説明

積層体

【課題】骨材による質感を活かした美観性を表出できるとともに、可とう性、耐汚染性等においても優れた性能を有する材料を提供する。
【解決手段】基層は、平均粒子径0.01〜3mmの無機質骨材100重量部に対し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル40〜100重量%、及び当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマー0〜60重量%を樹脂構成成分とし、ガラス転移温度が5℃以下である合成樹脂を、固形分換算で1〜30重量部含む組成物の硬化物とし、模様層は、平均粒子径0.01〜3mmの無機質骨材100重量部に対し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜95重量%、及びシロキサン化合物5〜50重量%を樹脂構成成分とする合成樹脂を、固形分換算で1〜10重量部含む組成物の硬化物とし、積層体の内部には、網状体を介在させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の壁面等に用いる材料として、天然石、自然石等をイメージした意匠材への人気が高まっている。このような材料としては、アクリル樹脂エマルション等の結合材と天然骨材や人工骨材等が配合された組成物を板状に成形したものが知られている。例えば、特開平4−347251号公報(特許文献1)や特開平4−76151号公報(特許文献2)には、アクリル樹脂に骨材を混合した吹付材からなる板状物の一方の面、または板状物の中間に、合成樹脂織物よりなる補強層を積層した建築物表面仕上用シート材が記載されている。
【0003】
上記特許文献に記載の材料では、合成樹脂織物の作用により、可とう性向上等の点において一定の効果が得られる。しかし、合成樹脂織物に依存するのみでは、可とう性の効果にも限界がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−347251号公報
【特許文献2】特開平4−76151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献の材料において、十分な可とう性を得ようとすると、吹付材に対する工夫が必要となる。
第一の手段としては、骨材に対するアクリル樹脂の比率を高く設定することが挙げられる。しかし、吹付材において、このように樹脂比率を高く設定すると、骨材によって表出される自然石調の質感が減殺されるおそれがある。
第二の手段としては、合成樹脂として柔軟性の高いものを使用することが挙げられる。しかし、この場合は、シート表面に汚れが付着しやすくなり、美観性が損われるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたもので、骨材による質感を活かした美観性を表出できるとともに、可とう性、耐汚染性等においても優れた性能を有する材料を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決するために本発明者らは、鋭意検討の結果、それぞれ特定の樹脂及び無機質骨材からなる基層と模様層が積層され、その内部に網状体が介在する積層体に想到し、本発明を完成するに到った。
【0008】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.基層と模様層が積層された積層体であって、
前記基層は、平均粒子径0.01〜3mmの無機質骨材100重量部に対し、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル40〜100重量%、及び当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマー0〜60重量%を樹脂構成成分とし、ガラス転移温度が5℃以下である合成樹脂を、固形分換算で1〜30重量部含む組成物の硬化物であり、
前記模様層は、平均粒子径0.01〜3mmの無機質骨材100重量部に対し、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜95重量%、及びシロキサン化合物5〜50重量%を樹脂構成成分とする合成樹脂を、固形分換算で1〜10重量部含む組成物の硬化物であり、
積層体の内部には、網状体が介在する
ことを特徴とする積層体。
2.基層と模様層と保護層が積層された積層体であって、
前記基層は、平均粒子径0.01〜3mmの無機質骨材100重量部に対し、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル40〜100重量%、及び当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマー0〜60重量%を樹脂構成成分とし、ガラス転移温度が5℃以下である合成樹脂を、固形分換算で1〜30重量部含む組成物の硬化物であり、
前記模様層は、平均粒子径0.01〜3mmの無機質骨材100重量部に対し、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜95重量%、及びシロキサン化合物5〜50重量%を樹脂構成成分とする合成樹脂を、固形分換算で1〜10重量部含む組成物の硬化物であり、
前記保護層は透明性を有するものであり、
積層体の内部には、網状体が介在する
ことを特徴とする積層体。
【発明の効果】
【0009】
本発明の積層体は、骨材による質感を活かした美観性を表出でき、さらに、可とう性、耐汚染性等においても優れた性能を発揮することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0011】
本発明積層体は、特定の基層と模様層が積層され、その内部に網状体が介在する積層体である。本発明では、基層と模様層において、それぞれ特定の合成樹脂を結合材として用い、これら結合材と無機質骨材を組み合わせて各層を形成し、さらに網状体を介在させることにより、質感、可とう性、耐汚染性等において優れた性能を発揮することが可能となる。
【0012】
このうち、基層は、平均粒子径0.01〜3mmの無機質骨材(以下「(A)成分」ともいう)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル40〜100重量%、及び当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマー0〜60重量%を樹脂構成成分とし、ガラス転移温度が5℃以下である合成樹脂(以下「(B)成分」ともいう)を含む組成物の硬化物である。
【0013】
(A)成分としては、自然石、自然石の粉砕物等の天然骨材、及び着色骨材等の人工骨材から選ばれる少なくとも一種以上が使用可能である。具体的には、例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂、雲母及びこれらの粉砕物、陶磁器粉砕物、セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、貝殻粉砕物、金属粒、金属片等や、それらの表面を着色コーティングしたもの等が挙げられる。
【0014】
(A)成分の平均粒子径は、通常0.01mm〜3mm、好ましくは0.02〜1mmである。(A)成分の平均粒子径が上記範囲外となる場合は、可とう性、強度等の点で不利となる。なお、平均粒子径は、JIS Z8801−1:2000に規定される金属製網ふるいを用いてふるい分けを行い、その重量分布の平均値を算出することによって得られる値である。
【0015】
基層における(B)成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル40〜100重量%、及び当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマー0〜60重量%を樹脂構成成分とし、ガラス転移温度が5℃以下の合成樹脂である。この(B)成分は、本発明積層体に可とう性を付与するのに不可欠な成分である。さらに、(B)成分は、後述の(D)成分との接着性にも優れるものである。
(B)成分としては、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好適に用いられる。
【0016】
(B)成分を構成する(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
上記(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマーとしては、重合性不飽和二重結合を有する化合物が使用できる。このような化合物としては、芳香族モノマー、カルボキシル基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、水酸基含有モノマー、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、カルボニル基含有モノマー、アルコキシシリル基含有モノマー、ハロゲン化ビニリデン系モノマー、その他エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルピロリドン、塩化ビニル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、クロロプレン等が挙げられる。
このうち、芳香族モノマーは、芳香環と重合性不飽和二重結合を有する化合物であり、その具体例としては、例えばスチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0018】
(B)成分に占める各成分の比率は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル40〜100重量%(好ましくは45〜95重量%)、当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマー0〜60重量%(好ましくは5〜55重量%)である。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの比率が少なすぎる場合は、模様層との接着性等が不十分となるおそれがある。
【0019】
(B)成分は、上記化合物の混合物を重合することにより得ることができる。この際、上記各化合物を適宜組み合わせて、ガラス転移温度が5℃以下(好ましくは−50〜−5℃)となるように設定する。(B)成分のガラス転移温度が高すぎる場合は、十分な可とう性が得られ難くなる。なお、本発明におけるガラス転移温度は、Foxの計算式により求められる値である。
【0020】
基層は、(A)成分100重量部に対し、(B)成分を固形分換算で1〜30重量部(好ましくは2〜10重量部、より好ましくは2〜5重量部)含む組成物を硬化させることにより得ることができる。ここで、(B)成分の混合量が少なすぎる場合は、十分な可とう性が得られ難くなり、また模様層との接着性が不十分となる。網状体による効果が発揮され難くなる場合もある。(B)成分が多すぎる場合は、模様層に亀裂等が生じるおそれがある。
基層の厚みは、通常0.5〜5mm程度である。
【0021】
本発明積層体における模様層は、平均粒子径0.01〜3mmの無機質骨材(以下「(C)成分」ともいう)、(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜95重量%、及びシロキサン化合物5〜50重量%を樹脂構成成分とする合成樹脂(以下「(D)成分」ともいう)を含む組成物の硬化物である。
【0022】
(C)成分としては、上述の(A)成分で例示したものと同様のものが使用でき、その平均粒子径が0.01mm〜3mm(好ましくは0.02〜2mm)のものが使用できる。(C)成分の平均粒子径が小さすぎる場合は、骨材による質感を表出することが難しくなり、可とう性についても不利となる。(C)成分の平均粒子径が大きすぎる場合は、模様層表面の凹凸が著しくなり、質感、耐汚染性等の点で不利となる。
【0023】
模様層における(D)成分は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜95重量%、及びシロキサン化合物5〜50重量%を樹脂構成成分とする合成樹脂である。本発明では、上述の成分に加え、模様層における結合材として、このような(D)成分を採用することにより、質感、可とう性、耐汚染性等において優れた性能を得ることが可能となる。さらに、基層と模様層との接着性を確保することもできる。
(D)成分としては、水溶性樹脂及び/または水分散性樹脂が好適に用いられる。また、(D)成分における(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、(B)成分で例示したものと同様のものが使用できる。
【0024】
(D)成分におけるシロキサン化合物は、重合によりシリコーン樹脂を生成するものである。シロキサン化合物としては、例えば一般式RSiO(4−n)/2(式中Rは炭化水素基、n=0〜3)で表される構造単位を有するものが挙げられる。このような化合物としては、直鎖状シロキサン化合物、分岐状シロキサン化合物、環状シロキサン化合物等が挙げられ、このうち環状シロキサン化合物が好適である。環状シロキサン化合物としては、例えばヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等が挙げられる。このような環状シロキサン化合物を重合する際には、直鎖状シロキサン化合物、分岐状シロキサン化合物、アルコキシシラン化合物等を用いることもでき、重合用の触媒を適宜用いることもできる。このうち、アルコキシシラン化合物としては、分子中に1個以上のアルコキシル基を有するシラン化合物が使用でき、例えばテトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン等の他、ビニルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤等が使用できる。環状シロキサン化合物を重合する際、このようなアルコキシシラン化合物を併用することにより、(D)成分中におけるシロキサン化合物の結合が強固となり、耐水性等の塗膜物性向上の点で有利である。
【0025】
(D)成分の樹脂成分中に占めるシロキサン化合物の比率は、通常5〜50重量%、好ましくは15〜40重量%である。シロキサン化合物がこのような比率であれば、可とう性、耐汚染性において優れた物性が得られ、さらに質感を高めることもできる。シロキサン化合物の比率が上記比率を逸脱する場合は、このような効果が得られ難くなる。シロキサン化合物の比率が高すぎる場合は、基層と模様層との接着性に支障をきたすおそれもある。
【0026】
(D)成分は、上記成分の混合物を重合することにより得ることができる。(D)成分においては、(D)成分と共重合可能なモノマーが構成成分に含まれていてもよい。この際、(D)成分、及び(D)成分と共重合可能なモノマーによって構成されるアクリル樹脂部のガラス転移温度は、通常−20〜20℃(好ましくは−15〜15℃)となるように設定することが望ましい。
【0027】
模様層は、(C)成分100重量部に対し、固形分換算で(D)成分を1〜10重量部(好ましくは2〜5重量部)含む組成物を硬化させることにより得ることができる。ここで、(D)成分の混合量が少なすぎる場合は、十分な可とう性、耐汚染性等が得られ難くなり、基層との接着性が低下するおそれもある。また、網状体による効果が発揮され難くなる場合もある。(D)成分が多すぎる場合は、骨材による質感が減殺されやすくなる。
模様層の厚みは、通常0.5〜5mm程度である。
【0028】
本発明積層体の内部には、網状体が介在する。このような網状体は、本発明積層体に可とう性、強度等を付与するものである。本発明において、網状体は積層体内部に介在していればよいが、基層と模様層の界面近傍に介在することが望ましい。
【0029】
網状体としては、各種の天然繊維、合成繊維等からなる繊維質網状体が好適である。このような繊維質網状体を構成する繊維としては、例えば、パルプ繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリエチレン繊維、ポリアリレート繊維、PBO繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、塩化ビニル繊維、セルロース繊維等の有機質繊維;ロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維、カーボン繊維、炭化珪素繊維等、また鉄、銅等の金属細線等の無機質繊維が挙げられる。このうち、本発明では無機質繊維が好適であり、とりわけガラス繊維が好適である。
【0030】
繊維質網状体としては、0.05mm〜2mm(好ましくは0.1〜1.5mm)程度の径の繊維束が、1〜5mm(好ましくは1.5〜3mm)の間隔で網目状に配列された構造を有するものが好適である。特に、格子状等の規則性をもった網目構造を有するものが好ましい。このような形態であれば、網目の中に基層及び/または模様層が食い込みやすく、可とう性、強度等を高めることができる。なお、ここに言う繊維束の間隔とは、繊維束間の空隙部分の幅のことである。
【0031】
本発明積層体は、基層の上に模様層が積層される限り、その製造方法については特に限定されるものではないが、例えば以下の方法で製造することができる。
(1)型枠の内面に模様層用組成物を塗付した後、網状体を載置ないし埋め込み、さらに基層用組成物を積層し、硬化後に脱型する方法。
(2)型枠の内面に基層用組成物を塗付した後、網状体を載置ないし埋め込み、さらに模様層用組成物を積層し、硬化後に脱型する方法。
【0032】
なお、基層用組成物としては、(A)成分及び(B)成分を含むペースト状混合物が使用でき、模様層用組成物としては、(C)成分及び(D)成分を含むペースト状混合物が使用できる。これら組成物は、必要に応じ、例えば顔料、繊維、可塑剤、抗菌剤、触媒、吸着剤、防黴剤、防虫剤、難燃剤、架橋剤、滑剤、造膜助剤、撥水剤、親水化剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等が含まれるものであってもよい。
【0033】
上記(1)、(2)において使用する型枠としては、例えばシリコン樹脂製、ウレタン樹脂製、金属製等の型枠、あるいは離型紙を設けた型枠等が使用できる。
また、(1)では型枠側が積層体表面となるため、型枠内側の形状を調整することで、積層体表面に所望の凹凸模様を付与することができる。一方、(2)では型枠側が積層体の裏面となる。この裏面に凹凸が形成されるようにすれば積層体の接着性を高めることもできる。(2)では、模様層の乾燥前に種々の凹凸模様等を形成することもできる。
上記(1)、(2)において各材料を塗付する際には、例えばスプレー、ローラー、こて、レシプロ、コーター、流し込み等の手段を用いた方法を採用することができる。網状体を埋め込む場合は、ローラー、コテ等を用いることができる。また、基層用組成物や模様層用組成物を硬化させる際には、加熱することもできる。
積層体の厚みは、通常1〜10mm程度であればよい。
【0034】
また、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、模様層の装飾性等を高める目的で、模様層に対し、平均粒子径3mm超の無機質骨材を混合したり、散布することもできる。このような骨材としては、例えば前述の骨材と同材質のもの等が使用できる。
上記(1)、(2)においては、脱型後、模様層の表面に透明上塗材等を塗付することも可能である。このような透明上塗材によって、模様層の表面に保護層を形成することができ、本発明積層体の耐水性、耐久性等を高めることができる。保護層の透明性は、模様層が視認可能な程度であればよい。保護層の厚みは、通常0.1〜200μm程度である。
【0035】
保護層は、各種合成樹脂を必須成分として含む透明上塗材により形成することができる。合成樹脂としては、例えば酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂等、あるいはこれらの複合系等を挙げることができる。これらは架橋反応性を有するものであってもよい。また、合成樹脂の形態は特に限定されず、1液型、2液型のいずれであってもよい。
【0036】
保護層における合成樹脂としては、樹脂構成成分として(メタ)アクリル酸アルキルエステルを40重量%以上含むものが望ましい。このような合成樹脂は、保護層との付着性等の点で好適である。特に好ましい合成樹脂としては、例えば前述の(D)成分等が挙げられる。保護層における合成樹脂として(D)成分を使用した場合は、可とう性、耐汚染性、質感等の点において好適である。
【0037】
保護層を形成する透明上塗材としては、上記合成樹脂に加え、シリケート化合物及び/またはシリカを含むものも好ましく使用することができる。このような透明上塗材を使用すれば、模様層の質感を保持しつつ、保護層の耐汚染性等を高めることができる。
【0038】
シリケート化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラsec−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、テトラフェノキシシラン等のテトラアルコキシシラン化合物、あるいはこれらの縮合物等が挙げられる。このような化合物を、上記シリケート化合物以外のアルコキシシラン化合物や、アルコール類、グリコール類、グルコールエーテル類、ポリオキシアルキレン基含有化合物等で変性したものも使用できる。
シリケート化合物の混合量は、保護層の性能を勘案して適宜設定すればよいが、合成樹脂の固形分100重量部に対し、通常0.1〜50重量部(好ましくは0.5〜30重量部)程度とすればよい。
【0039】
シリカとしては、粒子径1〜200nm(好ましくは5〜100nm)程度の粒状物が使用できる。このようなシリカは、例えば、珪酸ソーダ、珪酸リチウム、珪酸カリウム等の珪酸塩、あるいは上述のシリケート化合物等を原料として製造することができる。保護層における成分としてシリカを使用した場合は、表面硬度を高めることができ、耐擦傷性等の点でも好適である。
シリカの混合量は、上述のような保護層の諸性能を勘案して適宜設定すればよいが、合成樹脂の固形分100重量部に対し、通常5〜500重量部(好ましくは10〜300重量部)程度とすればよい。
【0040】
保護層を形成する透明上塗材は、上述の成分の他に、例えば着色顔料、体質顔料、艶消し剤、可塑剤、抗菌剤、触媒、吸着剤、防黴剤、防虫剤、難燃剤、架橋剤、滑剤、造膜助剤、撥水剤、親水化剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、ブロッキング防止剤等が含まれるものであってもよい。
【0041】
本発明積層体は、主に建築物の仕上げに適用できる。すなわち、流通時には、シート状成形体として取り扱い、これを建築物の各部位に施工することで仕上げを行うことができる。具体的には、住宅、マンション、学校、病院、店舗、事務所、工場、倉庫、食堂等における壁、間仕切り、扉、天井等に適用できる。このような部位を構成する基材としては、例えば、石膏ボード、合板、コンクリート、モルタル、タイル、繊維混入セメント板、セメント珪酸カルシウム板、スラグセメントパーライト板等が挙げられる。これら基材は、その表面に既存塗膜を有するものや、既に壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。本発明積層体は、このような基材に対し、基層側が接するように施工する。
【0042】
本発明積層体を施工する際には、接着剤、粘着剤、粘着テープ、釘、鋲等を用いて基材に貼着すればよい。その他、ピン、ファスナー、レール等を用いて固定化することもできる。また、本発明積層体は、施工時に積層体を任意の形状に切断することも可能であり、切断面の小口処理等を適宜行うこともできる。
【実施例】
【0043】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0044】
基層用組成物、模様層用組成物を製造には、以下の原料を用いた。
【0045】
・骨材1:寒水石(平均粒子径:0.3mm)
・骨材2:重質炭酸カルシウム(平均粒子径:0.03mm)
・骨材3:着色珪砂(白色珪砂と茶色珪砂と黒色珪砂の混合物、平均粒子径:0.3mm)
・樹脂1(水分散性樹脂、固形分:50重量%、樹脂構成成分:2−エチルヘキシルアクリレート,スチレン及びメタクリル酸の乳化重合物(重量比率56:42:2)、ガラス転移温度:−19℃)
・樹脂2(水分散性樹脂、固形分:50重量%、樹脂構成成分:2−エチルヘキシルアクリレート,スチレン及びメタクリル酸の乳化重合物(重量比率43:55:2)、ガラス転移温度:2℃)
・樹脂3(水分散性樹脂、固形分:50重量%、樹脂構成成分:2−エチルヘキシルアクリレート,スチレン及びメタクリル酸の乳化重合物(重量比率35:63:2)、ガラス転移温度:16℃)
【0046】
・樹脂4(水分散性樹脂、固形分:50重量%、樹脂構成成分:メチルメタクリレート,t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,シロキサン化合物(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン)及びメタクリル酸の乳化重合物(重量比率23:15:20:18:21:3)、アクリル樹脂部のガラス転移温度:2℃)
・樹脂5(水分散性樹脂、固形分:50重量%、樹脂構成成分:メチルメタクリレート,t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,シロキサン化合物(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン)及びメタクリル酸の乳化重合物(重量比率25:18:24:20:10:3)、アクリル樹脂部のガラス転移温度:1℃)
・樹脂6(水分散性樹脂、固形分:50重量%、樹脂構成成分:メチルメタクリレート,t−ブチルメタクリレート,n−ブチルアクリレート,2−エチルヘキシルアクリレート,シロキサン化合物(ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン)及びメタクリル酸の乳化重合物(重量比率28:20:25:22:2:3)、アクリル樹脂部のガラス転移温度:2℃)
【0047】
(基層用組成物1)
上述の骨材1、骨材2、及び樹脂1を固形分比率が92:8:3となるように均一に混合して、基層用組成物1を得た。
(基層用組成物2)
上述の骨材1、骨材2、及び樹脂2を固形分比率が92:8:3となるように均一に混合して、基層用組成物2を得た。
(基層用組成物3)
上述の骨材1、骨材2、及び樹脂3を固形分比率が92:8:3となるように均一に混合して、基層用組成物3を得た。
【0048】
(模様層用組成物1)
上述の骨材3、及び樹脂4を固形分比率が100:3となるように均一に混合して、模様層用組成物1を得た。
(模様層用組成物2)
上述の骨材3、及び樹脂5を固形分比率が100:3となるように均一に混合して、模様層用組成物2を得た。
(模様層用組成物3)
上述の骨材3、及び樹脂6を固形分比率が100:3となるように均一に混合して、模様層用組成物3を得た。
【0049】
(模様層用組成物4)
上述の骨材3、及び樹脂1を固形分比率が100:3となるように均一に混合して、模様層用組成物4を得た。
(模様層用組成物5)
上述の骨材3、及び樹脂1を固形分比率が100:14となるように均一に混合して、模様層用組成物5を得た。
(模様層用組成物6)
上述の骨材3、及び樹脂2を固形分比率が100:3となるように均一に混合して、模様層用組成物6を得た。
【0050】
(実施例1)
離型剤を塗布した型枠(縦450mm×横450mm×深さ3〜5mm)の内面に、模様層用組成物1を流し込み、その直後、網状体(格子状ガラス繊維網状体、繊維束の径:0.4mm、繊維束どうしの間隔2.5mm、網目形状:正方形)を載置し、ローラーで押圧した。次いで、24時間後、基層用組成物1を流し込み、こてを用いて平滑にならした。23℃下で24時間乾燥後、脱型して積層体を製造した。この積層体の基層の厚みは約2mm、模様層の厚みは約1〜3mmであった。得られた積層体につき、質感、可とう性、耐汚染性を確認した。
【0051】
質感については、積層体における模様層の外観を観察し、骨材の質感が十分に表出されているものを「A」、骨材の質感が減殺されているものを「D」とする4段階(優A>B>C>D劣)にて評価を行った。
可とう性については、積層体の両端を持って折り曲げを繰り返し、十分な可とう性を有するものを「A」、可とう性に劣るものを「D」とする4段階(優A>B>C>D劣)にて評価を行った。
耐汚染性については、積層体を大阪府茨木市で3ヶ月間屋外曝露した後、その表面状態を観察し、汚れの程度が軽微であったものを「A」、汚れの程度が著しかったものを「D」とする4段階(優A>B>C>D劣)にて評価を行った。
結果を表1に示す。
【0052】
(実施例2〜3、比較例1〜5)
基層用組成物、模様層用組成物として、それぞれ表1に示すものを使用した以外は、実施例1と同様の方法で積層体を製造し、質感、可とう性、耐汚染性を評価した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
(透明上塗材1)
上記樹脂4に水を混合し、固形分の濃度を20重量%に調製して、透明上塗材1を得た。
【0055】
(透明上塗材2)
樹脂7(水分散性樹脂、固形分:50重量%、樹脂構成成分:2−エチルヘキシルアクリレート,メチルメタクリレート及びメタクリル酸の乳化重合物(重量比率25:74:1)、ガラス転移温度:32℃)に水分散性シリカ(粒子径10〜20μm、固形分30重量%)を固形分比率が100:50となるように混合し、さらに水及び造膜助剤を加えて固形分濃度を20重量%に調製して、透明上塗材2を得た。
【0056】
(透明上塗材3)
樹脂8(溶剤可溶型樹脂、固形分:50重量%、樹脂構成成分:n−ブチルアクリレート及びメチルメタクリレートの重合物(重量比率30:70)、ガラス転移温度:31℃)に溶剤を加えて固形分濃度を18重量%に調製した後、シリケート化合物(テトラメトキシシラン縮合物)を混合して透明上塗材3を得た。この際、シリケート化合物は、樹脂固形分とシリケート化合物の固形分比率が100:10となるように混合した。
【0057】
(実施例4)
離型剤を塗布した型枠(縦450mm×横450mm×深さ3〜5mm)の内面に、模様層用組成物1を流し込み、その直後、網状体(格子状ガラス繊維網状体、繊維束の径:0.4mm、繊維束どうしの間隔2.5mm、網目形状:正方形)を載置し、ローラーで押圧した。次いで、24時間後、基層用組成物1を流し込み、こてを用いて平滑にならし、23℃下で24時間乾燥した。脱型後、得られた模様層の表面に、透明上塗材1をスプレー塗装し、23℃下で24時間乾燥することにより積層体を製造した。この積層体の基層の厚みは約2mm、模様層の厚みは約1〜3mm、透明上塗材による保護層の厚みは10μmであった。
得られた積層体につき、実施例1と同様の方法で、質感、可とう性、耐汚染性を評価した。実施例4の評価はいずれも「A」であったが、耐汚染性、可とう性については実施例1よりもさらに良好な状態であった。
【0058】
(実施例5)
透明上塗材1に代えて透明上塗材2を使用した以外は、実施例4と同様の方法で積層体を製造した。
得られた積層体につき、実施例1と同様の方法で、質感、可とう性、耐汚染性を評価した。実施例5の評価はいずれも「A」であったが、耐汚染性については実施例1、4よりもさらに良好な状態であった。
【0059】
(実施例6)
透明上塗材1に代えて透明上塗材3を使用した以外は、実施例4と同様の方法で積層体を製造した。
得られた積層体につき、実施例1と同様の方法で、質感、可とう性、耐汚染性を評価した。実施例6の評価は、いずれも「A」であったが、耐汚染性については実施例1、4よりもさらに良好な状態であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基層と模様層が積層された積層体であって、
前記基層は、平均粒子径0.01〜3mmの無機質骨材100重量部に対し、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル40〜100重量%、及び当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルと共重合可能なモノマー0〜60重量%を樹脂構成成分とし、ガラス転移温度が5℃以下である合成樹脂を、固形分換算で1〜30重量部含む組成物の硬化物であり、
前記模様層は、平均粒子径0.01〜3mmの無機質骨材100重量部に対し、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル50〜95重量%、及びシロキサン化合物5〜50重量%を樹脂構成成分とする合成樹脂を、固形分換算で1〜10重量部含む組成物の硬化物であり、
積層体の内部には、網状体が介在する
ことを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2010−253924(P2010−253924A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241981(P2009−241981)
【出願日】平成21年10月21日(2009.10.21)
【出願人】(599071496)ベック株式会社 (98)
【Fターム(参考)】