説明

積層体及びそれを備える太陽電池モジュール

【課題】太陽電池モジュールの前面又は背面を構成するフロントシート又はバックシートとして好適に使用でき、且つ接着層による部品の取り付けが可能な積層体を提供する。
【解決手段】フッ素樹脂層10と、前記フッ素樹脂層10の一方面上に設けられた第一級又は第二級のアミノ基を有するアクリル系ポリマーを含むプライマー層12と、を備える、積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、それを備える太陽電池モジュール及びプライマーに関する。
【背景技術】
【0002】
有機系太陽電池(OPVs)、銅/インジウム/ガリウム/セレンからなる化合物系太陽電池(CIGS)等の薄膜太陽電池の技術分野では、外部環境からの水蒸気に対する防護特性、紫外線に対する耐久性等が求められている。このような要求を満たす太陽光発電装置(太陽電池モジュール)の封止材料として、ガラス材料が、従来より一般的に用いられている。
【0003】
しかしながら、ガラス材料は、重量があり、割れ易く、柔軟性を付与することが困難であり、取り扱いが難しい。よって、ガラス材料のこれらの欠点を有せず、ガラス材料のような防護特性、紫外線安定性及び光透過性を有する封止材料を開発することが重要である。
【0004】
このような封止材料として、近年、フッ素樹脂を含むフッ素樹脂層を最外層として有する積層体が検討されている。例えば、特許文献1には、半結晶性フルオロポリマーの第一外層、ポリエステルの中間層及びオレフィン性ポリマーの第二外層を含む多層フィルムが、太陽電池モジュールのバッキングフィルムとして提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−546557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽電池モジュールの背面には、ジャンクションボックスや補強用フレーム等の部材が取り付けられる場合があり、このような部材の取り付けには、作業性に優れることから接着剤(例えば、感圧接着剤(粘着剤))の使用が望まれている。しかし、太陽電池モジュールの背面を構成するバックシートとして、最外層にフッ素樹脂層を有する積層体を用いると、フッ素樹脂層と接着層(接着剤を含む層)との接着性が低いため、接着剤による部材の取付が困難となる。
【0007】
また、太陽電池モジュールの前面に積層体を適用する場合にも、フッ素樹脂層と他の部材とを接着剤で接合することが望まれるが、同様にフッ素樹脂層と接着層との接着性が低いことが問題となる。
【0008】
本発明は、太陽電池モジュールの前面又は背面を構成するフロントシート又はバックシートとして好適に使用でき、且つ接着剤による部材の取り付けが可能な積層体、及びそれを備える太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一側面は、フッ素樹脂層と、上記フッ素樹脂層の一方面上に設けられた第一級又は第二級のアミノ基を有するアクリル系ポリマーを含むプライマー層と、を備える積層体である。
【0010】
上記積層体は、フッ素樹脂層を備えるため、耐候性、耐水性、耐湿性等に優れ、太陽電池モジュールの前面又は背面を構成するフロントシート又はバックシートとして、好適に使用できる。また、上記積層体には、フッ素樹脂層の一方面上にプライマー層が設けられており、当該プライマー層は、フッ素樹脂層と接着層の双方に対して優れた接着性を示す。そのため、上記積層体に対しては、接着層によりジャンクションボックスや補強用フレーム等の部品を容易に取り付けることができる。
【0011】
一態様において、上記アクリル系ポリマーは、上記アミノ基としてアミノエチル基を有していてもよい。このようなアクリル系ポリマーを含むプライマー層は、フッ素樹脂層との接着性に一層優れる。そのため、このようなプライマー層によれば、フッ素樹脂層と接着層とが一層強固に接合される。
【0012】
また、一態様において、上記プライマー層は、有機オニウム化合物を更に含んでいてもよい。このようなプライマー層は、フッ素樹脂層との接着性に一層優れる。そのため、このようなプライマー層によれば、フッ素樹脂層と接着層とが一層強固に接合される。
【0013】
また、一態様において、上記積層体は、プライマー層上に接着層を更に備えていてもよく、該接着層は、アクリル系粘着剤又はアクリル系ホットメルト接着剤を含むものとすることができる。上記プライマー層は、このような特定の接着層との接着性に特に優れるものであるため、このような積層体において、接着層上にジャンクションボックスや補強用フレーム等の部材を取り付ければ、フッ素樹脂層と部材との間で特に優れた接着性が得られる。
【0014】
また、一態様において、上記積層体は、上記フッ素樹脂の他方面上に、ポリエステル系樹脂を含む第一樹脂層と、オレフィン性ポリマーを含む第二樹脂層とをこの順に備えるものであり得る。このような積層体は、太陽電池モジュールの背面を構成するバックシートとしてより好適に用いることができる。
【0015】
本発明の他の側面は、上記積層体を備える太陽電池モジュールに関するものである。上記積層体を備える太陽電池モジュールは、その背面において、接着層によって接着性良くジャンクションボックスや補強用フレーム等の部材を取り付けることができる。
【0016】
また、本発明の他の側面においては、上記積層体における上記プライマー層の形成に用いられる、第一級又は第二級のアミノ基を有するアクリル系ポリマーを含有するプライマーが提供される。
【0017】
さらに、本発明の他の側面においては、フッ素樹脂層の一方面が、第一級又は第二級のアミノ基を有するアクリル系ポリマーを含む組成物でプライマー処理されている、フッ素樹脂層を備える積層体が提供される。このような積層体は、フッ素樹脂層が上記特定のプライマーによりプレイマー処理されているため、フッ素樹脂層に対する接着層の接着性が良好になっている。そのため、当該積層体を太陽電池モジュールのバックシートとして用いた場合に、最外層がフッ素樹脂層でありながら、接着層で容易にジャンクションボックスや補強用フレーム等の部材を取り付けることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、太陽電池モジュールの前面又は背面を構成するフロントシート又はバックシートとして好適に使用でき、且つ接着剤による部材等の取り付けを容易に行うことが可能な積層体、及びそれを備える太陽電池モジュール、が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の積層体の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の切断線I−Iに沿った断面を示す模式断面図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュールの一実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3の切断線II−IIに沿った断面を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明では、同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1は、本発明の積層体の一実施形態を示す斜視図であり、図2は、図1の切断面I−Iに沿った断面を示す模式断面図である。積層体100は、フッ素樹脂層10と、フッ素樹脂層10の一方面上に設けられた第一級又は第二級のアミノ基を有するアクリル系ポリマーを含むプライマー層12と、を備える。また、積層体100は、フッ素樹脂層10の他方面上に、ポリエステル系樹脂を含む第一樹脂層14と、オレフィン性ポリマーを含む第二樹脂層16とを、この順に備える。
【0022】
フッ素樹脂層10は、フッ素樹脂を含有する層である。フッ素樹脂としては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、ペルフルオロアルコキシビニルエーテル(PFA)、フッ化ビニリデン(VDF)、クロロトリフルオロエチレン、等のフッ素化モノマーを含むモノマーの重合体が挙げられる。
【0023】
フッ素樹脂としては、具体的には、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ペルフルオロアルコキシビニリエーテル共重合体、フッ化ビニリデン−クロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−エチレン共重合体、フッ化ビニリデン−テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−フッ化ビニリデン共重合体(THV)、等が挙げられる。
【0024】
フッ素樹脂は、フッ化ビニリデン単位を有する(すなわち、フッ化ビニリデンを含むモノマーの重合体である)ことが好ましい。このようなフッ素樹脂によれば、フッ素樹脂層10とプライマー層12との接着性が一層向上する。
【0025】
また、フッ素樹脂は、フッ化ビニリデン単位及びテトラフルオロエチレン単位を有することが好ましく、フッ化ビニリデン単位、テトラフルオロエチレン単位及びヘキサフルオロプロピレン単位をさらに有することがよりより好ましい。
【0026】
さらに、フッ素樹脂としては、透明性、バリア性及び柔軟性に優れることから、テトラフルオロエチレン36〜72質量%、ヘキサフルオロプロピレン0〜56質量%及びフッ化ビニリデン8〜45質量%を含むモノマーの重合体が好ましい。
【0027】
フッ素樹脂層10におけるフッ素樹脂の含有量は、フッ素樹脂層10の総量基準で、90質量%以上であることが好ましい。
【0028】
フッ素樹脂層10の厚さは、特に限定されないが、0.01〜0.15mmとすることができ、0.03〜0.05mmとすることもできる。
【0029】
プライマー層12は、第一級又は第二級のアミノ基を有するアクリル系ポリマーを含み、フッ素樹脂層10及び接着剤の双方に優れた接着性を示す。
【0030】
第一級又は第二級のアミノ基を有するアクリル系ポリマーの一例としては、下記式(1)で表される構造単位を有するアクリル系ポリマーが挙げられる。
【0031】
【化1】

【0032】
式(1)中、nは1以上の整数(好ましくは、1〜3の整数)を示し、Rは水素原子又はメチル基を示す。式(1)で表される構造単位を有するアクリル系ポリマーは、例えば、アクリル酸単位を有するアクリル系ポリマーとアジリジンとの反応により得ることができる。
【0033】
上記アクリル系ポリマーは、第一級又は第二級のアミノ基を複数有することが好ましい。また、上記アクリル系ポリマーは、第一級又は第二級のアミノ基としてアミノエチル基を有すること好ましく、アミノエチル基を複数有することがより好ましく、式(1)で表される構造単位を複数有することがさらに好ましい。
【0034】
プライマー層12における上記アクリル系ポリマーの含有量は、プライマー層12の総量基準で、90質量%以上であることが好ましい。
【0035】
プライマー層12は、上記アクリル系ポリマー以外の成分を含有していてもよい。例えば、プライマー層12は、後述の有機溶媒等を含有していてもよい。
【0036】
また、プライマー層12は、有機オニウム化合物を含むことができる。有機オニウム塩としては、例えば、リン原子、ヒ素原子、アンチモン原子及び窒素原子からなる群より選択される一種の中心原子を含むカチオンと、その対アニオンとからなる塩が挙げられる。対アニオンは、有機又は無機アニオンであることができ、例えば、ハロゲン化物イオン、硫酸イオン、カルボン酸イオン、リン酸イオン、ホスホン酸イオン、水酸化物イオン、アルコキシド、フェノキシド又はビスフェノキシドであってよい。
【0037】
一つの例として、有機オニウム塩は、下記式(a)で表される有機ホスホニウム塩を含む。
[P(R (a)
式中、Rはアルキル基、アリール基、アルカリル基又はアリールアルキル基を示し、Xは一価のアニオンを示す。Xは、ハロゲン化物イオンであることができる。
【0038】
有機オニウム塩の一例としては、トリフェニルベンジルホスホニウムクロライド、トリブチルアリールホスホニウムクロライド、トリブチルベンジルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0039】
積層体100において、プライマー層12はフッ素樹脂層10の一方面側全体を覆うように設けられているが、本発明においてプライマー層12は、必ずしもフッ素樹脂層10の一方面側全体を覆うように設けられている必要はない。例えば、太陽電池モジュールのバックシートとして用いる際にジャンクションボックスが貼り付けられる箇所にのみ、プライマー層12を設けていてもよい。
【0040】
プライマー層12は、上記アクリル系ポリマー及び有機溶媒を含有するプライマーを、フッ素樹脂層10の一面上に塗布した後、有機溶媒の少なくとも一部を除去することで作製することができる。
【0041】
上記有機溶媒は、上記アクリル系ポリマーを溶解又は分散させ得るものであれば特に制限されない。上記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、トルエン等が好適に用いられる。
【0042】
プライマー層12の厚さは、特に限定されないが、5μm以下とすることができ、2μm以下とすることもできる。プライマー層12の厚さは、フッ素樹脂層10の一面上に塗布するプライマーの量及び該プライマー中の固形分量を調整することで、適宜調整することができる。
【0043】
上述のように、フッ素樹脂層10がフッ化ビニリデン単位を有するフッ素樹脂を含有するとき、フッ素樹脂層10とプライマー層12との接着性が一層向上する。この理由は必ずしも明らかではないが、フッ素樹脂のフッ化ビニリデン単位と上記アクリル系ポリマーのアミノ基とが反応して、フッ素樹脂とアクリル系ポリマーとが化学的又はイオン的に結合するためと考えられる。
【0044】
また、プライマー層12は、アミノ基との反応性基を有するポリマーを含む接着層との接着性に優れる。この理由は必ずしも明らかではないが、上記アクリル系ポリマーと接着層中の反応性基とが反応して、アクリル系ポリマーと接着層中のポリマーとが化学的又はイオン的に結合するためと考えられる。
【0045】
また、プライマー層は、アクリル系粘着剤又はアクリル系ホットメルト接着剤を含む接着層との接着性に特に優れる。この理由としては、アクリル系粘着剤のアクリル系単量体単位と、上記アクリル系ポリマーのアミノ基とが反応して、アクリル系粘着剤とアクリル系ポリマーとが化学的又はイオン的に結合するためと考えられる。
【0046】
さらに、フッ素樹脂層10を、フッ化ビニリデン単位を有するフッ素樹脂を含むものとし、プライマー層12を、第一級又は第二級のアミノ基を複数有するアクリル系ポリマーを含むものとすることで、接着層に対する接着性を一層向上させることができる。この理由は、プライマー層12のアクリル系ポリマーが第一級又は第二級のアミノ基を複数有する場合に、フッ素樹脂層10のフッ素樹脂におけるフッ化ビニリデン単位と、接着層中のポリマーとが、アクリル系ポリマーを介して化学的に結合し得るためと考えられる。
【0047】
第一樹脂層14は、例えば、ポリエステル系樹脂を含む層であり、補強材として、及び/又は絶縁性層としての役割を有する。
【0048】
ポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、等が挙げられ、これらのうちポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0049】
また、第一樹脂層14は、例えば、ポリアリレート類;ポリアミド6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612等のポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリフタルアミド類;熱可塑性ポリイミド類;ポリエーテルイミド類;ビスフェノールAのポリカーボネート等のポリカーボネート類;ポリメチルメタクリレート等の(メタ)アクリルポリマー類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等の塩化ポリマー類;ポリ(アリールエーテルエーテルケトン)(PEEK)、エチレン又はプロピレンと一酸化炭素との交互共重合体等のポリケトン類;任意の立体規則性を持つポリスチレン類、環又は鎖置換ポリスチレン類;ポリフェニレンオキシド、ポリ(ジメチルフェニレンオキシド)、ポリエチレンオキシド、ポリオキシメチレン等のポリエーテル類;酢酸セルロース類等のセルロース誘導体類;ポリフェニレンサルファイド、ポリスルホン類、ポリエーテルスルホン類等の硫黄含有ポリマー類;のような他のポリマー類を含有していてもよい。
【0050】
さらに、第一樹脂層14は、ポリエステル系樹脂及び上記ポリマー類以外の成分を含有していてもよい。また、第一樹脂層14は、例えば白色化していてもよい。第一樹脂層14が白色化していると、後述する太陽電池モジュールの一実施形態において、ガラス板24側から入射した太陽光のうち太陽電池セル20を通過した光や、太陽電池セル20に入射せず直接第一樹脂層14に入射した光を、第一樹脂層14で反射して、太陽電池セル20の面に供することができる。これにより、太陽電池モジュール200の発電効率が一層向上する。白色化の方法としては、例えば酸化チタンを含有させる方法、気泡を混入させる方法等が挙げられる。
【0051】
第一樹脂層14におけるポリエステル系樹脂の含有量は、第一樹脂層14の総量基準で90質量%以上であることが好ましい。
【0052】
第一樹脂層14の厚さは、特に限定されないが、例えば、0.03〜0.25mmとすることができる。
【0053】
第二樹脂層16は、オレフィン性ポリマーを含む層であり、太陽電池モジュールのバックシートとして用いる際に、太陽電池モジュールと積層体100とを接合する接着剤層として働くことができる。また、太陽電池モジュールに貼り付けられた後は、絶縁層としての役割を担うこともできる。
【0054】
オレフィン性ポリマーとしては、例えば、式CH−CHR(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜18のアルキル基を示す。)で表されるオレフィン性モノマーに由来する単量体単位を、一種以上有するポリマーが挙げられる。このようなオレフィン性モノマーとしては、エチレン、プロピレン、1−ブテン等が挙げられ、これらのうちエチレンが好ましい。
【0055】
オレフィン性ポリマーとして、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン−1、ポリ(3−メチルブテン)、ポリ(4−メチルペンテン)、エチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクタデセンから選ばれる少なくとも一種との共重合体、等が挙げられる。
【0056】
オレフィン性ポリマーは、上記オレフィン性モノマーと、上記オレフィン性モノマーと共重合し得る1以上のコモノマーとの共重合体であってもよい。コモノマーは、オレフィン性ポリマーの総量に対して1〜10質量%の範囲とすることが好ましい。
【0057】
上記コモノマーとしては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、クロロ酢酸ビニル、クロロプロピオン酸ビニル等のビニルエステルモノマー類;アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、N,N−ジメチルアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル等の、アクリル系モノマー類;スチレン、o−メトキシスチレン、p−メトキシスチレン、ビニルナフタレン等のビニルアリールモノマー類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニリデン等のビニル及びビニリデンハロゲン化物モノマー類;マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル等のマレイン酸及びフマル酸のアルキルエステルモノマー類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル、2−クロロエチルビニルエーテル等のビニルアルキルエーテルモノマー類;ビニルピリジンモノマー類;N−ビニルカルバゾールモノマー類;N−ビニルピロリジンモノマー類;が挙げられる。
【0058】
また、オレフィン性ポリマーは、カルボキシル基を有するモノマー類の金属塩を含有していてもよい。当該モノマー類の金属塩を形成する金属としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、バリウム、亜鉛、ジルコニウム、ベリリウム、鉄、ニッケル、コバルト等の一価、二価又は三価になり得る金属が挙げられる。
【0059】
第二樹脂層16は、オレフィン性ポリマー以外の成分を含有していてもよい。例えば、第二樹脂層16は、酸化防止剤、光安定剤、酸中和剤、充填剤、粘着防止剤、顔料、接着促進剤等の補助剤をさらに含有していてもよい。
【0060】
第二樹脂層16におけるオレフィン性ポリマーの含有量は、第二樹脂層16の総量基準で90質量%以上であることが好ましい。
【0061】
第二樹脂層16の厚さは、特に限定されないが、0.03〜0.51mmとすることができる。
【0062】
積層体100は、上記以外の構成を有していてもよく、例えば、プライマー層12のフッ素樹脂層10と反対側の面上、又は、第二樹脂層16の第一樹脂層14と反対側の面上に、保護フィルムが積層されていてもよい。このような保護フィルムは、積層体100の損傷、汚れ等を防ぐために備えられ、使用時に剥離される。
【0063】
以下、本発明の太陽電池モジュールの一実施形態について説明する。図3は、本発明の太陽電池モジュールの一実施形態を示す斜視図であり、図4は、図3の切断性II−IIに沿った断面を示す模式断面図である。
【0064】
太陽電池モジュール200においては、ガラス板24と、封止材層22と、第二樹脂層16と、第一樹脂層14と、フッ素樹脂層10と、プライマー層12とがこの順で積層され、側面を覆うアルミフレーム30によって保持されている。そして、封止材層22中に太陽電池セル20が封止されている。また、ジャンクションボックス210は、アクリル系粘着剤層26を介してプライマー層12上に接合されている。
【0065】
ガラス板24、封止材層22、太陽電池セル20及びジャンクションボックス210は特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0066】
一つの態様において、接着層26は、アミノ基との反応性基を有するポリマーを含む層であってよい。このような接着層26は、プライマー層12のアクリル系ポリマーと化学的又はイオン的に結合することができると考えられ、プライマー層12との接着性に優れる。ここで、アミノ基との反応性基としては、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基等が挙げられる。
【0067】
他の態様において、接着層26は、アクリル系粘着剤又はアクリル系ホットメルト接着剤を含む層であってよい。このような接着層26は、プライマー層12のアクリル系ポリマーと化学的又はイオン的に結合することができると考えられ、プライマー層12との接着性に特に優れる。
【0068】
なお、接着層26は上記の態様に限定されず、公知の接着剤、感圧接着剤(粘着剤)、ホットメルト接着剤等を含む層であってよい。
【0069】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では積層体100を、第一樹脂層14及び第二樹脂層16を備えるものとして記載したが、本発明の積層体は、必ずしも第一樹脂層14及び第二樹脂層16を備えるものである必要はなく、フッ素樹脂層とプライマー層とを備えていればよい。
【0070】
また、上記実施形態では、本発明の積層体を、フッ素樹脂層とプライマー層とを備える積層体として説明したが、本発明の積層体は、フッ素樹脂層の一方面がアミノエチル基を複数有するアクリル系ポリマーを含む組成物でプライマー処理されている、フッ素樹脂層を備える積層体、ということもできる。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0072】
(実施例1)
フッ素樹脂層(THV層)とポリエチレンテレフタレート層とエチレン−酢酸ビニル共重合体層とがこの順で積層してなる多層構造のフィルム(Scotchshield Film 17T、スリーエム社製、米国ミネソタ)を準備した。このフィルムのフッ素樹脂層上に、アミノエチル化アクリルポリマー(NK350:株式会社日本触媒、大阪市中央区)を2質量%含むメチルエチルケトン溶液を塗布し、乾燥させて、プライマー層を有する積層体を得た。得られた積層体について、下記の方法で接着性評価を行った。
【0073】
<接着性評価>
積層体のプライマー層と反対側の面を、厚さ3mmのガラスに、真空ラミネータにて貼り付けた。次いで、アルミニウム箔が裏打ちされたアクリルフォームテープ(両面テープ、Y4300−08、住友スリーエム社製)を、積層体のプライマー層上に置き、5kg重ローラを1往復させて貼り付けた。これを23℃湿度55%の条件下で1日放置したものを初期サンプルとした。
【0074】
初期サンプルについて、JIS Z 0237に準拠して90度ピール試験を、引張速度300mm/分で行った。ピール強度(N/cm)は、表1に示すとおりであった。
【0075】
次いで、上記と同様にして作製した初期サンプルを、85℃湿度85%の条件下で2週間放置した後、23℃湿度55%の条件下でさらに1日放置し、高温高湿試験後のサンプルを得た。得られたサンプルについて、JIS Z 0237に準拠して90度ピール試験を、引張速度300mm/分で行った。ピール強度(N/cm)は、表1に示すとおりであった。
【0076】
また、評価後のサンプルを観察したところ、初期においても高温高湿試験後においても、アクリルフォームテープが破壊されることで剥離が生じていることが確認された。
【0077】
(比較例1)
実施例1で用いたものと同じ三層構造のフィルムを準備し、このフィルムのフッ素樹脂層上に、ポリメチレンポリフェニレンイソシアネート及び塩素化ゴムをそれぞれ1〜5質量%含む混合溶液(プライマーN200:住友スリーエム株式会社、東京都世田谷区)を塗布し、乾燥させてプライマー層を有する積層体を得た。
【0078】
(比較例2)
実施例1で用いたものと同じ三層構造のフィルムを準備し、このフィルムのフッ素樹脂層上に、ポリメチレンポリフェニレンイソシアネート及び塩素化ポリプロピレンをそれぞれ1〜5質量%含む混合溶液(プライマーK500:住友スリーエム株式会社、東京都世田谷区)を塗布し、乾燥させてプライマー層を有する積層体を得た。
【0079】
(比較例3)
実施例1で用いたものと同じ三層構造のフィルムを準備し、このフィルムのフッ素樹脂層上に、アクリル系ポリマー及び塩素化ゴムをそれぞれ1〜5質量%含む混合溶液(プライマー4298UV、スリーエム社製、米国ミネソタ)を塗布し、乾燥させてプライマー層を有する積層体を得た。
【0080】
(比較例4)
実施例1で用いたものと同じ三層構造のフィルムを準備し、このフィルムのフッ素樹脂層上に、PAA−HCL−3L(平均分子量15000のポリアリルアミン塩酸塩重合体の50%水溶液、日東紡株式会社、東京都千代田区)を塗布し、乾燥させてプライマー層を有する積層体を得た。
【0081】
(比較例5)
実施例1で用いたものと同じ三層構造のフィルムを準備し、このフィルムのフッ素樹脂層上に、PAA−HCL−10L(平均分子量150000のポリアリルアミン塩酸塩重合体の40%水溶液、日東紡株式会社、東京都千代田区)を塗布し、乾燥させてプライマー層を有する積層体を得た。
【0082】
(比較例6)
実施例1で用いたものと同じ三層構造のフィルムを準備し、このフィルムのフッ素樹脂層上に、PAA−15(平均分子量15000のアリルアミン重合体の15%水溶液、日東紡株式会社、東京都千代田区)を塗布し、乾燥させてプライマー層を有する積層体を得た。
【0083】
<接着性評価>
比較例1〜6で得られた積層体について、上記の方法で接着性評価を行った。評価結果は表1に示すとおりであった。また、評価後のサンプルを確認したところ、比較例6の初期接着性評価においてわずかにアクリルフォームテープの破壊が認められた以外は、いずれの比較例においてもアクリルフォームテープの破壊は認められず、アクリルフォームテープと積層体との界面で剥離が生じていた。
【0084】
(比較例7)
実施例1で用いたものと同じ三層構造のフィルムについて、プライマー処理を行わずに、実施例1と同様の方法でフッ素樹脂層とアクリルフォームテープとの接着性評価を行った。評価結果は表1に示すとおりであった。また、評価後のサンプルを確認したところ、初期においても高温高湿試験後においても、アクリルフォームテープの破壊は認められず、アクリルフォームテープとフッ素樹脂層との界面で剥離が生じていた。
【0085】
【表1】

【符号の説明】
【0086】
10…フッ素樹脂層、12…プライマー層、14…第一樹脂層、16…第二樹脂層、20…太陽電池セル、22…封止材層、24…ガラス板、100…積層体、200…太陽電池モジュール、210…ジャンクションボックス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素樹脂層と、前記フッ素樹脂層の一方面上に設けられた第一級又は第二級のアミノ基を有するアクリル系ポリマーを含むプライマー層と、を備える、積層体。
【請求項2】
前記アクリル系ポリマーが、前記アミノ基としてアミノエチル基を有する、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記プライマー層が、有機オニウム化合物を更に含む、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記プライマー層上に接着層を更に備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記接着層が、アクリル系粘着剤又はアクリル系ホットメルト接着剤を含む、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体であって、
前記フッ素樹脂層の他方面上に、ポリエステル系樹脂を含む第一樹脂層と、オレフィン性ポリマーを含む第二樹脂層とをこの順に備える、積層体。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体を備える、太陽電池モジュール。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の積層体における前記プライマー層の形成に用いられる、第一級又は第二級のアミノ基を有するアクリル系ポリマーを含有するプライマー。
【請求項9】
フッ素樹脂層の一方面が、第一級又は第二級のアミノ基を有するアクリル系ポリマーを含む組成物でプライマー処理されている、フッ素樹脂層を備える積層体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−254529(P2012−254529A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127280(P2011−127280)
【出願日】平成23年6月7日(2011.6.7)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】