みがシートの総厚の3〜15%である請求項1又は請求項2に記載の積層シート。
【請求項4】
表面層が含有する帯電防止剤のポリエーテルエステルアミドが、下記の(B1)、(B2)及び(B3)を共重合して得られるポリエーテルエステルアミドを含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層シート。
(B1)炭素原子数6以上のアミドカルボン酸もしくはラクタム、又は炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩
(B2)下記の化学式[化1]〜[化3]から選ばれた1種もしくは2種以上のジオール化合物(但し式中、R1はエチレンオキシド基、R2はエチレンオキシド基又はプロピレンオキシド基を示す。Yは共有結合で炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数1〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO2、CO、S、CF2、C(CF3)2又はNHを示し、Xは水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン基、スルホン基又はその金属塩を示す。XLのLは0又は1〜4の整数を示し、m及びnは各々16以上の整数を示す。)。
(B3)炭素原子数4〜20のジカルボン酸
【化1】


【化2】


【化3】

【請求項5】
前記積層シートの全層を含むシートの粉砕物又は再ペレット化した樹脂組成物を、基材層に5〜50質量部含有した請求項1〜4のいずれか1項に記載した積層シート。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層シートを真空/圧空成形、プレス成形したエンボスキャリアテープ。

【公開番号】特開2010−5984(P2010−5984A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−170091(P2008−170091)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【Fターム(参考)】