説明

積層パッケージ材料、その製造方法およびパッケージ

【課題】液体食品用の積層パッケージ材料におけるEVOHとポリアミドとの組み合わせの方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、ミルク、クリーム、ジュースカートンのような液体食品用のヒートシール可能なパッケージに使用するのにとくに好適な積層包装材料、前記材料の製造方法、および前記材料から製造される食品パッケージに関する。前記材料は、紙または板紙のコアー、EVOHおよびポリアミドの酸素および香気防止バリヤー層を有して成り;本発明は、EVOH層5およびポリアミド層4が中間接着剤層を介さずに直接的に互いに接合され、バリヤー層およびコアー3が、前記材料の両面のポリマーヒートシール層2、7の間に挟まれることを特徴とする。少なくとも前記バリヤー層4、5の材料が溶融状態において互いに接して配置され、1つのウェブとしてコアー3に向けられるような押し出しによって、前記材料が製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体食品用のヒートシール可能なパッケージにとくに好適な、紙または板紙のコアー、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)およびポリアミド(PA)の酸素および香気防止バリヤー層を有して成る積層パッケージ材料に関する。本発明はさらに、前記積層パッケージ材料の製造方法、およびその材料から製造される液体食品用の密封容器、例えばミルクまたはジュースカートンに関する。
【背景技術】
【0002】
液体食品パッケージに使用され、紙または板紙を基材とする積層パッケージ材料は、通常、1つまたはそれ以上のバリヤー層を有し、それの目的は、酸化によるパッケージ製品の汚染を防止し、製品の味およびそれが含有するビタミンを保存するためである。ポリマー材料のうち、EVOHは優れたバリヤー特性を有することが既知であるが、ポリアミドも良好なバリヤー特性を有するので、液体パッケージ板紙に使用されている。
【0003】
液体パッケージ板紙におけるポリアミドの使用の例が、特許文献1に開示されており、一方、EVOHの使用は、例えば、特許文献2に開示されている。両公開によれば、パッケージ材料が、両面においてLDPE(低密度ポリエチレン)の外部ヒートシール層で積層されており、それによって板紙層およびポリアミドまたはEVOHのバリヤー層がヒートシール層の間に挟まれる。特許文献3において、EVOH層の他に、例えばポリアミドの他の酸素防止バリヤー層を含んでいてもよい液体パッケージ用の積層パッケージ材料が知られている。この公報によれば、EVOH層が、パッケージ材料の表面に位置し、それによって前記EVOH層がヒートシール層としても機能する。この場合、EVOHが包装される液体と接触し、これは、EVOH層が分離したヒートシール層によって保護されるパッケージ材料より、材料のバリヤー特性の点で劣っている。
【0004】
液体パッケージ用の板紙において、EVOHが有する問題は、それが機械的に弱いことである。例えば、カートン型パッケージの製造において、前記材料を折り畳む必要があり、これによってEVOH層に亀裂が容易に生じて、それのバリヤー特性を低下させる。さらに、EVOH層は、パッケージがヒートシールされるときに、接合部領域に孔を形成する傾向がある。これは、熱によって板紙層から逃げようとし、EVOHが保持することができない蒸気圧によって生じる。これに関して、ポリアミドは、折り畳みにおける亀裂を受けにくく、板紙から放出される湿気を吸収することができるので、EVOHよりも優れた材料である。ポリアミドのバリヤー特性がEVOHのバリヤー特性と同等でないので、ポリアミドがEVOHに取って代わることはできないが、パッケージ材料においてEVOHとポリアミドとを組み合わせることによってこれらの問題を解決しようとする試みがなされてきた。従って、特許文献4は、バリヤー層の材料を適切に選択することによって孔の形成に関する問題を解決する方法を開示しており、1つの選択的材料はEVOHおよびポリアミドの配合物である。それの目的は、ヒートシール温度におけるバリヤー層材料の粘度および強度を維持することである。2つの分離したEVOH層を有して成る食品パッケージ板紙を開示している特許文献5は、EVOHおよびポリアミドを配合して層の粘度を向上させることを薦めている。
【0005】
【特許文献1】フィンランド特許出願公開第86610号公報
【特許文献2】フィンランド特許出願公開第89567号公報
【特許文献3】米国特許第4701360号明細書
【特許文献4】フィンランド特許出願公開第96752号
【特許文献5】米国特許第4977004号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、これらの方法の問題点は、配合されたポリアミドによって、EVOHのバリヤー特性が低下することである。材料を、酸素および香気防止性にする最良の方法は、パッケージ材料に、連続的、および実質的に透明なEVOH層を含めることである。さらに、EVOHおよびポリアミドの配合物は、主に前記配合物のゲル化傾向によって、純粋ポリマー材料より、押し出しがより困難であることが見い出された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的はとくに、前記の欠点を有さない、液体食品用の積層パッケージ材料におけるEVOHとポリアミドとの組み合わせの方法を提供することである。従って、本発明の目的は、EVOHを含有する層における孔の形成を防止し、同時に、層におけるポリマーの量をできる限り少なく維持することである。本発明の積層パッケージ材料は、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)層およびポリアミド(PA)層が中間の接着材料層を介さずに互いに接合され、そして前記材料が両面にポリマーヒートシール層を有して成り、それによって紙または板紙のコアーおよび前記バリヤー層がヒートシール層の間に挟まれることを特徴とする。
【0008】
従って、本発明は、液体パッケージ板紙に異なった層を付着させるために一般に使用されているサーリン層のような中間接着剤層を介さずに、EVOHおよびポリアミドのバリヤー層を互いに直接的に接合することによって、EVOHの優れたバリヤー特性、ならびにポリアミドにおける粘度および孔の不在を、どちらの特性も低下させることなく組み合わせることができるという観察に基づいている。本発明によって観察されるEVOHおよびポリアミド層の良好な付着は、一部分は、ポリマー間の化学反応により、および一部分は、極性、即ち、陰に荷電したEVOHと陽に荷電したポリアミドの設置、によるものであると考えられる。接着剤層の存在しないことは、他の従来の多層構造と比較して層の数を減少させ、このことは押し出し工程を簡単にし、材料が節減されることを意味する。必要とされるバリヤー特性および孔の不在が、従来より少ない量のEVOHおよびポリアミドの量によって得られることによっても、材料の節減およびより軽い構造が達成される。一般に、板紙の積層ポリマー層は潜在的に、製品の香および味に対して否定的効果を有し、そのような理由から、本発明は、パッケージ材料におけるポリマーの量をできる限り少なく維持するという一般的目的を果たすものである。本発明のパッケージ材料は、無菌包装に含まれる滅菌工程にも耐えることができる。
【0009】
本発明によれば、パッケージ材料において、EVOHおよびポリアミドが、中間接着剤を使用せずに、互いに、あるいは紙または板紙のコアーに接合することができることを特徴とする。バリヤー層と材料表面のヒートシール層との間に、接着剤層が必要な場合もある。材料の両面のヒートシール層が、LDPEのようなポリオレフィンからできているのが好都合である。例えば、サーリンまたは無水マレイン酸で変性されたLDPEを接着剤として使用することができる。
【0010】
ポリアミド層が紙または板紙のコアーにより近くなるように、バリヤー層がパッケージ材料中に配置される場合は、ポリアミドが、ヒートシール時に板紙層から放出される湿気を受容し、吸収することによってEVOH層を保護する。EVOH層は孔の形成に対して保護され、接合部における酸素および香気の不透過性を維持する。しかし、EVOH層を紙または板紙に対して配置することも可能であり、これは層の密着性に関しては有益でないが、一方、EVOHの紙または板紙への優れた付着という利点を有する。この場合、パッケージ材料に使用される紙または板紙の質を限定する必要がない。
【0011】
バリヤー特性に関して、パッケージ材料におけるポリアミドの充分量は、約1〜8g/m2、好ましくは2〜5g/m2であり、EVOHの量は同様に、約1〜8g/m2、好ましくは約2〜5g/m2である。EVOHまたはポリアミドのいずれかのバリヤー層を有する既知のパッケージ材料において、一般的な量は、約6〜8gEVOH/m2、および8〜10gPA/m2である。従って、本発明の分離し向き合っているEVOHおよびポリマー層は、パッケージ材料におけるバリヤー層に必要とされるポリマーの量を増加させず、むしろその反対に、その量を減少させることができる。ヒートシール層におけるポリマーの量は、材料の両面において、約5〜50g/m2であってもよい。
【0012】
ポリマー貼り合わせ層が押し出しによって紙または板紙のコアーに配置される前記積層パッケージ材料を製造する本発明の方法は、EVOHおよびポリアミドが溶融ウェブとして互いに接して配置され、その後、それらが組み合わされたウェブとして、コアーに向かうことを特徴とする。次に、バリヤー材料が、紙または板紙に出会う前に効果的に融合し、その後に凝固する。
【0013】
ヒートシールによって前記パッケージ材料から製造される本発明の液体食品パッケージは一般に、主に長方形の密封カートンであり、例えば、ミルク、クリーム、サワーミルク、ヨーグルト、ジュースまたはワインを含有してもよい。しかし、ポリマーバリヤー層は、未開封パッケージにおいて酸素または香気バリヤーとして機能するだけでなく、パッケージが開封された後でも、製品保存を補助する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
実施の形態例および参考試験、および添付図面を参照して、本発明を下記により詳細に説明する。
【0015】
パッケージにおけるヒートシール層として製造され機能するパッケージの外表面を形成する、本発明のパッケージ材料1の第二表面層2は、低密度ポリエチレン(LDPE)から製造される。次に、板紙、例えばケミカル・サーモ・メカニカルパルプ[chemical-thermo-mechanical pulp(CTMP)]から製造されるコアー3が存在する。次に、酸素および香気防止バリヤー層4、5が存在し、それらが中間接着剤層を介さずに、互いに、および板紙コアー3に接合している。図1の実施の態様においては、コアー3に接するバリヤー層4はポリアミド(PA)であり、ポリアミド層に付着する第二バリヤー層5はエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)である。EVOH層5の次に、例えば無水マレイン酸で変性したLDPEの接着剤層6が存在し、この接着剤層の目的は、LDPEである材料の第二表面層7に、EVOH層を結合させることである。結合後、前記表面層7は、第二表面層2と接合するヒートシール層として機能し、最終パッケージ中の液体と接触する内表面を形成する。
【0016】
図2のパッケージ材料1は、EVOHおよびポリアミドのバリヤー層4、5の順序以外は、図1のパッケージ材料と同様である。図2において、EVOH層5が、板紙コアー3と接して配置され、次にポリアミド層4が、パッケージの内表面を形成するヒートシール性LDPE層7に接着剤層6によって接合されている。
【0017】
図3において、図1のパッケージ材料の製造が略図で示されており、その製造は、ポリマー層2、4〜7を、材料コアーを形成する移動板紙ウェブ3に押し出すことによって行われ、押し出し工程はローラー8によって制御される。コーティングの前に、板紙ウェブ3をコロナ処理9にかける。板紙上に配置される4つの重ね合わされたポリマー層4〜7がそれぞれ、それらの容器10〜13から導かれ、その容器からポリマーがノズル14に導かれ、このノズルが溶融ポリマーを互いに融合させて層状にし、前記ポリマーを1つの組み合わされたウェブ15として板紙3に供給する。図3に示されていない板紙ウェブ3の反対側に配置されるポリマーヒートシール層2の押し出しは、実質的に同様の方法で行ってもよい。押し出されるポリマーの量は、例えば、バリヤー層4が約2〜10g/m2、バリヤー層5が約2〜10g/m2、接着剤層6が約3〜10g/m2、図3に示されていない材料の反対側のヒートシール層2が約10〜50g/m2である。板紙コアー3の重量は、約200〜400g/m2であってもよい。
【0018】
参考試験
本発明の積層パッケージ材料は、図1に従って、20g/m2の重量のLDPE層2、板紙層3、5g/m2の重量のポリアミド層4、5g/m2の重量のEVOH層5、5g/m2の重量の接着剤層6、および41g/m2の重量のLDPE層7から、それを形成することによって製造される。これを、3つの参考材料と比較した:14g/m2の重量のLDPE層、板紙層、5g/m2の重量のEVOH層、6g/m2の重量の接着剤層、および45g/m2の重量のLDPE層を有して成る第一材料(参考材料1);20g/m2の重量のLDPE層、板紙層、5g/m2の重量のポリアミド層、6g/m2の重量の接着剤層、および41g/m2の重量のLDPE層を有して成る第二材料(参考材料2);および、20g/m2の重量のLDPE層、板紙層、47.5%EVOH、47.5%ポリアミド、および5%エチレン−メチルアクリレートコポリマーを配合物として含有する5g/m2の重量のバリヤー層、6g/m2の重量の接着剤層、および41g/m2の重量のLDPE層を有して成る第三材料(参考材料3)。
【0019】
それらの材料に関して、1平方メートルにつき、23℃において、24時間で材料を透過する酸素の量を、2〜4個の試験片の透過量の平均として測定することによって、最初に酸素密度を求めた。結果を表1に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
次に、熱風噴射を使用するいわゆる泡立ち試験によって、ヒートシール工程における材料の孔形成のしやすさを試験した。この試験は下記のように実施された。
【0022】
試験される材料試験片を、熱風噴射下に200mm/秒の定速で前後に移動するスタンドに配置した。送風機から材料試験片の表面までの距離は7mm、噴射空気の温度は350℃、相対湿度は100%であった。噴射によって、プラスチックが溶融した。次に、孔形成に対する材料の抵抗を、最初の孔が形成されるまでに材料が送風機を何回通過するか、および運動の継続中にどのようにして孔形成が展開されるかに基づいて評価した。材料の孔形成を調査し、下記のような4段階の尺度に基づいて評価した:
E=非損傷;H=非常に少ない孔;V=数個の孔;およびP=多くの孔。結果を表2に示す。
【0023】
【表2】

【0024】
結果は、本発明のパッケージ材料が、3種の参考材料より優れていることを示す。この卓越性はとくに、材料の孔形成のしやすさを評価する泡立ち試験において明白であり、この試験において本発明の材料は、孔形成することなく熱風噴射下で10回通過した(5回の往復運動)。材料の板紙コアーが炭化し始めたので、試験をそれ以上継続しなかった。3種の参考材料全てにおいて、遅くとも6回の通過後に孔形成が観察され、とくに、EVOH層のみを有して成る参考材料1は、7回の通過後に既に、多くの孔の形成によって全体的に損傷されていた。
【0025】
本発明の種々の実施の態様は、前記実施例に限定されず、それらは添付の請求の範囲内において変更しうることが当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の積層パッケージ材料の略図である。
【図2】本発明の他の積層パッケージ材料の略図である。
【図3】パッケージ材料中におけるポリマー層の押し出し、および板紙におけるそれらの配置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙または板紙のコア3、エチレン−ビニルアルコール共重合体およびポリアミド層の耐酸素と香気バリヤー層4、5からなる、とくにヒートシール可能な液体食品パッケージ用積層パッケージ材料1であって、
ポリアミド層4の重量が1〜8g/m2であり、エチレン−ビニルアルコール共重合体層5と、ポリアミド層4が界面接着層なしに互いに接合し、その材料は両側にポリマーヒートシール層2、7を有し、コア3と前記バリヤー層4、5がヒートシール層の間に位置することを特徴とする積層パッケージ材料。
【請求項2】
互いに接合したバリヤー層4、5が、界面接着層なしに直接紙または板紙のコア3に対して位置することを特徴とする請求項1に記載のパッケージ材料。
【請求項3】
ポリアミド層4が紙または板紙のコア3により近くなるように、材料中のバリヤー層4、5が配置されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のパッケージ材料。
【請求項4】
エチレン−ビニルアルコール共重合体層5が紙または板紙のコア3により近くなるように、材料中のバリヤー層4、5が配置されていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のパッケージ材料。
【請求項5】
材料の表層を形成するヒートシール層2、7が、低分子量ポリエチレンなどのポリオレフィンからなることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載のパッケージ材料。
【請求項6】
ポリアミド層4の重量が2〜5g/m2であることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載のパッケージ材料。
【請求項7】
エチレン−ビニルアルコール共重合体層5の重量が1〜8g/m2であることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載のパッケージ材料。
【請求項8】
熱溶着層2、7の個々の重量が5〜50g/m2であることを特徴とする前記請求項のいずれかに記載のパッケージ材料。
【請求項9】
ポリマー積層体の層が押し出しによって紙または板紙のコア3に設置された、前記請求項のいずれかに記載のパッケージ材料の製造方法であって、
エチレン−ビニルアルコール共重合体5およびポリアミド4が、溶融ウェブの状態で互いに対して設置され、そしてこのように一体としてコア3へと送られて、結合層を形成することを特徴とする製造方法。
【請求項10】
パッケージが、請求項1〜8のいずれかに記載のパッケージ材料から、ヒートシールによって製造されたことを特徴とする液体食品の密封パッケージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−15387(P2007−15387A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−213798(P2006−213798)
【出願日】平成18年8月4日(2006.8.4)
【分割の表示】特願平10−506603の分割
【原出願日】平成9年6月25日(1997.6.25)
【出願人】(506267536)
【Fターム(参考)】