説明

積層ポリエステルフィルム

【課題】 例えばハードコート用ポリエステルフィルムとして使用した際に、粒子感のない高透明性、良好な耐擦傷性を有し、ハードコート層に対する接着性良好な積層ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 少なくとも3層のポリエステル層から構成される積層ポリエステルフィルムからなり、一方のフィルム表面にポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含む塗布層を有し、フィルムヘーズが2%以下であることを特徴とする光学用積層ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばハードコート用ポリエステルフィルムとして使用した際に、粒子感がなく、透明性良好、かつ耐擦傷性良好であり、ハードコート層との接着性良好である積層ポリエステルフィルムに関するものであり、特に、光を透過して見る、いわゆる視認性を重視し、より高度な透明性が必要とされる光学用途、例えば、タッチパネル製造用、液晶偏光板製造用等に好適なフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、電気特性、機械的特性、熱的特性、加工性および耐薬品性が優れていることから、包装材料、電気絶縁材料、金属絶縁材料、金属蒸着材料、製版材料、磁気記録材料、表示材料、転写材料、窓貼り材料などを始めとして多くの用途で使用されている。特に最近では、タッチパネル用、液晶表示装置に用いられるプリズムシート用のベースフィルムやブラウン管、LCD、PDP等のいわゆるフラットパネルディスプレイの前面パネルガラス表面貼り付け用、帯電防止、反射防止、電磁波シールド等の機能層を設けた保護フィルムのベースフィルム用などの各種光学用途に広く用いられている。
【0003】
ポリエステルフィルム使用上の問題点として、通常の用途では全く問題とならないフィルム表面の傷が外観や光学的特性が損なわれやすく、致命的な欠陥になる場合がある(特許文献1)。
【0004】
そのため、光学用途に対応するポリエステルフィルムには、透明性と易滑性との両立が必要とされる。一般的には、フィルム中の粒子添加量を調整する手法が汎用的に採用されているが、極端に粒子添加量を減らした場合には、フィルム自身の滑り性が低下し、巻取り性が低下する場合があるため、少なくともフィルム片面に易滑性・耐擦傷性層を形成することが行われている(特許文献2)。また、表面に微小な突起を有するポリエステルフィルムを使用する例もある。この場合、フィルム表面に突起を形成するために、フィルムを構成するポリエステル層中に無機または有機の微粒子が添加される(特許文献3)。フィルム中に粒子を含有させ、当該粒子によってフィルム表面に微小凹凸(微小突起)を形成し、フィルム表面の摩擦係数低減により、耐擦傷性を向上させることが目的である。
【0005】
しかしながら、傷入り防止のために、フィルム中に粒子を添加する場合、当該粒子が内部散乱要因となり、フィルムの透明性が低下し、透明性と耐擦傷性との両立が困難な場合がある。また、従来使用されているポリエステルフィルムは、無機または有機の微粒子による突起を有しているため、たとえば、製膜時にスクラッチ傷が生じやすいという問題を抱えている。生じたスクラッチ傷により、光が乱反射することにより輝点となるため、高度な透明性を必要とするポリエステルフィルムを得ることが困難な状況にあり、改良が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-157036号公報
【特許文献2】特許第4097534号公報
【特許文献3】特開平3−175034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、例えばハードコート用ポリエステルフィルムとして使用した際に、粒子感のない高透明性、良好な耐擦傷性を有し、ハードコート層に対する接着性良好な積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記実情に鑑み、鋭意検討した結果、特定の構成を有する積層ポリエステルフィルムを用いれば、上述の課題を容易に解決できることを知見し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は、少なくとも3層のポリエステル層から構成される積層ポリエステルフィルムからなり、一方のフィルム表面にポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含む塗布層を有し、フィルムヘーズが2%以下であることを特徴とする光学用積層ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポリエステルフィルム製造工程で発生する傷入りを抑制でき、耐擦傷性、透明性、ハードコ−ト層に対する接着性良好な積層ポリエステルフィルムを安価に製造することができ、本発明の工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明において、積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムは少なくとも3層から構成されることを特徴とし、3層構成以外にも本発明の要旨を越えない限り、4層またはそれ以上の多層であってもよく、特に限定されるものではない。
【0012】
本発明において使用するポリエステルは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを重縮合させて得られるものが好ましく、1種の芳香族ジカルボン酸と1種の脂肪族グリコールとからなるポリエステルであってもよく、1種以上の他の成分を共重合させた共重合ポリエステルであってもよい。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート等が例示される。一方、共重合ポリエステルの成分として用いるジカルボン酸としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸が挙げられ、グリコー_ル成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、1、4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。またp−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸も用いることができる。
【0013】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムにおいては、フィルム加工中の熱履歴等により、フィルム中に含有しているオリゴマーがフィルムの表面に析出・結晶化する量を低減するために、多層構造フィルムの最外層に低オリゴマー化したポリエステルを用いることも可能である。ポリエステル中のオリゴマー量を低減する方法としては、例えば、固相重合法等を用いることができる。
【0014】
本発明の積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムには、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されている耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0015】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これらの粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0016】
また、本発明において、使用する粒子の平均粒径は、通常0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下の範囲である。平均粒径の下限としては、フィルム滑り性を考慮して、0.01μmが好ましい。当該範囲を外れる場合には、粒子が凝集しやすく、分散性が不十分な場合がある。一方、0.5μmを超える場合には、フィルムの表面粗度が粗くなりすぎて、後工程において種々の表面機能層を塗設させる場合等に不具合を生じることがある。
【0017】
さらにポリエステル層中の粒子含有量は、通常0.5〜5重量%、好ましくは0.5〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.5重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えるとフィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0018】
ポリエステル中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0019】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0020】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0021】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成するポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常、25〜250μm、好ましくは38〜188μm、さらに好ましくは50〜188μmの範囲である。
【0022】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常70〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0023】
また、本発明においては、ポリエステルフィルムの製造に同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常70〜120℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来から公知の延伸方式を採用することができる。
【0024】
さらに上述のポリエステルフィルムの延伸工程中にフィルム表面を処理する、いわゆる塗布延伸法(インラインコーティング)を施すことができる。塗布延伸法により積層ポリエステルフィルム上に塗布層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共に塗布層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0025】
次に本発明における塗布層の形成について説明する。
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層を設ける場合、上述の塗布延伸法(インラインコーティング)等のフィルム製造工程内において、ポリエステルフィルム上に設けられてもよく、一旦製造したフィルム上に系外で塗布する、いわゆるオフラインコーティングを採用してもよく、何れの手法を採用してもよい。塗布延伸法(インラインコーティング)については以下に限定するものではないが、例えば、逐次二軸延伸においては特に1段目の延伸が終了して、2段目の延伸前にコーティング処理を施すことができる。塗布延伸法によりポリエステルフィルム上にハードコート層が設けられる場合には、延伸と同時に塗布が可能になると共にハードコート層の厚みを延伸倍率に応じて薄くすることができ、ポリエステルフィルムとして好適なフィルムを製造できる。
【0026】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層に関して、以下に説明する。
本発明における、積層ポリエステルフィルムの塗布層中には、ハードコート層に対する接着性を良好とするためにポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含むことを必須の要件とする。ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂とは、ウレタン樹脂の主要な構成成分であるポリオールの一つがポリカーボネートポリオール類であるウレタン樹脂を指す。
【0027】
ポリカーボネートポリオール類は、多価アルコール類とカーボネート化合物とから、脱アルコール反応によって得られる。多価アルコール類としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3−ジメチロールヘプタン等が挙げられる。カーボネート化合物としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられ、これらの反応から得られるポリカーボネート系ポリオール類としては、例えば、ポリ(1,6−ヘキシレン)カーボネート、ポリ(3−メチル−1,5−ペンチレン)カーボネート等が挙げられる。
【0028】
本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を構成するポリイソシアネート類としては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。また、上記イソシアネートの中でも、活性エネルギー線硬化性塗料との密着性の向上、および紫外線による黄変防止の点から、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
【0029】
ウレタン樹脂を合成する際に鎖延長剤を使用してもよく、鎖延長剤としては、イソシアネート基と反応する活性基を2個以上有するものであれば特に制限はなく、一般的には、水酸基またはアミノ基を2個有する鎖延長剤を主に用いることができる。
【0030】
水酸基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール等の脂肪族グリコール、キシリレングリコール、ビスヒドロキシエトキシベンゼン等の芳香族グリコール、ネオペンチルグリコール、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレート等のエステルグリコールといったグリコール類を挙げることができる。また、アミノ基を2個有する鎖延長剤としては、例えば、トリレンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、トリメチルヘキサンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1 ,8−オクタンジアミン、1 ,9−ノナンジアミン、1 ,10−デカンジアミン等の脂肪族ジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロビリチンシクロヘキシル−4,4’−ジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1 ,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0031】
本発明で使用するウレタン樹脂は、溶剤を媒体とするものであってもよいが、好ましくは水を媒体とするものである。ウレタン樹脂を水に分散または溶解させるには、乳化剤を用いる強制乳化型、ウレタン樹脂中に親水性基を導入する自己乳化型あるいは水溶型等がある。特に、ウレタン樹脂の骨格中にイオン基を導入しアイオノマー化した自己乳化タイプが、液の貯蔵安定性や得られる塗布層の耐水性、透明性、密着性に優れており好ましい。
【0032】
また、導入するイオン基としては、カルボキシル基、スルホン酸、リン酸、ホスホン酸、第4級アンモニウム塩等、種々のものが挙げられるが、カルボキシル基が好ましい。ウレタン樹脂にカルボキシル基を導入する方法としては、重合反応の各段階の中で種々の方法が取り得る。例えば、プレポリマー合成時に、カルボキシル基を持つ樹脂を共重合成分として用いる方法や、ポリオールやポリイソシアネート、鎖延長剤などの一成分としてカルボキシル基を持つ成分を用いる方法がある。特に、カルボキシル基含有ジオールを用いて、この成分の仕込み量によって所望の量のカルボキシル基を導入する方法が好ましい。例えば、ウレタン樹脂の重合に用いるジオールに対して、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、ビス−(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸等を共重合させることができる。またこのカルボキシル基はアンモニア、アミン、アルカリ金属類、無機アルカリ類等で中和した塩の形にするのが好ましい。特に好ましいものは、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミンである。
本発明におけるポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂は、ガラス転移点(以下、Tgと記載することがある)が好ましくは0℃以下、より好ましくは−15℃以下、さらに好ましくは−30℃以下である。Tgが0℃より高いものは、易接着性が不十分となることがある。ここで言うTgは、ウレタン樹脂の乾燥皮膜を作成し、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定した温度を指す。
【0033】
本発明における塗布層中には、塗布膜の耐久性向上等を目的として、イソシアネート系化合物を含有するのが好ましい。本発明で言うイソシアネート系化合物とは、イソシアネート、あるいはブロックイソシアネートに代表されるイソシアネート誘導体由来の化合物のことである。イソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート等が例示される。これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。上記イソシアネートの中でも、紫外線による黄変を避けるために、芳香族イソシアネートよりも脂肪族イソシアネートまたは脂環族イソシアネートがより好ましい。
【0034】
本発明におけるブロックイソシアネートのブロック剤としては、例えば重亜硫酸塩類、フェノール、クレゾール、エチルフェノールなどのフェノール系化合物、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコール、ベンジルアルコール、メタノール、エタノールなどのアルコール系化合物、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセチルアセトンなどの活性メチレン系化合物、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン系化合物、ε‐カプロラクタム、δ‐バレロラクタムなどのラクタム系化合物、ジフェニルアニリン、アニリン、エチレンイミンなどのアミン系化合物、アセトアニリド、酢酸アミドの酸アミド化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトンオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物が挙げられ、これらは単独でも2種以上の併用であってもよい。
【0035】
また、本発明におけるイソシアネート系化合物は単体で用いてもよいし、各種ポリマーとの混合物や結合物として用いてもよい。イソシアネート系化合物の分散性や架橋性を向上させるという意味において、ウレタン樹脂やポリエステル樹脂との混合物や結合物を使用することが好ましく、さらに密着性をより向上させるという意味において、ウレタン樹脂がより好ましい。
【0036】
滑り性改良やブロッキングを改良するために、塗布層の構成成分として、粒子を含有することが好ましい。粒子の含有量としては、塗布層全体の重量比で、3〜25%の範囲であることが好ましく、5〜15%の範囲であることがより好ましく、5〜10%の範囲であることがさらに好ましい。3%未満の場合、滑り性の付与やブロッキングを防止する効果が不十分となる場合がある。また25%を超える場合、塗布層の透明性低下、塗布層の塗膜強度の低下、あるいは易接着性の低下等が懸念される。
【0037】
用いる粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化金属等の無機粒子、あるいは架橋高分子粒子等の有機粒子等を挙げることができる。特に、塗布層への分散性や得られる塗膜の透明性の観点からは、シリカ粒子が好適である。
【0038】
本発明のフィルムの塗布層には、塗布面状の向上、塗布面上にハードコート層を積層した際の視認性向上、あるいは透明性向上のために上述したウレタン樹脂以外のバインダーポリマーを併用することも可能である。
【0039】
本発明において「バインダーポリマー」とは、高分子化合物安全性評価フロースキーム(昭和60年11月 化学物質審議会主催)に準じて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定による数平均分子量(Mn)が1000以上の高分子化合物で、かつ造膜性を有するものと定義する。
【0040】
バインダーポリマーの具体例としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート構造を有しないウレタン樹脂、ポリビニル(ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体等)、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンイミン、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース、でんぷん類等が挙げられる。
さらに本発明の主旨を損なわない範囲において、塗布層には必要に応じて消泡剤、塗布性改良剤、増粘剤、有機系潤滑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、発泡剤、染料等が含有されてもよい。
【0041】
本発明において、積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層中に占める前記ウレタン樹脂の含有量は、通常5〜90重量%、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは30〜75重量%である。5重量%未満の場合は、ウレタン樹脂成分が少ないことにより密着性が十分でない場合があり、90重量%を超える場合は、イソシアネート系化合物が少ないことで塗布層がもろくなり、密着性が十分でない場合や、耐湿熱性が十分ではない場合がある。
【0042】
本発明において、塗布層中に占める前記イソシアネート系化合物の含有量は、通常5〜90重量%、好ましくは10〜85重量%、より好ましくは20〜70重量%である。5重量%未満の場合は、イソシアネート系化合物が少ないことで塗布層がもろくなり、密着性、あるいは耐湿熱性が不十分な場合があり、一方、90重量%を超える場合は、密着性が低下する場合がある。
【0043】
インラインコーティングによって塗布層を設ける場合は、上述の一連の化合物を水溶液または水分散体として、固形分濃度が0.1〜50重量%程度を目安に調整した塗布液をポリエステルフィルム上に塗布する要領にて積層ポリエステルフィルムを製造するのが好ましい。また、本発明の主旨を損なわない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤は1種類のみでもよく、適宜、2種類以上を使用してもよい。
【0044】
本発明の積層ポリエステルフィルム上に設けられる塗布層の塗布量は、通常0.002〜1.0g/m、より好ましくは0.005〜0.5g/m、さらに好ましくは0.01〜0.2g/mの範囲である。塗布量が0.002g/m未満の場合は十分な密着性が得られない可能性があり、1.0g/mを超える場合は、外観や透明性、フィルムのブロッキング性が悪化する可能性がある。
【0045】
本発明において、塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0046】
本発明において、ポリエステルフィルム上に塗布層を形成する際の乾燥および硬化条件に関しては特に限定されるわけではなく、例えば、オフラインコーティングにより塗布層を設ける場合、通常、80〜200℃で3〜40秒間、好ましくは100〜180℃で3〜40秒間を目安として熱処理を行うのが良い。
【0047】
また、本発明の要旨を越えない範囲において、水への分散性改良、造膜性改良等を目的として、塗布液中には少量の有機溶剤を含有していてもよい。有機溶剤としては、n−ブチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルアルコール、メチルアルコール等の脂肪族または脂環族アルコール類、プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類、n−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール誘導体、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸エチル、酢酸アミル等のエステル類、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。有機溶剤は一種類のみでもよく、適宜、二種類以上を使用してもよい。
【0048】
本発明における積層ポリエステルフィルムを構成する塗布層の塗布量(乾燥後)は通常、0.005〜0.1g/m、好ましくは0.005〜0.05g/m、さらに好ましくは0.005〜0.01g/mの範囲である。塗布量が0.005g/m未満の場合には、塗布厚みの均一性が不十分な場合があり、離型層塗設時、塗布層が溶剤により、溶出する場合がある。一方、0.1g/mを超えて塗布する場合には、塗布面状が悪化する等の不具合を生じる場合がある。
【0049】
本発明において、ポリエステルフィルム上に各塗布層を設ける方法はリバースグラビアコート、ダイレクトグラビアコート、ロールコート、ダイコート、バーコート、カーテンコート、スプレーコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。塗工方式に関しては「コーティング方式」槇書店 原崎勇次著 1979年発行に記載例がある。
【0050】
本発明の積層ポリエステルフィルムのフィルムヘーズは2%以下である必要があり、好ましくは、1.5%以下、さらに好ましくは0.9%以下である。フィルムヘーズが2%を超えると、拡散・プリズム・タッチパネル部材などの光学用途における透明性に欠け、高度な透明性を必要とする用途に不適当となる。
【0051】
本発明における積層ポリエステルフィルムにおいては、光学くし幅0.125mmにおける写像性透過率が90%以上であることを追加的要件として、同時に満足するのが好ましい。当該写像性透過率に関して、好ましくは92%以上、さらに好ましくは94%以上である。写像性透過率が90%未満の場合には、より高度な像鮮明性が必要とされるディスプレイ用保護シートやタッチパネル用部材等の光学用部材として、不適となる場合がある。
【0052】
本発明の積層ポリエステルフィルムにおいて、中間層は実質的に粒子を含有しないことが好ましい。本発明で言う、実質的に粒子を含有しないとは、具体的には、粒子の含有量が100ppm以下のことを指す。中間層への粒子添加量が100ppmを越える場合には、延伸条件によっては粒子周囲にボイドが形成され、所望する透明性を確保するのが困難な場合がある。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない 限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0054】
(1)ポリエステルの固有粘度の測定方法
ポリエステル1gを精秤し、フェノール/テトラクロロエタン=50/50(重量比)の混合溶媒100mlを加えて溶解させ、30℃で測定した。
【0055】
(2)平均粒径(d50:μm)の測定方法
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0056】
(3)積層ポリエステルフィルムのフィルムヘーズ(H0)の測定
試料フィルムをJIS−K−7136に準じ、村上色彩研究所製「HM−150」により、フィルムヘーズを測定し、下記基準で透明性の評価基準とした。
(判定基準)
○:フィルムヘーズが1.0%以下
×:フィルムヘーズが1.0%を超える
【0057】
(4)ガラス転移点の測定
ウレタン樹脂の水分散液をシャーレ内で乾燥させて樹脂皮膜を得た。得られた皮膜をNETZSCH社製DSC 204F Phoenixを用いて、−100℃〜100℃の温度範囲で、10℃/分の速度で昇温させてDSCチャートを測定し、さらに熱容量の変化からガラス転移点を測定した。
【0058】
(5)厚み(μm)測定
試料フィルムをエポキシ樹脂にて包埋し、ウルトラミクロトームでセクショニングを行い、得られた薄片を走査型電子顕微鏡にて断面観察を行う。粒子が密集する領域を表層として厚みを測定し、全体の厚みから各表層の厚みを減じたものを中間層の厚みとする。
【0059】
(6)塗布層の密着性評価
試料フィルムの塗布層上に、下記に示す活性エネルギー線硬化樹脂組成物を硬化後の厚さが3μmになるように塗布し、紫外線照射装置から紫外線を水銀ランプ80Wで25mJ/cm照射して樹脂を硬化させ<ポリエステルフィルム/塗布層/活性エネルギー線硬化樹脂層>という構成の積層フィルムを得た。次にカッターナイフで5mm間隔にキズをつけて、24mm幅のテープ(ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)CT−24)を貼り付け、180度の剥離角度で急激にはがした後、剥離面を観察し、下記判定基準により、判定を行った。
(活性エネルギー線硬化樹脂組成物):
日本化薬製 KARAYAD DPHAを80部、日本化薬製 KARAYAD R‐128Hを20部、チバスペシャリティケミカルズ製IRGACURE651を5部からなる組成物。
(判定基準)
◎:剥離面積が5%以下
○:剥離面積が5〜20%
△:剥離面積が20%を超えて、50%以下
×:50%を超える
【0060】
(7)耐擦傷性評価
大平理化工業製のラビングテスターを用いて、JIS K6718に規定された、厚み2mmのメタクリル樹脂板を往復運動するプレートに両面粘着テープで固定する。次に5cm×5cmのガーゼを24枚重ねクッションとした、試料フィルムを貼り付けたプレートをおく。次にプレートを含めた治具の自重50gの荷重がかかった状態で試料フィルムとメタクリル板とがこすられる状態で10回往復運動をさせる。その後、試料フィルム表面の傷発生状況を蛍光灯下で目視観察する。1試料につき3回試験を行い、試料フィルムのフィルム面に入った傷本数の平均値を求め、下記判定基準により判定を行った。
(判定基準)
○:傷の本数が5本以下であり、傷つき防止性に優れる(実用上、問題ないレベル)
△:傷の本数が3本を超え10本 以下であり、傷付き防止性がやや良い(実用上、問題になる場合があるレベル)
×:傷の本数が10本を超え無数にある、傷付き防止性が不良(実用上、問題になるレベル)
【0061】
(8)写像性(像鮮明性)
スガ試験機社製ICM−1T型写像性測定器を用いて、JIS K 7105「プラスチックの光学的特性試験方法」像鮮明度に準拠して透過法により測定した。なお、光学くしは0.125mmを使用した。本評価における写像性測定値が大きいほど、粒子感がより少ない積層ポリエステルフィルムとなり、像鮮明性が良好な傾向にある。
【0062】
(9)総合評価
得られた試料フィルムにつき、下記判定基準により、総合判定評価を行った。
○:透明性、耐擦傷性、ハードコート層に対する接着性の全てが○
△:透明性、耐擦傷性、ハードコート層に対する接着性の少なくとも一つの項目が△
×:透明性、耐擦傷性、ハードコート層に対する接着性の少なくとも一つの項目が×
上記判定基準中、△以上が実用上、問題なく使用できるレベルである。
【0063】
実施例および比較例において使用したポリエステルは、以下のようにして準備したものである。
<ポリエステル(A)の製造方法>
テレフタル酸ジメチル100重量部とエチレングリコール60重量部とを出発原料とし、触媒として酢酸マグネシウム・四水塩0.09重量部を反応器にとり、反応開始温度を150℃とし、メタノールの留去とともに徐々に反応温度を上昇させ、3時間後に230℃とした。4時間後、実質的にエステル交換反応を終了させた。この反応混合物にエチルアシッドフォスフェート0.04部を添加した後、三酸化アンチモン0.04部を加えて、4時間重縮合反応を行った。すなわち、温度を230℃から徐々に昇温し280℃とした。一方、圧力は常圧より徐々に減じ、最終的には0.3mmHgとした。反応開始後、反応槽の攪拌動力の変化により、極限粘度0.63に相当する時点で反応を停止し、窒素加圧下ポリマーを吐出させた。得られたポリエステル(A)の極限粘度は0.63であった。
【0064】
<ポリエステル(B)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた平均粒子径1.6μmのシリカ粒子を0.3部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル (B)を得た。得られたポリエステル(B)は、極限粘度0.65であった。
【0065】
<ポリエステル(C)の製造方法>
ポリエステル(A)の製造方法において、エチルアシッドフォスフェート0.04部を添加後、エチレングリコールに分散させた1次粒径0.05μmのアルミナ(モース硬度8)を0.5部、三酸化アンチモン0.04部を加えて、極限粘度0.65に相当する時点で重縮合反応を停止した以外は、ポリエステル(A)の製造方法と同様の方法を用いてポリエステル(C)を得た。得られたポリエステル(C)は、極限粘度0.65であった。
【0066】
実施例1:
ポリエステル(A)、(C)をそれぞれ90%、10%の割合で混合した混合原料を最外層(表層)の原料とし、ポリエステル(A)を中間層の原料として、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後、40℃に設定した冷却ロール上に、2種3層(表層/中間層/表層)の層構成で共押出しし、冷却固化させて未延伸シートを得た。次いで、ロール周速差を利用してフィルム温度85℃で縦方向に3.4倍延伸した後、下記塗布剤組成からなる塗布層を塗工量(乾燥後)が所定量となるように、フィルム両面に塗布した後に、テンターに導き、横方向に120℃で4.0倍延伸し、225℃で熱処理を行った後、横方向に2%弛緩し、厚さ125μm(表層7μm、中間層111μm)の、厚み0.03μm(乾燥後)の塗布層が設けられた積層ポリエステルフィルムを得た。なお、塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。
【0067】
塗布層を構成する化合物例は以下のとおりである。ただし文中「部」とあるのは、樹脂固形分での重量比を表す。
・U1:ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂
1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートからなる数平均分子量が2000のポリカーボネートポリオール400部、ネオペンチルグリコール10.4部、シクロヘキサンジイソシアネート58.4部、ジメチロールブタン酸74.3部からなるプレポリマーをトリエチルアミンで中和し、イソホロンジアミンで鎖延長して得られる、Tgが−30℃のポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂の水分散体
【0068】
・U2:ポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂
1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートからなる数平均分子量が2000のポリカーボネートポリオール400部、ブタンジオール14部、ペンタエチレングリコール15部、イソホロンジイソシアネート100部、ジメチロールプロピオン酸75部からなるウレタン樹脂をトリエチルアミンで中和した、Tgが−3℃のポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂の水分散体
【0069】
・C1:イソシアネート系化合物
ヘキサメチレンジイソシアネートトリマー158部、数平均分子量が1400のメトキシポリエチレングリコール26部からなるポリイソシアネートのイソシアネート基を、メチルエチルケトンオキシム66部でブロックして得られるブロックイソシアネートと、1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートからなる数平均分子量が2000のポリカーボネートポリオール115部、トリメチロールプロパン1部、イソホロンジイソシアネート40部、ジメチロールプロピオン酸8部からなるプレポリマーをトリエチルアミンで中和し、ジエチレントリアミンで鎖延長して得られるウレタン樹脂を含有する、水性ブロックイソシアネート系化合物
【0070】
・C2:イソシアネート系化合物
ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物とマレイン酸からなる数平均分子量2000のポリエステル200部と、ヘキサメチレンジイソシアネート33.6部からなるポリイソシアネートのイソシアネート基を30%重亜硫酸ナトリウム84部でブロックして得られる、ポリエステル樹脂含有ブロックイソシアネート系化合物
【0071】
・C3:オキサゾリン化合物
オキサゾリン基がアクリル系樹脂にブランチされたポリマー型架橋剤(日本触媒社製、WS‐500)
・C4:メラミン化合物
メトキシメチロールメラミン
・F1:粒子
粒径65nmのシリカゾル。
【0072】
実施例2〜5および比較例1〜2:
下記表1〜3に示す条件にて製造し、積層ポリエステルフィルムを得た。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、例えば、ハードコート層を設けて使用される用途において好適に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも3層のポリエステル層から構成される積層ポリエステルフィルムからなり、一方のフィルム表面にポリカーボネート構造を有するウレタン樹脂を含む塗布層を有し、フィルムヘーズが2%以下であることを特徴とする光学用積層ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−166357(P2012−166357A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26797(P2011−26797)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】