説明

積層体の製造方法

【課題】少ない導電性フィラーの使用量で優れた電磁波シールド性を示す成形体を製造することが可能な成形体の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂からなる基材に、導電性繊維を含有する導電性樹脂組成物からなる被覆層が積層された積層体の製造方法であって、前記基材を金型内に形成されるキャビティ内に配置する工程と、前記基材と、この基材に対向する金型のキャビティ面と、の間に形成される空間に、熱可塑性樹脂50〜99質量%、及び平均繊維長1〜20mmの導電性繊維1〜50質量%(但し、熱可塑性樹脂、導電性繊維の含有量の合計を100質量%とする)、を含有する導電性樹脂組成物を、射出速度500mm/s以上で充填し、前記基材の上に厚み0.01〜1mmの被覆層を形成する工程と
を有することを特徴とする積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波シールド性を有する積層体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂と、導電性のフィラーを含有する樹脂組成物は、電磁波シールド性が必要とされる分野で使用されている。例えば、特許文献1にはポリブタジエン成分を所定量含有する熱可塑性樹脂と、金属被覆炭素繊維とを含有する樹脂組成物からなる電磁波シールド部品及びその製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−147954号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような樹脂組成物を用いて成形体を製造すると、高価な導電性フィラーの影響で樹脂組成物のコストが高くなり、汎用的に用いるにはまだ不十分であった。コストダウンを図るために、導電性フィラーの添加量を減らすと、電磁波シールド性も低下するという問題があった。また、成形品の軽量化のために、成形品の板厚を小さくすることが考えられるが、一般に、成形品の板厚が薄くなると、電磁波シールド性能は低下する傾向にあることが知られている。また、金属繊維のような導電性フィラーは、高価なため、製品を安価に製造する上で、できる限り少ない添加量で十分な電磁波シールド性能を得ることが望まれている。
以上の課題に鑑み、本発明では、少ない導電性フィラーの使用量で優れた電磁波シールド性を示す成形体を製造することが可能な成形体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、熱可塑性樹脂からなる基材に、導電性繊維を含有する導電性樹脂組成物からなる被覆層が積層された積層体の製造方法であって、
前記基材を金型内に形成されるキャビティ内に配置する工程と、
前記基材と、この基材に対向する金型のキャビティ面と、の間に形成される空間に、熱可塑性樹脂50〜99質量%、及び平均繊維長1〜20mmの導電性繊維1〜50質量%(但し、熱可塑性樹脂、導電性繊維の含有量の合計を100質量%とする)、を含有する導電性樹脂組成物を、射出速度500mm/s以上で充填し、前記基材の上に厚み0.01〜1mmの被覆層を形成する工程とを有することを特徴とする積層体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、少ない導電性フィラーの使用量で優れた電磁波シールド性を示す成形体を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明に係る方法により得られる成形体は、基材に被覆層が積層された積層体である。以下この積層体の製造方法について詳細に説明する。
〔積層体の製造方法〕
本発明に係る方法は、基材をキャビティ内に配置する工程(以下、第一の工程とする)と、被覆層を形成する工程(以下、第二の工程とする)とを有する。
【0008】
<第一の工程>
第一の工程において、基材が配置される金型キャビティを形成する金型は、射出成形用の金型であればその形状は特に限定されるものではない。
基材には、熱可塑性樹脂からなる成形体が用いられる。この成形体は射出成形法、射出圧縮成形法、射出プレス成形法、圧縮成形法、真空成形法等の方法により成形される。基材の厚さは得られる多層成形体の機械物性の観点から1mm以上であることが好ましい。
【0009】
基材をキャビティ内に配置する方法としては、特に限定されず、任意の方法を用いることができる。例えば、上記の各種成形方法を用いて、予め成形体を製造した後、得られた成形体を金型キャビティ内にインサートする方法、あるいは、キャビティを2ケ有する金型を用いて、一方のキャビティを用いて、基材層を成形した後、金型可動側を回転させるなどして、もう一方のキャビティに移動させ、次の工程を行う方法などがある。
なお、基材の大きさは特に限定されるものではなく、キャビティ面の一部に配置されるような大きさでもよい。
【0010】
<第二の工程>
第二の工程では、第一の工程でキャビティ内に配置された基材と、この基材に対向する金型のキャビティ面との間に形成される空間に、導電性樹脂組成物を射出速度500mm/s以上、より好ましくは800mm/秒以上の速度で充填する。射出速度が500mm/sよりも小さい場合には、導電性繊維が流れ方向に過度に配向してしまうために、繊維同士の接触が少なくなり、導電性繊維のネットワーク形成を効率的に行うことが困難となる。なお、本発明でいう射出速度とは、射出成形装置における射出工程時のスクリュ移動速度を示し、成形機に予め設置されている計測装置あるいは、外部計測装置を用いて計測することができる。
【0011】
基材とキャビティ面との間に形成される空間の大きさは、任意に設定することが出来る。例えば、目的とする被覆層厚みと同じクリアランスにあらかじめ設定する方法、あるいは、目的とする被覆層の厚みよりも大きなクリアランスに設定して導電性樹脂組成物を充填した後に、クリアランスを小さくする圧縮工程を経て、目標の表層厚みに調整する射出圧縮成形法を用いることもできる。好ましくは、用いる導電性繊維の長さに応じて決定される最終の被覆層厚みに等しいクリアランスに設定した後、導電性樹脂組成物を射出充填する方法である。
【0012】
本工程により形成される被覆層の厚みは0.01〜1mmであり、0.05〜0.6mmであることがより好ましい。被覆層の厚みを上記の範囲とすることによって、導電性繊維の分散と、流れ方向あるいは厚み方向への配向のバランスが良好となり、導電性繊維同士の絡み合いが起こりやすくなる傾向が見られる。それによって少ない導電性繊維の添加量で十分な電磁波シールド性を良好にすることができる。表層の厚みが1mmを超えると、導電性繊維の流れ方向への配向が少なくなるため、導電性繊維同士の絡み合いが少なくなることがある。また、得られる積層体の比重が大きくなるため、軽量化することが困難になる場合がある。
【0013】
本発明において、第二の工程において、型締力を射出成形機における最大型締力の10%以下にした後、導電性樹脂組成物を注入後、あるいは、注入中に、この導電性樹脂組成物を、射出成形機における最大型締力の10%以上の圧力で加圧して保持してもよい。
さらに、導電性樹脂組成物を注入した後に、所定時間冷却してから得られた積層体を取り出してもよい。
【0014】
<基材>
基材を形成する熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、導電性繊維の配向状態と多層成形品の機械物性という観点から、後述する導電性樹脂組成物に含まれる熱可塑性樹脂と同じ種類の樹脂であることが好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタアクリレート、ポリエーテルイミド、及びこれらの混合物が挙げられる。これらは単独重合体であっても、他のモノマーとの共重合体であってもよい。共重合体はブロック共重合体であっても、ランダム共重合体であってもよい。
ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。ポリスチレンとしては、汎用ポリスチレン(GPPS樹脂)、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS樹脂)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS樹脂)等が挙げられる。ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン66等が挙げられる。これらのうちポリオレフィンを用いることが好ましく、ポリプロピレンを用いることがより好ましい。
【0015】
ポリエチレンとしては、エチレン単独重合体、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレンと炭素原子数4以上のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと炭素原子数4以上の環状オレフィンとの共重合体、これらの混合物等が挙げられる。
ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、エチレンとのブロック共重合体(以下、プロピレン−エチレンブロック共重合体とする)、エチレンとのランダム共重合体、プロピレンと炭素原子数4以上のα−オレフィンとの共重合体、プロピレンと炭素原子数4以上の環状オレフィンとの共重合体、又は、これらの混合物等が挙げられる。
上記プロピレンと炭素原子数4以上のα−オレフィンとの共重合体中のα−オレフィンとしては、例えば炭素原子数4〜8のα−オレフィンが挙げられる。また、プロピレン−エチレンランダム共重合体、炭素原子数4〜8のプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体中のエチレン、α−オレフィンに由来する構成単位の含有量としては1〜49質量%であることが好ましい。
【0016】
上記プロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレンの単独重合によって得られる結晶性プロピレン単独重合部分と、エチレンとプロピレンとを共重合して得られる共重合部分と、を有する共重合体をいう。
得られる成形体の軽量化や耐衝撃性の観点から、プロピレン−エチレンブロック共重合体中の結晶性プロピレン単独重合部分の含有量は、60〜95質量%であることが好ましく、エチレンとプロピレンとを共重合して得られる共重合部分の含有量は、40〜5質量%であることが好ましい(但し、プロピレン−エチレンブロック共重合体の全質量を100質量%とする)。
また、エチレンとプロピレンとを共重合して得られる共重合部分に含有されるエチレン由来の構成単位の含有量は、10〜60質量%であることが好ましい。
【0017】
ポリプロピレンとして、プロピレン単独重合体とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の混合物を用いる場合、得られる成形体の外観を良好にするという観点から、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の含有量は、1〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがより好ましい(ただし、プロピレン単独重合体とプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体の全量を100質量%とする。
【0018】
熱可塑性樹脂のメルトフローレート(以下、MFRともいう)は20g/10分以上であることが好ましく、50g/10分以上であることがより好ましい。メルトフローレートを20g/10分以上とすることによって、導電性繊維の分散状態を良好にすることができ、導電性繊維の絡み合いが良好な成形体を得ることが可能となる。なお、本発明におけるメルトフローレートは、JIS K 7210に準拠し、230℃、荷重2.16kgで測定した値である。
【0019】
基材は、上記熱可塑性樹脂以外に、エラストマーやフィラーを含有していてもよい。エラストマーとしては、例えば、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン−共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン−α−オレフィン共重合体エラストマー、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体エラストマー、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体エラストマー、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体エラストマーなどが挙げられる。これらは単独又は2種以上併用することが可能である。
また、フィラーとしては、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、クレー、炭酸マグネシウム、シリカ、非導電性の無機繊維、非導電性の有機繊維などが挙げられる。得られる成形体の剛性を効果的に高められることから、タルクまたは無機繊維が好ましく使用される。フィラーの含有量は、樹脂成形品の強度、耐熱性、寸法安定性、質量の観点から、全体の5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。
また、本発明の効果を阻害しない範囲内で酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、顔料、難燃剤、造核剤、分散剤、可塑剤、銅害防止剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0020】
<導電性樹脂組成物>
被覆層を形成する導電性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、導電性繊維とを含有する。熱可塑性樹脂の含有量は、50〜99質量%であり、70〜98質量%であることが好ましく、88〜98質量%であることがより好ましい。
また、導電性繊維の含有量は1〜50質量%であり、2〜30質量%であることが好ましく、2〜12質量%であることがより好ましい。導電性繊維の含有量が1質量%未満であると電磁波シールド性が低下する場合がある。また、導電性繊維の含有量が50質量%を超えると流動性が低下したり、導電性繊維の凝集が著しくなり、製品全体にわたる均一な電磁波シールド性が得られない場合がある。
【0021】
導電性樹脂組成物全体のメルトフローレートは、導電性繊維の分散状態を好適にするという観点から、5g/10minであることが好ましく、30g/10minであることがより好ましい。なお、本発明におけるメルトフローレートの測定条件は、JIS K 7210、230℃、荷重2.16kgである。
【0022】
導電性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂としては、上記基材に用いられる熱可塑性樹脂と同様の熱可塑性樹脂が挙げられる。このうち、導電性繊維の配向状態と多層成形品の機械物性という観点から、基材を形成するに用いられている熱可塑性樹脂と同種の熱可塑性樹脂であることが好ましい。
【0023】
本発明で用いられる導電性繊維は、平均繊維長1〜20mmの長さを有し、導電性を示す繊維であれば、特に限定されるものではない。本発明における導電性繊維とは、金属繊維、金属が被覆された有機繊維、金属が被覆された無機繊維、又は、炭素繊維が挙げられる。これらのうち金属繊維又は金属が被覆された有機繊維を用いることが好ましく、金属が被覆された有機繊維を用いることがより好ましい。有機繊維に金属が被覆されたものであると、得られる成形体の比重が小さくなるとともに、成形中に繊維が折れて短くなることが少なく、繊維同士が絡みやすくなる。
導電性繊維として、金属繊維を用いる場合、好ましい金属種としては、ステンレス、黄銅、銅、アルミニウム、鉄、金、銀、ニッケル、チタン、錫、亜鉛、マグネシウム、白金、ベリリウム、これらの金属種の合金、又は、これらの金属種とリンとの化合物等からなる金属が挙げられる。これらの金属種の中では、黄銅、銅、アルミニウム、鉄、金、銀、ニッケル、チタンであることが好ましく、ステンレス、銅であることがより好ましい。
【0024】
また、導電性繊維として、金属が被覆された有機繊維を用いる場合、有機繊維は、アラミド繊維、ポリエチレンナフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリフェニレンサルファイド繊維、ポリイミド繊維、綿、麻等が挙げられる。これらは単独又は2種以上組み合わせて使用することが可能である。
金属が被覆された無機繊維を用いる場合、無機繊維は、ガラス繊維、炭素繊維などが挙げられる。
上記有機繊維又は無機繊維を被覆する金属としては、例えば、銅、黄銅、金、銀、ニッケル、アルミ、錫、亜鉛などが挙げられる。これらは単独又は2種以上の組合せて用いることが可能である。金属の被覆方法は、特に限定されないが、無電界メッキ、真空蒸着、スパッタリング等の方法が挙げられる。金属の被覆量は使用する繊維や金属の種類によって適宜決められるが、繊維表面上に厚さ0.1〜1.0μmで被覆されることが好ましい。
【0025】
導電性繊維の平均繊維長は、1〜20mmであり、1〜10mmであることが好ましく、より好ましくは1〜6mmである。導電性繊維の長さが上記範囲であると、高い電磁波シールド効果をより少ない導電性繊維添加量で得ることができる。繊維の長さが1mm未満であると、導電性繊維同士の絡まりが少なくなり、導電性繊維同士の接点が少なくなるために、得られる成形体の電磁波シールド性能が低くなる傾向にある。また、繊維の長さが20mmを超えると繊維同士の絡み合いが過度に生じて、樹脂組成物の流動性が低下し、成形機内で詰まるなどの不具合が生じることがある。
なお、本発明における、導電性繊維の平均繊維長は、導電性樹脂組成物中の導電性繊維の長さをいう。平均繊維長は、所定量の樹脂組成物から樹脂成分を溶剤により溶解させた後に、残渣として得られた繊維約500本の長さを計測し、その平均値を用いる。
【0026】
導電性繊維の断面形状は特に限定されないが、略円形であることが好ましい。導電性繊維の繊維径は、1〜100μmの範囲にあることが好ましく、5〜80μmであることがより好ましい。ここで、導電性繊維の繊維径は、同じ断面積を有する円に換算した時の繊維径をいう。導電性繊維(B)の繊維径は、例えば、50本以上の繊維の断面を顕微鏡などで拡大し、写真撮影をした後、スケールあるいはデジタイザーなどの測定器具を用いて測定することができる。
繊維径が1〜100μmの範囲にあると、成形体中で導電性繊維同士を効率的に接触させることが可能であるため、少ない含有量で十分な導電性を得ることができる。繊維径が1μm未満であると、成形中に繊維が切れて短くなるため、導電性繊維同士の接触が起こりにくくなる傾向にある。また、繊維径が100μmを超えると繊維が剛直になるために、繊維同士のからみあいが起こりにくくなり、導電性繊維同士の接触が起こりにくくなる傾向にある。
【0027】
導電性樹脂組成物の製造方法は特に限定されるものではなく、公知のブレンド方法を用いることができる。公知のブレンド方法としては、例えば、熱可塑性樹脂と導電性繊維と必要に応じて添加剤等の他の成分とを、ドライブレンドやメルトブレンドする方法等が挙げられる。ドライブレンドする方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等の各種ブレンダーを用いる方法が挙げられ、メルトブレンドする方法としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の各種ミキサーを用いる方法が挙げられる。また、プルトルージョン法により導電性繊維を溶融状の熱可塑性樹脂に含浸させて一体化させる方法を採用してもよい。
【0028】
また導電性樹脂組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲内で酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、造核剤、分散剤、可塑剤、銅害防止剤等の添加剤を含有していてもよい。
【実施例】
【0029】
以下本発明を、実施例を用いて説明するが、本発明は実施例により限定されるものではない。
実施例で使用した射出成形機、金型、成形条件及び評価法は、以下のとおりである。
【0030】
(1)射出成形機及び金型、成形条件
下記の射出成形機及び金型、成形条件を用いて射出成形体を成形した。
射出成形機:住友重機械工業製 SE180HP 型締力180トン
金型:100×150mm平板形状の製品が得られる金型を用いた
成形条件:
第一の工程として、キャビティ厚みを2mmとした金型と、基材形成用の熱可塑性樹脂組成物を射出成形して基材を形成した。次いで、基材をキャビティ厚み2.5mmとした金型内に配置した後、金型を閉じ、導電性樹脂組成物を射出充填し(第二の工程)、2層の積層体を得た。この積層体の基材の厚みは2mmであり、被覆層の厚みは0.5mmであった。第一の工程及び第二の工程で用いられた成形温度と金型温度は、以下の通りである。
成形温度:210℃
金型温度:30℃
(2)電磁波シールド性能の評価
電磁波シールド性能を評価するために、得られた成形品の体積抵抗率の測定を行った。上記成形品の中央部から、100×100の大きさの試験片を切り出し、樹脂組成物の流れと平行な方向(MD方向)の両端部に銀ペースト(福田金属箔粉工業製シルコートRL−10)を塗布し、乾燥させた後、銀ペースト塗布部にミリオームテスターの電極を当てて、抵抗値(内部抵抗値)を測定し、以下の式により体積抵抗率を算出した。
体積抵抗率:Ωcm=(抵抗値×断面積)/測定距離
断面積:試験片幅×成形品板厚
測定距離:10cm(試験片の両端部同士の距離)
【0031】
[実施例1]
まず、エチレン−プロピレンブロック共重合体(MFR=50g/10min)60質量%、エチレン−ブテン共重合体ゴム(エチレン含量62質量%、MFR=5g/10min、密度0.87g/cm)20質量%、タルク(平均粒径5μm)20質量%からなる樹脂組成物を上記の成形条件で射出成形し、厚さ2mmの基材を製造した。得られた基材をキャビティ厚み2.5mmにした前記金型の可動側キャビティに配置した。
次いで、ホモポリプロピレン(MFR=120g/10分)87質量%、導電性繊維を含むマスターバッチ(リオコンダクトA、東洋インキ製、銅メッキ繊維60質量%含有、繊維長5mm)13質量%をペレットブレンドした導電性樹脂組成物を、スクリュ射出速度800mm/sの条件で射出充填し、被覆層を形成した。
得られた積層体の体積抵抗率を表1に示す。
【0032】
[比較例1]
表層樹脂を成形する時に射出速度を50mm/sとしたこと以外は、実施例1と同様の手順で積層体を製造した。結果を表1に示す。
【0033】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる基材に、導電性繊維を含有する導電性樹脂組成物からなる被覆層が積層された積層体の製造方法であって、
前記基材を金型内に形成されるキャビティ内に配置する工程と、
前記基材と、この基材に対向する金型のキャビティ面と、の間に形成される空間に、熱可塑性樹脂50〜99質量%、及び平均繊維長1〜20mmの導電性繊維1〜50質量%(但し、熱可塑性樹脂、導電性繊維の含有量の合計を100質量%とする)、を含有する導電性樹脂組成物を、射出速度500mm/s以上で充填し、前記基材の上に厚み0.01〜1mmの被覆層を形成する工程と
を有することを特徴とする積層体の製造方法。
【請求項2】
前記導電性繊維の繊維径は、1〜100μmである請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
前記導電性繊維の繊維径が、金属繊維又は金属が被覆された有機繊維である請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
前記基材を形成する熱可塑性樹脂は、前記導電性樹脂組成物中の熱可塑性樹脂と同じ種類の樹脂である請求項1から3いずれかに記載の積層体の製造方法。

【公開番号】特開2012−135942(P2012−135942A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289617(P2010−289617)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】