説明

積層フィルム

【課題】耐薬品性に優れる熱可塑性樹脂フィルムを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる層(A)の少なくとも一方の面に、メタクリル酸メチル単位60〜95重量%とメタクリル酸単位、アクリル酸単位、マレイン酸無水物単位、N−置換又は無置換マレイミド単位、グルタル酸無水物構造単位、及びグルタルイミド構造単位から選ばれる単位5〜40重量%とを有し、ガラス転移温度が110℃以上であるアクリル系重合体からなる層(B)を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムに関するものである。また、本発明は、この積層フィルムを用いてなる加飾用フィルム又は加飾用シート、さらには加飾成形品にも関係している。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂(プラスチック)フィルムは、その各々の特性を生かして、各種用途に適用されており、例えば、アクリルフィルムは、その優れた透明性や耐候性を生かして、家電製品の外装部材や自動車の内装部材などの表面加飾用フィルムとして好ましく用いられている。また、ポリプロピレンフィルムは、その優れた引張強さや剛性を生かして、製品包装用フィルムとして好ましく用いられており、ポリエステルフィルムは、その優れた耐熱性や薄肉成膜性を生かして、PETボトルなどのラベル用シュリンクフィルムとして好ましく用いられている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−12741号公報
【特許文献2】特開平10−279766号公報
【特許文献3】特開2000−86853号公報
【特許文献4】特開2003−183471号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の如き熱可塑性樹脂フィルムは、その製造過程や二次加工過程において、薬品に接触することがあり、それによって表面が侵されて、外観が低下したり、ヒビや割れが発生したりすることがある。また、製品化後の使用環境において、人に触れられたり、薬液に接触したりすることがあるが、特にその頻度ないし程度が高いと、人に触れられたときの影響として、例えば汗液中の乳酸の作用により、液痕が残ったり、クラックが発生したりすることがあり、また薬液に接触したときの影響として、例えば芳香剤や洗浄剤に含まれる有機溶剤の作用により、同様に液痕が残ったり、クラックが発生したりすることがある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、耐薬品性に優れる熱可塑性樹脂フィルムを提供することにある。そして、この熱可塑性樹脂フィルムを用いて、耐薬品性に優れる加飾用フィルム又は加飾用シート、さらには加飾成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意研究を行った結果、熱可塑性樹脂層と所定のアクリル系重合体層とからなる積層フィルムが、上記目的に適うことを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、熱可塑性樹脂からなる層(A)の少なくとも一方の面に、アクリル系重合体からなる層(B)が積層されてなり、前記アクリル系重合体は、メタクリル酸メチル単位60〜95重量%とメタクリル酸単位、アクリル酸単位、マレイン酸無水物単位、N−置換又は無置換マレイミド単位、グルタル酸無水物構造単位、及びグルタルイミド構造単位から選ばれる単位5〜40重量%とを有し、ガラス転移温度が110℃以上であることを特徴とする積層フィルムを提供するものである。
【0007】
この積層フィルムは、例えば、その一方の面に印刷を施すことにより、加飾用フィルムとして用いることができる。また、その印刷が施された面に熱可塑性樹脂シートを積層することにより、加飾用シートとすることもできる。そして、上記加飾用フィルムの印刷が施された面、又は上記加飾用シートの熱可塑性樹脂シートが積層された面に、熱可塑性樹脂成形品を積層することにより、耐薬品性に優れる加飾成形品を得ることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層フィルムは、耐薬品性に優れており、これを用いることにより、耐薬品性に優れる加飾用フィルム又は加飾用シート、さらには加飾成形品を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明の積層フィルムは、熱可塑性樹脂からなる層(A)の少なくとも一方の面に、所定のアクリル系重合体からなる層(B)が積層されてなるものである。
【0010】
層(A)を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、メタクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ環状オレフィン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF樹脂)などが挙げられる。その種類は、得られる積層体の用途により適宜選択されるが、例えば表面加飾用途であれば、透明性が高いもの、特にメタクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0011】
メタクリル樹脂は、メタクリル酸エステルを主体とする重合体であり、メタクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、メタクリル酸エステル50重量%以上とこれ以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。ここで、メタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸のアルキルエステルが用いられる。
【0012】
メタクリル樹脂の好ましい単量体組成は、全単量体を基準として、メタクリル酸アルキルが50〜100重量%、アクリル酸アルキルが0〜50重量%、これら以外の単量体が0〜49重量%であり、より好ましくは、メタクリル酸アルキルが50〜99.9重量%、アクリル酸アルキルが0.1〜50重量%、これら以外の単量体が0〜49重量%である。
【0013】
ここで、メタクリル酸アルキルの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。中でもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
【0014】
また、アクリル酸アルキルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどが挙げられ、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。
【0015】
また、メタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体は、単官能単量体、すなわち分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を1個有する化合物であってもよいし、多官能単量体、すなわち分子内に重合性の炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有する化合物であってもよいが、単官能単量体が好ましく用いられる。そして、この単官能単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如きスチレン系単量体、アクリロニトリル、メタクリロニトリルの如きシアン化アルケニル、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、N−置換マレイミドなどが挙げられる。また、多官能単量体の例としては、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートの如き多価アルコールのポリ不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルの如き不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートの如き多塩基酸のポリアルケニルエステル、ジビニルベンゼンの如き芳香族ポリアルケニル化合物などが挙げられる。
【0016】
なお、上記のメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、及びこれら以外の単量体は、それぞれ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0017】
メタクリル樹脂は、層(A)の耐熱性の点から、そのガラス転移温度が40℃以上であるのが好ましく、60℃以上であるのがより好ましい。このガラス転移温度は、単量体の種類やその割合を調整することにより、適宜設定することができる。
【0018】
メタクリル樹脂は、その単量体成分を、懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの方法により重合させることにより、調製することができる。その際、好適なガラス転移温度を得るため、又は好適な積層フィルムへの成形性を示す粘度を得るため、重合時に連鎖移動剤を使用することが好ましい。連鎖移動剤の量は、単量体の種類やその割合などに応じて、適宜決定すればよい。
【0019】
熱可塑性樹脂、特にメタクリル樹脂にはゴム粒子を配合して、その組成物により層(A)を構成するのが、得られる積層フィルムの柔軟性の点で好ましい。ここで、ゴム粒子としては、例えば、アクリル系、ブタジエン系、スチレン−ブタジエン系などのものを用いることができるが、中でも、耐候性の点から、アクリルゴム粒子が好ましく用いられる。
【0020】
アクリルゴム粒子は、ゴム成分としてアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を含有する粒子であり、この弾性重合体のみからなる単層構造の粒子であってもよいし、この弾性重合体の層を有する多層構造の粒子であってもよいが、層(A)の表面硬度の点から、多層構造の粒子であることが好ましい。また、この弾性重合体は、アクリル酸エステルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸エステル50重量%以上とこれ以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。ここで、アクリル酸エステルとしては、通常、アクリル酸のアルキルエステルが用いられる。
【0021】
アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の好ましい単量体組成は、全単量体を基準として、アクリル酸アルキルを50〜99.9重量%、メタクリル酸アルキルを0〜49.9重量%、これら以外の単官能単量体を0〜49.9重量%、及び多官能単量体を0.1〜10重量%である。
【0022】
ここで、アクリル酸アルキルの例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたアクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは4〜8である。またメタクリル酸アルキルの例も、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。
【0023】
また、これら以外の単官能単量体は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単官能単量体の例と同様である。中でもスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンの如きスチレン系単量体が好ましく用いられる。
【0024】
また、多官能単量体の例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げた多官能単量体の例と同様であり、中でも、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや、多塩基酸のポリアルケニルエステルが好ましく用いられる。
【0025】
なお、上記のアクリル酸アルキル、これ以外の単官能単量体、及び多官能単量体は、それぞれ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0026】
アクリルゴム粒子として多層構造のものを使用する場合、その好適な例としては、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の層の外側に、メタクリル酸エステルを主体とする重合体の層を有するもの、すなわち、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を内層とし、メタクリル酸エステルを主体とする重合体を外層とする、少なくとも2層構造のものを挙げることができる。ここで、外層の重合体の単量体成分であるメタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸アルキルが用いられる。また、外層の重合体は、内層の弾性重合体100重量部に対し、通常10〜400重量部、好ましくは20〜200重量部の割合で形成するのがよい。外層の重合体を、内層の弾性重合体100重量部に対し10重量部以上とすることで、該弾性重合体の凝集が生じ難くなり、層(A)の透明性が良好となる。
【0027】
上記外層の重合体の好ましい単量体組成は、全単量体を基準として、メタクリル酸アルキルを50〜100重量%、アクリル酸アルキルを0〜50重量%、これら以外の単量体を0〜50重量%、及び多官能単量体を0〜10重量%である。
【0028】
ここで、メタクリル酸アルキルの例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。中でもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。
【0029】
また、アクリル酸アルキルの例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたアクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。
【0030】
また、メタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体の例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単官能単量体の例と同様であり、また、多官能単量体の例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げた多官能単量体の例と同様である。
【0031】
なお、上記のメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、これら以外の単量体、及び多官能単量体は、それぞれ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0032】
また、多層構造のアクリルゴム粒子の好適な例として、上記2層構造の内層であるアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の層の内側に、さらにメタクリル酸エステルを主体とする重合体の層を有するもの、すなわち、このメタクリル酸エステルを主体とする重合体を内層とし、アクリル酸エステルを主体とする弾性重合体を中間層とし、先のメタクリル酸エステルを主体とする重合体を外層とする、少なくとも3層構造のものを挙げることもできる。ここで、内層の重合体の単量体成分であるメタクリル酸エステルとしては、通常、メタクリル酸アルキルが用いられる。また、内層の重合体は、中間層の弾性重合体100重量部に対し、通常10〜400重量部、好ましくは20〜200重量部の割合で形成するのがよい。
【0033】
上記内層の重合体の好ましい単量体組成は、全単量体を基準として、メタクリル酸アルキルを70〜100重量%、アクリル酸アルキルを0〜30重量%、これ以外の単量体を0〜30重量%、及び多官能単量体を0〜10重量%である。
【0034】
ここで、メタクリル酸アルキルの例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。中でもメタクリル酸メチルが好ましく用いられる。また、アクリル酸アルキルの例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたアクリル酸アルキルの例と同様であり、そのアルキル基の炭素数は通常1〜8、好ましくは1〜4である。
【0035】
また、メタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単量体の例は、先にメタクリル樹脂の単量体成分として挙げたメタクリル酸アルキル及びアクリル酸アルキル以外の単官能単量体の例と同様であり、また、多官能単量体の例は、先にメタクリル酸樹脂の単量体成分として挙げた多官能単量体の例と同様である。
【0036】
なお、上記のメタクリル酸アルキル、及びこれら以外の単量体は、それぞれ、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0037】
アクリルゴム粒子は、先に述べたアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の単量体成分を、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させることにより、調製することができる。その際、先に述べた如く、上記弾性重合体の層の外側に、メタクリル酸エステルを主体とする重合体の層を形成する場合は、この外層の重合体の単量体成分を、上記弾性重合体の存在下に、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させることにより、上記弾性重合体にグラフトさせればよい。また、先に述べた如く、上記弾性重合体の層の内側に、さらにメタクリル酸エステルを主体とする重合体の層を形成する場合は、まず、この内層の重合体の単量体成分を、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させ、次いで、得られる重合体の存在下に、上記弾性重合体の単量体成分を、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させることにより、上記内層の重合体にグラフトさせ、さらに、得られる弾性重合体の存在下に、上記外層の重合体の単量体成分を、乳化重合法などにより、少なくとも1段の反応で重合させることにより、上記弾性重合体にグラフトさせればよい。なお、各層の重合を、それぞれ2段以上で行う場合、いずれも、各段の単量体組成ではなく、全体としての単量体組成が所定の範囲内にあればよい。
【0038】
アクリルゴム粒子の粒径については、該ゴム粒子中のアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の層の平均粒子径が、0.01〜0.4μmであるのが好ましく、より好ましくは0.05〜0.3μm、さらに好ましくは0.07〜0.25μmである。この平均粒子径があまり大きいと、層(A)の透明性が低下するため、好ましくない。また、この平均粒子径があまり小さいと、層(A)の表面硬度が低下して傷が付き易くなったり、層(A)の柔軟性が低下して割れ易くなったりするため、好ましくない。
【0039】
なお、上記平均粒子径は、アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、その断面において酸化ルテニウムによる上記弾性重合体の層の染色を施し、電子顕微鏡で観察して、染色された部分の直径から求めることができる。すなわち、アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂に混合し、その断面を酸化ルテニウムで染色すると、母相のメタクリル樹脂は染色されず、上記弾性重合体の層の外側にメタクリル酸エステルを主体とする重合体の層が存在する場合は、この外層の重合体も染色されず、上記弾性重合体の層のみが染色されるので、こうして染色され、電子顕微鏡でほぼ円形状に観察される部分の直径から、粒子径を求めることができる。上記弾性重合体の層の内側にメタクリル酸エステルを主体とする重合体の層が存在する場合は、この内層の重合体も染色されず、その外側の上記弾性重合体の層が染色された2層構造の状態で観察されることになるが、この場合は、2層構造の外側、すなわち上記弾性重合体の層の外径で考えればよい。
【0040】
熱可塑性樹脂とゴム粒子との配合割合は、両者の合計100重量部を基準に、熱可塑性樹脂が20〜95重量部であり、ゴム粒子が5〜80重量部であるのが好ましい。熱可塑性樹脂の割合があまり小さく、ゴム粒子の割合があまり大きいと、層(A)の表面硬度が低下して傷が付き易くなる。一方、熱可塑性樹脂の割合があまり大きく、ゴム粒子の割合があまり小さいと、層(A)の柔軟性が低下して割れ易くなる。
【0041】
また、ゴム粒子としてアクリルゴムを使用する場合、該アクリルゴム粒子中のアクリル酸エステルを主体とする弾性重合体の量は、熱可塑性樹脂及びアクリルゴム粒子の合計100重量部を基準に、5〜50重量部であることが好ましく、7〜40重量部であることがより好ましい。熱可塑性樹脂及びアクリルゴム粒子の合計100重量部あたり上記弾性重合体の量が5重量部以上となるようにすれば、層(A)自体が脆くなることなく、製膜性を向上させることができる。一方、熱可塑性樹脂及びアクリルゴム粒子の合計100重量部あたり上記弾性重合体の量が50重量部以下となるようにすれば、層(A)の透明性や表面硬度を向上させることができる。
【0042】
なお、層(A)を構成する熱可塑性樹脂には、ゴム粒子の他、必要に応じて他の成分、例えば、紫外線吸収剤、有機系染料、無機系染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤などを配合してもよい。
【0043】
層(A)の少なくとも一方の面に積層される層(B)は、全単量体単位を基準として、メタクリル酸メチル単位60〜95重量%とメタクリル酸単位、アクリル酸単位、マレイン酸無水物単位、N−置換又は無置換マレイミド単位、グルタル酸無水物構造単位、及びグルタルイミド構造単位から選ばれる単位5〜40重量%とを有し、ガラス転移温度が110℃以上であるアクリル系重合体から構成される。
【0044】
ここで、メタクリル酸メチル単位は、メタクリル酸メチルの重合により形成される単位〔−CH2−C(CH3)(CO2CH3)−〕であり、メタクリル酸単位は、メタクリル酸の重合により形成される単位〔−CH2−C(CH3)(CO2H)−〕であり、アクリル酸単位は、アクリル酸の重合により形成される単位〔−CH2−CH(CO2H)−〕である。また、マレイン酸無水物単位は、マレイン酸無水物の重合により形成される単位〔式(1)〕であり、N−置換又は無置換マレイミド単位は、N−置換又は無置換マレイミドの重合により形成される単位〔式(2)〕である。
【0045】
【化1】

【0046】
式(2)中、R1は水素原子又は置換基を表し、この置換基の例としては、メチル基、エチル基のようなアルキル基、シクロヘキシル基のようなシクロアルキル基、フェニル基のようなアリール基、ベンジル基のようなアラルキル基が挙げられ、その炭素数は通常1〜20程度である。
【0047】
また、グルタル酸無水物構造単位は、グルタル酸無水物構造を有する単位であり、グルタルイミド構造単位は、グルタルイミド構造を有する単位であり、典型的にはそれぞれ、次の式(3)及び(4)で示される。
【0048】
【化2】

【0049】
式(3)中、R2は水素原子又はメチル基を表し、R3は水素原子又はメチル基を表す。式(4)中、R4は水素原子又はメチル基を表し、R5は水素原子又はメチル基を表し、R6は水素原子又は置換基を表し、この置換基の例としては、メチル基、エチル基のようなアルキル基、シクロヘキシル基のようなシクロアルキル基、フェニル基のようなアリール基、ベンジル基のようなアラルキル基が挙げられ、その炭素数は通常1〜20程度である。
【0050】
メタクリル酸メチル単位、メタクリル酸単位、アクリル酸単位、マレイン酸無水物単位、及びN−置換又は無置換マレイミド単位は、重合原料として、それぞれ、メタクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、マレイン酸無水物、及びN−置換又は無置換マレイミドを用いることにより、導入することができる。
【0051】
グルタル酸無水物構造単位は、メタクリル酸メチルの単独重合体、或いは、メタクリル酸メチルとメタクリル酸及び/又はアクリル酸との共重合体を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ナトリウムメチラートのような塩基性化合物の存在下、通常150〜350℃、好ましくは220〜320℃で熱処理して変性させることにより、導入することができる。
【0052】
また、グルタルイミド構造単位は、メタクリル酸メチルの単独重合体、或いは、メタクリル酸メチルとメタクリル酸及び/又はアクリル酸との共重合体を、アンモニアや一級アミンの存在下、通常150〜350℃、好ましくは220〜320℃の範囲で熱処理して変性させることにより、導入することができる。
【0053】
アクリル系重合体の単量体単位組成は、メタクリル酸メチル単位が、好ましくは65〜95重量%、より好ましくは70〜92重量%であり、メタクリル酸単位、アクリル酸単位、マレイン酸無水物単位、N−置換又は無置換マレイミド単位、グルタル酸無水物構造単位、及びグルタルイミド構造単位から選ばれる単位が、好ましくは5〜35重量%、より好ましくは8〜30重量%である。また、アクリル系重合体のガラス転移温度は、好ましくは115℃以上であり、また通常150℃以下である。
【0054】
なお、アクリル系重合体は、必要に応じて他の単位、例えば、メタクリル酸ボルニル、メタクリル酸フェンチル、メタクリル酸メンチル、メタクリル酸アダマンチルのようなメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチルのようなアクリル酸エステル、スチレン、α−メチルスチレンのような芳香族ビニル化合物、アクリロニトリルのようなビニルシアン化合物などの単量体単位を有していてもよいが、その量は、全単量体単位を基準として、通常20重量%までである。
【0055】
アクリル系重合体又はその原料は、通常の懸濁重合、乳化重合、塊状重合などの方法で製造することができる。重合には通常、連鎖移動剤やラジカル重合開始剤が用いられ、連鎖移動剤としては、ドデシルメルカプタンやオクチルメルカプタンのようなメルカプタン類が好ましく用いられ、ラジカル重合開始剤としては、有機過化酸化物やアゾ化合物が好ましく用いられる。
【0056】
なお、アクリル系重合体には、前記熱可塑性樹脂同様、必要に応じて他の成分、例えば、ゴム粒子、紫外線吸収剤、有機系染料、無機系染料、顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤などを配合してもよい。アクリル系重合体にゴム粒子を配合する場合、このゴム粒子としては、層(A)の熱可塑性樹脂に配合されるゴム粒子同様、アクリル系、ブタジエン系、スチレン−ブタジエン系などのものが用いられるが、アクリルゴム粒子が好ましく用いられる。アクリル系重合体に配合されるゴム粒子は、層(A)の熱可塑性樹脂に配合されるゴム粒子と同じものであってもよいし、異なるものであってもよく、例えば異なるものを用いて屈折率を調整してもよい。
【0057】
また、マット調の意匠を発現させるためには、層(A)を構成する熱可塑性樹脂、若しくは層(B)を構成するアクリル系重合体、又はその両方に、有機系又は無機系の微粒子を配合して、層(A)及び/又は層(B)を光拡散性のマット層とするのが有効である。有機系の微粒子としては、例えば架橋アクリル系重合体粒子や架橋スチレン系重合体粒子などが用いられ、無機系の微粒子としては、例えばシリカやアルミナなどが用いられる。これら微粒子の使用量は、要望する表面光沢や意匠により適宜調整されるが、通常、添加する層を構成する全材料を基準に0.1〜50重量%程度である。
【0058】
以上説明した層(A)の構成材料である熱可塑性樹脂と、層(B)の構成材料であるアクリル系重合体とを、積層フィルム化することにより、熱可塑性樹脂からなる層(A)の少なくとも一方の面に、アクリル系重合体からなる層(B)を形成することで、本発明の積層フィルムが得られる。この積層フィルム化の方法は適宜選択されるが、例えば、それぞれの構成材料を押出機にて溶融させ、フィードブロック法又はマルチマニホールド法を用いて積層させる共押出成形法や、熱可塑性樹脂を押出成形法などによりフィルム化し、このフィルムの表面に、アクリル系重合体を必要により溶剤に溶解してコーティングする方法が、有利に採用されるが、なかでも共押出成形法が好ましく用いられる。
【0059】
こうして得られる積層フィルムは、その厚さが通常20〜500μmであり、好ましくは50〜250μmであり、より好ましくは50〜150μmである。あまり厚い積層フィルムは、例えば自動車内装材として成形する際に成形加工に時間がかかると共に、物性や意匠性の向上効果が小さく、コストも高くなる。一方、あまり薄い積層フィルムは、押出成形による製膜自体が、機械的制約により困難になると共に、破断強度が小さくなり、生産不具合の発生確率が高くなる。積層フィルムの厚さは、製膜速度、T型ダイスの吐出口厚み、ロールの間隙などを調節することにより、調整できる。
【0060】
熱可塑性樹脂からなる層(A)は、その厚さが積層フィルム全体の厚さの0.5倍以上であるのが好ましい。層(A)が薄いと、積層フィルムが柔軟性に劣り、脆く、割れ易くなる。また、アクリル系重合体からなる層(B)は、その厚さが通常1μm以上であり、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。層(B)があまり薄いと、耐薬品性が不十分になる。なお、層(B)を層(A)の両面に配置する場合は、各層(B)の厚さを1μm以上とすればよく、好ましくは3μm以上、さらに好ましくは10μm以上である。
【0061】
本発明の積層フィルムは、加飾用フィルムとして好ましく用いられ、この場合、一方の面に印刷が施されたものが好ましく用いられる。印刷を施す方法としては、例えば、連続グラビア印刷やシルク印刷などにより樹脂フィルム表面に直接印刷を施す方法や、印刷が施された他の樹脂フィルムをラミネートする方法などが挙げられる。
【0062】
積層フィルムが層(A)の一方の面に層(B)が積層されてなるものであれば、層(B)が積層された面とは反対側の面、すなわち層(A)に印刷を施すことにより、層(B)を表層とする耐薬品性に優れる加飾用フィルムとして用いることができる。また、印刷の際、層(A)が印刷インクに含まれる薬品に侵され易い場合は、上記とは逆に、耐薬品性に優れる層(B)に印刷を施すことにより、層(A)が印刷インクに含まれる薬品に侵されるのを防止することができる。さらに、積層フィルムが層(A)の両面に層(B)が積層されてなるものであれば、その一方の面に印刷を施すことにより、層(B)を表層とする耐薬品性に優れる加飾用フィルムとして用いることができるうえ、層(A)が印刷インクに含まれる薬品に侵され易い場合であっても、それを防止することができる。
【0063】
また、上記加飾用フィルムは、その印刷が施された面に、バッキング材として熱可塑性樹脂シートを積層して、加飾用シートとすることもできる。ここで、熱可塑性樹脂シートを構成する樹脂としては、例えば、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。また、この熱可塑性樹脂シートの厚さは、所謂フィルム領域の厚さも包含し、通常0.2〜2mm程度である。
【0064】
そして、こうして得られる加飾用フィルム又は加飾用シートを、印刷が施されていない積層フィルム面が表側に配置されるように、熱可塑性樹脂成形品に積層することにより、すなわち、加飾用フィルムであれば、印刷が施された面に、熱可塑性樹脂成形品を積層することにより、また、加飾用シートであれば、熱可塑性樹脂シートが積層された面に、熱可塑性樹脂成形品を積層することにより、加飾成形品を得ることができる。ここで、熱可塑性樹脂成形品を構成する樹脂としては、例えば、ABS樹脂、メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
【0065】
加飾成形品を得るための方法としては、射出成形同時貼合法が有利に採用される。射出成形同時貼合法は、例えば、上記のフィルム又はシートを予備成形することなく射出成形金型内に挿入し、そこに溶融樹脂を射出して、射出成形品を形成すると同時にその成形品に上記のフィルム又はシートを貼合する方法(狭義の射出成形同時貼合法と呼ばれることがある)、上記のフィルム又はシートを真空成形や圧空成形などにより予備成形してから射出成形金型内に挿入し、そこに溶融樹脂を射出して、射出成形品を形成すると同時にその成形品に上記のフィルム又はシートを貼合する方法(インサート成形法と呼ばれることがある)、上記のフィルム又はシートを射出成形金型内で真空成形や圧空成形などにより予備成形した後、そこに溶融樹脂を射出して、射出成形品を形成すると同時にその成形品に上記のフィルム又はシートを貼合する方法(インモールド成形法と呼ばれることがある)などによって行うことができる。射出成形同時貼合法のさらに詳しい説明は、例えば、特公昭63−6339号公報、特公平4−9647号公報、特開平7−9484号公報などに記載されている。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。なお、例中、含有量ないし使用量を表す%及び部は、特記ないかぎり重量基準である。
【0067】
メタクリル樹脂として、メタクリル酸メチル97.8%とアクリル酸メチル2.2%とからなる単量体のバルク重合により得られた熱可塑性重合体(ガラス転移温度104℃)のペレットを用いた。なお、このガラス転移温度は、JIS K7121:1987に従い、示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で求めた補外ガラス転移開始温度である。
【0068】
アクリルゴム粒子(A)として、最内層がメタクリル酸メチル93.8%とアクリル酸メチル6%とメタクリル酸アリル0.2%とからなる単量体の重合により得られた硬質重合体であり、中間層がアクリル酸ブチル81%とスチレン17%とメタクリル酸アリル2%とからなる単量体の重合により得られた弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチル94%とアクリル酸メチル6%とからなる単量体の重合により得られた硬質重合体であり、最内層/中間層/最外層の重量割合が35/45/20であり、中間層の弾性重合体の層の平均粒子径が0.22μmである、乳化重合法による球形3層構造のゴム粒子を用いた。
【0069】
アクリルゴム粒子(B)として、上記アクリルゴム粒子(A)と基本的に同じ組成であるが、重合条件を変えることにより、中間層の弾性重合体の層の平均粒子径が0.14μmとなった球形3層構造のゴム粒子を用いた。
【0070】
アクリルゴム粒子(C)として、最内層がアクリル酸ブチル81%とスチレン17%とメタクリル酸アリル2%とからなる単量体の重合により得られた弾性重合体であり、最外層がメタクリル酸メチル94%とアクリル酸メチル6%とからなる単量体の重合により得られた硬質重合体であり、最内層/最外層の重量割合が80/20であり、最内層の弾性重合体の層の平均粒子径が0.08μmである、乳化重合法による球形2層構造のゴム粒子を用いた。
【0071】
なお、上記のアクリルゴム粒子(A)、(B)及び(C)における中間層の弾性重合体の層の平均粒子径は、以下の方法で測定した。
〔弾性重合体の層の平均粒子径の測定〕
アクリルゴム粒子をメタクリル樹脂と混合してフィルム化し、得られたフィルムを適当な大きさに切り出し、切片を0.5%四酸化ルテニウム水溶液に室温で15時間浸漬し、該ゴム粒子中の弾性共重合体の層を染色した。さらに、ミクロトームを用いて約80nmの厚さにサンプルを切断した後、透過型電子顕微鏡で写真撮影を行った。この写真から無作為に100個の染色された弾性共重合体の層を選択し、その各々の粒子径を算出した後、その数平均値を平均粒子径とした。
【0072】
〔アクリル系重合体(a)の調製〕
撹拌機の備わったオートクレーブに、水2200部及びヒドロキシセルロース2.4部を仕込み溶解した後に、メタクリル酸メチル1440部、メタクリル酸160部、ラウリルメルカプタン6.4部、及びラウロイルパーオキサイド5.6部を加え、この混合物を撹拌し80℃に加熱し重合を行った。1時間40分後に温度を98℃に上げ、更に1時間重合を行い反応を完結させた。その後、重合物を冷却、遠心分離、水洗して80℃で乾燥を行った。本操作を数回繰り返して、乾燥ビーズを得た。この乾燥ビーズに、ビーズ100部に対して水酸化ナトリウム0.03部をヘンシェルミキサーで混合し、40mmφ脱気押出機〔田辺プラスチックス機械(株)製、VS−40−28型、L/D=28〕を用いてスクリュー回転数50rpm、樹脂温度280℃で造粒を行い、アクリル系重合体(a)を得た。このアクリル系重合体(a)に含まれるグルタル酸無水物構造単位を、赤外分光光度計により1805cm-1の吸収を用いて定量化した結果、7.8%であった。また、このアクリル系重合体(a)は、ガラス転移温度が115℃であった。なお、ガラス転移温度は、JIS K7121に従い、示差走査熱量測定により加熱速度10℃/分で求めた補外ガラス転移開始温度である。
【0073】
〔アクリル系重合体(b)の調製〕
メタクリル酸メチルの使用量を1440部から1120部に変更し、メタクリル酸の使用量を160部から480部に変更した以外は、アクリル系重合体(a)の調製と同様の操作を行い、グルタル酸無水物構造単位を23.6%含み、ガラス転移温度が135℃であるアクリル系重合体(b)を得た。
【0074】
実施例1〜7
メタクリル樹脂のペレットをアクリルゴム粒子(A)、(B)又は(C)と表1に示す割合でスーパーミキサーで混合し、二軸押出機にて溶融混練してメタクリル樹脂組成物のペレットとした。また、アクリル系重合体(a)をマット材〔有機系微粒子;積水化成品工業(株)製のXX−24K〕と表1に示す割合でスーパーミキサーで混合し、二軸押出機にて溶融混練してアクリル系重合体(a)組成物のペレットとした(実施例5)。次いで、メタクリル樹脂の組成物のペレットを65mmφ一軸押出機〔東芝機械(株)製〕で、アクリル系重合体(a)若しくは(b)、又はアクリル系重合体(a)組成物のペレットを45mmφ一軸押出機〔東芝機械(株)製〕で、それぞれ溶融させ、フィードブロック法にて溶融積層一体化させ、設定温度275℃のT型ダイスを介して押し出し、得られるフィルム状物を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形した。こうして表1に示す2層構成の積層フィルムを製造し、以下の評価を行い、結果を表1に示した。
【0075】
〔柔軟性試験〕
JIS K5600−5−1:1999に従って、フィルムの耐屈曲性を評価し、試験片が破断せず、柔軟性が良好であるものを○、試験片が破断し、柔軟性に欠けるものを×とした。
【0076】
〔耐薬品性試験〕
ベンジルアルコールの20%水溶液を作成し、フィルム表面〔アクリル系重合体層(層(B))側〕に1滴滴下後、60℃オーブン中で1時間放置した後、目視にて状態を確認した。液滴痕が明確に確認されるもの、フィルム表面が溶解したもの、又はフィルムにクラックが発生したものを×、変化が無いものを○とした。
【0077】
比較例1
メタクリル樹脂のペレットをアクリルゴム粒子(A)と表1に示す割合でスーパーミキサーで混合し、二軸押出機にて溶融混練してメタクリル樹脂組成物のペレットとした。次いで、メタクリル樹脂組成物のペレットを、65mmφ一軸押出機〔東芝機械(株)製〕で溶融させ、設定温度275℃のT型ダイスを介して押し出し、得られるフィルム状物を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形した。こうして、表1に示す単層フィルムを製造し、先と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
【0078】
比較例2
アクリル系重合体(a)を65mmφ一軸押出機〔東芝機械(株)製〕で溶融させ、設定温度275℃のT型ダイスを介して押し出し、得られるフィルム状物を、一対の表面が平滑な金属製のロールの間に挟み込んで成形した。こうして、表1に示す単層フィルムを製造し、先と同様の評価を行い、結果を表1に示した。
【0079】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる層(A)の少なくとも一方の面に、アクリル系重合体からなる層(B)が積層されてなり、前記アクリル系重合体は、メタクリル酸メチル単位60〜95重量%とメタクリル酸単位、アクリル酸単位、マレイン酸無水物単位、N−置換又は無置換マレイミド単位、グルタル酸無水物構造単位、及びグルタルイミド構造単位から選ばれる単位5〜40重量%とを有し、ガラス転移温度が110℃以上であることを特徴とする積層フィルム。
【請求項2】
熱可塑性樹脂がメタクリル樹脂である請求項1に記載の積層フィルム。
【請求項3】
メタクリル樹脂が、メタクリル酸アルキルを50〜100重量%、アクリル酸アルキルを0〜50重量%、及びこれら以外の単量体を0〜49重量%の割合で重合させてなる重合体である請求項2に記載の積層フィルム。
【請求項4】
層(A)がゴム粒子を含有する層である請求項1〜3のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項5】
ゴム粒子がアクリルゴム粒子である請求項4のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項6】
アクリルゴム粒子が、アクリル酸アルキルを50〜99.9重量%、メタクリル酸アルキルを0〜49.9重量%、これら以外の単官能単量体を0〜49.9重量%、及び多官能単量体を0.1〜10重量%の割合で重合させてなる弾性重合体を含有する粒子である請求項5に記載の積層フィルム。
【請求項7】
アクリルゴム粒子が、前記弾性重合体の層の外側に、メタクリル酸アルキルを50〜100重量%、アクリル酸アルキルを0〜50重量%、これら以外の単量体を0〜50重量%、及び多官能単量体を0〜10重量%の割合で重合させてなる重合体の層を有する多層構造の粒子である請求項6に記載の積層フィルム。
【請求項8】
アクリルゴム粒子が、前記弾性重合体の層の内側に、メタクリル酸アルキルを70〜100重量%、アクリル酸アルキルを0〜30重量%、これ以外の単量体を0〜30重量%、及び多官能単量体を0〜10重量%の割合で重合させてなる重合体の層を有する多層構造の粒子である請求項6又は7に記載の積層フィルム。
【請求項9】
全体の厚さが20〜500μmであり、前記層(B)の厚さが1μm以上である請求項1〜8のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項10】
前記層(A)及び/又は前記層(B)が有機系又は無機系の微粒子を含有する層である請求項1〜9のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項11】
熱可塑性樹脂及びゴム粒子からなる組成物と前記共重合体とが共押出成形されてなる請求項1〜10のいずれかに記載の積層フィルム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の積層フィルムの一方の面に、印刷が施されてなることを特徴とする加飾用フィルム。
【請求項13】
請求項12に記載の加飾用フィルムの印刷が施された面に、熱可塑性樹脂シートが積層されてなることを特徴とする加飾用シート。
【請求項14】
請求項12に記載の加飾用フィルムの印刷が施された面に、熱可塑性樹脂成形品が積層されてなることを特徴とする加飾成形品。
【請求項15】
請求項13に記載の加飾シートの熱可塑性樹脂シートが積層された面に、熱可塑性樹脂成形品が積層されてなることを特徴とする加飾成形品。

【公開番号】特開2009−248362(P2009−248362A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95862(P2008−95862)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】