説明

積層体

【課題】耐擦傷性及び耐候性に優れるとともに、生産性に優れた透明プラスチック基材積層体を提供する。
【解決手段】透明プラスチック基材上に、少なくとも第1層と第2層とを設けた積層体であって、第1層(紫外線吸収能を有する化合物及びアクリル樹脂を含む層)及び第2層(紫外線硬化樹脂を含む層)をこの順で積層するとともに、第1層と第2層との積層部分における波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が1より大きい範囲にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関する。詳しくは、透明プラスチック基材積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
透明プラスチック材料を、その耐衝撃性、軽量性、加工の容易な点等を生かしてガラスの代替品として使用しようとする試みが広く行われている。しかし、透明プラスチック材料は耐擦傷性が十分でないために、汚れを拭き取る際等に傷が入りやすいという課題があった。また、耐候性も不十分であるため、長期の屋外での使用において、透明プラスチック材料が分解、劣化して、外観、物性が損なわれる課題もある。
【0003】
これらの課題を改良するために、透明プラスチック材料からなる透明プラスチック基材の表面に保護層を設け、透明プラスチック基材の耐擦傷性及び耐候性を付与しようとする技術がいくつか開示されている。それらは、透明性及び耐衝撃性に優れ、耐候性改善の要求が多いポリカーボネート樹脂を透明プラスチック基材として用いた場合に特に顕著である。
【0004】
透明プラスチック基材としてのポリカーボネート樹脂にアクリル樹脂のプライマー層(下塗り層)、及びシロキサン系熱硬化樹脂層を順次設けた積層体において、プライマー層に紫外線吸収剤を含有させることで耐候性を改善する技術が、特許文献1〜6に開示されている。
【0005】
また、ポリカーボネート樹脂を特に劣化させやすい光の波長は290nm付近であるので、波長が290nm付近の光の吸収能に優れた紫外線吸収剤をプライマー層に混合する技術が、例えば特許文献7及び8に開示されている。また、実際に屋外に曝露される際に、太陽光スペクトルにおける波長300nm以下の光はオゾン層によりほとんど照射されないことに着目し、積層体における波長300nmの光の吸収能をある一定以上とした技術が特許文献9に開示されている。
【0006】
また、例えば、特許文献10には、実曝耐候性に優れたポリカーボネート樹脂積層体として、プライマー層に特定の紫外線吸収能と厚さとを有するアクリル樹脂、耐擦傷性層に熱硬化樹脂としてコロイダルシリカ含有オルガノシロキサン樹脂を含む組成物硬化層が順次積層された積層体が開示されている。さらに、特許文献11には、プライマー層及び/又は耐擦傷性層に紫外線吸収剤を含む被覆部材が開示されており、耐擦傷性層として、珪素含有重合体からなる塗料組成物を硬化させて形成される酸化ケイ素を含む膜が開示されている。
【0007】
同様に、透明プラスチック基材であるポリカーボネート樹脂にプライマー層及び紫外線硬化樹脂層を順次積層した積層体において、耐候性及び耐擦傷性を付与しようとする技術が、特許文献12〜15に開示されている。
【0008】
紫外線吸収剤を含む光硬化樹脂組成物を硬化させて耐候性を確保しようとする試みも行われており、そのような技術が特許文献16〜18に開示されている。しかし、光硬化樹脂を硬化させるために必要な波長の光を、添加剤である紫外線吸収剤も吸収してしまうため、塗膜の硬化には多大なエネルギーを要するという課題があった。そこで、例えば、特許文献19には、300nm〜400nmに吸収域を有する紫外線吸収剤を含む紫外線硬化樹脂を特定の照射方法で硬化させる方法が開示されている。また、別の方法として、添加剤である紫外線吸収剤とは異なる波長の光を吸収して光硬化反応を開始させる開始剤を用いる方法が特許文献20に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許3102696号公報
【特許文献2】特開平2−16048号公報
【特許文献3】特開平2−16129号公報
【特許文献4】特開平4−106161号公報
【特許文献5】特開2000−318106号公報
【特許文献6】特開2001−47574号公報
【特許文献7】特開平9−176476号公報
【特許文献8】特開平9−313334号公報
【特許文献9】特開2004−25726号公報
【特許文献10】特開2004−25726号公報
【特許文献11】特開2006−240294号公報
【特許文献12】特開昭63−83117号公報
【特許文献13】特開平1−96266号公報
【特許文献14】特開平3−56514号公報
【特許文献15】特開平9−117998号公報
【特許文献16】特開平2−163134号公報
【特許文献17】特開平6−142611号公報
【特許文献18】特開平10−60307号公報
【特許文献19】特開2005−125208号公報
【特許文献20】特開2006−89697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のように、紫外線吸収能を有する化合物をプライマー層に含有させる技術は数多く開示されている。しかし、耐候性には優れているものの、いずれも耐擦傷性層に熱硬化樹脂が用いられているため、熱硬化樹脂の硬化に時間がかかり、生産性が良くないことがあるという課題を有していた。
【0011】
さらに、特許文献12〜15に開示されている技術においては、耐候性が十分ではなく、紫外線吸収能を十分付与するためにプライマー層の表面に厚い層を設けねばならないことがあり、依然として課題を有していた。
【0012】
また、特許文献19に開示されている技術においては、紫外線を二度照射させなくてはならないことがあり、さらに、長波長側で高出力を示す特別な紫外線光源を用いて硬化させなければならないこともあるという課題も有していた。
【0013】
そして、特許文献20に開示されている技術においては、紫外線吸収剤よりも著しく長波長側に光の吸収帯を有する開始剤を用いるために、塗膜が黄色く着色することがあるという課題も有していた。
【0014】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、耐擦傷性及び耐候性に優れるとともに、生産性に優れた透明プラスチック基材積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、透明プラスチック基材上に、特定の樹脂を含む第1層(プライマー層)及び第2層(紫外線硬化樹脂の硬化物を含む層)をこの順で積層するとともに、第1層と第2層との積層部分における波長290nm以上300nm以下の光の吸光度を特定範囲とすることにより、耐擦傷性及び耐候性に優れるとともに、生産性に優れた透明プラスチック基材積層体を提供することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0016】
即ち、本発明の要旨は、透明プラスチック基材上に、少なくとも第1層と第2層とをこの順で設けた積層体であって、第1層が紫外線吸収能を有する化合物及びアクリル樹脂を含み、第2層が紫外線硬化樹脂を含むとともに、第1層と第2層との積層部分における、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が1より大きいことを特徴とする、積層体に存する(請求項1)。
この時、1μmの厚さで形成された該第1層において、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が0.1より大きく、さらに、波長290nm以上300nm以下の光に対する、該紫外線吸収能を有する化合物の吸光係数εが10000mL/(g・cm)より大きいことが好ましい(請求項2)。
また、該第1層が、波長290nm以上300nm以下の光に対する吸光係数εが10000mL/(g・cm)より大きい紫外線吸収能を有し、且つ、他のモノマーと重合可能な基を有する化合物と、該他のモノマーと、を共重合させて得られたアクリル樹脂を含むことが好ましい(請求項3)。
【0017】
さらに、該第2層が、紫外線重合開始剤を含まない樹脂混合物(A)と紫外線重合開始剤(B)とを少なくとも含む組成物により形成された層であって、2μmの厚さで形成された該樹脂混合物(A)において、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が0.2より大きく、且つ、波長254nmの光の吸光度が0.4以下であるとともに、波長254nmの光に対する該紫外線重合開始剤(B)の吸光係数εが30000mL/(g・cm)以上であることが好ましい(請求項4)。
また、該第2層が、紫外線重合開始剤を含まない樹脂混合物(A)と紫外線重合開始剤(B)とを少なくとも含む組成物により形成された層であって、2μmの厚さで形成された該樹脂混合物(A)において、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が0.2より大きく、且つ、波長365nmの光の吸光度が0.4以下であるとともに、波長365nmの光に対する該紫外線重合開始剤(B)の吸光係数εが400mL/(g・cm)以上であることが好ましい(請求項5)。
【0018】
また、該透明プラスチック基材が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースアシレート樹脂、又はシクロオレフィンポリマー樹脂であることが好ましい(請求項6)。
そして、該積層体が、自動車用窓材又はサンルーフであることが好ましい(請求項7)。
また、該積層体が、建材シートであることが好ましい(請求項8)。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐擦傷性及び耐候性に優れるとともに、生産性に優れた透明プラスチック基材積層体を提供することができる。特に、第2層の波長290nm以上300nm以下の光の吸光度を一定範囲の値とすることで、第2層も紫外線吸収能を有する。また、それによる紫外線硬化樹脂の硬化反応を阻害させないよう、重合開始剤が効率良く作用する波長における樹脂の吸光度を一定範囲の値とすることで、耐擦傷性も得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】実施例1で製造した積層体における、第1層と第2層との積層部分の光の吸収スペクトルを表すグラフである。
【図2】石英板上に乾燥後の厚さが1μmとなるように第1層を形成させたときの光の吸収スペクトルを表すグラフである。
【図3】配合液2を石英板に2μmの厚さになるように塗布し、膜を形成させたときの膜の光の吸収スペクトルを表すグラフである。
【図4】チヌビン213の吸光係数εを表すグラフである。
【図5】実施例2で製造した積層体における、第1層と第2層との積層部分の光の吸収スペクトルを表すグラフである。
【図6】厚さが1μmとなるように石英板上に塗布して膜を形成させたときの光の吸収スペクトルを表すグラフである。
【図7】2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの吸光係数εを表すグラフである。
【図8】実施例3で製造した積層体における、製造した積層体における第1層と第2層との積層部分の光の吸収スペクトルを表すグラフである。
【図9】配合液4を用いて石英板上に2μmの厚さになるように形成した膜の光の吸収スペクトルを表すグラフである。
【図10】比較配合液1を用いて石英板上に乾燥後の厚さが1μmとなるように第1層を形成させ、当該第1層の光の吸収スペクトルを表すグラフである。
【図11】比較例2で製造した積層体における、第1層と第2層との積層部分の光の吸収スペクトルを表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない限り、任意に変更して実施することができる。
【0022】
本明細書において、「(メタ)」を冠した化合物を記載する場合、例えば「(メタ)アクリル酸」と記載した場合、「アクリル酸及びメタクリル酸からなる群より選ばれる少なくとも1つ」を表すものとし、他の化合物についても同様のものとする。
【0023】
[1.積層体]
本発明の積層体は、透明プラスチック基材上に、少なくとも第1層と第2層とをこの順で設けた積層体であって、第1層が紫外線吸収能を有する化合物及びアクリル樹脂を含み、第2層が紫外線硬化樹脂を含むとともに、第1層と第2層との積層部分における、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が1より大きいものである。
【0024】
[1−1.透明プラスチック基材]
透明プラスチック基材は、JIS K7361−1に定めるように、透過光が主に正透過から成り、可視領域の正透過率が高いプラスチックを基材とするものをいうが、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意のものを用いることができる。
【0025】
透明プラスチック基材の具体例としては、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースアシレート樹脂、シクロオレフィンポリマー樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等が挙げられる。中でも、透明プラスチック基材は、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースアシレート樹脂、又はシクロオレフィンポリマー樹脂であることが好ましく、これらの中でも、ポリカーボネート樹脂がより好ましい。
透明プラスチック基材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0026】
透明プラスチック基材の数平均分子量は、通常5×10以上、好ましくは1×10以上、また、その上限は、通常1×10以下、好ましくは1×10以下である。数平均分子量が小さすぎる場合、脆くて基材としては用いられなくなる可能性があり、大きすぎる場合、溶融時の粘度が高すぎて成形が困難となる可能性がある。数平均分子量は、例えば、透明プラスチック基材のテトラヒドロフラン溶液を作成し、東ソー TSKgel GMHXL−L カラム、RI検出器等を用いて測定することができる。
【0027】
透明プラスチック基材の厚さは、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.05mm以上、好ましくは0.5mm以上、また、その上限は、通常20mm以下、好ましくは10mm以下である。厚さが薄すぎる場合、基材の強度が不十分となる可能性があり、厚すぎる場合、重過ぎる、移動が不自由になる等不経済となる可能性がある。
【0028】
透明プラスチック基材の形態は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であり、例えば、シート状、フィルム状、成形体等いずれの形態であってもよい。
【0029】
透明プラスチック基材の製造方法としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
中でも、透明プラスチック基材を製造する際の単量体(モノマー)としては、例えばポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂等のモノマー単位を与える二価アルコールを用いて製造することが好ましい。
【0030】
具体的には、ハイドロキノン、レゾルシノール、1,3−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,8−ジヒドロキシナフタレン、2,3−ジヒドロキシナフタレン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン等の2官能性フェノール化合物;
4,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’,5,5’−テトラ(t−ブチル)−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,4’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−2,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ(t−ブチル)−2,4’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、2,2’−ビフェノール、3,3’−ジメチル−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル、3,3’−ジ(t−ブチル)−2,2’−ジヒドロキシ−1,1’−ビフェニル等のビフェノール化合物;
ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基を有しないビスフェノール化合物;
ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン等の芳香族環上に置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物;
ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−(sec−ブチル)フェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2,3,5−トリメチルフェニル)シクロヘキサン等の芳香族環上に置換基としてアルキル基を有するビスフェノール化合物;
ビス(4−ヒドロキシフェニル)(フェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)(ジフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)(ジベンジル)メタン等の芳香族環を連結する2価基が置換基としてアリール基を有するビスフェノール化合物;
4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル等の芳香族環をエーテル結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン等の芳香族環をスルホン結合で連結したビスフェノール化合物;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等の芳香族環をスルフィド結合で連結したビスフェノール化合物;
ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)エーテル、フェノールフタルレイン;
等が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0031】
これらの中でも、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンが好ましく、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンがより好ましい。
【0032】
[1−2.第1層]
本発明の積層体における第1層は、上記の透明プラスチック基材上に形成されたものであって、第1層が紫外線吸収能を有する化合物及びアクリル樹脂を含むものである。
【0033】
(紫外線吸収能を有する化合物)
紫外線吸収能を有する化合物としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意のものを用いることができる。ただし、本発明の積層体においては、第1層と後述する第2層との積層部分における、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が1より大きくなるように、紫外線吸収能を有する化合物を選択することが好ましい。
【0034】
中でも、1μmの厚さで形成された第1層において、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が通常0.1より大きく、好ましくは0.2以上である。さらに、波長290nm以上300nm以下の光に対する、紫外線吸収能を有する化合物の吸光係数εが通常10000mL/(g・cm)よりも大きく、好ましくは15000mL/(g・cm)以上の化合物が好ましい。吸光度が小さすぎる場合、第2層において吸収する紫外線量が増え、透明プラスチック基材に達する紫外線量が増加する可能性がある。
【0035】
吸光度は吸光係数ε、含有濃度及び厚さの積なので、厚さの制限がある条件下で、これよりも低い吸光係数のものを用いると、紫外線吸収能を有する化合物を多量に混合しなければならない場合があり、その分、アクリル樹脂の含有量が少なくなる場合がある。第1層の密着性は、通常、アクリル樹脂の含有量により影響されるので、紫外線吸収能を有する化合物を多量に含有することにより、密着性が低下する可能性がある。
なお、吸光度はJIS K0115「吸光光度分析通則」により測定できる。また、吸光係数εはモルで濃度を表すのが困難なことから本発明ではmL/(g・cm)と表記するが、それ以外は上記JIS K0115に準じる。
【0036】
紫外線吸収能を有する化合物は有機化合物でも無機化合物でも良いが、有機化合物を用いた方が層を形成するアクリル樹脂との親和性を確保しやすく、従って均一に分散させやすいので好ましい。
【0037】
紫外線吸収能を有する化合物の具体例としては、ベンゾトリアゾール系化合物、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物等を挙げることができる。紫外線吸収能を有する化合物は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0038】
ベンゾトリアゾール系化合物のより具体的な例としては、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−t−ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル 3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられ、ヒドロキシフェニルトリアジン系化合物としては、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−イソオクチルオキシフェニル)−s−トリアジンなどが挙げられ、ヒドロキシベンゾフェノン系化合物としては、2,2’−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’、4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン等が挙げられ、シアノアクリレート系化合物としては、エチル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、2’−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが好ましい。
【0040】
(アクリル樹脂)
本発明の積層体においては、透明プラスチック基材と第2層(後述する。)との密着性及び耐擦傷性を向上させつつ、ある程度の紫外線吸収能を確保する観点から、第1層が上記の紫外線吸収能を有する化合物及びアクリル樹脂を含む。
【0041】
アクリル樹脂の分子量は、層としての密着性、強度の観点から、数平均分子量で2×10以上が好ましく、5×10以上がより好ましい。また、容易に製造でき、塗布できるという観点から、1×10以下が好ましく、1×10以下がより好ましい。分子量が小さすぎる場合、脆くて強度が保てず基材として不適格となる可能性があり、大きすぎる場合、粘度が高くて層を均一に形成するのが難しい可能性がある。なお、数平均分子量は、例えば、アクリル樹脂のテトラヒドロフラン溶液を作成し、東ソー TSKgel GMHXL−L カラム、RI検出器を用いて測定することができる。
【0042】
アクリル樹脂は、通常、アクリロイル基及び/又はメタクリロイル基(以下、適宜「(メタ)アクリロイル基」と言う。)を有する化合物群から選ばれる少なくとも1種の化合物を重合してなる樹脂である。従って、アクリル樹脂は、化合物端に存在する炭素−炭素間の二重結合により重合され製造されるため、モノマーとして(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いることが好ましい。
【0043】
中でも、アクリル樹脂の物性を調整するために、アクリル樹脂は、複数種の(メタ)アクリロイル基を有する化合物による共重合体であることがより好ましい。ただし、(メタ)アクリロイル基を有する化合物の分子量が大きすぎると、アクリル樹脂の製造が困難になる可能性があるため、当該化合物の炭素数は50以下が好ましく、より好ましくは40以下、特に好ましくは35以下である。
【0044】
アクリル樹脂を形成する(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、通常、下記式(1)で表される化合物が用いられる。
【化1】

上記式(1)中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子又は有機基を表す。
【0045】
は、水素原子又は有機基である限り、任意である。Rが有機基である場合、Rは、入手の容易さからメチル基あるいはエチル基が好ましい。
【0046】
一方、Rも、水素原子又は有機基である限り、任意である。Rが有機基である場合、Rは、鎖状であってもよく、環状であってもよい。さらに、当該有機基は、直鎖であってもよく、分岐を有していてもよい。
【0047】
以上の観点から、以下に示す、R及びRを有する(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、適宜、「不飽和単量体(a−1)」と言う。)が好ましい。
【0048】
不飽和単量体(a−1)の具体例としては、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0049】
また、積層体の耐候性を向上させる観点から、厚さ1μmの膜に対する波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が0.1より大きいことが好ましいが、当該波長範囲の光の透過率を調整するためには、Rに波長290nm以上300nm以下の光を吸収又は遮断する基を有する化合物を用いることが出来る。当該化合物は、より具体的には、アクリル樹脂を形成するモノマーとして、波長290nm以上300nm以下の光に対する吸光係数εが10000mL/(g・cm)より大きい紫外線吸収能を有し、且つ、他のモノマーと重合可能な基を有する化合物であり、例えば紫外線吸収剤として用いられている化合物に由来する、いわゆる紫外線吸収性基を有する(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、適宜、「不飽和単量体(a−2)」と言う。)である。当該化合物を該他のモノマーと共重合させて得られたアクリル樹脂を第1層として用いると、層内により均一に紫外線吸収能を付与させることができ、また、耐候性試験などの過酷な条件下でも紫外線吸収剤だけがブリードするという現象を防止できるため好ましい。即ち、第1層が、波長290nm以上300nm以下の光に対する吸光係数εが10000mL/(g・cm)より大きい紫外線吸収能を有し、且つ、他のモノマーと重合可能な基を有する化合物と、該他のモノマーと、を共重合させて得られたアクリル樹脂を含むものとすることが好ましい。この際、第1層は、上記の紫外線吸収能を有する化合物を含有していてもよい。
【0050】
ここで、「他のモノマーと重合可能な基」としては、例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基等が挙げられ、中でも、(メタ)アクリロイル基が特に好ましい。これらは1種を単独で有してもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで有していてもよい。
【0051】
波長290nm以上300nm以下の光の透過率を調整するためのRとしての紫外線吸収性基としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン骨格を有する基、トリアジン骨格を有する基、2−(5’−メチル−2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール骨格を有する基、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート骨格を有する基、フェニルサリシレート等のサリシレート骨格を有する基、ジエチル−p−メトキシベンジリデンマロネート等のベンジリデンマロネート骨格を有する基が、好ましく用いられる。
【0052】
中でも、ベンゾフェノン骨格を有する基、トリアジン骨格を有する基およびベンゾトリアゾール骨格を有する基が好ましく、特にはベンゾトリアゾール骨格を有する基が好ましく用いられる。
【0053】
より具体的には、不飽和単量体(a−2)として、例えば、式(3)に代表されるようなベンゾトリアゾール骨格を有する化合物、式(4)に代表されるようなベンゾフェノン骨格を有する化合物、及び式(5)に代表されるようなトリアジン骨格を有する化合物等を挙げることができる。
【化2】

【0054】
式(3)中、Xは水素原子又は塩素原子を表し、Rは水素原子、メチル基、又は炭素数4以上8以下の第3級アルキル基を表す。Rは直鎖状または分岐鎖状の炭素数2以上10以下のアルキレン基を表し、Rは水素原子又はメチル基を表す。nは0又は1を表す。
【0055】
式(4)中、Rは式(3)のRと同様のものを表し、Rは炭素数1以上10以下の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表す。R10は水素原子又は水酸基を表し、R11は水素原子、水酸基または炭素数1以上6以下のアルコキシ基を表す。
【0056】
式(5)中、Rは式(3)のRと同様のものを表し、R12は直接結合、−CHCHO−又は−CHCH(OH)−CHO−を表し、mは1以上5以下の整数を表す。R13は、各々孤立して、水素原子、炭素数1以上10以下のアルキル基又はアルケニル基を表し、oは、0以上4以下の整数を表し、p及びqは、各々独立に、0以上5以下の整数を表す。
【0057】
また、上記のもの以外にも、波長290nm以上300nm以下の光に対する吸光係数εが10000mL/(g・cm)より大きい紫外線吸収能を有し、且つ、他のモノマーと重合可能な基を有する化合物(即ち、紫外線吸収能を有する構成単位を与える成分;不飽和単量体(a−2))の具体例として、ベンゾトリアゾール系化合物として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等を挙げることができ、ベンゾフェノン系化合物として、2−ヒドロキシ−4−(2−メタクリロキシエチル)オキシベンゾフェノン等も挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0058】
不飽和単量体(a−2)と他のモノマーとを共重合させて、紫外線吸収能を有する構成単位を有するアクリル樹脂を製造する場合、不飽和単量体(a−2)の使用量は、他のモノマーの合計1モルに対して、通常0.05モル倍以上、好ましくは0.1モル倍以上、また、その上限は、通常2.3モル倍以下、好ましくは0.7モル倍以下である。使用量が少なすぎる場合、所望の紫外線吸収能が得られないために耐候性が発揮できない可能性があり、多すぎる場合、層が脆くなりやすい可能性がある。
【0059】
アクリル樹脂は、通常(メタ)アクリロイル基を有する化合物を重合してなる樹脂であるが、アクリル樹脂は、複数種の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いた共重合体であってもよい。
【0060】
不飽和単量体(a−2)と反応しうる他のモノマーとしては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、共重合の容易さから、例えば上記の不飽和単量体(a−1)や、他のアルキルメタクリレート類、不飽和単量体(a−1)及び不飽和単量体(a−2)以外のモノマー(以下、適宜「不飽和単量体(a−3)と言う。)等が挙げられ、中でも、アルキルメタクリレート類、ビニルエステル類が好ましい。他のモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0061】
不飽和単量体(a−1)及び/又は不飽和単量体(a−2)と共重合することが可能な不飽和単量体(a−3)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミド、アルキルビニルエーテル、ビニルエステル又はこれらの誘導体を挙げることができる。不飽和単量体(a−3)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0062】
(メタ)アクリル酸及びその誘導体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素数1以上20以下のアルキルメタクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、シアノエチル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、(メタ)アクリル酸、2−アクリロイルオキシエチルフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−(メタ)アクリロイルプロピルフタレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−イソシアネートエチル(メタ)アクリレート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルトリエトキシシラン、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0063】
また、(メタ)アクリロニトリル及びその誘導体の具体例としては、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロメチルアクリロニトリル、α−トリフルオロメチルアクリロニトリル、α−メトキシアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、シアノ化ビニリデンが挙げられる。
【0064】
また、(メタ)アクリルアミド及びその誘導体の具体例としては、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−エメチル(メタ)アクリルアミド、N−メトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメトキシ(メタ)アクリルアミド、N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−エトキシ(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリルアミド、N,N−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、N,N−エチレンビス(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0065】
アルキルビニルエーテル及びその誘導体の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、等を挙げることができる。
【0066】
ビニルエステル及びその誘導体の具体例としては、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、アクリル酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等を挙げることができる。
【0067】
中でも、不飽和単量体(a−1)に由来する単位が通常5質量%以上95質量%以下であって、不飽和単量体(a−2)に由来する単位が通常5質量%以上70質量%以下であって、かつ、不飽和単量体(a−1)及び/又は不飽和単量体(a−2)と共重合することが可能な不飽和単量体(a−3)に由来する単位が通常30質量%以下含まれるアクリル樹脂(A)が好ましい。
【0068】
上記の原料を用いて第1層に含まれるアクリル樹脂を製造する際の反応条件は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
例えば、各成分の使用量は、アクリル樹脂に含まれる構成単位の量と同様に設定すればよい。また、反応制御を容易にするために溶媒を用いても良い。重合時の反応温度は、使用する単量体種類、溶媒種類、重合開始剤種類により異なるが、通常30℃以上、好ましくは50℃以上、また、その上限は、通常150℃以下、好ましくは100℃以下である。また、反応時間は、通常1時間以上、好ましくは2時間以上、また、その上限は、通常24時間以下、好ましくは12時間以下である。反応時間が短すぎる場合、反応制御が困難となる可能性があり、長すぎる場合、非経済的となる可能性がある。
【0069】
(その他の成分)
本発明の積層体における第1層は、上記の紫外線吸収能を有する化合物及びアクリル樹脂以外に、その他の成分を含んでもよい。混合しうるその他の成分の具体例としては、光安定化剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0070】
含みうる光安定化剤の例として、ヒンダードアミン系化合物、有機ニッケル系化合物があり、ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等を挙げることが出来、有機ニッケル系化合物としては、例えば、[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)]−n−ブチルアミンニッケル塩、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル塩等を挙げることが出来る。
【0071】
含みうる酸化防止剤の例として、ヒンダードフェノール系化合物、りん系化合物があり、ヒンダードフェノール系化合物としては例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられ、りん系化合物としては例えば、トリイソプロピルホスファイト、トリイソデシルホスファイト等を挙げることが出来る。
なお、光安定化剤及び酸化防止剤は、それぞれ独立して1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0072】
(第1層の物性)
第1層において、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が通常0.1より大きく、好ましくは0.2以上である。吸光度が小さすぎる場合、第2層において吸収する紫外線量が増え、透明プラスチック基材に達する紫外線量が増加する可能性があり、大きすぎる場合、紫外線吸収能を有する化合物の含有量が高いために第2層との密着性が低下する可能性がある。なお、第1層の吸光度は、石英上に厚さ1μmの第1層を形成し、当該第1層に対する光の吸光度を測定することで、求めることができる。
【0073】
第1層中、紫外線吸収能を有する化合物の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、好ましくは50質量%未満、より好ましくは40質量%未満である。紫外線吸収能を有する化合物の含有量が多すぎる場合、第2層との密着性が低下する可能性がある。
【0074】
また、第1層中、アクリル樹脂の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常70質量%以上、好ましくは80質量%以上、また、その上限は、通常98質量%以下、好ましくは96質量%以下である。アクリル樹脂の含有量が少なすぎる場合、紫外線遮蔽の効果が得られない可能性があり、多すぎる場合、第2層との密着性が低下する可能性がある。
【0075】
また、第1層は、上記のように紫外線吸収能を有するアクリル樹脂を含むことも好ましい。第1層が紫外線吸収能を有するアクリル樹脂を含む場合、それにより、層強度を保つ目的での、紫外線吸収能を有さないアクリル樹脂の使用量を減じることが出来る。
【0076】
乾燥後の第1層の厚さは、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、中でも、1μm以上が好ましく、30μm以下が好ましい。厚さが薄すぎる場合、密着性が乏しくなる可能性があり、また、第1層の紫外線吸収能が低下する可能性がある。また、厚すぎる場合、層形成のための塗布時に溶媒を揮発させることが困難になり、その結果、第1層に残存した溶媒により、第1層の外観、耐候性等を損なう可能性がある。
【0077】
(第1層の形成方法)
第1層は、通常、上記の紫外線吸収能を有する化合物及びアクリル樹脂、並びに必要に応じて紫外線吸収能を有するアクリル樹脂を含む溶液を透明プラスチック基材に塗布、乾燥することにより形成される。この際、アクリル樹脂を合成する際の利便性や、第1層を形成する際に塗布形成法を採用する場合の塗工性を向上する目的で、適切な溶媒を含んでもよい。塗布方法は、バーコート、ディップコート、フローコート、スプレーコート、ロールコート等の方法を透明プラスチック基材の形状、溶液の性状等に合わせて適宜選ぶことができる。透明プラスチック基材への塗布後は、通常、常温から該基材の熱変形温度以下の温度の条件で、溶媒の乾燥、除去を行う。
【0078】
溶媒の具体例としては、透明プラスチック基材を白化させたり、反応して性能を損なったりするものでなければ制限はないが、例えば、ポリカーボネートに対して用いることが出来るものとして、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類等が挙げられる。溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0079】
また、第1層は上記の方法により設けられてもよいが、例えば熱硬化、紫外線硬化等した樹脂によって形成されてもよい。その場合、アクリル樹脂に、ビニル基、イソシアネート基等の架橋性の反応基が導入されており、当該架橋性の反応基が反応することにより形成されることが好ましい。
【0080】
[1−3.第2層]
(紫外線硬化樹脂)
本発明の積層体における第2層は、耐擦傷性を有する層(即ち、耐擦傷性層)を高い生産性で得る観点から、紫外線硬化樹脂を含む。紫外線硬化樹脂は、例えば紫外線重合開始剤を含まない樹脂混合物(A)及び紫外線重合開始剤(B)からなる組成物に対して、紫外線重合開始剤(B)が有効に働きうる波長の光を照射することにより、ラジカル等の活性種が生み出され硬化したものである。ここで、「有効に働きうる波長」とは、紫外線重合開始剤(B)の吸光係数εが大きな値を示す領域を表すが、通常は紫外線領域であって、中でも樹脂混合物(A)の吸収が少ない波長であることが好ましい。
【0081】
また、積層体の透明プラスチック基材(特にはポリカーボネート基材)に影響を及ぼす可能性がある波長290nm以上300nm以下の光を透明プラスチック基材まで到達させないためには、第1層でも波長290nm以上300nm以下の光を吸収するとともに、第2層でも当該波長の光を吸収することが好ましい。しかし、紫外線重合開始剤(B)を多量に用いて多くの紫外線硬化樹脂を第2層に含有させ、より多くの紫外線を吸収させた場合、硬化後にも多量の紫外線重合開始剤の未反応物が残存しやすく、積層体の耐候性を低下させる可能性がある。
そこで、本発明では、紫外線を用いた硬化に通常用いられる高圧水銀ランプにおいて強く放射されていて、かつ、波長290以上300nm以下の範囲からやや離れている波長、即ち、254nm及び365nmの少なくとも一方の波長の光により硬化する紫外線硬化樹脂を用いることが好ましい。
【0082】
より具体的には、本発明の積層体における第2層は、紫外線重合開始剤を含まない樹脂混合物(A)と紫外線重合開始剤(B)とを少なくとも含む組成物を紫外線硬化させて形成された層であって、2μmの厚さで形成された樹脂混合物(A)において、積層体の耐候性向上の観点から、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が通常0.2より大きく、好ましくは0.3以上、且つ、波長254nmの光の吸光度が通常0.4以下、好ましくは0.3以下であるとともに、波長254nmの光に対する該紫外線重合開始剤(B)の吸光係数εが通常30000mL/(g・cm)以上であることが好ましい。
【0083】
また、本発明の積層体における第2層は、紫外線重合開始剤を含まない樹脂混合物(A)と紫外線重合開始剤(B)とを少なくとも含む組成物により形成された層であって、2μmの厚さで形成された樹脂混合物(A)において、積層体の耐候性向上の観点から、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が通常0.2より大きく、好ましくは0.3以上、且つ、波長365nmの光の吸光度が通常0.4以下、好ましくは0.3以下であるとともに、波長365nmの光に対する該紫外線重合開始剤(B)の吸光係数εが通常400mL/(g・cm)以上、好ましくは800mL/(g・cm)以上であることが好ましい。
【0084】
波長254nm及び365nmのいずれの場合においても、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が小さすぎる場合、第1層にて吸収すべき紫外線量が増え、第1層の設計を困難にする可能性がある。
【0085】
また、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が大きすぎる場合、紫外線重合開始剤(B)を効率良く作用させるためには、大量の紫外線を照射しなければならず非効率となる可能性があり、さらに、照射中に透明プラスチック積層体に熱が蓄積されて変形する可能性もある。
【0086】
なお、吸光度及び吸光係数は、第1層の場合と同様に測定できる。具体的には、例えば、樹脂混合物(A)を石英板上に乾燥後の厚さが2μmとなるように塗布・乾燥し、形成された層に対して、吸光度及び吸光係数を測定することができる。
【0087】
(樹脂混合物(A))
樹脂混合物(A)に含まれる紫外線硬化樹脂は、通常、オリゴマーと反応性希釈剤の混合物である。オリゴマーは、例えばウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート等を用いることが出来る。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0088】
また、樹脂混合物(A)には、重合可能な基が結合した紫外線吸収能を有する化合物を他のモノマーと共重合させた共重合体を加えてもよい。紫外線吸収能を有する化合物としては、例えばアクリル基、ビニル基等の重合可能な基を有し、かつ、波長290nm以上300nm以下における吸光係数εが10000mL/(g・cm)よりも大きい紫外線吸収能を有する化合物であって、具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−アクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
他のモノマーとしては、共重合体の製造の容易さの観点から、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート等の短鎖のアルキルメタクリレート;ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等の長鎖のアルキルメタクリレート;ビニルエステル類が好ましい。また、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル類を挙げることもできる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0089】
さらに、波長290nm以上300nm以下の紫外線吸収能を有する化合物を含有させてもよい。そのような化合物の例として、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−ヘキシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−メチル−5’−t−ドデシルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル 3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0090】
また、反応性希釈剤とは、上記のモノマーやオリゴマーと反応しうる低分子量成分であって、具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどの単官能(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
上記の樹脂に、例えばアルミナ、シリカ等の微粉末状無機充填剤や、これらがコロイド状に分散されているもの、あるいは、これらの表面をアルコキシシラン及び/又はその反応物で被覆して樹脂への親和性を向上させたもの等を混合してもよい。
【0091】
微粉末状無機充填剤としては、塗膜の透明性を確保しつつ、塗布液の安定性も維持する観点から、粒子径が好ましくは5nm以上、また、好ましくは100nm以下のものが好ましく、入手の容易さの観点から、水又は有機溶媒にコロイド状に分散されたアルミナゾル、シリカゾル等がより好ましく、これらの表面をアルコキシシランやその反応物で被覆して樹脂への親和性を向上させたものがさらに好ましい。
【0092】
さらに、紫外線硬化樹脂を溶解させる溶媒を混合してもよい。溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル類、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0093】
また、樹脂混合物(A)中の紫外線吸収能を有する化合物の含有量は、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上、また、その上限は、通常30質量%以下、好ましくは10質量%以下である。含有量が少なすぎる場合、波長290nm以上300nm以下の光を遮断する能力が乏しくなる可能性があり、多すぎる場合、第2層の耐擦傷性が劣って、積層体全体の耐擦傷性が不足したり、第1層との密着性が不足したりする可能性がある。
【0094】
(紫外線重合開始剤(B))
紫外線重合開始剤(B)として、波長254nm又は365nmの光のうち、少なくとも一方の光を効率良く吸収して硬化反応を開始するものであることが好ましい。
例えば、高圧水銀ランプから照射される光は、光のエネルギーが比較的大きいため、紫外線硬化樹脂を含む第2層表面の表面硬化性が向上するとされている。従って、表面硬度が要求される硬化物では好ましく用いられるが、中でも、波長365nmでの放射強度は非常に強いので、当該波長により重合が開始される紫外線重合開始剤の吸光係数はやや低くてもよいが、254nmの光を利用しようとするときは、その放射強度は低めなので、254nmにおける吸光係数εが高い紫外線重合開始剤(B)を用いることが好ましい。
具体的には、波長254nmの光に対する紫外線重合開始剤(B)の吸光係数εが30000mL/(g・cm)以上であるか、波長365nmの光に対する該紫外線重合開始剤(B)の吸光係数εが400mL/(g・cm)以上であることが好ましい。いずれの波長を用いるかは、樹脂混合物(A)の組成、紫外線吸収能を有する化合物、紫外線重合開始剤(B)の吸収波長領域、使用量等を勘案して決定することが好ましい。
【0095】
紫外線重合開始剤(B)としては、本発明の効果を著しく損なわない限り任意のものが挙げられるが、例えば、光ラジカル重合開始剤として、α−ヒドロキシアセトフェノン類、ベンジルメチルケタール類、α−アミノアセトフェノン類等が挙げられる。紫外線重合開始剤(B)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0096】
α−ヒドロキシアセトフェノン類としては、例えば、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(254nmでの吸光係数ε=33200、365nmでのε=88.6(単位はmL/(g・cm)、以下同様である。))、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(254nmでのε=40600、365nmでのε=73.9)等を挙げることができる。
ベンジルメチルケタール類としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(254nmでのε=47100、365nmでのε=361)等を挙げることができる。
α−アミノアセトフェノン類としては、例えば、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(254nmでのε=3940、365nmでのε=467)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタン−1−オン(254nmでのε=7470、365nmでのε=7860)等を挙げることが出来る。
【0097】
紫外線硬化樹脂のモノマーやオリゴマーと紫外線重合開始剤(B)との使用量の比率は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、紫外線重合開始剤(B)の使用量としては、通常、樹脂全質量に対し、0.1質量%以上、好ましくは0.5質量%以上であり、上限は通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。0.1質量%未満である場合、硬化が著しく遅くなったり、あるいは充分紫外線を照射しても所望の耐擦傷性が得られなかったりする可能性がある。また、10質量%を超えた場合、大部分は硬化反応に実質的な寄与はしないまま層内に残存するので非経済的でもなく、耐候性試験などではブリードして外観や密着性などに悪影響を及ぼす可能性がある
【0098】
(その他の成分)
また、第2層には、上記の紫外線硬化樹脂、並びに必要に応じて用いられる上記の樹脂混合物(A)及び紫外線重合開始剤(B)以外の成分を含んでいてもよい。含んでいてもよい成分としては、例えば、光安定化剤、酸化防止剤等が挙げられる。
【0099】
光安定化剤の具体例として、ヒンダードアミン系化合物、有機ニッケル系化合物が挙げられ、ヒンダードアミン系化合物としては、例えば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、メチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。
有機ニッケル系化合物としては、例えば、[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノレート)]−n−ブチルアミン ニッケル塩、ジブチルジチオカルバミン酸 ニッケル塩等が挙げられる。
なお、光安定化剤は、1種を単独でも用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0100】
また、酸化防止剤の具体例として、ヒンダードフェノール系化合物、りん系化合物等が挙げられ、ヒンダードフェノール系化合物としては例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等が挙げられ、りん系化合物としては、例えば、トリイソプロピルホスファイト、トリイソデシルホスファイト等が挙げられる。
なお、酸化防止剤も、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率及び組み合わせで用いてもよい。
【0101】
(第2層の厚さ)
第2層の厚さは、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常2μm以上、好ましくは5μm以上、また、その上限は、通常20μm以下、好ましくは15μm以下である。厚さが薄すぎる場合、十分な耐擦傷性を発揮することができない可能性があり、厚すぎる場合、硬化時に発生する応力のためにコート層(即ち、第1層)にクラックが発生したり、コート層と透明プラスチック基材との密着性が低下したりする可能性がある。
【0102】
(第2層の形成方法)
第2層は、通常第1層の上に塗布され、その後必要に応じて乾燥により溶媒を除去した後、紫外線を照射して硬化させることにより形成される。塗布方法は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、バーコート、ディップコート、フローコート、スプレーコート、ロールコート等の方法を透明プラスチック基材の形状、溶液の性状に合わせて適宜選択できる。これらは、1種を単独で行ってもよく、2種以上を任意に組み合わせて行ってもよい。
紫外線ランプとしては、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ等を用いることが出来る。紫外線ランプも、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0103】
また、紫外線照射量も、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であって、紫外線重合開始剤の添加量にも依るが、通常は高圧水銀ランプにおいて放射強度が強く、また、大抵の測定機器で測定可能である365nmにおいて、通常0.1J/cm以上10J/cm以下である。
【0104】
[1−4.その他の層]
必要に応じて、上記の第1層及び第2層の他に、追加の層を設けてもよい。具体的には、耐擦傷性を強化し、あるいは、追加の機能を付与するための層を設けてもよい。追加の層の形成方法としては、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等を塗布、硬化させる方法のほか、スパッタ、蒸着等により設けることができる。
【0105】
[2.積層体の物性]
(吸光度)
本発明の積層体においては、第1層と第2層との積層部分における、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が1より大きく、好ましくは1.5以上である。吸光度が1より大きいことにより、透明プラスチック基材表面に到達する、有害領域の紫外線を遮断することができるとともに、第2層に含まれる紫外線硬化樹脂の硬化物を形成させることにより生産性の向上を図ることができる。
なお、第1層と第2層との積層部分における吸光度は、JIS K0115の方法に準じて測定することができる。
【0106】
(厚さ)
第1層と第2層との厚さの合計は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、その上限は、通常50μm以下、好ましくは30μm以下である。厚さが薄すぎる場合、第2層を上記の好ましい範囲内で設けたとしても耐擦傷性が不十分になる可能性がある。また、厚すぎる場合、第1層及び/又は第2層でクラックが入りやすく、密着性も乏しくなる可能性があり、また、耐擦傷性の向上する度合いも小さくなるので、非経済的となる可能性がある。
【0107】
(耐擦傷性)
上記の第1層及び第2層を有する積層体が示すべき耐擦傷性は、積層体の使用目的によって異なるが、例えば、JIS K6735(プラスチック−ポリカーボネート板−寸法及び特性)に記載の耐摩耗性用板については、耐摩耗性の項目として、JIS K7204に規定するテーバー型の摩耗試験機を用い、CS−10Fの摩耗輪、4.90Nの荷重で100回転させたとき、摩耗試験前後の曇価の差が15%以下でなければならないと定めており、本発明の積層体でも、この条件を満たすことが好ましい。この耐擦傷性に関する条件(即ち範囲)は、上記のJIS K6735における耐摩耗性用板が満たすべき範囲と同じであるから、耐擦傷性と耐候性とをいずれも求められるような用途、例えば、JIS R3211の自動車用安全ガラスの有機ガラス等の材料に好適に用いることができ、特にサンルーフ、パノラマルーフ、後部窓等の自動車用窓材に好適に用いることも出来る。さらに、付着した塵埃を拭き取るときに傷の入りにくい積層体を製造でき、しかも耐候性をあわせて有することから、本発明の積層体は建材シートとしても好適に用いることが出来る。
【0108】
(耐候性)
また、本発明の積層体は、耐候性に優れるという利点を有する。具体的には、以下の測定条件に試験を行った後においても、積層体に黄変、クラック、剥離等が発生しないという利点を有する。測定条件としては、JIS B7754に準拠したキセノンアークランプ式耐候性試験機を用い、以下の運転条件で行うことができる。
(1)使用光源 キセノンアーク光源
(2)ランプ運転モード 連続照射、フィルタシステム デイライト、照射強度 180W/m
(3)使用温度計 ブラックパネル温度 63±3℃
(4)相対湿度 50±5%
(5)水噴霧、102分スプレーなし+18分スプレーを1サイクルとする。250時間後、500時間後に試験片を取り出して、目視で観察し、JIS K6735の耐候性用板の評価項目に従って、耐候性を評価できる。
【実施例】
【0109】
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその要旨を逸脱しない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0110】
<耐候性試験の実施方法>
JIS B7754に準拠したキセノンアークランプ式耐候性試験機を用い、以下の運転条件で行った。
(1)使用光源 キセノンアーク光源
(2)ランプ運転モード 連続照射、フィルタシステム デイライト、照射強度 180W/m
(3)使用温度計 ブラックパネル温度 63±3℃
(4)相対湿度 50±5%
(5)水噴霧、102分スプレーなし+18分スプレーを1サイクルとする。250時間後、500時間後に試験片を取り出して、目視で観察し、JIS K6735の耐候性用板の評価項目にしたがって、黄変、クラック、剥離を評価した。
【0111】
<塗膜の厚さの測定方法>
基材上に形成させた塗膜の厚さを株式会社菱化システムの非接触表面・層断面計測システム VertScan(登録商標)(形式 R3300H Lite)にて測定した。
【0112】
<紫外線ランプ>
紫外線照射は、出力密度120W/cmのアイグラフィックス株式会社製高圧水銀灯を用い、空気雰囲気下、光源下15cmの位置を、塗膜を通過させることで行った。このとき、ランプ照度及び光源下1通過あたりの照射量をアイグラフィックス株式会社製EYE UVmeter UVPF−A1で測定し、254nm、365nmでのランプ照度はそれぞれ1300mW/cm、550mW/cmで、光源下1通過当たりの照射量を254nm、365nmでそれぞれ1200mJ/cm、500mJ/cmとなるように調整した。
【0113】
<耐擦傷性試験の実施方法>
JIS K7204に規定するテーバー型の摩耗試験機を用いて、CS−10Fの摩耗輪、4.90Nの荷重で100回転させ、回転前後の曇価の差をJIS K−7136に従って評価した。
【0114】
<分子量の測定法>
ポリマーのテトラヒドロフラン溶液を作成し、東ソー TSKgel GMHXL−L カラム、RI検出器を用いて測定し、標準ポリスチレン換算の分子量として求めた。
【0115】
[参考例1]
ペンタエリスリトールトリアクリレート及びペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(ビスコート300、大阪有機化学工業株式会社製、水酸基価 130mgKOH/g)500gと、3−イソシアナトプロピルトリエトキシシラン25gとを攪拌機、冷却器及び温度計を備えた2Lフラスコに入れ、4−メトキシフェノール0.26g及びジオクチル錫ジラウレート0.26gを加えて70℃で2時間反応させた。この反応混合物を赤外線吸収スペクトルにより分析したところ、イソシアネート基に由来する2250cm−1の吸収は見られなかった。この反応混合物に、2−プロパノールを分散媒とするシリカゾル(IPA−ST、日産化学工業株式会社製、固形分30%)1167g、4−メトキシフェノール0.26g、アセチルアセトンアルミニウム0.34g及び水1.69gを加えて、70℃で4時間反応させた。その後、2−プロパノールを添加して、固形分が50質量%となるよう調整して、有機無機複合体1を得た。
【0116】
[参考例2]
攪拌機、冷却器及び温度計を備えた1Lフラスコに、メチルメタクリレート40g、ジメチルアクリルアミド25g、紫外線吸収能を有する化合物(即ち、紫外線吸収能を有する構成単位を与える成分)として2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製 RUVA−93)30g、1−メトキシ−2−プロパノール225g及びシクロヘキサノン75gを入れ、窒素置換した後、55℃に昇温した。メルカプト変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製X−22−167B)5g、さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製V−65)1gを加え、30分かけて65℃まで昇温し、3時間反応させた後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)をさらに1g追加し、さらに3時間反応させ、ついで、100℃で30分反応させて、紫外線吸収能を有するポリマーの溶液を作製した。
なお、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの290nm、300nmにおける吸光係数は、それぞれ、35800mL/(g・cm)、43700mL/(g・cm)であり、波長290nm以上300nm以下の光に対する吸光係数εは、10000mL/(g・cm)より大きかった。
【0117】
[参考例3]
攪拌機、冷却器及び温度計を備えた1Lフラスコに、メチルメタクリレート150g、ステアリルメタクリレート40g、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学株式会社製 RUVA−93)10g及び1−メトキシ−2−プロパノール300gを入れ、窒素置換した後、55℃に昇温した。2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業株式会社製V−65)2gを加え、30分かけて65℃まで昇温し、3時間反応させた後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)を2g追加し、さらに3時間反応させ、ついで、100℃で30分反応させて、紫外線吸収能を有するポリマーの溶液を作製した。
【0118】
紫外線吸収能を有するポリマーの標準ポリスチレン換算の重量平均分子量、数平均分子量は、テトラヒドロフラン溶液中、それぞれ、68000、29000であった。
【0119】
[実施例1]
はじめに、アクリル樹脂としてパラペットHR−G(株式会社クラレ製)10重量部、紫外線吸収能を有する化合物としてチヌビン213(メチル 3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートとポリエチレングリコールとの反応混合物、チバ・ジャパン株式会社製)0.5重量部、光安定剤としてチヌビン765(ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートとメチル 1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルセバケートの混合物、チバ・ジャパン株式会社製)0.15重量部、1−メトキシ−2−プロパノール146重量部を混合して配合液1を作製した。
【0120】
次に、参考例1で作成した有機無機複合体1を48重量部、多官能アクリレートであるイソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレートの混合物(東亞合成株式会社製M313)を6重量部、参考例2で作成した紫外線吸収能を有するポリマーの溶液を12重量部、光安定剤としてチヌビン765を0.15重量部、シクロヘキサノン18.5重量部を混合し、配合液2を作製した。
そして、配合液2の78.7重量部と、紫外線重合開始剤としてイルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・ジャパン株式会社製、254nmでの吸光係数ε=33200mL/(g・cm))0.83重量部とを混合し、配合液(即ち、組成物)3を作製した。
【0121】
透明プラスチック基材として厚さ3mmのポリカーボネート板(三菱エンジニアリングプラスチックス社製NF2000U)を用い、その上にアクリル樹脂を含む配合液1を乾燥後の厚さが3μmとなるようにバーコーターで塗布、乾燥させて第1層を形成した。
【0122】
当該第1層上に配合液3を乾燥後の厚さが8μm(第2層のみの厚さ)となるようにバーコーターで塗布、乾燥させた後、波長365nmでの照射量が1J/cmとなるよう紫外線を照射し、硬化させて、第2層を形成させ、積層体を製造した。
【0123】
このとき、第1層と第2層との積層部分(厚さ11μm)の光の吸収スペクトルを図1に示す。波長290nm以上300nm以下の光の吸光度は1.884〜2.204であった。さらに、耐擦傷性試験前後の曇価の差は3.2%であった。
【0124】
この積層体の耐候性試験をしたところ、500時間まで積層体に変色、クラック、剥離はなかった。
【0125】
ここで、上記の配合液1を用いて、石英板上に乾燥後の厚さが1μmとなるように第1層を形成させたときの光の吸収スペクトルを図2に示す。図2より、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度は0.1より大きかった。
【0126】
また、配合液2を石英板上に2μmの厚さになるように塗布し、膜を形成させたときの膜の光の吸収スペクトルを図3に示す。波長290nm以上300nm以下の光の吸光度は0.2より大きく、254nmでの吸光度は0.288であった。
【0127】
なお、配合液1に含まれるチヌビン213の吸光係数εのグラフを図4に示す。図2より、波長290nm以上300nm以下における吸光係数は10000mL/(g・cm)より大きかった。
【0128】
[実施例2](第1層が波長290nm以上300nm以下の光に対する吸光係数εが10000mL/(g・cm)より大きい紫外線吸収能を有し、且つ、他のモノマーと重合可能な基を有する化合物と、該他のモノマーと、を共重合させて得られたアクリル樹脂を含む実施例)
配合液1の代わりに参考例3で作製した紫外線吸収能を有するポリマー溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造した。
【0129】
製造した積層体において、第1層と第2層との積層部分(厚さ11μm)の光の吸収スペクトルを、図5に示す。図5より、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度は1.469〜1.603であって、1より大きかった。また、耐擦傷性試験前後の曇価の差は2.8%であった。さらに、この積層体を耐候性試験したところ、500時間まで積層体に変色、クラック、剥離はなかった。
【0130】
厚さが1μmとなるように石英板上に塗布して膜を形成させたときの光の吸収スペクトルを図6に示す。波長が290nm及び300nmの吸光度は、それぞれ、0.149、0.163であって、0.1よりも大きかった。
【0131】
また、参考例3で用いた紫外線吸収能を有する化合物である2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールの吸光係数εを図7に示す。波長290nm以上300nm以下において、10000mL/(g・cm)より大きかった。
【0132】
[実施例3]
上記の配合液2の78.7重量部と、紫外線重合開始剤(イルガキュア369:2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、チバ・ジャパン株式会社製、365nmでの吸光係数ε=7860mL/(g・cm))0.83重量部とを混合し、配合液(即ち、組成物)4を作製した。
【0133】
配合液2の代わりに、上記の配合液4を用いて第2層を形成した以外は、実施例2と同様にして積層体を製造した。
【0134】
製造した積層体における第1層と第2層との積層部分(厚さ11μm)の光の吸収スペクトルを図8に示す。波長290nm以上300nm以下の光の吸光度は1.885〜2.206であって、1より大きかった。また、耐擦傷性試験前後の曇価の差は2.8%であった。そして、この積層体を耐候性試験したところ、500時間まで積層体に変色、クラック、剥離はなかった。
【0135】
さらに、配合液4を用いて石英板上に2μmの厚さになるよう膜を形成した。当該膜の光の吸収スペクトルを図9に示す。波長290nm以上300nm以下の光の吸光度は0.2より大きく、波長365nmの光の吸光度は0.237であった。
【0136】
[比較例1]
はじめに、パラペットHR−Gの10重量部、チヌビン765の0.15重量部を1−メトキシ−2−プロパノール146重量部に溶解させた比較配合液1を作製した。
【0137】
配合液1の代わりに配合液比較1を用いて第1層を形成させた以外は、実施例1と同様にして積層体を製造した。この積層体の耐候性試験をしたところ、250時間で積層体が黄変した。
【0138】
比較配合液1を用いて石英板上に乾燥後の厚さが1μmとなるように第1層を形成させ、当該第1層の光の吸収スペクトルを図10に示す。波長290nm及び300nmの吸光度は、それぞれ、0.001及び0.002であった。
【0139】
[比較例2]
第1層の厚さを1μm、第2層の厚さを4μmとした以外は、実施例1と同様にして積層体を製造した。このとき、第1層と第2層との積層部分の光の吸収スペクトルを図11に示す。波長290nm以上300nm以下の光の吸光度は0.849〜0.975であった。さらに、耐擦傷性試験前後の曇価の差は5.2%であった。また、この積層体の耐候性試験をしたところ、500時間後に黄変、クラックが認められた。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明の積層体は、公知の任意の用途に用いることができるが、中でも、自動車用窓材、サンルーフ、建材シート等に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明プラスチック基材上に、少なくとも第1層と第2層とをこの順で設けた積層体であって、
第1層が紫外線吸収能を有する化合物及びアクリル樹脂を含み、
第2層が紫外線硬化樹脂を含むとともに、
第1層と第2層との積層部分における、波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が1より大きい
ことを特徴とする、積層体。
【請求項2】
厚さ1μmで形成された該第1層において、
波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が0.1より大きく、
さらに、波長290nm以上300nm以下の光に対する、該紫外線吸収能を有する化合物の吸光係数εが10000mL/(g・cm)より大きい
ことを特徴とする、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
該第1層が、
波長290nm以上300nm以下の光に対する吸光係数εが10000mL/(g・cm)より大きい紫外線吸収能を有し、且つ、他のモノマーと重合可能な基を有する化合物と、
該他のモノマーと、
を共重合させて得られたアクリル樹脂を含む
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
該第2層が、紫外線重合開始剤を含まない樹脂混合物(A)と紫外線重合開始剤(B)とを少なくとも含む組成物を紫外線硬化させて形成された層であって、
厚さ2μmで形成された該樹脂混合物(A)において、
波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が0.2より大きく、
且つ、波長254nmの光の吸光度が0.4以下であるとともに、
波長254nmの光に対する該紫外線重合開始剤(B)の吸光係数εが30000mL/(g・cm)以上である
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項5】
該第2層が、紫外線重合開始剤を含まない樹脂混合物(A)と紫外線重合開始剤(B)とを少なくとも含む組成物を紫外線硬化させて形成された層であって、
厚さ2μmで形成された該樹脂混合物(A)において、
波長290nm以上300nm以下の光の吸光度が0.2より大きく、
且つ、波長365nmの光の吸光度が0.4以下であるとともに、
波長365nmの光に対する該紫外線重合開始剤(B)の吸光係数εが400mL/(g・cm)以上である
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項6】
該透明プラスチック基材が、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、セルロースアシレート樹脂、又はシクロオレフィンポリマー樹脂である
ことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項7】
該積層体が、自動車用窓材又はサンルーフである
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体。
【請求項8】
該積層体が、建材シートである
ことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の積層体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−188686(P2010−188686A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37703(P2009−37703)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】