説明

積層フィルムおよびその用途

【課題】ポリオレフィン樹脂に大量に配合米を混入しても、突き刺し強度が低下せず、高ヒートシール強度、高剛性を保持した積層フィルムおよびその用途の提供。
【解決手段】内層、中間層、外層をこの順に含む積層フィルムであって、内層及び外層が熱可塑性樹脂100〜70重量部と米0〜30重量部からなる樹脂組成物(I)からなり、中間層がエチレン・α−オレフィン共重合体30〜90重量%とプロピレン系樹脂70〜10重量%からなる樹脂成分100重量部に対し、米12〜150重量部を含有する樹脂組成物(II)からなることを特徴とする積層フィルムおよびそれから得られるレジ袋、ゴミ袋、肥料袋。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよびその用途に関し、詳しくは、余剰米を有効活用する強度の優れた積層フィルムおよびその用途のゴミ袋、レジ袋または肥料袋に関する。
【背景技術】
【0002】
食用として生産された農産物のうち余剰分は、一定期間、備蓄することが可能であるが、賞味期限を経過したものについては廃棄せざるを得ない。現在、生産されている米に関しても供給過剰状態となっており、わが国が保有する余剰米は年々増加の一途をたどっている。このような、廃棄または備蓄の在庫を減らすために、食用の用途以外にも余剰米を有効利用する用途が模索されている。
【0003】
余剰米の有効利用としては、従来から、ポリオレフィン樹脂に配合したポリオレフィン樹脂組成物の成形が行われている(例えば、特許文献1、2参照。)。これは、このようなバイオマス原料を配合することにより、化石燃料から製造される熱可塑性樹脂の使用量を低減させ、燃焼時の二酸化炭素発生量を減少(オレフィン樹脂との比較:約20%)させることができるので、地球環境に配慮する観点からも好ましい。
【0004】
特に、近年では世界的にも環境に対する感心が高まり、より良い品質よりも、まずは環境に対する影響が考慮されるようになっている。
このような観点に基づき、余剰米を配合したポリオレフィン樹脂の成形品に対する期待は高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−330402
【特許文献2】特開2007−169615
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、米を配合したポリオレフィン樹脂は、従来のポリオレフィン樹脂に比べ強度の低下が懸念されている。米の配合量が増えるほど、環境影響性の少ない樹脂ができるが、強度、取り分け突き刺し強度の低下が大きい。
本発明は、以上の問題点を解決することを目的としてなされたものであり、ポリオレフィン樹脂に大量に配合米を混入しても、突き刺し強度が低下せず、高ヒートシール強度、高剛性を保持した積層フィルムおよびその用途を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記問題点の解決のために鋭意検討した結果、特定のエチレン・α−オレフィン共重合体と特定のプロピレン系樹脂を特定の割合で配合した樹脂混合物に米を配合した樹脂組成物からなる中間層と、熱可塑性樹脂または、熱可塑性樹脂に米を特定量配合した樹脂組成物からなる内層及び、外層からなる積層フィルムとすることにより、米を添加することによる品質の低下を抑えられたフィルム成形品が得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、内層、中間層、外層をこの順に含む積層フィルムであって、内層及び外層が熱可塑性樹脂100〜70重量部と米0〜30重量部からなる樹脂組成物(I)からなり、中間層がエチレン・α−オレフィン共重合体30〜90重量%とプロピレン系樹脂70〜10重量%からなる樹脂成分100重量部に対し、米12〜150重量部を含有する樹脂組成物(II)からなることを特徴とする積層フィルムが提供される。
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、内層及び/又は外層の熱可塑性樹脂が、下記性状(a−1)〜(a−3)を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)であることを特徴とする積層フィルムが提供される。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)
(a−1)密度が0.900〜0.928g/cm
(a−2)MFRが0.5〜8.0 g/10分
(a−3)Mw/Mnが1.5〜3.5
【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、中間層のエチレン・α−オレフィン共重合体が、下記性状(b-1)〜(b−3)を有する、メタロセン触媒によって得られたエチレン・α−オレフィン共重合体(B)であり、プロピレン系樹脂が、下記性状(c−1)〜(c−3)を有する、メタロセン触媒によって得られたプロピレン系樹脂(C)であることを特徴とする積層フィルムが提供される。
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)
(b−1)密度が0.880〜0.920g/cm
(b−2)MFRが0.5〜8.0 g/10分
(b−3)Mw/Mnが1.5〜3.5
プロピレン系樹脂(C)
(c−1)プロピレン単位を85〜100モル%、エチレン及び/又はブテン構造単位を0〜15モル%含む
(c−2)Mw/Mnが5.0以下
(c−3)昇温溶離分別(TREF)法で測定した40℃以下の可溶分が4.0重量%以下
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記プロピレン系樹脂(C)は、融点(Tp)が110〜150℃であることを特徴とする積層フィルムが提供される。
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記米は、澱粉の構造が非晶構造(α構造)であることを特徴とする積層フィルムが提供される。
【0013】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、全体の厚みに対する、中間層の厚みが50〜80%であることを特徴とする積層フィルムが提供される。
【0014】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの積層フィルムを袋状に加工してなるゴミ袋、レジ袋または肥料袋が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明の積層フィルムは、中間層がエチレン・α−オレフィン共重合体とプロピレン系樹脂からなる樹脂成分に特定量の米を含有する樹脂組成物からなり、内層及び外層が熱可塑性樹脂と米からなる樹脂組成物からなり、特に最適なポリエチレン樹脂と、最適なポリプロピレン樹脂を選択的に用い、最適な積層構成を取ることにより米の平均添加濃度を同一とした単層フィルムに比べ突き刺し強度、フィルムの剛性、低温ヒートシール強度等の優れたフィルムが得られものであり、剛性の向上からフィルムの薄肉化(減容化)を行うことも可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、内層、中間層、外層をこの順に含む積層フィルムであって、内層及び外層が熱可塑性樹脂、好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と米からなる樹脂組成物(I)からなり、中間層がエチレン・α−オレフィン共重合体、好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体(B)、プロピレン系樹脂、好ましくはプロピレン系樹脂(C)からなる樹脂成分と米、さらに必要に応じて相溶化剤(D)を含有する樹脂組成物(II)からなる積層フィルム、それから得られる成形品である。以下に、本発明について詳細に説明する。
【0017】
1.樹脂組成物(I)の構成成分
本発明の積層フィルムの内層および外層に用いる熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられるが、ポリオレフィン樹脂が好ましく、特に下記性状(a−1)〜(a−3)を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)が好ましい。
【0018】
(1)エチレン・α−オレフィン共重合体(A)
本発明の樹脂組成物(I)に好ましく用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、メタロセン触媒によって得られるエチレンと炭素数3〜20、より好ましくは4〜12のα−オレフィンとの共重合体である。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。
【0019】
(a−1)密度
本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の密度は、好ましくは0.900〜0.928g/cmであり、より好ましくは0.903〜0.920g/cmであり、さらに好ましくは0.905〜0.915g/cmである。上記範囲であれば、密度が低くて、フィルム表面にベタツキを生じ開口性が悪くなることに加えフィルムの剛性も低下し製袋適性等フィルムの二次加工性が悪くなることも、また密度が高くて、フィルムの衝撃強度が劣ると共に低温シール性も悪化し問題となることもない。
ここで、密度は、JIS K7112−1999の「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」のD法(密度こうばい管法)に準拠して測定する値である。
【0020】
(a−2)メルトフローレイト(MFR)
本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)のMFRは、好ましくは0.5〜8.0g/10分であり、より好ましくは0.7〜4.0g/10分であり、さらに好ましくは1.0〜3.5g/10分である。上記範囲であれば、MFRが低くて、フィルム成形加工時に、樹脂圧が上昇し押出し加工性が悪くなることと樹脂の過大な発熱によりフィルムに発泡等を生じ問題となったり、また、配合米など他成分との分散性が悪くなり、フィルム外観が悪化するとともにフィルムの強度も低下したりすることも、一方、MFRが高くて、機械的強度の低下及びフィルム成形加工時のバブル安定性等の加工性が劣り問題となることもない。
ここで、MFRは、JIS K7210−1999の「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、試験条件:190℃、21.18N(2.16kg)荷重で測定する値である。
【0021】
(a−3)Mw/Mn
本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜3.5、より好ましくは1.8〜3.3、さらに好ましくは2.1〜3である。上記範囲であれば、Mw/Mnが小さくて、押出負荷が増大し、加工性が劣ることも、Mw/Mnが大きくて、衝撃強度が低下することもない。
【0022】
ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体のMw/Mnは、以下の方法(以下、「分子量分布の測定方法」と言うこともある。)で測定したときの値をいう。Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義されるものである。
【0023】
装置:ウオーターズ社製GPC
150C型検出器:MIRAN 1A赤外分光光度計(測定波長、3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S 3本
[カラムの較正は、東ソー製単分散ポリスチレン(A500,A2500,F1,F2,F4,F10,F20,F40,F288の各0.5mg/ml溶液)の測定を行い、溶出体積と分子量の対数値を2次式で近似した。また、試料の分子量は、ポリスチレンとポリエチレンの粘度式を用いてポリエチレンに換算した。ここでポリスチレンの粘度式の係数は、α=0.723、logK=−3.967であり、ポリエチレンは、α=0.707、logK=−3.407である。]
測定温度:140℃
注入量:0.2ml
濃度:20mg/10mL
溶媒:オルソジクロロベンゼン
流速:1.0ml/min
【0024】
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(A)は、メタロセン触媒によって得られる。メタロセン系触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分を含む触媒である。
【0025】
ここで、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、そのシクロペンタジエニル骨格とは、シクロペンタジエニル基、置換シクロペンタジエニル基等である。置換シクロペンタジエニル基としては、炭素数1〜30の炭化水素基、シリル基、シリル置換アルキル基、シリル置換アリール基、シアノ基、シアノアルキル基、シアノアリール基、ハロゲン基、ハロアルキル基、ハロシリル基等から選ばれた少なくとも一種の置換基を有するものである。その置換シクロペンタジエニル基の置換基は2個以上有していてもよく、また係る置換基同士が互いに結合して環を形成し、インデニル環、フルオレニル環、アズレニル環、その水添体等を形成してもよい。置換基同士が互いに結合し形成された環がさらに互いに置換基を有していてもよい。
【0026】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物において、その遷移金属としては、ジルコニウム、チタン、ハフニウム等が挙げられ、特にジルコニウム、ハフニウムが好ましい。該遷移金属化合物は、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子としては通常2個を有し、各々のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子は架橋基により互いに結合しているものが好ましい。尚、係る架橋基としては炭素数1〜4のアルキレン基、シリレン基、ジアルキルシリレン基、ジアリールシリレン基等の置換シリレン基、ジアルキルゲルミレン基、ジアリールゲルミレン基等の置換ゲルミレン基などが挙げられる。好ましくは、置換シリレン基である。
【0027】
周期律表第IV族の遷移金属化合物において、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子以外の配位子としては、代表的なものとして、水素、炭素数1〜20の炭化水素基(アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルキルアリール基、アラルキル基、ポリエニル基等)、ハロゲン、メタアルキル基、メタアリール基などが挙げられる。
【0028】
上記シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、一種又は二種以上の混合物を触媒成分とすることができる。
【0029】
助触媒としては、前記周期律表第IV族の遷移金属化合物を重合触媒として有効になしうる、又は触媒的に活性化された状態のイオン性電荷を均衝させうるものをいう。助触媒としては、有機アルミニウムオキシ化合物のベンゼン可溶のアルミノキサンやベンゼン不溶の有機アルミニウムオキシ化合物、イオン交換性層状珪酸塩、ホウ素化合物、活性水素基含有あるいは非含有のカチオンと非配位性アニオンからなるイオン性化合物、酸化ランタンなどのランタノイド塩、酸化スズ、フルオロ基を含有するフェノキシ化合物等が挙げられる。
【0030】
シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物は、無機又は有機化合物の担体に担持して使用されてもよい。該担体としては無機又は有機化合物の多孔質酸化物が好ましく、具体的には、モンモリロナイト等のイオン交換性層状珪酸塩、SiO、Al、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO等又はこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
また更に必要により使用される有機金属化合物としては、有機アルミニウム化合物、有機マグネシウム化合物、有機亜鉛化合物等が例示される。このうち有機アルミニウムが好適に使用される。
【0032】
また、エチレン・α−オレフィン共重合体は、単独で用いても、二種以上混合して使用してもよい。
なお、エチレン・α−オレフィン共重合体としては、市販品を利用することができ、例えば、日本ポリエチレン(株)社製カーネルシリーズから選択することができる。
【0033】
(2)米
本発明で用いられる米は、特に限定されず、非晶構造(α構造)であっても、結晶構造(β構造)であってもよいが、洗浄と外皮等の澱粉を含まない部分を取り除いた後、下記の要領でα化処理がなされた非晶構造(α構造)を有することが好ましい。つまり、米を構成する澱粉は、当初において結晶構造(β構造)を有しているが、適当な量の水分の存在下で70℃以上の温度環境におくと、このβ構造が崩れて非晶構造(α構造)に変化する。このように、生の澱粉が水分を含んで加熱されることにより、β構造からα構造に変化することを糊化するという。この糊化した米のα構造を示す澱粉粒は、当初の被加熱状態(生状態)のβ構造であった場合と比較して、熱流動するオレフィン系樹脂中で澱粉の分子レベルで解れて微細に均一に分散しやすい状態になる。
【0034】
このような、β構造を有する米をα構造にする具体的な処理としては、水に浸漬させて煮沸させたり、水蒸気で蒸して行ったりするような、一般に食用に供する際に行う熱処理を加える方法が挙げられる。
【0035】
ところで、α構造の非晶状態を有する米は、水分を含んだまま低温に放置されると、時間経過とともに、もとのβ構造の結晶状態に戻る現象(老化という)が観測されることが一般に知られている。一方、α構造の非晶状態を有する澱粉から水分を取り除けば、その後、低温で長期間放置しても米はα構造を維持したままβ構造に可逆転移しない(老化しない)ことが知られている。
【0036】
そこで、本発明の原料として用いられるα構造を有する米は、澱粉の構造がα構造(非晶構造)であるもので、水分を含んだ状態、及び、水分を含まない(脱水された)状態の両方をも含むこととする。いずれにしても、オレフィン系樹脂に配合される米の澱粉構造がα構造(非晶構造)であれば、後記する混練処理の際、オレフィン系樹脂のマトリックスの中で澱粉の分子鎖がほぐれて、微細化して分散されやすくなる。澱粉構造がα構造(非晶構造)である米が樹脂中で微細化して分散されやすくなる効果は、澱粉構造がβ構造(結晶構造)である非加熱の米を配合した場合と比較して顕著である。
【0037】
ところで、脱水されたα構造の米を得る方法は、具体的には、水分の存在下で加熱して糊化させた後、そのまま真空装置により雰囲気を減圧することによる。このような、脱水されたα構造の米を使用することにすれば、老化しにくいので米を単体で長期保存することが可能になり、澱粉配合樹脂組成物の製造期間短縮や製造コスト削減に寄与することとなる。
【0038】
なお、前記した、β構造を有する米をα構造にする際に用いられる水には、トレハロースが溶解されているとよい。このことの効果は、トレハロース水溶液が生米に含浸することにより、米の脂質成分の分解をトレハロースが抑える作用が得られ、製造された米が配合されたフィルム用樹脂組成物の経時的な劣化が抑制されることである。この理由は、トレハロースが、米成分をコーティングして、酸化分解から脂肪酸を護る作用を有するためといわれている。
このような効果は、前記したトレハロース以外に、塩、ショ糖、酸化防止剤、たんぱく質分解促進剤、セルロース分解促進剤等が挙げられる。なお、これらのものを水に添加してα構造にした澱粉系物質を配合することにより、製造された澱粉配合樹脂組成物の特有の臭気、焦げ、色付を防止する効果も得られる。
【0039】
さて、これまで原料として配合される米として、すでにα化処理が施されたものを用いることについて説明してきたが、後記する製造方法により、β構造を有する米が水分を含むものである場合も用いることができる。
具体的には、生米を水に所定時間だけ浸漬させ、水切りを行ってから、混練機に、樹脂と共に投入し、樹脂の熱流動温度で混練する。この熱流動温度(通常は100〜170℃)は、生米の澱粉構造をβ構造からα構造に転移させるのに充分な温度であるため、混練の過程において生米はα化処理されることになる。このように、生米がα構造に変化した後に関しては、既に前記したように、澱粉の分子鎖がほぐれて、微細化して樹脂のマトリックス中に分散していく。
【0040】
ここで、β構造の生米が加熱されてα化構造になるのには、水分含有量が17%以上であることが望まれ、このためには水への浸漬時間を5分以上にするとよい。
【0041】
(3)各成分の配合比
本発明で用いる樹脂組成物(I)における、各成分の配合量は、熱可塑性樹脂100〜70重量部と米が0〜30重量部であり、好ましくは熱可塑性樹脂100〜75重量部と米が0〜25重量部である。米の添加量が30重量部を超えるとフィルムの突き刺し強度が悪くなる。また、熱可塑性樹脂としては、エチレン・α−オレフィン共重合体(A)を用いることが強度向上により好ましい。
【0042】
2.樹脂組成物(II)の構成成分
本発明の積層フィルムの中間層に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体、ポリプロピレン系樹脂としては、特に限定されないが、特に下記性状(b−1)〜(b−3)を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(B)、下記性状(c−1)〜(c−3)を有するプロピレン系樹脂(C)が好ましい。
【0043】
(1)エチレン・α−オレフィン共重合体(B)
本発明の樹脂組成物(II)に好ましく用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、メタロセン触媒によって得られるエチレンと炭素数3〜20、より好ましくは4〜12のα−オレフィンとの共重合体である。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。
【0044】
(b−1)密度
本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)の密度は、好ましくは0.880〜0.920g/cmであり、より好ましくは0.885〜0.915g/cmであり、さらに好ましくは0.890〜0.910g/cmである。上記範囲であれば、密度が低くて、フィルムの剛性が低下し製袋適性等フィルムの二次加工性が悪くなることも、また密度が高くて、フィルムの衝撃強度が悪くなることもない。
ここで、密度は、JIS K7112−1999の「プラスチック−非発泡プラスチックの密度及び比重の測定方法」のD法(密度こうばい管法)に準拠して測定する値である。
【0045】
(b−2)メルトフローレイト(MFR)
本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)のMFRは、好ましくは0.5〜8.0g/10分であり、より好ましくは0.7〜4.0g/10分であり、さらに好ましくは1.0〜3.5g/10分である。上記範囲であれば、MFRが低くて、フィルム成形加工時に、樹脂圧が上昇し押出し加工性が悪くなることと樹脂の過大な発熱によりフィルムに発泡等を生じ問題となったり、また、配合米など他成分との分散性が悪くなり、フィルム外観が悪化するとともにフィルムの強度も低下したりすることも、一方、MFRが高くて、機械的強度の低下及びフィルム成形加工時のバブル安定性等の加工性が劣り問題となることもない。
ここで、MFRは、JIS K7210−1999の「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトマスフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」に準拠して、試験条件:190℃、21.18N(2.16kg)荷重で測定する値である。
【0046】
(b−3)Mw/Mn
本発明に用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、好ましくは1.5〜3.5、より好ましくは1.8〜3.3、さらに好ましくは2.1〜3である。上記範囲であれば、Mw/Mnが小さくて、押出負荷が増大し、加工性が劣ることも、Mw/Mnが大きくて、衝撃強度が低下することもない。
【0047】
ここで、エチレン・α−オレフィン共重合体のMw/Mnは、上述の方法で測定したときの値をいう。
【0048】
本発明で用いるエチレン・α−オレフィン共重合体(B)は、上述のエチレン・α−オレフィン共重合体(A)と同様の製造方法で得られる共重合体である。
【0049】
(2)プロピレン系樹脂(C)
本発明の樹脂組成物(II)に用いるプロピレン系樹脂(C)は、メタロセン触媒によって得られる、プロピレン単独重合体、プロピレンとエチレン及び/又はブテンとのランダム共重合体等であり、具体的には、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・ブテンランダム共重合体、プロピレン・エチレン・ブテン三元ランダム共重合体等が挙げられる。このうちプロピレン・エチレンランダム共重合体が好適である。
なお、上記プロピレン系樹脂(C)は、エチレン、ブテン以外のコモノマー成分がプロピレンと共重合されていてもよい。コモノマーとしては、炭素数5〜20のα−オレフィン等が挙げられる。炭素数5〜20のα−オレフィンは、例えば、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。
本発明で用いられるプロピレン系樹脂は、下記性状(c−1)〜(c−3)を有している必要があり、さらに必要に応じて(c−4)を有している。
【0050】
(c−1)プロピレン単位、エチレン単位及び/又はブテン単位
本発明で用いられるプロピレン系樹脂(C)は、プロピレン単位を好ましくは85〜100モル%、より好ましくは90〜99.5モル%、さらに好ましくは92〜98.5モル%、エチレン単位及び/又はブテン単位を好ましくは0〜15モル%、より好ましくは0.5〜10モル%、さらに好ましくは1.5〜8モル%を含有している。
ここで、プロピレン単位及びエチレン及び/又はブテン単位は、フーリエ変換赤外分析法によって計測される値である。
【0051】
(c−2)Mw/Mn
本発明で用いられるプロピレン系樹脂(C)は、Mw/Mnが好ましくは5.0以下のものであり、より好ましくは2〜4であり、さらに好ましくは2.3〜3.5であり、特に好ましくは2.6〜3.3である。上記範囲であれば、Mw/Mnが小さくて、成形性が悪化することも、Mw/Mnが大きくて、得られる成形品の透明性、フィルム引取方向(MD)とフィルム引取方向に対して直角方向(TD)の機械物性のバランス悪化、衝撃強度が弱くなることもない。
ここで、Mw/Mnとは、GPC測定による重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で定義されるものである。Mw/Mnの測定は、前述の方法と同様の方法で行うものである。ただし、ポリプロピレンの粘度式の係数は、α=0.707、logK=−3.616 とした。
【0052】
(c−3)昇温溶離分別(TREF)法で測定した40℃以下の可溶分量
本発明に用いられるプロピレン系樹脂は、昇温溶離分別(TREF)法で測定した40℃以下の可溶分が好ましくは4重量%以下であり、より好ましくは3重量%以下であり、さらに好ましくは1.5重量%以下である。40℃以下の可溶分が4重量%以下では、成形品からのブリードが起こりにくく、成形時の発煙が抑制できる。また、澱粉系物質との親和性が向上する。
40℃以下の可溶分には、オリゴマーのような分子量の低い成分、アタクチックポリプロピレンのような立体規則性の低い成分、コモノマー含量が極端に高い成分等いわゆる低結晶成分を含む。ここでアタクチックポリプロピレンのような立体規則性の低い成分、コモノマー含量が極端に高い低結晶性成分は分子量が高いものであっても可溶分になりうる。したがって、本発明に好ましく用いられるプロピレン系重合体を得るためには、立体規則性の低いポリプロピレンや、コモノマー含量が極端に高い低結晶性成分を含むことになる組成分布の広いポリプロピレンが得られる触媒の使用や重合方法を採用することは避けるべきである。
【0053】
ここで、昇温溶離分別(TREF)法により可溶分を求める方法は、具体的には以下の手順に従って行なわれる。
試料を140℃でオルトジクロロベンゼンに溶解し溶液とする。これを、下記の条件で、140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却後、10分間保持する。その後、溶媒であるオルトジクロロベンゼンを1mL/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で40℃のオルトジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
カラムサイズ:4.3mmφ×150mm
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
溶媒:オルトジクロロベンゼン
試料濃度:5mg/mL
試料注入量:0.2mL
溶媒流速:1mL/分
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製 MIRAN 1A
測定波長:3.42μm
上記条件に従って得た溶出曲線から40℃で溶出する成分の全量に対する割合(重量%)を算出する。
【0054】
(c−4)融点(Tp)
本発明で用いられるプロピレン系樹脂(C)は、示差走査熱量計(DSC)法で測定した融点(Tp)が、好ましくは110〜150℃であり、より好ましくは115〜145℃であり、さらに好ましくは120〜140℃である。Tpが150℃より高い場合には、成形温度を高く設定する必要が生じ、高い温度で澱粉配合樹脂組成物を成形すると澱粉が変色や臭気を発生し易くなり、成形性や製品の品質が損なわれる場合がある。
ここで、Tpは示差走査型熱量計(DSC)により測定した値である。セイコー社製示差走査型熱量計を用い、サンプル約5mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで冷却した。続いて10℃/分の昇温スピードで融解させた時に得られる融解熱量曲線からTpを得る。すなわち、融解熱量曲線の最大ピーク温度をTpとした。
【0055】
本発明で用いるプロピレン系樹脂(C)は、メタロセン触媒によって得られる。メタロセン系触媒とは、シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期律表第IV族の遷移金属化合物と、助触媒、必要により有機金属化合物と、担体の各触媒成分を含む触媒であり、各触媒成分は前述のものが使用できる。
【0056】
本発明で用いるプロピレン系樹脂(C)は、二種以上混合して使用してもよい。
なお、プロピレン系樹脂としては、市販品を利用することができ、例えば、日本ポリプロ(株)社製WINTECシリーズから選択することができる。
【0057】
(3)米
樹脂組成物(II)で用いられる米は、前述の樹脂組成物(I)で用いた米と同様のものを用いることができる。
【0058】
(4)相溶化剤(D)
本発明の樹脂組成物(I)および(II)には、相溶化剤(D)が添加されていてもよい。相溶化剤の添加により、樹脂成分と米との親和性が向上する。
相溶化剤(D)としては、飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸又はそれらの誘導体、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された熱可塑性樹脂、並びに不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された澱粉系物質が挙げられる。さらに、油変性アルキッド樹脂又はそれらの誘導体、加工澱粉又はそれらの誘導体を用いることもできる。
【0059】
飽和カルボン酸としては、無水コハク酸、コハク酸、無水フタル酸、フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水アジピン酸等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、無水マレイン酸、マレイン酸、無水ナジック酸、無水イタコン酸、イタコン酸、無水シトラコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、メサコン酸、アンゲリカ酸、ソルビン酸、アクリル酸等が挙げられる。飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の誘導体としては、飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の金属塩、アミド、イミド、エステル等を使用することができる。
【0060】
また、不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された熱可塑性樹脂、並びに不飽和カルボン酸又はその誘導体で変性された澱粉系物質を使用することができる。熱可塑性樹脂としては、具体的には、低密度ポリエチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンブロック共重合体、プロピレンランダム共重合体を挙げることができる。
【0061】
これらは、熱可塑性樹脂又は澱粉系物質と不飽和カルボン酸又はその誘導体と、ラジカル発生剤とを溶媒の存在下又は不存在下に加熱混合することにより得られる。不飽和カルボン酸又はその誘導体の付加量は、0.1〜15重量%、特に1〜10重量%が好ましい。本発明で使用される相溶化としては、臭気が無く、酸性度が小さい不飽和カルボン酸、又はその誘導体で変性した熱可塑性樹脂、並びにその誘導体で変性した澱粉系物質が好ましい。
【0062】
(5)その他の成分
本発明の樹脂組成物(I)および(II)には、本発明の目的が損なわれない範囲で、各種添加剤、例えば、造核剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、抗ブロッキング剤、防曇剤、着色剤、充填剤、エラストマー、木質系材料などを配合することができる。
【0063】
(6)各成分の配合比
本発明の積層フィルムの中間層を形成する樹脂組成物(II)における、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)とプロピレン系樹脂(C)の配合比は、それぞれエチレン・α−オレフィン共重合体(B)30〜90重量%、好ましくは40〜85重量%、より好ましくは55〜80重量%であり、プロピレン系樹脂10〜70重量%、好ましくは15〜60重量%、より好ましくは20〜45重量%である。この範囲よりプロピレン系樹脂(C)が多い場合或いはこの範囲よりエチレン・α−オレフィン共重合体(B)が多い場合の何れもダート衝撃強度が低下し好ましくない。
米の添加量は、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)とプロピレン系樹脂(C)の合計量100重量部に対して、12〜150重量部、好ましくは20〜130重量部、より好ましくは30〜100重量部である。米の添加量が150重量部を超えるとフィルムの延展性が悪化し成形時にフィルムの膜切れを生じたり、発泡を生じたりする問題があり、得られるフィルムもフィルムの機械強度低下が大きく包装フィルムとしての機能が保持されない。また、米の添加量が12重量部より少ないと、本来の目的である化石燃料から製造される熱可塑性樹脂の使用量低減或いは、燃焼時の二酸化炭素発生量の低減効果が減じられることはもちろんであるが、米添加効果であるMFRの低下、即ち溶融張力の増大効果が減じられ成膜安定性が悪くなる。
相溶化剤の添加量は、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)とプロピレン系樹脂(C)の合計量100重量部に対して0〜30重量部、好ましくは0〜20重量部、より好ましくは0.2〜10重量部である。
【0064】
3.樹脂組成物の製造
本発明の樹脂組成物(I)および(II)は、上記の熱可塑性樹脂、好ましくはエチレン・α−オレフィン共重合体(A)、エチレン・α−オレフィン共重合体(B)、プロピレン系樹脂、好ましくはプロピレン系樹脂(C)、および、米、必要に応じて、相溶化剤(D)、他の添加剤を、上記配合割合にて、ヘンシェルミキサー、vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
【0065】
4.積層フィルム
本発明の積層フィルムは、内層、中間層、外層をこの順に含む積層フィルムであり、上記樹脂組成物(I)および(II)を用い、公知の方法、例えば、インフレーション多層フィルム成形、Tダイ多層フィルム成形等で得ることができる。
なお、積層フィルムは、外層/中間層/内層の三層を基本とするが、必要に応じて更に保護層を追加で設けることができる。
また、積層フィルムとする場合の積層構成比率は、全体の厚みに対する中間層の厚みが50〜80%であることが好ましい。例えば三層フィルムの場合、外層:中間層:内層の比率は1:2:1〜1:8:1であり、中間層の比率は高ければ高い程、化石燃料から製造される熱可塑性樹脂の使用量低減或いは、燃焼時の二酸化炭素発生量の低減効果が大きく好ましいが1:8:1を超えると強度の低下が起こることと成形機押出機の押出し効率上好ましくない。
【0066】
本発明の積層フィルムは、ゴミ袋、レジ袋、肥料袋等に用いることができ、それぞれの用途に応じ、例えばゴミ袋、レジ袋で有ればフィルム厚みは20〜35μm、肥料袋等セミ重袋で有れば、80〜130μm程度が好ましい。
【実施例】
【0067】
以下に、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、各実施例、比較例で用いた物性測定法、原材料は以下の通りである。
【0068】
1.物性測定法
(1)メルトフローレート(MFR):JIS K−7210に従い、温度190℃、荷重21.18Nの条件で測定した。なお、ポリプロピレン系樹脂については測定温度を230℃で行った。
(2)密度:JIS K−7112に従い測定した。
(3)融点:示差走査熱量計を用いて測定した。
(4)ダート落下衝撃強度:JIS−K7124−1 A法に準拠して測定した。
(5)突き刺し強度:内径25mmφの金属ホルダーにフィルム試料を取り付け、先端0.6mmRの金属針を50mm/minの速度でフィルムに突き刺し、その時の抵抗力を測定した。
(6)ヒートシール強度:40μm厚のインフレーション成形フィルムを2枚重ね、温度:120℃、圧力:1.5kg/cm、時間:0.5秒の条件で、ヒートシールを行い、15mm幅の180度剥離強度を測定した。
(7)引張弾性率:JIS−K7127を参考にフィルムの単位伸び率当たりの引張強度を測定した。数値が大きい程フィルムの剛性が高い。
【0069】
2.原材料
(1)エチレン・α−オレフィン共重合体(A)
(A−1):メタロセン触媒を用い製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体(日本ポリエチレン(株)製、カーネルKF270、MFR2.0g/10分、密度0.907g/cm、Mw/Mn 2.4 )
(A−2):メタロセン触媒を用い製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体(日本ポリエチレン(株)製、カーネルKF282、MFR2.2g/10分、密度0.915g/cm、Mw/Mn2.6 )
(2)エチレン・α−オレフィン共重合体(B)
(B−1):メタロセン触媒を用い製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体(日本ポリエチレン(株)製、カーネルKF360T、MFR3.5g/10分、密度0.0.898g/cm、Mw/Mn 2.3 )
(B−2)チーグラー触媒を用い製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体(日本ポリエチレン(株)製、ノバテックLL X729、MFR2.0g/10分、密度0.917g/cm、Mw/Mn 3.8)
(B−3):メタロセン触媒を用い製造されたエチレン・α−オレフィン共重合体(日本ポリエチレン(株)製、カーネルKF260T、MFR2.0g/10分、密度0.901g/cm、Mw/Mn2.5 )
(3)プロピレン系樹脂(C)
(C−1):メタロセン触媒を用い製造されたプロピレン・α−オレフィン共重合体(日本ポリプロ(株)製、WINTEC「WFX6」、MFR2.0g/10分、密度0.90g/cm、融点125℃、プロピレン単位96.6モル%、エチレン単位3.4モル%、Mw/Mn2.9、40℃以下可溶分1.0重量%)
(4)米
精米を15℃水道水に60分間浸漬したものを用いた。
【0070】
(実施例1)
中間層樹脂として、エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を65重量部、ポリプロピレン系樹脂(C−1)を35重量部用い、この両樹脂の合計量100重量部に対し、米を55重量部、相溶化剤として無水コハク酸(新日本製薬(株)製、顆粒状)5重量部からなる米配合樹脂組成物を攪拌、混合した後、160℃に設定した2軸押出機に投入し、途中充分に水蒸気の脱気・吸引をしながら混練押出しを行い樹脂組成物(II)のペレットを得た。また、内外層樹脂としてエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)75重量部、米を25重量部、相溶化剤として無水コハク酸(新日本製薬(株)製、顆粒状)3重量部からなる米配合樹脂組成物を攪拌、混合した後、160℃に設定した2軸押出機に投入し、途中充分に水蒸気の脱気・吸引をしながら混練押出しを行い樹脂組成物(I)のペレットを得た。
得られたペレットを用い、内層及び外層用として口径40mmφの押出機を用い、中間層用として口径50mmφの押出機を用い、ダイ口径200mmφ、リップ巾3mmの三層マルチマニホールドダイを取り付け、押出機及び、ダイの温度を150〜160℃に設定した条件下で、ブロー比2.0、引き取り速度15m/分でインフレーションフィルム成形を行い、内層:中間層:外層の層比が1:8:1、坪量が30g/mの米配合の積層フィルムを得た。得られたフィルムの米の平均添加率は33重量%であり、そのフィルムの物性を表1に示す。
【0071】
(実施例2)
中間層樹脂として、エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を60重量部、ポリプロピレン系樹脂(C−1)を40重量部用い、この両樹脂の合計量100重量部に対し、米を100重量部、相溶化剤として無水コハク酸5重量部からなる米配合樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に混練押出し、フィルム成形を行い、内層:中間層:外層の層比が1:8:1、坪量が30g/mの米配合の積層フィルムを得た。得られたフィルムの米の平均添加率は45重量%であり、そのフィルムの物性を表1に示す。
【0072】
(実施例3)
中間層樹脂として、エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を65重量部、ポリプロピレン系樹脂(C−1)を35重量部用い、この両樹脂の合計量100重量部に対し、米を72重量部用い、相溶化剤として無水コハク酸5重量部を添加し、内外層樹脂としてエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)を100重量部を用いた以外は実施例1と同様に混練押出し、フィルム成形を行い、内層:中間層:外層の層比が1:8:1、坪量が30g/mの米配合の積層フィルムを得た。得られたフィルムの米の平均添加率は33重量%であり、そのフィルムの物性を表1に示す。
【0073】
(実施例4)
中間層樹脂として、エチレン・α−オレフィン共重合体(B−3)を65重量部、ポリプロピレン系樹脂(C−1)を35重量部用い、この両樹脂の合計量100重量部に対し、米を55重量部用い、相溶化剤として無水コハク酸5重量部を添加し、内外層樹脂としてエチレン・α−オレフィン共重合体(A−2)を75重量部、米を25重量部を用いた以外は実施例1と同様に混練押出し、フィルム成形を行い、内層:中間層:外層の層比が1:8:1、坪量が30g/mの米配合の積層フィルムを得た。得られたフィルムの米の平均添加率は33重量%であり、そのフィルムの物性を表1に示す。
【0074】
(比較例1)
内外層及び、中間層樹脂としてエチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を75重量部、ポリプロピレン系樹脂(C−1)を25重量部用い、この両樹脂の合計量100重量部に対し、米を50重量部、相溶化剤として無水コハク酸5重量部からなる米配合樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に混練押出し、フィルム成形を行い、坪量が30g/mの実質単層の米配合フィルムを得た。得られたフィルムの米の平均添加率は33重量%であり、そのフィルムの物性を表2に示す。
【0075】
(比較例2)
内外層及び、中間層樹脂としてエチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を65重量部、ポリプロピレン系樹脂(C−1)を35重量部用い、この両樹脂の合計量100重量部に対し、米を80重量部、相溶化剤として無水コハク酸5重量部からなる米配合樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に混練押出し、フィルム成形を行い、坪量が30g/mの実質単層の米配合フィルムを得た。得られたフィルムの米の平均添加率は44重量%であり、そのフィルムの物性を表2に示す。
【0076】
(比較例3)
内外層及び、中間層樹脂としてエチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を100重量部、米を50重量部、相溶化剤として無水コハク酸5重量部からなる米配合樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に混練押出し、フィルム成形を行い、坪量が30g/mの実質単層の米配合フィルムを得た。得られたフィルムの米の平均添加率は33重量%であり、そのフィルムの物性を表2に示す。
【0077】
(比較例4)
内外層及び、中間層樹脂としてエチレン・α−オレフィン共重合体(B−2)を75重量部、ポリプロピレン系樹脂(C−1)を25重量部用い、この両樹脂の合計量100重量部に対し、米を50重量部、相溶化剤として無水コハク酸5重量部からなる米配合樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に混練押出し・フィルム成形を行い、坪量が30g/mの実質単層の米配合フィルムを得た。得られたフィルムの米の平均添加率は33重量%であり、そのフィルムの物性を表2に示す。
【0078】
(比較例5)
内外層及び、中間層樹脂としてポリプロピレン系樹脂(C−1)を100重量部、米を50重量部、相溶化剤として無水コハク酸5重量部からなる米配合樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様に混練押出し・フィルム成形を行い、坪量が30g/mの実質単層の米配合フィルムを得た。得られたフィルムの米の平均添加率は33重量%であり、そのフィルムの物性を表2に示す。
【0079】
(比較例6)
中間層樹脂として、エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を100重量部、米を55重量部、相溶化剤として無水コハク酸5重量部からなる米配合樹脂組成物を用い、内外層樹脂としてエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)を75重量部、米を25重量部用いた以外は実施例1と同様に混練押出し・フィルム成形を行い、内層:中間層:外層の層比が1:8:1、坪量が30g/mの米配合の積層フィルムを得た。得られたフィルムの米の平均添加率は33重量%であり、そのフィルムの物性を表2に示す。
【0080】
(比較例7)
中間層樹脂として、エチレン・α−オレフィン共重合体(B−1)を10重量部、ポリプロピレン系樹脂(C−1)を90重量部用い、この両樹脂組成物の合計量100重量部に対し、米を55重量部、相溶化剤として無水コハク酸5重量部からなる米配合樹脂組成物米を用い、内外層樹脂としてエチレン・α−オレフィン共重合体(A−1)を75重量部、米を25重量部用いた以外は実施例1と同様に混練押出し・フィルム成形を行い、内層:中間層:外層の層比が1:8:1、坪量が30g/mの米配合の積層フィルムを得た。得られたフィルムの米の平均添加率は33重量%であり、そのフィルムの物性を表2に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
表1および2より明らかなように、本発明の複合フィルムは、強度等の物性低下もない良好なフィルムである(実施例1〜4)。一方、米の平均添加量を同じにした実質単層のフィルムでは突き刺し強度が大幅に低下したフィルムしか得られない(比較例1〜5)。また、チーグラー触媒で製造されたMw/Mnが大きいエチレン・α−オレフィン共重合体を用いたフィルム、エチレン・α−オレフィン共重合体を用いないフィルム、プロピレン系樹脂を用いないフィルムでは突き刺し強度、ダート落下衝撃強度が劣るフィルムしか得られなかった(比較例3〜6)。また中間層のエチレン・α−オレフィン共重合体とポリプロピレン系樹脂の比率で何れの樹脂も多い場合は、ダート落下衝撃強度が劣るフィルムしか得られなかった(比較例7)。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の米を配合した積層フィルムは、資源米の有効利用を図ることができ、石油由来成分の含有量が減っているため環境に対する配慮の点から今後の利用価値に対する期待は大きい。また、該積層フィルムは、従来の提案では懸念されていた耐衝撃性を向上させたフィルムであるため、ごみ袋、レジ袋などの重量物を入れる用途に有効に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内層、中間層、外層をこの順に含む積層フィルムであって、内層及び外層が熱可塑性樹脂100〜70重量部と米0〜30重量部からなる樹脂組成物(I)からなり、中間層がエチレン・α−オレフィン共重合体30〜90重量%とプロピレン系樹脂70〜10重量%からなる樹脂成分100重量部に対し、米12〜150重量部を含有する樹脂組成物(II)からなることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
内層及び/又は外層の熱可塑性樹脂が、下記性状(a−1)〜(a−3)を有するエチレン・α−オレフィン共重合体(A)であることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
エチレン・α−オレフィン共重合体(A)
(a−1)密度が0.900〜0.928g/cm
(a−2)MFRが0.5〜8.0 g/10分
(a−3)Mw/Mnが1.5〜3.5
【請求項3】
中間層のエチレン・α−オレフィン共重合体が、下記性状(b-1)〜(b−3)を有する、メタロセン触媒によって得られたエチレン・α−オレフィン共重合体(B)であり、プロピレン系樹脂が、下記性状(c−1)〜(c−3)を有する、メタロセン触媒によって得られたプロピレン系樹脂(C)であることを特徴とする請求項1又は2記載の積層フィルム。
エチレン・α−オレフィン共重合体(B)
(b−1)密度が0.880〜0.920g/cm
(b−2)MFRが0.5〜8.0 g/10分
(b−3)Mw/Mnが1.5〜3.5
プロピレン系樹脂(C)
(c−1)プロピレン単位を85〜100モル%、エチレン及び/又はブテン構造単位を0〜15モル%含む
(c−2)Mw/Mnが5.0以下
(c−3)昇温溶離分別(TREF)法で測定した40℃以下の可溶分が4.0重量%以下
【請求項4】
前記プロピレン系樹脂(C)は、融点(Tp)が110〜150℃であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項5】
前記米は、澱粉の構造が非晶構造(α構造)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項6】
全体の厚みに対する、中間層の厚みが50〜80%であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層フィルム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の積層フィルムを袋状に加工してなるゴミ袋、レジ袋または肥料袋。

【公開番号】特開2011−42032(P2011−42032A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189648(P2009−189648)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(303060664)日本ポリエチレン株式会社 (233)
【Fターム(参考)】