説明

積層体

【課題】吸放湿性および透湿性を兼ね備えた積層体、特に、内部の湿度変化を抑制し、結露および冷凍下での霜の形成を防止し得る、包装材に有用な積層体の提供。
【解決手段】吸放湿層(A)と透湿層(B)を含んでなる積層体であって、該吸放湿層(A)が、(a)ポリビニルアルコール系樹脂、または、(b)ポリビニルアルコール系樹脂(X)と、アクリル酸重合体およびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(Y)との樹脂組成物を含んでなり、該透湿層(B)が、ポリビニルアルコール系樹脂またはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂を含んでなる、積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸放湿性および透湿性を兼ね備えた積層体に関する。更に詳しくは、本発明は、物品の包装材として用いた際に内部の湿度変化を抑制し得、包装材の内部表面において、結露および冷凍下での霜の形成を防止し得る積層体、および当該積層体を含んでなる包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類および食肉などの生鮮食品は、最終販売に適すような個別の包装形態とするために、一般的にはトレイにのせて透明のプラスチック製のオーバーラップフィルムなどの包装材で覆われたり、袋や透明容器などの包装体に詰められ、さらに、生産地からの鮮度を保持するために、通常−20〜−40℃の低温で急冷され、貯蔵、保管、輸送される。そして、これらの冷凍された魚介類および食肉などは、冷凍状態を保ったまま小売店に搬入して貯蔵され、店頭ではショーケースなどに並べて陳列され、一般消費者に販売されることになる。ところが、プラスチック包装材に魚介類、食肉類などの食品を詰めると、食品からの水分に起因して包装材内部の湿度が上昇し、包装材の内部表面に結露が生じることがある。さらに、このような食品を詰めた包装材を冷凍すると、包装体内部の水蒸気が外部からの急冷により過飽和になり、包装フィルムの内表面で霜を形成する。このような結露や霜は、内容物の透視性を損なうため、消費者の購入時の品定めに支障をきたす問題がある。
【0003】
プラスチック包装材における従来のこの問題を解決するために、幾多の改善への取り組みがなされてきた。
例えば、特許文献1には、ケン化度が98モル%以上、重合度1000以上のポリビニルアルコール(PVA)樹脂からなる結露防止フィルムが開示されている。特許文献1記載の結露防止フィルムは、PVAに起因する吸放湿性を有するが、透湿性は十分ではなく、結露および霜の防止性能は十分とはいえない。さらに、特許文献1の技術で用いられるPVAは、フィルムの製法が溶液キャスティング方式に限られ、押出溶融加工が困難なため、加工面で汎用性が低いという問題があると同時に、収縮性がなく包装外観に欠けるという問題もある。
また、特許文献2には、外気側から順に、非透湿層/表層/吸湿層からなる氷結防止性多層フィルムが開示されている。また、各層に好ましく使用される樹脂としては、表層としてPVA系樹脂やエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物が、吸湿層としてPVA系樹脂やアクリル酸重合体およびそのブレンド物などが開示されている。さらに、該多層フィルムを延伸することも開示されている。
しかしながら、特許文献2記載の多層フィルムは外気側に非透湿層を有するため、当該多層フィルムの吸湿層側で吸湿量が飽和に達した場合は、表層を通じて外気側に放湿できずに、結局は吸湿層の内部側表面に結露してしまい、結露や冷凍下での霜を十分に防止できないという問題があった。
従って、物品を包装した際に、内部の湿度変化を抑制し得、包装材の内部表面において、結露および冷凍下での霜の形成を良好に防止し得る包装材が望まれている。
【特許文献1】特開平4−249540号公報
【特許文献2】特開2004−306329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の課題に鑑み、本発明は、透湿性および吸放湿性を兼ね備える積層体、および当該積層体を含んでなり、物品を包装した際に内部の湿度変化を抑制し得、包装材の内部表面において、結露および冷凍下での霜の形成を良好に防止し得る包装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究の結果、吸放湿層(A)および透湿層(B)を含んでなる積層体であって、該吸放湿層(A)が、(a)ポリビニルアルコール(以下、「PVA」と略する)系樹脂、または、(b)PVA系樹脂(X)と、アクリル酸重合体およびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(Y)との樹脂組成物を含んでなり、該透湿層(B)が、PVA系樹脂またはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物(以下、「EVOH」と略する)系樹脂を含んでなる積層体が、上記課題を解決することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕吸放湿層(A)と透湿層(B)を含んでなる積層体であって、
該吸放湿層(A)が、
(a)ポリビニルアルコール系樹脂、または、
(b)ポリビニルアルコール系樹脂(X)と、アクリル酸重合体およびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(Y)との樹脂組成物
を含んでなり、かつ、
該透湿層(B)が、ポリビニルアルコール系樹脂またはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂を含んでなる、積層体;
〔2〕前記吸放湿層(A)が、(b)ポリビニルアルコール系樹脂(X)と、アクリル酸重合体およびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(Y)との樹脂組成物を含んでなる、前記〔1〕記載の積層体;
〔3〕前記吸放湿層(A)が未延伸フィルムであり、前記透湿層(B)が延伸フィルムである、前記〔1〕または〔2〕記載の積層体;
〔4〕前記透湿層(B)が少なくとも一方向に2.0倍〜5.0倍の延伸倍率で延伸したフィルムである、前記〔3〕に記載の積層体;
〔5〕前記透湿層(B)が、前記方向と直交する方向にさらに2.0倍〜5.0倍の延伸倍率で延伸した二軸延伸フィルムである、前記〔4〕に記載の積層体;
〔6〕前記透湿層(B)側の表面に、表面層(C)を更に含んでなる、前記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の積層体;および
〔7〕前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の積層体を含んでなる、包装材。
【発明の効果】
【0007】
本発明の積層体は、優れた吸放湿性を有する層と、優れた透湿性を有する層とを含んでなるので、吸放湿層が湿気を吸収することができ、一方、透湿層側が高湿度環境下にある場合は、透湿層が湿気を吸放湿層側に透過させることができる。このようにして、本発明の積層体は、吸放湿層側の湿度変化を抑制することができる。従って、本発明の積層体を含んでなる包装材は、包装フィルムの内部表面で、結露や冷凍下での霜の形成を抑制し、フィルムの透視性が損なわれるのを防止できるので、各種物品の包装用途、特に、食品(例、食肉、魚介類、野菜、果実など)などの包装用途に適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明の積層体は、吸放湿層(A)と透湿層(B)を含んでなる積層体であって、該吸放湿層(A)が、(a)PVA系樹脂、または、(b)PVA系樹脂(X)と、アクリル酸重合体およびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(Y)との樹脂組成物を含んでなり、該透湿層(B)が、PVA系樹脂またはEVOH系樹脂を含んでなるものである。
【0009】
(吸放湿層(A)の説明)
上記吸放湿層(A)のPVA系樹脂(a)、または樹脂組成物(b)のPVA系樹脂(X)として用いるPVA系樹脂は、特に限定されず、例えば、ポリビニルエステル系樹脂(例えば、酢酸ビニル)をケン化するという公知の方法で製造できる、種々の重合度およびケン化度を有するPVAが挙げられる。更には酢酸ビニルと共重合性を有する単量体と酢酸ビニルとの共重合体のケン化物などを本発明の目的を阻害しない範囲において用いることもできる。
酢酸ビニルと共重合し得るかかる単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、イソブチレン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセンなどのオレフィン類;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸などの不飽和酸類またはその塩またはそのモノまたはジアルキルエステルなど;アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのニトリル類;ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミド、メタクリルアミドなどのアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸などのオレフィンスルホン酸あるいはその塩;アルキルビニルエーテル類;N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドなどのハロゲン化有機アンモニウム化合物;ジメチルアリルビニルケトン;N−ビニルピロリドン;塩化ビニル、塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテルなどのポリオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル;ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレン(メタ)アクリレート;ポリオキシエチレン(メタ)アクリルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミドなどのポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド;ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−1,1−ジメチルプロピル)エステル;ポリオキシエチレンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエーテルなどのビニルエーテル類;ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミンなどのアリルアミン類;ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミンなどのビニルアミン類などが挙げられる。また、酢酸ビニルの重合時に連鎖移動剤、例えばメルカプト基を有する化合物を共存させて重合した後にケン化してもかまわない。更にPVA系樹脂に官能基を有する化合物を後反応で付加して変性(例えば、アセト酢酸エステル化、エステル化、アセタール化、エーテル化、グラフト化、リン酸エステル化、オキシアルキレン化、アシル化、ウレタン化など)させた後変性PVAも用いることができる。
【0010】
該PVA系樹脂の重合度としては、特に限定されないが、300〜4500が好ましく、更に好ましくは500〜4000、特に好ましくは1000〜3500である。重合度が300未満であると、樹脂層としたときの強度が弱くなるおそれがある。一方、重合度が4500を超えると、該PVA系樹脂水溶液を調整する際に、水溶液の粘度が高くなりすぎ、フィルムまたはシート(以下、「フィルム」と総称する)に成形する際に、作業性が悪くなったり、水溶液の保存安定性が悪くなるおそれがある。
【0011】
該PVA系樹脂のケン化度としては、特に限定されないが、70〜99.9モル%が好ましく、更に好ましくは80〜99.9モル%、特に好ましくは85〜99.9モル%である。ケン化度が70モル%未満であると、後記アクリル酸重合体およびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(Y)を配合する際に、相溶牲が悪化して、樹脂が析出するおそれがある。一方、ケン化度が99.9モル%を超えると、水溶液の粘度が高くなりすぎ、フィルムに成形する際や後記表面層(C)などに塗布する際に、作業性が悪くなったり、水溶液の保存安定性が悪くなるおそれがある。
【0012】
該吸放湿層(A)の(b)の少なくとも1種の樹脂(Y)に用いるアクリル酸重合体としては、特に限定されず、アクリル酸単独の重合体や、アクリル酸と本発明の目的を阻害しない範囲で共重合可能なモノマー(例えば、メタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチルなどのアクリル酸エステル類、ギ酸ビニル、酢酸ビニルなどのビニルエステル類、スチレン、p−スチレンスルホン酸、エチレン、プロピレン、イソブチレンなどの炭素数2〜30のオレフィン類、マレイン酸、スルホン酸を有するビニルエステル類)を共重合させたアクリル酸共重合体が挙げられる。また、その重合体に含まれるカルボキシル基の全てまたは一部を部分的に中和した塩型になっているものも本発明でいうアクリル酸重合体に含まれる。該塩としては、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩など)、アミン塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0013】
該アクリル酸重合体がアクリル酸−アクリル酸塩共重合型である場合、その中和度は特に限定されないが、10〜80%が好ましく、更に好ましくは20〜70%、特に好ましくは30〜70%である。中和度が80%を超えると、PVA系樹脂と混合する際、混合水溶液が相分離するおそれがある。
【0014】
該吸放湿層(A)に用いるポリビニルピロリドンとしては、特に限定されず、公知のものが使用できる。また、本発明の目的を阻害しない範囲で、ビニルピロリドンと他のビニル系化合物(例えば、酢酸ビニル;α−オレフィン;エチレン性不飽和カルボン酸またはその塩、アルキルエステル、無水物、ニトリルもしくはアミド;エチレン性不飽和スルホン酸;ビニルエーテル;酢酸ビニル以外のビニルエステル;塩化ビニル;スチレンなど)などとの共重合体を用いても構わない。
また、該吸放湿層(A)には、発明の効果を損なわない範囲で、可塑剤や、その他の高分子化合物、無機化合物、有機化合物などを添加してもよい。可塑剤としては、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、エチレングリコ−ル、ジエチレングリコ−ル、ポリエチレングリコ−ルなどが挙げられ、これらは単独で使用しても2種以上併用してもよい。
【0015】
該吸放湿層(A)が、PVA系樹脂(X)と、アクリル酸重合体およびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(Y)との樹脂組成物(b)を含んでなる場合、配合比率(X/Y)は、特に限定されないが、95/5〜5/95が好ましく、更に好ましくは90/10〜10/90、特に好ましくは80/20〜20/80である。配合比率が95/5を超える場合、或いは、5/95未満である場合、本発明の効果を充分に得ることができないおそれがある。
【0016】
吸放湿層(A)の成形方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。該吸放湿層(A)は、フィルムへの成形時に100℃以上で熱処理することが好ましく、こうすることにより、吸放湿層(A)に寸法安定性を付与することができる。
また、吸放湿層(A)は、必要に応じて延伸することもできるが、この場合、延伸後に熱処理を行うと、吸湿性が低下するおそれがあるので、熱処理は延伸前または延伸中のいずれかに行う必要がある。吸放湿層(A)は、吸放湿性の点から未延伸フィルムであることが好ましい。
【0017】
該吸放湿層(A)は、上記樹脂成分の他に、必要に応じてエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの多価アルコール類の可塑剤;フェノール系抗酸化剤、アミン系抗酸化剤などの抗酸化剤;リン酸エステル類などの安定剤;着色料、香料、増量剤、消泡剤、剥離剤、紫外線吸収剤、無機粉体、界面活性剤などの通常の添加剤を適宜配合しても差し支えない。又、該吸放湿層(A)には、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのPVA系樹脂以外の他の水溶性樹脂をさらに混合してもよい。
【0018】
吸放湿層(A)の吸放湿性とは、本発明の包装材を使用に供したときに、吸放湿層(A)が包装材内部の湿気を吸収するために、および透湿層側が高湿度下にある場合は吸放湿層(A)が透湿層(B)を透過した外気からの湿気を吸収するために、必要とされる物性である。
当該吸放湿性の尺度としては、例えば特定条件下での吸水率および放水率が挙げられる。例えば、本発明で用いる吸放湿層(A)は、乾燥状態(23℃でシリカゲルによって乾燥したデシケーター内で充分乾燥した状態)より、40℃×90%r.h.(r.h.は相対湿度である)の環境に10時間放置した場合の吸水率が3重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、かつ、40℃×90%の環境で充分に吸水した状態から、25℃×40%r.h.の環境に10時間放置した場合の放水率が2重量%以上であれば、本発明で意図する吸放湿性を発揮することができる。
【0019】
(透湿層(B))
上記透湿層(B)に用いるPVA系樹脂としては、特に限定されないが、例えば、上記吸放湿層(A)で用いるものと同様のPVA系樹脂が挙げられる。好ましくは、重合度500〜4500、更に好ましくは1000〜4500、ケン化度90〜99.9モル%、更に好ましくは95〜99.9モル%のPVA系樹脂が挙げられる。かかる重合度が500未満では、フィルム強度などの機械的物性が劣ることがあり、一方、4500を越えるとフィルムへの製膜性が悪くなるおそれがある。また、ケン化度が90モル%未満では、耐水性が低下するおそれがある。
透湿層(B)に用いるPVA系樹脂フィルムの製造方法は特に限定されないが、例えば、ドラム、エンドレスベルトなどの金属面上にPVA系樹脂溶液を、流延したり、あるいは押出機により溶融押出したりすることによりフィルムを形成することができる。通常は製膜用の原液として、PVA系樹脂濃度が15〜60重量%、好ましくは20〜50重量%のPVA系樹脂−水の組成物を調製する。
又、必要に応じてエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの多価アルコール類の可塑剤;フェノール系抗酸化剤、アミン系抗酸化剤などの抗酸化剤;リン酸エステル類などの安定剤;着色料、香料、増量剤、消泡剤、剥離剤、紫外線吸収剤、無機粉体、界面活性剤などの通常の添加剤などを適宜配合しても差し支えない。又、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのPVA系樹脂以外の他の水溶性樹脂を混合してもよい。
上記で調製したPVA系樹脂−水の組成物の調製は、製膜機(押出機)に連動させるか、あるいは当該組成物を一旦ペレット化、フレーク化した後に製膜機に供給し、押出製膜する。尚、PVA系樹脂−水の組成物の調製と製膜操作を同一の押出機を用いて行うこともできるが、長さ/直径の比(L/D)を大きくしたり、多軸押出機を使用したり、ギアポンプを利用するなど、均一な混和と製膜安定性に留意する必要がある。
PVA系樹脂フィルムの製膜法については、特に限定されないが、上記原液を押出機に供給して溶融混練した後、Tダイ法、インフレーション法により押出製膜し、乾燥する方法が好ましい。
押出機内での溶融混練温度は、特に限定されないが、55〜140℃が好ましく、更には55〜130℃が好ましい。かかる温度が55℃未満ではフィルム肌の不良を招き、140℃を越えると発泡現象を招くおそれがある。製膜後のフィルムは乾燥され製品化される。かかる乾燥は、70〜110℃、好ましくは80〜100℃で行う。
本発明では、透湿層(B)に用いるPVA系樹脂フィルムは、延伸フィルムであることが好ましい。当該延伸フィルムは、少なくとも一方向の延伸倍率が少なくとも2.0倍〜5.0倍であることが好ましく、2.5倍〜4.5倍がより好ましく、3.0倍〜4.5倍が特に好ましい。また、当該方向と直交する方向に更に延伸を施すこと、すなわち二軸延伸により、耐水性、可撓性、機械的強度などの物性を付与することができる。
かかる二軸延伸については、縦軸方向(長手方向)の延伸倍率が2.0〜5.0倍、横軸方向(幅方向)の延伸倍率が2.0〜5.0倍であることが好ましく、より好ましくは縦軸方向の延伸倍率が3.0〜4.5倍、横軸方向の延伸倍率が3.0〜5.0倍である。該縦軸方向の延伸倍率が2.0倍未満では延伸による物性向上が得難く、5.0倍を越えるとフィルムが縦軸方向へ裂けやすくなり好ましくない。又横軸方向の延伸倍率が2.0倍未満では延伸による物性向上が得難く、5.0倍を越えるとフィルムが破断するおそれがある。
かかる二軸延伸を行うに当たっては、上記PVA系樹脂フィルムの含水率を5〜30重量%、好ましくは20〜30重量%に調整しておくことが好ましい。かかる含水率が5重量%未満では延伸倍率を充分に高めることができないおそれがあり、一方、30重量%を越えると、同様に延伸工程で縦横軸の延伸倍率を高めることができなくなるおそれがある。含水率は、例えば、上記で得られた乾燥前のPVA系樹脂フィルムを引き続き乾燥したり、含水率5重量%未満のPVA系フィルムを水に浸漬あるいは調湿などを施したりすることにより調整することができる。
かかる二軸延伸は、好ましくは逐次二軸延伸で行う。逐次二軸延伸を行う場合、縦軸方向の延伸および横軸方向の延伸の順番は特に限定されず、いずれの延伸を先に行ってもよい。
さらに、二軸延伸を施した後は、熱固定を行うことが好ましく、かかる熱固定の温度は、PVA系樹脂の融点ないし融点より40℃低い温度までの範囲から選択することが好ましい。熱固定の温度が融点より40℃低い温度より低い場合は寸法安定性が悪く、収縮率が大きくなるおそれがあり、一方、熱固定の温度が融点より高い場合はフィルムの厚み変動が大きくなるおそれがある。PVA系樹脂が酢酸ビニル単独重合体のケン化物である場合の熱固定温度は、例えば160〜230℃である。また、熱固定時間は1〜30秒間であることが好ましく、より好ましくは5〜10秒間である。
上記透湿層(B)には、市販のPVA系樹脂フィルムを用いることもでき、このような市販のPVA系樹脂フィルムとしては、ボブロン(商品名:日本合成化学工業株式会社製)などを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0020】
該透湿層(B)に用いるEVOH系樹脂としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化によって得られるものであれば特に限定されない。該エチレン−酢酸ビニル共重合体は、公知の任意の重合法、例えば、溶液重合、懸濁重合、エマルジョン重合などにより製造でき、又、該エチレン−酢酸ビニル共重合体のケン化も公知の方法で行うことができる。
【0021】
該EVOH系樹脂のエチレン含有率は、特に限定されないが、10モル%〜70モル%が好ましく、更に好ましくは20モル%〜60モル%、特に好ましくは25モル%〜55モル%である。エチレン含有率が10モル%未満であると溶融成形性が低下するおそれがある。一方、エチレン含有率が70モル%を超えると、高湿度下での透湿度が低下するおそれがある。
【0022】
該EVOH系樹脂の酢酸ビニル成分のケン化度は、特に限定されないが、85モル%以上(更には90モル%以上、特には95モル%以上)のものが好ましい。85モル%未満であると、熱安定性、耐湿性などが低下したり、アクリル酸重合体またはポリビニルピロリドンを配合する際に、相溶牲が悪化して、樹脂が析出するおそれがある。
【0023】
該EVOH系樹脂のメルトインデックス(MI)としては、特に限定されないが、0.1〜100g/10分(210℃、荷重2160g)が好ましく、より好ましくは1〜30g/10分である。該メルトインデックス(MI)が0.1g/10分未満では、成形時に押出機内が高トルク状態となって押出加工が困難になるおそれがある。一方、100g/10分を超えると、造膜性および加熱延伸成形時の外観性が低下するおそれがある。
【0024】
該EVOH系樹脂は、本発明の効果を阻害しない範囲で共重合可能なエチレン性不飽和単量体を共重合していてもよく、かかる単量体としては、プロピレン、1−ブテン、イソブテンなどのオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、(無水)フタル酸、(無水)マレイン酸、(無水)イタコン酸などの不飽和酸類またはその塩あるいはそのモノ−またはジ−C1−18アルキルエステル類;アクリルアミド、N−C1−18アルキル−アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、2−アクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩;アクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのアクリルアミド類;メタクリルアミド、N−C1−18アルキル−メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、2−メタクリルアミドプロパンスルホン酸あるいはその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミンあるいはその酸塩あるいはその4級塩などのメタクリルアミド類;N−ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミドなどのN−ビニルアミド類;アクリルニトリル、メタクリルニトリルなどのシアン化ビニル類;C1−18アルキル−ビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、アルコキシアルキルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;トリメトキシビニルシランなどのビニルシラン類;酢酸アリル、塩化アリル、アリルアルコール、ジメチルアリルアルコールなどのアリル化合物類;トリメチル(3−アクリルアミド−3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロリド;アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などが挙げられる。又、本発明の趣旨を損なわない範囲で、ウレタン化、アセタール化、シアノエチル化など、後変性されても差し支えない。
また、かかるEVOHは、熱安定性や接着性を付与する目的で、金属(例、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属など)、ホウ酸、リン酸などの物質を含有させても良い。その場合には、直径が0.1〜10μm程度の細孔が均一に分布したミクロポーラスな内部構造をもつEVOHがかかる物質を均一に含有させ得る点で好ましく、通常EVOHの溶液(水/アルコール混合溶媒など)を凝固浴中に押し出すときに、EVOH溶液の濃度(20〜80重量%)、押出温度(45〜70℃)、溶媒の種類(水/アルコール混合重量比=80/20〜5/95など)、凝固浴の温度(1〜20℃)、滞留時間(0.25〜30時間)、凝固浴中でのEVOH量(0.02〜2重量%)などを任意に調節することで、該構造のEVOHを得ることが可能となる。更には含水率20〜80重量%のEVOHが、上記の物質などを均一にかつ迅速に含有させることができてより好ましい。また、かかる物質の含有量は、特に限定されないが、前述の水溶液との接触処理において、かかる物質の水溶液濃度、接触処理時間、接触処理温度、接触処理時の撹拌速度や処理されるEVOHの含水率などをコントロールすることで調整が可能である。
上記金属のうち、アルカリ金属としてはナトリウム、カリウムなどが挙げられ、アルカリ土類金属としてはカルシウム、マグネシウムなどが挙げられ、遷移金属としてはマンガン、銅、コバルト、亜鉛などが挙げられるが、中でもナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの遷移金属が好ましい。これらの金属は、酢酸やステアリン酸などの脂肪酸や、ホウ酸、リン酸などの無機酸などの金属塩としてEVOHに含有させることができる。
また、EVOHに含有させるリン酸としては、リン酸水素塩やリン酸の他、上記金属のリン酸塩を用いることもできる。
EVOHにホウ素を含有させるためのホウ素化合物としては、ホウ酸、ホウ酸カルシウム、ホウ酸コバルト、ホウ酸亜鉛(四ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛など)、ホウ酸アルミニウム・カリウム、ホウ酸アンモニウム(メタホウ酸アンモニウム、四ホウ酸アンモニウム、五ホウ酸アンモニウム、八ホウ酸アンモニウムなど)、ホウ酸カドミウム(オルトホウ酸カドミウム、四ホウ酸カドミウムなど)、ホウ酸カリウム(メタホウ酸カリウム、四ホウ酸カリウム、五ホウ酸カリウム、六ホウ酸カリウム、八ホウ酸カリウムなど)、ホウ酸銀(メタホウ酸銀、四ホウ酸銀など)、ホウ酸銅(ホウ酸第二銅、メタホウ酸銅、四ホウ酸銅など)、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウムなど)、ホウ酸鉛(メタホウ酸鉛、六ホウ酸鉛など)、ホウ酸ニッケル(オルトホウ酸ニッケル、二ホウ酸ニッケル、四ホウ酸ニッケル、八ホウ酸ニッケルなど)、ホウ酸バリウム(オルトホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、二ホウ酸バリウム、四ホウ酸バリウムなど)、ホウ酸ビスマス、ホウ酸マグネシウム(オルトホウ酸マグネシウム、二ホウ酸マグネシウム、メタホウ酸マグネシウム、四ホウ酸三マグネシウム、四ホウ酸五マグネシウムなど)、ホウ酸マンガン(ホウ酸第一マンガン、メタホウ酸マンガン、四ホウ酸マンガンなど)、ホウ酸リチウム(メタホウ酸リチウム、四ホウ酸リチウム、五ホウ酸リチウムなど)などの他、ホウ砂、カーナイト、インヨーアイト、コトウ石、スイアン石、ザイベリ石などのホウ酸塩鉱物などが挙げられ、好適にはホウ酸、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム(メタホウ酸ナトリウム、二ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸ナトリウム、五ホウ酸ナトリウム、六ホウ酸ナトリウム、八ホウ酸ナトリウムなど)を用いることができる。
【0025】
本発明では、透湿層(B)に用いるEVOH系樹脂フィルムもまた、延伸フィルムであることが好ましい。当該延伸フィルムは、少なくとも一方向の延伸倍率が少なくとも2.0倍〜5.0倍であることが好ましく、2.5倍〜4.5倍がより好ましく、3倍〜4.5倍が特に好ましい。また、当該方向と直交する方向に更に延伸を施すこと、すなわち二軸延伸により、耐水性、可撓性、機械的強度などの物性を付与することができる。
かかる二軸延伸については、縦軸方向の延伸倍率が2.0〜5.0倍、横軸方向の延伸倍率が2.0〜5.0倍であることが好ましく、より好ましくは縦軸方向の延伸倍率が3.0〜4.5倍、横軸方向の延伸倍率が3.0〜5.0倍である。該縦軸方向の延伸倍率が2.0倍未満では延伸による物性向上が得難く、5.0倍を越えるとフィルムが縦軸方向へ裂けやすくなるおそれがある。又横軸方向の延伸倍率が2.0倍未満では延伸による物性向上が得難く、5.0倍を越えるとフィルムが破断するおそれがある。
かかる二軸延伸は、好ましくは逐次二軸延伸で行う。逐次二軸延伸を行う場合、縦軸方向の延伸および横軸方向の延伸の順番は特に限定されず、いずれの延伸を先に行ってもよい。
【0026】
透湿層(B)に用いられる市販のEVOH系樹脂フィルムとしてはボブロンSE(商品名:日本合成化学工業株式会社製)などを例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
該透湿層(B)には、上記PVA系樹脂またはEVOH系樹脂の他に、必要に応じてエチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの多価アルコール類の可塑剤やフェノール系抗酸化剤、アミン系抗酸化剤などの抗酸化剤、リン酸エステル類などの安定剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、充填材(例えば無機フィラーなど)、着色料、香料、増量剤、消泡剤、剥離剤、紫外線吸収剤、無機粉体、界面活性剤などの通常の添加剤を適宜配合しても差し支えない。また、澱粉、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロースなどのPVA系樹脂またはEVOH系樹脂以外の他の樹脂を混合してもよい。例えば、透湿性を阻害しない範囲でナイロン、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合体)等を混合することにより、柔軟性や施工性を付与することができる。
【0028】
なかでも、本発明の積層体における透湿層(B)としては、高湿度環境下の透湿度が大きく、低湿度環境下の透湿度が小さいものが特に好ましい。
【0029】
本発明の積層体は、上記吸放湿層(A)と透湿層(B)を含んでなる。該積層体を製造する方法としては特に限定されないが、例えば、(i) 吸放湿層(A)および透湿層(B)のフィルムをそれぞれ製造しておき、それらを貼り合わせる方法、(ii) 吸放湿層(A)および透湿層(B)のどちらか一方のフィルムを製造しておき、該フィルム上に他方の層を積層する方法、などが挙げられる。
【0030】
該吸放湿層(A)および透湿層(B)のフィルムを製造する方法は、特に限定されず、公知の製膜方法を使用することができるが、通常、押出法または流延法が採用される。すなわち、上記樹脂成分に必要に応じ水、溶剤、可塑剤(多価アルコールなど)、フィラー、着色剤、安定剤、機能性薬剤などを配合した後、ダイまたはノズルから空気中にまたは凝固浴中に吐出させるか、ドラム、エンドレスベルトなどの金属面上に流延し、必要に応じて乾燥する。典型的には、上記樹脂成分の水溶液(通常、樹脂濃度5〜50重量%)に必要に応じて他の添加剤を配合し、ダイまたはノズルから吐出させるか、またはドラム、エンドレスベルトなどの金属面上に流延した後、乾燥する。さらに、得られたフィルムは、必要に応じて延伸することもできる。
本発明においては、吸放湿層(A)は、吸放湿性の点で、未延伸フィルムであることが好ましく、透湿層(B)は、透湿性、機械的強度、耐水性、寸法安定性などの点で、延伸フィルムであることが好ましい。
【0031】
該吸放湿層(A)および透湿層(B)のフィルムを貼り合わせる方法としては、特に限定されないが、例えば、縫製、ドット接着、全面接着、超音波接着、熱融着などの方法が挙げられる。さらにまた、ホットメルト剤の押出ラミネート法、スプレー法、押出ポーラスコート法、ホットメルト剤の粉体散布・熱固着法なども利用することができる。
【0032】
一方の層のフィルムに他方の層を積層する方法は、特に限定されず、公知の積層方法を使用することができる。例えば、一方の層のフィルムに他方の層を構成する上記樹脂成分の溶液(通常、水溶液)を塗布し、乾燥することにより積層することができる。
【0033】
かくして得られる積層体(A/B)において、各層の厚みは、特に限定されないが、A層の厚みは、通常3μm〜100μm、好ましくは5μm〜100μm、より好ましくは15μm〜100μmである。A層の厚みが3μm未満であると、湿度変化を抑制する効果が不充分となる虞があり、100μmを超えると包装材としての取り扱い性が低下する虞がある。
また、B層の厚みは、通常8μm〜100μm、好ましくは10μm〜40μm、より好ましくは10μm〜30μmである。B層の厚みが8μm未満であると、フィルム強度が得がたいとともに一定の厚みを保持しての製造が難しくなる虞があり、100μmを超えると包装材としての取り扱い性が低下する虞がある。
【0034】
上記のように得られた透湿層(B)は、透湿性を有する。透湿性は、本発明の包装材を使用に供したときに、透湿層(B)が包装材外部の湿気を吸放湿層(A)側に透過させるのに必要な物性である。
当該透湿性の尺度としては、例えば特定条件下での透湿度が挙げられる。例えば、透湿層(B)をJIS―K7129に規定されるプラスチックフィルムの水蒸気透過度試験方法(機器測定法)のA法(感湿センサー法)において、23℃×Δ85%r.h.(r.h.=相対湿度)の条件で測定した場合に、透湿度が50g/m・day以上、好ましくは 80g/m・day以上、さらに好ましくは 100g/m・day以上であれば、本発明で意図する透湿性を発揮することができる。
【0035】
(表面層(C))
本発明の積層体は、透湿層(B)側の表面に、表面層(C)を更に含むことができる。すなわち、層構造がA/B/Cの積層体とすることができる。
【0036】
該表面層(C)としては、本発明の目的が達成される限り特に限定されず、例えば、不織布層、有色層などが挙げられる。但し、食品包装用など、積層体内部の視認性が必要な場合は、表面層(C)が無いほうが好ましい。
【0037】
該表面層(C)として不織布層を設けた場合、積層体の強度が向上するばかりでなく、遮光性、保温性にも優れた積層体とすることができる。該不織布としては、特に限定されないが、保温性を向上できるように嵩高を大きくすることができることから、各種の不織布のなかでもスパンボンド法により製造されるものが好ましい。例えばポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステルの長繊維を含めた連続繊維を集合させたフィルム状堆積物で、目付けが2〜70g/m、好ましくは10〜60g/mであるのが有利である。目付けが2g/m未満では強度不足となり、70g/mを越えると包装材としての取り扱いが困難になるおそれがある。
【0038】
該表面層(C)として有色層を設けた場合、遮光性を積層体に付与することができる。したがって、該積層体を包装材として使用した場合などには、包装材の内部の温度上昇防止効果に寄与することができる。
該有色層は、有色の接着剤層として設けても良いし、有色の印刷層として設けても良く、又、両方を併用して設けても良い。尚、有色の印刷層として設ける場合は、別途接着剤を用いて貼り合わせることが望まれる。
【0039】
本発明の積層体(A/B)の透湿層(B)側の表面に上記表面層(C)を積層する方法は特に限定されず、表面層(C)の種類に応じて、公知の方法から適宜選択することができる。
【0040】
例えば、積層体(A/B)に不織布層を積層する場合、積層体(A/B)および不織布のいずれか一方または両方に、接着剤を浸漬法、塗布法、噴霧法などの周知の手段で塗工した後、両者を貼り合わせ乾燥すればよい。接着剤の塗布量は固形分換算で0.01〜10g/m程度が適当である。ここで従来法で用いられるポリウレタン系などの有機溶媒系の接着剤では、特に昼間と夜間の湿度差の変動を長期間にわたって受け続けると、積層体がカールを起こしたり層間剥離が発生するおそれがあるので、当該接着剤としては、水系接着剤が好ましい。
【0041】
該水系接着剤としては酢酸ビニル樹脂エマルジョン、アクリル樹脂エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョンなどのビニル樹脂系エマルジョン、特に保護コロイドとしてPVAを使用したものが好適である。又水溶性高分子水溶液、特にPVA系樹脂水溶液が有用である。かかるPVA系樹脂は前述した本発明の積層体の吸放湿層(A)で用いられる原料と同じである。即ち、ケン化度が80モル%以上のものが好ましく、更に好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは98〜100モル%である。かかるケン化度が80モル%未満では、耐水性が低下するおそれがある。また、架橋剤(多価エポキシ化合物など)を接着剤と併用することも可能である。
【0042】
又、該水系接着剤の粘度は、4重量%水溶液の場合、2.5〜100mPa・s(20℃)が好ましく、更に好ましくは2.5〜70mPa・s(20℃)、特に好ましくは2.5〜60mPa・s(20℃)である。該粘度が2.5mPa・s(20℃)未満では、フィルム強度などの機械的物性が劣ることがあり、一方100mPa・s(20℃)を越えると粘度が高くなり過ぎ、塗布操作が難しくなるおそれがある。その他の水系接着剤としてはアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水溶液、例えば塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムなどの水溶液が挙げられ、これ単独でまたはPVA系樹脂と併用して使用される。
【0043】
本発明の積層体において、有色層として有色の接着剤層を設ける場合(例えば、上記不織布層と透湿層(B)の間)、接着剤中に染料あるいは顔料を混合すればよく、使用される染料や顔料(無機系顔料、有機系顔料)は特に限定されるものではない。これら染料あるいは顔料の含有量についても特に限定されることはなく、用いる染料や顔料の種類により適宜選択される。
【0044】
上記接着剤としては、特に限定されず、例えば、上述した水系接着剤、ポリウレタン系接着剤、特にPVA系樹脂フィルムの積層で良く用いられるポリエーテル系樹脂あるいはポリエステル系樹脂を主剤としウレタン系硬化剤を混合して使用される接着剤や、市販のエポキシ系接着剤などを用いることができるが、積層体の透湿性に影響を与えにくい点から、水系接着剤を用いることが好ましい。
【0045】
本発明の積層体(A/B)において、透湿層(B)側の表面に有色の印刷層を設ける場合、透湿層(B)の表面に、グラビア印刷やフレキソ印刷などの連続的な塗布方法によって、市販されている有色インキを有色層として塗布することが一般的であるが、この方法に限定されるものではない。
有色インキとしては、市販されるもの以外にPVA水溶液に染料あるいは顔料を分散させたものも好適に用いられる。
尚、有色層として印刷層を設ける場合は、印刷層を、別途、上記の接着剤を用いて積層体に貼り合わせることが望ましい。
【0046】
本発明の包装材は、上記本発明の積層体を含んでなる。包装材の形態は特に限定されず、例えば、本発明の積層体を成形して得られる袋、容器、包装フィルム、トレイなどが挙げられる。
また、本発明の包装材は、包装材の一部に本発明の積層体を含む構成を有していてもよく、そのような包装材としては、例えば、従来の樹脂材料を成形して得た容器の蓋部分のみに本発明の積層体を用いた包装材などが挙げられる。
【0047】
本発明の積層体は、優れた吸放湿性を有する層(A層)と、優れた透湿性を有する層(B層)を含んでなるので、A層側が高湿度環境下にある場合は、A層が湿気を吸収することができ、一方、B層側が高湿度環境下にある場合は、B層の透湿性により湿気をA層側に透過させることができる。従って、本発明の積層体は、A層側での湿度変化を抑制することができる。よって、このような本発明の積層体を含んでなる包装材は、物品を包装した際に、内部の湿度変化を抑制し得、包装材の内部表面において、結露および冷凍下での霜の形成を良好に防止し得る。
従って、本発明の積層体は食品(例、食肉、魚介類、野菜、果実など)などを初めとして、植物、その他農薬、洗剤、土木用添加剤、殺菌剤、染料、顔料などの各種物品の包装用途に使用可能である。また、本発明の積層体は、ビニルハウスなどの農業用被覆材などとしても使用可能である。
【実施例】
【0048】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、これらは例示のみを目的としており、本発明を何ら限定するものではない。
尚、以下の例中、「%」、「部」とあるのは、特に断りのない限り重量基準を意味する。
【0049】
本発明で用いる評価方法は、以下の試験例に示す通りである。
【0050】
(試験例)
1.耐結露性
後述の実施例で得られた実施例1、2および3の各積層体および比較例1のフィルムを用いて、縦50cm、横50cmの袋を作製した。このとき、実施例1〜3の積層体については、吸放湿層(A層)が袋の内側になるようにして袋を成形した。得られた袋の内部に収穫1時間後のレタス200gを入れたのち、ヒートシールして封入した。その後、レタスを入れた袋を、恒温恒湿器(5℃、相対湿度65%)内に放置した。24時間後、および120時間後、袋の内部表面(A層側)への結露の状態を以下の基準で目視評価した。
◎:内部表面に結露がまったくないもの。
○:内部表面に若干結露があるもの。
×:内部表面一面に結露があるもの。
【0051】
2.防霜性
700ccのポリプロピレン製箱型容器に20℃の水を140cc加えた後、箱型容器の開口部(150cm)を実施例1、2および3の各積層体および比較例1のフィルムでそれぞれ隙間が無いように包装した。このとき、実施例1〜3の積層体については、吸放湿層(A層)が容器の内側を向くように容器を包装した。−20℃の冷凍機内蔵型ショーケース(福島工業(株)MRN−56PNTOR)(8℃、5分間を1回とする冷凍庫の霜取り操作を4回/1日割合で行う)で24時間静置後、積層体内部表面(A層側)に付着した霜の状態を以下の基準で目視評価した。
◎:内部表面に霜が全くなく透明なもの。
○:内部表面に若干霜があるが、内容物の確認には支障がないもの。
×:内部表面一面に霜があり、内容物の確認が困難なもの。
【0052】
(実施例1〜3)
(吸放湿層A)
PVA(重合度2300、ケン化度98.0モル%)の8重量%水溶液をドラム上に流延、95℃で乾燥し、膜厚50μmの吸放湿性フィルムA1を作製した。
また(アクリル酸−アクリル酸ナトリウム)共重合体(一方社油脂工業株式会社製;商品名Vicol VL、50%塩タイプ)およびポリビニルピロリドン(BASF社製;商品名ルビスコールK30)の各8重量%水溶液を調製した。各々、上記PVAの8重量%水溶液と70/30の割合で充分に混合した。この混合液をドラム上に流延、95℃で乾燥し、膜厚50μmの吸放湿性フィルムA2およびA3をそれぞれ作製した。
(透湿層B)
PVAの二軸延伸フィルム(日本合成化学工業株式会社製;商品名ボブロン、膜厚25μm)を、透湿層Bとして使用した。
(積層体の製造)
吸放湿層A1、A2およびA3の表面に、それぞれ、接着剤としてのPVA(日本合成化学工業株式会社製;商品名AH−22)の5重量%水溶液を均一に塗布した。各々、透湿層Bと貼り合わせて乾燥し、積層体1、2および3を得た。
【0053】
(比較例1)
実施例の積層体に代えて、ポリエチレンフィルム(膜厚75μm)を比較例1として用い、同様の評価を行った。
【0054】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の積層体は食品を初めとして、農薬、洗剤、土木用添加剤、殺菌剤、染料、顔料などの各種物品の包装用途に使用可能である。また、本発明の積層体は、ビニルハウスなどの農業用被覆材などとしても使用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸放湿層(A)と透湿層(B)を含んでなる積層体であって、
該吸放湿層(A)が、
(a)ポリビニルアルコール系樹脂、または、
(b)ポリビニルアルコール系樹脂(X)と、アクリル酸重合体およびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(Y)との樹脂組成物
を含んでなり、かつ、
該透湿層(B)が、ポリビニルアルコール系樹脂またはエチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物系樹脂を含んでなる、積層体。
【請求項2】
前記吸放湿層(A)が、(b)ポリビニルアルコール系樹脂(X)と、アクリル酸重合体およびポリビニルピロリドンからなる群から選ばれる少なくとも1種の樹脂(Y)との樹脂組成物を含んでなる、請求項1記載の積層体。
【請求項3】
前記吸放湿層(A)が未延伸フィルムであり、前記透湿層(B)が延伸フィルムである、請求項1または2記載の積層体。
【請求項4】
前記透湿層(B)が少なくとも一方向に2.0倍〜5.0倍の延伸倍率で延伸したフィルムである、請求項3に記載の積層体。
【請求項5】
前記透湿層(B)が、前記方向と直交する方向にさらに2.0倍〜5.0倍の延伸倍率で延伸した二軸延伸フィルムである、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記透湿層(B)側の表面に、表面層(C)を更に含んでなる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体を含んでなる、包装材。

【公開番号】特開2006−321208(P2006−321208A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−148773(P2005−148773)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000004101)日本合成化学工業株式会社 (572)
【Fターム(参考)】