積層体とその製造方法
【課題】低屈折率で反射防止性の良好な層を備えた積層体と、この積層体を大気圧または大気圧近傍下において効率良く製造する方法の提供。
【解決手段】基材11上に酸化ケイ素微粒子からなる層12が形成された積層体であって、前記酸化ケイ素微粒子の1次粒子径が50〜700nmで、前記層12の屈折率が1.20〜1.40である積層体10。この積層体10は、基材11を大気圧近傍の圧力下、特定の条件でプラズマ処理することにより製造できる。
【解決手段】基材11上に酸化ケイ素微粒子からなる層12が形成された積層体であって、前記酸化ケイ素微粒子の1次粒子径が50〜700nmで、前記層12の屈折率が1.20〜1.40である積層体10。この積層体10は、基材11を大気圧近傍の圧力下、特定の条件でプラズマ処理することにより製造できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止性を備え、画像表示装置の前面板などに好適に使用される積層体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの画像表示装置において、透過率やコントラストの向上、背景の写り込み低減を目的として、反射率を低減させる様々な反射防止処理技術が提案されている。一般的な反射防止処理技術としては、基材表面に任意の屈折率および厚みを有する単一または複数の層を積層させて、光学干渉を利用して反射率を低減させる技術が知られている。
【0003】
低屈折率物質からなる単一の層を基材上に積層すれば、単一の波長に対して有効な反射防止効果が得られる。このような低屈折率物質の層を基材上に積層させる方法としては、特定の有機ポリマーの共存下、アルコキシシランのゾルゲル反応によってシリカ/有機ハイブリッド体を形成した後、有機ポリマーを除去して均一な孔径を有する多孔質膜を得る方法(例えば、特許文献1参照。)や、低圧下でのプラズマCVDにより空隙の多い酸化無機化合物を堆積させる方法(例えば、特許文献2参照。)などがある。
【0004】
これらの方法のうち、特許文献1に記載の方法では、低屈折率物質を分散させた溶液を基材に塗布するが、このような方法では、膜厚を光学干渉が利用可能な厚さに制御することが難しいという問題があった。また、また塗布ムラや溶剤の乾燥ムラによる外観不良が生じやすく、生産性に劣るという問題があった。
【0005】
一方、特許文献2に記載された低圧下でのプラズマCVDによる方法では、溶液を塗布する方法で生じやすい上述の問題は回避できるが、高価な真空チャンバーや真空排気装置を設置する必要があった。さらに、真空中で処理するため、大面積の基板を処理しようとすると真空容器を大きくしなければならず、かつ、真空排気装置も大出力のものが必要となる。したがって、設備自体が非常に高価なものになるとともに、処理に要する時間が長くなり、生産性が低下するという問題点があった。
【0006】
そこで、このような低圧下での処理における課題を克服するため、大気圧下でのプラズマCVD法により、屈折率の異なる複数の層からなる反射防止層を形成する方法が検討されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−14564号公報
【特許文献2】特開2003−54934号公報
【特許文献3】特開2000−121804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の方法では、屈折率の異なる複数の層を個別の処理で積層させる必要があるため、処理に要する時間が長くなり、生産性に劣るという問題があった。また、良好な反射防止性能を得るためには、基材表面に供給する大気圧プラズマガス流を精密に制御しなければならないという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、低屈折率で反射防止性の良好な層を備えた積層体と、この積層体を大気圧または大気圧近傍下において効率良く製造する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討した結果、大気圧近傍の圧力下、特定の有機金属化合物を特定のバブリング用不活性ガスで気化させ、特定の条件でプラズマ処理することにより、小粒径の酸化ケイ素微粒子からなり、屈折率が小さく反射防止能の優れた酸化ケイ素微粒子層を基材上に形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の積層体は、基材上に酸化ケイ素微粒子からなる層が形成された積層体であって、前記酸化ケイ素微粒子の1次粒子径が50〜700nmで、前記層の屈折率が1.20〜1.40であることを特徴とする。
本発明の積層体の製造方法は、大気圧近傍の圧力下で、少なくとも一方の電極が誘電体で被覆された一対の対向電極間に基材を配置し、前記対向電極間に、テトラエトキシシランまたはヘキサメチルジシロキサンからなる有機金属化合物、バブリング用不活性ガス、希釈用不活性ガス、および酸素ガスを含有する処理用ガスを導入するとともに1kHz以上10MHz未満の周波数の電圧を前記電極に印加してプラズマを発生させ、電力面密度を2.0〜30.0W/cm2として前記基材上に酸化ケイ素微粒子からなる層を形成させる積層体の製造方法であって、前記有機金属化合物がテトラエトキシシランである場合には、前記バブリング用不活性ガスの前記酸素ガスに対する流量比を8.0以下とし、前記有機金属化合物がヘキサメチルジシロキサンである場合には、前記バブリング用不活性ガスの前記酸素ガスに対する流量比を0.1以下とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低屈折率で反射防止性の良好な層を備えた積層体と、この積層体を大気圧または大気圧近傍下において効率良く製造する方法とを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の積層体10の一例を示す断面図であり、基材11の片面上に、酸化ケイ素微粒子からなる層(以下、酸化ケイ素微粒子層という。)12が形成されたものである。
ここで、酸化ケイ素微粒子層12を構成している酸化ケイ素微粒子は、その1次粒子径が50〜700nmの範囲のものである。1次粒子径が50nm以上であると、酸化ケイ素微粒子層12の屈折率が低下し、良好な反射防止性を得やすい傾向にあり、1次粒子径が700nm以下であると、酸化ケイ素微粒子層12と基材11との密着性や、酸化ケイ素微粒子層12の物理的な強度が良好になる傾向にある。
【0012】
ここで1次粒子径とは、酸化ケイ素微粒子層12を走査型電子顕微鏡で観察し、得られた画像中の1次粒子を任意に10個選択し、各1次粒子について計測した粒径の平均値である。
また、図1においては、基材11の片面に酸化ケイ素微粒子層12が形成されたものを例示しているが、用途によっては、基材の両面に酸化ケイ素微粒子層が形成されていてもよい。
【0013】
このような積層体10においては、1次粒子径が50〜700nmである小粒径の酸化ケイ素微粒子から酸化ケイ素微粒子層12が形成されている。よって、この酸化ケイ素微粒子層12は1.20〜1.40という小さな屈折率を示し、この範囲内であることで優れた反射防止性を発現する。そのため、このような積層体10は、例えば、画像表示装置の前面板などに好適に使用される。
【0014】
酸化ケイ素微粒子層12の厚みは、10〜1000nmの範囲が好ましい。10nm以上であると、画像表示装置の前面板などでの反射防止性能が良好であり、1000nm以下であると、酸化ケイ素微粒子層の物理的強度が良好である。
基材11の種類には特に制限はなく、積層体10の用途などに応じて適宜選択できるが、積層体10の用途が画像表示装置の前面板など、反射防止用途に使用されるものである場合などには、基材11の材質としてメタクリル系樹脂が好ましく使用される。
【0015】
メタクリル系樹脂を構成する成分は特に限定されないが、優れた透明性や易成形性を有するメタクリル系樹脂が好ましく、具体的には、メタクリル酸メチル単位を主成分とするメタクリル系樹脂が好ましい。より具体的には、メタクリル酸メチル単独重合体またはメタクリル酸メチルおよびこれと共重合可能なビニル系単量体との共重合体からなるメタクリル系樹脂が挙げられる。
メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。ここで「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸もしくはメタクリル酸のことである。
【0016】
メタクリル系樹脂が、アクリル酸エステル単位とメタクリル酸メチル単位とを含むものの場合、アクリル酸エステル単位の含有量は1〜10質量%が好ましく、この範囲において、3質量%以上がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。メタクリル酸メチル単位の含有量は90〜99質量%が好ましく、この範囲において、93質量%以上がより好ましく、97質量%以下がより好ましい。メタクリル系樹脂中にアクリル酸エステル単位が含まれると、透過損失の小さい優れた透明性を有するメタクリル系樹脂を得ることが容易となる。一方、アクリル酸エステル単位の含有量が多すぎると、得られたメタクリル系樹脂の耐熱性が低下し、高熱を発する光源ランプと近接する用途においては、樹脂の融解や変形が生じることがある。
【0017】
基材11の形状は特に限定されず、成型品、フィルム、板等が挙げられるが、画像表示装置の前面板用途である場合には、板状であることが好ましい。基材11がメタクリル系樹脂からなる板(メタクリル系樹脂板)である場合には、厚みは0.5〜20mmであることが好ましい。メタクリル系樹脂板の厚みが0.5mm以上であると、剛性が高く取り扱い性に優れ、またプラズマ処理時の反りが抑制される傾向にある。メタクリル系樹脂板の厚みが20mm以下であると、均一な大気圧プラズマが得られる傾向にある。
【0018】
メタクリル系樹脂板の表面、特に酸化ケイ素微粒子層が形成される側の表面には、硬化膜が形成されていることが好ましい。硬化膜が形成されていると、酸化ケイ素微粒子層12のメタクリル系樹脂板表面への密着性が良好になる傾向にある。また、硬化膜が形成されていると、基材11の耐擦傷性も向上する。
硬化膜の厚みは10〜30μmの範囲が好ましい。硬化膜の厚みが10μm以上であると耐擦傷性が良好となり、30μm以下であると切断時の割れ等が発生しにくく加工性が良好となる。
【0019】
形成される硬化膜の組成、硬化方法等は特に限定されるものではなく、光硬化性重合体原料に紫外線等の活性エネルギー線を照射する方法、シリコン系、メラミン系の架橋性硬化液を加熱する方法等が挙げられるが、なかでも、光硬化性重合体原料として、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物(a−1)100質量部に対して、光開始剤(a−2)0.1〜10質量部を加えた混合物を用い、この混合物に紫外線を照射する方法が硬化速度の面より好ましい。
【0020】
重合性化合物(a−1)は、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する架橋反応性化合物であり、各(メタ)アクリロイルオキシ基を結合する残基が、炭化水素またはその誘導体であり、その分子内にはエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合等を含むことができる。なお、(メタ)アクリロイルオキシとは、アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシを意味する。
これらの化合物の主な例としては、1モルの多価アルコールと、2モル以上の(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体とから得られるエステル化物;多価アルコールと多価カルボン酸またはそれの無水物と(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体とから得られる、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する線状のエステル化物等を挙げることができる。
【0021】
1モルの多価アルコールと、2モル以上の(メタ)アクリル酸とから得られるエステルの例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0022】
多価アルコールと多価カルボン酸またはそれの無水物と(メタ)アクリル酸とから得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する線状のエステル化物において、多価アルコールと多価カルボン酸またはそれの無水物と(メタ)アクリル酸の好ましい組合わせとしては、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
【0023】
重合性化合物(a−1)の他の例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の3量化により得られるポリイソシアネートと、活性水素を有するアクリルモノマー、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、1,2,3−プロパントリオール−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等とを、1モル当たり3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート等のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチレン]イソシアヌレート;公知のエポキシポリアクリレート;公知のウレタンポリアクリレート等を挙げることができる。
これら重合性化合物(a−1)としては、以上の化合物を1種以上使用できる。
【0024】
光開始剤(a−2)は特に限定されないが、具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0025】
光開始剤(a−2)の添加量は、重合性化合物(a−1)100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましい。0.1質量部以上であると、光硬化性重合体原料の硬化性が向上し、10質量部以下であると硬化膜の着色が発生しない傾向がある。開始剤は1種以上を使用できる。
【0026】
光硬化重合体原料には、目的に応じて従来から使用されている種々の添加剤を加えることができる。添加剤としては、界面活性剤、レベリング剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、難燃剤、可塑剤等を挙げることができる。添加剤の添加量は、得られる硬化膜の物性が損なわれない範囲内で適宜選択できるが、成分(a−1)、成分(a−2)の合計100質量部当たり、10質量部以下であることが好ましい。
【0027】
基材11の製造方法には特に制限はないが、表面に硬化膜が形成されたメタクリル系樹脂板からなる基材11を製造する場合には、対向する一対の鋳型の少なくとも一方の内面に、光硬化性重合体原料を塗布する塗布工程と、塗布された光硬化性重合体原料を硬化させて硬化膜を形成する硬化膜形成工程と、鋳型のキャビティ内にメタクリル系重合性混合物を注入して注型重合し、形成された硬化膜の内側にメタクリル系樹脂板を形成する積層工程とを備えた方法により、連続的に効率よく製造できる。
【0028】
具体的にこのような方法で使用される鋳型としては、例えば所定の間隔で対向する一対の強化ガラス板、クロムメッキ板、ステンレス板等の板状体と、対向する板状体間をシールするための軟質塩化ビニル等のガスケットとで構成されたものなども例示できるが、所定の間隔で対向する一対のエンドレスベルトを有して構成され、これらエンドレスベルトの対向面間がキャビティとなっている鋳型を採用すると生産性が良好となり、好適である。
図2は、このような鋳型21を備えた連続製造装置20の一例であって、この鋳型21において、一対のエンドレスベルト22a、22bは、対向面22c、22dが対峙した状態で同一方向(図中矢印で示す。)へ同一速度で走行する。そして該エンドレスベルト22a、22bの幅方向の両側部には、エンドレスベルト22a、22bと同一速度で走行する一対のガスケット23a、23bが配されている。よって、2枚のエンドレスベルト22a、22bの対向面22c、22dが所定の間隔に維持されているとともに、ここに注入されるメタクリル系重合性混合物の外部への漏れが防止されるようになっている。
なお、図中、符号24、25、26、27は、エンドレスベルト22a、22bに張力を与える主ローラー、符号28、…、28はベルトを支持する支持ローラーである。
【0029】
図2の連続製造装置20により、一方の表面に硬化膜が形成されたメタクリル系樹脂板を連続的に製造する場合、すなわち、連続キャスト法で製造する場合には、まず、エンドレスベルト22a、22bのいずれか一方に、フィルムカバー法、流延法、ローラーコート法、バーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法等の塗布方法で光硬化性重合体原料を塗布して塗布膜を設ける(塗布工程)。これらのなかで好ましい塗布方法としては、フィルムカバー法、エアーナイフコート法が挙げられる。ついで、この塗布膜を紫外線照射などにより硬化させて硬化膜を形成し(硬化膜形成工程)、その後、キャビティ内、すなわちエンドレスベルト22a、22bの対向面22c、22d間に、メタクリル系重合性混合物を注入して注型重合し、先に形成された硬化膜の内側にメタクリル系樹脂板を形成する(積層工程)。その結果、硬化膜の内側にメタクリル系樹脂板が形成されるので、これを基材11として、対向面22c、22d間から剥離して取り出せばよい。
このようにメタクリル系樹脂板を形成するよりも前に、硬化膜を硬化形成しておくと、硬化膜とメタクリル系樹脂板との密着性が良好となり好ましい。
【0030】
エンドレスベルト22a、22bの材質には特に制限はないが、例えばステンレス鋼、アルミ板等が挙げられる。ガスケット23a、23bの材質としては、例えば、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどが好適である。
【0031】
連続キャスト法で製造され、一方の表面に硬化膜が形成されたメタクリル系樹脂板としては、商品名アクリライトMR(三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。また、同様の方法で製造され、硬化膜を備えないメタクリル系樹脂板としては、商品名アクリライトL(三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。
【0032】
なお、メタクリル系樹脂板の両方の表面に硬化膜を形成する場合には、塗布工程において、一対のエンドレスベルト22a、22bの両方の対向面22c、22dに、光硬化性重合体原料を塗布し、これらを硬化膜形成工程において硬化させればよい。また、硬化膜を備えないメタクリル系樹脂板を製造する場合には、塗布工程と硬化膜形成工程を行わなければよい。
【0033】
このように連続キャスト法などで基材11を製造し、ついで、図3に例示するような大気圧プラズマ処理装置30でこれをプラズマ処理することにより、図1の積層体10を製造できる。
なお、本発明において、大気圧近傍の圧力とは、10〜200kPaの圧力を意味する。なかでも、圧力調整が容易である点や装置構成の簡便さから、90〜110kPaの圧力範囲が好ましい。
【0034】
図3の大気圧プラズマ処理装置30は、処理用のチャンバー31内に上部電極32aと下部電極32bからなる一対の対向電極32を備え、少なくとも一方の電極の対向面が誘電体で被覆されたものである。プラズマが発生する部位は、対向電極32のいずれか一方のみに誘電体が被覆された場合には誘電体と電極の間であり、いずれにも誘電体が被覆された場合には誘電体間である。
対向電極32の構造は、電界集中によるアーク放電の発生を避けるために、対向電極32間の距離が略一定とされた構造が好ましく、この条件を満たす電極構造としては、平行平板型、円筒対向平板型、球対向平板型、双曲面対向平板型、同軸円筒型構造等が挙げられる。なかでも、基材11が例えばメタクリル系樹脂板等の板状である場合には、図3のような平行平板型の対向電極32が好ましい。
【0035】
対向電極32を構成する材料としては、例えば、銀、白金、アルミニウム、銅、鉄等の純金属や、ステンレス、真鍮等の多成分系の金属を用いることができる。また、対向電極32を被覆する誘電体としては、例えば、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス等の無機ガラスおよびこれらの混合物、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン等のプラスチックおよびこれらの混合物、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム等の金属酸化物およびこれらの混合物などの固体誘電体を用いることができる。
【0036】
対向電極32の対向面間の距離(最短距離)は、処理される基材11の厚さ、被覆された誘電体の厚さ、印加される電圧の大きさ、均一な層の形成しやすさ等を考慮して決定されるが、対向電極22の一方のみに誘電体が被覆された場合、両方に誘電体が被覆された場合のいずれにおいても、50mm以下であることが好ましい。最短距離が50mm以下であると、均一な放電プラズマを発生させることができる。
【0037】
このような大気圧プラズマ処理装置30の対向電極32間に基材11を配置するとともに、処理用ガスをガス導入口33から供給して対向電極32の対向面間に導入し、電源部34に高周波電圧を印加して対向電極32間にプラズマを発生させることにより、基材11上に酸化ケイ素微粒子層12を形成することができる。なお、図中符号35は使用後の処理用ガスを排出するためのガス排出口である。
【0038】
ここで処理用ガスは、テトラエトキシシラン(TEOS)またはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)からなる有機金属化合物、有機金属化合物を気化させるためのバブリング用不活性ガス、プラズマを発生させるための希釈用不活性ガス、および酸素ガスを含有する。有機金属化合物は、これを入れた容器内に常温のバブリング用不活性ガスをバブリングさせることで気化し、バブリング用不活性ガスに同伴され導入される。前記バブリング用不活性ガス及び希釈用不活性ガスは、ヘリウム及びアルゴンの少なくとも一方からなることが好ましい。
有機金属化合物として使用されるTEOSまたはHMDSOは、安定性、取り扱い性が良好で、酸化ケイ素微粒子層12の堆積効率に優れるため好適である。
プラズマ中、TEOS、HMDSOがケイ素源となり、酸素ガスが酸素源となって酸化ケイ素が生成する。
【0039】
有機金属化合物としてTEOSを使用した場合には、処理用ガス中のバブリング用不活性ガスの酸素ガスに対する流量比(バブリング用不活性ガス/酸素ガス)を8.0以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜8.0である。有機金属化合物としてHMDSOを使用した場合には、処理用ガス中のバブリング用不活性ガスの酸素ガスに対する流量比(バブリング用不活性ガス/酸素ガス)を0.1以下とすることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1である。
このような流量比としてプラズマ処理することにより、酸化ケイ素微粒子の1次粒子径を50〜700nmの範囲に制御でき、その結果、形成される酸化ケイ素微粒子層12の屈折率を1.20〜1.40とすることができる。
【0040】
対向電極22間に印加する電圧は、1kHz以上10MHz未満の周波数であり、電力面密度が2.0〜30.0W/cm2となる範囲とすることが好ましい。より好ましい周波数は1kHz以上500kHz以下である。周波数がこの範囲であると、基材11が樹脂製である場合、処理時の変形や劣化が抑制される。また、電力面密度が2.0W/cm2以上であると、形成される酸化ケイ素微粒子層12の屈折率を1.20〜1.40に制御しやすく、30.0W/cm2以下であると、プラズマ照射熱による基材11の変形を抑制することができる。電力面密度は、一対の対向電極間に投入する電圧を、通常の変圧器を用いて変化させることで制御することができる。
電力面密度が大きくなりすぎると、粒子の生成よりも分解が優先的に進行して粒子が無くなって膜状になり、屈折率が上昇し、また処理時の熱により基材が反り易くなる傾向がある。電力面密度が小さくなりすぎると、有機金属化合物の分解が不十分となり酸化ケイ素微粒子となりにくい傾向がある。また、ガス流量比が過剰な場合は有機金属化合物の分解が不十分となり酸化ケイ素膜となりにくい傾向にあり、ガス流量比が過小の場合は成膜速度が低くなる傾向がある。
なお、電力面密度とは、一対の対向電極間に投入する電力をプラズマと接している一方の電極の表面積で割った値である。
【0041】
基材11をプラズマに曝す時間、すなわちプラズマによる処理時間は、電力面密度によって異なるが、通常、60秒間以下が好ましく、更に好ましくは30秒間以下である。処理時間がこのような範囲であると、プラズマ照射熱による基材11の変形が抑制される傾向にある。
【0042】
なお、図3では、プラズマ処理を大気圧にて行う場合を示しているため、チャンバー31内の圧力を調整する圧力調整手段は図示されていないが、10〜200kPaの範囲内であって、大気圧以外であって大気圧近傍の圧力下にてプラズマ処理を行う場合には、圧力調整手段を設けて、適宜所望の圧力に調整すればよい。
【0043】
以上説明したように、例えば図2に示す連続製造装置20を使用した連続キャスト法で基材11を製造し、ついで、この基材11に例えば図3に示す大気圧プラズマ処理装置30により酸化ケイ素微粒子層12を形成することにより、大気圧または大気圧近傍下で連続的に、低屈折率で反射防止性の良好な層を備えた積層体10を効率良く製造できる。特に、連続キャスト法において、メタクリル系樹脂板の少なくとも一方の表面に硬化膜を備えた基材11を製造すれば、密着性が良好な酸化ケイ素微粒子層12がメタクリル系樹脂板上に形成された積層体10を大気圧または大気圧近傍下で連続的に生産できる。
こうして得られた積層体10は、例えば、画像表示装置などの前面板として好適に使用される。
【実施例】
【0044】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(プラズマ処理装置)
図3に示した大気圧プラズマ処理装置30((株)サムウェイ製、型式T162−6512B)を大気圧下にて使用した。
なお、上部電極32aと下部電極32bとの間隔は2mmとした。また、上部電極32aは、20×20×200mmのSUS製電極表面に、厚さ1mmの酸化アルミニウム(固体誘電体)を溶射したものを用いた。下部電極32bは、200×200×20mmのSUS製電極表面に、厚さ1mmの酸化アルミニウム(固体誘電体)を溶射したものを用いた。また、下部電極32bは、予め設定された速度で矢印の方向に移動できるようになっている。さらに、電源部34は、30〜299kHz未満の周波数および50W/cm2以下の電力面密度を印加できるように構成されている。なお、電極32a、32bとも相対する20×200mmの面間がプラズマ領域となる。
【0045】
(酸化ケイ素微粒子層の屈折率の測定)
酸化ケイ素微粒子層の屈折率は、Filmetrics社製の反射光干渉式膜厚計F−20にて測定した。
【0046】
(酸化ケイ素微粒子層を構成する1次粒子径の測定)
酸化ケイ素膜を構成する1次粒子径は、該酸化ケイ素膜を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、S−3400N)で観察し、得られた画像中における1次粒子から任意の10個を選択し、計測した粒径の平均値から求めた。
【0047】
(酸化ケイ素微粒子層の密着性の評価)
カッターを使用して酸化ケイ素微粒子層に1mm間隔で縦・横11本ずつ格子状に、基材表面まで達するように傷を入れ、1×1mmの升目100個を作製した。この升目の上に粘着テープ(ニチバン製、商品名「セロテープ(登録商標)」)をよく密着させ、45°手前方向に急激に剥した。このとき、酸化ケイ素微粒子層が剥離せずに残存した升目の数(n)を計測した。nの値は、好ましくは96個以上、より好ましくは100個であることが適当である。nの値が大きいほど、酸化ケイ素微粒子層の密着性が高いことを示す。nが95個以下を×とし、96個以上を○とした。
【0048】
(実施例1)
基材11として、連続キャスト法で生産され、硬化膜を有するメタクリル系樹脂板(商品名アクリライトMR(両面硬化膜付)、三菱レイヨン製、厚さ1mm)を使用し、この基材11を下部電極32b上に、前記樹脂板を配置した。
処理用ガスは、TEOSを含有するHeガス(TEOSの容器中にバブリング用不活性ガスであるHeガスを常温にてバブリングしたTEOS含有ガス)と、それを希釈するHeガス(希釈用不活性ガス)と、酸素ガスとからなるものとした。これらの流量などを表1に示す。
この処理用ガスを、ガス導入口33を経由して上部電極32aと下部電極32b間に導入した。そして、電源部34より周波数299kHz、電力面密度25.0W/cm2の高周波電圧を印加し、大気圧プラズマを発生させ、基材11にプラズマを60秒間照射して、基材11の硬化膜が形成された側の表面に酸化ケイ素微粒子層12を形成した。なお、照射時間は、任意の速度で移動している下部電極32bに同伴される基材11上の任意の1点が、プラズマ照射された時間の合計である。処理後の処理用ガスは、ガス排出口35より排出した。
得られた積層体10を評価した。結果を表1に示す。
また、酸化ケイ素微粒子層12の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、得られた画像を図4に示す。
【0049】
(実施例2〜8、比較例1〜5)
各種条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様の基材11を使用して、積層体10を製造した。評価結果を表1に示す。また、比較例5以外において、酸化ケイ素微粒子層12の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、得られた画像を図5〜15に示した。
【0050】
(実施例9)
基材11として、連続キャスト法で生産され、硬化膜が形成されていないメタクリル系樹脂板(商品名アクリライトL、三菱レイヨン製、厚さ1mm)を使用した以外は、表1に示すように実施例4と同じ条件でプラズマ処理し、積層体10を得て、評価した。評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1では、プラズマ照射の時間が長かったため積層体に反りが認められたが、酸化ケイ素微粒子層を構成している酸化ケイ素微粒子は、1次粒子径が200nmで、層の屈折率は1.23であった。また、酸化ケイ素微粒子層の密着性は良好であった。
実施例2〜8でも、酸化ケイ素微粒子層を構成している酸化ケイ素微粒子は、1次粒子径が200〜500nm、層の屈折率は1.20〜1.40で、酸化ケイ素微粒子層の密着性は良好であった。ただし、硬化膜が形成されていない基材を使用した実施例9では、密着性が不良で、nの数は0個であった。
比較例1〜5では、プラズマ処理の条件が不適切であったため、酸化ケイ素微粒子の1次粒子自体が観察されず、屈折率も高かった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】積層体の一例を示す断面図である。
【図2】基材を製造する連続製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】基材に酸化ケイ素微粒子層を形成する大気圧プラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0054】
10 積層体
11 基材
12 酸化ケイ素微粒子層
20 連続製造装置
21 鋳型
22a、22b エンドレスベルト
30 大気圧プラズマ処理装置
32 対向電極
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止性を備え、画像表示装置の前面板などに好適に使用される積層体とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイなどの画像表示装置において、透過率やコントラストの向上、背景の写り込み低減を目的として、反射率を低減させる様々な反射防止処理技術が提案されている。一般的な反射防止処理技術としては、基材表面に任意の屈折率および厚みを有する単一または複数の層を積層させて、光学干渉を利用して反射率を低減させる技術が知られている。
【0003】
低屈折率物質からなる単一の層を基材上に積層すれば、単一の波長に対して有効な反射防止効果が得られる。このような低屈折率物質の層を基材上に積層させる方法としては、特定の有機ポリマーの共存下、アルコキシシランのゾルゲル反応によってシリカ/有機ハイブリッド体を形成した後、有機ポリマーを除去して均一な孔径を有する多孔質膜を得る方法(例えば、特許文献1参照。)や、低圧下でのプラズマCVDにより空隙の多い酸化無機化合物を堆積させる方法(例えば、特許文献2参照。)などがある。
【0004】
これらの方法のうち、特許文献1に記載の方法では、低屈折率物質を分散させた溶液を基材に塗布するが、このような方法では、膜厚を光学干渉が利用可能な厚さに制御することが難しいという問題があった。また、また塗布ムラや溶剤の乾燥ムラによる外観不良が生じやすく、生産性に劣るという問題があった。
【0005】
一方、特許文献2に記載された低圧下でのプラズマCVDによる方法では、溶液を塗布する方法で生じやすい上述の問題は回避できるが、高価な真空チャンバーや真空排気装置を設置する必要があった。さらに、真空中で処理するため、大面積の基板を処理しようとすると真空容器を大きくしなければならず、かつ、真空排気装置も大出力のものが必要となる。したがって、設備自体が非常に高価なものになるとともに、処理に要する時間が長くなり、生産性が低下するという問題点があった。
【0006】
そこで、このような低圧下での処理における課題を克服するため、大気圧下でのプラズマCVD法により、屈折率の異なる複数の層からなる反射防止層を形成する方法が検討されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2004−14564号公報
【特許文献2】特開2003−54934号公報
【特許文献3】特開2000−121804号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載の方法では、屈折率の異なる複数の層を個別の処理で積層させる必要があるため、処理に要する時間が長くなり、生産性に劣るという問題があった。また、良好な反射防止性能を得るためには、基材表面に供給する大気圧プラズマガス流を精密に制御しなければならないという問題があった。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、低屈折率で反射防止性の良好な層を備えた積層体と、この積層体を大気圧または大気圧近傍下において効率良く製造する方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討した結果、大気圧近傍の圧力下、特定の有機金属化合物を特定のバブリング用不活性ガスで気化させ、特定の条件でプラズマ処理することにより、小粒径の酸化ケイ素微粒子からなり、屈折率が小さく反射防止能の優れた酸化ケイ素微粒子層を基材上に形成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の積層体は、基材上に酸化ケイ素微粒子からなる層が形成された積層体であって、前記酸化ケイ素微粒子の1次粒子径が50〜700nmで、前記層の屈折率が1.20〜1.40であることを特徴とする。
本発明の積層体の製造方法は、大気圧近傍の圧力下で、少なくとも一方の電極が誘電体で被覆された一対の対向電極間に基材を配置し、前記対向電極間に、テトラエトキシシランまたはヘキサメチルジシロキサンからなる有機金属化合物、バブリング用不活性ガス、希釈用不活性ガス、および酸素ガスを含有する処理用ガスを導入するとともに1kHz以上10MHz未満の周波数の電圧を前記電極に印加してプラズマを発生させ、電力面密度を2.0〜30.0W/cm2として前記基材上に酸化ケイ素微粒子からなる層を形成させる積層体の製造方法であって、前記有機金属化合物がテトラエトキシシランである場合には、前記バブリング用不活性ガスの前記酸素ガスに対する流量比を8.0以下とし、前記有機金属化合物がヘキサメチルジシロキサンである場合には、前記バブリング用不活性ガスの前記酸素ガスに対する流量比を0.1以下とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低屈折率で反射防止性の良好な層を備えた積層体と、この積層体を大気圧または大気圧近傍下において効率良く製造する方法とを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の積層体10の一例を示す断面図であり、基材11の片面上に、酸化ケイ素微粒子からなる層(以下、酸化ケイ素微粒子層という。)12が形成されたものである。
ここで、酸化ケイ素微粒子層12を構成している酸化ケイ素微粒子は、その1次粒子径が50〜700nmの範囲のものである。1次粒子径が50nm以上であると、酸化ケイ素微粒子層12の屈折率が低下し、良好な反射防止性を得やすい傾向にあり、1次粒子径が700nm以下であると、酸化ケイ素微粒子層12と基材11との密着性や、酸化ケイ素微粒子層12の物理的な強度が良好になる傾向にある。
【0012】
ここで1次粒子径とは、酸化ケイ素微粒子層12を走査型電子顕微鏡で観察し、得られた画像中の1次粒子を任意に10個選択し、各1次粒子について計測した粒径の平均値である。
また、図1においては、基材11の片面に酸化ケイ素微粒子層12が形成されたものを例示しているが、用途によっては、基材の両面に酸化ケイ素微粒子層が形成されていてもよい。
【0013】
このような積層体10においては、1次粒子径が50〜700nmである小粒径の酸化ケイ素微粒子から酸化ケイ素微粒子層12が形成されている。よって、この酸化ケイ素微粒子層12は1.20〜1.40という小さな屈折率を示し、この範囲内であることで優れた反射防止性を発現する。そのため、このような積層体10は、例えば、画像表示装置の前面板などに好適に使用される。
【0014】
酸化ケイ素微粒子層12の厚みは、10〜1000nmの範囲が好ましい。10nm以上であると、画像表示装置の前面板などでの反射防止性能が良好であり、1000nm以下であると、酸化ケイ素微粒子層の物理的強度が良好である。
基材11の種類には特に制限はなく、積層体10の用途などに応じて適宜選択できるが、積層体10の用途が画像表示装置の前面板など、反射防止用途に使用されるものである場合などには、基材11の材質としてメタクリル系樹脂が好ましく使用される。
【0015】
メタクリル系樹脂を構成する成分は特に限定されないが、優れた透明性や易成形性を有するメタクリル系樹脂が好ましく、具体的には、メタクリル酸メチル単位を主成分とするメタクリル系樹脂が好ましい。より具体的には、メタクリル酸メチル単独重合体またはメタクリル酸メチルおよびこれと共重合可能なビニル系単量体との共重合体からなるメタクリル系樹脂が挙げられる。
メタクリル酸メチルと共重合可能なビニル系単量体としては、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。ここで「(メタ)アクリル酸」とはアクリル酸もしくはメタクリル酸のことである。
【0016】
メタクリル系樹脂が、アクリル酸エステル単位とメタクリル酸メチル単位とを含むものの場合、アクリル酸エステル単位の含有量は1〜10質量%が好ましく、この範囲において、3質量%以上がより好ましく、7質量%以下がさらに好ましい。メタクリル酸メチル単位の含有量は90〜99質量%が好ましく、この範囲において、93質量%以上がより好ましく、97質量%以下がより好ましい。メタクリル系樹脂中にアクリル酸エステル単位が含まれると、透過損失の小さい優れた透明性を有するメタクリル系樹脂を得ることが容易となる。一方、アクリル酸エステル単位の含有量が多すぎると、得られたメタクリル系樹脂の耐熱性が低下し、高熱を発する光源ランプと近接する用途においては、樹脂の融解や変形が生じることがある。
【0017】
基材11の形状は特に限定されず、成型品、フィルム、板等が挙げられるが、画像表示装置の前面板用途である場合には、板状であることが好ましい。基材11がメタクリル系樹脂からなる板(メタクリル系樹脂板)である場合には、厚みは0.5〜20mmであることが好ましい。メタクリル系樹脂板の厚みが0.5mm以上であると、剛性が高く取り扱い性に優れ、またプラズマ処理時の反りが抑制される傾向にある。メタクリル系樹脂板の厚みが20mm以下であると、均一な大気圧プラズマが得られる傾向にある。
【0018】
メタクリル系樹脂板の表面、特に酸化ケイ素微粒子層が形成される側の表面には、硬化膜が形成されていることが好ましい。硬化膜が形成されていると、酸化ケイ素微粒子層12のメタクリル系樹脂板表面への密着性が良好になる傾向にある。また、硬化膜が形成されていると、基材11の耐擦傷性も向上する。
硬化膜の厚みは10〜30μmの範囲が好ましい。硬化膜の厚みが10μm以上であると耐擦傷性が良好となり、30μm以下であると切断時の割れ等が発生しにくく加工性が良好となる。
【0019】
形成される硬化膜の組成、硬化方法等は特に限定されるものではなく、光硬化性重合体原料に紫外線等の活性エネルギー線を照射する方法、シリコン系、メラミン系の架橋性硬化液を加熱する方法等が挙げられるが、なかでも、光硬化性重合体原料として、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する重合性化合物(a−1)100質量部に対して、光開始剤(a−2)0.1〜10質量部を加えた混合物を用い、この混合物に紫外線を照射する方法が硬化速度の面より好ましい。
【0020】
重合性化合物(a−1)は、分子中に少なくとも2個の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する架橋反応性化合物であり、各(メタ)アクリロイルオキシ基を結合する残基が、炭化水素またはその誘導体であり、その分子内にはエーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合等を含むことができる。なお、(メタ)アクリロイルオキシとは、アクリロイルオキシ及び/又はメタクリロイルオキシを意味する。
これらの化合物の主な例としては、1モルの多価アルコールと、2モル以上の(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体とから得られるエステル化物;多価アルコールと多価カルボン酸またはそれの無水物と(メタ)アクリル酸またはそれらの誘導体とから得られる、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する線状のエステル化物等を挙げることができる。
【0021】
1モルの多価アルコールと、2モル以上の(メタ)アクリル酸とから得られるエステルの例としては、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリレート;1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0022】
多価アルコールと多価カルボン酸またはそれの無水物と(メタ)アクリル酸とから得られる1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイルオキシ基を有する線状のエステル化物において、多価アルコールと多価カルボン酸またはそれの無水物と(メタ)アクリル酸の好ましい組合わせとしては、マロン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、マロン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、コハク酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、アジピン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、グルタル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、セバシン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、フマル酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、イタコン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールエタン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/トリメチロールプロパン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/グリセリン/(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸/ペンタエリスリトール/(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
【0023】
重合性化合物(a−1)の他の例としては、トリメチロールプロパントルイレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の3量化により得られるポリイソシアネートと、活性水素を有するアクリルモノマー、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−メトキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、1,2,3−プロパントリオール−1,3−ジ(メタ)アクリレート、3−アクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等とを、1モル当たり3モル以上を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート;トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸のジ(メタ)アクリレート、トリ(メタ)アクリレート等のポリ[(メタ)アクリロイルオキシエチレン]イソシアヌレート;公知のエポキシポリアクリレート;公知のウレタンポリアクリレート等を挙げることができる。
これら重合性化合物(a−1)としては、以上の化合物を1種以上使用できる。
【0024】
光開始剤(a−2)は特に限定されないが、具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンゾフェノン、p−メトキシベンゾフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ベンゾイルジエトキシフォスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0025】
光開始剤(a−2)の添加量は、重合性化合物(a−1)100質量部に対し、0.1〜10質量部であることが好ましい。0.1質量部以上であると、光硬化性重合体原料の硬化性が向上し、10質量部以下であると硬化膜の着色が発生しない傾向がある。開始剤は1種以上を使用できる。
【0026】
光硬化重合体原料には、目的に応じて従来から使用されている種々の添加剤を加えることができる。添加剤としては、界面活性剤、レベリング剤、染料、顔料、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、難燃剤、可塑剤等を挙げることができる。添加剤の添加量は、得られる硬化膜の物性が損なわれない範囲内で適宜選択できるが、成分(a−1)、成分(a−2)の合計100質量部当たり、10質量部以下であることが好ましい。
【0027】
基材11の製造方法には特に制限はないが、表面に硬化膜が形成されたメタクリル系樹脂板からなる基材11を製造する場合には、対向する一対の鋳型の少なくとも一方の内面に、光硬化性重合体原料を塗布する塗布工程と、塗布された光硬化性重合体原料を硬化させて硬化膜を形成する硬化膜形成工程と、鋳型のキャビティ内にメタクリル系重合性混合物を注入して注型重合し、形成された硬化膜の内側にメタクリル系樹脂板を形成する積層工程とを備えた方法により、連続的に効率よく製造できる。
【0028】
具体的にこのような方法で使用される鋳型としては、例えば所定の間隔で対向する一対の強化ガラス板、クロムメッキ板、ステンレス板等の板状体と、対向する板状体間をシールするための軟質塩化ビニル等のガスケットとで構成されたものなども例示できるが、所定の間隔で対向する一対のエンドレスベルトを有して構成され、これらエンドレスベルトの対向面間がキャビティとなっている鋳型を採用すると生産性が良好となり、好適である。
図2は、このような鋳型21を備えた連続製造装置20の一例であって、この鋳型21において、一対のエンドレスベルト22a、22bは、対向面22c、22dが対峙した状態で同一方向(図中矢印で示す。)へ同一速度で走行する。そして該エンドレスベルト22a、22bの幅方向の両側部には、エンドレスベルト22a、22bと同一速度で走行する一対のガスケット23a、23bが配されている。よって、2枚のエンドレスベルト22a、22bの対向面22c、22dが所定の間隔に維持されているとともに、ここに注入されるメタクリル系重合性混合物の外部への漏れが防止されるようになっている。
なお、図中、符号24、25、26、27は、エンドレスベルト22a、22bに張力を与える主ローラー、符号28、…、28はベルトを支持する支持ローラーである。
【0029】
図2の連続製造装置20により、一方の表面に硬化膜が形成されたメタクリル系樹脂板を連続的に製造する場合、すなわち、連続キャスト法で製造する場合には、まず、エンドレスベルト22a、22bのいずれか一方に、フィルムカバー法、流延法、ローラーコート法、バーコート法、噴霧コート法、エアーナイフコート法等の塗布方法で光硬化性重合体原料を塗布して塗布膜を設ける(塗布工程)。これらのなかで好ましい塗布方法としては、フィルムカバー法、エアーナイフコート法が挙げられる。ついで、この塗布膜を紫外線照射などにより硬化させて硬化膜を形成し(硬化膜形成工程)、その後、キャビティ内、すなわちエンドレスベルト22a、22bの対向面22c、22d間に、メタクリル系重合性混合物を注入して注型重合し、先に形成された硬化膜の内側にメタクリル系樹脂板を形成する(積層工程)。その結果、硬化膜の内側にメタクリル系樹脂板が形成されるので、これを基材11として、対向面22c、22d間から剥離して取り出せばよい。
このようにメタクリル系樹脂板を形成するよりも前に、硬化膜を硬化形成しておくと、硬化膜とメタクリル系樹脂板との密着性が良好となり好ましい。
【0030】
エンドレスベルト22a、22bの材質には特に制限はないが、例えばステンレス鋼、アルミ板等が挙げられる。ガスケット23a、23bの材質としては、例えば、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリウレタンなどが好適である。
【0031】
連続キャスト法で製造され、一方の表面に硬化膜が形成されたメタクリル系樹脂板としては、商品名アクリライトMR(三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。また、同様の方法で製造され、硬化膜を備えないメタクリル系樹脂板としては、商品名アクリライトL(三菱レイヨン(株)製)が挙げられる。
【0032】
なお、メタクリル系樹脂板の両方の表面に硬化膜を形成する場合には、塗布工程において、一対のエンドレスベルト22a、22bの両方の対向面22c、22dに、光硬化性重合体原料を塗布し、これらを硬化膜形成工程において硬化させればよい。また、硬化膜を備えないメタクリル系樹脂板を製造する場合には、塗布工程と硬化膜形成工程を行わなければよい。
【0033】
このように連続キャスト法などで基材11を製造し、ついで、図3に例示するような大気圧プラズマ処理装置30でこれをプラズマ処理することにより、図1の積層体10を製造できる。
なお、本発明において、大気圧近傍の圧力とは、10〜200kPaの圧力を意味する。なかでも、圧力調整が容易である点や装置構成の簡便さから、90〜110kPaの圧力範囲が好ましい。
【0034】
図3の大気圧プラズマ処理装置30は、処理用のチャンバー31内に上部電極32aと下部電極32bからなる一対の対向電極32を備え、少なくとも一方の電極の対向面が誘電体で被覆されたものである。プラズマが発生する部位は、対向電極32のいずれか一方のみに誘電体が被覆された場合には誘電体と電極の間であり、いずれにも誘電体が被覆された場合には誘電体間である。
対向電極32の構造は、電界集中によるアーク放電の発生を避けるために、対向電極32間の距離が略一定とされた構造が好ましく、この条件を満たす電極構造としては、平行平板型、円筒対向平板型、球対向平板型、双曲面対向平板型、同軸円筒型構造等が挙げられる。なかでも、基材11が例えばメタクリル系樹脂板等の板状である場合には、図3のような平行平板型の対向電極32が好ましい。
【0035】
対向電極32を構成する材料としては、例えば、銀、白金、アルミニウム、銅、鉄等の純金属や、ステンレス、真鍮等の多成分系の金属を用いることができる。また、対向電極32を被覆する誘電体としては、例えば、ケイ酸塩系ガラス、ホウ酸塩系ガラス、リン酸塩系ガラス、ゲルマン酸塩系ガラス等の無機ガラスおよびこれらの混合物、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン等のプラスチックおよびこれらの混合物、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、チタン酸バリウム等の金属酸化物およびこれらの混合物などの固体誘電体を用いることができる。
【0036】
対向電極32の対向面間の距離(最短距離)は、処理される基材11の厚さ、被覆された誘電体の厚さ、印加される電圧の大きさ、均一な層の形成しやすさ等を考慮して決定されるが、対向電極22の一方のみに誘電体が被覆された場合、両方に誘電体が被覆された場合のいずれにおいても、50mm以下であることが好ましい。最短距離が50mm以下であると、均一な放電プラズマを発生させることができる。
【0037】
このような大気圧プラズマ処理装置30の対向電極32間に基材11を配置するとともに、処理用ガスをガス導入口33から供給して対向電極32の対向面間に導入し、電源部34に高周波電圧を印加して対向電極32間にプラズマを発生させることにより、基材11上に酸化ケイ素微粒子層12を形成することができる。なお、図中符号35は使用後の処理用ガスを排出するためのガス排出口である。
【0038】
ここで処理用ガスは、テトラエトキシシラン(TEOS)またはヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)からなる有機金属化合物、有機金属化合物を気化させるためのバブリング用不活性ガス、プラズマを発生させるための希釈用不活性ガス、および酸素ガスを含有する。有機金属化合物は、これを入れた容器内に常温のバブリング用不活性ガスをバブリングさせることで気化し、バブリング用不活性ガスに同伴され導入される。前記バブリング用不活性ガス及び希釈用不活性ガスは、ヘリウム及びアルゴンの少なくとも一方からなることが好ましい。
有機金属化合物として使用されるTEOSまたはHMDSOは、安定性、取り扱い性が良好で、酸化ケイ素微粒子層12の堆積効率に優れるため好適である。
プラズマ中、TEOS、HMDSOがケイ素源となり、酸素ガスが酸素源となって酸化ケイ素が生成する。
【0039】
有機金属化合物としてTEOSを使用した場合には、処理用ガス中のバブリング用不活性ガスの酸素ガスに対する流量比(バブリング用不活性ガス/酸素ガス)を8.0以下とすることが好ましく、より好ましくは0.1〜8.0である。有機金属化合物としてHMDSOを使用した場合には、処理用ガス中のバブリング用不活性ガスの酸素ガスに対する流量比(バブリング用不活性ガス/酸素ガス)を0.1以下とすることが好ましく、より好ましくは0.01〜0.1である。
このような流量比としてプラズマ処理することにより、酸化ケイ素微粒子の1次粒子径を50〜700nmの範囲に制御でき、その結果、形成される酸化ケイ素微粒子層12の屈折率を1.20〜1.40とすることができる。
【0040】
対向電極22間に印加する電圧は、1kHz以上10MHz未満の周波数であり、電力面密度が2.0〜30.0W/cm2となる範囲とすることが好ましい。より好ましい周波数は1kHz以上500kHz以下である。周波数がこの範囲であると、基材11が樹脂製である場合、処理時の変形や劣化が抑制される。また、電力面密度が2.0W/cm2以上であると、形成される酸化ケイ素微粒子層12の屈折率を1.20〜1.40に制御しやすく、30.0W/cm2以下であると、プラズマ照射熱による基材11の変形を抑制することができる。電力面密度は、一対の対向電極間に投入する電圧を、通常の変圧器を用いて変化させることで制御することができる。
電力面密度が大きくなりすぎると、粒子の生成よりも分解が優先的に進行して粒子が無くなって膜状になり、屈折率が上昇し、また処理時の熱により基材が反り易くなる傾向がある。電力面密度が小さくなりすぎると、有機金属化合物の分解が不十分となり酸化ケイ素微粒子となりにくい傾向がある。また、ガス流量比が過剰な場合は有機金属化合物の分解が不十分となり酸化ケイ素膜となりにくい傾向にあり、ガス流量比が過小の場合は成膜速度が低くなる傾向がある。
なお、電力面密度とは、一対の対向電極間に投入する電力をプラズマと接している一方の電極の表面積で割った値である。
【0041】
基材11をプラズマに曝す時間、すなわちプラズマによる処理時間は、電力面密度によって異なるが、通常、60秒間以下が好ましく、更に好ましくは30秒間以下である。処理時間がこのような範囲であると、プラズマ照射熱による基材11の変形が抑制される傾向にある。
【0042】
なお、図3では、プラズマ処理を大気圧にて行う場合を示しているため、チャンバー31内の圧力を調整する圧力調整手段は図示されていないが、10〜200kPaの範囲内であって、大気圧以外であって大気圧近傍の圧力下にてプラズマ処理を行う場合には、圧力調整手段を設けて、適宜所望の圧力に調整すればよい。
【0043】
以上説明したように、例えば図2に示す連続製造装置20を使用した連続キャスト法で基材11を製造し、ついで、この基材11に例えば図3に示す大気圧プラズマ処理装置30により酸化ケイ素微粒子層12を形成することにより、大気圧または大気圧近傍下で連続的に、低屈折率で反射防止性の良好な層を備えた積層体10を効率良く製造できる。特に、連続キャスト法において、メタクリル系樹脂板の少なくとも一方の表面に硬化膜を備えた基材11を製造すれば、密着性が良好な酸化ケイ素微粒子層12がメタクリル系樹脂板上に形成された積層体10を大気圧または大気圧近傍下で連続的に生産できる。
こうして得られた積層体10は、例えば、画像表示装置などの前面板として好適に使用される。
【実施例】
【0044】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(プラズマ処理装置)
図3に示した大気圧プラズマ処理装置30((株)サムウェイ製、型式T162−6512B)を大気圧下にて使用した。
なお、上部電極32aと下部電極32bとの間隔は2mmとした。また、上部電極32aは、20×20×200mmのSUS製電極表面に、厚さ1mmの酸化アルミニウム(固体誘電体)を溶射したものを用いた。下部電極32bは、200×200×20mmのSUS製電極表面に、厚さ1mmの酸化アルミニウム(固体誘電体)を溶射したものを用いた。また、下部電極32bは、予め設定された速度で矢印の方向に移動できるようになっている。さらに、電源部34は、30〜299kHz未満の周波数および50W/cm2以下の電力面密度を印加できるように構成されている。なお、電極32a、32bとも相対する20×200mmの面間がプラズマ領域となる。
【0045】
(酸化ケイ素微粒子層の屈折率の測定)
酸化ケイ素微粒子層の屈折率は、Filmetrics社製の反射光干渉式膜厚計F−20にて測定した。
【0046】
(酸化ケイ素微粒子層を構成する1次粒子径の測定)
酸化ケイ素膜を構成する1次粒子径は、該酸化ケイ素膜を走査型電子顕微鏡(日立ハイテクノロジーズ製、S−3400N)で観察し、得られた画像中における1次粒子から任意の10個を選択し、計測した粒径の平均値から求めた。
【0047】
(酸化ケイ素微粒子層の密着性の評価)
カッターを使用して酸化ケイ素微粒子層に1mm間隔で縦・横11本ずつ格子状に、基材表面まで達するように傷を入れ、1×1mmの升目100個を作製した。この升目の上に粘着テープ(ニチバン製、商品名「セロテープ(登録商標)」)をよく密着させ、45°手前方向に急激に剥した。このとき、酸化ケイ素微粒子層が剥離せずに残存した升目の数(n)を計測した。nの値は、好ましくは96個以上、より好ましくは100個であることが適当である。nの値が大きいほど、酸化ケイ素微粒子層の密着性が高いことを示す。nが95個以下を×とし、96個以上を○とした。
【0048】
(実施例1)
基材11として、連続キャスト法で生産され、硬化膜を有するメタクリル系樹脂板(商品名アクリライトMR(両面硬化膜付)、三菱レイヨン製、厚さ1mm)を使用し、この基材11を下部電極32b上に、前記樹脂板を配置した。
処理用ガスは、TEOSを含有するHeガス(TEOSの容器中にバブリング用不活性ガスであるHeガスを常温にてバブリングしたTEOS含有ガス)と、それを希釈するHeガス(希釈用不活性ガス)と、酸素ガスとからなるものとした。これらの流量などを表1に示す。
この処理用ガスを、ガス導入口33を経由して上部電極32aと下部電極32b間に導入した。そして、電源部34より周波数299kHz、電力面密度25.0W/cm2の高周波電圧を印加し、大気圧プラズマを発生させ、基材11にプラズマを60秒間照射して、基材11の硬化膜が形成された側の表面に酸化ケイ素微粒子層12を形成した。なお、照射時間は、任意の速度で移動している下部電極32bに同伴される基材11上の任意の1点が、プラズマ照射された時間の合計である。処理後の処理用ガスは、ガス排出口35より排出した。
得られた積層体10を評価した。結果を表1に示す。
また、酸化ケイ素微粒子層12の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、得られた画像を図4に示す。
【0049】
(実施例2〜8、比較例1〜5)
各種条件を表1のように変更した以外は、実施例1と同様の基材11を使用して、積層体10を製造した。評価結果を表1に示す。また、比較例5以外において、酸化ケイ素微粒子層12の表面を走査型電子顕微鏡で観察し、得られた画像を図5〜15に示した。
【0050】
(実施例9)
基材11として、連続キャスト法で生産され、硬化膜が形成されていないメタクリル系樹脂板(商品名アクリライトL、三菱レイヨン製、厚さ1mm)を使用した以外は、表1に示すように実施例4と同じ条件でプラズマ処理し、積層体10を得て、評価した。評価結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
実施例1では、プラズマ照射の時間が長かったため積層体に反りが認められたが、酸化ケイ素微粒子層を構成している酸化ケイ素微粒子は、1次粒子径が200nmで、層の屈折率は1.23であった。また、酸化ケイ素微粒子層の密着性は良好であった。
実施例2〜8でも、酸化ケイ素微粒子層を構成している酸化ケイ素微粒子は、1次粒子径が200〜500nm、層の屈折率は1.20〜1.40で、酸化ケイ素微粒子層の密着性は良好であった。ただし、硬化膜が形成されていない基材を使用した実施例9では、密着性が不良で、nの数は0個であった。
比較例1〜5では、プラズマ処理の条件が不適切であったため、酸化ケイ素微粒子の1次粒子自体が観察されず、屈折率も高かった。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】積層体の一例を示す断面図である。
【図2】基材を製造する連続製造装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】基材に酸化ケイ素微粒子層を形成する大気圧プラズマ処理装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図7】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図8】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図9】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図10】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図11】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図12】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図13】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図14】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図15】酸化ケイ素微粒子層の表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【符号の説明】
【0054】
10 積層体
11 基材
12 酸化ケイ素微粒子層
20 連続製造装置
21 鋳型
22a、22b エンドレスベルト
30 大気圧プラズマ処理装置
32 対向電極
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に酸化ケイ素微粒子からなる層が形成された積層体であって、前記酸化ケイ素微粒子の1次粒子径が50〜700nmで、前記層の屈折率が1.20〜1.40である積層体。
【請求項2】
大気圧近傍の圧力下で、少なくとも一方の電極が誘電体で被覆された一対の対向電極間に基材を配置し、前記対向電極間に、テトラエトキシシランまたはヘキサメチルジシロキサンからなる有機金属化合物、バブリング用不活性ガス、希釈用不活性ガス、および酸素ガスを含有する処理用ガスを導入するとともに1kHz以上10MHz未満の周波数の電圧を前記電極に印加してプラズマを発生させ、電力面密度を2.0〜30.0W/cm2として前記基材上に酸化ケイ素微粒子からなる層を形成させる請求項1に記載の積層体の製造方法であって、
前記有機金属化合物がテトラエトキシシランである場合には、前記バブリング用不活性ガスの前記酸素ガスに対する流量比を8.0以下とし、
前記有機金属化合物がヘキサメチルジシロキサンである場合には、前記バブリング用不活性ガスの前記酸素ガスに対する流量比を0.1以下とする積層体の製造方法。
【請求項3】
前記プラズマによる処理時間を60秒間以下とする請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記基材は、メタクリル系樹脂板である請求項2または3に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記メタクリル系樹脂板の厚みが0.5mm以上である請求項4に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記基材は、表面に硬化膜が形成されたメタクリル系樹脂板である請求項4または5に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
対向する一対の鋳型の少なくとも一方の内面に、光硬化性重合体原料を塗布する塗布工程と、塗布された前記光硬化性重合体原料を硬化させて硬化膜を形成する硬化膜形成工程と、前記鋳型のキャビティ内にメタクリル系重合性混合物を注入して注型重合し、前記硬化膜の内側にメタクリル系樹脂板を形成する積層工程により、前記基材を製造する請求項6に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記鋳型は、所定の間隔で対向する一対のエンドレスベルトを有して構成され、前記キャビティは、前記エンドレスベルトの対向面間である請求項7に記載の積層体の製造方法。
【請求項1】
基材上に酸化ケイ素微粒子からなる層が形成された積層体であって、前記酸化ケイ素微粒子の1次粒子径が50〜700nmで、前記層の屈折率が1.20〜1.40である積層体。
【請求項2】
大気圧近傍の圧力下で、少なくとも一方の電極が誘電体で被覆された一対の対向電極間に基材を配置し、前記対向電極間に、テトラエトキシシランまたはヘキサメチルジシロキサンからなる有機金属化合物、バブリング用不活性ガス、希釈用不活性ガス、および酸素ガスを含有する処理用ガスを導入するとともに1kHz以上10MHz未満の周波数の電圧を前記電極に印加してプラズマを発生させ、電力面密度を2.0〜30.0W/cm2として前記基材上に酸化ケイ素微粒子からなる層を形成させる請求項1に記載の積層体の製造方法であって、
前記有機金属化合物がテトラエトキシシランである場合には、前記バブリング用不活性ガスの前記酸素ガスに対する流量比を8.0以下とし、
前記有機金属化合物がヘキサメチルジシロキサンである場合には、前記バブリング用不活性ガスの前記酸素ガスに対する流量比を0.1以下とする積層体の製造方法。
【請求項3】
前記プラズマによる処理時間を60秒間以下とする請求項2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記基材は、メタクリル系樹脂板である請求項2または3に記載の積層体の製造方法。
【請求項5】
前記メタクリル系樹脂板の厚みが0.5mm以上である請求項4に記載の積層体の製造方法。
【請求項6】
前記基材は、表面に硬化膜が形成されたメタクリル系樹脂板である請求項4または5に記載の積層体の製造方法。
【請求項7】
対向する一対の鋳型の少なくとも一方の内面に、光硬化性重合体原料を塗布する塗布工程と、塗布された前記光硬化性重合体原料を硬化させて硬化膜を形成する硬化膜形成工程と、前記鋳型のキャビティ内にメタクリル系重合性混合物を注入して注型重合し、前記硬化膜の内側にメタクリル系樹脂板を形成する積層工程により、前記基材を製造する請求項6に記載の積層体の製造方法。
【請求項8】
前記鋳型は、所定の間隔で対向する一対のエンドレスベルトを有して構成され、前記キャビティは、前記エンドレスベルトの対向面間である請求項7に記載の積層体の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2009−298054(P2009−298054A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−155985(P2008−155985)
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月13日(2008.6.13)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【出願人】(000126115)エア・ウォーター株式会社 (254)
【Fターム(参考)】
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