説明

積層体

【課題】耐熱性、耐環境性、機械強度、絶縁性に優れる二軸配向PPSフィルムと芳香族重合体からなる繊維シートとの熱融着積層体(接着剤層を介していない)において、従来の課題である層間密着力の向上と耐熱クラスH種レベルの高耐熱性、耐環境性を両立させ、高絶縁性、加工性、ワニス含浸性を付与した高機能電気絶縁材を提供すること。
【解決手段】二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(A層)の少なくとも片方の面に融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シート層(B層)が接着剤層を介することなく積層された積層体であって、A層の厚さをaμm、B層の厚さをbμmとした時の該積層の構成厚さ比率(a/b)が0.25〜5.00であり、かつA層の広角X線回折法によって測定した相対結晶化指数5〜30、EdgeおよびEndの2方向から各々測定した配向度が何れも0.15〜0.60である積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体に関し、さらに詳しくは、二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムと融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シートが接着剤層を介することなく積層された高耐熱性電気絶縁材料に適した積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業用機器や自動車に用いられる電気機器の信頼性や高機能化の要求の高まりから、電気機器に用いられる絶縁材も高い耐熱性(長期)、耐加水分解性、耐薬品性、電気絶縁の信頼性、熱拡散性等を兼ね備えた機能材料が求められるようになってきている。産業用機器、例えば風力発電の発電機は、小型化、大容量化、絶縁の信頼性等が必要とされるし、自動車では、ハイブリッド車(HV車)や電気自動車(EV車)および燃料電池車(FC車)が急激に普及しており、その駆動系はエンジンからモータに移行しつつあり、更に高い電圧での駆動、高い効率、高信頼性等が求められる一方で、低コスト化も求められてきた。これらに用いられる絶縁材には、耐熱クラスH種(180℃長期使用)レベルの高耐熱性はもちろんであるが、耐熱性が維持できる環境条件の範囲が広いことも求められる。すなわち、水分やオイル等の存在下でも耐熱性が低下しないことが重要である。更に電気絶縁性は単に絶縁性が高いのみでなく、放電に対する耐性(部分放電電圧:放電開始電圧が高いこと)も求められている。また、電気機器の運転中に発生する熱は運転効率を低下させ、他部品へも悪影響をもたらすため、絶縁材には熱拡散性も要求されるようになってきている。そのためには絶縁材の薄膜化が必要であるが、薄膜化すると、加工性が低下し易くなり、経済性の点で劣る。また、絶縁材の薄膜化はモータに用いられるコイルの占積率が向上し高効率化にも繋がる。
【0003】
従来この分野に使用されてきた高耐熱性の絶縁材としては、下記のものが知られている。
(1)芳香族ポリアミド紙単体を電気絶縁材として用いられてきたことは良く知られている(例えば非特許文献1参照)。
(2)上記の芳香族ポリアミド紙と耐熱フィルム(ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリフェニレンスルフィドフィルム、ポリイミドフィルム等)とを接着剤を介して積層した積層体も知られている(例えば特許文献1参照)。ポリイミドフィルム等の耐熱フィルムを絶縁材として用いることもこの分野では公知である。
(3)高耐熱絶縁材である芳香族ポリアミド紙と未延伸ポリフェニレンスルフィドシート(以下、未延伸PPSシートと略称する場合がある。)が接着剤を介することなく熱融着によって積層する積層体も提案されている(例えば特許文献2参照)。
(4)更に、上記芳香族ポリアミド紙と二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルムがプラズマ処理によって熱融着積層したものを耐熱絶縁材料に用いることも提案されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60−63185号公報
【特許文献2】特開平3−96341号公報
【特許文献3】特開2009−138312号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】電気学会技術報告 第907(A部門)2002年12月20日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来用いられてきた絶縁材は下記のような問題点を有しており、今後ますます機能性、高信頼性および加工性が要求されるこの分野への適用が困難になってきている。
【0007】
上記(1)の芳香族ポリアミド紙(例えば、デュポン社の商品名「ノーメックス」(登録商標))は、耐熱クラスH種以上の高耐熱性、耐環境性に優れており、繊維シートであるため絶縁ワニスやオイルとの含浸性にも優れるが、繊維シートであるために電気絶縁性が低く、腰が弱いためにモータ等の狭部への絶縁材の挿入加工性が悪かった。そのために極厚ものを手で挿入加工して用いることが多かった。このことは、自動挿入が必須の大量生産に対応できずコストアップに繋がる。更に、該素材は熱伝導性が低くて熱拡散性にも劣るし、極厚物しか適用できないと更に熱拡散性に不利となる。
【0008】
上記(2)の芳香族ポリアミド紙と耐熱フィルムが接着剤を介して積層された積層体は、上記の芳香族ポリアミド紙単体に比べて、腰が強く、絶縁性に優れており、芳香族ポリアミド紙の耐熱性、耐環境性およびワニス含浸性が活かされるため、上記(1)についての問題点は解消される。しかし、使用される耐熱フィルムが加水分解し易かったり、接着剤層が耐熱性、耐環境性の信頼性に乏しかったり、該接着剤の劣化がフィルム素材に悪影響し該素材の劣化が急激に加速する場合もあり、今後要求される機能性、高信頼性への追従は難しい。また、接着剤の選定を最適化しても、絶縁システムの設計ごとに接着剤も設計し直す必要があり、絶縁材を組み込む側も新機種ごとに信頼試験が必要でコストアップに繋がるという問題もある。
【0009】
上記(3)の芳香族ポリアミド紙と未延伸PPSシートとの熱融着積層体は、接着剤の設計や影響性は無視でき問題ない。更に該繊維シートと未延伸PPSシートの密着力も高く絶縁材の挿入加工性もよい。しかし、未延伸PPSシート層が加熱によって熱結晶化が進み機械強度の低下が速くなる。すなわち、期待されるH種レベルの長期耐熱性、耐湿熱性に問題があった。
【0010】
上記(4)の芳香族ポリアミド紙と二軸配向PPSフィルムとの熱融着積層体は、強靱で加熱による機械強度低下が少ない二軸配向PPSフィルムを用いているので、上記(3)について記載した機械強度の熱劣化は起こりにくく長期の耐熱性および耐湿熱性および絶縁性に優れる。しかし、各層間の密着力がばらつくために、絶縁材の挿入加工時に剥がれる場合があった。また、積層の厚み構成によってはH種レベルの高耐熱性と電気絶縁性の両立が困難な場合があり、この分野の適用が制限されていた。
【0011】
そこで、本発明の課題は、上記の問題点に鑑み、耐熱性、耐環境性(熱、水、薬品、オイル等の雰囲気での耐性)、機械強度、絶縁性に優れる二軸配向PPSフィルムと芳香族重合体からなる繊維シートとの熱融着積層体(接着剤層を介していない積層体)において、従来の課題である層間密着力の向上とH種レベルの高耐熱性、耐環境性の両立および絶縁の信頼性の向上、絶縁材挿入加工性の改善を達成でき、良好なワニス含浸性を有する高機能電気絶縁材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明に係る積層体は、全フェニレンスルフィド単位の80モル%以上がパラフェニレンスルフィド単位であるポリフェニレンスルフィド樹脂を含む樹脂組成物からなる二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(以下、二軸配向PPSフィルムと略称する場合がある。)(A層)の少なくとも片方の面に融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シート層(B層)が接着剤層を介することなく積層された積層体であって、A層の総厚みをaμm、B層の総厚みをbμmとした時の該積層体の構成厚さ比率(a/b)が0.25〜5.00であり、かつ該二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(A層)の広角X線回折法によって測定した相対結晶化指数が5〜30、EdgeおよびEndの2方向から各々測定した配向度OFが何れも0.15〜0.60であることを特徴とするものからなる。
【0013】
上記本発明に係る積層体においては、上記融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シート層(B層)の嵩密度が0.6〜1.0であることが好ましい。
また、上記融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シート層(B層)は、例えば芳香族ポリアミド系繊維シートからなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る積層体によれば、高耐熱性、耐環境性(幅広い環境条件の下でも本積層体の有する耐熱性を設計上見積もれる)、機械強度(加工性)に優れ、層間密着力の向上とH種レベルの高耐熱性、耐環境性が高いレベルで兼ね備えられ、高い絶縁の信頼性(部分放電電圧、放電開始電圧の信頼性も含む)、加工性、ワニス含浸性を有する高機能電気絶縁材を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る積層体について、望ましい実施の形態とともに、詳細に説明する。
本発明に係る積層体は、全フェニレンスルフィド単位の80モル%以上がパラフェニレンスルフィド単位であるポリフェニレンスルフィド樹脂を含む樹脂組成物からなる二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(A層)の少なくとも片方の面に融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シート層(B層)が接着剤層を介することなく積層された積層体であって、A層の厚さをaμm、B層の厚さをbμmとした時の該積層体の構成厚さ比率(a/b)が0.25〜5.00であり、かつ該二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(A層)の広角X線回折法によって測定した相対結晶化指数が5〜30、EdgeおよびEndの2方向から各々測定した配向度が何れも0.15〜0.60であることを特徴とした積層体である。
【0016】
本発明におけるポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略称する場合がある。)とは、構造単位(下記化1)で示される繰り返し単位を全フェニレンスルフィド単位の80モル%以上(好ましくは85モル%、更に好ましくは90モル%以上)含んだ重合体である。
【0017】
【化1】

【0018】
かかる重合体は、パラフェニレンスルフィド単位が80モル%未満(好ましくは85モル%未満、更に好ましくは90モル%未満)ではポリマーの結晶性が充分でなく該ポリマーからなる二軸配向PPSフィルムの特長である耐熱性、耐環境性、熱寸法安定性、機械特性等が損なわれる。繰り返し単位の20モル%未満(より好ましくは15モル%未満、更に好ましくは10モル%未満)であれば共重合可能なスルフィド単位を含有していても差し支えない。この共重合の仕方はランダム共重合体であっても、ブロック共重合体であってもよい。また、PPS樹脂を含む樹脂組成物とは上記のPPSを60質量%以上、好ましくは70質量%以上含む組成物をいう。PPSの含有量が60質量%未満では、該樹脂組成物の結晶性、熱転移温度等が低くなり、該組成物からなるフィルムの特徴である耐熱性、耐環境性、熱寸法安定性、機械特性等を損なう。該組成物中の残りの40質量%未満であればPPS以外のポリマー、無機や有機のフィラー、滑剤、着色剤、紫外線防止剤等の添加剤が含まれることも、本発明の目的を害さない範囲なら差し支えない。該組成物の溶融粘度は、温度300℃、剪断速度200sec-1のもとで500〜12000ポイズ、より好ましくは700〜10000ポイズの範囲がフィルムの成形性の点で好ましい。
【0019】
二軸配向PPSフィルム層(A層)は、上記ポリマーを主成分とした樹脂組成物を溶融成形してシート状とし、二軸延伸、熱処理してなるフィルムである。該二軸配向PPSフィルム層(A層)の厚さは、積層の加工性、電気絶縁性、絶縁システムへの加工性、積層体としての高耐熱性等から10〜650μm、より好ましくは15〜550μmの範囲が望ましい。もちろん、上記二軸配向PPSフィルムが数層熱融着積層されて本発明の積層体を構成していても本発明の目的を阻害しない範囲であれば差し支えない。
【0020】
本発明の積層体を形成する積層後の二軸配向PPSフィルム層(A層)の構造パラメーターとして次の2つの要件が満たされる必要がある。まず第1の要件について、積層後の二軸配向PPSフィルム層(A層)の相対結晶化指数は、広角X線によるフィルムの回折プロフィルにより(200)のピークの最大強度(I200)と2θ=25°での強度(I25)を測定し、両者の比I200/I25をもって相対結晶化指数と定義するが、この値が5〜30の範囲が必要である。この値が5未満であると本発明の二軸配向PPSフィルム層(A層)の熱結晶化による機械強度の低下が激しく、本発明の積層体として長期耐熱性、耐湿熱性が低下してしまう。一方、この値が30を越えると結晶領域が大きく後述するプラズマ処理等の効果が低減し積層体の層間密着力が低下する。その結果、絶縁システムへの加工性が低下したり、積層体としての耐熱性や耐環境性等が低くなってしまう。
【0021】
また、第2の要件について、積層後の二軸配向PPS層(A層)の配向度は、広角X線回折法で求めた配向度OFがEnd方向およびEdge方向のいずれもが0.15〜0.60であることが必要である。かかる範囲とすることで、層間密着力、耐熱性および機械強度を保持することができる。すなわち、この値が0.15未満では本発明の積層体の層間密着力を向上させる効果が低下し、0.60を越えると積層体の長期の耐熱性や機械強度が低下してしまう。ここにEdge方向(またはEnd方向)から測定した配向度とは、フィルム面に平行でかつ幅方向(または長手方向)にも平行な方向からのX線入射により積層後の二軸配向PPSフィルム層(A層)の結晶の(200)面からの回折の強度を検出器(シンチレーションカウンター)によって求め、赤道線上を半径方向に走査したときの強度(Iφ(0゜))と同じく30°方向での強度(Iφ(30゜))の比Iφ(30゜)/Iφ(0゜)によって定義されるものである。
【0022】
本発明の積層体を形成する積層後の二軸配向PPSフィルム(A層)は上記2つのパラメーターが満足されていないと本発明の目的を達成することができない。相対結晶化指数のみが5未満であると、機械強度が低く、耐熱性や耐環境性が達成できないし、この状態で配向度OFが0.15未満になると、上記の問題に加えて熱寸法安定性が低下して積層体の熱融着加工時に積層体が熱変形(熱皺が発生)する場合がある。一方、該配向度が0.60を越えると長期耐熱性や耐環境性が低下し本発明の目的が達成できない。また、相対結晶化指数のみが30を越えると、プラズマ処理等の表面処理効果が低下して積層体の密着力が低くなってしまう。また、この状態で配向度OFが0.15未満になっても積層体の密着力が低くなるし、逆に該配向度が0.60を越えると本発明の積層体の密着力が低下し、機械強度も低下し(脆くなり)絶縁材としたときの折り曲げ加工等でクラックが発生して絶縁性が低下する。更に熱融着時の温度で積層体が熱変形しやすくなる。
【0023】
また、本発明において二軸配向PPSフィルム層は、広角X線回折法で求められ、(200)回折ピークの半価値からschellerの式を使用して得られる見掛けの結晶化粒子サイズ(ACS)は40〜120の範囲となることが耐熱性、耐環境性、機械強度の保持の上で好ましい。
【0024】
次に、本発明の積層体を形成する繊維シート層(B層)とは、融点を有しない芳香族重合体からなることが必要である。ここで融点を有しない芳香族重合体とは、該重合体を構成する主成分の分解点がその理論上融点より低いと言うことを意味する。言うまでもなく該重合体を溶融状態で製糸すること(溶融紡糸)は不可能な重合体であり、代表例を挙げるならば次のものがある。
【0025】
(1)芳香族ポリアミド
芳香族カルボン酸と芳香族ジアミンとの縮合によって得られる重合体。例えば、イソフタル酸クロライドとメタフェニレンジアミンを極性溶媒中で縮合して得られるポリメタフェニレンイソフタルアミド。
(2)芳香族アミドカルボン酸を縮合して得られる重合体。
(3)更に下記のものが挙げられる。
(a)上記(1)と(2)の共重合体、(b)芳香族ポリアミドイミド、(c)芳香族ポリイミド、(d)芳香族ポリエステルイミド、(e)芳香族ポリアミドイミダゾールが挙げられ、中でも、(1)の芳香族ポリアミドが、本発明の積層体を形成する二軸配向PPS層(A層)と繊維シート層(B層)の層間の密着性、機械特性(腰の強さ)、絶縁システムへの挿入加工性および電気絶縁性とワニスやオイルとの含浸性の面で特に好ましい。
【0026】
本発明に用いる繊維シート(B層)は、前記重合体の繊維の集合体によって構成された薄葉体であって、通常、紙、不織布、布、フェルトなどと呼ばれるものの総称である。繊維シート(B層)の厚さは30〜200μm、さらには、40〜100μmの範囲が積層体の加工性、機械特性、電気絶縁性の面で好ましい。
【0027】
更に、本発明の繊維シート(B層)は後述する方法で測定した嵩密度が0.6〜1.0であり、さらには0.70〜0.95であることが好ましい。嵩密度は、JIS規格C2111に準じ、カットサンプルサイズ20cm×20cmの重量を直示天秤にて測定し、サンプル内のランダムな5点の厚みの平均値を出し(押さえ圧3.5Nのシックネスゲージを使用)、密度(g/cm3)=重量(g)/面積(400cm2)×厚み(cm)から算出した。
【0028】
本発明の積層体は、二軸配向PPSフィルム層(A層)と繊維シート層(B層)とが接着剤層を介さず積層されることが必要である。接着剤層とは基本的に本発明の二軸配向PPSフィルム層(A層)と繊維シート層(B層)をこれら以外の物質で構成され接着を目的に設けられる層をいう。すなわち、本発明の積層体は、基本的に二軸配向PPSフィルム層(A層)と繊維シート層(B層)の界面にはこれらを構成する物質以外の構成物は存在しないということになる。
【0029】
本発明の積層体を構成する二軸配向PPSフィルム層(A層)と繊維シート層(B層)の厚さは、二軸配向PPSフィルム層(A層)の総厚さをaμm、繊維シート層(B層)の総厚さをbμmとすると、その構成厚さ比率(a/b)は、0.25〜5.00であることが必要であり、より好ましくは0.30〜4.50である。これにより、高耐熱性、絶縁性および絶縁材の加工性が向上する。すなわち、この層構成厚さ比率(a/b)が0.25未満では絶縁破壊強度が低く、今後要求される高機能、高信頼性絶縁材として適用できず、また該数値が5.00を越えると繊維シート層(B層)によって保護されている高耐熱性の保持効果が薄れ耐熱性が低下し、本発明でいう耐熱クラスがH種レベルの長期耐熱性が得られなくなる。本発明の積層体は、A層/B層、A層/B層/A層、B層/A層/B層の積層構成を基本構成とするが、A層とA層またはB層とB層を数層積層してもよく(例えば、B層/A層/A層/B層またはA層/B層/B層/A層のように)、A層とB層が交互にまたはランダムに数層積層されてあってもよい。また、本発明の積層体の総厚みは50〜700μmが好ましく、好ましくは80〜500μmの範囲が、積層体の加工性、絶縁材の加工性やモータへの挿入性等の面で好ましい。
【0030】
本発明の積層体の表面に、別のフィルムや繊維シートや樹脂、金属等が積層されてあっても本発明の目的を阻害しない範囲であればよい。
【0031】
次に、本発明の積層体の製造方法について、その一例を述べるが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。
まず、本発明において用いられるPPSは、硫化アルカリとp−ジクロルベンゼンを極性溶媒中で高温高圧下に反応させる方法を用いる。特に、硫化ナトリウムとp−ジクロルベンゼンをN−メチル−ピロリドン等のアミド系高沸点極性溶媒中で反応させるのが好ましい。この場合、重合度を調整するために苛性アルカリ、カルボン酸アルカリ金属塩などのいわゆる重合助剤を添加して、230〜280℃で反応させるのが特に好ましい。重合系内の圧力及び重合時間は使用する助剤の種類や量及び所望する重合度などによって適宜決定される。さらに得られたポリマーを重合中の副生塩、重合助剤の除去を目的に金属イオンを含まない水や有機溶媒で洗浄しておくことが好ましい。次に上記で得られたPPS樹脂に無機粒子等を混合し樹脂組成物を得る。
【0032】
次に二軸配向PPSフィルム層(A層)を得るために、上記で得られたPPS樹脂組成物を二軸延伸フィルムにする。PPS樹脂組成物を乾燥して更にエクストルーダーに代表される溶融押出装置に供給し、溶融押出しシート状に成形し、ガラス転移温度以下の温度でキャストして、該フィルムを同時二軸延伸法や逐次二軸延伸法などの周知の方法で二軸延伸フィルムを得ることができる。この場合の延伸条件は、長手方向、幅方向とも延伸温度が85〜105℃で延伸倍率が1.3〜4.6倍の範囲で、延伸比率(長手方向倍率/幅方向倍率)は0.5〜2.0の範囲がフィルムの厚み斑、分子配向の制御、熱寸法安定性の面で好ましい。さらに熱処理され、その条件は200〜融点(より好ましくは220〜275℃)の温度で幅方向に15%以下の制限収縮下でリラックスを与えながら1〜60秒の範囲が好ましい。本発明の積層体として構成された二軸配向PPSフィルム層(A層)の配向度を本発明の範囲内に制御するためには、上記、積層加工前の二軸配向PPSフィルムの該配向度OFをEdge方向、End方向とも0.10〜0.55程度に制御しておくことが、積層体に加工した後の二軸配向PPSフィルム層(A層)の配向度が0.15〜0.60に制御しやすく好ましい。
【0033】
次に繊維シート層(B層)の製造方法について述べる。まず、前述の芳香族系重合体を乾式紡糸法、または湿式紡糸法等の方法で紡糸し、必要に応じて延伸、熱処理を施して該重合体の繊維を得る。こうして得られた繊維から繊維シートを得る方法は、乾式法や湿式法を用いることができる。
【0034】
乾式法としては、通常のけん織機械による方法、ニードルパンチ法、スパーンボンド法、長繊維を開繊する方法、短繊維を接着剤で繊維シートにする方法等がある。湿式法では、通常の抄紙機等を用いて水中に分散させた繊維、フィブリッドを熱又は接着剤を用いて接合することによって繊維シートにする。また、目的によっては該繊維シートをカレンダー処理して空隙率を変更する場合がある。
【0035】
繊維シートとして最も好ましい芳香族ポリアミド紙はメタフェニレンジアミンイソフタル酸クロライドを極性溶媒中で重合して得られるポリメタフェニレンイソフタルアミドを乾式紡糸法により短繊維化し、湿式妙造してペーパー状とする。また、機械特性や電気絶縁性を向上させる目的で熱カレンダー処理を行い、繊維シート層(B層)の嵩密度を0.6〜1.0の範囲に制御することが耐熱性、耐環境性、機械特性(腰の強さと加工性)、電気絶縁性およびワニスやオイルとの含浸性等本発明の目的を達成する上で特に好ましい。
【0036】
次に、上記で得られた二軸配向PPSフィルムと繊維シートの積層体を製造する方法について述べる。本発明の積層体は上記二軸配向PPSフィルムと繊維シートが接着剤層(二軸配向PPSフィルム、繊維シート以外の接着を目的とした組成物)を介することなく積層したものである。
【0037】
本発明の積層体を熱融着積層するには、二軸配向PPSフィルムおよび繊維シートの融着接合面に予め易接着化を目的とする表面処理を施すことが好ましい。好適な表面処理としては、コロナ放電処理(各種ガス雰囲気中のコロナ放電処理も含む)、常圧または低圧、高温、低温各種条件を組み合わせたプラズマ処理、化学薬品や紫外線、電子線等による酸化処理等が挙げられるが、二軸配向PPSフィルム層(A層)の結晶化度や配向度の変化を押さえるためには比較的低温で熱融着加工できる各種ガス下での低温プラズマ処理が特に好ましい。ここで低温プラズマ処理とは、熱融着したい二軸配向PPSフィルムや繊維シートの表面を、電極間に直流または交流の高電圧を印加することによって開始維持する放電にさらすことによってなされる処理で、該処理時の圧力は特に限定されることなく処理装置、放電形式なども適宜選定すればよい。処理雰囲気はアルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、窒素(N2)、酸素(O2)、空気、二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)などが一般的に用いられるが、水蒸気含有雰囲気下が処理効率よく特に好ましい。また水蒸気は、Ar、He、N2、O2、空気、CO2などの他のガスで希釈してもよい。処理圧力は特に限定されないが、0.1Pa〜1330Paの圧力範囲で持続放電するグロー放電処理、いわゆる低温プラズマ処理が処理効率の点で好ましい。さらに好ましくは、1Pa〜266Paの範囲である。
【0038】
この時、二軸配向PPSフィルムの熱融着面における酸素原子(O)と炭素原子(C)との表面酸素指数(O/C)が2.5〜20%の範囲で、理論値よりも大きくなっていることにより良好な熱融着性を得ることができる。ここで組成比とは、二軸配向PPSフィルムの表面をESCA(X線電子光分光法(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis))で測定した炭素原子数(C)と酸素原子数(O)との比(O/C)をいう。また理論値とは、二軸配向PPSフィルムを構成する樹脂組成における組成比で、例えばポリエステルを二軸に配向させたフィルム(以下、PET−BOと略称する場合がある。)の場合は(C1048)nであるから、組成比の理論値は、4/10=0.4000となる。また、ポリエチレンナフタレートを二軸に配向させたフィルム(以下、PEN−BOと略称する場合がある。)の場合は0.2857となる。PPSのように酸素原子数(O)を含まないものは0となる。通常は、この種の二軸配向PPSフィルムの表面には炭化水素系のものが極微量付着しているため、実測値は理論値より小さいとされる。ここで、上記の理論値を100にしたときの(酸素原子数(O)/炭素原子数(C))が2.5〜20%の範囲で理論値より大きい、言い換えれば理論値の102.5%〜120%の範囲にあれば良好な熱融着性を得ることができる。
【0039】
また、繊維シートの好適な例であるポリメタフェニレンイソフタルアミド紙の場合は、炭素原子、酸素原子、窒素原子の前記ESCA法における指数の比が、炭素原子(C)/酸素原子数(O)/窒素原子数(N)=14/2/2である。なお、未処理のポリメタフェニレンイソフタルアミドの表面酸素指数(O/C)の理論値は、2/14=0.143である。通常は、表面に炭化水素系のものが微量付着しているため実測値は理論値よりも小さいとされる。上記表面酸素指数(O/C)が、理論値の110%以上、250%以下の範囲、つまり20%〜150%の範囲で理論値よりも大きい値であれば、良好な熱融着性を得ることができる。より好ましくは、150%以上、230%以下の範囲である。表面酸素指数(O/C)が、理論値の110%未満であれば、良好な熱融着性が得られない。また、理論値の250%を越えた場合でも、熱融着性が得られない。
【0040】
次いで本発明の二軸配向PPSフィルムと繊維シートを熱融着(熱圧着)によって積層する。上記で得た低温プラズマ処理した二軸配向PPSフィルムと繊維シートのプラズマ処理面を重ね合わせ加熱ロールプレス法、熱板プレス、加熱真空プレス等の周知の方法で熱融着することができる。熱融着の条件は、温度100〜250℃(より好ましくは100〜230℃)の範囲が二軸配向PPSフィルムの相対結晶化度や配向度の変化を小さくできて好ましい。またプレス圧力は特に限定されないが,ロールプレス方式であれば100〜1500kg/cmの範囲が好ましい。またプレス時間は積層厚さや積層方法によって異なるが熱融着時の温度で1秒〜10時間の範囲が一般的である。また上記、積層方法は上記の種々方法を組み合わせて行ってもよい。また熱融着後の取り出しは、少なくとも二軸配向PPSフィルムのガラス転移点以下の温度まで冷却してから行う方が積層体の変形を押さえることができて好ましい。二軸配向PPSフィルムおよび繊維シートを2層以上積層(同一の素材同士を2層以上積層する場合も、異種素材を交互又はランダムに積層する場合も)する場合は、上記同様の方法で同時又は別々に積層工程を分けて積層することができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳しく説明する。先ず、各実施例・比較例で得られた積層体の諸特性の評価方法について説明する。
【0042】
<物性および評価方法、評価基準>
(1)広角X線回折法
(a)配向度OF
積層体から表層の繊維シートを研磨もしくは剥がして二軸配向PPSフィルムのみを取り出す。該試料の配向方向をそろえて厚さ1mm、幅1mm、長さ10mmの短冊状に切り出しおよび/または成型(成型時の各層の固定はコロジオンの5%酢酸アミン溶液を用いた)し、二軸配向樹脂層の膜面に沿ってX線を入射(EdgeおよびEnd方向)してX線発生装置は理学電機製、4086A2型装置を用い、40KV−20mAでNiフィルターを通したCu−Kα線をX線源とし、スリット系はDivergence slit 1°、R-ecieuing slit 2mm、scattering Slit 1°を採用した。
【0043】
回折X線の強度はシンチレーションカウンターで測定した。(200)ピークの強度をφ=0°(赤道線上)、10°、20°、30°の各位置からの回折強度を求めて、各試料の配向度(OF)をOF=I(φ=30°)/I(φ=0°)と定義した。
【0044】
ここで、I(φ=30°)は30°の走査の最大強度、I(φ=0°)は赤道線走査の最大強度である。なお、I(φ=0°)はφ=0°とφ=180°、I(φ30°)はφ=30°とφ=150°の強度の平均値を用いた。なお測定数はEdge、End各々の方向につき、3個ずつとしその平均値を用いた。
【0045】
(b)ACSおよび相対結晶化度
試料の配向効果を消去するために試料を面内で回転する方法を採用し、反射法で回折パターンを測定した。X線発生装置は理化学電機製40862A型装置を用い、35kV−15mAでフィルターを通したCu−KαをX線源とした。ゴニオメーターは理化学電機製2155D型を用い、スリット系はDivergence slit 1°、R-ecieuing slit 0.15mm、scattering Slit 1°を採用した。(200)回折ピークの半価幅よりSchellerの式を用いて見かけの結晶サイズ(ACS)を算出した。
ACS(Å)=Kλ/β COSθ・β=[B2−(B′)21/2
ここで K : Scheller常数(K=1)
λ : X線波長(λ−1.5418Å)
2θ: Bragg angle (°)
β : 補正後の半価幅 (radian)
B : 実測半価幅
B′: 補正用標準試料(Si単結晶)の半価幅
また相対結晶化指数は各試料の回折プロフィルより(200)ピークの最大強度(I200)と2θ=25°での強度(I25)を内部標準値として測定し両者の比を相対結晶化指数(I200/I25)と定義した。
【0046】
(2)積層体の構成厚さ比率(a/b)
ミクロトームで切り出した積層体の断面を光学顕微鏡(10〜100倍)で観察、写真撮影しその断面写真の寸法を実測し、二軸配向PPSフィルムの層の総厚みをaμmとし、繊維シートの層の総厚みをbμmとして、a/bを積層体の厚さ比率とした。
【0047】
(3)繊維シートの嵩密度
JIS C2111に準じた下記の方法で測定した。
(a)サンプルを20cm×20cmにカットした。
(b)カットしたサンプルの重量を直示天秤にて測定した。
(c)カットしたサンプルについてランダムに5点選び、厚みを測定し、5点の平均値を厚みとした(押さえ圧3.5Nのシックネスゲージを使用)。
(d)嵩密度(g/cm3)=重量(g)/面積(400cm2)×厚み(cm) を計算した。
【0048】
(4)長期耐熱性
H種耐熱性を想定して、210℃のオーブンに1000時間エージング後の引張試験で破断強度(x MPa)を測定し、予め測定したエージング前の破断強度(x0 MPa)から下記の式より強度保持率を求め下記の規準で判定した。引張特性の試験方法は、JIS C2151に準じた。測定は各5個行い、その平均値を下記の式に当てはめて保持率を求めた。
強度保持率(%)=(x−x0)/x0×100
(判定規準)
○:強度保持率50%以上
△:強度保持率40%以上50%未満
×:強度保持率40%未満
【0049】
(5)耐環境性(耐湿熱性)
121℃×100%RHのオートクレーブに500時間エージング後の破断強度(y MPa)を測定し、予め測定した該エージング前の破断強度(y0 MPa)を用いて、上記(4)項長期耐熱性と同様の方法で強度保持率を測定し、下記の規準で判定した。
○:強度保持率60%以上
△:強度保持率50%以上60%未満
×:強度保持率50%未満
【0050】
(6)絶縁強度(絶縁破壊強度:kV/mm)
下記の方法で絶縁破壊電圧をN=5個測定し、その電圧を厚さで割った数値:絶縁破壊強度(kV/ mm)を求め市場で要求される実用レベルから下記の規準で判定した。
(i)評価方法
測定機器:6点式AC50kV耐圧試験器(春日電機製)
周波数:60Hz
昇圧速度:1KV/秒
上部電極:φ25mm,R=3mm,500g±50g
下部電極:5cm×5cm
(ii)判定基準
○:40mkV/mmを超える
△:36〜40kV/mm
×:36kV/mm未満
【0051】
(7)ワニス含浸性
長さ250mm、幅20mm、厚さ5mmの平角銅線を準備する。試料を長さ100mm、幅60mmに切り出し、平角銅線の形状に折り曲げ加工して平角銅線表面に数層重ね合わせられるように調整した。該サンプルの端部を厚さ50μmのポリイミド粘着テープで平角銅線中央部に固定して重ね合わせて上記のポリイミド粘着テープで重ね合わせたサンプルの表層を固定した(絶縁試料1)。次に絶縁試料1を下記のワニスで含浸して絶縁した(絶縁試料2)。
(a)使用した樹脂
エポキシ樹脂:“jER”(登録商標)828(ジャパンエポキシレジン社製) 100部
酸無水物 :“jERキュア”(登録商標)YH306(ジャパンエポキシレジン社製)70部
3級アミン :“jERキュア”(登録商標)3010(ジャパンエポキシレジン社製)3部
【0052】
(b)ワニス含浸方法
上記の組成物を30℃に保温しながら1時間攪拌混合し、該混合溶液を真空に出きるガラス管(直径60mm長さ500mm)に投入した。一方、絶縁試料1を120℃で2時間熱処理した後50℃まで冷却した。この絶縁試料をエポキシワニス入りのガラス管に入れ、真空5分、放圧10分のサイクルを3回繰り返して樹脂を含浸した。このワニスに含浸した試料をガラス管から取りだし80℃で5時間、120℃で2時間、160℃で5時間硬化せしめた。
上記で得た絶縁試料2の積層体被覆部分の中央部に幅50mmのアルミ箔(厚さ18μm)を完全接触被覆し、銅線とアルミ箔間に交流電圧を印加し(昇圧速度は750V/秒)し絶縁破壊電圧(V2)を求めた。更に樹脂含浸していない絶縁試料1も同様の方法で絶縁破壊電圧(V1)を求め、絶縁破壊電圧の保持率(V2/V1×100%)から下記基準で判定した。
○:保持率120%以上
△:保持率100%以上120%未満
×:保持率100%未満
【0053】
(8)絶縁材挿入加工性
SUSでコの字型(1辺が4mm)の間隙が調整できるスリット台(スリットの深さは50mmとした)を作成して、(2)項と同様の方法で求めた積層体の総厚さの1.2倍の幅に装置のスリット幅をスケール付きのルーペと隙間ゲージを用いて調整し、コの字型に折り曲げ成型した積層体を約20mm挿入したときの状態で下記の通り判定した。
○:挿入性は全く問題なく、比較的容易に挿入できる。
△:挿入は出来るが、挿入時に少し引っかかったり、腰が弱くて少し座屈する。 ×:挿入時に積層体が引っかかったり、腰が弱くて座屈しやすく、挿入が困難な状態。
【0054】
(9)耐折り曲げ性
試料を同一位置で180度に5回折り曲げ、該折り曲げ部分に真鍮製25mmφの電極をおき、交流電圧を印加し(昇圧速度は750V/秒)し、上記7項ワニス含浸性の評価方法と同様に絶縁破壊電圧(V2)を求めた。また、上記折り曲げなしの試料についても同様の絶縁破壊電圧(V1)を測定し、V2/V1×100(%)の保持率を求め下記の規準で判定した。
○:保持率が100%以上
△:保持率が90〜100%
×:保持率が90%未満
【0055】
(10)積層体の密着力
上記密着力は、JIS C6481に準拠し幅10mmの試料を引っ張り試験機で引っ張り速度50mm/分の条件で測定した。密着力の判定は下記の規準で行った。なお該密着力の測定値は、N数5の平均値とした、
○:0.7N/cm以上あれば実用可能レベルと判断した。
△:0.4〜0.7N/cmの範囲は、適用できる用途もあるレベル。
×:0.4N/cm未満で、絶縁材として使用不可範囲。
【0056】
(11)総合判定
○:各評価の判定が全て○である積層体
△:各評価の判定で△が3個以内の積層体
×:各評価の判定で△が4個以上あるか、1個でも×がある積層体
【0057】
<実施例1>
(1)二軸配向PPSフィルムの製造
下記の方法により二軸配向PPSフィルムを製造した。
(i)PPS樹脂組成物の製造
オートクレーブに硫化ナトリウム32.6kg(250モル、結晶水40質量%含む)、水酸化ナトリウム100g、 安息香酸ナトリウム36.1kg(250モル)、及びN−メチル−2−ピロリドン(以下NMPと略称する場合がある。)79.2kgを仕込み、攪拌しながら徐々に205℃まで昇温し、水6.9kgを含む留出液7.0リットルを除去した。残留混合物に1,4−ジクロルベンゼン37.5kg(255モル)、及びNMP20.0kgを加え、265℃で4時間加熱した。反応生成物を熱湯で8回洗浄し、溶融粘度3100ポイズ、ガラス転移温度91℃、融点285℃の高重合度PPSを得た。このようして得られたPPS樹脂に1μm粒径の炭酸カルシウム粒子を0.2質量%ミキサーでブレンドし、30mm孔径の小型の2軸エクストルーダーに投入して310℃の温度で溶融混練させガット状のPPS樹脂組成物を得た。さらに、該ガットを5mm長にカットしてペレット化した。このようにして得られたPPS樹脂組成物をPPS−1とする。
【0058】
(ii)二軸配向PPSフィルムの製造
上記で得られたPPS−1を180℃の温度で3時間真空乾燥(真空度:8mmHg)した後、40mm孔径のエクストルーダーのホッパーに投入する。温度310℃で溶融押出し直線上のリップを有するTダイ(幅300mm、間隙2mm)からシート状に押し出し、表面温度を30℃に保った金属ドラムにキャストして冷却固化した。得られた未延伸、無配向シートの厚さは1.9mmであった(PPS−NO−1とする)。PPS−NO−1を逐次二軸延伸法により、長手方向に延伸温度98℃で4.5倍延伸し、幅方向に延伸温度98℃で4.2倍延伸した。また熱処理は温度270℃で1分間行い、7%の制限収縮でリラックスを施した。得られた二軸配向PPSフィルムの厚さは100μmであり、配向度OFはEdge方向が0.13、End方向が0.16であった。また相対結晶化指数は25、結晶サイズ(ACS)は80オングストロームであった。このフィルムをPPS−F−1とする。
【0059】
(2)繊維シートの準備
芳香族ポリアミド繊維シートの代表例として、デュポン帝人アドバンスドペーパー社の「ノーメックス」(商標登録)タイプ410の50μm厚さ(面積係数40g/m2)を準備した。この繊維シートを繊維シート−1とする。
【0060】
(3)積層体の製造
(i)表面処理加工
上記(1)で得られたPPS−F−1の両面に低温プラズマ処理を以下の方法、条件で施した。内部電極方式の低温プラズマ処理装置で、処理ガスにArを用い、圧力は40Pa、処理速度は1m/分、処理強度(印加電圧/(処理速度×電極幅)で計算した値)は500W・min/m2とした。該低温プラズマ処理表面の(O/C)は、理論値比110%の値であった。
【0061】
次に上記(2)の繊維シート−1の片面に低温プラズマを下記の方法、条件で実施した。
内部電極方式の低温プラズマ処置装置で、処理ガスをN2とし、圧力は40Pa、処理速度は1m/分、処理強度は650W・min/m2とした。該低温プラズマ処理表面の(O/C)は、0.31、理論値比206%であった。
【0062】
(ii)積層体の加工
上記のプラズマ処理を施したPPS−F−1と繊維シート−1を、繊維シート−1/PPS−F−1/繊維シート−1の順にプラズマ処理面同士を重ね合わせて、180℃に設定された熱板プレス機にて、圧力40kg/cm2、時間10分間の条件で熱融着積層し、常温まで自然冷却した。該積層体はPPS−F−1の熱融着積層温度での熱収縮率が大きくて熱変形、熱皺が少し発生した。このようにして得られた積層体を積層体−1とする。
【0063】
<実施例2>
実施例1と同様にして、PPS樹脂組成物を製造し二軸配向PPSフィルムを製造するが、押出条件や延伸条件倍率を変更した。すなわち、縦延伸は3.7倍、横延伸は3.5倍とした。熱処理条件やリラックス条件は実施例1と同様である。また二軸配向PPSフィルムの厚さは100μmになるようキャストフィルムの厚さを調整した。該フィルムの配向度OFはEdge方向が0.30、End方向が0.34であった。また相対結晶化指数は17、結晶サイズ(ACS)は75であった。このフィルムをPPS−F−2とする。
実施例1で用いた繊維シート−1を準備し、PPS−F−2の両面および繊維シートの片面に実施例1の条件でプラズマ処理を施し、実施例1の条件で繊維シート−1/PPS−F−2/繊維シート−1の構成の積層体を得た(積層体−2とする)。
【0064】
<実施例3>
縦延伸倍率を3.0倍、横延伸倍率を2.6倍とした。また二軸配向PPSフィルムの厚さが100μmになるようキャストフィルムの厚さで調整した他は実施例1の方法と同様にして2軸配向PPSフィルムを製造し延伸倍率を変更した。このようにして得られたフィルムの配向度OFはEdge方向が0.43、End方向が0.47であった。また相対結晶化指数は15、結晶サイズ(ACS)は75であった。このフィルムをPPS−F−3とする。
実施例1と同様に繊維シート−1を用い、PPS−F−3の両面と繊維シート−1の片面に実施例1と同様のプラズマ処理を施し、該プラズマ処理面同士を重ね合わせて実施例1の方法で熱融着積層し、繊維シート−1/PPS−F−3/繊維シート−1の積層体を得た。該積層体を積層体−3とする。
【0065】
<実施例4>
延伸倍率を、縦延伸倍率2.0倍、横延伸倍率も2.0倍とし、フィルム厚さは100μmに調整した他は実施例1の方法と同様にして二軸配向PPSフィルムを製造した。得られたフィルムの配向度OFはEdge方向が0.53、End方向が0.55であった。また相対結晶化指数は9、結晶サイズ(ACS)は75であった。このフィルムをPPS−F−4とする。
実施例1と同様に繊維シート−1を用い、PPS−F−4の両面と繊維シート−1の片面に実施例1と同様のプラズマ処理を施し、該プラズマ処理面同士を重ね合わせて実施例1の方法で熱融着積層し、繊維シート−1/PPS−F−4/繊維シート−1の積層体を得た。得られた積層体は少し熱変形した。該積層体を積層体−4とする。
【0066】
<比較例1>
実施例1と同様の方法で二軸配向PPSフィルムの製造を行った。但し、縦延伸倍率を1.8倍、横延伸倍率を2.0倍とし、横延伸後の熱処理温度を200℃まで低下させた。またフィルムの厚さは100μmになるよう調整した。得られたフィルムの配向度OFはEdge方向が0.61、End方向が0.62であった。また相対結晶化指数は6、結晶サイズ(ACS)は70であった。このフィルムをPPS−F−5とする。
実施例1と同様に繊維シート−1を用い、PPS−F−5の両面と繊維シート−1の片面に実施例1と同様のプラズマ処理を施し、該プラズマ処理面同士を重ね合わせて実施例1の方法で熱融着積層し、繊維シート−1/PPS−F−5/繊維シート−1の積層体を得た。得られた積層体の熱変形は実施例4の積層体−4に比べてもかなり大きいものとなった。該積層体を積層体−5とする。
【0067】
<比較例2>
熱処理温度を278℃とし、熱処理時間を3倍の3分間とした他は実施例1の方法と同様に二軸配向PPSフィルムを製造した。このようにして得られた二軸配向PPSフィルムの厚さは100μmになるよう調整され、配向度OFはEdge方向が0.17、End方向が0.18であった。また相対結晶化指数は31、結晶サイズ(ACS)は85であった。このフィルムをPPS−F−6とする。
実施例1と同様に繊維シート−1を用い、PPS−F−6の両面と繊維シート−1の片面に実施例1と同様のプラズマ処理を施し、該プラズマ処理面同士を重ね合わせて実施例1の方法で熱融着積層し、繊維シート−1/PPS−F−6/繊維シート−1の積層体を得た。該積層体を積層体−6とする。
【0068】
<比較例3>
縦横の延伸温度を105℃とし、二軸延伸後の熱処理温度を250℃とした他は実施例2の方法と同様に二軸配向PPSフィルムを製造した。このようにして得られた二軸配向PPSフィルムの厚さは100μmに調整されたものである。該フィルムの配向度OFはEdge方向が0.50、End方向が0.54であった。また相対結晶化指数は4で結晶サイズ(ACS)は68であった。このフィルムをPPS−F−7とする。
実施例1と同様に繊維シート−1を用い、PPS−F−7の両面と繊維シート−1の片面に実施例1と同様のプラズマ処理を施し、該プラズマ処理面同士を重ね合わせて実施例1の方法で熱融着積層し、繊維シート−1/PPS−F−7/繊維シート−1の積層体を得た。得られた積層体は少し熱変形した。該積層体を積層体−7とする。
【0069】
<比較例4>
実施例2の方法と同様の方法、条件で60μm厚さのニ軸配向PPSフィルムを製造した。該フィルムの配向度OFはEdge方向が0.29、End方向が0.32であった。また相対結晶化指数は17、結晶サイズ(ACS)は75であった。このフィルムをPPS−F−8とする。
また繊維シートは、デュポン帝人アドバンスドペーパー社の「ノーメックス」(商標登録)タイプ410の130μm厚さ(面積係数64g/m2)を準備した。この繊維シートを繊維シート−2とする。PPS−F−8の両面および繊維シートの片面に実施例1の条件でプラズマ処理を施し、実施例1の条件で繊維シート−2/PPS−F−8/繊維シート−2の構成の積層体を得た(積層体−8とする)。
【0070】
<実施例5>
実施例2の方法と同様の方法、条件で70μm厚さの二軸配向PPSフィルムを製造した。該フィルムの配向度OFはEdge方向が0.30、End方向が0.32であった。また相対結晶化指数は17、結晶サイズ(ACS)は75であった。このフィルムをPPS−F−9とする。
また、繊維シート−2を用い、PPS−F−9の両面および繊維シートの片面に実施例1の条件でプラズマ処理を施し、実施例1の条件で繊維シート−2/PPS−F−9/繊維シート−2の構成の積層体を得た(積層体−9とする)。
【0071】
<実施例6>
実施例2の方法と同様の方法、条件で、キャストフィルム厚さを変更して150μm厚さの二軸配向PPSフィルムを製造した。得られたフィルムの配向度OFはEdge方向が0.40、End方向が0.44であった。また相対結晶化指数は19、結晶サイズ(ACS)は75であった。このフィルムをPPS−F−10とする。
繊維シートは繊維シート−1を用い、実施例1の方法でプラズマ処理および熱融着積層を行い、繊維シート−1/PPS−F−10/PPS−F−10/PPS−F−10/繊維シート−1の構成体とし、層厚み550μmの積層体(積層体−10とする)を得た。
【0072】
<比較例5>
実施例6の方法と同様の方法、条件で170μmの二軸配向PPSフィルム(PPS−F−11とする)を得て、繊維シート−1、PPS−F−11を用いて、実施例1の方法でプラズマ処理を施して熱融着積層し繊維シート−1/PPS−F−11/PPS−F−11/PPS−F−11/繊維シート−1の5層積層体(積層体−11)を製造した。積層体の厚さは610μmであった。
【0073】
<実施例7>
繊維シートとして、カレンダー処理されていないデュポン帝人アドバンスドペーパー社の「ノーメックス」(商標登録)タイプ411の130μm厚さ(面積係数:39g/m2)を準備し、200℃の温度で200kg/cmの圧力でプレスロールによるカレンダー処理を行い、厚さ97μmにした。この繊維シートに実施例1の条件でプラズマ処理を施し、該繊維シートを繊維シート−3とした。
二軸配向PPSフィルムは実施例2で用いたPPS−F−2を準備し、繊維シート−3/PPS−F−2/繊維シート−3の構成になるよう重ね合わせ、実施例1の条件で熱融着積層した。得られた積層体を積層体−12とする。
【0074】
<実施例8>
実施例7で用いた130μm厚さのデュポン帝人アドバンスドペーパー社の「ノーメックス」(商標登録)タイプ411を250℃の温度、1t/cmの圧力のプレスロールでカレンダー処理を行い、40μmの繊維シートを得た(繊維シート−4)。次いで、実施例7の方法の方法と同様の方法で、繊維シート−4/PPS−F−2/繊維シート−4の構成の積層体を得た(積層体−13)
【0075】
<実施例9>
実施例2のPPS−F−2と繊維シート−1を用いて、PPS−F−2/繊維シート−1の構成(2層体)で熱融着積層した。積層の条件は実施例2の条件を適用した。得られた積層体を積層体−14とした。
各実施例および比較例の評価の結果を表1、2に比較して示す。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
<まとめ>
本発明に係る積層体は、従来技術の高耐熱性、耐環境性(幅広い環境条件の下でも本積層体の有する耐熱性を設計上見積もれる)、機械強度(加工性)、接着剤の悪影響(接着剤の耐熱性や耐加水分解性等の低下が積層体全体の耐性を低下させたり、接着剤が劣化し分解したときに発生する分解成分が積層体を構成するフィルムや繊維シートをアタックして劣化させてしまうこと)が無視できる特徴に加えて、従来の課題であった層間密着力の向上と耐熱クラスH種レベルの高い耐熱性と耐環境性を両立でき、絶縁性、加工性、ワニス含浸性を具備した高機能電気絶縁材である。特に本発明の特徴である層間密着力と耐熱性、耐加水分解性の両立は、実施例1〜4、比較例1〜3の積層体−1〜7の評価結果から、積層体として形成される積層後の二軸配向PPSフィルム層(A層)の広角X線回折法による配向度OFがEdgeおよびEndの2方向から各々測定した値が何れも0.15〜0.60であり、かつ相対結晶化指数が5〜30の範囲でないと達成できないことが判る。すなわち、上記を満足している積層体−1〜4は層間密着力、耐熱性および耐加水分解性を両立しているが、比較例1(積層体−5)は配向度OFが本発明の範囲の上限を越えており、かつ相対結晶化指数が下限に近いために積層体の耐熱性、耐加水分解性の保持が困難となり本発明の目的が達成できない。また、比較例3(積層体−7)は、配向度OFが本発明の範囲に入っていても相対結晶化指数が下限を越えており上記と同様に耐熱性や耐加水分解性が低下してしまい本発明の目的を達成できない。一方、比較例2(積層体−6)は相対結晶化指数が本発明の上限を越えており、該値が大きくなると層間密着力が低下し本発明の目的が達成できなくなる。また、該配向度OFが小さくなると二軸配向PPSフィルム層(A層)の熱収縮率が大きくなる方向で熱融着積層時に積層体が熱変形や熱皺を発生しやすくなる。逆に該配向度OFが大きくなると二軸配向PPSフィルム層(A層)が熱により軟化しやすく積層体が熱変形しやすくなる。この面でも本発明の配向度OFの最適範囲は重要である。
【0079】
本発明の積層体の厚さ比率(a/b)と積層体の特性の関係は、比較例4、5(積層体−8、11)、実施例5、6(積層体−9、10)および実施例2(積層体−2)で説明することができる。すなわち、本発明で言う積層構成厚み比率(a/b)が小さくなると(繊維シート層(B層)の厚さ比率が大きくなると)本発明の目的である絶縁破壊強度(絶縁性)が低下し、積層体の腰の強さが低下して絶縁材の加工性が低下する。比較例4の積層体−8は本発明の(a/b)が0.25未満であり本発明の目的を達成できない。逆に該(a/b)が大きくなると(二軸配向PPSフィルム層(A層)の厚さが厚くなると)、耐熱性がある繊維シート層(B層)が二軸配向PPSフィルム層(A層)の耐熱性を保護しにくくなり積層体全体の耐熱性が低下する傾向となる。比較例5の積層体−11は該(a/b)が本発明の範囲である5.00を越えており、本発明の目的である耐熱クラスH種耐熱性のレベルを達成できない。
【0080】
本発明の積層体は接着剤を用いず二軸配向PPSフィルム層(A層)の耐熱性、耐加水分解性等の耐環境性および絶縁性、腰の強さと、耐熱性をもつ繊維シート層(B層)のワニス含浸性、耐熱性および耐環境性、外部からの突き刺しや耐摩耗性をそれぞれに活かした絶縁材が得られるが、本発明では二軸配向PPSフィルム層(A層)の配向度OF、相対結晶化指数を制御し、かつ繊維シート層(B層)との積層厚さ比率(a/b)を特定の範囲に制御することで、積層体全体の耐熱性、耐加水分解性で代表される耐環境性を保持しつつ、層間の密着力の向上と高絶縁破壊電圧が維持できることを見出したことがポイントである。
【0081】
また、実施例7(積層体−12)、実施例8(積層体−13)および実施例2(積層体−2)を比較すると、用いる繊維シート層(B層)の嵩密度が小さくなるとワニスの含浸性には優れるが積層体の腰が弱くなりモータ等への絶縁材挿入性が低下したり折り曲げによる耐力が低下して絶縁性の維持がしにくくなる。更に繊維間の凝集力が低下して凝集破壊が発生しやすくなり層間の密着力が低下する傾向となる。逆に該嵩密度が大きくなるとワニスの含浸性が落ちて絶縁の信頼性が低下してしまう。本発明では、該嵩密度は0.6〜1.0の範囲が特に好ましいことも実施例7〜実施例8及び実施例2の評価結果から判る。
【0082】
更に、実施例9(積層体−14)は、二軸配向PPSフィルム層(A層)と繊維シート層(B層)との2層積層体である。繊維シート層(B層)による耐熱性の保護効果が若干低下する傾向にはあるが2層積層体でも本発明の目的を達成できることが判る。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の積層体は、一般産業用機器の絶縁材はもとより風力発電機、電車や船舶の車両用モータや発電機の絶縁、自動車(HV車、EV車、FC車等)の駆動モータや発電機の絶縁材など、高機能、高効率化、高容量化を要求される分野に最適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全フェニレンスルフィド単位の80モル%以上がパラフェニレンスルフィド単位であるポリフェニレンスルフィド樹脂を含む樹脂組成物からなる二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(A層)の少なくとも片方の面に融点を有しない芳香族系重合体からなる繊維シート層(B層)が接着剤層を介することなく積層された積層体であって、A層の総厚みをaμm、B層の総厚みをbμmとした時の該積層体の構成厚さ比率(a/b)が0.25〜5.00であり、かつ該二軸配向ポリフェニレンスルフィドフィルム層(A層)の広角X線回折法によって測定した相対結晶化指数が5〜30、EdgeおよびEndの2方向から各々測定した配向度OFが何れも0.15〜0.60であることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記繊維シート層(B層)の嵩密度が0.6〜1.0であることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記繊維シート層(B層)が芳香族ポリアミド系繊維シートからなることを特徴とする請求項1または2に記載の積層体。

【公開番号】特開2011−140150(P2011−140150A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1408(P2010−1408)
【出願日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(592166137)河村産業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】