説明

積層体の製造方法

【課題】テーパー形状を有する高精細なレジストパターンを形成することが可能な、基板上に感光層が積層されてなる積層体の製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】基板と該基板上に積層された2層以上のネガ型の感光層とを有する積層体の製造方法であって、基板上に第1の感光層を積層する工程と、該第1の感光層の上に第2の感光層を積層する工程と、を含み、感光層が、カルボキシル基を含有する熱可塑性重合体と、少なくとも2つの末端エチレン基を持つ光重合性モノマーと、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物から構成され、該第1の感光層が該第2の感光層よりも高い感度を有する、積層体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば半導体チップと基板とを接続するためのはんだバンプの形成等に好適な、基板と該基板上に形成された感光層とを有する積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば配線パターンが形成された基板上に半導体チップを実装するためのはんだバンプの形成等に好適な高精細レジストとしては、高分子バインダーポリマー、光重合性モノマー及び光重合開始剤を含有する感光層と、ポリエチレンテレフタレート等からなる支持体とを有するいわゆるドライフィルムレジストが用いられてきた。
【0003】
ドライフィルムレジストを用いてレジストパターンを形成する方法について、以下に簡単に述べる。まず、ポリエチレンフィルム等の保護層がある場合には、感光層からこれを剥離する。次いで、ラミネーターを用いて、銅張積層板等の基板上に、基板、感光層、支持体の順序になるよう、感光層及び支持体を積層する。次いで、例えば配線パターンを有するフォトマスクを介して該感光層を超高圧水銀灯が発するi線(365nm)等の紫外線で露光することによって、露光部分を重合硬化させる。次いで支持体を剥離する。次いで、弱アルカリ性を有する水溶液等の現像液により感光層の未露光部分を溶解又は分散除去して、基板上にレジストパターンを形成させる。
【0004】
特許文献1には、(1)表面が金属層で覆われたプリント配線板形成用基板上に、相対的に高感度の感光性樹脂層そして相対的に低感度の感光性樹脂層がこの順に積層された構成の感光性積層体を用意する工程;(2)感光性積層体の低感度感光性樹脂層側からプリント配線板形成用基板の金属層表面の配線パターン形成領域内に光を照射することにより、該配線パターン形成領域に、底部にて幅方向に両側に広がる裾部を備えた硬化樹脂層を形成する露光工程;(3)積層体の未硬化部分を溶解除去して、配線パターン形成領域外の金属層表面を露出させる現像工程;(4)露出した金属層部分をエッチング液で溶解除去するエッチング工程;及び(5)硬化樹脂層をプリント配線板形成用基板の金属層表面から除去する硬化樹脂層除去工程、を含むプリント配線板の製造方法が記載されている。しかしながら、先行文献の方法では、長期保存において、2層のドライフィルムが混ざり合い、台形のテーパーが小さくなるといった課題があった。
【0005】
ところで、従来、半導体チップと基板との接続においては、半導体チップと基板の電極とを位置決めした後にはんだを加熱溶融させることによって半導体チップと基板とを接続する方法が従来用いられている。この方法においてはレジストパターンを用いてはんだバンプ形成部位を規定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−191284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者は、上記のはんだバンプの形成において、逆テーパー形状(先太り形状)(典型的には逆台形形状)のバンプを形成することが高精細化に寄与することを見出した。逆テーパー形状のはんだを形成するためには、テーパー形状のレジストを使用できる。そしてテーパー形状のレジストの形成によれば、感光性樹脂の硬化部分間に現像液が滞留しにくいことによって未硬化部分を良好に除去できるため、高精細化が容易である。しかし、上記のような目的でテーパー形状のレジストパターンを高精細に形成することは未だ検討されていない。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決し、逆テーパー形状のめっきパターンを形成するためのテーパー形状レジストパターンを高精細に形成できる、基板上に感光層が積層されてなる積層体の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、感度が異なる2層以上のネガ型感光層を積層する方法が、テーパー形状(例えば台形形状)のレジストパターンを形成するために極めて有効であり、しかも所望のテーパー形状を精密に制御できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は以下の通りである。
【0010】
[1] 基板と該基板上に積層された2層以上のネガ型の感光層とを有する積層体の製造方法であって、
基板上に第1の感光層を積層する工程と、
該第1の感光層の上に第2の感光層を積層する工程と、
を含み、
感光層が、カルボキシル基を含有する熱可塑性重合体と、少なくとも2つの末端エチレン基を持つ光重合性モノマーと、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物から構成され、
該第1の感光層が該第2の感光層よりも高い感度を有する、
積層体の製造方法。
[2] 該第1の感光層を硬化させるために必要な最小露光量Aと、該第2の感光層を硬化させるために必要な最小露光量Bとの比A/Bが、0.01≦A/B<1を満たす、上記[1]に記載の積層体の製造方法。
[3] 該第2の感光層の上に第3の感光層を積層する工程を更に含み、
該第2の感光層が該第3の感光層よりも高い感度を有する、
上記[1]又は[2]に記載の積層体の製造方法。
[4] 該第1の感光層を構成する感光性樹脂組成物が該光重合開始剤としてアクリジン化合物又はN−フェニルグリシン化合物を含有し、かつ該第2の感光層を構成する感光性樹脂組成物が該光重合開始剤としてトリアリールイミダゾリル二量体を含有する、上記[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によれば、テーパー形状を有するレジストパターンを高精細に形成できるため、例えば半導体チップと基板とを接続するための逆テーパー形状のはんだバンプ等の、逆テーパー形状のめっきパターンの形成に好適な高精細のレジストパターンを提供できる。また、本発明の方法によれば、2層以上の感光層を構成することになるそれぞれの層を別個のドライフィルムとして保存することが可能であるため、長期保管において界面の混ざり合いは発生しない。さらに、上記のようなドライフィルムによれば、従来よりも相対的にドライフィルムが薄くなるため、エッジフューズも発生しにくくなるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施例及び比較例における走査型電子顕微鏡によるライン形状の観察結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、逆テーパー形状のめっきパターンを形成するための、基板と該基板上に積層された2層以上のネガ型の感光層とを有する積層体の製造方法であって、基板上に第1の感光層を積層する工程と、該第1の感光層の上に第2の感光層を積層する工程と、を含み、感光層が、カルボキシル基を含有する熱可塑性重合体と、少なくとも2つの末端エチレン基を持つ光重合性モノマーと、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物から構成され、該第1の感光層が該第2の感光層よりも高い感度を有する、積層体の製造方法を提供する。本発明について、以下具体的に説明する。
【0014】
本発明によって製造される積層体においては、基板上に少なくとも第1の感光層(以下、第1層ともいう)と第2の感光層(以下、第2層ともいう)とがこの順で積層されており、第1の感光層の感度が第2の感光層の感度よりも高く設定される。基板の材質は、銅、銅合金、鉄ニッケル合金(42アロイ)、ステンレス等の金属から選択できる。2種以上の感光層の感度は、露光条件を露光量以外同じにして各感光層を露光したときの、感光層を硬化させるために必要な最小露光量(以下、単に最小露光量ということもある)を比較することにより比較でき、最小露光量が小さいほど感度が高いことを意味する。ここで本明細書に記載する最小露光量は、平行光露光機(例えばHMW−801出力4.5kW(株式会社オーク製作所製))の水銀ショートアークランプによる紫外線光を用いて露光したときに、ストーファー21段タブレットにおける感度が8段となる露光量と定義する。
【0015】
本発明によって製造される積層体が有する感光層は、少なくとも第1層及び第2層を有する2層以上からなる。感光層においては、最も基板側である第1層の感度が、該第1層の上側(すなわち第1層の基板側とは反対側)に形成される第2層よりも高い感度を有する。3層以上からなる感光層を形成する場合には、感度が、基板側からその反対側に向かって低くなるように各層の感度を設計することが好ましい。上記のような感光層を用いることにより、テーパー形状を有するレジストパターン(すなわち、レジスト底面側からレジスト上面側に向かって先細り形状を有しているレジストパターン)を高精細に形成できる。そして高精細なテーパー形状のレジストパターンは、例えば半導体チップと基板とを接続するためのはんだバンプの形成等の用途で、逆テーパー形状のめっきパターンを細いピッチで形成するために、極めて好適に使用できる。本発明を用いることによって形成できるテーパー形状は、最も典型的には台形形状であるが、テーパー角(すなわちレジスト底面に垂直な面に対してレジスト側面がなす角度)が底面からの距離に従って連続的又は段階的に変化するような形状であってもよい。
【0016】
2層以上からなる感光層において、所望される特性に応じて各層の感度をそれぞれ設計することによって、感度が互いに異なる複数の層を形成するための具体的な手段としては、感光層を形成するために用いる感光性樹脂組成物の配合における各成分の種類及び/又は量の選択が挙げられる。特に、重合原料(単量体)及び/又は光重合開始剤の種類及び/又は量の選択は有用である。
【0017】
本発明においては、第1の感光層を硬化させるために必要な最小露光量Aと、第2の感光層を硬化させるために必要な最小露光量Bとの比A/Bが、0.01≦A/B<1を満たすことが好ましい。上記比A/Bが0.01以上である場合、同一露光量で第1層と第2層の硬化レジストパターン形成が可能であり、1未満である場合、所望のテーパー形状を容易に形成できる。上記比A/Bは、より好ましくは0.05以上0.6以下、更に好ましくは0.05以上0.3以下である。
【0018】
好ましい態様において、本発明の方法は、該第2の感光層の上に第3の感光層を積層する工程を更に含み、該第2の感光層が該第3の感光層よりも高い感度を有する。この場合、第1層、第2層、第3層の順に感度が低くなるように感光層が形成されるため、所望の用途に応じてテーパー形状をより精密に制御できる。
【0019】
以下に、各層の形成に好適に使用できる感光性樹脂組成物の配合成分の例について説明する、但し、基板側の層から反対側の層に向かって感光層の感度が低くなる組み合わせとなるように各層についての配合成分を選択することを前提とする。
【0020】
<感光層を形成するための感光性樹脂組成物>
本発明において、2層以上の感光層の各々は、カルボキシル基を含有する熱可塑性重合体と、少なくとも2つの末端エチレン基を持つ光重合性モノマーと、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物から構成される。感光性樹脂組成物の好ましい例としては、(a)カルボキシル基含有量が酸当量で100〜600、重量平均分子量が5000〜500000の熱可塑性重合体(以下、(a)熱可塑性重合体ともいう):20〜90質量部、(b)少なくとも2つの末端エチレン基を持つ光重合性モノマー(以下、(b)光重合性モノマーともいう):5〜60質量部、及び(c)光重合開始剤:0.01〜20質量部、を含有する感光性樹脂組成物が挙げられる。
【0021】
(a)熱可塑性重合体
(a)熱可塑性重合体中のカルボキシル基は、感光性樹脂組成物がアルカリ水溶液からなる現像液又は剥離液に対して現像性又は剥離性を有するために必要である。(a)熱可塑性重合体は、より好ましくは、α,β−不飽和カルボキシル基含有単量体を重合成分として含む。
【0022】
酸当量は、100〜600が好ましく、より好ましくは300〜450である。酸当量は、塗工溶媒又は感光性樹脂組成物中の他の成分(例えば光重合性モノマー)との相溶性を確保するという観点から100以上であることが好ましく、また、現像性及び剥離性を維持するという観点から600以下であることが好ましい。ここで、酸当量とは、その中に1当量のカルボキシル基を有する熱可塑性重合体の質量(グラム)を意味する。酸当量の測定は、例えば平沼レポーティングタイトレーター(COM−555)を用い、0.1mol/LのNaOH水溶液で電位差滴定法により行われる。
【0023】
また、(a)熱可塑性重合体の重量平均分子量は5000〜500000であることが好ましく、より好ましくは10000〜500000、更に好ましくは20000〜250000、特に好ましくは20000〜100000である。重量平均分子量が5000以上である場合、ドライフィルムレジストとした際にレジスト厚みが均一性を保ち易く、更に現像液に対する耐性も維持できる。一方、重量平均分子量が500000以下である場合には、未露光部分のアルカリ現像性が損なわれない点で好ましい。
【0024】
本明細書で記載する重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレンの検量線を用いて測定した重量平均分子量を意味する。該重量平均分子量は、例えば日本分光(株)製ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを使用して、以下の条件で測定することができる。
示差屈折率計:RI−1530
ポンプ:PU−1580
デガッサー:DG−980−50
カラムオーブン:CO−1560
カラム:順にKF−8025、KF−806M×2、KF−807
溶離液:THF
【0025】
(a)熱可塑性重合体は、後述する第一の単量体の1種以上の重合体であるか、該第一の単量体の1種以上と後述する第二の単量体の1種以上との共重合体であることが好ましい。
【0026】
第一の単量体は、分子中にα,β−不飽和カルボキシル基を含有する単量体であり、好ましくは3〜15個の炭素原子を有する。好ましい例としては、(メタ)アクリル酸、フマル酸、ケイ皮酸、クロトン酸、ソルビン酸、イタコン酸、プロピオール酸、マレイン酸、フマル酸、並びにこれらの半エステル及び無水物等が挙げられる。中でも、特に(メタ)アクリル酸が好ましい。
【0027】
第二の単量体は、非酸性で、分子中に重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体であり、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、iso−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、iso−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル等の、ビニルアルコールのエステル類、(メタ)アクリロニトリル、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体が挙げられる。中でも、特にメチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、スチレン、及びベンジル(メタ)アクリレートが好ましい。なお本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート及びメタクリレートを表す。
【0028】
第一の単量体は(a)熱可塑性重合体中に、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは15〜35質量%、更に好ましくは18〜30質量%含有されることができる。この量は、アルカリ現像性を維持するという観点から5質量%以上であることが好ましく、また、溶剤への溶解性、その他熱可塑性重合体又は光重合性モノマーとの相溶性という観点から50質量%以下であることが好ましい。第二の単量体は(a)熱可塑性重合体中に、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは65〜85質量%、更に好ましくは70〜82質量%含有されることが好ましい。この量は、保存安定性の観点から50質量%以上であることが好ましく、レジストの柔軟性及び屈曲性維持という観点から95質量%以下である。
【0029】
(a)熱可塑性重合体は、上記第一の単量体、又は上記第一の単量体と上記第二の単量体との混合物を、アセトン、メチルエチルケトン、又はイソプロパノール等の溶剤で希釈した溶液に、過酸化ベンゾイル、アゾイソブチロニトリル等のラジカル重合開始剤を適量添加し、加熱攪拌することにより合成することが好ましい。上記の単量体又はその混合物の一部を反応液に滴下しながら合成を行う場合もある。反応終了後、さらに溶剤を加えて、所望の濃度に調整する場合もある。合成手段としては、上記の溶液重合以外に、塊状重合、懸濁重合、又は乳化重合を用いてもよい。
【0030】
感光性樹脂組成物中に含有される(a)熱可塑性重合体の量は、20〜90質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは25〜70質量%の範囲、更に好ましくは40〜60質量%の範囲である。この量は、アルカリ現像性を維持するという観点から20質量%以上であることが好ましく、また、感度の観点から90質量%以下であることが好ましい。
【0031】
(b)光重合性モノマー
(b)光重合性モノマーの例としては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピルトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチルトリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、ウレタン基を含有する多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
好ましい例としては、解像性及び密着性の観点から、下記一般式(1):
【0032】
【化1】

【0033】
(式中、R1及びR2は、それぞれ独立に水素又はメチル基であり、A及びBは、それぞれ独立に炭素数が2〜4個のアルキレン基であり、m1、m2、n1及びn2は、それぞれ独立に0又は正の整数であり、そしてm1、m2、n1及びn2の合計は、2〜40である。)
で表される光重合性モノマーが挙げられる。
【0034】
上記一般式(1)におけるA及びBの代表例としては、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基等が挙げられ、エチレン基及びイソプロピレン基が特に好ましい。
【0035】
アルキレンオキシ(A−O)鎖及び(B−O)鎖の数としては、m1、m2、n1及びn2の合計が、2〜40の範囲であることが好ましく、4〜14の範囲であることがより好ましい。m1、m2、n1及びn2の合計が1以下である場合、感光性樹脂を現像液に分散させた場合の分散性が低い傾向がある。一方m1、m2、n1及びn2の合計が41以上の場合は、解像性が低い傾向がある。
【0036】
上記一般式(1)で表される光重合性モノマーの具体例としては、2,2−ビス{4−(アクリロキシポリエトキシ)シクロヘキシル}プロパン又は2,2−ビス{4−(メタクリロキシポリエトキシ)シクロヘキシル}プロパンのエトキシ基がモノエトキシ、ジエトキシ、トリエトキシ、テトラエトキシ、ペンタエトキシ、ヘキサエトキシ、ヘプタエトキシ、オクタエトキシ、ノナエトキシ、デカエトキシ、ウンデカエトキシ、ドデカエトキシ、トリデカエトキシ、テトラデカエトキシ、又はペンタデカエトキシであるものが挙げられる。アルキレン基はエチレン基とプロピレン基との混合物であってもよい。また、2,2−ビス{4−(アクリロキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル}プロパン又は2,2−ビス{4−(メタクリロキシポリアルキレンオキシ)シクロヘキシル}プロパンのアルキレンオキシ基が、オクタエトキシとジプロピルオキシとのブロック構造の付加物若しくはランダム構造の付加物又はテトラエトキシとテトラプロピルオキシとのブロック構造の付加物若しくはランダム構造の付加物であるものが挙げられる。これらの中でも、2,2−ビス{4−(メタクリロキシペンタエトキシ)シクロヘキシル}プロパンが最も好ましい。
【0037】
別の好ましい例として、レジスト形状及び耐薬品性の観点から、下記一般式(2):
【0038】
【化2】

【0039】
(式中、R3、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に水素又はメチル基であり、X及びYは、炭素数が2〜4個のアルキレン基であって互いに相異なり、p1、p2、p3、p4、p5、p6、p7及びp8は、それぞれ独立に0又は正の整数であり、そしてp1、p2、p3、p4、p5、p6、p7及びp8の合計は、0〜20である。)
で表される光重合性モノマーが挙げられる。
【0040】
上記一般式(2)で表される光重合性モノマーの具体例としては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシ化テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールプロポキシ化テトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールに平均2モルのエチレンオキサイドと平均2モルのプロピレンオキサイドとを付加したグリコールのテトラアクリレート等が挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種類以上併用しても構わない。これらの中でも、ペンタエリスリトールエトキシ化テトラアクリレートが最も好ましい。
【0041】
(b)付加重合性モノマーとしては、上記以外にも少なくとも1つの末端エチレン性不飽和基を有する公知の化合物を使用できる。例えば、4−ノニルフェニルヘプタエチレングリコールジプロピレングリコールアクリレート、2−ヒドロキシー3−フェノキシプロピルアクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコールアクリレート、無水フタル酸と2−ヒドロキシプロピルアクリレートとの半エステル化合物とプロピレンオキシドとの反応物(日本触媒化学製、商品名OE−A 200)、4−ノルマルオクチルフェノキシペンタプロピレングリコールアクリレート、2,2−ビス[{4−(メタ)アクリロキシポリエトキシ}フェニル]プロパン、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ジ(p−ヒドロキシフェニル)プロパンジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルトリ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシペンタエトキシフェニル)プロパン、ヘキサメチレンジイソシアネートとノナプロピレングリコールモノメタクリレートとのウレタン化物等のウレタン基を含有する多官能基(メタ)アクリレート、及びイソシアヌル酸エステル化合物の多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、単独で使用しても、2種類以上併用しても構わない。
【0042】
別の好ましい例としては、耐めっき性、レジストパターンの柔軟性の観点から、下記一般式(3):
【0043】
【化3】

【0044】
(式中、R7は炭素数4〜12のジイソシアネート残基であり、R8及びR9はそれぞれ独立に水素又はメチル基であり、そしてn1及びn2は1〜15の整数である。)
で表される光重合性モノマー、及び下記一般式(4):
【0045】
【化4】

【0046】
(式中、R10及びR11はそれぞれ独立に水素又はメチル基であり、そしてn3、n4及びn5は3〜20の整数である。)
で表される光重合性モノマーが挙げられる。
【0047】
別の好ましい例としては、硬化後のレジストパターンの柔軟性及び剥離工程における剥離性の観点から、下記一般式(5):
【0048】
【化5】

【0049】
(式中、R12及びR13は、それぞれ独立に水素又はメチル基であり、A及びBは、互いに相異なって−CH(CH3)CH2−又は−CH2CH2−であり、m1+m2は4〜12の正の整数であり、そしてn1+n2は4〜12の正の整数である。)
で表される光重合性モノマーが挙げられる。
【0050】
(b)光重合性モノマーとして上記一般式(5)で表される光重合性モノマーを用いる場合、硬化後のレジストが良好な耐膨潤性を示すとともに、剥離工程において良好な剥離性を示し、柔軟性に富む硬化膜を形成できる。上記一般式(5)で表される光重合性モノマーは、エチレングリコール鎖及びプロピレングリコール鎖を有することにより、耐膨潤性、及び(a)熱可塑性重合体との相溶性をともに良好に維持できる。
【0051】
感光性樹脂組成物中の(b)光重合性モノマーの含有量は、5〜75質量%であることが好ましい。該含有量が5質量%未満である場合、硬化不良、及び現像時間の遅延が生じやすく感度及び膜強度が良好でない傾向があり、該含有量が75質量%を超える場合、コールドフローの発生及び硬化レジストの剥離遅延が大きい傾向がある。
【0052】
(c)光重合開始剤
(c)光重合開始剤としては、各種の活性光線、例えば紫外線等により活性化され重合を開始する公知のあらゆる化合物が用いられる。このような化合物としては、例えば、2−エチルアントラキノン、オクタエチルアントラキノン、1,2−ベンズアントラキノン、2,3−ベンズアントラキノン、2−フェニルアントラキノン、2,3−ジフェニルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−クロロアントラキノン、2−メチルアントラキノン、1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、9,10−フェナントラキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルアントラキノン、3−クロロ−2−メチルアントラキノン等のキノン類、ベンゾフェノン、ミヒラーズケトン[4,4´−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン]、4,4´−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、
【0053】
ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール等のジアルキルケタール類、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体等のビイミダゾール化合物、9−フェニルアクリジン等のアクリジン類、ジエチルチオキサントン、クロルチオキサントン等のチオキサントン類、ジメチルアミノ安息香酸エチル等のジアルキルアミノ安息香酸エステル類、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−o−ベンゾイルオキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類、N−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン等のN−フェニルグリシン類、1−フェニル−3−(4−tert−ブチル−スチリル)−5−(p−tert−ブチル−フェニル)−ピラゾリン、1−(4−(ベンゾオキサゾール−2−イル)フェニル)−3−(4−tert−ブチルスチリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−ピラゾリンに代表されるピラゾリン類、チオキサントン類とアルキルアミノ安息香酸との組み合わせ、例えばエチルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、2−クロルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、イソプロピルチオキサントンとジメチルアミノ安息香酸エチルとの組み合わせ、9−フェニルアクリジン等のアクリジン類、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−O−ベンゾインオキシム、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(O−エトキシカルボニル)オキシム等のオキシムエステル類が挙げられる。
【0054】
(c)光重合開始剤の特に好ましい例としては、トリアリールイミダゾリル二量体が挙げられる。トリアリールイミダゾリル二量体の例としては、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール二量体、2,2’,5−トリス−(o−クロロフェニル)−4−(3,4−ジメトキシフェニル)−4’,5’−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4−ビス−(o−クロロフェニル)−5−(3,4−ジメトキシフェニル)−ジフェニルイミダゾリル二量体、2,4,5−トリス−(o−クロロフェニル)−ジフェニルイミダゾリル二量体、2−(o−クロロフェニル)−ビス−4,5−(3,4−ジメトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2−フルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3−ジフルオロメチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,5−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4,5−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,4,6−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、2,2’−ビス−(2,3,4,6−テトラフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体、及び2,2’−ビス−(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス−(3−メトキシフェニル)−イミダゾリル二量体等が挙げられる。特に、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体は解像性及び硬化膜の強度に対して高い効果を有する光重合開始剤であり、好ましく用いられる。これらは単独又は2種類以上組み合わせて用いられる。
【0055】
(c)光重合開始剤は、上記の(a)熱可塑性重合体及び(b)光重合性モノマーの種類等を考慮して選択するが、好ましい組み合わせとしては、第2層(及び任意の第3層等)を構成する感光性樹脂組成物中に、例えばトリアリールイミダゾリル二量体等を含有させるとともに、第1層を構成する感光性樹脂組成物中に、第2層及び第3層よりも高い感度を付与する観点で、例えば9−フェニルアクリジン、ビスアクリジニルヘプタン等のアクリジン化合物、又はN−フェニルグリシン、N−メチル−N−フェニルグリシン、N−エチル−N−フェニルグリシン等のN−フェニルグリシン化合物、クマリン、又はその誘導体化合物を含有させることができる。
【0056】
より具体的な選択例として、第1層が2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン及びN−フェニルグリシンを含有し、第2層が2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを含有する組み合わせ、第1層が9−フェニルアクリジン及びトリブロモフェニスメチルスルフォンを含有し、第2層が2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを含有する組み合わせ、を挙げることができる。また、3層を組み合わせる例としては、第3層に禁止剤を含有させて感度を調整する手法を挙げることもできる。例えば、第1層が9−フェニルアクリジン及びトリブロモフェニスメチルスルフォンを含有し、第2層が2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノンを含有し、第3層が2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、さらに2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、p−メトキシフェノールより選ばれる1種以上の化合物を含有する組み合わせ、等を例示できる。上記の第1層が9−フェニルアクリジン及びトリブロモフェニスメチルスルフォンを含有する代わりに、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾリル二量体及び4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン及びN−フェニルグリシンを含有する組み合わせも挙げることができる。
【0057】
感光性樹脂組成物中の(c)光重合開始剤の含有量は、0.01〜30質量%が好ましく、より好ましい範囲は、0.1〜15質量%である。該含有量は、十分な感度を得るという観点から0.01質量%以上であることが好ましく、また、高解像度という観点から30質量%以下であることが好ましい。
【0058】
[(d)その他の成分]
感光性樹脂組成物は、前述した成分に加えて例えば以下のような成分を含有できる。
【0059】
感光性樹脂組成物は、染料、顔料等の着色物質を含有できる。着色物質としては、例えば、フクシン、フタロシアニングリーン、オーラミン塩基、カルコキシドグリーンS、パラマジェンタ、クリスタルバイオレット、メチルオレンジ、ナイルブルー2B、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン、ベイシックブルー20、ダイアモンドグリーン等が挙げられる。
【0060】
また、露光により可視像を与えることができるように、感光性樹脂組成物中に発色剤として例えば発色系染料を含有させてもよい。発色系染料としては、ロイコ染料、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコクリスタルバイオレット]、トリス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)メタン[ロイコマラカイチグリーン]等が挙げられる。また、フルオラン染料とハロゲン化合物との組み合わせ、ビイミダゾール化合物とロイコ染料との組み合わせ、トリアジン化合物とロイコ染料との組み合わせが有用である。トリアジン化合物としては、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン等が挙げられる。ハロゲン化合物としては、臭化アミル、臭化イソアミル、臭化イソブチレン、臭化エチレン、臭化ジフェニルメチル、臭化ベンザル、臭化メチレン、トリブロモメチルフェニルスルホン、四臭化炭素、トリス(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、トリクロロアセトアミド、ヨウ化アミル、ヨウ化イソブチル、1,1,1−トリクロロ−2,2−ビス(p−クロロフェニル)エタン、ヘキサクロロエタン、トリアジン化合物等が挙げられる。
【0061】
着色物質及び発色剤の含有量は、感光性樹脂組成物中において、0.01〜10質量%であることが好ましい。該含有量は、良好な着色性又は発色性が認識できる点から0.01質量%以上が好ましく、露光部と未露光部とのコントラストの観点及び保存安定性維持の観点から10質量%以下が好ましい。
【0062】
さらに、感光性樹脂組成物の熱安定性及び保存安定性を向上させるために、感光性樹脂組成物にラジカル重合禁止剤又はベンゾトリアゾール類を含有させることは好ましい。ラジカル重合禁止剤としては、例えば、p−メトキシフェノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ナフチルアミン、tert−ブチルカテコール、塩化第一銅、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、ニトロソフェニルヒドロキシアミンアルミニウム塩、ジフェニルニトロソアミン等が挙げられる。
【0063】
ベンゾトリアゾール類としては、例えば、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−クロロ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール、ビス(N−2−エチルヘキシル)アミノメチレン−1,2,3−トリルトリアゾール、ビス(N−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレン−1,2,3−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。また、カルボキシベンゾトリアゾール類としては、例えば、4−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、5−カルボキシ−1,2,3−ベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−ヒドロキシエチル)アミノメチレンカルボキシベンゾトリアゾール、N−(N,N−ジ−2−エチルヘキシル)アミノエチレンカルボキシベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0064】
ラジカル重合禁止剤及びベンゾトリアゾール類の合計量は、好ましくは、感光性樹脂組成物の総量の0.01〜3質量%であり、より好ましくは0.05〜1質量%である。この量は、感光性樹脂組成物に保存安定性を付与するという観点から0.01質量%以上が好ましく、また、良好な光感度を維持するという観点から3質量%以下が好ましい。これらラジカル重合禁止剤及びベンゾトリアゾール類化合物は、単独で使用しても2種類以上併用してもよい。
【0065】
感光性樹脂組成物には、必要に応じて、可塑剤を含有させても良い。可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンモノエチルエーテル、ポリオキシプロピレンモノエチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンモノエチルエーテル等のグリコール・エステル類、ジエチルフタレート等のフタル酸エステル類、o−トルエンスルフォン酸アミド、p−トルエンスルフォン酸アミド、クエン酸トリブチル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリ−n−プロピル、アセチルクエン酸トリ−n−ブチル等が挙げられる。
【0066】
可塑剤の量としては、感光性樹脂組成物の総量の5〜50質量%が好ましく、より好ましくは、5〜30質量%である。現像時間の遅延を抑えるという観点、及び硬化膜に柔軟性を付与するという観点から5質量%以上が好ましく、また、硬化不足及びコールドフローを抑えるという観点から50質量%以下が好ましい。
【0067】
感光性樹脂組成物は、上記の各成分を均一に溶解した調合液とするために、溶媒を含有してもよい。用いられる溶媒としては、メチルエチルケトン(MEK)に代表されるケトン類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類が挙げられる。感光性樹脂組成物の調合液の粘度が25℃で500〜4000mPa・secとなるように溶媒量を調整することが好ましい。
【0068】
<積層体の製造>
[感光性樹脂積層体]
本発明によって製造される積層体は、基板上に例えば上述したような第1層と第2層とを有する感光層が積層されてなるものである。感光層は、好ましくは感光性樹脂積層体を用いて以下のように形成できる。感光性樹脂積層体は、支持体と、該支持体上に形成された感光層と、該感光層の該支持体形成側と反対側の表面に必要に応じて形成された保護層と、を有することができる。
【0069】
支持体としては、露光光源から放射される活性光を透過する透明なものが望ましい。支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、塩化ビニリデン共重合フィルム、ポリメタクリル酸メチル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、スチレン共重合体フィルム、ポリアミドフィルム、セルロース誘導体フィルム等が挙げられる。これらのフィルムは、必要に応じ延伸されたものも使用可能である。ヘーズは5以下のものが好ましい。支持体の厚みは、薄い方が画像形成性及び経済性の面で有利であるが、強度を維持する必要等から、厚み10〜30μmのものが好ましく用いられる。
【0070】
感光性樹脂積層体に用いられる保護層の重要な特性は、感光層との密着力について、支持体よりも保護層の方が充分小さく容易に剥離できることである。例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等が保護層として好ましく使用できる。また、例えば特開昭59−202457号公報に示された剥離性の優れたフィルムを用いることができる。保護層の膜厚は10〜100μmが好ましく、10〜50μmがより好ましい。
【0071】
感光性樹脂積層体における感光層の厚みは、用途において異なるが、好ましくは、5〜100μm、より好ましくは、10〜40μmであり、薄いほど解像度は向上し、また、厚いほど膜強度が向上する。
【0072】
支持体、感光層、及び必要により保護層を順次積層して感光性樹脂積層体を作製する方法としては、従来知られている方法を採用することができる。例えば、感光層を形成するための感光性樹脂組成物(典型的には、各成分がこれらを溶解する溶媒と混ぜ合わされて均一な溶液となっているもの)をまず支持体上にバーコーター又はロールコーターを用いて塗布して乾燥し、支持体上に感光性樹脂組成物からなる感光層を積層する。次いで、必要により、感光層上に保護層をラミネートすることにより感光性樹脂積層体を作製することができる。
【0073】
[積層体の形成]
上記の感光性樹脂積層体を用いて基板上に感光層を形成できる。基板上への感光層の積層は例えばラミネーターを用いて行う。感光性樹脂積層体が保護層を有する場合には保護層を剥離した後、ラミネーターで感光層を基板表面に加熱圧着し積層する。この場合、感光層は基板表面の片面だけに積層しても良いし、両面に積層しても良い。この時の加熱温度は一般的に40〜160℃である。また、該加熱圧着は2回以上行うことにより密着性及び耐薬品性が向上する。この時、圧着には二連のロールを備えた二段式ラミネーターを使用しても良いし、何回か繰り返してロールに通し圧着しても良い(二段式ラミネーターについては、例えば特開昭63−7477号公報参照)。
【0074】
第1層及び第2層の具体的な積層手順としては例えば以下の手順が挙げられる。第1層及び第2層をそれぞれ形成するための、支持体、感光層及び保護層からなる2種の感光性樹脂積層体を用いる。第1層を形成するための感光性樹脂積層体の保護膜を剥離した後ラミネーターで第1層を基板表面に加熱圧着する。続いて第2層を形成するための感光性樹脂積層体の保護層を剥離するのと同時に、基板に積層した第1層の支持体を剥離し、第2層を直接第1層の上部に加熱圧着する。
【0075】
<レジストパターンの形成>
本発明によって得られる積層体は、はんだバンプ形成等の用途において逆テーパー形状のめっきパターンを形成するためのレジストパターンを形成するために用いることができる。以下、本発明によって得られる積層体を用いたレジストパターンの形成について説明する。
【0076】
本発明の方法に従い上述の手順で形成した積層体に、露光機を用いて支持体(支持体剥離後に露光する場合は感光層)側から露光工程を行う。必要ならば支持体を剥離し、フォトマスクを通して活性光により露光する。露光量は、光源照度及び露光時間により決定され、光量計を用いて測定しても良い。
【0077】
露光工程において、マスクレス露光方法を用いてもよい。マスクレス露光はフォトマスクを使用せず基板上に直接描画して露光する。光源としては波長350〜410nmの半導体レーザー又は超高圧水銀灯等が用いられる。描画パターンはコンピューターによって制御され、この場合の露光量は、光源照度及び基板の移動速度によって決定される。
【0078】
次に、現像装置を用いて現像工程を行う。露光後、感光層上に支持体がある場合には、必要に応じてこれを除き、続いてアルカリ水溶液の現像液を用いて未露光部を現像除去し、レジスト画像を得る。アルカリ水溶液としては、Na2CO3、K2CO3等の水溶液を用いる。これらは感光層の特性に合わせて選択されるが、0.2〜3質量%の濃度、20〜40℃のNa2CO3水溶液が一般的である。該アルカリ水溶液中には、界面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0079】
上述の工程によってレジストパターンが得られるが、場合によっては100〜300℃の加熱工程に供することもできる。このような加熱工程を経ることにより、更に耐エッチング性を向上させることができる。次に現像により露出した基板面をエッチング法等、既知の方法を用いて処理することにより金属の画像パターンを形成する。その後、硬化レジスト画像は、一般的に現像で用いたアルカリ水溶液よりも更に強いアルカリ性水溶液により剥離される。剥離用のアルカリ水溶液について特に制限はないが、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウムの水溶液が一般的に用いられる。さらに現像液又は剥離液に少量の水溶性溶媒を加えることも可能である。
【0080】
本発明によって得られる積層体を用いて形成されるレジストパターンの好ましい態様としては、例えばレジスト幅が50μmである場合のテーパー幅が5μm以上であることが挙げられる。ここでテーパー幅とは、(テーパー幅)={(レジスト底面のレジスト幅)−(レジスト上面のレジスト幅)}÷2により求められる値である。上記のレジスト底面とは基板と接しているレジスト面であり、レジスト上面とは該レジスト底面の対向側のレジスト面である。上記テーパー幅が5μm以上である場合、レジストの未露光部分が良好に除去されているため、例えばレジストをはんだバンプ形成用に用いた際、より細かいピッチではんだを形成でき有利である。上記テーパー幅は、例えばレーザー顕微鏡を用いた断面形状計測により測定できる。
【0081】
本発明によって得られる積層体を用いて形成したレジストパターンを用いて、めっきパターンとして例えば逆テーパー形状のはんだバンプを形成できる。はんだバンプは、上記のレジストパターンを用い、レジストパターンに覆われていない金属表面に、銅、はんだ、ニッケル及び錫等のめっき処理を行うことによって形成できる。
【実施例】
【0082】
以下、実施例により本発明の例をさらに詳しく説明する。まず実施例及び比較例の評価用サンプルの作製方法を説明し、次いで、得られたサンプルについての評価方法及びその評価結果を示す。
【0083】
《実施例1及び2、並びに比較例1》
【0084】
1.評価用サンプルの作製方法
<感光性樹脂積層体の作製>
[感光性樹脂組成物の調製]
【0085】
表2に示すような熱可塑性重合体A−1及びA−2を含む各成分を表1に示す配合比で混合し、各実施例及び比較例の各層の形成に用いる感光性樹脂組成物を得た。A−1及びA−2はメチルエチルケトン溶液として調製された感光性樹脂組成物であるが、表1におけるA−1及びA−2の質量部は、メチルエチルケトンを含まない値である。表1において略号で表した成分の名称を表2に示す。
【0086】
[積層]
表1に示す成分をよく攪拌及び混合して得られた感光性樹脂組成物を、支持体としての20μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルムの表面にバーコーターを用いて均一に塗布し、95℃の熱風式乾燥機中で、[乾燥後の膜厚(μm)]÷10(分)となるよう膜厚に応じた時間乾燥して感光層を形成した。即ち、乾燥後の感光層の膜厚が15μmとなる分量を塗工した場合は1.5分間乾燥した。また、乾燥後の感光層の膜厚が10μmとなる分量を塗工した場合は1分間、40μmとなる場合は4分間乾燥した。このようにして、第1及び第2の感光層(実施例1)、第1、第2及び第3の感光層(実施例2)及び単層からなる感光層(比較例1)をそれぞれ形成した。各々の層の厚みは後述の表4に示す通りである。次いで、感光層の、ポリエチレンテレフタレートフィルム積層側とは反対側の表面上に、保護層として19μm厚のポリエチレンフィルムを張り合わせて、感光性樹脂積層体を得た。
【0087】
<基板整面>
銅合金EFTEC−64T(古河電気工業株式会社製)を用い、P3percy KL(ヘンケルジャパン株式会社製)を用いてアルカリ脱脂し、次いで3%に希釈した塩酸を用いて酸洗して整面した。
【0088】
<ラミネート>
感光性樹脂積層体を、ポリエチレンフィルムを剥がしながら、上記の整面後、50℃に予熱した銅張積層板にホットロールラミネーター(旭化成エレクトロニクス(株)製、AL−70)を用いてロール温度105℃でラミネートした。ロール圧力は0.34MPaとし、ラミネート速度は1.5m/minとした。上記により評価用基板を得た。
【0089】
<露光>
感光性樹脂積層体の支持体であるポリエチレンテレフタレートフィルム上に、PETマスク(旭No.4パターン1/1(実施例2及び比較例1)、1/2(実施例1)を置き、水銀ショートアークランプランプ(オーク製作所製、HMW−801)により、平行光、及び透明から黒色に27段階に明度が変化しているステップタブレット旭化成27段を用い、後述の所定の露光量で支持体側から露光した。
【0090】
<現像>
ポリエチレンテレフタレートフィルムを剥離した後、30℃の1質量%Na2CO3水溶液を、スプレー圧0.22MPaで所定時間スプレーし、感光層の未露光部分を溶解除去した。この際、未露光部分の感光層が完全に溶解するのに要する最も少ない時間である最小現像時間(B.P.)の2倍の現像時間で現像を行った。
【0091】
2.評価方法
(1)感度測定
上記<ラミネート>工程の終了後15分間経過させた評価用基板を、ステップタブレット旭化成27段を用いて露光した。ステップタブレット旭化成27段と、感光性樹脂分野で一般的な市販品であるストーファー21段ステップタブレットとの段数の対応関係を表3に示す。露光後、最小現像時間の2倍の現像時間で現像し、ステップタブレット旭化成27段にて12段となる露光量を、ストーファー21段ステップタブレットにおいてタブレット感度が8段となる露光量(すなわち本発明で規定する最小露光量)として求めた。結果を表4に示す。なお表4に示す感光層の膜厚は、テスター産業株式会社製ダイヤルゲージ接触式膜厚計により測定した値である。
【0092】
(2)レジスト形状
上記<ラミネート>工程の終了後15分間経過させた評価用基板を、露光部と未露光部との幅が、30μm:60μm及び50μm:100μm(実施例1)、50μm:50μm(実施例2)、50μm:50μm(比較例1)の比率のマスクを介して露光し、最小現像時間の2倍の現像時間で現像した。現像により形成されたラインの形状を走査型電子顕微鏡(SEM)S−3400(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)で観察した。測定部位はラインパターンの先端とした。観察条件は下記の通りである。
加速電圧:15kV、プローブ電流:40nA、傾斜角度:80度
測定倍率:600倍(実施例1 30μm/60μm)、400倍(実施例1 50μm/100μm)、又は500倍(実施例2,比較例1)
図1は、実施例及び比較例における走査型電子顕微鏡によるライン形状の観察結果を示す図である。
【0093】
(3)テーパー幅
上記(2)と同様に現像までを行って形成したラインの断面形状計測をレーザー顕微鏡(VK−9500(株式会社キーエンス製)を用いて行い、レジストのテーパー幅を測定した。測定部位は、ラインパターンの中央とした。測定条件は以下の通りである。
レンズ倍率:50倍、測定ピッチ:0.1μm、RUNMODE:カラー超深度
テーパー幅を、(テーパー幅)={(レジスト底面のレジスト幅)−(レジスト上面のレジスト幅)}÷2により算出した。上記のレジスト底面とは基板に接している側のレジスト面であり、レジスト上面とは該レジスト底面の対向側のレジスト面である。
【0094】
【表1】

【0095】
【表2】

【0096】
【表3】

【0097】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の方法により得られる積層体は、例えばはんだバンプの形成等の用途において逆テーパー形状のめっきパターンを形成するために好適に適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と該基板上に積層された2層以上のネガ型の感光層とを有する積層体の製造方法であって、
基板上に第1の感光層を積層する工程と、
該第1の感光層の上に第2の感光層を積層する工程と、
を含み、
感光層が、カルボキシル基を含有する熱可塑性重合体と、少なくとも2つの末端エチレン基を持つ光重合性モノマーと、光重合開始剤とを含有する感光性樹脂組成物から構成され、
該第1の感光層が該第2の感光層よりも高い感度を有する、
積層体の製造方法。
【請求項2】
該第1の感光層を硬化させるために最小な露光量Aと、該第2の感光層を硬化させるために必要な最小露光量Bとの比A/Bが、0.01≦A/B<1を満たす、請求項1に記載の積層体の製造方法。
【請求項3】
該第2の感光層の上に第3の感光層を積層する工程を更に含み、
該第2の感光層が該第3の感光層よりも高い感度を有する、
請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。
【請求項4】
該第1の感光層を構成する感光性樹脂組成物が該光重合開始剤としてアクリジン化合物又はN−フェニルグリシン化合物を含有し、かつ該第2の感光層を構成する感光性樹脂組成物が該光重合開始剤としてトリアリールイミダゾリル二量体を含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−168210(P2012−168210A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−26470(P2011−26470)
【出願日】平成23年2月9日(2011.2.9)
【出願人】(309002329)旭化成イーマテリアルズ株式会社 (771)
【Fターム(参考)】