説明

積層フィルムおよび植物栽培用構造物

【課題】耐擦傷性、親水性および透明性のバランスに優れた積層フィルムを提供する。
【解決手段】シリカ微粒子からなる層と、シリカ微粒子および樹脂からなる層と、熱可塑性樹脂からなる層とを有する積層フィルムであって、前記シリカ微粒子からなる層と前記熱可塑性樹脂からなる層との間に前記シリカ微粒子および樹脂からなる層が存在し、かつ、前記シリカ微粒子からなる層が該積層フィルムの少なくとも一方の面の最表層であることを特徴とする積層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムおよび植物栽培用構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用ハウスや農業用トンネルなどに用いられるフィルムには、透明性や耐擦傷性、防曇性が求められている。特に防曇性に劣るフィルムは、フィルムの表面の温度がその使用環境の露点以下となると、微細な水滴がフィルムの表面に付着して曇りが生じる。曇りが生じると、フィルムの透明性が低下するため、太陽光の透過率が低下して作物の生育が遅れたり、フィルムの表面に付着した水滴が作物上に落下して病気が発生するなどの問題に至ることがある。そこで、フィルム表面に防曇性被膜を設けてフィルムの表面を親水性とする方法が研究され、種々の試みがなされてきた。
【0003】
例えば特許文献1には、合成樹脂フィルムの片面に、コロイド状シリカ粒子を含有する水性アクリル変性ウレタン樹脂塗膜層を設けた農業用防滴性フィルムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−298791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されているようなフィルムは、耐擦傷性や透明性において、さらなる向上が求められていた。
【0006】
本発明は、耐擦傷性、親水性および透明性のバランスに優れた積層フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明は、シリカ微粒子からなる層と、シリカ微粒子および樹脂からなる層と、熱可塑性樹脂からなる層とを有する積層フィルムであって、前記シリカ微粒子からなる層と前記熱可塑性樹脂からなる層との間に前記シリカ微粒子および樹脂からなる層が存在し、かつ、前記シリカ微粒子からなる層が該積層フィルムの少なくとも一方の面の最表層であることを特徴とする積層フィルムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層フィルムは、耐擦傷性、親水性および透明性のバランスに優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】曝露試験(2)の結果を示す写真
【図2】曝露試験(4)の結果を示す写真
【図3】曝露試験(3)の結果(手前の試験ハウス)と曝露試験(5)の結果(奥の試験ハウス)とを示す写真
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。本発明は、シリカ微粒子からなる層と、シリカ微粒子および樹脂からなる層と、熱可塑性樹脂からなる層とを有する積層フィルムであって、前記シリカ微粒子からなる層と前記熱可塑性樹脂からなる層との間に前記シリカ微粒子および樹脂からなる層が存在し、かつ、前記シリカ微粒子からなる層が該積層フィルムの少なくとも一方の面の最表層であることを特徴とする積層フィルムである。
【0011】
以下、シリカ微粒子からなる層をA層、シリカ微粒子および樹脂からなる層をB層、熱可塑性樹脂からなる層をC層と称することもある。まずB層について、以下に説明する。
【0012】
B層に用いられるシリカ微粒子は、平均粒径0.5μm以下であることが好ましい。シリカ微粒子は、細長い形状、あるいは、複数のシリカ微粒子が鎖状に連なった紐状シリカであってもよい。シリカ微粒子は、水などの液体分散媒中に該シリカ微粒子が分散されたゾルの形態で使用される。B層に用いられるシリカ微粒子は、平均粒径が3nm以上であることが好ましい。
本発明に適用可能なシリカを液体分散媒中に分散させたゾルは、市販品として入手することができる。具体的には、日産化学工業株式会社製の水性シリカゾルであるスノーテックスST−ZL(平均粒径:70〜100nm)、スノーテックスST−YL(平均粒径:50〜80nm)、スノーテックスST−XL(平均粒径:40〜60nm)、スノーテックスST−20(平均粒径:10〜20nm)、スノーテックスXS(平均粒径:4〜6nm)、スノーテックスST−UP(平均粒径:5〜20nm、長さ:40〜100nm)などが挙げられる。
【0013】
シリカ微粒子の平均粒径は、光学顕微鏡、レーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて画像で観察された粒径や、レーザー回折散乱法、動的光散乱法、BET法の平均粒径、シアーズ法などの方法で求めることができる。
【0014】
B層に用いられる樹脂としては、例えば、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、アクリル変性ポリウレタン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニリデン系樹脂、ポリエステル系樹脂などが挙げられ、なかでも、ポリウレタン系樹脂が耐擦傷性に優れているため、好ましい。
前記樹脂は、通常、水や水とアルコールなどの水性溶剤との混合溶剤に該樹脂が分散されている水系エマルジョンとして用いられる。
【0015】
平滑性がよく、透明性により優れるフィルムが得られることから、B層に含まれるシリカ微粒子は70重量%以下であることが好ましい。また、B層に含まれるシリカ微粒子が30重量%以上である場合には、より耐擦傷性に優れるフィルムを得ることができる。
したがって、B層におけるシリカ微粒子および樹脂の合計を100重量%とするとき、B層におけるシリカ微粒子の含有量が30〜70重量%であり、樹脂の含有量が30〜70重量%であることが好ましく、シリカ微粒子の含有量が50〜65重量%であり、樹脂の含有量が35〜50重量%であることがより好ましい。
【0016】
シリカ微粒子および樹脂からなるB層は、例えば、以下に示すようにして形成することができる。樹脂を含有する水系エマルジョン、シリカ微粒子を含有する水性シリカゾル、および分散媒である水を混合し、攪拌して塗工液を得る。次に、この塗工液を、熱可塑性樹脂からなる層(C層)に、公知の手段を用いて塗布し、乾燥することにより、B層を形成することができる。
本発明の実施に適用することができる塗布手段としては、具体的には、グラビアコーティング、リバースコーティング、刷毛コーティング、スプレーコーティング、キッスコーティング、ダイコーティング、ディッピングなどが挙げられる。乾燥手段としては、例えば熱風乾燥が挙げられる。
【0017】
B層の厚みは、0.3〜1.5μmが好ましく、0.5〜1.2μmがより好ましい。
【0018】
前記塗工液には、該塗工液を後述する熱可塑性樹脂からなる層(C層)に塗布しやすくするために、シリコーン系界面活性剤を含有させることができる。シリコーン系界面活性剤としては、例えばポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましい。これらの界面活性剤の配合量は、通常、塗工液の重量を100重量%とするとき、0.01〜0.3重量%の範囲内である。
【0019】
前記塗工液には、該塗工液を用いて形成されるB層の耐擦傷性、耐水性を向上させるために、架橋剤を添加してもよい。また、該塗工液を用いて形成されるB層の耐候性を向上させるために、塗工液に光安定剤や紫外線吸収剤を添加してもよい。
【0020】
また、塗工液をC層に塗布しやすくするために、塗工液を熱可塑性樹脂からなる層に塗布する前に、熱可塑性樹脂からなる層の表面に、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、オゾン処理などの表面処理を、行うことができる。
【0021】
B層は、シリカ微粒子および樹脂以外の成分を含んでいてもよい。B層の全重量を100重量%とするとき、シリカ微粒子の重量と樹脂の重量の合計量は、通常95重量%以上100重量%以下であり、97重量%以上であることが好ましく、98重量%以上であることがより好ましい。
【0022】
次に、本発明におけるA層について説明する。
【0023】
A層は、シリカ微粒子からなる層である。A層は、樹脂を含まない。A層の全重量を100重量%とするとき、A層に含まれるシリカ微粒子の重量は、通常95重量%以上100重量%以下であり、97重量%以上であることが好ましく、98重量%以上であることがより好ましく、99重量%以上であることがさらに好ましく、100重量%であることが最も好ましい。A層の全重量を100重量%とするとき、A層に含まれるシリカ微粒子の重量が100重量%であることは、A層がシリカ微粒子のみからなる層であることを意味する。
A層に用いられるシリカ微粒子は、平均粒径0.5μm以下であることが好ましい。シリカ微粒子は、紐状シリカであってもよい。シリカ微粒子は、水などの液体分散媒中に該シリカ微粒子が分散されたゾルの形態で使用される。A層に用いられるシリカ微粒子は、平均粒径が3nm以上であることが好ましい。
【0024】
本発明に適用可能なシリカを液体分散媒中に分散させたゾルは、市販品として入手することができる。具体的には、日産化学工業株式会社製の水性シリカゾルであるスノーテックスST−ZL(平均粒径:70〜100nm)、スノーテックスST−YL(平均粒径:50〜80nm)、スノーテックスST−XL(平均粒径:40〜60nm)、スノーテックスST−20(平均粒径:10〜20nm)、スノーテックスXS(平均粒径:4〜6nm)、スノーテックスST−UP(平均粒径:5〜20nm、長さ:40〜100nm)などが挙げられる。
【0025】
球状のシリカ微粒子を用いる場合には、外部ヘイズを小さくする観点から、平均粒径が小さい球状シリカ微粒子を用いることが好ましい。具体的には、平均粒径が100nm以下のシリカが好ましく、80nm以下のシリカがより好ましい。球状のシリカ微粒子の平均粒径は、3nm以上であることが好ましい。
シリカ微粒子の平均粒径は、光学顕微鏡、レーザー顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、原子間力顕微鏡等を用いて画像で観察された粒径や、レーザー回折散乱法、動的光散乱法、BET法の平均粒径、シアーズ法などの方法で求めることができる。
【0026】
A層を構成するシリカ微粒子として、2種以上を併用してもよい。例えば、シリカの配列を稠密にする目的で、平均粒径の大きな球状シリカと平均粒径の小さな球状シリカを併用することができる。また、必要に応じて、球状シリカと紐状シリカを併用することもできる。
平均粒径の大きな球状シリカと平均粒径の小さな球状シリカを用いる場合に、好ましい組成としては、平均粒径50〜100nmの球状シリカ/平均粒径10nm以下の球状シリカ=99/1〜70/30(重量比)が挙げられる。
【0027】
シリカ微粒子からなるA層は、例えば、以下に示すようにして形成することができる。シリカ微粒子を含有する水性シリカゾル、及び、分散媒である水を混合し、攪拌して塗工液を得る。次に、この塗工液を、基材上に、公知の手段を用いて塗布し、乾燥することにより、A層を形成することができる。ここで基材とは、C層、C層上にB層を積層した積層中間体(1)、または積層中間体(1)のB層上にアンカーコート層等を積層した積層中間体(2)である。以下、これらをまとめて基材と称することもある。
本発明の実施に適用することができる塗布手段としては、具体的には、グラビアコーティング、リバースコーティング、刷毛コーティング、スプレーコーティング、キッスコーティング、ダイコーティング、ディッピングなどが挙げられる。乾燥手段としては、例えば熱風乾燥が挙げられる。
【0028】
A層の厚みは、耐屈曲性、被膜形成時の割れの観点から、0.3μm以下が好ましく、0.2μm以下がより好ましい。A層の厚みは0.01μm以上が好ましい。
【0029】
A層、B層の厚みは、各層を形成するために用いる塗工液の固形分濃度、wet塗布量等によって調整することができる。
【0030】
本発明においては、A層のシリカ微粒子は、平面方向、厚み方向双方に、できるだけ均一に配列していることが好ましい。均一に配列しているシリカ微粒子からなるA層を有する積層フィルムは、A層の表面の接触角が低くかつ均一であり、また、低い外部ヘイズを示す。
均一に配列しているシリカ微粒子からなるA層を形成するためには、A層を形成するために用いる塗工液の固形分濃度を高くし、wet塗布量を小さくすることが好ましい。
wet塗布量は、3g/m以下が好ましく、2g/m以下がより好ましく、1g/m以下がさらに好ましい。wet塗布量は、0.01g/m以上であることが好ましい。塗工液の固形分濃度は、5重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、15重量%以上がさらに好ましい。塗工液の固形分濃度は、50重量%以下であることが好ましい。
【0031】
また、塗工液を基材に塗布しやすくするために、塗工液を基材に塗布する前に、基材に、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理、オゾン処理などの表面処理を、行うことができる。
【0032】
本発明の積層フィルムは、シリカ微粒子からなる層(A層)と熱可塑性樹脂からなる層(C層)との間にシリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)が存在し、かつ、前記シリカ微粒子からなる層(A層)が該積層フィルムの少なくとも一方の面の最表層である。
A層とB層の間には、アンカーコート層、または接着層などの他の層があってもよいが、A層は、B層上に直接積層されていることが好ましい。
B層に含まれるシリカ微粒子の平均粒径とA層を構成するシリカ微粒子の平均粒径の差は、20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることがより好ましい。B層に含まれるシリカ微粒子の平均粒径とA層を構成するシリカ微粒子の平均粒径の差は0nm以上であることが好ましい。なお、A層、B層の各層に含まれるシリカ微粒子がシリカ微粒子の混合物である場合、主たる成分であるシリカ微粒子の平均粒径が、前記した関係を満たせばよい。
【0033】
A層とC層との間には、B層が一層であってもよく、B層が二層以上あってもよい。二層以上のB層がある場合、それらのB層の組成は同じであっても異なっていてもよい。
B層とC層との間には、アンカーコート層、または、他の接着剤層などの他の層があってもよい。
C層の表面のうち、少なくともB層を設ける側の表面は、平滑であることが望ましい。C層において、B層を設ける表面の外部ヘイズは、7%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以下であることがさらに好ましい。
本発明の積層フィルムの構成としては、A層/B層/C層、A層/B層/C層/B層/A層、A層/B層/C層/B層、A層/B層/C層/A層、等が挙げられる。
【0034】
上記のような積層フィルムは、耐擦傷性、親水性、透明性のバランスに優れる。さらに積層フィルムの表層がシリカ微粒子からなるため、シリカ微粒子からなる表層がウレタン系焼付け塗装のトタン板などに接着しづらい。そのため本発明の積層フィルムは、農業用フィルムとして好適である。
特に、A層のシリカ微粒子として、平均粒径50〜100nmの球状シリカを用いた場合、該球状シリカを用いて形成されるA層を有する積層フィルムは、ウレタン系焼付け塗装のトタン板へ極めて接着しにくい。
【0035】
次に、熱可塑性樹脂からなる層(C層)について、説明する。
【0036】
熱可塑性樹脂からなる層を形成する熱可塑性樹脂としては、具体的には、例えば、オレフィン系樹脂;ポリ塩化ビニル、塩化ビニル/メタクリル酸メチル共重合体、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素含有樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂;フッ素含有樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。上記熱可塑性樹脂からなる層は、単一種の熱可塑性樹脂から形成されていてもよく、2種以上の熱可塑性樹脂の混合物から形成されていてもよい。熱可塑性樹脂からなる層をインフレーション成形にて製造する場合には、オレフィン系樹脂が好ましい。
【0037】
オレフィン系樹脂とは、オレフィン、またはオレフィンとオレフィン以外の単量体とを重合して得られる樹脂であり、具体的には、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体等のオレフィン単独重合体;エチレン/α−オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸メチル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン/ノルボルネン共重合体などのエチレンと重合性環状単量体との共重合体など、エチレンとエチレンとは異なる単量体との共重合体であって、エチレン由来の構成単位を50重量%以上含む共重合体が挙げられる(ただし該共重合体の重量を100重量%とする)。なかでも、エチレン単独重合体、エチレン/α−オレフィン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体等のポリエチレン系樹脂が、加工性、価格などの観点から特に好ましい。
【0038】
前記エチレン/α−オレフィン共重合体は、エチレン由来の構成単位と、α−オレフィン由来の構成単位とからなる。α−オレフィンは通常、炭素数3〜20のα−オレフィンであり、好ましくは炭素数4〜12のα−オレフィンである。かかるα−オレフィンの具体例としては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられる。より好ましくは、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセンなどが挙げられる。前記の炭素数3〜20のα−オレフィンは、2種以上を組み合わせてもよく、例えば、1−ブテンと4−メチル−1−ペンテン、1−ブテンと1−ヘキセン、1−ブテンと1−オクテン、1−ブテンと1−デセンなどの組み合わせが挙げられる。より好ましくは、1−ブテンと4−メチル−1−ペンテン、1−ブテンと1−ヘキセンの組み合わせが挙げられる。
【0039】
本発明におけるエチレン/α−オレフィン共重合体として好ましくは、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン/1−ヘキセン−1共重合体、エチレン/1―オクテン共重合体、エチレン/1−ブテン/1−ヘキセン共重合体、エチレン/1−ブテン/1−オクテン共重合体が挙げられる。
【0040】
熱可塑性樹脂からなる層の製造方法は特に限定されるものではなく、例えば、インフレーション成形法、T−ダイキャスティング成形法、カレンダー成形法など熱可塑性樹脂製フィルムを形成する際に通常使用される方法によって製造することができる。
中でも、広幅の熱可塑性樹脂からなる層を効率的に製造することができるインフレーション成形法がより好ましい。
【0041】
熱可塑性樹脂からなる層の厚みは、強度の観点から、0.01mm以上であることが好ましく、被覆作業性などの観点から、0.3mm以下が好ましい。0.03〜0.25mmの範囲がより好ましく、0.05〜0.15mmが特に好ましい。
【0042】
熱可塑性樹脂からなる層は、単層フィルムに限定されるものではなく、多層フィルムでもよい。熱可塑性樹脂からなる層が多層フィルムである場合、その層構成は、特に限定されず、例えば、2種2層、2種3層、3種3層、3種4層、4種4層、4種5層、5種5層等が例示できる。
【0043】
熱可塑性樹脂には、各種添加剤、例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、防曇剤、無機フィラー、ワックス、帯電防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、顔料などを含有させることができる。これらの添加剤は、単独で用いても2種類以上を併用してもかまわない。これらの添加剤については、例えば「プラスチック及びゴム用添加剤実用便覧」化学工業(1970年)に記載されている。
【0044】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジアルキルフェノール誘導体や2−アルキルフェノール誘導体などのいわゆるヒンダードフェノール系化合物、フォスファイト系化合物、フォスフォナイト系化合物などの3価のリン原子を含むリン系エステル化合物が挙げられる。これら酸化防止剤は、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。特に色相安定化の観点から、ヒンダードフェノール系化合物とリン系エステル化合物を併用することが好ましい。また熱可塑性樹脂からなる層に含まれる酸化防止剤の量は、該層に相当する各層の重量を100重量%とするとき、それぞれの層に0.01〜1重量%が好ましく、0.03〜0.5重量%がより好ましい。
【0045】
光安定剤としては、例えば、特開平8−73667号公報に記載の構造を有するヒンダードアミン系化合物が挙げられ、具体的には、商品名チヌビン622−LD、キマソーブ944−LD(以BASF社製)、ホスタビンN30、VP Sanduvor PR−31(以上クラリアント社製)、サイヤソーブUV3529、サイヤソーブUV3346(以上サイテック社製)などが挙げられる。さらには、特開平11−315067号公報に記載の構造を有する立体障害性アミンエーテル化合物が挙げられ、具体的には、商品名チヌビンNOR371(BASF社製)が挙げられる。熱可塑性樹脂からなる層に含まれる光安定剤の量は、該層を形成する各層の重量を100重量%とするとき、それぞれの層に0.01〜3重量%が好ましく、0.05〜2重量%がより好ましく、特に0.1〜1重量%が好ましい。
【0046】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられ、これらは、単独で用いても2種類以上を併用してもよい。耐候性付与効果とフィルム表面へのブリード抑制の観点から、熱可塑性樹脂からなる層に含まれる紫外線吸収剤の量は、該層を形成する各層の重量を100重量%とするとき、それぞれの層に0.01〜3重量%が好ましく、0.03〜2重量%がより好ましい。
【0047】
無機フィラーは、熱可塑性樹脂からなる層の剛性、保温性、耐農薬性、燃焼特性などのさまざまな性能を改良する目的で用いることができる。特に、輻射線吸収性の高い無機フィラーを熱可塑性樹脂からなる層に含有させることにより、該熱可塑性樹脂からなる層の保温性を向上させることができる。
【0048】
無機フィラーの例としては、MgAl(OH)16(CO)・4HOの化学式で表されるハイドロタルサイトおよびその類縁化合物、リチウムアルミニウム複合水酸化物などの複合水酸化物が挙げられる。
ハイドロタルサイトおよびその類縁化合物の具体例としては、例えば、天然ハイドロタルサイトやスタビエース−P(堺化学工業株式会社製)、DHT−4A(協和化学工業株式会社製)、マグクリア(戸田工業株式会社製)のような合成ハイドロタルサイトが挙げられる。
リチウムアルミニウム複合水酸化物の具体例としては、例えば、OPTIMA―SS(戸田工業株式会社製)、ミズカラック(水澤化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0049】
熱可塑性樹脂からなる層における無機フィラーの含有量は、該熱可塑性樹脂からなる層を形成する各層の重量を100重量%とするとき、0.1〜60重量%が好ましく、1〜30重量%がより好ましく、特に5〜20重量%が好ましい。無機フィラーを用いる場合には、界面活性剤を併用することにより、無機フィラーの分散性が良好となり、より透明性に優れる熱可塑性樹脂からなる層を得ることができる。
【0050】
防曇剤の使用目的は特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂からなる層の表面改質剤として用いることができる。熱可塑性樹脂からなる層が多層フィルムの場合には、B層に最も近い層に、本発明の目的を損なわない範囲で、防曇剤を用いることができる。
【0051】
本発明の積層フィルムの製造方法は特に限定されるものではないが、好ましい態様として、以下の方法が挙げられる。まず、インフレーション成形法により、円筒状の熱可塑性樹脂からなる層を形成する。次いで、該円筒状の熱可塑性樹脂からなる層の外面にシリカ微粒子および樹脂からなるB層を前記方法により形成し、更に、シリカ微粒子からなるA層を前記方法により形成する。この方法は、熱可塑性樹脂からなる層の製造から、積層フィルムの製造までをインライン方式で行うことができるので、効率的である。
【0052】
本発明の積層フィルムは、植物栽培用構造物の部材として好適である。植物栽培用構造物とは、フレームとこれを覆って該構造物の外形を形成している被覆材とで構成される構造物であって、その中で植物を栽培するために使用される構造物である。本発明の積層フィルムは、該被覆材として好適である。植物栽培用構造物としては、農業用ハウスや農業用トンネルが挙げられる。
【0053】
本発明の積層フィルムを前記被覆材として使用する場合、該積層フィルムのA層が構造物の外面であってもよいし、構造物の内面であってもよい。また、両方の最表層がA層である積層フィルムが好ましく用いられる。
【0054】
フレームと該フレームを覆う被覆材とで構成されている植物栽培用構造物であって、被覆材が本発明の積層フィルムであり、該積層フィルムのA層が構造物の内面である植物栽培用構造物は、構造物の内面であるA層が親水性であるため、A層に水滴が付着してもその水滴は該層の表面を伝って流れるため、構造物の中で栽培されている植物の上に水滴が落下することがない。
【0055】
積雪の多い地域では、植物栽培用構造物の上に雪が積もり、その積もった雪の重さによって構造物が倒壊するという被害が発生している。構造物の被覆材として、被覆材の上に積雪しにくい被覆材を用いることによって、このような被害の発生を抑えることができると期待される。本発明の積層フィルムでは、最表面であるA層が親水性であるため、その上に降った雪は積層フィルムの表面から滑りやすく、積層フィルムの表面に積もりにくい。よって、フレームと該フレームを覆う被覆材とで構成されている植物栽培用構造物であって、被覆材が本発明の積層フィルムであり、該積層フィルムのA層が構造物の外面である植物栽培用構造物は、該構造物の表面に雪が積もりにくく、倒壊する恐れが少ない。
【0056】
また、近年、地球温暖化により、夏場に植物栽培用構造物の中の温度が高くなりすぎるという問題が起こっている。フレームと該フレームを覆う被覆材とで構成されている植物栽培用構造物であって、被覆材が本発明の積層フィルムであり、該積層フィルムのA層が構造物の外面である植物栽培用構造物の外面に散水することによって、該構造物の中の温度上昇を抑制することができる。
【0057】
また、植物栽培用構造物では、長期間使用すると、被覆材の外面が汚れ、採光性が低下する問題がある。フレームと該フレームを覆う被覆材とで構成されている植物栽培用構造物であって、被覆材が本発明の積層フィルムであり、該積層フィルムのA層が構造物の外面である植物栽培用構造物は、外面が汚れにくい。これは、該構造物の外面に塵や灰といった汚れが付着しても、前記外面であるA層が親水性であるため、雨によって汚れが洗い流されるためである。前記構造物はその外面に汚れが付着しにくいため、活火山に近接した地域のように、構造物の外面に汚れが付着しやすい地域で好適に用いられる。
【0058】
A層/B層/C層の順に各層が積層されている積層フィルムを、該積層フィルムのA層が構造物の外面となるように使用すると、構造物の内面が熱可塑性樹脂からなる層(C層)から形成される。このような場合には、熱可塑性樹脂からなる層に防曇剤が含まれている積層フィルムを用いることが好ましい。熱可塑性樹脂および防曇剤からなるC層を有する積層フィルムを用いると、植物栽培用構造物の内面であるC層に水滴が付着してもその水滴は該層の表面を伝って流れるため、構造物の中で栽培されている植物の上に水滴が落下することがない。防曇剤としては、公知の防曇剤を使用できる。
【0059】
本発明の積層フィルムは、植物栽培用構造物の被覆材以外に、屋外テント、電線、車両構造物、その他屋外使用構造物の被覆材として利用できる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれに限定されるものではない。なお実施例及び比較例中の試験方法は次の通りである。
【0061】
(1)耐擦傷性試験
摩擦堅牢度試験機RT−200(株式会社大栄科学精器製作所製)を使用し、スチールウール(♯0000)で荷重500gfにて積層フィルム表面(A層、またはB層)を5往復擦った。摩擦前後にそれぞれ、該積層フィルムの全ヘイズを測定し、ヘイズ差(Δヘイズ)=(摩擦試験後の全ヘイズ)−(摩擦試験前の全ヘイズ)を求めた。Δヘイズの値が小さい程、耐擦傷性に優れる。ヘイズは、JIS K7105に従い、直読式ヘーズコンピューターHGM−2DP(スガ試験機(株)製;測定光 C光)を用いて測定した。
【0062】
(2)接触角
自動接触角計DM−301(協和界面科学株式会社製)を使用し、積層フィルム表面に水滴を落下させてから、40秒後の接触角を測定した。測定は、23℃50%RH下で行った。実施例1〜2、比較例1〜4については、被膜形成から7日経過後に、実施例3〜6については、被膜形成から110日経過後に測定を行った。
【0063】
(3)透明性試験
積層フィルム表面の外部ヘイズを測定した。
ヘイズの測定は、JIS K7105に準拠し、直読式ヘーズコンピューター HGM−2DP(スガ試験機株式会社製;測定光 C光)を用いて行った。
積層フィルムの測定面(A層、またはB層)の外部ヘイズとは、積層フィルムの非測定面にジメチルフタレートを塗布して、該非測定面の散乱光を消去した後に測定したヘイズ値をヘイズ(1)、フィルムの両面にジメチルフタレートを塗布して両表面の散乱光を消去した後に測定したヘイズ値(内部ヘイズ)をヘイズ(2)とした時の、ヘイズ(1)とヘイズ(2)の差である。
【0064】
(4)層厚み
積層フィルムの断面を電子顕微鏡により観察し、シリカ微粒子からなる層(A層)と、シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)の各層の厚さを計測した。
【0065】
(5)耐トタン接着試験方法
青色(ウレタン)焼付けのトタン板(品番:APC0.35、CGCCR、F−1041 ヤネ; 日本鋼管製)上に、幅20mmの積層フィルムの表面(A層またはB層)に水を付着させて、水を付着させた積層フィルムの表面とトタン板とを重ねてハンドローラーによって接着し、80℃のオーブンで3時間乾燥させて、試験用サンプルを作成した。オートグラフ(島津AGS100、ロードセル5kg)を用いて、速度50mm/min.で180°方向に試験用サンプルを剥離して強度を測定した。
【0066】
次に、実施例、比較例に用いた熱可塑性樹脂からなる層(C層)の作製方法について説明する。
【0067】
<C層の作製>
共押出インフレーション成形法(加工温度160℃)により、外層、中間層及び内層がこの順に積層されている厚さ100μmの熱可塑性樹脂からなる層を作製した。なお、外層、中間層、内層の押出量の重量比は、外層/中間層/内層=2/6/2とした。各層の組成は、以下のとおりである。
【0068】
前記外層は、ポリエチレン樹脂(エクセレンGMH CB0004、メルトフローレート 0.4g/10分、密度 926kg/m3;住友化学株式会社製)79.3重量%、ポリエチレン樹脂(スミカセンE FV203、メルトフローレート 2.0g/10分、密度 913kg/m3、住友化学株式会社製)20.0重量%、光安定剤としてヒンダードアミン系化合物0.6重量%、および酸化防止剤0.1重量%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成した。
【0069】
前記中間層は、ポリエチレン樹脂(エクセレンGMH GH030、メルトフローレート 0.5g/10分、密度 912kg/m3;住友化学株式会社製)85.6重量%、無機フィラーとして合成ハイドロタルサイト13重量%、防曇剤としてグリセリン系脂肪酸エステル0.6重量%、光安定剤としてヒンダードアミン系化合物0.7重量%、および酸化防止剤0.1重量%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成した。
【0070】
前記内層は、ポリエチレン樹脂(エクセレンGMH GH030、メルトフローレート 0.5g/10分、密度 912kg/m3;住友化学株式会社製)41.9重量%、ポリエチレン樹脂(エクセレンGMH GH051、メルトフローレート 0.4g/10分、密度 921kg/m3;住友化学株式会社製)37.4重量%、ポリエチレン樹脂(スミカセンE FV203、メルトフローレート 2.0g/10分、密度 913kg/m3;住友化学株式会社製)20.0重量%、光安定剤としてヒンダードアミン系化合物0.6重量%および酸化防止剤0.1重量%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成した。
【0071】
外層側の表面の外部ヘイズは、6%であった。
【0072】
次に、実施例、比較例に用いた塗工液の作製方法について、説明する。
【0073】
<塗工液の作製>
用いた塗工液の原料は、以下の通りである。
(1)シリカゾル
スノーテックスST−YL:平均粒径=50〜80nm、固形分濃度=40重量%
スノーテックスST−XL:平均粒径=40〜60nm、固形分濃度=40重量%
(いずれも、日産化学工業株式会社製。平均粒径は、BET法による値である。)
(2)アクリル変性ポリウレタンエマルジョン
アデカボンタイターHUX−401;固形分濃度=37重量%(株式会社ADEKA製)
(3)ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤FZ−77(東レ・ダウコーニング株式会社製)
【0074】
上記の原料、及び、水を所定の配合比で混合し、表1、2に示す塗工液(ア)〜(シ)を得た。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

【0077】
次に、実施例1〜実施例2、比較例1〜比較例4について説明する。
【0078】
[実施例1]
<A層およびB層の形成>
前記熱可塑性樹脂からなる層の外層にコロナ処理を施した。コロナ処理した熱可塑性樹脂からなる層の表面に、塗工液(ア)を塗布し、塗膜を形成した。塗布には、wet塗布量=13μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した熱可塑性樹脂からなる層を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層の上にシリカ微粒子および樹脂からなる層が積層された積層中間体を得た。
更に、上記シリカ微粒子および樹脂からなる層上に、塗工液(オ)を塗布し、塗膜を形成した。塗布には、wet塗布量=5μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した積層中間体を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層(C層)、シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)、シリカ微粒子からなる層(A層)が順に積層された積層フィルムを得た。A層およびB層の構成を表3に、積層フィルムの試験結果を表4に示した。
【0079】
[実施例2]
<A層およびB層の形成>
前記熱可塑性樹脂からなる層の外層にコロナ処理を施した。コロナ処理した熱可塑性樹脂からなる層の表面に、塗工液(イ)を塗布し、塗膜を形成した。塗布には、wet塗布量=13μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した熱可塑性樹脂からなる層を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層の上にシリカ微粒子および樹脂からなる層が積層された積層中間体を得た。
更に、上記シリカ微粒子および樹脂からなる層上に、塗工液(オ)を塗布した。塗布には、wet塗布量=5μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した積層中間体を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層(C層)、シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)、シリカ微粒子からなる層(A層)が順に積層された積層フィルムを得た。A層およびB層の構成を表3に、積層フィルムの試験結果を表4に示した。
【0080】
[比較例1]
<B層の形成>
前記熱可塑性樹脂からなる層の外層にコロナ処理を施した。コロナ処理した熱可塑性樹脂からなる層の表面に、塗工液(ア)を塗布した。塗布には、wet塗布量=13μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した熱可塑性樹脂からなる層を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層の上にシリカ微粒子および樹脂からなる層が積層された積層中間体を得た。該積層中間体が、比較例1の積層フィルムである。シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)の構成を表3に、積層フィルムの試験結果を表4に示した。
【0081】
[比較例2]
<B層の形成>
前記熱可塑性樹脂からなる層の外層にコロナ処理を施した。コロナ処理した熱可塑性樹脂からなる層の表面に、塗工液(ウ)を塗布した。塗布には、wet塗布量=13μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した熱可塑性樹脂からなる層を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層の上にシリカ微粒子および樹脂からなる層が積層された積層中間体を得た。該積層中間体が、比較例2の積層フィルムである。シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)の構成を表3に、積層フィルムの試験結果を表4に示した。
【0082】
[比較例3]
<B層の形成>
前記熱可塑性樹脂からなる層の外層にコロナ処理を施した。コロナ処理した熱可塑性樹脂からなる層の表面に、塗工液(エ)を塗布した。塗布には、wet塗布量=13μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した熱可塑性樹脂からなる層を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層の上にシリカ微粒子および樹脂からなる層が積層された積層中間体を得た。該積層中間体が、比較例3の積層フィルムである。シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)の構成を表3に、積層フィルムの試験結果を表4に示した。
【0083】
[比較例4]
<A層の形成>
前記熱可塑性樹脂からなる層の外層にコロナ処理を施した。コロナ処理した熱可塑性樹脂からなる層の表面に、塗工液(カ)を塗布した。塗布には、wet塗布量=5μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した熱可塑性樹脂からなる層を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層の上にシリカ微粒子からなる層が積層された積層中間体を得た。該積層中間体が、比較例4の積層フィルムである。シリカ微粒子からなる層(A層)の構成を表3に、積層フィルムの試験結果を表4に示した。
【0084】
【表3】

※ a:B層に含まれる樹脂の重量%
b:B層に含まれるシリカ微粒子の重量%
【0085】
【表4】

【0086】
次に、実施例3〜6を説明する。
【0087】
[実施例3]
<A層およびB層の形成>
前記熱可塑性樹脂からなる層の外層にコロナ処理を施した。コロナ処理した熱可塑性樹脂からなる層の表面に、塗工液(キ)を塗布し、塗膜を形成した。塗布には、wet塗布量=13μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した熱可塑性樹脂からなる層を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層の上にシリカ微粒子および樹脂からなる層が積層された積層中間体を得た。
更に、上記シリカ微粒子および樹脂からなる層上に、塗工液(サ)を塗布した。塗布には、wet塗布量=5μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した積層中間体を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層(C層)、シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)、シリカ微粒子からなる層(A層)が順に積層された積層フィルムを得た。A層およびB層の構成を表5に、積層フィルムの試験結果を表6に示した。
【0088】
[実施例4]
<A層およびB層の形成>
前記熱可塑性樹脂からなる層の外層にコロナ処理を施した。コロナ処理した熱可塑性樹脂からなる層の表面に、塗工液(ク)を塗布し、塗膜を形成した。塗布には、wet塗布量=13μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した熱可塑性樹脂からなる層を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層の上にシリカ微粒子および樹脂からなる層が積層された積層中間体を得た。
更に、上記シリカ微粒子および樹脂からなる層上に、塗工液(シ)を塗布した。塗布には、wet塗布量=5μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した積層中間体を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層(C層)、シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)、シリカ微粒子からなる層(A層)が順に積層された積層フィルムを得た。A層およびB層の構成を表5に、積層フィルムの試験結果を表6に示した。
【0089】
[実施例5]
<A層およびB層の形成>
前記熱可塑性樹脂からなる層の外層にコロナ処理を施した。コロナ処理した熱可塑性樹脂からなる層の表面に、塗工液(ケ)を塗布し、塗膜を形成した。塗布には、wet塗布量=13μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した熱可塑性樹脂からなる層を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層の上にシリカ微粒子および樹脂からなる層が積層された積層中間体を得た。
更に、上記シリカ微粒子および樹脂からなる層上に、塗工液(シ)を塗布した。塗布には、wet塗布量=5μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した積層中間体を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層(C層)、シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)、シリカ微粒子からなる層(A層)が順に積層された積層フィルムを得た。A層およびB層の構成を表5に、積層フィルムの試験結果を表6に示した。
【0090】
[実施例6]
<A層およびB層の形成>
前記熱可塑性樹脂からなる層の外層にコロナ処理を施した。コロナ処理した熱可塑性樹脂からなる層の表面に、塗工液(コ)を塗布し、塗膜を形成した。塗布には、wet塗布量=13μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した熱可塑性樹脂からなる層を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層の上にシリカ微粒子および樹脂からなる層が積層された積層中間体を得た。
更に、上記シリカ微粒子および樹脂からなる層上に、塗工液(シ)を塗布した。塗布には、wet塗布量=5μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した積層中間体を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層(C層)、シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)、シリカ微粒子からなる層(A層)が順に積層された積層フィルムを得た。A層およびB層の構成を表5に、積層フィルムの試験結果を表6に示した。
【0091】
【表5】

※ a:B層に含まれる樹脂の重量%
b:B層に含まれるシリカ微粒子の重量%
【0092】
【表6】

【0093】
[実施例7]
<積層フィルム曝露試験(1)>
福岡県八女市の試験ハウス(独立棟として南北が長辺になるように設置)において、実施例4で得た積層フィルムを被覆材として用い、曝露試験を行った。フレームに、積層フィルムのA層がハウスの内面となるように積層フィルムを被覆した。(曝露試験開始日:平成21年11月13日)
防曇性の状況を目視で観察した。観察日時は、平成22年10月2日10:00であった。積層フィルムのA層面は、均一に濡れていた。
【0094】
[実施例8]
<C層の作製>
共押出インフレーション成形法(加工温度180℃)により、外層、中間層及び内層がこの順に積層されている厚さ100μmの熱可塑性樹脂からなる層を作製した。なお、外層、中間層、内層の押出量の重量比は、外層/中間層/内層=2/6/2とした。各層の組成は、以下のとおりである。
【0095】
前記外層は、特開2010−12649号、実施例に記載のA1ペレット 45.2%、A4ペレット 40.0%、B1ペレット 2.0%、MB1ペレット 2.8%、MB3ペレット 10.0%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成した。
【0096】
前記中間層は、特開2010−12649号、実施例に記載のA2ペレット 52.8%、B1ペレット 20.0%、MB1ペレット 7.6%、MB2ペレット 19.6%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成した。
【0097】
前記内層は、特開2010−12649号、実施例に記載のA2ペレット 63.6%、B1ペレット 20.0%、MB1ペレット 6.4%、MB3ペレット 10.0%からなる熱可塑性樹脂組成物で形成した。
【0098】
<A層およびB層の形成>
前記熱可塑性樹脂からなる層の外層にコロナ処理を施した。コロナ処理した熱可塑性樹脂からなる層の表面に、塗工液(キ)を塗布し、塗膜を形成した。塗布には、wet塗布量=13μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した熱可塑性樹脂からなる層を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層の上にシリカ微粒子および樹脂からなる層が積層された積層中間体を得た。
更に、上記シリカ微粒子および樹脂からなる層上に、塗工液(シ)を塗布した。塗布には、wet塗布量=5μmのバーを用いた。その後、塗膜を形成した積層中間体を60℃で、1分間、熱風乾燥を行い、熱可塑性樹脂からなる層(C層)、シリカ微粒子および樹脂からなる層(B層)、シリカ微粒子からなる層(A層)が順に積層された積層フィルムを得た。
A層、B層の厚みは、B層が0.7μm、A層が0.1μmであった。
【0099】
<積層フィルム曝露試験(2)>
北海道上磯郡知内町の試験ハウス(独立棟として東西方向が長辺になるように設置)において、実施例8で得た前記積層フィルムを被覆材として用い、曝露試験を行った。フレームに、積層フィルムのA層がハウスの外面となるように積層フィルムを被覆した。(曝露試験開始日:平成21年11月22日)
着雪の状況を目視で観察した。観察日時は、平成22年1月15日11:00であった。観察時に撮影した写真を図1に示す。
【0100】
<積層フィルム曝露試験(3)>
桜島の降灰被害の大きい鹿児島県垂水市内の試験ハウスにおいて、実施例8で得た前記積層フィルムを被覆材として用い、曝露試験を行った。フレームに、積層フィルムのA層がハウスの外面となるように積層フィルムを被覆した。(曝露開始日:平成22年11月6日)
ハウス外面の塵(灰)の付着程度を目視で観察した。観察日時は、平成23年2月25日13:00頃であった。観察時に撮影した写真を図3に示す。
【0101】
[参考例1]
<積層フィルムの曝露試験(4)>
北海道上磯郡知内町の試験ハウス(独立棟として東西方向が長辺になるように設置)を用い、実施例5で得た積層フィルムを被覆材として用い、曝露試験を行った。フレームに、積層フィルムのA層がハウスの内面となるように積層フィルムを被覆した。(曝露試験開始日:平成21年11月22日)
着雪の状況を目視で観察した。観察日時は、平成22年1月15日11:00であった。観察時に撮影した写真を図2に示す。曝露試験(2)の結果と曝露試験(4)の結果とを比較すると、曝露試験(2)の被覆材が、曝露試験(4)の被覆材よりも、雪で覆われた部分は少なかった。
【0102】
[参考例2]
<積層フィルム曝露試験(5)>
桜島の降灰被害の大きい鹿児島県垂水市内の試験ハウスにおいて、実施例5で得た積層フィルムを被覆材として用い、曝露試験を行った。フレームに、積層フィルムのA層がハウスの内面となるように積層フィルムを被覆した。(曝露開始日:平成22年11月6日)
ハウス外面の塵(灰)の付着程度を目視で観察した。観察日時は、平成23年2月25日13:00頃であった。観察時に撮影した写真を図3に示す。写真手前が曝露試験(3)の試験ハウス、写真奥が曝露試験(5)の試験ハウスの写真である。曝露試験(3)の結果と曝露試験(5)の結果とを比較すると、曝露試験(3)の被覆材が、曝露試験(5)の被覆材よりも、塵(灰)の付着が少なかった。
【0103】
[実施例9]
<積層フィルム曝露試験(6)>
実施例4で得た積層フィルムに屈曲を与え、意図的に塗膜に傷を付けた。福岡県八女市内の試験ハウスに、傷を付けた積層フィルムを被覆材として用い、曝露試験を行った。フレームに、積層フィルムのA層がハウスの内面となるように積層フィルムを被覆した。(曝露試験開始日:平成22年11月10日)
積層フィルムを目視で観察し、積層フィルムの防曇性を評価した。観察日時は、平成23年2月10日12:00頃であった。積層フィルムの傷をつけなかった部分は当然のことながら、積層フィルムの傷をつけた部分についても、防曇性不良は認められなかった。
【0104】
[実施例10]
実施例1、比較例3で得た積層フィルムについて、以下の試験を実施した。
【0105】
<傷部の防曇性試験>
摩擦堅牢度試験機RT−200(株式会社大栄科学精器製作所製)を使用し、スチールウール(♯0000)で荷重500gfにて、実施例1で得た積層フィルムと、比較例3で得た積層フィルムの各表面(実施例1の積層フィルムの場合はA層、比較例3の積層フィルムの場合はB層)を5往復擦り、故意に傷を付けた。
縦34cm×横5cmのアクリル製の枠に、故意に傷を付けた積層フィルムを両面接着テープで貼り付け、積層フィルム表面(A層、またはB層)が水槽内蒸気に触れるように設置し、周囲をアルミテープで貼合した。この時、傷がアクリル製の枠の横方向に平行に、縦方向のほぼ中央になるようにした。前記積層フィルムを固定したアクリル製枠を、環境試験室内に置いた恒温水槽の上に、水平面に対し10度の傾斜を付けて設置した。この時、環境試験室内の気温は23℃に、恒温水槽の水温は40℃とした。
積層フィルムの設置から1日後に、傷部の防曇性を観察し、以下の基準で判定した。
○:傷部で、水滴の付着が認められない。
×:傷部で、水滴の付着が認められる。
【0106】
N数=16で試験を行い、×の発生する確率を算出した。
その結果、実施例1の積層フィルムでは、×の発生確率は38%であったのに対し、比較例3の積層フィルムでは、94%であった。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、農業用フィルムに利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカ微粒子からなる層と、シリカ微粒子および樹脂からなる層と、熱可塑性樹脂からなる層とを有する積層フィルムであって、前記シリカ微粒子からなる層と前記熱可塑性樹脂からなる層との間に前記シリカ微粒子および樹脂からなる層が存在し、かつ、前記シリカ微粒子からなる層が該積層フィルムの少なくとも一方の面の最表層であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
シリカ微粒子および樹脂からなる層に含まれるシリカ微粒子および樹脂の合計を100重量%とするとき、該シリカ微粒子および樹脂からなる層におけるシリカ微粒子の含有量が30〜70重量%であり、樹脂の含有量が30〜70重量%であることを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
【請求項3】
熱可塑性樹脂からなる層がポリエチレン系樹脂からなる請求項1または2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
植物栽培用構造物であって、該構造物はフレームとこれを覆って前記構造物の外形を形成している被覆材とで構成されており、該被覆材が請求項1〜3のいずれかに記載された積層フィルムであり、該積層フィルムのシリカ微粒子からなる層が構造物の内面である植物栽培用構造物。
【請求項5】
植物栽培用構造物であって、該構造物はフレームとこれを覆って前記構造物の外形を形成している被覆材とで構成されており、該被覆材が請求項1〜3のいずれかに記載された積層フィルムであり、該積層フィルムのシリカ微粒子からなる層が構造物の外面である植物栽培用構造物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−245857(P2011−245857A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−99113(P2011−99113)
【出願日】平成23年4月27日(2011.4.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【出願人】(503076168)サンテーラ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】