説明

積層光学フィルム

【課題】高い透明性を示し、かつ、高温においても優れた機械的特性が維持される光学フィルムを提供する。
【解決手段】波長550nmにおける光透過率が望ましくは90%以上であり、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含有する表面層A、耐熱性樹脂を含有する層Bを、少なくとも一層ずつ有し、耐熱性樹脂のガラス転移温度が120℃以上である光学フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性、耐熱性、および機械的特性に優れた光学フィルムに関するものであり、偏光板保護フィルム、光学検査用保護フィルム等として好ましく使用されるものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板保護フィルム等の光学フィルムは、表示素子等の分野で広く用いられている。この中で、ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂を用いた光学フィルムは、光弾性係数が小さい等の特徴が有り、好ましく用いられている(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
また、特許文献2には4−メチル−1−ペンテン層と、耐熱性樹脂層とを有する多層フィルムが開示されている。しかしながら、この多層フィルムの光学フィルムとしての使用については検討されていない。
【特許文献1】特開2000−275433号公報
【特許文献2】特開2000−218752号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ポリ4−メチル−1−ペンテン樹脂フィルムからなる光学フィルムは、低いガラス転移温度のためガラス転移温度以上での加温時に張力がかかったプロセス、例えば積層工程をロール・トゥ・ロールで行うようなプロセスではフィルムの変形がおこる場合があった。さらに、薄肉のフィルムではフィルム自身の剛性不足のため、例えば積層する相手のフィルムの熱収縮、乾燥収縮等にフィルムが耐えられずにフィルムにしわが発生することがあり、そのしわによりロール・トゥ・ロールでの巻き取り時にフィルム折れなどの不具合発生の懸念がある。これらを解決するために他の樹脂からなるフィルムと予め積層することも可能であるが、積層して得られる積層フィルムは透明性が乏しいものが多く、光学フィルムとしての使用に適さないという欠点があった。
【0005】
本発明では、前述した問題点を解決するために、高い透明性を示し、他のフィルムと積層した際等にしわの発生が抑制され、かつ、フィルム折れ等の不具合の発生が抑制された、光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)の構成を有するものである。すなわち、
(1)4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含有する表面層A、耐熱性樹脂を含有する層Bを、少なくとも一層ずつ有し、前記耐熱性樹脂のガラス転移温度が120℃以上である光学フィルム、
以下、(2)〜(5)は、いずれも本発明の好ましい実施形態の一例である。
(2)(1)に記載の光学フィルムにおいて、120℃での引張弾性率が1000MPa以上である、光学フィルム、
(3)(1)または(2)に記載の光学フィルムにおいて、波長550nmにおける光透過率が90%以上である、光学フィルム、
(4)(1)から(3)のいずれかに記載の光学フィルムにおいて、表面層Aと、層Bとが、接着性樹脂を含有する中間接着層Cを介して積層されている、光学フィルム、
(5)(1)から(4)のいずれかに記載の光学フィルムにおいて、共押出し法により作製された、光学フィルム、
【発明の効果】
【0007】
本発明では、表面層に4−メチル−1−ペンテン樹脂、支持体層に耐熱性樹脂を用いることで、高い透明性を示し、他のフィルムと積層した際等にしわの発生が抑制され、かつ、フィルム折れ等の問題発生が効果的に抑制された光学フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の光学フィルムは、波長550nmにおける光透過率が好ましくは90%以上であり、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含有する表面層A、耐熱性樹脂を含有する層Bを、少なくとも一層ずつ有し、前記耐熱性樹脂のガラス転移温度が120℃以上である光学フィルムである。
【0009】
(表面層A)
本実施形態における表面層Aは、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含有してなるものである。ここで「含有してなる」とは、当該層の全部が4−メチル−1−ペンテン(共)重合体で構成されている場合、当該層の一部が4−メチル−1−ペンテン(共)重合体で構成されている場合、の双方を含む趣旨である。従って、この層は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体以外の成分を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。
【0010】
このような4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、具体的には、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体もしくは4−メチル−1−ペンテンとエチレンまたは炭素原子数3〜20の他のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−テトラデセン、1−オクタデセン等との共重合体である。本実施形態において好ましく用いられる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体は、通常、4−メチル−1−ペンテンに由来する構成単位を85モル%以上、好ましくは90モル%以上の量で含有する。4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を構成する、4−メチル−1−ペンテン由来以外の構成成分には特に制限は無く、4−メチル−1−ペンテンと共重合可能な各種のモノマーを適宜使用することが出来るが、入手の容易さ、共重合特性等の観点から、エチレンまたは炭素数3〜20のα−オレフィンを好ましく用いることが出来る。中でも、炭素数6〜20のα−オレフィンが好ましく、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、および1−オクタデセンが特に好ましい。
【0011】
本実施形態の表面層Aに用いられる4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の、ASTM D1238に準じ、荷重5kg、温度260℃の条件で測定したメルトフローレート(MFR)は、用途に応じ種々決定されるが、通常、1〜50g/10分、好ましくは2〜40g/10分、さらに好ましくは5〜30g/10分の範囲である。4−メチル−1−ペンテン(共)重合体のメルトフローレートが上記のような範囲内にあると、フィルム成形性および得られるフィルムの外観が良好である。また融点は100〜240℃、好ましくは150〜240℃の範囲にあるのが望ましい。
【0012】
また、このような4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の製造方法に特に制限はなく、従来公知の方法によっても製造することができ、例えば特開昭59−206418号公報に記載されているように、触媒の存在下に4−メチル−1−ペンテンと上記のエチレンまたはα−オレフィンとを重合することにより得ることができる。
【0013】
また、表面層Aには、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体以外の各種の成分を含んでいても良い。4−メチル−1−ペンテン(共)重合体以外の成分は、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体以外の各種樹脂または各種ゴムであっても良い。各種樹脂としては、特に透明性に優れた樹脂が好ましく、例えば、環状オレフィン(共)重合体等の各種ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリスチレン、酢酸セルロース樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂等を使用することが出来る。各種ゴムとしては、オレフィン系ゴム、スチレン系ゴム、等を使用することが出来る。また、本発明において用いられる表面層Aには、帯電防止剤、酸化防止剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、防錆剤、スリップ剤、核剤、顔料、染料、無機充填剤(シリカなど)などの通常ポリオレフィンに添加して使用される各種配合剤や、それ以外の特殊な配合剤を、本発明の目的を損なわない範囲で添加することが出来る。
【0014】
このような4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含有する表面層Aは、透明性、耐熱性に優れ、さらに光学的等方性にも優れる。
【0015】
(層B)
本実施形態における層Bは、耐熱性樹脂を含有してなるものである。ここで「含有する」とは、当該層の全部が耐熱性樹脂で構成されている場合、当該層の一部が耐熱性樹脂で構成されている場合、の双方を含む趣旨である。従って、この層は、耐熱性樹脂以外の成分を含んでいても良いし、含んでいなくても良い。
【0016】
このような耐熱性樹脂としては、ガラス転移温度が120℃以上、好ましくは140℃以上である。層Bに好適に使用される耐熱性樹脂としては、例えばポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリアリレートなどの耐熱性が100℃以上で耐久性・機械的性質に優れたエンジニアリングプラスチックが挙げられる。例えば、熱変形温度が100℃以上であり、かつ、引張り強さが50MPa以上であるものが、好適に用いられる。
【0017】
中でも、ポリカーボネート樹脂は、透明性、寸法安定性の観点から好ましい。このようなポリカーボネート樹脂は、粘度平均分子量が20000〜25000の範囲、好ましくは21000〜23000の範囲にある。このような範囲にあるポリカーボネート樹脂はフィルムの押出し成形性に優れ、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含有する表面層Aや、必要に応じて使用する接着樹脂層との共押出しの容易さや界面安定性に優れる。その結果、高剛性かつ高温時の張力や応力がかかったプロセスでも形状安定性を保持し、適度な延伸性をもつ光学フィルムを形成することができるため、好ましい。
【0018】
また、本発明に用いるポリカーボネート樹脂は、塩素含有量が2ppm以下、更には1ppm以下であることが好ましい。このような範囲にあると、モジュール中の電気配線や部材に対する悪影響が少なくなり好ましい。
【0019】
このようなポリカーボネート樹脂としては、ビスフェノールAなどの2価フェノールあるいは2価アルコールと、炭酸ジエステルあるいはホスゲンとから得られる従来公知のポリカーボネートが好ましく使用される。
【0020】
好ましい2価フェノールとしては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン[ビスフェノールA]の他に、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタンなどのビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどのビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテルなどのジヒドロキシアリールエーテル類、ジヒドロキシジアリールスルフィド類などが例示されるが、これらに限定はされない。
【0021】
好ましい2価アルコールとしては、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールなどの脂肪族ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、イソソルバイドなどの脂環族ジオール、1,4-ベンゼンジメタノール、2,2-ビス(4-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族ジオールなどが例示されるが、これらには限定されない。
【0022】
これらの2価フェノールまたは2価アルコールは、必要に応じて2種類以上を用いてもよく、通常は、ビスフェノールA、またはビスフェノールAを主成分とし、少量の他の2価フェノールを含んだものが使用される。好ましい炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネートなどが例示されるが、これらに限定はされない。このうち、ジフェニルカーボネートが好適に使用される。
【0023】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂の製造方法としては、公知の各種ポリカーボネート重合方法〔例えば、実験化学講座第4版、(28)高分子合成、231〜242頁、丸善出版(1988年)に記載の方法で、溶液重合法、エステル交換法または界面重合法など〕が用いられる。
【0024】
また、ポリカーボネート樹脂は、必要に応じて、アリロキシ化合物、モノカルボキシ化合物などの末端封止剤で処理されたものであってもよい。さらに、本発明に用いるポリカーボネート樹脂には本発明の目的を損なわない範囲において、各種の添加物を加えることができる。すなわち、他の樹脂、および/または、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、安定剤、充填剤、顔料、染料、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、難燃剤、及び分散剤等から選ばれる1種類または2種類以上の添加剤を添加することができる。
【0025】
(中間接着層C)
本実施形態の光学フィルムにおいて、表面層Aと、層Bとが、接着性樹脂を含有する中間接着層Cを介して積層されていることが、両者の接着強度の向上の観点から好ましい。
【0026】
このような接着性樹脂としては、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体と、耐熱性樹脂との両方に対して接着性を備え、かつ、透明性の高いものであれば特に限定されることはないが、例えば無水マレイン酸変性ポリオレフィン樹脂(たとえば、三井化学社製のアドマー(登録商標)、三菱化学社製のモディック(登録商標)など)、不飽和ポリオレフィンなどの低(非)結晶性軟質重合体、エチレン/アクリル酸エステル/無水マレイン酸3元共重合体(たとえば、住化シーディエフ化学製のボンダイン(登録商標)など)をはじめとするアクリル系接着剤、エチレン/酢酸ビニル系共重合体またはこれらを含む接着性樹脂を好ましく用いることができる。
【0027】
(光学フィルム)
本実施形態の光学フィルムは、光学用途における目的との関係において十分な光透過率を有していれば足り、その透明性に特に制限はないが、例えば、波長550nmにおける光透過率が90%以上、好ましくは91%以上であることが望ましい。このような光学フィルムは透明性が高く、偏光板保護フィルム等の光学フィルム用途に好適に使用できるばかりか、例えば表面層Aの層Bとは反対側に他の層を積層した場合に、層Bの側から当該他の層の性状、光学的特性等の検査を行うことを容易にする。
【0028】
また、光学フィルムは、120℃での引張弾性率が1000MPa以上、好ましくは1100MPa以上であることが、高温時の張力や応力に対する寸法安定性の観点から好ましい。
【0029】
光学フィルムの厚さは、強度等の機械的性質、光透過率などの光学的性質を考慮して、40μm〜200μmの範囲にあることが好ましい。
また、表面層Aと層Bの厚み比はフィルムの総厚み100に対して、好ましくはA:B=5:90〜30:65、さらに好ましくはA:B=15:80〜20:75である。表面層Aの厚みが大きすぎると4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の加熱収縮の影響が大きくなり、加温時の安定性が低下する一方で、表面層Aの厚みが小さすぎると良好な共押出しを行うことが困難になるが、表面層Aと層Bとの厚み比が上述した範囲にあることで、これらのバランスに優れた積層フィルムを形成することができる。
【0030】
このような光学フィルムの製造には、従来公知の方法が適宜使用される。例えば、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体と、耐熱性樹脂とを溶融させて、共押出し法により作製する方法、表面層Aおよび層Bを予めフィルム成形をしておき、両者を貼り合わせて作製する方法などが挙げられる。
【0031】
共押出し法により光学フィルムを成形する場合、樹脂の溶融温度は、使用される樹脂の溶融粘度や吐出安定性および成形されるフィルムの外観状態(流れムラやフィッシュアイなど)のバランスをとりながら適宜、最適温度を調整する。また、フィルム状に成形する観点から、Tダイを用いた押出機にて成形することが好ましい。
【0032】
また、表面層Aおよび層Bを予めフィルム成形しておく方法としては、従来公知の方法が適宜使用される。例えば、4−メチル−1−ペンテン(共)重合体、耐熱性樹脂を、それぞれ造粒あるいは粉砕し、次いで、プレス成形、押出成形、インフレーション成形などの方法、または溶液流延法などの公知の方法でフィルム成形することが挙げられる。効率良く生産するには、溶液流延法、インフレーション成形法や押出成形法等が好ましい。
【0033】
また、本発明の光学フィルムは、強度の向上、光学的性質の制御等の目的から、延伸されていてもよく、また延伸されていなくとも良い。延伸を行う場合は、表面層Aおよび層Bを積層してから延伸してもよく、また、表面層Aおよび層Bの一方または双方を予め延伸してから積層しても良い。
【0034】
また、本発明の光学フィルムは、更に他の層との積層のため、高い表面平滑性を有することが好ましい。例えば、光学フィルムにおいて、特に表面層Aの中心線平均粗さRaが10nm以下、好ましくは5nm以下であることが望ましい。表面層Aの中心線平均粗さRaがこの範囲にあると、他の層との積層を行う際の密着性が良好であり、また、当該他の層の表面平滑性を損なわない。
【0035】
このような表面平滑性を有する表面層Aを形成する方法としては、表面層Aと層Bとを共押出し法により形成した後、表面層Aおよび層Bからなる光学フィルムを平滑化ロールにて引き取る方法が挙げられるが、この方法には限定されない。
【0036】
このときの4−メチル−1−ペンテン(共)重合体の溶融温度は、250〜300℃であることが好ましく、また平滑化ロールはキャスティングロールを使用することが好ましい。このときのキャスティングロールの温度は、20〜40℃であることが好ましい。
また、中間接着層Cを形成する場合、この中間接着層Cは前述した接着性樹脂を介して表面層Aと、層Bとを共押出し法によりフィルム成形することにより形成することができる。
【0037】
また、中間接着層Cは、予めフィルム成形した表面層Aおよび層Bを、前述した接着性樹脂を用いてドライラミネート法あるいはヒートラミネート法などにより光学フィルムを形成することによっても形成することができる。
【0038】
また、両層の接着性を改良するために、たとえば、シラン系カップリング処理、チタン系カップリング処理、コロナ処理、プラズマ処理等を用いても良い。
【0039】
これらの各種処理は、接着に係る各層、各表面に適宜行うことができるが、表面層A又は層Bの表面であって、接着層Cと接触する面に行うことが、特に好ましい。
【0040】
本実施形態によれば、透明性の高い4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を表面層に用いているため、高い透明性を示し、かつ、耐熱性の向上、特に高剛性かつ高温時の張力や応力がかかったプロセスでも形状安定性を保持し、そして必要に応じて、適度な延伸性、および高い表面平滑性を有する光学フィルムを安価に提供することができる。
【0041】
ここで、特許文献1には、4−メチル−1−ペンテン系重合体を光学フィルムである偏光板保護フィルムに使用することが開示されているが、その耐熱性、機械的強度、形状安定性等を十分高いものとするための具体的な方策は、開示されていない。
【0042】
また、特許文献2には4−メチル−1−ペンテン層と、耐熱性樹脂層とを有する多層フィルムが開示されている。しかしながら、この多層フィルムの光学フィルムとしての使用については検討されていない。また、具体的な多層フィルムが実施例に記載されているが、支持体層として用いるポリマーアロイに、透明性の低いことが知られているポリフェニレンオキサイド樹脂とポリアミド樹脂とを主成分とするものが使用されている。したがって、本実施形態の光学フィルムは光透過性が例えば90%以上と透明性が高いフィルムを実現することが容易で、偏光板保護フィルム等の光学フィルム用途に適するばかりか、更に他のフィルムと積層して使用する場合、当該他のフィルムの光学的性質などの性状の検査を支持層である層Bの側から行うことができる。しかしながら、特許文献2に記載の多層フィルムでは透明性が低いため、光学フィルムとしての使用に不適であり、特に、他のフィルムと積層して使用する場合、当該他のフィルムの光学的性質などの性状の検査が困難である。
【実施例】
【0043】
(1)120℃での引張弾性率
10mm幅の短冊の試験片を120℃の恒温槽内に設置した引張試験機でチャック間100mm、引張速度200mm/分にて引張試験を行い、引張弾性率を求めた。
【0044】
(2)中心線平均粗さRa
非接触3次元微小表面形状観察システム(ビーコインスツルメント社製 WYKO NT―1100)を用いて測定した。
【0045】
以下に比較・実施例によって本発明の効果を説明する。なお、各実施例または比較例の評価結果を表1に示した。
(実施例1)
表面層の樹脂として4−メチル−1−ペンテン樹脂(三井化学(株)製の商品名 TPX)、中間接着層として変性ポリオレフィン(三井化学(株)製の商品名 アドマー)、そして支持体層にガラス転移温度が150℃のポリカーボネート(日本GEプラスティクス(株)製の商品名 レキサン)を用いて、総厚み80μmの3層フィルムを共押出しにてスーパーミラーキャストロール上に前記表面層を密着成膜した。層構成比は表面層:中間接着層:耐熱樹脂層=20:5:75であった。
【0046】
4−メチル−1−ペンテン樹脂層表面の中心平均粗さRaは5nm以下であった。3層フィルムの120℃での引張弾性率は1120MPaであった。この積層光学フィルムの550nmにおける光透過率は91.5%であった。
【0047】
この様に高温においても高い引っ張り弾性率を有するため、他のフィルムと積層した際等にもしわの発生が抑制される。
【0048】
(比較例1)
4−メチル−1−ペンテン樹脂の厚み80μmの単層フィルムをスーパーミラーキャストロール上に密着成膜した。スーパーミラーキャストロールに密着したフィルム表面の中心平均粗さRaは5nm以下であった。120℃での引張弾性率は50MPaであった。この積層光学フィルムの550nmにおける光透過率は93.3%であった。
この様に高温における引っ張り弾性率が低いため、他のフィルムと積層した際等に、しわが発生し、このしわにより光散乱、光路の擾乱等が発生するおそれがある。したがって、例えばディスプレイ用途等の光学的均一性が重要な用途への使用が困難であることから、光学フィルムとして使用は制限されたものとなる。
【0049】
(比較例2)
実施例1において、支持体層をガラス転移温度が−10℃のポリプロピレン((株)プライムポリマー製)とした以外は実施例1と同様に行い、総厚み80μmの3層共押出しフィルムを得た。表面層の中心平均粗さRaは5nm以下であった。120℃の引張弾性率は100MPaであった。この積層光学フィルムの550nmにおける光透過率は93.1%であった。
この様に高温における引っ張り弾性率が低いため、他のフィルムと積層した際等に、しわが発生し、このしわにより光散乱、光路の擾乱等が発生するおそれがある。したがって、例えばディスプレイ用途等の光学的均一性が重要な用途への使用が困難であることから、光学フィルムとして使用は制限されたものとなる。
【0050】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
4−メチル−1−ペンテン(共)重合体を含有する表面層A、耐熱性樹脂を含有する層Bを、少なくとも一層ずつ有し、前記耐熱性樹脂のガラス転移温度が120℃以上である光学フィルム。
【請求項2】
請求項1に記載の光学フィルムにおいて、
120℃での引張弾性率が1000MPa以上である、光学フィルム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学フィルムにおいて、
波長550nmにおける光透過率が90%以上である、光学フィルム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の光学フィルムにおいて、
前記表面層Aと、前記層Bとが、接着性樹脂を含有する中間接着層Cを介して積層されている、光学フィルム。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の光学フィルムにおいて、
共押出し法により作製された、光学フィルム。

【公開番号】特開2010−113250(P2010−113250A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−287152(P2008−287152)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【出願人】(000206473)大倉工業株式会社 (124)
【Fターム(参考)】