説明

積層体

【課題】紫外線照射によって多様な蛍光発光を呈する意匠性に優れた積層体を得る。
【解決手段】紫外線照射によって多様な蛍光発光を呈する積層体であって、
基材上に、蛍光材料を含む蛍光体層(A)を設け、該蛍光体層(A)の上に、照射された紫外線の一部を反射及び/または吸収し、残余の紫外線を透過する被膜(B)を形成し、該被膜(B)が該蛍光体層(A)の少なくとも一部を覆い、該蛍光体層(A)からの発光を透過することを特徴とする積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光発光を示す積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線を照射することにより発光する蛍光顔料等の蛍光体等を含む成形品が知られている。このような蛍光体は、紫外線照射時と非照射時で異なる色相を示すため、様々な分野で高意匠性材料として用いられている。例えば、陶磁器タイル上に、蛍光顔料を含む着色層(蛍光発光層)を積層した蛍光発光タイル(例えば、特許文献1)等が知られている。しかしながら、上記のように基材上に蛍光体を積層するのみでは、紫外線照射した場合、均一な輝度での蛍光発光しか有することができず、単調な意匠となるおそれがある。このような積層体において、蛍光発光層の輝度を変化させるには、蛍光発光層の蛍光顔料濃度や、蛍光発光層の厚さを設定したり、紫外線を部分的に照射したり、様々な工夫が必要であった。
【0003】
これに対して、基材表面に異なる色相の蛍光顔料を複数使用し、種々の形態、模様で蛍光発光層を施した積層体(例えば、特許文献2、特許文献3)等が知られている。しかしながら、このような積層体の場合、複数の蛍光発光層を種々の形態、模様で積層する必要があり、工程が煩雑となるおそれがある。
【0004】
【特許文献1】特開平4−160082号公報
【特許文献2】特開平3−122363号公報
【特許文献3】特開平3−290380号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたものであり、紫外線照射によって多様な蛍光発光を呈する意匠性に優れた積層体を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、基材上に、蛍光体層を設け、該蛍光体層の上に特定の光特性を有する被膜が形成されたことを特徴とする積層体に想到し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明積層体は、下記の特徴を有するものである。
【0007】
1.紫外線照射によって多様な蛍光発光を呈する積層体であって、
基材上に、蛍光材料を含む蛍光体層(A)を設け、
該蛍光体層(A)の上に、照射された紫外線の一部を反射及び/または吸収し、残余の紫外線を透過する被膜(B)を形成し、
該被膜(B)が該蛍光体層(A)の少なくとも一部を覆い、該蛍光体層(A)からの発光を透過することを特徴とする積層体。
2.上記被膜(B)が紫外線反射性及び/または紫外線吸収性の異なる被膜を、少なくとも2つ以上有することを特徴とする、1.記載の積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明の積層体は、基材上に、蛍光材料を含む蛍光体層(A)を設け、該蛍光体層(A)の上に、特定の光特性を有する被膜(B)を形成することにより、紫外線照射によって多様な蛍光発光を呈することができるものである。本発明の積層体は、通常(可視光照射時)は単色であっても、紫外線照射時には多様な蛍光発光を呈することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0010】
本発明は、紫外線照射によって多様な蛍光発光を呈する積層体であり、基材上に、蛍光体層(A)が設けられ、該蛍光体層の上に特定の光特性を有する被膜(B)を形成することを特徴とする積層体である。本発明における多様な蛍光発光とは、1種類の蛍光発光層を均一に積層した場合であっても、少なくとも2つ以上の発光輝度の異なる蛍光発光を有することをいう。
【0011】
本発明の蛍光材料を含む蛍光体層(A)(以下、単に「蛍光体層(A)」ともいう。)について説明する。蛍光体層(A)とは透光性を有する材料(以下、「透光性材料」という。)に蛍光発光を示す顔料、染料等(以下、「蛍光材料」という。)を含むものである。
透光性材料としては、透光性を有するものであれば、無機質材料、有機質材料のどちらでもよい。例えば、無機質材料としては、ガラス、水ガラス、低融点ガラス、シリコン樹脂、アルコキシシラン、シランカップリング剤等があげられる。また、有機質材料としては、アクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、セルロールアセトブチレート樹脂、セルロースプロピオネート樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。なお、「透光性」とは、可視光透過性に優れ、透明性を有することである。
【0012】
蛍光材料としては、紫外線照射下において蛍光発光を示すものであれば限定されず、公知の蛍光染料や蛍光顔料等を使用することができる。本発明では、可視光下において蛍光発光を示さないものが好ましく、このような蛍光体の中でも、蛍光発光持続性、耐候性にも優れる無機蛍光顔料が特に好ましい。
【0013】
蛍光体層(A)は、上記透光性材料と上記蛍光材料を含む材料(以下「蛍光体層材料」という。)を、フィルム状または板状等に成形したものである。 その厚みは、通常0.01mm〜10mm、より好ましくは0.05mm〜5mmであり、その隠蔽率(%)は、特に限定されないが、通常70%以下、好ましくは50%以下である。70%以下の場合、基材を視認できるため、基材の意匠を生かすこともできる。なお、蛍光体層の隠蔽率は、色彩色差計を用いて測定し、算出した値である。このような、蛍光体層材料は、透光性材料(固形分)100重量部に対して、蛍光材料を0.5〜50重量部、さらには1〜30重量部添加することが好ましい。0.5重量部より少ない場合、蛍光発光層の輝度が低くなり視認性に劣るおそれがある。また、50重量部より多く添加しても輝度の向上が確認できず、多様な蛍光発光が得られにくくなるおそれがある。
【0014】
次に、照射された紫外線の一部を反射及び/または吸収し、残余の紫外線を透過する被膜(B)(以下、単に「被膜(B)」ともいう。)について説明する。
本発明被膜(B)は、光源から照射された紫外線の一部を反射及び/または吸収する「紫外線反射性及び/紫外線吸収性」を有し、残余の紫外線を透過する「紫外線透過性」を有するものであり、蛍光体層(A)の少なくとも一部を覆うように積層したものであればよい。
【0015】
上記「紫外線反射性及び/または紫外線吸収性」とは、蛍光体層(A)の少なくとも一部を覆うように被膜(B)を形成した積層体において、被膜(B)方向から紫外線を照射した場合、被膜(B)が紫外線の一部を反射(拡散反射)、または吸収する特性を有することをいう。
例えば、紫外線反射性が低い部分(p)と、当該(p)よりも紫外線反射性が高い部分(q)のどちらか一方が蛍光体層(A)の少なくとも一部を覆うものであればよく、不連続に点在するものや、凹凸を有するものであってもよい。ただし、本発明では、発光体層(A)上全体を(p)と(q)のうちどちらか一方の均一な被膜(B)で覆うことは望ましくない。本発明では特に、(p)と(q)が混在することが好ましく、この場合(q)は、少なくとも1種必要であるが、2種以上設けてもよい。
【0016】
(p)と(q)との紫外線反射率の差は、少なくとも1%以上(好ましくは5%以上)とすることが望ましい。なお、本発明の紫外線反射率は、波長領域365nmでの反射率(%)を分光光度計によって測定した値である。
【0017】
(p)と(q)の紫外線反射率が異なるように設定する方法としては、例えば、
(1)紫外線反射率の異なる粉粒体を用いる方法
(2)紫外線反射率の異なる樹脂を用いる方法
(3)紫外線吸収剤を用いる方法
(4)被膜(B)の厚みを変える方法
等が挙げられる。本発明では、(1)〜(4)の方法を組み合わせることも可能である。
【0018】
上記(1)において使用可能な粉粒体としては、例えば、アルミナ、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、沈降性硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、リン酸亜鉛、雲母、寒水石、タルク、珪藻土、白土、カオリン、クレー、陶土、バライト粉、珪砂、珪石粉、ホワイトカーボン、金属粉、有機樹脂粉体等が挙げられる。具体的には、(p)において紫外線反射率が低い粉粒体を用いればよい。紫外線反射率が低い粉粒体としては、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウム、珪藻土等が挙げられ、特に酸化チタン、酸化亜鉛等が好適である。また、(q)において紫外線反射率の高い粉体を用いればよい。紫外線反射率が高い粉体としては、例えばアルミナ、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられ、この中でもアルミナ、硫酸バリウム、等が好ましく、とりわけアルミナが好適である。本発明では、複数の粉粒体を組み合わせて、(p)、(q)を形成しても良い。
【0019】
なお、上記(1)における粉粒体の紫外線反射率は、予め紫外線を反射しないように黒色に塗装されたアルミ板上に、アクリル樹脂に各粉粒体を混合した組成物(隠蔽率95%)を、塗付(乾燥膜厚:100μm)、乾燥させたものを試料とし、波長領域365nmでの反射率(%)を分光光度計によって測定した値である。また、隠蔽率は、JIS K 5600−4−1:1999の方法B(隠蔽率試験紙)に従い、Y/Yを百分率で算出した値である。
【0020】
上記(2)において使用可能な樹脂としては、無機質材料、有機質材料のどちらでもよく、例えば、無機質材料としては、ガラス、水ガラス、低融点ガラス、シリコン樹脂、アルコキシシラン、シランカップリング剤、等が挙げられる。また、有機材料としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル−スチレン樹脂、酢酸ビニル−バーサチック酸ビニルエステル樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルカプロラクタム樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、AS樹脂、セルロース樹脂、アクリル−シリコン樹脂、シリコン樹脂、アルキッド樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂等の水分散型、水可溶型、NAD型、溶剤可溶型、無溶剤型、等の樹脂が挙げられる。
【0021】
具体的には、(p)において紫外線反射率が低い樹脂を用いればよい。上記(2)では、紫外線反射率が最も低い樹脂と最も高い樹脂との紫外線反射率の差が1%以上(好ましくは2%以上、より好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上)とすることが望ましい。このような紫外線反射率の差は、例えば、樹脂中の紫外線吸収基の比率を変えること等により、設けることができる。紫外線吸収基としては、例えば、フェニル基、ベンゾフェノン基、ベンゾトリアゾール基、トリアジン基等が挙げられる。
【0022】
上記(2)の具体例としては、(p)において、樹脂中のスチレン比率が大きな樹脂を使用し、(q)において、樹脂中のスチレン比率が小さな樹脂を使用する組み合わせを挙げることができる。この場合、樹脂中のスチレン比率は10重量%以上(好ましくは35重量%以上)異なることが望ましい。
なお、(2)における紫外線反射率は、予め紫外線を反射しないように黒色に塗装されたアルミ板上に、各樹脂にアルミナを混合した組成物(隠蔽率95%)を、塗付(乾燥膜厚:100μm)、乾燥させたものを試料とし、波長領域365nmでの反射率(%)を分光光度計によって測定した値である。
【0023】
上記(3)は、紫外線吸収剤の存否、あるいは濃度の差異により、紫外線反射率を変えるものである。上記(3)で使用可能な紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。このうち、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ステアリルオキシベンゾフェノンなどが挙げられる。ラジカル重合性ベンゾフェノン系の紫外線吸収剤として、2−ヒドロキシ−4−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−アクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−5−メタクリロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−エトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロキシ−ジエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロキシ−トリエトキシ)ベンゾフェノンなどが挙げられる。
【0024】
具体的には、(p)において紫外線吸収剤を配合し、(q)において紫外線吸収剤を配合しなければよい。また、(p)における紫外線吸収剤の濃度を高くし、(q)における紫外線吸収剤の濃度を低く設定してもよい。上記(3)では、紫外線吸収剤の濃度が高い部分と低い部分との紫外線反射率の差が2%以上(好ましくは5%以上、より好ましくは10%以上)とすることが望ましい。また、(3)では、紫外線吸収剤の濃度が0.01重量%以上(好ましくは0.05重量%以上)異なるように設定することが望ましい。なお、(3)での紫外線反射率は、予め紫外線を反射しないように黒色に塗装されたアルミ板上に、各樹脂にアルミナ、紫外線吸収剤を混合した組成物(隠蔽率95%)を、塗付(乾燥膜厚:100μm)し、乾燥させたものを試料とし、波長領域365nmでの反射率(%)を分光光度計によって測定した値である。
【0025】
上記(4)は、紫外線反射率が低い材料では、厚みが大きいほど紫外線反射率も低くなる傾向があることや、紫外線反射率が高い材料では、厚みが大きいほど紫外線反射率も高くなる傾向があることを利用するものである。紫外線反射率が高い材料としては、例えば上記(1)〜(3)において(q)を形成する材料が使用できる。被膜(B)の厚みは、通常5μm〜500μm(好ましくは、10μm〜250μm)の範囲内で設定すればよい。
【0026】
本発明では、上記(1)〜(4)の他に、紫外線反射率が高い粉粒体、紫外線反射率が高い樹脂等の濃度を変える方法等によって、(p)、(q)を設けることもできる。
【0027】
また本発明被膜(B)は、上記(p)、(q)に代えて、例えば、紫外線吸収性が高い部分(p′)と、あるいは当該(p′)よりも紫外線吸収性が低い部分(q′)を設けることもできる。
具体的に、紫外線吸収性が高い部分(p′)は前記紫外線反射率の低い部分(p)、紫外線吸収性が低い部分(q′)は前記紫外線反射率の高い部分(q)に相当し、これらと同様のものを使用することができる。この場合も、(p′)と(q′)が混在することが好ましい。
【0028】
また、被膜(B)は、残余の紫外線を透過する紫外線透過性(以下、「紫外線透過性」ともいう。)と、蛍光体層からの発光を透過する性質(以下、「発光透過性」ともいう。)を有するものである。上記「紫外線透過性」とは、本発明の積層体に対して、被膜(B)方向から紫外線を照射した場合、被膜(B)層を介して、蛍光体層(A)を発光させることができる程度の紫外線が透過することである。また、「発光透過性」とは、蛍光体層(A)の発光を、被膜(B)層を介して視認できる性能のことである。このような被膜(B)は、透明または半透明であることが好ましい。
【0029】
なお、透明または半透明を測定する方法としては、被膜(B)を隠蔽率試験紙上に置き、白地上と黒地上の視感反射率から隠蔽率を算出する方法が挙げられる。
被膜(B)の隠蔽率は通常70%以下、好ましくは60%以下である。隠蔽率が70%を超える場合は、蛍光発光の視認性が低下するおそれがある。
なお、視感反射率は色彩色差計(「CR−300」:ミノルタ株式会社製)を用いて測定し算出することができる。
【0030】
上記の蛍光体層(A)または被膜(B)には、本発明の効果を阻害しない程度であれば、例えば、顔料、骨材、可塑剤、難燃剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、造膜助剤、吸着剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、触媒、ブロッキング防止剤等が含まれていてもよく、このような成分を常法で均一に混合することができる。
【0031】
本発明において、適用可能な基材としては、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、磁器タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板、ALC板、サイディング板、押出成形板、鋼板、アルミニウム板、プラスチック板、ガラス板等が挙げられる。これら基材の形状としては、特に限定されないが、凹凸基材であれば蛍光発光の多様性が高まる。また、これら基材の表面は、何らかの表面処理(例えば、パテ、フィラー等)が施されたものでもよく、既に塗膜が形成され着色されたものや、既に壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
【0032】
本発明では、基材上に予め紫外線反射率の高い層(C)が形成されていることが好ましい。具体的に、紫外線反射率の高い塗膜とは、前記紫外線反射率の高い粉粒体を含む層(C)を積層したものである。
【0033】
本発明の積層体構造は、基材上に、蛍光材料を含む蛍光体層(A)、及び照射された紫外線の一部を反射及び/または吸収し、残余の紫外線を透過する被膜(B)が積層されていれば、その製造方法については特に限定されるものではない。例えば、被膜(B)は、被膜(B)形成材料、具体的に、紫外線反射率の低い部分(p)を形成する材料「低反射材料」と紫外線反射率の高い部分(q)を形成する材料「高反射材料」を使用し、以下の方法で作製することができる。
【0034】
(I)基材全面に、蛍光発光層(A)を形成後、さらに蛍光発光層(A)の上に、低反射材料及び/または高反射材料を部分的に積層し被膜(B)を積層する方法、
(II)基材全面に、蛍光発光層(A)を形成後、さらに蛍光発光層(A)の上に、低反射材料を積層し、次いで、高反射材料を部分的に積層し被膜(B)を積層する方法、
(III)基材全面に、蛍光発光層(A)を形成後、さらに蛍光発光層(A)の上に、高反射材料を積層し、次いで、低反射材料を部分的に積層し被膜(B)を積層する方法、
(IV)基材全面に、蛍光発光層(A)を形成後、高反射材料と低反射材料を同時に積層し被膜(B)を積層する方法、
等により製造できる。
【0035】
上記(I)では、低反射材料及び/または高反射材料を部分的に積層することよってまた、上記(II)(III)では、低反射材料と高反射材料を段階的に積層することよって任意にパターンを形成することが可能となる。また、(IV)では、例えば、低反射材料と高反射材料を同時に吹付する方法、低反射材料と高反射材料をそれぞれカプセル化またはゲル化させたものを複数分散させた組成物を積層する方法により形成することができる。
さらに、基材が凹凸を有する場合、(I)〜(IV)の方法を用いて、基材の凹部、凸部を塗り分けることもできる。
【0036】
上記(I)〜(IV)において、蛍光体層材料、被膜(B)形成材料を積層する際には、予め成形した各層を接着剤で張り合わせたり、成形前の材料をスプレー、ローラー、こて、レシプロ、コーター、流し込み、スクリーン印刷等の手段を用いて積層することができる。また(A)層、または被膜(B)形成材料を乾燥させる際には、通常、常温で行えばよいが加熱することも可能である。
【0037】
また、上記(I)〜(IV)において、紫外線反射率の低い部分(p)を形成する材料「低反射材料」と紫外線反射率の高い部分(q)を形成する材料「高反射材料」に代えて、紫外線吸収率の高い部分(p′)を形成する材料「高吸収材料」と紫外線吸収率の低い部分(q′)を形成する材料「低吸収材料」を使用し、同様の方法で被膜(B)を形成することができる。
【実施例】
【0038】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0039】
<蛍光体層材料>
・蛍光体層材料1
アクリル樹脂エマルション100重量部(固形分)、緑色無機蛍光顔料10重量部、添加剤(分散剤、消泡剤等)4重量部を常法にて混合し、蛍光体層材料1を作製した。
蛍光体層材料1に関して、隠蔽率試験紙の上に塗付厚が150μm(乾燥膜厚が80μm)となるように塗付、乾燥させた試験体を用い、試験体における黒地上塗膜と白地上塗膜の視感反射率を色彩色差計(「CR−300」:ミノルタ株式会社製)を用いて測定し隠蔽率(%)を算出したところ、蛍光体層材料1の隠蔽率は6.1%であった。
【0040】
<被膜形成材料の製造>
・被膜形成材料1
樹脂エマルション1を100重量部(固形分)、アルミナ40重量部、添加剤(分散剤、消泡剤等)4重量部を常法にて混合し、被膜形成材料1を作製した。
・被膜形成材料2〜7
表1に示す配合に基づき、被膜形成材料1と同様の方法で、被膜形成材料2〜7を作製した。
【0041】
なお、被膜形成材料の原料としては以下のものを使用した。
・樹脂エマルション1:アクリル/スチレン=100/0、紫外線反射率83.6%
・樹脂エマルション2:アクリル/スチレン=70/30、紫外線反射率81.5%
・アルミナ:平均粒子径1.0μm、紫外線反射率83.6%
・酸化チタン:平均粒子径0.2μm、紫外線反射率6.5%
・重質炭酸カルシウム:平均粒子径2.0μm、紫外線反射率45.1%
・紫外線吸収剤:ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤
なお、樹脂エマルション1〜2の紫外線反射率は、各エマルションにアルミナを混合した組成物(隠蔽率95%)を、また、アルミナ、酸化チタン、重質炭酸カルシウムの紫外線反射率は、樹脂エマルション1に各粉粒体を混合した組成物(隠蔽率95%)を、予め紫外線を反射しないように黒色に塗装されたアルミ板上に塗付(乾燥膜厚:100μm)、乾燥させたものを試料とし、波長領域365nmでの反射率(%)を分光光度計によって測定した値である。
【0042】
・被膜形成材料8
溶剤可溶形アクリル樹脂11重量部(固形分)、酸化チタン1重量部、粘性調整剤1重量部、及びミネラルスピリット10重量部を常法により均一に混合して被膜形成材料8aを製造した。
次いで、ポリビニルアルコール4重量部、アクリル樹脂エマルション3重量部、及び水50重量部を均一に混合して得た水系分散媒に、上記被膜形成材料8aを徐々に滴下しながら混合し、さらに架橋剤1重量部を混合した。
以上の方法により、酸化チタンを含む粒子径3〜5mmの白色粒子が、水系分散媒に分散した状態の塗料組成物1を得た。
酸化チタンに替えてアルミナを17重量部使用した以外は、上記方法に従い、被膜形成材料8bを製造し、ついでアルミナを含む粒子径3〜5mmの白色粒子が、水系分散媒に分散した状態の塗料組成物2を得た。
以上の方法で得られた塗料組成物1と塗料組成物2を1:1の重量比率で混合することにより、酸化チタンを含む白色粒子と、アルミナを含む白色粒子が混在した被膜形成材料8を得た。
【0043】
・被膜形成材料9
溶剤可溶形アクリル樹脂11重量部(固形分)、粘性調整剤1重量部、及びミネラルスピリット10重量部を常法により均一に混合して被膜形成材料9aを製造した。
次いで、ポリビニルアルコール4重量部、アクリル樹脂エマルション3重量部、及び水50重量部を均一に混合して得た水系分散媒に、上記被膜形成材料9aを徐々に滴下しながら混合し、さらに架橋剤1重量部を混合した。
以上の方法により、粒子径3〜5mmのクリヤー粒子が、水系分散媒に分散した状態の塗料組成物3を得た。
紫外線吸収剤0.1重量部添加した以外は、上記方法に従い、被膜形成材料9bを製造し、紫外線吸収剤を含む粒子径3〜5mmのクリヤー粒子が、水系分散媒に分散した状態の塗料組成物4を得た。
以上の方法で得られた塗料組成物3と塗料組成物4を1:1の重量比率で混合することにより、2種のクリヤー粒子が混在した被膜形成材料9を得た。
【0044】
<被膜形成材料の評価>
・評価1
隠蔽率試験紙の上に、作製した被膜形成材料1〜7、8a、8b、9a、9bを塗付厚が150μmとなるように塗付、硬化させた試験体を用い、試験体における黒地上塗膜と白地上塗膜の視感反射率を色彩色差計(「CR−300」:ミノルタ株式会社製)を用いて測定し隠蔽率(%)を算出した。結果を表2、表3に示した。
・評価2
アルミニウム板(40mm×40mm×0.6mm)上にウレタン樹脂100重量部(固形分)に対してカーボンブラック(平均粒子径0.02μm)20重量部混合した組成物を乾燥膜厚が80μmとなるように塗付、硬化させたものを基材とした。基材上に、被膜形成材料1〜4、被膜形成材料8〜9の塗料組成物1〜4を乾燥膜厚が100μmとなるように塗付、乾燥させた試験体を用い、波長領域365nmでの反射率(%)を分光光度計(「UV−3100」:株式会社島津製作所製)で測定した。結果を表2に示した。なお、組成物1を塗付する前の基材の反射率は、1.5%であった。
・ 評価3
被膜形成材料5〜7に関しては、透明のため、評価2の紫外線反射率の代わりに以下の評価を行った。離型紙上に被膜形成材料5〜7を塗付厚が150μmとなるように塗付、乾燥させた後、形成された塗膜を離型紙から剥がし、フィルム状の試験体を作製した。得られたフィルム状試験体の、波長領域365nmでの透過率(%)を分光光度計(「UV−2200」:株式会社島津製作所製)で測定した。
【0045】
<積層体>
・基材
アルミニウム板(40mm×40mm×0.6mm)に、アクリルエマルション樹脂100重量部(固形分)、アルミナ500重量部、添加剤5重量部を
常法により混合した組成物を、乾燥膜厚が100μmとなるように塗付、乾燥させたものを基材として用いた。
【0046】
(実施例1)
上記基材上に、蛍光発光層材料1を乾燥膜厚が80μmとなるように塗付、乾燥させて、蛍光発光基材を得た。次いで、この蛍光発光基材上に、被膜形成材料1を乾燥膜厚が100μmとなるように塗付、乾燥させ、次いで、被膜形成材料2を、刷毛を用いて斑点状(乾燥膜厚:平均80μm)に塗付、乾燥させ、積層体1を得た。
得られた積層体1に関して、40W室内蛍光灯照明下において目視評価したところ、積層体1はほぼ均一な白色に視認された。また、積層体1と3cmの距離に6W紫外線ランプを設置し、紫外線を照射したところ、被膜形成材料1上と被膜形成材料2上で輝度の強弱が生じ、多彩的な発光模様が認められ、被膜形成材料2の塗装部分で周囲より輝度が低く、部分的に輝度の異なる発光模様が認められた。
【0047】
(実施例2)
実施例1の被膜形成材料2の代わりに、被膜形成材料3を使用した以外は、試験例1と同様の方法で、積層体2を得た。
得られた積層体2について、実施例1と同様に室内蛍光灯照明下で目視評価を行ったところ、積層体2はほぼ均一な白色に視認された。また、紫外線ランプ照明下では、被膜形成材料1上と被膜形成材料3上で輝度の強弱が生じ、多彩的な発光模様が認められ、被膜形成材料3の塗装部分で周囲より発光輝度が高くなり、部分的に輝度の異なる発光模様が認められた。
【0048】
(実施例3)
実施例1の被膜形成材料2の代わりに、被膜形成材料4を使用した以外は、試験例1と同様の方法で、積層体3を得た。
得られた積層体2について、実施例1と同様に室内蛍光灯照明下で目視評価を行ったところ、積層体3はほぼ均一な白色に視認された。また、紫外線ランプ照明下では、被膜形成材料1上と被膜形成材料4上で輝度の強弱が生じ、多彩的な発光模様が認められ、被膜形成材料1の塗装部分で周囲より発光輝度が高くなり、部分的に輝度の異なる発光模様が認められた。
【0049】
(実施例4)
実施例1の被膜形成材料1の代わりに、被膜形成材料5、被膜形成材料2の代わりに、被膜形成材料6を使用した以外は、試験例1と同様の方法で、積層体4を得た。
得られた積層体4について、実施例1と同様に室内蛍光灯照明下で目視評価を行ったところ、積層体4はほぼ均一な白色に視認された。また、紫外線ランプ照明下では、被膜形成材料5上と被膜形成材料6上で輝度の強弱が生じ、多彩的な発光模様が認められ、被膜形成材料6の塗装部分で周囲より発光輝度が低くなり、部分的に輝度の異なる発光模様が認められた。
【0050】
(実施例5)
実施例4の被膜形成材料6の代わりに被膜形成材料7を用いた以外は、実施例4と同様の方法で、積層体5を得た。
得られた積層体5について、実施例1と同様に室内蛍光灯照明下で目視評価を行ったところ、積層体5はほぼ均一な白色に視認された。また、紫外線ランプ照明下では、被膜形成材料5上と被膜形成材料7上で輝度の強弱が生じ、多彩的な発光模様が認められたが、被膜形成材料5と被膜形成材料7の輝度の差が小さく、やや模様を識別しにくかった。
【0051】
(実施例6)
実施例1と同様の蛍光発光基材上に対し、被膜形成材料8を塗付け量200g/mでスプレー塗装し乾燥させ、上塗り層を積層し、積層体6を得た。
得られた積層体6について、実施例1と同様に室内蛍光灯照明下で目視評価を行ったところ、積層体6はほぼ均一な白色に視認され、紫外線ランプ照明下では、ランダムに塗装された被膜形成材料(8a)と被膜形成材料(8b)の塗装部分間で輝度が異なり、複雑な発光模様が認められた。
【0052】
(実施例7)
実施例6の被膜形成材料8に代えて、被膜形成材料9を塗付け量200g/mでスプレー塗装し乾燥させ、被膜を積層し、積層体7を得た。
得られた積層体7について、実施例1と同様に室内蛍光灯照明下で目視評価を行ったところ、積層体7はほぼ均一な白色に視認され、紫外線ランプ照明下では、ランダムに塗装された被膜形成材料(9a)と被膜形成材料(9b)の塗装部分間で輝度が異なり、複雑な発光模様が認められた。
【0053】
(実施例8)
実施例1と同様の蛍光発光基材上に対し、被膜形成材料2を塗付け量100g/mでデザインローラーを使用し塗装、乾燥させ、不連続被膜を積層し、積層体8を得た。
得られた積層体8について、実施例1と同様に室内蛍光灯照明下で目視評価を行ったところ、積層体8はほぼ均一な白色に視認され、紫外線ランプ照明下では、デザインローラーで塗付された意匠部分で周囲より発光輝度が低くなり、部分的に輝度の異なる発光模様が認められた。
【0054】
(実施例9)
実施例8の被膜形成材料2に代えて、被膜形成材料7を用いた以外は、実施例8と同様の方法で、積層体9を得た。
得られた積層体9について、実施例1と同様に室内蛍光灯照明下で目視評価を行ったところ、積層体9はほぼ均一な白色に視認され、紫外線ランプ照明下では、デザインローラーで塗付された意匠部分で周囲より発光輝度が低くなり、部分的に輝度の異なる発光模様が認められた。
【0055】
(実施例10)
実施例8の被膜形成材料2に代えて、被膜形成材料8を用いた以外は、実施例8と同様の方法で、積層体10を得た。
得られた積層体10について、実施例1と同様に室内蛍光灯照明下で目視評価を行ったところ、積層体10はほぼ均一な白色に視認され、紫外線ランプ照明下では、デザインローラーで塗付された意匠部分において被膜形成材料(9a)と被膜形成材料(9b)の塗装部分間、およびさらに意匠部分の周囲で輝度が異なり、部分的に輝度の異なる発光模様が認められた。
【0056】
(参考例)
白色塗膜が形成された基材(アルミニウム板(40mm×40mm×0.6mm))上に、蛍光発光層材料1を乾燥膜厚が80μmとなるように塗付、乾燥させて蛍光発光層を塗付し、乾燥させ蛍光発光基材を得た。次いで、この蛍光発光基材上に、被膜形成材料1を乾燥膜厚が100μmとなるように全体に均一に塗付、乾燥させ、被膜層を積層し、積層体11を得た。
得られた積層体11に関して、40W室内蛍光灯照明下において目視評価したところ、積層体11はほぼ均一な白色に視認された。また、積層体1と3cmの距離に6W紫外線ランプを設置し、紫外線を照射したところ、均一な発光であった。
【0057】
【表1】

【0058】
【表2】

【0059】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線照射によって多様な蛍光発光を呈する積層体であって、
基材上に、蛍光材料を含む蛍光体層(A)を設け、
該蛍光体層(A)の上に、照射された紫外線の一部を反射及び/または吸収し、残余の紫外線を透過する被膜(B)を形成し、
該被膜(B)が該蛍光体層(A)の少なくとも一部を覆い、該蛍光体層(A)からの発光を透過することを特徴とする積層体。
【請求項2】
上記被膜(B)が紫外線反射性及び/または紫外線吸収性の異なる被膜を、少なくとも2つ以上有することを特徴とする、請求項1記載の積層体。



【公開番号】特開2009−208367(P2009−208367A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−54154(P2008−54154)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】