積層体、粘着ラベル、記録媒体、ラベル付き物品及び判別方法
【課題】真正品と非真正品との判別に用いるラベルの偽造を難しくすること。
【解決手段】本発明の識別用積層体10は、
複屈折性の第1光透過性層と前記第1光透過性層とは光学特性が異なる第2光透過性層とを交互に積層してなる反射型偏光層11と、前記偏光層11の前面の一部と向き合った第1部分12aと前記偏光層11の前記前面の他の一部と向き合い且つ前記第1部分12aとは遅相軸の方向が異なる第2部分12bとを含んだ複屈折性層12とを具備したことを特徴とする。
【解決手段】本発明の識別用積層体10は、
複屈折性の第1光透過性層と前記第1光透過性層とは光学特性が異なる第2光透過性層とを交互に積層してなる反射型偏光層11と、前記偏光層11の前面の一部と向き合った第1部分12aと前記偏光層11の前記前面の他の一部と向き合い且つ前記第1部分12aとは遅相軸の方向が異なる第2部分12bとを含んだ複屈折性層12とを具備したことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を真正品と非真正品との間で判別する判別技術に関する。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証媒体並びに商品券及び株券などの有価証券媒体には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、従来から、そのような媒体には、その偽造を抑止すべく、偽造が困難なラベルが貼り付けられている。
【0003】
また、近年では、認証媒体及び有価証券媒体以外の物品についても、偽造品の流通が問題視されている。そのため、このような物品に、認証媒体及び有価証券媒体に関して上述した偽造防止技術を適用する機会が増えている。
【0004】
偽造防止技術は、オバート技術とコバート技術とに分類することができる。
オバート技術は、一般のユーザが物品への適用を容易に認めることができ且つ容易に真偽判定をすることができる偽造防止技術である。代表的なオバート技術では、ホログラムなどの回折構造又はOptically Variable Ink(OVI)などの多層干渉膜を利用する。
【0005】
コバート技術は、物品への適用が一般のユーザに分かり難く、物品へのコバート技術の適用を知っている特定のユーザのみが真偽判定できることを狙った偽造防止技術である。代表的なコバート技術では、蛍光印刷又は万線モアレを利用する。
【0006】
特許文献1には、オバート技術とコバート技術との双方を利用した偽造防止技術が記載されている。この偽造防止技術では、例えば、複屈折性の第1光透過性層とこれとは光学特性が異なる第2光透過性層とを交互に積層してなる多層膜を含んだラベルを使用する。この多層膜において、第1光透過性層と第2光透過性層とは、第1光透過性層の主面に垂直な第1平面内の第1方向についての屈折率が等しく、先の主面と第1平面とに垂直な第2平面内の第2方向についての屈折率が異なっている。したがって、第1光透過性層と第2光透過性層との界面は、偏光面(電場ベクトルの振動面)が第1平面に平行な直線偏光を反射せず、偏光面が第2平面に平行な直線偏光の一部を反射する。それゆえ、直線偏光子を介してこの多層膜を観察した場合、直線偏光子の透過軸の方位に応じて多層膜の明るさが変化する。また、この多層膜は、偏光子を介することなく観察した場合に、観察方向と多層膜の法線とがなす角度を大きくすることによりブルーシフトを生じる。すなわち、干渉色が短波長側にシフトする。これらの光学的特徴を利用して、真正品と非真正品とを判別する。
【0007】
この偽像防止技術で使用するラベルは、低コスト及び高耐久性を達成可能である。しかしながら、上述した光学的特徴は、上記の多層膜を使用しなくても再現できる。例えば、一般的なカラーシフトフィルムと吸収型偏光層との積層体で先の光学的特徴を再現することができる。そのため、このラベルは、偽造が比較的容易である。
【特許文献1】特開2004−354430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、真正品と非真正品との判別に用いるラベルの偽造を難しくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1側面によると、複屈折性の第1光透過性層と前記第1光透過性層とは光学特性が異なる第2光透過性層とを交互に積層してなる反射型偏光層と、前記偏光層の前面の一部と向き合った第1部分と前記偏光層の前記前面の他の一部と向き合い且つ前記第1部分とは遅相軸の方向が異なる第2部分とを含んだ複屈折性層とを具備したことを特徴とする識別用積層体が提供される。
【0010】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る積層体と、前記積層体の背面に支持された粘着層とを具備したことを特徴とする粘着ラベルが提供される。
【0011】
本発明の第3側面によると、紙と、前記紙の一方の主面に支持された粘着層と、背面が前記粘着層と向き合うように前記紙の中に埋め込まれた第1側面に係る積層体とを具備したことを特徴とする粘着ラベルが提供される。
【0012】
本発明の第4側面によると、紙と、前記紙の中に埋め込まれた第1側面に係る積層体とを具備したことを特徴とする記録媒体が提供される。
【0013】
本発明の第5側面によると、真正さが確認されるべき物品と、前記真正さが確認されるべき物品に支持された第1側面に係る積層体とを具備したことを特徴とするラベル付き物品が提供される。
【0014】
本発明の第6側面によると、真正さが未知の物品を真正品と非真正品との間で判別する方法であって、前記真正品は第5側面に係るラベル付き物品であり、前記真正さが未知の物品が、偏光子を介して観察することにより可視化する潜像を保持し且つ前記偏光子を介することなく観察した場合に観察方向と前記偏光層の法線とがなす角度を大きくすることによりブルーシフトを生じる領域を含んでいない場合に、前記真正さが未知の物品は非真正品であると判断することを含んだことを特徴とする方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、真正品と非真正品との判別に用いるラベルの偽造を難しくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の一態様に係る識別用積層体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す積層体のII−II線に沿った断面図である。図3及び図4は、図1及び図2に示す積層体が含む反射型偏光層を概略的に示す斜視図である。図5は、図3及び図4に示す反射型偏光層の一部を概略的に示す断面図である。図6は、図3及び図4に示す反射型偏光層の一部を概略的に示す分解斜視図である。
【0018】
この識別用積層体10は、図2に示すように、反射型偏光層11と配向膜17と複屈折性層12と光吸収層13aとオーバーコート層14とを含んでいる。
【0019】
ここで、用語「偏光層」は、特別な記載がない限り、直線偏光子として機能する層を意味することとする。また、用語「偏光子」は、「直線偏光子」、「楕円偏光子」及び「円偏光子」を包含し、形状の概念は含まないこととする。
【0020】
反射型偏光層11は、入射光としての直線偏光の偏光面を回転させたときに反射率が変化する層である。反射型偏光層11は、図3に示すように、反射型偏光層11の透過軸ATと入射光としての直線偏光LLPの偏光面とが平行である場合、理想的には直線偏光LLPを反射することなく透過させる。直線偏光LLPの偏光面が透過軸ATに対してなす角度を大きくすると、反射型偏光層11によって反射される光成分が増加する。そして、図4に示すように、直線偏光LLPの偏光面と透過軸ATとが直交する場合に、反射型偏光層11は最も多くの光成分を反射する。
【0021】
この反射型偏光層11は、図5に示すように、第1光透過性層11aと第2光透過性層11bとを交互に積層した構造を有している。反射型偏光層11が含む第1光透過性層11aの数及び第2光透過性層11bの数を多くすると、上述した反射率の変化が大きくなる。但し、これらの数を多くすると、反射型偏光層11が厚くなる。典型的には、第1光透過性層11aの数と第2光透過性層11bの数との和は、例えば2乃至1000の範囲内とし、典型的には100乃至500の範囲内とする。
【0022】
第1光透過性層11aは、複屈折性を有している。第1光透過性層11aは、それらの遅相軸がほぼ平行となるように配置されている。
【0023】
第2光透過性層11bは、第1光透過性層11aとは光学特性が異なっている。第2光透過性層11bは、光学的に等方性であってもよく、或いは、複屈折性を有していてもよい。第2光透過性層11bは、それらが複屈折性を有している場合、それらの遅相軸がほぼ平行となるように配置する。
【0024】
この反射型偏光層11に法線方向から入射する第1直線偏光について、第1光透過性層11aが示す屈折率na1と第2光透過性層11bが示す屈折率nb1とはほぼ等しい。それゆえ、第1光透過性層11aと第2光透過性層11bとの各界面は、第1直線偏光を透過させる。また、反射型偏光層11に法線方向から入射し且つ第1直線偏光の偏光面に対して垂直な偏光面を有する第2直線偏光について、第1光透過性層11aが示す屈折率na2と第2光透過性層11bが示す屈折率nb2とは異なっている。それゆえ、第1光透過性層11aと第2光透過性層11bとの各界面は、第2直線偏光の一部を反射する。このような理由で、反射型偏光層11は、図6に示す透過軸ATに平行な偏光面を有する第1直線偏光を透過させ、図6に示す反射軸ARに平行な偏光面を有する第2直線偏光を反射する。
【0025】
屈折率na1と屈折率nb1との差の絶対値は、屈折率na2と屈折率nb2との差の絶対値よりも小さくし、典型的にはほぼゼロとする。この絶対値を小さくすると、第1光透過性層11aと第2光透過性層11bとの各界面の第1直線偏光についての反射率が小さくなる。
【0026】
屈折率na2と屈折率nb2との差の絶対値は、例えば0.03以上とし、典型的には0.05以上とする。この絶対値を大きくすると、第1光透過性層11aと第2光透過性層11bとの各界面の第2直線偏光についての反射率が大きくなる。
【0027】
第1光透過性層11aとしては、例えば、一軸延伸又は二軸延伸により複屈折性を与えた延伸フィルムを使用することができる。延伸フィルムの材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂などを使用することができる。第1光透過性層11aとして、複屈折性の無機物層を使用してもよい。但し、延伸フィルムを使用すると、屈折率na1及びna2の調節が容易である。例えば、ポリ塩化ビニルフィルムは、延伸することにより屈折率が大きくなる。ポリメタクリル酸メチルフィルムは、延伸することにより屈折率が小さくなる。そして、延伸フィルムの屈折率は、延伸倍率及び/又は延伸温度に応じて変化する。
【0028】
第2光透過性層11bとしては、例えば、延伸フィルムを使用することができる。延伸フィルムの材料としては、例えば、第1光透過性層11aに関して例示したのと同様の材料を使用することができる。第2光透過性層11bとして、複屈折性の又は光学的に等方性の無機物層を使用してもよい。但し、第1光透過性層11aとして延伸フィルムを使用する場合、第2光透過性層11bとして延伸フィルムを使用すると、反射型偏光層11を容易に製造することができる。すなわち、材料が互いに異なる第1及び第2フィルムを交互に積層してなる積層フィルムを準備し、この積層フィルムを一軸又は二軸延伸する。第1及び第2フィルムに適当な材料を使用し、延伸倍率及び延伸温度を適宜設定することにより、上述した光学特性を有する反射型偏光層11を得ることができる。
【0029】
第1光透過性層11a及び第2光透過性層11bの光学的厚さは、例えば、0.09μm乃至0.70μmの範囲内とする。例えば、光学的厚さを0.38μmに設定すると青紫色に見え、光学的厚さを0.68μmに設定すると赤色に見えるようになる。また、このような反射型偏光層11は、偏光子を介することなく観察した場合に、観察方向と反射型偏光層11の法線とがなす角度を大きくすることによりブルーシフトを生じる。すなわち、干渉色が短波長側にシフトする。
【0030】
配向膜17は、複屈折性層12に液晶材料を使用する場合、そのメソゲン基の配向を制御するのに利用する。複屈折性層12を反射型偏光層11上に形成する場合、配向膜17は、図2に示すように、配向膜17は反射型偏光層11と複屈折性層12の間に位置させる。この場合、配向膜17は、反射型偏光層11の前面と直接に接触していてもよい。或いは、配向膜17と反射型偏光層11との間には、透明層が介在していてもよい。また、配向膜17は、省略してもよい。
【0031】
配向膜17は、面内方向に隣り合う第1配向部17aと第2配向部17bとを含んでいる。第1配向部17aと第2配向部17bとには、複屈折性層12を形成する前に、例えば光配向法又はラビング法を利用した配向処理を施してある。第1配向部17aと第2配向部17bとでは、液晶材料のメソゲン基を配向させる方向(以下、配向方向という)が異なっている。
【0032】
光配向法では、膜に偏光などの異方性を有する光を照射して、膜内の分子の再配列又は化学反応を誘起する。例えば、アゾベンゼン誘導体の光異性化、桂皮酸エステル、クマリン、カルコン、及びベンゾフェノンなどの誘導体の光二量化又は架橋、並びにポリイミドなどの光分解を生じさせる。これにより、その膜に異方性を付与する。
【0033】
ラビング法では、ポリイミド層及びポリビニルアルコール層などのポリマー層を形成し、その表面をラビング布で擦る。液晶材料のメソゲン基は、ラビング布で擦った方向,すなわち、ラビング方向,に配向する。
【0034】
光配向法を利用する場合、配向膜17は、例えば以下の方法により形成することができる。まず、上記の材料からなる膜を形成する。この膜は、例えば、グラビアコーティング法又はマイクログラビアコーティング法を利用して形成することができる。次いで、その膜の一部を、直線偏光で露光する。その後、先の膜の他の一部を、偏光面(電場ベクトルの振動面)が異なる直線偏光で露光する。これにより、配向方向が互いに異なる第1配向部17aと第2配向部17bとを含んだ配向膜17が得られる。
【0035】
光配向法を利用する場合、配向膜17は、他の方法で形成することもできる。まず、上記の材料からなる膜を形成し、その膜の一部を斜め方向から自然光で露光する。次いで、光照射方向を膜面法線の周りで回転させ、その膜の他の一部を斜め方向から自然光で露光する。これにより、配向方向が互いに異なる第1配向部17aと第2配向部17bとを含んだ配向膜17が得られる。
【0036】
ラビング法を利用する場合、配向膜17は、例えば以下の方法により形成することができる。まず、ポリマー膜を形成する。ポリマー膜は、例えば、グラビアコーティング法又はマイクログラビアコーティング法を利用して形成することができる。次いで、ポリマー膜の全面を、ラビング布で一方向に擦る。次いで、ポリマー膜上にマスクを設置し、これをラビング布で別の方向に擦る。その後、ポリマー膜からマスクを取り除くことにより、配向方向が互いに異なる第1配向部17aと第2配向部17bとを含んだ配向膜17が得られる。
【0037】
複屈折性層12は、面内方向に隣り合う第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bを含んでいる。第1複屈折性部12aは、第1配向部17aを間に挟んで反射型偏光層11の前面の一部と向き合っている。第2複屈折性部12bは、第2配向部17bを間に挟んで反射型偏光層11の前面の他の一部と向き合っている。
【0038】
第1複屈折性部12aは、面内でほぼ一様な光学特性を有している。同様に、第2複屈折性部12bも、面内でほぼ一様な光学特性を有している。第1複屈折性部12aと第2複屈折性部12bとは、遅相軸の方向が異なっている。
【0039】
例えば、第1複屈折性部12aと第2複屈折性部12bとは、それらの遅相軸が直交するように配置する。この場合、第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bの各々は、四分の一波長板であってもよい。この構造を採用した場合、反射型偏光層11と複屈折性層12とは、反射型偏光層11の透過軸ATが第1複屈折性部12aの遅相軸と第2複屈折性部12bの遅相軸との各々に対して斜めになるように配置する。例えば、反射型偏光層11の透過軸ATが第1複屈折性部12aの遅相軸と第2複屈折性部12bの遅相軸との各々に対してなす角度を約45°とする。
【0040】
或いは、第1複屈折性部12aと第2複屈折性部12bとは、それらの遅相軸が45°の角度をなすように配置してもよい。この場合、第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bの各々は、半波長板であってもよい。この構造を採用した場合、反射型偏光層11の透過軸ATが第1複屈折性部12aの遅相軸と第2複屈折性部12bの遅相軸との各々に対してなす角度は任意である。
【0041】
なお、積層体10は、通常、可視光のうち、特に波長が400nm乃至700nmの範囲内の光を考慮して設計する。それゆえ、通常、四分の一波長板としては、先の範囲内の少なくとも1つの波長λでλ/4のリターデイションを与えるものを使用する。また、通常、半波長板としては、先の範囲内の少なくとも1つの波長λでλ/2のリターデイションを与えるものを使用する。
【0042】
積層体10の前面は、第1複屈折性部12aに対応した領域AA1と、第2複屈折性部12bに対応した領域AA2とを含んでいる。領域AA1及びAA2の各々は、互いからの判別が困難な潜像を形成している。すなわち、偏光子を使用することなしに積層体10の前面を直接に観察した場合、領域AA1と領域AA2との相違を見出すことは難しい。偏光子を介して積層体10の前面を観察すると、領域AA1と領域AA2との間に明るさの相違を生じる。これにより、潜像が可視化する。
【0043】
第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bの各々としては、例えば、複屈折性の延伸フィルムを使用することができる。この場合、配向膜17は、省略してもよい。延伸フィルムとしては、例えば、一軸又は二軸延伸したポリオレフィンフィルム及びポリエステルフィルムを使用することができる。
【0044】
第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bの材料として、液晶材料を使用してもよい。この液晶材料としては、例えば、積層体10の使用温度域で固体であり且つネマチック相又はスメクチック相を呈する液晶材料,典型的には高分子液晶材料,を使用することができる。この場合、例えば、配向方向が互いに異なる複数の部分17a及び17bを含んだ配向膜17を形成し、この配向膜17上に低分子量の液晶材料からなる薄膜パターンを形成し、この液晶材料の重合を生じさせることにより、第1複屈折性部12aと第2複屈折性部12bとを含んだ複屈折性層12を得ることができる。
【0045】
光吸収層13aは、反射型偏光層11の背面と向き合っている。光吸収層13aは、反射型偏光層11の背面全体と向き合っていてもよく、その一部のみと向き合っていてもよい。また、光吸収層13aは、省略してもよい。
【0046】
光吸収層13aは、反射型偏光層11の背面と直接に接触していてもよい。或いは、光吸収層13aと反射型偏光層11との間には、透明層が介在していてもよい。
【0047】
光吸収層13aは、例えば、顔料及び/又は染料と樹脂とを含有したインキを反射型偏光層11の背面に塗布することにより得られる。或いは、光吸収層13aは、先のインキを基材上に塗布することにより得られる。この場合、光吸収層13aは、基材と共に反射型偏光層11の背面に貼り付けることができる。
【0048】
光吸収層13aは、黒色であってもよく、他の色であってもよい。光吸収層13aは、色が互いに異なると共に面内方向に並んだ複数の部分を含んでいてもよい。
【0049】
光吸収層13aを黒色とした場合、潜像を可視化していないときには、領域AA1及びAA2の色は、反射型偏光層11の光反射に起因した白色である。そして、潜像を可視化すると、領域AA1及びAA2の一方では黒色への変化を生じる。光吸収層13aを黒色とすると、潜像を可視化したときに、これら領域のコントラスト比が最大となる。
【0050】
可視光の一部のみを吸収し且つ他の一部を反射する光吸収層13aを使用した場合、潜像を可視化していないときには、領域AA1及びAA2の色は、反射型偏光層11による反射に起因した白色と光吸収層13aによる反射に起因した色との加法混色によって生じる色である。そして、潜像を可視化すると、領域AA1及びAA2の一方では光吸収層13aによる反射に起因した着色光の強度が弱くなり、他方では反射型偏光層11による反射に起因した白色光の強度が弱くなる。
【0051】
オーバーコート層14は、複屈折性層12を被覆している。オーバーコート層14は、光学的に等方性の透明層,典型的には透明樹脂層,である。オーバーコート層14は、複屈折性層12が凹凸表面を有している場合、これを平坦化する役割を果たす。これにより、複屈折性層12及び配向膜17の存在を分かり難くする。オーバーコート層14は、省略してもよい。
【0052】
オーバーコート層14は、例えば、複屈折性層12に透明な印刷インキを塗布することにより得られる。印刷インキの塗布には、例えば、グラビア及びマイクログラビアなどのコーティング法を利用することができる。
【0053】
次に、潜像の可視化について説明する。
図7は、図1及び図2に示す積層体が保持している潜像を可視化する方法の一例を概略的に示す図である。
【0054】
図7に示す積層体10は、第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bとして半波長板を含んでいる。この積層体10において、第1複屈折性部12aの遅相軸ASと第2複屈折性部12bの遅相軸ASとがなす角度は45°である。そして、第1複屈折性部12aの遅相軸ASと反射型偏光層11の反射軸ARとがなす角度は45°であり、第2複屈折性部12bの遅相軸ASと反射型偏光層11の反射軸ARとは平行である。
【0055】
図7に示す方法では、積層体10の前面に自然光を照射しながら、検証具200を介して積層体10の前面を観察する。ここでは、一例として、検証具200として、延伸したポリビニルアルコール層に沃素を含浸させてなる偏光層のような吸収型偏光層を使用する。また、この方法では、積層体10と光源300と観察者400とを、積層体10が光源300からの光を鏡面反射した場合に観察者400が反射光を観察できるように、及び、検証具200の透過軸AT’が反射型偏光層11の反射軸ARに対して垂直となるように配置する。
【0056】
光源300からの自然光LNは、複屈折性層12に入射する。複屈折性層12は、この自然光LNを透過させる。
【0057】
複屈折性層12から出射した自然光LNは、反射型偏光層11に入射する。反射型偏光層11は、この自然光LNのうち、偏光面が透過軸ATに平行な第1直線偏光LL1を透過させ、偏光面が反射軸ARに平行な第2直線偏光LL2を反射する。
【0058】
反射型偏光層11を透過した第1直線偏光LL1は、光吸収層13aに入射する。光吸収層13aは、この第1直線偏光LL1を吸収する。
【0059】
反射型偏光層11によって反射された第2直線偏光LL2は、複屈折性層12の第1複屈折性部12a又は第2複屈折性部12bに入射する。第1複屈折性部12aは、第2直線偏光LL2を第1直線偏光LL1へと変換する。第2複屈折性部12bは、第2直線偏光LL2を、その偏光面を回転させることなく透過させる。
【0060】
複屈折性層12から出射した第1直線偏光LL1及び第2直線偏光LL2は、検証具200に入射する。検証具200は、理想的には、第1直線偏光LL1を吸収することなく透過させ、第2直線偏光LL2を吸収する。
【0061】
すなわち、検証具200は、積層体10のうち第1複屈折性部12aに対応した部分からの反射光を透過させ、積層体10のうち第2複屈折性部12bに対応した部分からの反射光を吸収する。したがって、観察者400は、第1複屈折性部12aに対応した第1領域AA1を明部として知覚し、第2複屈折性部12bに対応した第2領域AA2を暗部として知覚する。以上のようにして、潜像を可視化することができる。
【0062】
なお、検証具200の透過軸AT’が反射型偏光層11の反射軸ARに対してなす角度を変化させると、明部及び暗部の位置が入れ替わる。例えば、透過軸AT’を反射軸ARに対して平行とした場合、明部及び暗部の位置は、図7を参照しながら説明したのとは逆になる。
【0063】
図8は、図1及び図2に示す積層体が保持している潜像を可視化する方法の他の例を概略的に示す図である。
【0064】
図8に示す積層体10は、第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bとして四分の一波長板を含んでいる。この積層体10において、第1複屈折性部12aの遅相軸ASと第2複屈折性部12bの遅相軸ASとがなす角度は90°である。そして、第1複屈折性部12aの遅相軸ASの方向は、前面側から見た場合に、反射型偏光層11の反射軸ARに平行な方向から時計回りに45°回転させた方向である。また、第2複屈折性部12bの遅相軸ASの方向は、前面側から見た場合に、反射型偏光層11の反射軸ARに平行な方向から反時計回りに45°回転させた方向である。
【0065】
図8に示す方法では、積層体10の前面に自然光を照射しながら、検証具200を介して積層体10の前面を観察する。ここでは、一例として、検証具200として、吸収型偏光層201と四分の一波長板202との積層体を使用する。この検証具200を吸収型偏光層201側から見た場合、偏光層201の透過軸AT’の方向は、四分の一波長板202の遅相軸AS’に平行な方向から反時計回りに45°回転させた方向である。すなわち、この検証具200は、左円偏光子である。この方法では、検証具200と積層体10とを、四分の一波長板202が検証具200の前面と向き合うように配置する。また、この方法では、積層体10と光源300と観察者400とを、積層体10が光源300からの光を鏡面反射した場合に観察者400が反射光を観察できるように、及び、偏光層201の透過軸AT’が反射型偏光層11の反射軸ARに対して垂直となるように配置する。
【0066】
光源300からの自然光LNは、複屈折性層12に入射する。複屈折性層12は、この自然光LNを透過させる。
【0067】
複屈折性層12から出射した自然光LNは、反射型偏光層11に入射する。反射型偏光層11は、この自然光LNのうち、偏光面が透過軸ATに平行な第1直線偏光LL1を透過させ、偏光面が反射軸ARに平行な第2直線偏光LL2を反射する。
【0068】
反射型偏光層11を透過した第1直線偏光LL1は、光吸収層13aに入射する。光吸収層13aは、この第1直線偏光LL1を吸収する。
【0069】
反射型偏光層11によって反射された第2直線偏光LL2は、複屈折性層12の第1複屈折性部12a又は第2複屈折性部12bに入射する。第1複屈折性部12aは、第2直線偏光LL2を右円偏光LRCへと変換する。第2複屈折性部12bは、第2直線偏光LL2を左円偏光LLCへと変換する。
【0070】
複屈折性層12から出射した右円偏光LRC及び左円偏光LLCは、四分の一波長板202に入射する。四分の一波長板202は、右円偏光LRCを第2直線偏光LL2へと変換し、左円偏光LLCを第1直線偏光LL1へと変換する。
【0071】
四分の一波長板202から出射した第1直線偏光LL1及び第2直線偏光LL2は、偏光層201に入射する。偏光層201は、理想的には、第1直線偏光LL1を吸収することなく透過させ、第2直線偏光LL2を吸収する。
【0072】
すなわち、検証具200は、積層体10のうち第1複屈折性部12aに対応した部分からの反射光を吸収し、積層体10のうち第2複屈折性部12bに対応した部分からの反射光を透過させる。したがって、観察者400は、第1複屈折性部12aに対応した第1領域AA1を暗部として知覚し、第2複屈折性部12bに対応した第2領域AA2を明部として知覚する。以上のようにして、潜像を可視化することができる。
【0073】
なお、この方法では、偏光層201の透過軸AT’が反射型偏光層11の反射軸ARに対してなす角度を変化させても、明部及び暗部の位置は入れ替わらない。但し、検証具200として、左円偏光子の代わりに右円偏光子を使用すると、明部及び暗部の位置は、図8を参照しながら説明したのとは逆になる。
【0074】
以上説明したように、この積層体10では、反射型偏光層11と複屈折性層12とを組み合わせている。そして、複屈折性層12は、遅相軸ASの方向が互いに異なる第1複屈折性部12aと第2複屈折性部12bとを含んでおり、これらによって潜像を形成している。したがって、この積層体10は、偽造が難しい。
【0075】
また、上記の通り、潜像を可視化するために積層体10に照射する光は直線偏光である必要はない。それゆえ、検証具200を積層体10の近傍に位置させる必要がない。したがって、この技術は、潜像を可視化するために積層体10に直線偏光を照射しなければならない場合と比較して潜像の可視化が容易である。
【0076】
なお、図7及び図8を参照しながら説明した方法では、潜像を可視化するために積層体10に照射する光として自然光を使用したが、その代わりに直線偏光、楕円偏光又は円偏光を使用してもよい。例えば、検証具200を積層体10の近傍に位置させ、検証具200が透過させた偏光を積層体10に照射してもよい。
【0077】
図7及び図8を参照しながら説明した方法では、偏光層を含んだ検証具200を使用したが、検証具200は偏光層を含んでいなくてもよい。例えば、検証具200は、偏光プリズムなどの直線偏光子を含んでいてもよい。
【0078】
図7及び図8を参照しながら説明した方法では、潜像を可視化するための検証具200として偏光子を使用したが、積層体10に、例えば、図7を参照しながら説明した構造を採用した場合には、偏光子を使用しなくても、潜像を可視化ができる。これについて、以下に説明する。
【0079】
図9は、図1及び図2に示す積層体が保持している潜像を可視化する方法の他の例を概略的に示す図である。
【0080】
この方法では、透明板などの透明体200’を検証具として使用する。具体的には、光源300が放射する自然光LNを積層体10に照射し、積層体10が反射した光を透明体200’に入射させる。ここでは、一例として、領域AA1からの反射光は、偏光面が透明体200’の主面に垂直な直線偏光(以下、S波という)LSであり、領域AA2からの反射光は、偏光面がS波LSの偏光面に垂直な直線偏光(以下、P波という)LPであるとする。
【0081】
これらS波LS及びP波LPの透明体200’に対する入射角θをブルースター角とほぼ等しくする。例えば、透明体200’として屈折率が約1.5のガラス板を使用した場合には、この入射角を約56°とする。
【0082】
こうすると、透明体200’が反射する光の殆どはS波LSとなる。すなわち、観察者400には、積層体10からの反射光のうち、領域AA1からの反射光は到達するが、領域AA2からの反射光は殆ど到達しない。したがって、観察者400は、領域AA1及びAA2をそれぞれ明部及び暗部として知覚する。以上のようにして、潜像を可視化することができる。
【0083】
なお、図9に示す配置において、積層体10をその法線の周りで90°回転させた場合、領域AA1及びAA2はそれぞれ暗部及び明部として見える。
【0084】
透明体200’の背面側には、光吸収層を設置することができる。この構成を採用すると、可視像のコントラスト比が向上する。
【0085】
透明体200’は、典型的には透明板であるが、平滑面を有していれば透明板でなくてもよい。透明体200’は、この可視像化のためのみに使用するものであってもよく、或いは、携帯機器が搭載しているディスプレイのカバープレートなど他の目的で使用可能なものであってもよい。
【0086】
上述した積層体10は反射型偏光層11を含んでいるので、検証具200を使用することなく積層体10の前面を直接に観察した場合、積層体10の前面は明るく見える。したがって、この積層体10の前面上には、視認性の高い印刷パターンを形成することができる。
【0087】
図10は、図1及び図2に示す積層体の変形例を概略的に示す平面図である。図11は、図10に示す積層体のXI−XI線に沿った断面図である。
【0088】
図10及び図11に示す積層体10は、オーバーコート層14上に形成された印刷パターン15をさらに含んでいること以外は、図1及び図2を参照しながら説明した積層体10と同様の構造を有している。このように、印刷パターン15は、オーバーコート層14上に形成することができる。
【0089】
印刷パターン15は、オーバーコート層14と複屈折性層12との間に介在させてもよい。或いは、印刷パターン15は、オーバーコート層14と反射型偏光層11との間に介在させてもよい。或いは、印刷パターン15は、複屈折性層12と反射型偏光層11との間に介在させてもよい。
【0090】
上述した積層体10は、回折構造を含んでいてもよい。
図12は、図1及び図2に示す積層体の他の変形例を概略的に示す平面図である。図13は、図12に示す積層体のXIII−XIII線に沿った断面図である。この積層体10は、回折構造形成層18及び反射層13bをさらに含んでいること以外は、図1及び図2を参照しながら説明した積層体10と同様の構造を有している。
【0091】
回折構造形成層18は、反射型偏光層11と光吸収層13aとの間に介在している。この例では、回折構造形成層18は、反射型偏光層11の光吸収層13aと向き合った主面上に形成されている。回折構造形成層18の光吸収層13側の主面は、凸パターン又は凹パターンを含んでいる。回折構造形成層18は、例えば、熱可塑性樹脂などの透明樹脂からなる。
【0092】
反射層13bは、反射型偏光層11と光吸収層13aとの間に介在している。この例では、反射層13bは、回折構造形成層18の光吸収層13aと向き合った主面上に形成されている。反射層13bの前面は、回折構造形成層18の凸パターン又は凹パターンに対応した凸パターン又は凹パターンを含んでいる。この凸パターン又は凹パターンは、回折構造としてホログラム又は回折格子を形成している。この回折構造は、積層体の前面に回折画像を形成する。図11には、一例として、ホログラフィにより形成した回折画像HGを描いている。
【0093】
ホログラムは、例えば、以下の方法により形成することができる。まず、光学的な撮影方法を利用して、微細な凸パターン又は凹パターンからなるレリーフ型のマスター版を作製する。次いで、電気メッキ法を利用して、マスター版から凹パターン又は凸パターンを複製したニッケル製のプレス版を作製する。その後、回折構造形成層18に、プレス版を加熱しながら押し付ける。これにより、回折構造形成層18に、凸パターン又は凹パターンを転写する。さらに、回折構造形成層18上に、反射層13bを形成する。以上のようにして、ホログラムを形成することができる。
【0094】
ホログラムは、他の方法で形成することも可能である。すなわち、まず、平坦な回折構造形成層18上に、反射層13bを形成する。次に、反射層13bに、プレス版を加熱しながら押し付ける。これにより、反射層13及び回折構造形成層18に、凸パターン又は凹パターンを転写する。以上のようにして、ホログラムを形成することができる。
なお、このタイプのホログラムは、レリーフ型ホログラムと呼ぶ。
【0095】
回折格子は、光学的な撮影方法を利用しないこと以外はホログラムに関して説明したのと同様の方法により形成することができる。回折格子を形成する場合、各々が回折格子を含んだ複数の画素を配置することにより、グレーティングイメージ又はドットマトリクス(ピクセルグラム等)と呼ばれる画像を表示させてもよい。
【0096】
反射層13bは、例えば、金属層、合金層、又は高屈折率層である。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、錫、銀、クロム、ニッケル、及び金を使用することができる。合金層の材料としては、例えば、ニッケル−クロム−鉄合金、青銅、及びアルミ青銅を使用することができる。高屈折率層の材料としては、例えば、二酸化チタン、硫化亜鉛、及び三酸化二鉄などの無機誘電体を使用することができる。反射層13bとして、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層してなる誘電体多層膜を使用してもよい。
【0097】
反射層13bは、光透過性を有していてもよく、或いは、光透過性を有していなくてもよい。
【0098】
反射層13bが光透過性を有していない場合、光吸収層13aは省略してもよい。なお、この場合、光反射層13bの反射率が高いと、潜像の可視化が不可能となるか又は可視化した潜像が見辛くなる。例えば、光反射層13bの前方に光透過性の着色層を設置すると、潜像の可視化が不可能となるのを防止でき、可視化した潜像が見辛くなるのを抑制できる。
【0099】
反射層13bが光透過性を有している場合、光吸収層13aを設けると、可視化した潜像の視認性を高めることができる。光吸収層13aを設ける場合、光吸収層13aは、反射層13bの背面全体と向き合っていてもよく、或いは、反射層13bの背面の一部のみと向き合っていてもよい。光吸収層13aは、例えば、印刷又はコーティング法により形成することができる。
【0100】
反射層13bは、例えば、蒸着、スパッタリング、又はイオンプレーティングにより形成することができる。この場合、反射層13bの厚さは、例えば、約10nm乃至約100nmの範囲内とする。なお、反射層13bは、例えば、パスター加工、水洗シーライト加工、又はレーザ加工を利用することによりパターニングされた層として形成することができる。すなわち、反射層13bは、反射型偏光層11の主面全体と向き合っていてもよく、或いは、その一部のみと向き合っていてもよい。
【0101】
反射層13bは、上記のように回折構造形成層18上に形成してもよく、或いは、図示しない基材上に形成してもよい。例えば、一方の主面に凸パターン又は凹パターンを含んだ基材を準備する。次いで、この主面上に、上記の方法で反射層13bを形成する。その後、この基材と反射型偏光層11とを、接着剤層を介して貼り合わせる。基材が透明でない場合には、基材と反射型偏光層11とは、反射層13bが反射型偏光層11と向き合うように貼り合わせる。基材が透明である場合には、基材と反射型偏光層11とは、反射層13bが反射型偏光層11と向き合うように貼り合わせるか、又は、基材が反射型偏光層11と向き合うように貼り合わせる。このような方法で、反射型偏光層11に反射層13bを支持させてもよい。
【0102】
反射層13bとして、金属箔のようにそれ自体を単独で取り扱えるものを使用してもよい。この場合、例えば、反射層13bと反射型偏光層11との間に、回折構造形成層18の代わりに透明な接着剤層を介在させる。また、この場合、典型的には、光吸収層13aは省略する。
【0103】
回折構造は、反射型偏光層11の前方に設置してもよい。例えば、反射型偏光層11の前面に回折構造形成層18を形成し、その上に光透過性を有する反射層13bを形成してもよい。
【0104】
回折構造形成層18は、省略することができる。例えば、反射型偏光層11の表面に上述した凸パターン又は凹パターンを形成可能な場合には、回折構造形成層18は不要である。
【0105】
以上説明した積層体10は、真正さが確認されるべき物品に、直接又は間接的に支持させる。そして、真正さが未知の物品を真正品と偽造品などの非真正品との間で判別する場合に、以下に説明するように積層体10を利用することができる。
【0106】
上記の通り、この積層体10は、偏光子を介して観察することにより可視化する潜像を有している。すなわち、この積層体10を支持させた物品の少なくとも一部の領域は、偏光子を介して観察することにより可視化する潜像を有している。それゆえ、真正さが未知の物品がそのような潜像を有していない場合には、この物品は非真正品であると判断することができる。
【0107】
また、この積層体10は、偏光子を介することなく観察した場合に、観察方向と反射型偏光層11の主面の法線とがなす角度を大きくすることによりブルーシフトを生じる。したがって、真正さが未知の物品がそのようなブルーシフトを生じる領域を含んでいない場合には、この物品は非真正品であると判断することができる。
【0108】
真正さが未知の物品が先の潜像を保持している場合、可視化した潜像の形状及び/又は大きさを、真正品のそれと比較してもよい。可視化した潜像の形状及び/又は大きさが真正品のそれと異なっていれば、その物品は非真正品であると判断することができる。
【0109】
物品の判定には、上述した方法の1つのみを利用してもよく、複数を組み合わせて利用してもよい。また、この技術は、他の判定技術と組み合わせてもよい。物品の判定に利用する方法を増やすと、非真正品を真正品と誤って判断する確率が低くなる。
【0110】
積層体10は、以下に説明するように、様々な形態で使用され得る。
図14は、図1及び図2に示す積層体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。この粘着ラベル20は、積層体10と、その背面上に設けられた粘着層21とを含んでいる。この粘着ラベル20は、例えば、真正さが確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグなどの他の物品に貼り付ける。こうすると、上述した方法で、物品の真正を確認することができる。
【0111】
この粘着ラベル20は、脆性であってもよい。そのような粘着ラベル20は、例えば、積層体10に、切欠き及び/又はミシン目を形成することにより得られる。粘着ラベル20が脆性である場合、真正さが確認されるべき物品に貼り付けた粘着ラベルを剥がすと、積層体10は容易に破壊する。したがって、粘着ラベル20の貼り替えが困難となる。
【0112】
図15は、図1及び図2に示す積層体を含んだ記録媒体の一例を概略的に示す断面図である。この記録媒体30は、紙31と、この中に埋め込まれた積層体10とを含んでいる。紙31のうち積層体10の前面を被覆している部分には開口が設けられている。これにより、可視化した潜像の視認性を高めている。なお、潜像の可視化が可能であれば、紙31に先の開口は設けなくてもよい。
【0113】
この記録媒体30は、例えば、キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証媒体又は商品券及び株券などの有価証券媒体のための用紙として使用することができる。或いは、この記録媒体30は、後述する粘着ラベルの一部として使用することができる。或いは、この記録媒体30は、真正さが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグ又はその一部として使用することができる。或いは、この記録媒体30は、真正さが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部として使用することができる。
【0114】
記録媒体30は、例えば、抄紙の際に繊維の層の間に積層体10を挟みこむことにより得られる。このような方法で得られる記録媒体30は、偽造等が難しい。
【0115】
図16は、図15の記録媒体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。この粘着ラベル40は、記録媒体30と、その背面上に設けられた粘着層41とを含んでいる。この粘着ラベル40は、例えば、真正さが確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグの基材などの他の物品に貼り付ける。
【0116】
図17は、図1及び図2に示す積層体を含んだラベル付き物品の一例を概略的に示す断面図である。このラベル付き物品100は、物品101と積層体10とを含んでいる。
【0117】
物品101は、真正さが確認されるべき物品である。物品101は、例えば、キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証媒体又は商品券及び株券などの有価証券媒体である。物品101は、認証媒体及び有価証券媒体以外の物品でもよい。例えば、物品101は、工芸品又は美術品であってもよい。或いは、物品101は、包装体とこれに収容された内容物とを含んだ包装品であってもよい。
【0118】
積層体10は、物品101に支持されている。例えば、積層体10は、物品101に貼り付けられる。この場合、例えば、図14に示す粘着ラベル20又は図16に示す粘着ラベル40を物品101に貼り付けることにより、積層体10を物品101に支持させることができる。
【0119】
積層体10は、他の方法で物品101に支持させてもよい。
例えば、物品101が紙を含んでいる場合、この紙の中に積層体10を埋め込んでもよい。この場合、ラベル付き物品100は、例えば、抄紙の際に繊維の層の間に積層体10を挟みこみ、その後、必要に応じて紙面への印刷等を行うことにより得られる。なお、潜像の可視化を容易にすべく、紙のうち積層体10の前面を被覆している部分には開口を設けてもよい。また、紙に埋め込む積層体10の形状に特に制限はない。例えば、スレッド状の積層体10を紙に埋め込んでもよい。
【0120】
積層体10を含んだタグを物品101に取り付けることにより、積層体10を物品101に支持させてもよい。物品101へのタグの付け替えが一般ユーザにとって困難であれば、積層体10は、物品101の真正を確認するのに十分に役立つ。
【実施例】
【0121】
以下、本発明の実施例について説明する。
反射型偏光層として、3M(Minnesota Mining & Manufacturing)社製のDBEFを準備した。
【0122】
次に、グラビアコーティング法により、反射型偏光層の前面上に、大日本インキ製造株式会社製の光配向剤IA−01を0.1μmの厚さに塗布した。次いで、この塗膜の全面を、波長が365nmの直線偏光を用いて、1J/cm2の照度で露光した。直線偏光は、その偏光面が反射型偏光層の透過軸に対して45°の角度をなすように照射した。その後、先の塗膜を、波長が365nmの直線偏光を用いて、2J/cm2の照度でパターン露光した。このパターン露光にはフォトマスクを使用し、直線偏光は、その偏光面が反射型偏光層の透過軸に対して平行となるように照射した。以上のようにして、配向方向が互いに異なる第1及び第2配向部を含んだ配向膜を得た。
【0123】
次いで、グラビアコーティング法により、配向膜上に、UVキュアラブル液晶UCL−008(大日本インキ株式会社製)を印刷した。65℃で60秒間の加熱後、窒素雰囲気中、この塗膜を0.5J/cm2の照度で紫外線露光して、塗膜を硬化させた。これにより、遅相軸の方向が45°異なる第1及び第2複屈折性部を含んだ複屈折性層を得た。なお、複屈折性層の厚さは1.5μmであり、第1及び第2複屈折性部の各々において常光線屈折率と異常光屈折率との差は0.18であった。すなわち、第1及び第2複屈折性部の各々は、波長λが540nmの一対の直線偏光を透過することにより、それら直線偏光にλ/2の位相差を与える半波長板である。
【0124】
次いで、反射型偏光層の背面に、黒色の染料とアクリル系接着剤とを含有した厚さが30μmの粘着層を形成した。さらに、複屈折性層上に、パール顔料を含有したカラーシフトインキを印刷した。以上のようにして、粘着ラベルを得た。
【0125】
次に、この粘着ラベルを基材上に貼り付けた。そして、粘着ラベルに自然光を照射しながら、まず、吸収型偏光フィルムを使用することなしに粘着ラベルの前面を観察した。その結果、複屈折性層に対応した領域とそれ以外の領域とを判別することはできなかった。次に、粘着ラベルに自然光を照射しながら、吸収型偏光フィルムを介して粘着ラベルの前面を観察した。その結果、複屈折性層に対応した領域及びそれ以外の領域を、それぞれ、明部及び暗部として見ることができた。すなわち、潜像を可視化することができた。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の一態様に係る識別用積層体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す積層体のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示す積層体が含む反射型偏光層を概略的に示す斜視図。
【図4】図1及び図2に示す積層体が含む反射型偏光層を概略的に示す斜視図。
【図5】図3及び図4に示す反射型偏光層の一部を概略的に示す断面図。
【図6】図3及び図4に示す反射型偏光層の一部を概略的に示す分解斜視図。
【図7】図1及び図2に示す積層体が保持している潜像を可視化する方法の一例を概略的に示す図。
【図8】図1及び図2に示す積層体が保持している潜像を可視化する方法の他の例を概略的に示す図。
【図9】図1及び図2に示す積層体が保持している潜像を可視化する方法の他の例を概略的に示す図。
【図10】図1及び図2に示す積層体の変形例を概略的に示す平面図。
【図11】図10に示す積層体のXI−XI線に沿った断面図。
【図12】図1及び図2に示す積層体の他の変形例を概略的に示す平面図。
【図13】図12に示す積層体のXIII−XIII線に沿った断面図。
【図14】図1及び図2に示す積層体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図。
【図15】図1及び図2に示す積層体を含んだ記録媒体の一例を概略的に示す断面図。
【図16】図15の記録媒体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図。
【図17】図1及び図2に示す積層体を含んだラベル付き物品の一例を概略的に示す断面図。
【符号の説明】
【0127】
10…識別用積層体、11…反射型偏光層、12…複屈折性層、12a…第1複屈折性部、12b…第2複屈折性部、13a…光吸収層、13b…反射層、14…オーバーコート層、15…印刷パターン、17…配向膜、17a…第1配向部、17b…第2配向部、20…粘着ラベル、21…粘着層、30…記録媒体、31…紙、40…粘着ラベル、41…粘着層、100…ラベル付き物品、101…物品、200…検証具、200’…透明体、300…光源、400…観察者、AA1…領域、AA2…領域、AF…進相軸、AF’…進相軸、AR…反射軸、AS…遅相軸、AS’…遅相軸、AT…透過軸、AT’…透過軸、LL1…直線偏光、LL2…直線偏光、LLC…左円偏光、LLP…直線偏光、LN…自然光、LP…P波、LRC…右円偏光、LS…S波。
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を真正品と非真正品との間で判別する判別技術に関する。
【背景技術】
【0002】
キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証媒体並びに商品券及び株券などの有価証券媒体には、偽造が困難であることが望まれる。そのため、従来から、そのような媒体には、その偽造を抑止すべく、偽造が困難なラベルが貼り付けられている。
【0003】
また、近年では、認証媒体及び有価証券媒体以外の物品についても、偽造品の流通が問題視されている。そのため、このような物品に、認証媒体及び有価証券媒体に関して上述した偽造防止技術を適用する機会が増えている。
【0004】
偽造防止技術は、オバート技術とコバート技術とに分類することができる。
オバート技術は、一般のユーザが物品への適用を容易に認めることができ且つ容易に真偽判定をすることができる偽造防止技術である。代表的なオバート技術では、ホログラムなどの回折構造又はOptically Variable Ink(OVI)などの多層干渉膜を利用する。
【0005】
コバート技術は、物品への適用が一般のユーザに分かり難く、物品へのコバート技術の適用を知っている特定のユーザのみが真偽判定できることを狙った偽造防止技術である。代表的なコバート技術では、蛍光印刷又は万線モアレを利用する。
【0006】
特許文献1には、オバート技術とコバート技術との双方を利用した偽造防止技術が記載されている。この偽造防止技術では、例えば、複屈折性の第1光透過性層とこれとは光学特性が異なる第2光透過性層とを交互に積層してなる多層膜を含んだラベルを使用する。この多層膜において、第1光透過性層と第2光透過性層とは、第1光透過性層の主面に垂直な第1平面内の第1方向についての屈折率が等しく、先の主面と第1平面とに垂直な第2平面内の第2方向についての屈折率が異なっている。したがって、第1光透過性層と第2光透過性層との界面は、偏光面(電場ベクトルの振動面)が第1平面に平行な直線偏光を反射せず、偏光面が第2平面に平行な直線偏光の一部を反射する。それゆえ、直線偏光子を介してこの多層膜を観察した場合、直線偏光子の透過軸の方位に応じて多層膜の明るさが変化する。また、この多層膜は、偏光子を介することなく観察した場合に、観察方向と多層膜の法線とがなす角度を大きくすることによりブルーシフトを生じる。すなわち、干渉色が短波長側にシフトする。これらの光学的特徴を利用して、真正品と非真正品とを判別する。
【0007】
この偽像防止技術で使用するラベルは、低コスト及び高耐久性を達成可能である。しかしながら、上述した光学的特徴は、上記の多層膜を使用しなくても再現できる。例えば、一般的なカラーシフトフィルムと吸収型偏光層との積層体で先の光学的特徴を再現することができる。そのため、このラベルは、偽造が比較的容易である。
【特許文献1】特開2004−354430号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、真正品と非真正品との判別に用いるラベルの偽造を難しくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1側面によると、複屈折性の第1光透過性層と前記第1光透過性層とは光学特性が異なる第2光透過性層とを交互に積層してなる反射型偏光層と、前記偏光層の前面の一部と向き合った第1部分と前記偏光層の前記前面の他の一部と向き合い且つ前記第1部分とは遅相軸の方向が異なる第2部分とを含んだ複屈折性層とを具備したことを特徴とする識別用積層体が提供される。
【0010】
本発明の第2側面によると、第1側面に係る積層体と、前記積層体の背面に支持された粘着層とを具備したことを特徴とする粘着ラベルが提供される。
【0011】
本発明の第3側面によると、紙と、前記紙の一方の主面に支持された粘着層と、背面が前記粘着層と向き合うように前記紙の中に埋め込まれた第1側面に係る積層体とを具備したことを特徴とする粘着ラベルが提供される。
【0012】
本発明の第4側面によると、紙と、前記紙の中に埋め込まれた第1側面に係る積層体とを具備したことを特徴とする記録媒体が提供される。
【0013】
本発明の第5側面によると、真正さが確認されるべき物品と、前記真正さが確認されるべき物品に支持された第1側面に係る積層体とを具備したことを特徴とするラベル付き物品が提供される。
【0014】
本発明の第6側面によると、真正さが未知の物品を真正品と非真正品との間で判別する方法であって、前記真正品は第5側面に係るラベル付き物品であり、前記真正さが未知の物品が、偏光子を介して観察することにより可視化する潜像を保持し且つ前記偏光子を介することなく観察した場合に観察方向と前記偏光層の法線とがなす角度を大きくすることによりブルーシフトを生じる領域を含んでいない場合に、前記真正さが未知の物品は非真正品であると判断することを含んだことを特徴とする方法が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、真正品と非真正品との判別に用いるラベルの偽造を難しくすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
【0017】
図1は、本発明の一態様に係る識別用積層体を概略的に示す平面図である。図2は、図1に示す積層体のII−II線に沿った断面図である。図3及び図4は、図1及び図2に示す積層体が含む反射型偏光層を概略的に示す斜視図である。図5は、図3及び図4に示す反射型偏光層の一部を概略的に示す断面図である。図6は、図3及び図4に示す反射型偏光層の一部を概略的に示す分解斜視図である。
【0018】
この識別用積層体10は、図2に示すように、反射型偏光層11と配向膜17と複屈折性層12と光吸収層13aとオーバーコート層14とを含んでいる。
【0019】
ここで、用語「偏光層」は、特別な記載がない限り、直線偏光子として機能する層を意味することとする。また、用語「偏光子」は、「直線偏光子」、「楕円偏光子」及び「円偏光子」を包含し、形状の概念は含まないこととする。
【0020】
反射型偏光層11は、入射光としての直線偏光の偏光面を回転させたときに反射率が変化する層である。反射型偏光層11は、図3に示すように、反射型偏光層11の透過軸ATと入射光としての直線偏光LLPの偏光面とが平行である場合、理想的には直線偏光LLPを反射することなく透過させる。直線偏光LLPの偏光面が透過軸ATに対してなす角度を大きくすると、反射型偏光層11によって反射される光成分が増加する。そして、図4に示すように、直線偏光LLPの偏光面と透過軸ATとが直交する場合に、反射型偏光層11は最も多くの光成分を反射する。
【0021】
この反射型偏光層11は、図5に示すように、第1光透過性層11aと第2光透過性層11bとを交互に積層した構造を有している。反射型偏光層11が含む第1光透過性層11aの数及び第2光透過性層11bの数を多くすると、上述した反射率の変化が大きくなる。但し、これらの数を多くすると、反射型偏光層11が厚くなる。典型的には、第1光透過性層11aの数と第2光透過性層11bの数との和は、例えば2乃至1000の範囲内とし、典型的には100乃至500の範囲内とする。
【0022】
第1光透過性層11aは、複屈折性を有している。第1光透過性層11aは、それらの遅相軸がほぼ平行となるように配置されている。
【0023】
第2光透過性層11bは、第1光透過性層11aとは光学特性が異なっている。第2光透過性層11bは、光学的に等方性であってもよく、或いは、複屈折性を有していてもよい。第2光透過性層11bは、それらが複屈折性を有している場合、それらの遅相軸がほぼ平行となるように配置する。
【0024】
この反射型偏光層11に法線方向から入射する第1直線偏光について、第1光透過性層11aが示す屈折率na1と第2光透過性層11bが示す屈折率nb1とはほぼ等しい。それゆえ、第1光透過性層11aと第2光透過性層11bとの各界面は、第1直線偏光を透過させる。また、反射型偏光層11に法線方向から入射し且つ第1直線偏光の偏光面に対して垂直な偏光面を有する第2直線偏光について、第1光透過性層11aが示す屈折率na2と第2光透過性層11bが示す屈折率nb2とは異なっている。それゆえ、第1光透過性層11aと第2光透過性層11bとの各界面は、第2直線偏光の一部を反射する。このような理由で、反射型偏光層11は、図6に示す透過軸ATに平行な偏光面を有する第1直線偏光を透過させ、図6に示す反射軸ARに平行な偏光面を有する第2直線偏光を反射する。
【0025】
屈折率na1と屈折率nb1との差の絶対値は、屈折率na2と屈折率nb2との差の絶対値よりも小さくし、典型的にはほぼゼロとする。この絶対値を小さくすると、第1光透過性層11aと第2光透過性層11bとの各界面の第1直線偏光についての反射率が小さくなる。
【0026】
屈折率na2と屈折率nb2との差の絶対値は、例えば0.03以上とし、典型的には0.05以上とする。この絶対値を大きくすると、第1光透過性層11aと第2光透過性層11bとの各界面の第2直線偏光についての反射率が大きくなる。
【0027】
第1光透過性層11aとしては、例えば、一軸延伸又は二軸延伸により複屈折性を与えた延伸フィルムを使用することができる。延伸フィルムの材料としては、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂などを使用することができる。第1光透過性層11aとして、複屈折性の無機物層を使用してもよい。但し、延伸フィルムを使用すると、屈折率na1及びna2の調節が容易である。例えば、ポリ塩化ビニルフィルムは、延伸することにより屈折率が大きくなる。ポリメタクリル酸メチルフィルムは、延伸することにより屈折率が小さくなる。そして、延伸フィルムの屈折率は、延伸倍率及び/又は延伸温度に応じて変化する。
【0028】
第2光透過性層11bとしては、例えば、延伸フィルムを使用することができる。延伸フィルムの材料としては、例えば、第1光透過性層11aに関して例示したのと同様の材料を使用することができる。第2光透過性層11bとして、複屈折性の又は光学的に等方性の無機物層を使用してもよい。但し、第1光透過性層11aとして延伸フィルムを使用する場合、第2光透過性層11bとして延伸フィルムを使用すると、反射型偏光層11を容易に製造することができる。すなわち、材料が互いに異なる第1及び第2フィルムを交互に積層してなる積層フィルムを準備し、この積層フィルムを一軸又は二軸延伸する。第1及び第2フィルムに適当な材料を使用し、延伸倍率及び延伸温度を適宜設定することにより、上述した光学特性を有する反射型偏光層11を得ることができる。
【0029】
第1光透過性層11a及び第2光透過性層11bの光学的厚さは、例えば、0.09μm乃至0.70μmの範囲内とする。例えば、光学的厚さを0.38μmに設定すると青紫色に見え、光学的厚さを0.68μmに設定すると赤色に見えるようになる。また、このような反射型偏光層11は、偏光子を介することなく観察した場合に、観察方向と反射型偏光層11の法線とがなす角度を大きくすることによりブルーシフトを生じる。すなわち、干渉色が短波長側にシフトする。
【0030】
配向膜17は、複屈折性層12に液晶材料を使用する場合、そのメソゲン基の配向を制御するのに利用する。複屈折性層12を反射型偏光層11上に形成する場合、配向膜17は、図2に示すように、配向膜17は反射型偏光層11と複屈折性層12の間に位置させる。この場合、配向膜17は、反射型偏光層11の前面と直接に接触していてもよい。或いは、配向膜17と反射型偏光層11との間には、透明層が介在していてもよい。また、配向膜17は、省略してもよい。
【0031】
配向膜17は、面内方向に隣り合う第1配向部17aと第2配向部17bとを含んでいる。第1配向部17aと第2配向部17bとには、複屈折性層12を形成する前に、例えば光配向法又はラビング法を利用した配向処理を施してある。第1配向部17aと第2配向部17bとでは、液晶材料のメソゲン基を配向させる方向(以下、配向方向という)が異なっている。
【0032】
光配向法では、膜に偏光などの異方性を有する光を照射して、膜内の分子の再配列又は化学反応を誘起する。例えば、アゾベンゼン誘導体の光異性化、桂皮酸エステル、クマリン、カルコン、及びベンゾフェノンなどの誘導体の光二量化又は架橋、並びにポリイミドなどの光分解を生じさせる。これにより、その膜に異方性を付与する。
【0033】
ラビング法では、ポリイミド層及びポリビニルアルコール層などのポリマー層を形成し、その表面をラビング布で擦る。液晶材料のメソゲン基は、ラビング布で擦った方向,すなわち、ラビング方向,に配向する。
【0034】
光配向法を利用する場合、配向膜17は、例えば以下の方法により形成することができる。まず、上記の材料からなる膜を形成する。この膜は、例えば、グラビアコーティング法又はマイクログラビアコーティング法を利用して形成することができる。次いで、その膜の一部を、直線偏光で露光する。その後、先の膜の他の一部を、偏光面(電場ベクトルの振動面)が異なる直線偏光で露光する。これにより、配向方向が互いに異なる第1配向部17aと第2配向部17bとを含んだ配向膜17が得られる。
【0035】
光配向法を利用する場合、配向膜17は、他の方法で形成することもできる。まず、上記の材料からなる膜を形成し、その膜の一部を斜め方向から自然光で露光する。次いで、光照射方向を膜面法線の周りで回転させ、その膜の他の一部を斜め方向から自然光で露光する。これにより、配向方向が互いに異なる第1配向部17aと第2配向部17bとを含んだ配向膜17が得られる。
【0036】
ラビング法を利用する場合、配向膜17は、例えば以下の方法により形成することができる。まず、ポリマー膜を形成する。ポリマー膜は、例えば、グラビアコーティング法又はマイクログラビアコーティング法を利用して形成することができる。次いで、ポリマー膜の全面を、ラビング布で一方向に擦る。次いで、ポリマー膜上にマスクを設置し、これをラビング布で別の方向に擦る。その後、ポリマー膜からマスクを取り除くことにより、配向方向が互いに異なる第1配向部17aと第2配向部17bとを含んだ配向膜17が得られる。
【0037】
複屈折性層12は、面内方向に隣り合う第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bを含んでいる。第1複屈折性部12aは、第1配向部17aを間に挟んで反射型偏光層11の前面の一部と向き合っている。第2複屈折性部12bは、第2配向部17bを間に挟んで反射型偏光層11の前面の他の一部と向き合っている。
【0038】
第1複屈折性部12aは、面内でほぼ一様な光学特性を有している。同様に、第2複屈折性部12bも、面内でほぼ一様な光学特性を有している。第1複屈折性部12aと第2複屈折性部12bとは、遅相軸の方向が異なっている。
【0039】
例えば、第1複屈折性部12aと第2複屈折性部12bとは、それらの遅相軸が直交するように配置する。この場合、第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bの各々は、四分の一波長板であってもよい。この構造を採用した場合、反射型偏光層11と複屈折性層12とは、反射型偏光層11の透過軸ATが第1複屈折性部12aの遅相軸と第2複屈折性部12bの遅相軸との各々に対して斜めになるように配置する。例えば、反射型偏光層11の透過軸ATが第1複屈折性部12aの遅相軸と第2複屈折性部12bの遅相軸との各々に対してなす角度を約45°とする。
【0040】
或いは、第1複屈折性部12aと第2複屈折性部12bとは、それらの遅相軸が45°の角度をなすように配置してもよい。この場合、第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bの各々は、半波長板であってもよい。この構造を採用した場合、反射型偏光層11の透過軸ATが第1複屈折性部12aの遅相軸と第2複屈折性部12bの遅相軸との各々に対してなす角度は任意である。
【0041】
なお、積層体10は、通常、可視光のうち、特に波長が400nm乃至700nmの範囲内の光を考慮して設計する。それゆえ、通常、四分の一波長板としては、先の範囲内の少なくとも1つの波長λでλ/4のリターデイションを与えるものを使用する。また、通常、半波長板としては、先の範囲内の少なくとも1つの波長λでλ/2のリターデイションを与えるものを使用する。
【0042】
積層体10の前面は、第1複屈折性部12aに対応した領域AA1と、第2複屈折性部12bに対応した領域AA2とを含んでいる。領域AA1及びAA2の各々は、互いからの判別が困難な潜像を形成している。すなわち、偏光子を使用することなしに積層体10の前面を直接に観察した場合、領域AA1と領域AA2との相違を見出すことは難しい。偏光子を介して積層体10の前面を観察すると、領域AA1と領域AA2との間に明るさの相違を生じる。これにより、潜像が可視化する。
【0043】
第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bの各々としては、例えば、複屈折性の延伸フィルムを使用することができる。この場合、配向膜17は、省略してもよい。延伸フィルムとしては、例えば、一軸又は二軸延伸したポリオレフィンフィルム及びポリエステルフィルムを使用することができる。
【0044】
第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bの材料として、液晶材料を使用してもよい。この液晶材料としては、例えば、積層体10の使用温度域で固体であり且つネマチック相又はスメクチック相を呈する液晶材料,典型的には高分子液晶材料,を使用することができる。この場合、例えば、配向方向が互いに異なる複数の部分17a及び17bを含んだ配向膜17を形成し、この配向膜17上に低分子量の液晶材料からなる薄膜パターンを形成し、この液晶材料の重合を生じさせることにより、第1複屈折性部12aと第2複屈折性部12bとを含んだ複屈折性層12を得ることができる。
【0045】
光吸収層13aは、反射型偏光層11の背面と向き合っている。光吸収層13aは、反射型偏光層11の背面全体と向き合っていてもよく、その一部のみと向き合っていてもよい。また、光吸収層13aは、省略してもよい。
【0046】
光吸収層13aは、反射型偏光層11の背面と直接に接触していてもよい。或いは、光吸収層13aと反射型偏光層11との間には、透明層が介在していてもよい。
【0047】
光吸収層13aは、例えば、顔料及び/又は染料と樹脂とを含有したインキを反射型偏光層11の背面に塗布することにより得られる。或いは、光吸収層13aは、先のインキを基材上に塗布することにより得られる。この場合、光吸収層13aは、基材と共に反射型偏光層11の背面に貼り付けることができる。
【0048】
光吸収層13aは、黒色であってもよく、他の色であってもよい。光吸収層13aは、色が互いに異なると共に面内方向に並んだ複数の部分を含んでいてもよい。
【0049】
光吸収層13aを黒色とした場合、潜像を可視化していないときには、領域AA1及びAA2の色は、反射型偏光層11の光反射に起因した白色である。そして、潜像を可視化すると、領域AA1及びAA2の一方では黒色への変化を生じる。光吸収層13aを黒色とすると、潜像を可視化したときに、これら領域のコントラスト比が最大となる。
【0050】
可視光の一部のみを吸収し且つ他の一部を反射する光吸収層13aを使用した場合、潜像を可視化していないときには、領域AA1及びAA2の色は、反射型偏光層11による反射に起因した白色と光吸収層13aによる反射に起因した色との加法混色によって生じる色である。そして、潜像を可視化すると、領域AA1及びAA2の一方では光吸収層13aによる反射に起因した着色光の強度が弱くなり、他方では反射型偏光層11による反射に起因した白色光の強度が弱くなる。
【0051】
オーバーコート層14は、複屈折性層12を被覆している。オーバーコート層14は、光学的に等方性の透明層,典型的には透明樹脂層,である。オーバーコート層14は、複屈折性層12が凹凸表面を有している場合、これを平坦化する役割を果たす。これにより、複屈折性層12及び配向膜17の存在を分かり難くする。オーバーコート層14は、省略してもよい。
【0052】
オーバーコート層14は、例えば、複屈折性層12に透明な印刷インキを塗布することにより得られる。印刷インキの塗布には、例えば、グラビア及びマイクログラビアなどのコーティング法を利用することができる。
【0053】
次に、潜像の可視化について説明する。
図7は、図1及び図2に示す積層体が保持している潜像を可視化する方法の一例を概略的に示す図である。
【0054】
図7に示す積層体10は、第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bとして半波長板を含んでいる。この積層体10において、第1複屈折性部12aの遅相軸ASと第2複屈折性部12bの遅相軸ASとがなす角度は45°である。そして、第1複屈折性部12aの遅相軸ASと反射型偏光層11の反射軸ARとがなす角度は45°であり、第2複屈折性部12bの遅相軸ASと反射型偏光層11の反射軸ARとは平行である。
【0055】
図7に示す方法では、積層体10の前面に自然光を照射しながら、検証具200を介して積層体10の前面を観察する。ここでは、一例として、検証具200として、延伸したポリビニルアルコール層に沃素を含浸させてなる偏光層のような吸収型偏光層を使用する。また、この方法では、積層体10と光源300と観察者400とを、積層体10が光源300からの光を鏡面反射した場合に観察者400が反射光を観察できるように、及び、検証具200の透過軸AT’が反射型偏光層11の反射軸ARに対して垂直となるように配置する。
【0056】
光源300からの自然光LNは、複屈折性層12に入射する。複屈折性層12は、この自然光LNを透過させる。
【0057】
複屈折性層12から出射した自然光LNは、反射型偏光層11に入射する。反射型偏光層11は、この自然光LNのうち、偏光面が透過軸ATに平行な第1直線偏光LL1を透過させ、偏光面が反射軸ARに平行な第2直線偏光LL2を反射する。
【0058】
反射型偏光層11を透過した第1直線偏光LL1は、光吸収層13aに入射する。光吸収層13aは、この第1直線偏光LL1を吸収する。
【0059】
反射型偏光層11によって反射された第2直線偏光LL2は、複屈折性層12の第1複屈折性部12a又は第2複屈折性部12bに入射する。第1複屈折性部12aは、第2直線偏光LL2を第1直線偏光LL1へと変換する。第2複屈折性部12bは、第2直線偏光LL2を、その偏光面を回転させることなく透過させる。
【0060】
複屈折性層12から出射した第1直線偏光LL1及び第2直線偏光LL2は、検証具200に入射する。検証具200は、理想的には、第1直線偏光LL1を吸収することなく透過させ、第2直線偏光LL2を吸収する。
【0061】
すなわち、検証具200は、積層体10のうち第1複屈折性部12aに対応した部分からの反射光を透過させ、積層体10のうち第2複屈折性部12bに対応した部分からの反射光を吸収する。したがって、観察者400は、第1複屈折性部12aに対応した第1領域AA1を明部として知覚し、第2複屈折性部12bに対応した第2領域AA2を暗部として知覚する。以上のようにして、潜像を可視化することができる。
【0062】
なお、検証具200の透過軸AT’が反射型偏光層11の反射軸ARに対してなす角度を変化させると、明部及び暗部の位置が入れ替わる。例えば、透過軸AT’を反射軸ARに対して平行とした場合、明部及び暗部の位置は、図7を参照しながら説明したのとは逆になる。
【0063】
図8は、図1及び図2に示す積層体が保持している潜像を可視化する方法の他の例を概略的に示す図である。
【0064】
図8に示す積層体10は、第1複屈折性部12a及び第2複屈折性部12bとして四分の一波長板を含んでいる。この積層体10において、第1複屈折性部12aの遅相軸ASと第2複屈折性部12bの遅相軸ASとがなす角度は90°である。そして、第1複屈折性部12aの遅相軸ASの方向は、前面側から見た場合に、反射型偏光層11の反射軸ARに平行な方向から時計回りに45°回転させた方向である。また、第2複屈折性部12bの遅相軸ASの方向は、前面側から見た場合に、反射型偏光層11の反射軸ARに平行な方向から反時計回りに45°回転させた方向である。
【0065】
図8に示す方法では、積層体10の前面に自然光を照射しながら、検証具200を介して積層体10の前面を観察する。ここでは、一例として、検証具200として、吸収型偏光層201と四分の一波長板202との積層体を使用する。この検証具200を吸収型偏光層201側から見た場合、偏光層201の透過軸AT’の方向は、四分の一波長板202の遅相軸AS’に平行な方向から反時計回りに45°回転させた方向である。すなわち、この検証具200は、左円偏光子である。この方法では、検証具200と積層体10とを、四分の一波長板202が検証具200の前面と向き合うように配置する。また、この方法では、積層体10と光源300と観察者400とを、積層体10が光源300からの光を鏡面反射した場合に観察者400が反射光を観察できるように、及び、偏光層201の透過軸AT’が反射型偏光層11の反射軸ARに対して垂直となるように配置する。
【0066】
光源300からの自然光LNは、複屈折性層12に入射する。複屈折性層12は、この自然光LNを透過させる。
【0067】
複屈折性層12から出射した自然光LNは、反射型偏光層11に入射する。反射型偏光層11は、この自然光LNのうち、偏光面が透過軸ATに平行な第1直線偏光LL1を透過させ、偏光面が反射軸ARに平行な第2直線偏光LL2を反射する。
【0068】
反射型偏光層11を透過した第1直線偏光LL1は、光吸収層13aに入射する。光吸収層13aは、この第1直線偏光LL1を吸収する。
【0069】
反射型偏光層11によって反射された第2直線偏光LL2は、複屈折性層12の第1複屈折性部12a又は第2複屈折性部12bに入射する。第1複屈折性部12aは、第2直線偏光LL2を右円偏光LRCへと変換する。第2複屈折性部12bは、第2直線偏光LL2を左円偏光LLCへと変換する。
【0070】
複屈折性層12から出射した右円偏光LRC及び左円偏光LLCは、四分の一波長板202に入射する。四分の一波長板202は、右円偏光LRCを第2直線偏光LL2へと変換し、左円偏光LLCを第1直線偏光LL1へと変換する。
【0071】
四分の一波長板202から出射した第1直線偏光LL1及び第2直線偏光LL2は、偏光層201に入射する。偏光層201は、理想的には、第1直線偏光LL1を吸収することなく透過させ、第2直線偏光LL2を吸収する。
【0072】
すなわち、検証具200は、積層体10のうち第1複屈折性部12aに対応した部分からの反射光を吸収し、積層体10のうち第2複屈折性部12bに対応した部分からの反射光を透過させる。したがって、観察者400は、第1複屈折性部12aに対応した第1領域AA1を暗部として知覚し、第2複屈折性部12bに対応した第2領域AA2を明部として知覚する。以上のようにして、潜像を可視化することができる。
【0073】
なお、この方法では、偏光層201の透過軸AT’が反射型偏光層11の反射軸ARに対してなす角度を変化させても、明部及び暗部の位置は入れ替わらない。但し、検証具200として、左円偏光子の代わりに右円偏光子を使用すると、明部及び暗部の位置は、図8を参照しながら説明したのとは逆になる。
【0074】
以上説明したように、この積層体10では、反射型偏光層11と複屈折性層12とを組み合わせている。そして、複屈折性層12は、遅相軸ASの方向が互いに異なる第1複屈折性部12aと第2複屈折性部12bとを含んでおり、これらによって潜像を形成している。したがって、この積層体10は、偽造が難しい。
【0075】
また、上記の通り、潜像を可視化するために積層体10に照射する光は直線偏光である必要はない。それゆえ、検証具200を積層体10の近傍に位置させる必要がない。したがって、この技術は、潜像を可視化するために積層体10に直線偏光を照射しなければならない場合と比較して潜像の可視化が容易である。
【0076】
なお、図7及び図8を参照しながら説明した方法では、潜像を可視化するために積層体10に照射する光として自然光を使用したが、その代わりに直線偏光、楕円偏光又は円偏光を使用してもよい。例えば、検証具200を積層体10の近傍に位置させ、検証具200が透過させた偏光を積層体10に照射してもよい。
【0077】
図7及び図8を参照しながら説明した方法では、偏光層を含んだ検証具200を使用したが、検証具200は偏光層を含んでいなくてもよい。例えば、検証具200は、偏光プリズムなどの直線偏光子を含んでいてもよい。
【0078】
図7及び図8を参照しながら説明した方法では、潜像を可視化するための検証具200として偏光子を使用したが、積層体10に、例えば、図7を参照しながら説明した構造を採用した場合には、偏光子を使用しなくても、潜像を可視化ができる。これについて、以下に説明する。
【0079】
図9は、図1及び図2に示す積層体が保持している潜像を可視化する方法の他の例を概略的に示す図である。
【0080】
この方法では、透明板などの透明体200’を検証具として使用する。具体的には、光源300が放射する自然光LNを積層体10に照射し、積層体10が反射した光を透明体200’に入射させる。ここでは、一例として、領域AA1からの反射光は、偏光面が透明体200’の主面に垂直な直線偏光(以下、S波という)LSであり、領域AA2からの反射光は、偏光面がS波LSの偏光面に垂直な直線偏光(以下、P波という)LPであるとする。
【0081】
これらS波LS及びP波LPの透明体200’に対する入射角θをブルースター角とほぼ等しくする。例えば、透明体200’として屈折率が約1.5のガラス板を使用した場合には、この入射角を約56°とする。
【0082】
こうすると、透明体200’が反射する光の殆どはS波LSとなる。すなわち、観察者400には、積層体10からの反射光のうち、領域AA1からの反射光は到達するが、領域AA2からの反射光は殆ど到達しない。したがって、観察者400は、領域AA1及びAA2をそれぞれ明部及び暗部として知覚する。以上のようにして、潜像を可視化することができる。
【0083】
なお、図9に示す配置において、積層体10をその法線の周りで90°回転させた場合、領域AA1及びAA2はそれぞれ暗部及び明部として見える。
【0084】
透明体200’の背面側には、光吸収層を設置することができる。この構成を採用すると、可視像のコントラスト比が向上する。
【0085】
透明体200’は、典型的には透明板であるが、平滑面を有していれば透明板でなくてもよい。透明体200’は、この可視像化のためのみに使用するものであってもよく、或いは、携帯機器が搭載しているディスプレイのカバープレートなど他の目的で使用可能なものであってもよい。
【0086】
上述した積層体10は反射型偏光層11を含んでいるので、検証具200を使用することなく積層体10の前面を直接に観察した場合、積層体10の前面は明るく見える。したがって、この積層体10の前面上には、視認性の高い印刷パターンを形成することができる。
【0087】
図10は、図1及び図2に示す積層体の変形例を概略的に示す平面図である。図11は、図10に示す積層体のXI−XI線に沿った断面図である。
【0088】
図10及び図11に示す積層体10は、オーバーコート層14上に形成された印刷パターン15をさらに含んでいること以外は、図1及び図2を参照しながら説明した積層体10と同様の構造を有している。このように、印刷パターン15は、オーバーコート層14上に形成することができる。
【0089】
印刷パターン15は、オーバーコート層14と複屈折性層12との間に介在させてもよい。或いは、印刷パターン15は、オーバーコート層14と反射型偏光層11との間に介在させてもよい。或いは、印刷パターン15は、複屈折性層12と反射型偏光層11との間に介在させてもよい。
【0090】
上述した積層体10は、回折構造を含んでいてもよい。
図12は、図1及び図2に示す積層体の他の変形例を概略的に示す平面図である。図13は、図12に示す積層体のXIII−XIII線に沿った断面図である。この積層体10は、回折構造形成層18及び反射層13bをさらに含んでいること以外は、図1及び図2を参照しながら説明した積層体10と同様の構造を有している。
【0091】
回折構造形成層18は、反射型偏光層11と光吸収層13aとの間に介在している。この例では、回折構造形成層18は、反射型偏光層11の光吸収層13aと向き合った主面上に形成されている。回折構造形成層18の光吸収層13側の主面は、凸パターン又は凹パターンを含んでいる。回折構造形成層18は、例えば、熱可塑性樹脂などの透明樹脂からなる。
【0092】
反射層13bは、反射型偏光層11と光吸収層13aとの間に介在している。この例では、反射層13bは、回折構造形成層18の光吸収層13aと向き合った主面上に形成されている。反射層13bの前面は、回折構造形成層18の凸パターン又は凹パターンに対応した凸パターン又は凹パターンを含んでいる。この凸パターン又は凹パターンは、回折構造としてホログラム又は回折格子を形成している。この回折構造は、積層体の前面に回折画像を形成する。図11には、一例として、ホログラフィにより形成した回折画像HGを描いている。
【0093】
ホログラムは、例えば、以下の方法により形成することができる。まず、光学的な撮影方法を利用して、微細な凸パターン又は凹パターンからなるレリーフ型のマスター版を作製する。次いで、電気メッキ法を利用して、マスター版から凹パターン又は凸パターンを複製したニッケル製のプレス版を作製する。その後、回折構造形成層18に、プレス版を加熱しながら押し付ける。これにより、回折構造形成層18に、凸パターン又は凹パターンを転写する。さらに、回折構造形成層18上に、反射層13bを形成する。以上のようにして、ホログラムを形成することができる。
【0094】
ホログラムは、他の方法で形成することも可能である。すなわち、まず、平坦な回折構造形成層18上に、反射層13bを形成する。次に、反射層13bに、プレス版を加熱しながら押し付ける。これにより、反射層13及び回折構造形成層18に、凸パターン又は凹パターンを転写する。以上のようにして、ホログラムを形成することができる。
なお、このタイプのホログラムは、レリーフ型ホログラムと呼ぶ。
【0095】
回折格子は、光学的な撮影方法を利用しないこと以外はホログラムに関して説明したのと同様の方法により形成することができる。回折格子を形成する場合、各々が回折格子を含んだ複数の画素を配置することにより、グレーティングイメージ又はドットマトリクス(ピクセルグラム等)と呼ばれる画像を表示させてもよい。
【0096】
反射層13bは、例えば、金属層、合金層、又は高屈折率層である。金属層の材料としては、例えば、アルミニウム、錫、銀、クロム、ニッケル、及び金を使用することができる。合金層の材料としては、例えば、ニッケル−クロム−鉄合金、青銅、及びアルミ青銅を使用することができる。高屈折率層の材料としては、例えば、二酸化チタン、硫化亜鉛、及び三酸化二鉄などの無機誘電体を使用することができる。反射層13bとして、高屈折率層と低屈折率層とを交互に積層してなる誘電体多層膜を使用してもよい。
【0097】
反射層13bは、光透過性を有していてもよく、或いは、光透過性を有していなくてもよい。
【0098】
反射層13bが光透過性を有していない場合、光吸収層13aは省略してもよい。なお、この場合、光反射層13bの反射率が高いと、潜像の可視化が不可能となるか又は可視化した潜像が見辛くなる。例えば、光反射層13bの前方に光透過性の着色層を設置すると、潜像の可視化が不可能となるのを防止でき、可視化した潜像が見辛くなるのを抑制できる。
【0099】
反射層13bが光透過性を有している場合、光吸収層13aを設けると、可視化した潜像の視認性を高めることができる。光吸収層13aを設ける場合、光吸収層13aは、反射層13bの背面全体と向き合っていてもよく、或いは、反射層13bの背面の一部のみと向き合っていてもよい。光吸収層13aは、例えば、印刷又はコーティング法により形成することができる。
【0100】
反射層13bは、例えば、蒸着、スパッタリング、又はイオンプレーティングにより形成することができる。この場合、反射層13bの厚さは、例えば、約10nm乃至約100nmの範囲内とする。なお、反射層13bは、例えば、パスター加工、水洗シーライト加工、又はレーザ加工を利用することによりパターニングされた層として形成することができる。すなわち、反射層13bは、反射型偏光層11の主面全体と向き合っていてもよく、或いは、その一部のみと向き合っていてもよい。
【0101】
反射層13bは、上記のように回折構造形成層18上に形成してもよく、或いは、図示しない基材上に形成してもよい。例えば、一方の主面に凸パターン又は凹パターンを含んだ基材を準備する。次いで、この主面上に、上記の方法で反射層13bを形成する。その後、この基材と反射型偏光層11とを、接着剤層を介して貼り合わせる。基材が透明でない場合には、基材と反射型偏光層11とは、反射層13bが反射型偏光層11と向き合うように貼り合わせる。基材が透明である場合には、基材と反射型偏光層11とは、反射層13bが反射型偏光層11と向き合うように貼り合わせるか、又は、基材が反射型偏光層11と向き合うように貼り合わせる。このような方法で、反射型偏光層11に反射層13bを支持させてもよい。
【0102】
反射層13bとして、金属箔のようにそれ自体を単独で取り扱えるものを使用してもよい。この場合、例えば、反射層13bと反射型偏光層11との間に、回折構造形成層18の代わりに透明な接着剤層を介在させる。また、この場合、典型的には、光吸収層13aは省略する。
【0103】
回折構造は、反射型偏光層11の前方に設置してもよい。例えば、反射型偏光層11の前面に回折構造形成層18を形成し、その上に光透過性を有する反射層13bを形成してもよい。
【0104】
回折構造形成層18は、省略することができる。例えば、反射型偏光層11の表面に上述した凸パターン又は凹パターンを形成可能な場合には、回折構造形成層18は不要である。
【0105】
以上説明した積層体10は、真正さが確認されるべき物品に、直接又は間接的に支持させる。そして、真正さが未知の物品を真正品と偽造品などの非真正品との間で判別する場合に、以下に説明するように積層体10を利用することができる。
【0106】
上記の通り、この積層体10は、偏光子を介して観察することにより可視化する潜像を有している。すなわち、この積層体10を支持させた物品の少なくとも一部の領域は、偏光子を介して観察することにより可視化する潜像を有している。それゆえ、真正さが未知の物品がそのような潜像を有していない場合には、この物品は非真正品であると判断することができる。
【0107】
また、この積層体10は、偏光子を介することなく観察した場合に、観察方向と反射型偏光層11の主面の法線とがなす角度を大きくすることによりブルーシフトを生じる。したがって、真正さが未知の物品がそのようなブルーシフトを生じる領域を含んでいない場合には、この物品は非真正品であると判断することができる。
【0108】
真正さが未知の物品が先の潜像を保持している場合、可視化した潜像の形状及び/又は大きさを、真正品のそれと比較してもよい。可視化した潜像の形状及び/又は大きさが真正品のそれと異なっていれば、その物品は非真正品であると判断することができる。
【0109】
物品の判定には、上述した方法の1つのみを利用してもよく、複数を組み合わせて利用してもよい。また、この技術は、他の判定技術と組み合わせてもよい。物品の判定に利用する方法を増やすと、非真正品を真正品と誤って判断する確率が低くなる。
【0110】
積層体10は、以下に説明するように、様々な形態で使用され得る。
図14は、図1及び図2に示す積層体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。この粘着ラベル20は、積層体10と、その背面上に設けられた粘着層21とを含んでいる。この粘着ラベル20は、例えば、真正さが確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグなどの他の物品に貼り付ける。こうすると、上述した方法で、物品の真正を確認することができる。
【0111】
この粘着ラベル20は、脆性であってもよい。そのような粘着ラベル20は、例えば、積層体10に、切欠き及び/又はミシン目を形成することにより得られる。粘着ラベル20が脆性である場合、真正さが確認されるべき物品に貼り付けた粘着ラベルを剥がすと、積層体10は容易に破壊する。したがって、粘着ラベル20の貼り替えが困難となる。
【0112】
図15は、図1及び図2に示す積層体を含んだ記録媒体の一例を概略的に示す断面図である。この記録媒体30は、紙31と、この中に埋め込まれた積層体10とを含んでいる。紙31のうち積層体10の前面を被覆している部分には開口が設けられている。これにより、可視化した潜像の視認性を高めている。なお、潜像の可視化が可能であれば、紙31に先の開口は設けなくてもよい。
【0113】
この記録媒体30は、例えば、キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証媒体又は商品券及び株券などの有価証券媒体のための用紙として使用することができる。或いは、この記録媒体30は、後述する粘着ラベルの一部として使用することができる。或いは、この記録媒体30は、真正さが確認されるべき物品に取り付けられるべきタグ又はその一部として使用することができる。或いは、この記録媒体30は、真正さが確認されるべき物品を収容する包装体又はその一部として使用することができる。
【0114】
記録媒体30は、例えば、抄紙の際に繊維の層の間に積層体10を挟みこむことにより得られる。このような方法で得られる記録媒体30は、偽造等が難しい。
【0115】
図16は、図15の記録媒体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図である。この粘着ラベル40は、記録媒体30と、その背面上に設けられた粘着層41とを含んでいる。この粘着ラベル40は、例えば、真正さが確認されるべき物品に貼り付けるか、或いは、そのような物品に取り付けられるべきタグの基材などの他の物品に貼り付ける。
【0116】
図17は、図1及び図2に示す積層体を含んだラベル付き物品の一例を概略的に示す断面図である。このラベル付き物品100は、物品101と積層体10とを含んでいる。
【0117】
物品101は、真正さが確認されるべき物品である。物品101は、例えば、キャッシュカード、クレジットカード及びパスポートなどの認証媒体又は商品券及び株券などの有価証券媒体である。物品101は、認証媒体及び有価証券媒体以外の物品でもよい。例えば、物品101は、工芸品又は美術品であってもよい。或いは、物品101は、包装体とこれに収容された内容物とを含んだ包装品であってもよい。
【0118】
積層体10は、物品101に支持されている。例えば、積層体10は、物品101に貼り付けられる。この場合、例えば、図14に示す粘着ラベル20又は図16に示す粘着ラベル40を物品101に貼り付けることにより、積層体10を物品101に支持させることができる。
【0119】
積層体10は、他の方法で物品101に支持させてもよい。
例えば、物品101が紙を含んでいる場合、この紙の中に積層体10を埋め込んでもよい。この場合、ラベル付き物品100は、例えば、抄紙の際に繊維の層の間に積層体10を挟みこみ、その後、必要に応じて紙面への印刷等を行うことにより得られる。なお、潜像の可視化を容易にすべく、紙のうち積層体10の前面を被覆している部分には開口を設けてもよい。また、紙に埋め込む積層体10の形状に特に制限はない。例えば、スレッド状の積層体10を紙に埋め込んでもよい。
【0120】
積層体10を含んだタグを物品101に取り付けることにより、積層体10を物品101に支持させてもよい。物品101へのタグの付け替えが一般ユーザにとって困難であれば、積層体10は、物品101の真正を確認するのに十分に役立つ。
【実施例】
【0121】
以下、本発明の実施例について説明する。
反射型偏光層として、3M(Minnesota Mining & Manufacturing)社製のDBEFを準備した。
【0122】
次に、グラビアコーティング法により、反射型偏光層の前面上に、大日本インキ製造株式会社製の光配向剤IA−01を0.1μmの厚さに塗布した。次いで、この塗膜の全面を、波長が365nmの直線偏光を用いて、1J/cm2の照度で露光した。直線偏光は、その偏光面が反射型偏光層の透過軸に対して45°の角度をなすように照射した。その後、先の塗膜を、波長が365nmの直線偏光を用いて、2J/cm2の照度でパターン露光した。このパターン露光にはフォトマスクを使用し、直線偏光は、その偏光面が反射型偏光層の透過軸に対して平行となるように照射した。以上のようにして、配向方向が互いに異なる第1及び第2配向部を含んだ配向膜を得た。
【0123】
次いで、グラビアコーティング法により、配向膜上に、UVキュアラブル液晶UCL−008(大日本インキ株式会社製)を印刷した。65℃で60秒間の加熱後、窒素雰囲気中、この塗膜を0.5J/cm2の照度で紫外線露光して、塗膜を硬化させた。これにより、遅相軸の方向が45°異なる第1及び第2複屈折性部を含んだ複屈折性層を得た。なお、複屈折性層の厚さは1.5μmであり、第1及び第2複屈折性部の各々において常光線屈折率と異常光屈折率との差は0.18であった。すなわち、第1及び第2複屈折性部の各々は、波長λが540nmの一対の直線偏光を透過することにより、それら直線偏光にλ/2の位相差を与える半波長板である。
【0124】
次いで、反射型偏光層の背面に、黒色の染料とアクリル系接着剤とを含有した厚さが30μmの粘着層を形成した。さらに、複屈折性層上に、パール顔料を含有したカラーシフトインキを印刷した。以上のようにして、粘着ラベルを得た。
【0125】
次に、この粘着ラベルを基材上に貼り付けた。そして、粘着ラベルに自然光を照射しながら、まず、吸収型偏光フィルムを使用することなしに粘着ラベルの前面を観察した。その結果、複屈折性層に対応した領域とそれ以外の領域とを判別することはできなかった。次に、粘着ラベルに自然光を照射しながら、吸収型偏光フィルムを介して粘着ラベルの前面を観察した。その結果、複屈折性層に対応した領域及びそれ以外の領域を、それぞれ、明部及び暗部として見ることができた。すなわち、潜像を可視化することができた。
【図面の簡単な説明】
【0126】
【図1】本発明の一態様に係る識別用積層体を概略的に示す平面図。
【図2】図1に示す積層体のII−II線に沿った断面図。
【図3】図1及び図2に示す積層体が含む反射型偏光層を概略的に示す斜視図。
【図4】図1及び図2に示す積層体が含む反射型偏光層を概略的に示す斜視図。
【図5】図3及び図4に示す反射型偏光層の一部を概略的に示す断面図。
【図6】図3及び図4に示す反射型偏光層の一部を概略的に示す分解斜視図。
【図7】図1及び図2に示す積層体が保持している潜像を可視化する方法の一例を概略的に示す図。
【図8】図1及び図2に示す積層体が保持している潜像を可視化する方法の他の例を概略的に示す図。
【図9】図1及び図2に示す積層体が保持している潜像を可視化する方法の他の例を概略的に示す図。
【図10】図1及び図2に示す積層体の変形例を概略的に示す平面図。
【図11】図10に示す積層体のXI−XI線に沿った断面図。
【図12】図1及び図2に示す積層体の他の変形例を概略的に示す平面図。
【図13】図12に示す積層体のXIII−XIII線に沿った断面図。
【図14】図1及び図2に示す積層体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図。
【図15】図1及び図2に示す積層体を含んだ記録媒体の一例を概略的に示す断面図。
【図16】図15の記録媒体を含んだ粘着ラベルの一例を概略的に示す断面図。
【図17】図1及び図2に示す積層体を含んだラベル付き物品の一例を概略的に示す断面図。
【符号の説明】
【0127】
10…識別用積層体、11…反射型偏光層、12…複屈折性層、12a…第1複屈折性部、12b…第2複屈折性部、13a…光吸収層、13b…反射層、14…オーバーコート層、15…印刷パターン、17…配向膜、17a…第1配向部、17b…第2配向部、20…粘着ラベル、21…粘着層、30…記録媒体、31…紙、40…粘着ラベル、41…粘着層、100…ラベル付き物品、101…物品、200…検証具、200’…透明体、300…光源、400…観察者、AA1…領域、AA2…領域、AF…進相軸、AF’…進相軸、AR…反射軸、AS…遅相軸、AS’…遅相軸、AT…透過軸、AT’…透過軸、LL1…直線偏光、LL2…直線偏光、LLC…左円偏光、LLP…直線偏光、LN…自然光、LP…P波、LRC…右円偏光、LS…S波。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複屈折性の第1光透過性層と前記第1光透過性層とは光学特性が異なる第2光透過性層とを交互に積層してなる反射型偏光層と、前記偏光層の前面の一部と向き合った第1部分と前記偏光層の前記前面の他の一部と向き合い且つ前記第1部分とは遅相軸の方向が異なる第2部分とを含んだ複屈折性層とを具備したことを特徴とする識別用積層体。
【請求項2】
前記偏光層の背面と向き合った光吸収層をさらに具備したことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記偏光層が透過させた光又は反射した光を回折する回折構造を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層体と、前記積層体の背面に支持された粘着層とを具備したことを特徴とする粘着ラベル。
【請求項5】
前記積層体に切欠き及び/又はミシン目が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の粘着ラベル。
【請求項6】
紙と、前記紙の一方の主面に支持された粘着層と、背面が前記粘着層と向き合うように前記紙の中に埋め込まれた請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層体とを具備したことを特徴とする粘着ラベル。
【請求項7】
紙と、前記紙の中に埋め込まれた請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層体とを具備したことを特徴とする記録媒体。
【請求項8】
真正さが確認されるべき物品と、前記真正さが確認されるべき物品に支持された請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層体とを具備したことを特徴とするラベル付き物品。
【請求項9】
真正さが未知の物品を真正品と非真正品との間で判別する方法であって、
前記真正品は請求項8に記載のラベル付き物品であり、
前記真正さが未知の物品が、偏光子を介して観察することにより可視化する潜像を保持し且つ前記偏光子を介することなく観察したときに観察方向と前記偏光層の法線とがなす角度を大きくすることによりブルーシフトを生じる領域を含んでいない場合に、前記真正さが未知の物品は非真正品であると判断することを含んだことを特徴とする方法。
【請求項1】
複屈折性の第1光透過性層と前記第1光透過性層とは光学特性が異なる第2光透過性層とを交互に積層してなる反射型偏光層と、前記偏光層の前面の一部と向き合った第1部分と前記偏光層の前記前面の他の一部と向き合い且つ前記第1部分とは遅相軸の方向が異なる第2部分とを含んだ複屈折性層とを具備したことを特徴とする識別用積層体。
【請求項2】
前記偏光層の背面と向き合った光吸収層をさらに具備したことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記偏光層が透過させた光又は反射した光を回折する回折構造を含んでいることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層体と、前記積層体の背面に支持された粘着層とを具備したことを特徴とする粘着ラベル。
【請求項5】
前記積層体に切欠き及び/又はミシン目が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の粘着ラベル。
【請求項6】
紙と、前記紙の一方の主面に支持された粘着層と、背面が前記粘着層と向き合うように前記紙の中に埋め込まれた請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層体とを具備したことを特徴とする粘着ラベル。
【請求項7】
紙と、前記紙の中に埋め込まれた請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層体とを具備したことを特徴とする記録媒体。
【請求項8】
真正さが確認されるべき物品と、前記真正さが確認されるべき物品に支持された請求項1乃至3の何れか1項に記載の積層体とを具備したことを特徴とするラベル付き物品。
【請求項9】
真正さが未知の物品を真正品と非真正品との間で判別する方法であって、
前記真正品は請求項8に記載のラベル付き物品であり、
前記真正さが未知の物品が、偏光子を介して観察することにより可視化する潜像を保持し且つ前記偏光子を介することなく観察したときに観察方向と前記偏光層の法線とがなす角度を大きくすることによりブルーシフトを生じる領域を含んでいない場合に、前記真正さが未知の物品は非真正品であると判断することを含んだことを特徴とする方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−139510(P2008−139510A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−324762(P2006−324762)
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]