積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体
【課題】 樹脂シートが変形されてシートの片面又は両面に多数の中空突起を有するシート成形体において、複数シートを積層又は連結した構造体を構成することが可能な多数の中空突起を有するシート成形体を提供することにある。
【解決手段】 樹脂シートの一部が変形されることによって緩衝材用に使用される多数の中空突起(Sp)が形成されているシート成形体において、このシート成形体のシートの片方の面側に突出しており、積層又は連結に使用され、中空突起(Sp)より複数の高い中空突起(Mh)を有することを特徴とする、積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体を提供し、この複数のシート成形体による密着積層構造体、空間設置積層構造体、及び横方向連結構造体を構成することが可能なシート成形体、及びそれらからなる積層構造体等を提供する。
【解決手段】 樹脂シートの一部が変形されることによって緩衝材用に使用される多数の中空突起(Sp)が形成されているシート成形体において、このシート成形体のシートの片方の面側に突出しており、積層又は連結に使用され、中空突起(Sp)より複数の高い中空突起(Mh)を有することを特徴とする、積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体を提供し、この複数のシート成形体による密着積層構造体、空間設置積層構造体、及び横方向連結構造体を構成することが可能なシート成形体、及びそれらからなる積層構造体等を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数シートを積層又は連結した構造体を構成することが可能な多数の中空突起を有するシート成形体に関し、特に、複数のシート成形体による密着積層構造体、空間設置積層構造体、及び横方向連結構造体を構成することが可能なシート成形体、及びそれらからなる積層および連結構造体等に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂シートが変形されてシートの片面又は両面に多数の中空突起を有するシート成形体およびその製造方法が提案されている(例えば、特開昭48−75678号、特公昭62−15330号、国際公開WO2004/073958、特開2006−69076、特開2009−173341)。これらの出願の中空突起を有するシート成形体は、主として精密機械や電気製品等の物品の緩衝材用包装や輸送時の保護シートとして用いることができる(以下、これらの従来の中空突起を有するシート成形体を緩衝材用に用いられるシート成形体という)。これらの緩衝材用に用いられるシート成形体を多数枚重ねて貯蔵や輸送する際は、下層のシート成形体の低い部分と上層のシート成形体の高い突起を組み合わせることで、上下に積み重ねて積載して貯蔵や運送することも原理的には可能である。しかし、シート成形体を構成する多数の突起の配列に少しでも狂いが生じると、上下のシートの嵌合ができず、部分的な突起体に無理がかかって破損することや、全体として嵩張ってしまい、また積載が崩れるなど、効率的に安定して貯蔵や輸送することができないことが多かった。また、上下のシートが多数の中空突起で嵌合していると、運送後、上下のシートの取り外しが困難になる場合も多かった。したがって、上下のシートができるだけコンパクトに密着して安定して貯蔵や輸送ができ、輸送後は取り外しが容易なようなシート成形体が望まれていた。
【0003】
また、本出願人の先発明である特開2009−173341号に示されているように、シート成形体を構成するそれぞれの突起が高さを異にする場合、その高さを異にする中空突起で品物を上下から挟み、品物を入れ子の状態で固定したい場合がある。それらの構造体を積層して、入れ子の状態を維持したまま、より安定して貯蔵や輸送ができる構造のシート成形体が望まれていた。
【0004】
また、本発明の中空突起シート成形体は、本出願人の先発明である特開2009−173341号に示されているように、特定の型で一定面積ごとに製造する場合は、製造される成形体シートの面積には一定の制限がある。また、連続的に製造する場合(国際公開WO2004/073958)でも、製品の幅に一定の制限があった。この面積を大きくするためには、製造装置が大型になり、経済的でない。したがって、小さい面積のシート成形体でも、横方向に連結して、シート成形体の面積を安定して確実に拡げていく具体的手段が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭48−75678号公報(第1頁、第2頁、第11頁左下欄、第1図、第5図)。
【特許文献2】特公昭62−15330号公報(第1頁、第2頁、第1図)。
【特許文献3】国際公開WO2004/073958号公報(第1頁、第2頁、第1図)。
【特許文献4】特開2006−69076号公報(第1頁、第2頁、第1図、第2図)。
【特許文献5】特開2009−173341号公報(第1頁、第2頁、第1図、第2図)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、シート成形体を積層して貯蔵や輸送する際、上下のシートができるだけコンパクトに密着して安定して貯蔵や輸送ができ、輸送後は取り外しが容易なようにすることにある。また本発明は、本出願人の先発明である特開2009−173341号に示されているように、シート成形体を構成するそれぞれの突起が高さを異にする場合、その高さを異にする中空突起で品物を上下から挟み、品物を入れ子の状態で固定したい場合に、中空突起シート構造体を、精密機器などの品物を中に入れた形態で輸送に用い、また、最終用途として商品包装形態として使用することができるようにすることにある。また本発明は、成形されたシートを横方向に連結して、シート成形体の面積を安定して確実に拡げていく具体的手段を提供することにある。さらに本発明は、積層や連結された上層の中空突起に下層の中空突起が挿入されている状態から、作業性良く簡単にその挿入状態を外し、上層と下層とを分離を容易にしていく手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の目的を達成するためになされたものであって、そのシート成形体としての特徴は、次の通りである。本発明は、樹脂シートの一部が変形されることによって緩衝材用に使用される多数の中空突起(Sp)が形成されているシート成形体であって、このシート成形体のシートの片方の面側に突出しており、積層又は連結に使用され、緩衝用中空突起(Sp)より高い複数の中空突起(Mh)を有する積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体に関する。また本発明は、前記多数の緩衝用中空突起(Sp)とは別に、前記シート成形体の前記高い中空突起(Mh)と同じシート面側に突出しており、積層又は連結に使用され、この高い中空突起(Mh)より低い中空突起(Ml)を複数有する前記の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体に関する。また本発明は、前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の突起の先端部である、高さHの上部H/3の部分が開孔されている前記の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体に関する。また本発明は、前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の突起の表面/又は内部に離型剤がコートされている前記の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体に関する。また本発明は、前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の少なくとも一部の突起の表面に着色材がコートされている前記積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体に関する。さらに本発明は、 前記シート成形体の前記高い中空突起(Mh)と、前記低い中空突起(Ml)とがこのシート成形体の端部に存在する前記の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体に関する。
【0008】
また本発明の積層構造体としての特徴は、次の通りである。本発明は前記シート成形体の多層が上下重なるように積層されることにより、上層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入されることにより、上下層のシート成形体が密接して積層されている前記シート成形体よりなる密接積層構造体に関する。また本発明は、前記シート成形体の多層が上下重なるように積層されることにより、上層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の先端が挿入されるように上下層のシート成形体が積層されて、上下のシート間に一定の空間が設けられる前記シート成形体よりなる空間設置積層構造体に関する。また本発明は、前記シート成形体の2層が上下重なるように積層される際、上層のシート成形体と下層のシート成形体とがそのまま積層される場合(平行積層)と、上層のシート成形体が下層のシート成形体を90度又は180回転されて積層される場合(回転積層)により、下記AとBとの二つの構造の積層構造体となる前記の積層可能な中空突起を有するシート成形体に関する。
A.上層のシート成形体の複数の前記高い中空突起(Mh)の内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入され、上層のシート成形体の複数の前記低い中空突起(Ml)の内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)の突起の先端が挿入され、上下層のシート成形体が密接して積層されている密接積層構造体。
B.上層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)の内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の先端が挿入され、上層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)の先端が挿入され、上下のシート間に一定の空間が設けられて積層されている空間設置積層構造体。
【0009】
また本発明の横方向連結構造体としての特徴は、次の通りである。本発明は前記複数の高い中空突起Mhが前記シート成形体の端部に存在し、このシート成形体の2層がシート成形体の中央部は重ならず端部のみ積層されて、2層を平面的に横方向へ連結されていく際、上層のシート成形体の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入され、 上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行く前記シート成形体の横方向連結構造体に関する。また本発明は、前記複数の高い中空突起Mhと前記複数の低い中空突起Mlとが前記シート成形体の端部に存在し、このシート成形体の2層がシート成形体の中央部は重ならず端部のみ積層して、2層を平面的に横方向へ連結される際、上層のシート成形体の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の低い中空突起(Ml)の突起の先端が挿入され、上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行く前記シート成形体の横方向連結構造体に関する。さらに本発明は、前記シートの端部には中空突起を設けていない部分を有する前記シート成形体からなる前記の連結可能なシート成形体に関する。
【0010】
本発明は、樹脂シートの片面又は両面に、中空突起を有することを特徴とする。樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等のビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル酸メチル樹脂等のアクリル樹脂、ポリテトラフロロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等の熱可塑性樹脂が使用される。さらに、エポキシ樹脂やフェノール樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂であっても、加熱等によって、荷重たわみ温度以上で流動性を示す樹脂であれば使用することができる。また、上記の樹脂は、単体で使用されるばかりでなく、ブレンド等により樹脂相互を組み合わせて使用することも出来、さらに可塑剤や充填剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤等の添加剤等を加えて使用することもできる。また本発明は、土木用等にも使用されるので、ポリ乳酸系やポリブチレンサクシネート系等の生分解性樹脂や、ビニルケトン系ポリマー等の光分解性樹脂などの分解性樹脂も好ましい。また、本発明は柔らかいシート成形体をも目的としており、SBSやポリウレタン等の熱可塑性エラストマーも使用することができる。そして、本発明に使用される樹脂としては、ポリプロピレン等のヒンジ特性のよい樹脂は、本発明の高さが異なる中空突起のもつ弾性的特徴を最も発揮しやすいので特に好ましい。
【0011】
本発明は、樹脂シートの片面又は両面に、その樹脂シートの一部が変形されることによって形成された多数の中空突起を有する。ここで使用される樹脂シートは、上記樹脂がシート状に成形されたものを意味する。シートは、厚みにおいて特に制限はなく、通常フィルムや膜と呼ばれるものも含むが、厚みは、好ましくは10μm以上であって3mm以下、さらに好ましくは50μm以上であって2mm以下、100μm以上であって1mm以下が最も好ましい。10μmに達しない場合や3mmを越える場合は、中空突起を有するシート成形体を安定して成形することが困難だからである。本発明によるシート成形体は、シート状物の片面に中空突起が形成されたシート成形体と、シート状物の両面に中空突起が形成されたシート成形体がある。片面に中空突起が形成された立体構造は、片面の中空突起の数を多くすることができ、そのため圧縮強度が強く、また、底面には既にシート状を形成しているので、中空突起の先端にシート状物を連結するだけで、天地にシート状物を有する構造物とすることができる。両面に中空突起を形成された立体構造は、シート成形体の厚みが大きくなり、よりカサ高性のある構造物とすることができる特徴を有する。したがって、片面に中空突起を有する成形体を用いるか、両面に中空突起を有する成形体を用いるかは、これらの特性に合わせて、用途により判断される。
【0012】
本発明のシート成形体における中空突起は、突起の形状が細い針状突起であってもよく、また太い突起にも使用される。突起の先端は、突起を縦割りした場合の断面が丸みをおびた放物線状であっても良く、円筒や裁頭円錐形であっても良い。中空突起の先端は、細い突起の形状もとることができ、その場合は、突起部分で柔軟に変形し対象物に対して柔らか接触感を生じさせることができる。また、中空突起の頂点が平面であると、圧縮力が均等にかかりやすい特性もあり、さらに頂点が平面であると、他のシート状物との接合性も良くなる。これらの突起の先端の形状は、主として、本発明を製造する際の針状型の形状によって定められる。また、突起をヨコに切断した場合の断面は、円ばかりでなく、楕円や四角、三角等の種々の形状を有することもできる。またこれらの形状の混在であってもよい。
【0013】
本発明における樹脂シートの片面又は両面に中空突起を有することを特徴とする。本発明における中空突起は3種類ある。その一つは、シート成形体の内部に構成されている従来の緩衝材用に使用される中空突起(緩衝材用 Shock-absorbing uses に使用される中空突起peak、以下Spで表す)である。この緩衝材用中空突起は、従来発明(特許文献1−5)で公知のもので、シートの片面に中空突起(以下、片面突起と略す場合がある)がある場合と、シートの両面に中空突起(以下、両面突起と略す場合がある)がある場合がある。またこれらの中空突起の高さも一様ではなく、異なる高さの中空突起から構成されている場合がある(特許文献5)。
【0014】
本発明の緩衝材用中空突起Spは、樹脂シートの片面又は両面に多数存在することを特徴とする。多数とは、平方メータ当たり10個以上、好ましくは数10個、大きい場合は数100個、数千個以上の突起を有する。中空突起の数は、主として本発明の太さに依存するが、突起が細い場合は、中空突起を数多く設けることができる。中空突起の数が多いことは、それだけ圧縮強度や緩衝効果が大きいことを意味し、突起が細くて高い場合は、柔軟でカサ高であることを意味する。なお、本発明の成形体における中空突起は、一定のピッチを必ず有する必要はなく、ランダムなピッチ、また単純な一定ピッチではなく、複雑なピッチを有する場合もある。
【0015】
上述の本発明における中空突起の3種類の内の他の二つは、シート面に対して片側の面に突出しており、多層に積層(multitier arrangement)に使用される複数の高い突起(high peakで、以下Mhで表す)と複数の低い突起(low peak、以下Mlで表す)である。このMh及びMlで示される中空突起は、本発明特有の中空突起で、本発明の中空突起を有するシート成形体を多層に積層する場合に使用される。多層に積層するのは、本発明 の多数のシート成形体を倉庫等に貯蔵する場合や、運搬される場合等において、安定して重ねて貯蔵等するするためであり、また後述の入れ子構造を保ちながら積層する場合である。多層は、2層を含み複数の層で、数10層、数100層である場合もある。本発明において、積層用高い中空突起Mhは必ず必要であるが、積層用低い中空突起Mlは、必ずしも必要でない場合がある。
【0016】
本発明の積層用の高い中空突起Mhの中空突起の高さは、緩衝材用の中空突起Spや積層用の低い中空突起Mlよりも高いことを特徴とする。すなわち、
積層用高い中空突起Mhの高さ>緩衝材用中空突起Spの高さ又は積層用低い中空突起Mlの高さ
この積層用の中空突起Mh、Mlのシート成形体中に存在する数は、複数で、緩衝材用中空突起Spの数より少ない。積層用の高い中空突起Mhの数は、緩衝材用中空突起Spの数の数分の1、好ましくは10分の1以下である。積層用の低い中空突起Mlの数も積層用中空突起Mhの数と同等である。シート成形体の本来の機能である緩衝作用を減じる度合いを少なくするためであり、また、数が少ないので、積層作業や積層されたものを単体に戻す作業におけるセッティングが簡便になる。MhおよびMlの数は、それぞれ2−3個から数10個程度が多く採用される。
【0017】
本発明の高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の突起の先端部は、開孔されていることが望ましい。先端部は、これらの中空突起の高さHの上部H/3の部分を意味する。これらの先端部が開孔されていることにより、後述のようにシート成形体が積層や連結された場合、重なっている中空突起相互間を取り外す際に、重なりの空気が減圧になり、取り外しが困難になることを防止するためである。孔は、大きく開孔している必要はなく、数mm程度で十分であり、孔の形状も丸や楕円で等、特に特定しない。要は、空気の流通があればよい。
【0018】
また、前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の突起の表面/又は内部に離型剤がコートされていることが望ましい。これらの先端部の表面又は内部に離型剤がコートされていることにより、後述のようにシート成形体が積層や連結された場合、重なっている中空突起相互間を取り外す際に、重なり部が離型材ですべりが良く、スムーズに取り外しができるようになる。離型剤はシリコン系、フッ素系、アクリル系など種々のタイプが使用され、それらのエマルジョン型、溶剤型、粉末型などを、塗布、刷毛塗り、スプレー等でコートする。
【0019】
さらに、前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の少なくとも一部の突起の表面、特に突起の先端部の表面に着色材がコートされていることが望ましい。少なくとも一部としたのは、高い中空突起Mhのみの場合や、さらにその一部のシート成形体の4隅に配置される中空突起のみの場合などがある。着色は1色とは限らず、高い中空突起Mhと低い中空突起Mlを異なる色にすることや、4隅に配置される中空突起に異なる色にするなど、種々の色の態様もある。着色材がコートされていることにより、従来の緩衝材用中空突起Spと本発明の高い中空突起(Mh)と前記低い中空突起(Ml)とを視覚的に際立たせ、明確にでき、後述のシート成形体の積層や連結作業が容易になる。なお、この着色材は、上述の離型剤成分を含ませ、両者を兼ねさせることもできる。
【0020】
本発明のシート成形体において、積層用中空突起MhおよびMlが存在する場所には特に限定はないが、シート成形体の端に存在することが望ましい。端部にあることにより、積層作業や積層されたものを単体に戻す作業が容易な場合が多いからである。端部は、長いシートにおいては両端にあり、正方形や長方形のシートにおいては、その4辺にある。
【0021】
本発明のシート成形体においてシートより緩衝材用の中空突起Spや積層用中空突起MhおよびMlを形成させる手段は、既に特許文献1−5等で利用されているものが使用される。特に積層用中空突起MhおよびMlを形成させる手段は、特許文献5で例示されている手段が有効である。
【0022】
本発明の中空突起を有するシート成形体を多層積層していく際に、本発明では二つの構造体をとることができる。その一つが密接積層構造体で、多層のシート成形体が上下重なるように積層されることにより、上層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入されることにより、上下層のシート成形体が密接して積層されている。密着とは、シートの厚みや緩衝材用中空突起Spの高さ等で一定ではないが、緩衝材用中空突起Spの高さの3分の1未満、さらに5分の1以下にすることが多い。この場合、低い中空突起Mlは必ずしも必要とされないが、低い中空突起Mlが存在する場合は、上層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)の突起の先端が挿入されることが望ましい。本発明のシート成形体が積層されて密接積層構造体をとることにより、多数のシート成形体をコンパクトに安定して、貯蔵や運搬を行うことができる。このように非常に安定しているので、輸送に際しても、防塵対策程度で、荷物を安定化させるための特別の包装を要さないのも特徴のひとつである。
【0023】
もう一つの積層構造体は空間設置積層構造体で、本発明の多層のシート成形体が上下重なるように積層されることにより、上層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の先端が挿入されるように精密に上下層のシート成形体が積層されて、上下のシート間に一定の空間が設けられる。一定の空間は、シートの厚みや緩衝材用中空突起Spの高さによって異なるが、緩衝材用中空突起Spの3分の1以上で、2分の1以上で使用されることが多い。本発明のシート成形体が積層されて空間設置積層構造体をとることにより、多数のシート成形体のシート間に一定の空間を設けて積層でき、その空間に製品を入れ子のように保持して、貯蔵や運搬を行うことができる。この空間設置積層構造体に使用される緩衝材用シート成形体の中空突起Sp部分は、本出願人の先願発明(特許文献5)からなることが特に好ましい。高さが異なるシート成形体により、精密機械や電気部品などの製品形状に合わせた入れ子構造になるようにシート成形体を上下合わせ、本発明の積層用の中空突起Mh及びMlによって結合される空間設置積層構造体として、貯蔵や運搬、又は最終的な製品包装形態としても使用できるようにすることができる。
【0024】
本発明のシート成形体においては、その2層が上下重なるように積層される際、そのまま積層される場合(平行積層)と、上層のシート成形体が90度又は180回転されて積層される場合(回転積層)により、上記密接積層構造体と空間設置積層構造体の二つの構造の積層構造体とすることができることを特徴とする。この2層は、多層に積層する際、その上の層とも同様な関係で、平行積層又は回転積層することで、密接積層構造体又は空間設置積層構造体の選択した構造の積層構造体とすることができる。したがって、シート成形体のみを貯蔵や輸送する場合は、密接積層構造体を利用し、シートの販売先で、商品を入れて入れ子状態で貯蔵や輸送や最終包装形態にする場合は空間設置積層構造体を採用するなど、一つの構造のシート成形体で2通りの利用ができることも本発明の特徴の一つである。
【0025】
本発明の高い中空突起Mhと低い中空突起Mlがシート成形体の端部に存在する場合、これらのMhとMlは、本発明のシート成形体を横方向に連結していく場合の接合ジョイントとしても使用することができる。横方向とは、平面的と云い換えることもでき、平面的に連結してシート成形体の面積を拡大していく手段である。その連結形態の一つとして、本発明シート成形体の2層がシート成形体の中央部は重ならず端部のみ積層されて、2層を平面的に横方向へ連結されていく際、上層のシート成形体の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入されて、上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行くことにより、シート成形体の横方向連結構造体を構成することができる。この場合は、Mhが使用され、Mlは必ずしも必要としない。このような作業を通じて、本発明のシート成形体を平面的に次々と横方向へ拡げていくことができる。
【0026】
もう一つの連結形態として、上層のシート成形体の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の低い中空突起(Ml)の突起の先端が挿入され、上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行くことができ、シート成形体の横方向連結構造体を構成することができる。この場合は、連結部のジョイントは、上記のMhでジョイントした場合に比較して、ジョイント結合は緩いが、ジョイント作業、又はその取り外し作業が容易である。従来の緩衝材用中空突起Spのみでも連結が可能であるが、中空突起Spの数が多く、作業性が悪いので、数が少ない連結機能に特化した中空突起Mh,Mlを設けることにより、作業性が格段と良くなった。
【0027】
このように横方向連結構造体とするシート成形体においては、その端部には中空突起を設けない部分が存在することが望ましい。特に4隅においては、前後左右のシート成形体が重なるために多重になる場合があり、連結の妨げになるので、あらかじめ4隅には中空突起を設けないことが望ましい。また、必ずしも4隅でなくとも端部であれば、同様の作用をすることもできる。端部に中空突起を設けない場合、単にシート上に中空突起を設けないばかりでなく、4隅のシートそのものを切り取って除いておくこともできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、従来の多数の中空突起(Sp)を有するシート成形体に、積層用の中空突起Mh、Mlを設けることにより密接積層構造体となり、シート成形体を積層して貯蔵や輸送する際、上下のシートができるだけコンパクトに密着して安定して貯蔵や輸送ができ、輸送後は取り外しを容易にした。それは従来の中空突起Spより圧倒的に少ない積層用中空突起Mh、Mlを設けることにより、積層や取り外し作業が格段と容易になった。また本発明は、本出願人の先発明である特許文献5に示されているように、シート成形体を構成するそれぞれの突起が高さを異にする場合、その高さを異にする中空突起で品物を上下から挟み、品物を入れ子の状態で固定したい場合に、本発明の空間設置積層構造体をとることにより、中空突起シート構造体を精密機器などの品物を中に入れた形態での輸送に用い、また、最終用途として商品包装形態として使用することができるようにした。また本発明では、一つの構造のシート成形体で密接積層構造体と空間設置積層構造体の2種類の構造をとることができ、シート成形体のみを貯蔵や輸送する場合は、密接積層構造体を利用し、シートの販売先で、商品を入れて入れ子状態で貯蔵や輸送や最終包装形態にする場合は空間設置積層構造体を採用するなど、一つの構造のシート成形体で多面的な活用が図れる。さらに本発明においては、これら中空突起Mh及びMlを利用して、成形されたシートを横方向に連結して、シート成形体の面積を簡便に安定して確実に拡げていくことを可能にした。また、本発明では、積層や連結された上層の中空突起に下層の中空突起が挿入されている状態から、作業性良く簡単にその挿入状態を外し、上層と下層とを分離を容易にしていく手段も提供する。さらに、本発明の高い中空突起(Mh)と低い中空突起(Ml)を着色することにより視覚的に際立たせ、明確にでき、シート成形体の積層や連結作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、従来の緩衝材用中空突起Spの例。
【図2】図2は、従来の緩衝材用中空突起Spの他の例。
【図3】図3は、従来の緩衝材用中空突起Spのさらに他の例。
【図4】図4は、従来の緩衝材用中空突起Spのさらに他の例。
【図5】図5は、本発明のシート成形体が、内部に緩衝材用中空突起Spを有し、周辺部に積層用高い中空突起Mhを有する例を示す斜視図。
【図6】図6は、本発明のシート成形体が、内部に緩衝材用中空突起Spを有し、周辺部に積層用高い中空突起Mhと低い中空突起Mlを有する例を示す斜視図。
【図7】図7は、本発明のシート成形体が、シートの内部に積層用高い中空突起Mhを有する例を示す斜視図。
【図8】図8は、本発明のシート成形体の周辺部に積層用高い中空突起Mhと低い中空突起Mlを有する他の例を示す斜視図。
【図9】図9は、本発明のシート成形体の周辺部に積層用高い中空突起Mhと低い中空突起Mlを有するさらに他の例を示す斜視図。
【図10】図10は、従来の緩衝材用中空突起Spと、本発明の積層又は連結に使用される高い中空突起Mhと低い中空突起Mlとの,相対的な高さの関係を示す断面図。
【図11】図11は、本発明の積層用高い中空突起Mhの先端部に開孔部を有する例を示す断面図。
【図12】図12は、本発明の積層用高い中空突起Mhの先端部または内部に離型剤を有する例を示す断面図。
【図13】図13は、本発明の密接積層構造体の例を示す斜視図。
【図14】図14は、本発明の空間設置積層構造体の例を示す斜視図。
【図15】図15は、本発明の空間設置積層構造体の入れ子構造の例を示す断面図。
【図16】図16は、横方向連結構造体の例を示す斜視図。
【図17】図17は、横方向連結構造体の他の例を示す平面図。
【図18】図18は、横方向連結構造体のさらに他の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下本発明の例を、図面で示す実施例に基づいて説明する。図1、図2、図3、図4は、従来の緩衝材用中空突起Spの例を示す。図1は、緩衝材用中空突起Spがシート1の片面方向に中空突起2a、2b、2c、・・・が存在する場合の例を示す。図2は緩衝材用中空突起Spがシート3の両面方向に、中空突起4a、4b、4c、・・・と中空突起5a、5b、5c、・・・が存在する場合の例を示す。図3は、緩衝材用中空突起Spがシート6の片面方向に高さが異なる中空突起7a、7b、7c、・・・が存在する例を示す。図4は、緩衝材用中空突起Spがシート8の両面方向に高さが異なる中空突起9a、9b、9c、・・・と高さが異なる中空突起10a、10b、10c、・・・からなる例を示す。これらは一例で、他に、両面突起の片面は一様な高さの中空突起で、他の面は高さが異なる中空突起とすることができ、これらも緩衝材用中空突起Spの一種である。以下の図面においては、これらのSpを全て示すのは煩雑であるので、一点鎖線で囲ってSpで示す。
【0031】
図5は、本発明のシート成形体11が、内部に緩衝材用中空突起Spを有し、シート成形体11の周辺部に高い中空突起Mh12a、12b、12c、・・・からなる例を示す斜視図である。これらの高い中空突起Mh12の高さHは、必ずしも一様な高さである必要はないが、内部の緩衝材用中空突起Spを構成する中空突起よりも高さが高いことを特徴とする。また、高い中空突起Mh12の数は、内部の緩衝材用中空突起Spを構成する中空突起よりも非常に少なく、後述するシート成形体の積層や連結用に使用される。
【0032】
図6は、本発明のシート成形体13が、内部に緩衝材用中空突起Spを有し、シート成形体13の周辺部に高い中空突起Mh14a、14b、14c、・・・と、低い中空突起Ml15a、15b、15c、・・・からなる例を示す斜視図である。これらの低い中空突起はMl15の高さHも、必ずしも一様な高さである必要はなく、内部の緩衝材用中空突起Spを構成する中空突起よりも高さと同等又はそれ以下でもよい。また、高い中空突起Mh14、低い中空突起Ml15の数は、内部の緩衝材用中空突起Spを構成する中空突起よりも非常に少なく、後述するシート成形体13の積層や連結用に使用される。なお、端部に配置された積層や連結に使用される高い中空突起Mhや低い中空突起Mlは、必ずしも1列である必要はなく、シートの大きさ等で、2列又は3列に設けることもできる。
【0033】
図7は、本発明のシート成形体16の内部に緩衝材用中空突起Spと共に高い中空突起Mh17a、17b、17c、・・・を有する例を示す斜視図である。この図では、高い中空突起Mh17のみを示したが、高い中空突起Mhと低い中空突起Mlが混在していていもよい。高い中空突起Mh17は、後述するシート成形体16の積層に使用される。
【0034】
図8は、本発明のシート成形体21の周辺部に高い中空突起Mh22a、22b、22c、・・・と、低い中空突起Ml23a、23b、23c、・・・を有する例を示す斜視図である。この図のシート成形体18を90度、又は180度回転を繰り返しつつ積層していくことで、後述の空間設置積層構造体を構成できることを特徴とする。
【0035】
図9も、本発明のシート成形体を90度、又は180度回転しつつ積層していくことで、後述の空間設置積層構造体を構成できる例をシートの斜視図で示す。シート成形体24の周辺部に高い中空突起Mh25a、25b、25c、・・・と、低い中空突起Ml26a、26b、26c・・・が混在している。このシート成形体24を、90度、又は180度回転することで、MhとMlの位置が入れ替わり、後述の空間設置積層構造体を構成できる。なおこの図では、高い中空突起Mh25a、25b、25c、・・・と、低い中空突起Ml26a、26b、26c・・・の先端が着色材でコートされている例で示した。着色材は、高い中空突起Mhは赤、低い中空突起Mlは青のように、色分けすることもできる。高い中空突起Mhと低い中空突起Lの両方が着色されている必要はなく、どちらか片方が着色されていればよい。また、高い中空突起Mhに着色する場合、全ての中空突起Mhに着色する必要はなく、よく使用される4隅など、一部であってもよい。
【0036】
図10は、従来の緩衝材用中空突起Spと、本発明の積層又は連結に使用される高い中空突起Mhと低い中空突起Mlとの,相対的な高さの関係を断面図で示す。この図では、従来の緩衝材用中空突起Spの例として、シートの両面に緩衝材用中空突起Sp31a、31b、31c、32a、32bが突起している。そして本発明の積層又は連結に使用される高い中空突起Mh33と低い中空突起Ml34も断面図で示す。これらのSp、Mh、Mlを構成する中空突起は、図に示すように、シート35が変形して、内部が空洞の突起を形成している。そして、Mhの突起の高さHmh、Mlの突起の高さHml、Spの突起の高さHspは、突起の高さの1/2における位置の突起の巾Wよりも2W以上大きいことが好ましく、3倍以上高いことがさらに好ましい。本発明の高い中空突起Mhの高さHmhは、Hml、Hspよりも高いことを特徴とする。
【0037】
図11図のA図は、本発明の高い中空突起Mh41の先端部がカットされて、孔42が開孔されている例を示す。図Bは、本発明の高い中空突起Mh43の先端に孔44が開けられて開孔している例を断面図で示す。これら先端部は、必ずしも頂点を意味するものではなく、これらの中空突起の高さHの上部H/3の部分を意味する。図Cは、発明の高い中空突起Mh45の高さHの上部H/3部に孔46が開けられて開孔している例を断面図で示す。これらの図は高い中空突起Mhの場合で示したが、低い中空突起Mlの場合でも同様である。このように開孔されていることにより、積層や連結のために上層の中空突起MhまたはMlに挿入されている下層の中空突起MhやMlの取り外しの際に減圧することがないので、取り外し作業がスムーズになる。
【0038】
図12図のA図は、本発明の高い中空突起Mh47の先端部の表面に離型剤48がコートされている例を断面図で示す。B図は、高い中空突起49の先端部の内部の表面に離型剤50がコートされている例を断面図で示す。図は、高い中空突起Mhの場合で示したが、低い中空突起Mlの場合でも同様である。図では離型剤は厚く描いているが、数ミクロンメータ或いはそれ以下であっても充分である。このように離型剤が存在していることにより、積層や連結のため上層の中空突起MhまたはMlに挿入されている下層の中空突起MhやMlの取り外し作業がスムーズになる。なお、図11に示した開孔と、この離型剤とを併用することもできる。
【0039】
図13は、本発明の密接積層構造体の例を斜視図で示す。下層のシート成形体51の高い中空突起Mh52a、52b、52c・・・(点線で示す)の先端が、上層のシート成形体53の高い中空突起54a、54b、54c、・・・の突起の中に挿入されて、密着構造積層構造体55となる。この図は2層の場合を示したが、3層以上の多層も同様に積層構造体とすることができる。
【0040】
図14は、本発明の空間設置積層構造体の例を斜視図で示す。下層のシート成形体61は、高い中空突起Mh62a、62b、62c・・・と低い中空突起Ml63a、63b、63c・・・(点線で示す)からなる。上層のシート成形体65は、高い中空突起66a、66b、66c、・・・と、低い中空突起Ml67a、67b、67c、・・・からなる。下層の高き中空突起Mh62の先端は、上層の低い中空突起Ml67の突起の中に挿入されて、空間設置積層構造体68となる。なお、上層のシート成形体65を180度回転して積層すると、密接積層構造体とすることができる。この図は2層の場合を示したが、3層以上の多層も同様に積層構造体とすることができる。
【0041】
図15は、空間設置積層体の入れ子構造の例を断面図で示す。最下層のシート成形体71は、両面突起の緩衝材用中空突起Spと、高い中空突起Mh72と低い中空突起73を有している。このシート成形体71を180度回転したのが下から2番目の層のシート成形体74であり、高い中空突起Mh75と低い中空突起76は、シート成形体71の高い中空突起Mh72と低い中空突起73とが180回転されて位置している。シート成形体71の高い中空突起72の先端は、上層のシート成形体74の低い成形体Ml76の突起の中に挿入されて、シート成形体71とシート成形体74の間に物品77が入れ子の状態で収納されている。同様に下から3層目のシート成形体78は、シート成形体74を180度回転させたものであり、シート成形体74とシート成形体78の間に物品79が入れ子の状態で収納されている。同様にして、シート成形体80を設け、物品81、82が収納できる。最上層は、同様なシート成形体を設けてもよいが、エアーバッグやクッション材等の他の緩衝材83を使用してもよい。
【0042】
図16は、横方向連結構造体の例を斜視図で示す。シート成形体91は複数の高い中空突起Mh92a、92b、92c・・・が端部に存在し、また、シート成形体93は複数の高い中空突起Mh94a、94b、94c、・・・が端部に存在する。このシート成形体91とシート成形体93のお互いの中央部は重ならず端部のみで、シート成形体91の高い中空突起92a、92b、92c・・・(点線で示す)の先端が、上層のシート成形体93の高い中空突起Mh94a、94b、94c・・・によって形成される内部の空洞に挿入され、上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行く。このような作業を繰り返すことにより、シート成形体を平面的に連結して面積を拡げていくことができる。
【0043】
図17は、横方向連結構造体の他の例を平面図で示す。シート成形体101、102、103、104が端部で、中空突起Mh、Mlによって連結されている。シート成形体101は、端部においてシート成形体102、104の上に重なって横方向に連結されている。シート成形体103は、端部においてシート成形体102、1044の下層となって重なり、横方向に連結されている。この図では、上層のシート成形体の高い中空突起Mhによって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の低い中空突起Mlの突起の先端が挿入されるように構成されている。また、各シート成形体の4隅に切り欠き部105a、105b、105c・・・を有しており、その部分が多重に重なることがないようになっている。同様に他のシート成形体102、103、104も4隅に切り欠き部を有する。なお、この図では、4隅部分は切り落とされている例を示したが、単に中空突起を設けないことによって、多重に重なる際の弊害を防止することもできる。
【0044】
図18は、横方向連結構造体のさらに他の例を平面図で示す。シート成形体111、112、113の端部で、中空突起Mh、Ml(図示していない)によって縦方向に連結されている。同様に、シート成形体114、115、116が端部で、中空突起Mh、Ml(図示していない)によって縦方向に連結されている。シート成形体111、112、113とシート成形体114、115、116は、それらの中間において、シート成形体117、118によって連結されているが、シート成形体117、118の4隅は、シート成形体111、112、113、114、115、116の4隅とは重なっていない。これらの全てのシート成形体の端部の中間部には切り欠き部119a、119b、120a、120b、121a、121b、122a、122b、123a、123b、124a、124b、125a、125b、126a、126bを有している。そのようにすることにより、シート成形体112とシート成形体117、118の多重重なり部は、3重に重なる中空突起部がなくなり、多重に重なる際の弊害を防止することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の緩衝材用途の中空突起を有するシート成形体は、複数のシート成形体を積層や連結する場合に使用される。
【符号の説明】
【0046】
1:シート、 2:中空突起、 3:シート、 4:中空突起、 5:中空突起、
6:シート、 7:中空突起、 8:シート、 9:中空突起、 10:中空突起。
11:シート成形体、 12:高い中空突起Mh、 13:シート成形体、
14:高い中空突起Mh、 15:低い中空突起Ml、
16:シート成形体、 17:高い中空突起Mh。
21:シート成形体、 22:高い中空突起Mh、 23:低い中空突起Ml、
24:シート成形体、 25:高い中空突起Mh、 26:低い中空突起Ml。
31、32:緩衝材用中空突起Sp、33:高い中空突起Mh、
34:低い中空突起Ml、 35:シート成形体。
41、43、45:高い中空突起Mh、 42、44、46:孔、
47、49:高い中空突起Mh、48、50:離型剤。
51、53:シート成形体、 52、54:高い中空突起Mh、
55:密接積層構造体。
61、65:シート成形体、 62、65:高い中空突起Mh、
63、67:低い中空突起Ml、 68:空間設置積層構造体。
71、74、78、80:シート成形体、 72、75:高い中空突起Mh、
73、76:低い中空突起Ml、77、79、81、82:物品、 83:緩衝材。
91、93:シート成形体、 92、94:高い中空突起Mh。
101、102、103、104:シート成形体、 105:切り欠き部。
111、112、113、114、115、116、117、118:シート成形体、
119、120、121、122、123、124、125、126、127、128:切り欠き部。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数シートを積層又は連結した構造体を構成することが可能な多数の中空突起を有するシート成形体に関し、特に、複数のシート成形体による密着積層構造体、空間設置積層構造体、及び横方向連結構造体を構成することが可能なシート成形体、及びそれらからなる積層および連結構造体等に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂シートが変形されてシートの片面又は両面に多数の中空突起を有するシート成形体およびその製造方法が提案されている(例えば、特開昭48−75678号、特公昭62−15330号、国際公開WO2004/073958、特開2006−69076、特開2009−173341)。これらの出願の中空突起を有するシート成形体は、主として精密機械や電気製品等の物品の緩衝材用包装や輸送時の保護シートとして用いることができる(以下、これらの従来の中空突起を有するシート成形体を緩衝材用に用いられるシート成形体という)。これらの緩衝材用に用いられるシート成形体を多数枚重ねて貯蔵や輸送する際は、下層のシート成形体の低い部分と上層のシート成形体の高い突起を組み合わせることで、上下に積み重ねて積載して貯蔵や運送することも原理的には可能である。しかし、シート成形体を構成する多数の突起の配列に少しでも狂いが生じると、上下のシートの嵌合ができず、部分的な突起体に無理がかかって破損することや、全体として嵩張ってしまい、また積載が崩れるなど、効率的に安定して貯蔵や輸送することができないことが多かった。また、上下のシートが多数の中空突起で嵌合していると、運送後、上下のシートの取り外しが困難になる場合も多かった。したがって、上下のシートができるだけコンパクトに密着して安定して貯蔵や輸送ができ、輸送後は取り外しが容易なようなシート成形体が望まれていた。
【0003】
また、本出願人の先発明である特開2009−173341号に示されているように、シート成形体を構成するそれぞれの突起が高さを異にする場合、その高さを異にする中空突起で品物を上下から挟み、品物を入れ子の状態で固定したい場合がある。それらの構造体を積層して、入れ子の状態を維持したまま、より安定して貯蔵や輸送ができる構造のシート成形体が望まれていた。
【0004】
また、本発明の中空突起シート成形体は、本出願人の先発明である特開2009−173341号に示されているように、特定の型で一定面積ごとに製造する場合は、製造される成形体シートの面積には一定の制限がある。また、連続的に製造する場合(国際公開WO2004/073958)でも、製品の幅に一定の制限があった。この面積を大きくするためには、製造装置が大型になり、経済的でない。したがって、小さい面積のシート成形体でも、横方向に連結して、シート成形体の面積を安定して確実に拡げていく具体的手段が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭48−75678号公報(第1頁、第2頁、第11頁左下欄、第1図、第5図)。
【特許文献2】特公昭62−15330号公報(第1頁、第2頁、第1図)。
【特許文献3】国際公開WO2004/073958号公報(第1頁、第2頁、第1図)。
【特許文献4】特開2006−69076号公報(第1頁、第2頁、第1図、第2図)。
【特許文献5】特開2009−173341号公報(第1頁、第2頁、第1図、第2図)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、シート成形体を積層して貯蔵や輸送する際、上下のシートができるだけコンパクトに密着して安定して貯蔵や輸送ができ、輸送後は取り外しが容易なようにすることにある。また本発明は、本出願人の先発明である特開2009−173341号に示されているように、シート成形体を構成するそれぞれの突起が高さを異にする場合、その高さを異にする中空突起で品物を上下から挟み、品物を入れ子の状態で固定したい場合に、中空突起シート構造体を、精密機器などの品物を中に入れた形態で輸送に用い、また、最終用途として商品包装形態として使用することができるようにすることにある。また本発明は、成形されたシートを横方向に連結して、シート成形体の面積を安定して確実に拡げていく具体的手段を提供することにある。さらに本発明は、積層や連結された上層の中空突起に下層の中空突起が挿入されている状態から、作業性良く簡単にその挿入状態を外し、上層と下層とを分離を容易にしていく手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の目的を達成するためになされたものであって、そのシート成形体としての特徴は、次の通りである。本発明は、樹脂シートの一部が変形されることによって緩衝材用に使用される多数の中空突起(Sp)が形成されているシート成形体であって、このシート成形体のシートの片方の面側に突出しており、積層又は連結に使用され、緩衝用中空突起(Sp)より高い複数の中空突起(Mh)を有する積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体に関する。また本発明は、前記多数の緩衝用中空突起(Sp)とは別に、前記シート成形体の前記高い中空突起(Mh)と同じシート面側に突出しており、積層又は連結に使用され、この高い中空突起(Mh)より低い中空突起(Ml)を複数有する前記の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体に関する。また本発明は、前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の突起の先端部である、高さHの上部H/3の部分が開孔されている前記の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体に関する。また本発明は、前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の突起の表面/又は内部に離型剤がコートされている前記の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体に関する。また本発明は、前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の少なくとも一部の突起の表面に着色材がコートされている前記積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体に関する。さらに本発明は、 前記シート成形体の前記高い中空突起(Mh)と、前記低い中空突起(Ml)とがこのシート成形体の端部に存在する前記の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体に関する。
【0008】
また本発明の積層構造体としての特徴は、次の通りである。本発明は前記シート成形体の多層が上下重なるように積層されることにより、上層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入されることにより、上下層のシート成形体が密接して積層されている前記シート成形体よりなる密接積層構造体に関する。また本発明は、前記シート成形体の多層が上下重なるように積層されることにより、上層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の先端が挿入されるように上下層のシート成形体が積層されて、上下のシート間に一定の空間が設けられる前記シート成形体よりなる空間設置積層構造体に関する。また本発明は、前記シート成形体の2層が上下重なるように積層される際、上層のシート成形体と下層のシート成形体とがそのまま積層される場合(平行積層)と、上層のシート成形体が下層のシート成形体を90度又は180回転されて積層される場合(回転積層)により、下記AとBとの二つの構造の積層構造体となる前記の積層可能な中空突起を有するシート成形体に関する。
A.上層のシート成形体の複数の前記高い中空突起(Mh)の内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入され、上層のシート成形体の複数の前記低い中空突起(Ml)の内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)の突起の先端が挿入され、上下層のシート成形体が密接して積層されている密接積層構造体。
B.上層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)の内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の先端が挿入され、上層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)の先端が挿入され、上下のシート間に一定の空間が設けられて積層されている空間設置積層構造体。
【0009】
また本発明の横方向連結構造体としての特徴は、次の通りである。本発明は前記複数の高い中空突起Mhが前記シート成形体の端部に存在し、このシート成形体の2層がシート成形体の中央部は重ならず端部のみ積層されて、2層を平面的に横方向へ連結されていく際、上層のシート成形体の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入され、 上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行く前記シート成形体の横方向連結構造体に関する。また本発明は、前記複数の高い中空突起Mhと前記複数の低い中空突起Mlとが前記シート成形体の端部に存在し、このシート成形体の2層がシート成形体の中央部は重ならず端部のみ積層して、2層を平面的に横方向へ連結される際、上層のシート成形体の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の低い中空突起(Ml)の突起の先端が挿入され、上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行く前記シート成形体の横方向連結構造体に関する。さらに本発明は、前記シートの端部には中空突起を設けていない部分を有する前記シート成形体からなる前記の連結可能なシート成形体に関する。
【0010】
本発明は、樹脂シートの片面又は両面に、中空突起を有することを特徴とする。樹脂は、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリカーボネート、ナイロン6やナイロン66等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニルやポリ塩化ビニリデン等のビニル樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル酸メチル樹脂等のアクリル樹脂、ポリテトラフロロエチレン等のフッ素系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂等の熱可塑性樹脂が使用される。さらに、エポキシ樹脂やフェノール樹脂、尿素樹脂等の熱硬化性樹脂であっても、加熱等によって、荷重たわみ温度以上で流動性を示す樹脂であれば使用することができる。また、上記の樹脂は、単体で使用されるばかりでなく、ブレンド等により樹脂相互を組み合わせて使用することも出来、さらに可塑剤や充填剤、酸化防止剤、安定剤、滑剤等の添加剤等を加えて使用することもできる。また本発明は、土木用等にも使用されるので、ポリ乳酸系やポリブチレンサクシネート系等の生分解性樹脂や、ビニルケトン系ポリマー等の光分解性樹脂などの分解性樹脂も好ましい。また、本発明は柔らかいシート成形体をも目的としており、SBSやポリウレタン等の熱可塑性エラストマーも使用することができる。そして、本発明に使用される樹脂としては、ポリプロピレン等のヒンジ特性のよい樹脂は、本発明の高さが異なる中空突起のもつ弾性的特徴を最も発揮しやすいので特に好ましい。
【0011】
本発明は、樹脂シートの片面又は両面に、その樹脂シートの一部が変形されることによって形成された多数の中空突起を有する。ここで使用される樹脂シートは、上記樹脂がシート状に成形されたものを意味する。シートは、厚みにおいて特に制限はなく、通常フィルムや膜と呼ばれるものも含むが、厚みは、好ましくは10μm以上であって3mm以下、さらに好ましくは50μm以上であって2mm以下、100μm以上であって1mm以下が最も好ましい。10μmに達しない場合や3mmを越える場合は、中空突起を有するシート成形体を安定して成形することが困難だからである。本発明によるシート成形体は、シート状物の片面に中空突起が形成されたシート成形体と、シート状物の両面に中空突起が形成されたシート成形体がある。片面に中空突起が形成された立体構造は、片面の中空突起の数を多くすることができ、そのため圧縮強度が強く、また、底面には既にシート状を形成しているので、中空突起の先端にシート状物を連結するだけで、天地にシート状物を有する構造物とすることができる。両面に中空突起を形成された立体構造は、シート成形体の厚みが大きくなり、よりカサ高性のある構造物とすることができる特徴を有する。したがって、片面に中空突起を有する成形体を用いるか、両面に中空突起を有する成形体を用いるかは、これらの特性に合わせて、用途により判断される。
【0012】
本発明のシート成形体における中空突起は、突起の形状が細い針状突起であってもよく、また太い突起にも使用される。突起の先端は、突起を縦割りした場合の断面が丸みをおびた放物線状であっても良く、円筒や裁頭円錐形であっても良い。中空突起の先端は、細い突起の形状もとることができ、その場合は、突起部分で柔軟に変形し対象物に対して柔らか接触感を生じさせることができる。また、中空突起の頂点が平面であると、圧縮力が均等にかかりやすい特性もあり、さらに頂点が平面であると、他のシート状物との接合性も良くなる。これらの突起の先端の形状は、主として、本発明を製造する際の針状型の形状によって定められる。また、突起をヨコに切断した場合の断面は、円ばかりでなく、楕円や四角、三角等の種々の形状を有することもできる。またこれらの形状の混在であってもよい。
【0013】
本発明における樹脂シートの片面又は両面に中空突起を有することを特徴とする。本発明における中空突起は3種類ある。その一つは、シート成形体の内部に構成されている従来の緩衝材用に使用される中空突起(緩衝材用 Shock-absorbing uses に使用される中空突起peak、以下Spで表す)である。この緩衝材用中空突起は、従来発明(特許文献1−5)で公知のもので、シートの片面に中空突起(以下、片面突起と略す場合がある)がある場合と、シートの両面に中空突起(以下、両面突起と略す場合がある)がある場合がある。またこれらの中空突起の高さも一様ではなく、異なる高さの中空突起から構成されている場合がある(特許文献5)。
【0014】
本発明の緩衝材用中空突起Spは、樹脂シートの片面又は両面に多数存在することを特徴とする。多数とは、平方メータ当たり10個以上、好ましくは数10個、大きい場合は数100個、数千個以上の突起を有する。中空突起の数は、主として本発明の太さに依存するが、突起が細い場合は、中空突起を数多く設けることができる。中空突起の数が多いことは、それだけ圧縮強度や緩衝効果が大きいことを意味し、突起が細くて高い場合は、柔軟でカサ高であることを意味する。なお、本発明の成形体における中空突起は、一定のピッチを必ず有する必要はなく、ランダムなピッチ、また単純な一定ピッチではなく、複雑なピッチを有する場合もある。
【0015】
上述の本発明における中空突起の3種類の内の他の二つは、シート面に対して片側の面に突出しており、多層に積層(multitier arrangement)に使用される複数の高い突起(high peakで、以下Mhで表す)と複数の低い突起(low peak、以下Mlで表す)である。このMh及びMlで示される中空突起は、本発明特有の中空突起で、本発明の中空突起を有するシート成形体を多層に積層する場合に使用される。多層に積層するのは、本発明 の多数のシート成形体を倉庫等に貯蔵する場合や、運搬される場合等において、安定して重ねて貯蔵等するするためであり、また後述の入れ子構造を保ちながら積層する場合である。多層は、2層を含み複数の層で、数10層、数100層である場合もある。本発明において、積層用高い中空突起Mhは必ず必要であるが、積層用低い中空突起Mlは、必ずしも必要でない場合がある。
【0016】
本発明の積層用の高い中空突起Mhの中空突起の高さは、緩衝材用の中空突起Spや積層用の低い中空突起Mlよりも高いことを特徴とする。すなわち、
積層用高い中空突起Mhの高さ>緩衝材用中空突起Spの高さ又は積層用低い中空突起Mlの高さ
この積層用の中空突起Mh、Mlのシート成形体中に存在する数は、複数で、緩衝材用中空突起Spの数より少ない。積層用の高い中空突起Mhの数は、緩衝材用中空突起Spの数の数分の1、好ましくは10分の1以下である。積層用の低い中空突起Mlの数も積層用中空突起Mhの数と同等である。シート成形体の本来の機能である緩衝作用を減じる度合いを少なくするためであり、また、数が少ないので、積層作業や積層されたものを単体に戻す作業におけるセッティングが簡便になる。MhおよびMlの数は、それぞれ2−3個から数10個程度が多く採用される。
【0017】
本発明の高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の突起の先端部は、開孔されていることが望ましい。先端部は、これらの中空突起の高さHの上部H/3の部分を意味する。これらの先端部が開孔されていることにより、後述のようにシート成形体が積層や連結された場合、重なっている中空突起相互間を取り外す際に、重なりの空気が減圧になり、取り外しが困難になることを防止するためである。孔は、大きく開孔している必要はなく、数mm程度で十分であり、孔の形状も丸や楕円で等、特に特定しない。要は、空気の流通があればよい。
【0018】
また、前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の突起の表面/又は内部に離型剤がコートされていることが望ましい。これらの先端部の表面又は内部に離型剤がコートされていることにより、後述のようにシート成形体が積層や連結された場合、重なっている中空突起相互間を取り外す際に、重なり部が離型材ですべりが良く、スムーズに取り外しができるようになる。離型剤はシリコン系、フッ素系、アクリル系など種々のタイプが使用され、それらのエマルジョン型、溶剤型、粉末型などを、塗布、刷毛塗り、スプレー等でコートする。
【0019】
さらに、前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の少なくとも一部の突起の表面、特に突起の先端部の表面に着色材がコートされていることが望ましい。少なくとも一部としたのは、高い中空突起Mhのみの場合や、さらにその一部のシート成形体の4隅に配置される中空突起のみの場合などがある。着色は1色とは限らず、高い中空突起Mhと低い中空突起Mlを異なる色にすることや、4隅に配置される中空突起に異なる色にするなど、種々の色の態様もある。着色材がコートされていることにより、従来の緩衝材用中空突起Spと本発明の高い中空突起(Mh)と前記低い中空突起(Ml)とを視覚的に際立たせ、明確にでき、後述のシート成形体の積層や連結作業が容易になる。なお、この着色材は、上述の離型剤成分を含ませ、両者を兼ねさせることもできる。
【0020】
本発明のシート成形体において、積層用中空突起MhおよびMlが存在する場所には特に限定はないが、シート成形体の端に存在することが望ましい。端部にあることにより、積層作業や積層されたものを単体に戻す作業が容易な場合が多いからである。端部は、長いシートにおいては両端にあり、正方形や長方形のシートにおいては、その4辺にある。
【0021】
本発明のシート成形体においてシートより緩衝材用の中空突起Spや積層用中空突起MhおよびMlを形成させる手段は、既に特許文献1−5等で利用されているものが使用される。特に積層用中空突起MhおよびMlを形成させる手段は、特許文献5で例示されている手段が有効である。
【0022】
本発明の中空突起を有するシート成形体を多層積層していく際に、本発明では二つの構造体をとることができる。その一つが密接積層構造体で、多層のシート成形体が上下重なるように積層されることにより、上層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入されることにより、上下層のシート成形体が密接して積層されている。密着とは、シートの厚みや緩衝材用中空突起Spの高さ等で一定ではないが、緩衝材用中空突起Spの高さの3分の1未満、さらに5分の1以下にすることが多い。この場合、低い中空突起Mlは必ずしも必要とされないが、低い中空突起Mlが存在する場合は、上層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)の突起の先端が挿入されることが望ましい。本発明のシート成形体が積層されて密接積層構造体をとることにより、多数のシート成形体をコンパクトに安定して、貯蔵や運搬を行うことができる。このように非常に安定しているので、輸送に際しても、防塵対策程度で、荷物を安定化させるための特別の包装を要さないのも特徴のひとつである。
【0023】
もう一つの積層構造体は空間設置積層構造体で、本発明の多層のシート成形体が上下重なるように積層されることにより、上層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の先端が挿入されるように精密に上下層のシート成形体が積層されて、上下のシート間に一定の空間が設けられる。一定の空間は、シートの厚みや緩衝材用中空突起Spの高さによって異なるが、緩衝材用中空突起Spの3分の1以上で、2分の1以上で使用されることが多い。本発明のシート成形体が積層されて空間設置積層構造体をとることにより、多数のシート成形体のシート間に一定の空間を設けて積層でき、その空間に製品を入れ子のように保持して、貯蔵や運搬を行うことができる。この空間設置積層構造体に使用される緩衝材用シート成形体の中空突起Sp部分は、本出願人の先願発明(特許文献5)からなることが特に好ましい。高さが異なるシート成形体により、精密機械や電気部品などの製品形状に合わせた入れ子構造になるようにシート成形体を上下合わせ、本発明の積層用の中空突起Mh及びMlによって結合される空間設置積層構造体として、貯蔵や運搬、又は最終的な製品包装形態としても使用できるようにすることができる。
【0024】
本発明のシート成形体においては、その2層が上下重なるように積層される際、そのまま積層される場合(平行積層)と、上層のシート成形体が90度又は180回転されて積層される場合(回転積層)により、上記密接積層構造体と空間設置積層構造体の二つの構造の積層構造体とすることができることを特徴とする。この2層は、多層に積層する際、その上の層とも同様な関係で、平行積層又は回転積層することで、密接積層構造体又は空間設置積層構造体の選択した構造の積層構造体とすることができる。したがって、シート成形体のみを貯蔵や輸送する場合は、密接積層構造体を利用し、シートの販売先で、商品を入れて入れ子状態で貯蔵や輸送や最終包装形態にする場合は空間設置積層構造体を採用するなど、一つの構造のシート成形体で2通りの利用ができることも本発明の特徴の一つである。
【0025】
本発明の高い中空突起Mhと低い中空突起Mlがシート成形体の端部に存在する場合、これらのMhとMlは、本発明のシート成形体を横方向に連結していく場合の接合ジョイントとしても使用することができる。横方向とは、平面的と云い換えることもでき、平面的に連結してシート成形体の面積を拡大していく手段である。その連結形態の一つとして、本発明シート成形体の2層がシート成形体の中央部は重ならず端部のみ積層されて、2層を平面的に横方向へ連結されていく際、上層のシート成形体の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入されて、上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行くことにより、シート成形体の横方向連結構造体を構成することができる。この場合は、Mhが使用され、Mlは必ずしも必要としない。このような作業を通じて、本発明のシート成形体を平面的に次々と横方向へ拡げていくことができる。
【0026】
もう一つの連結形態として、上層のシート成形体の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の低い中空突起(Ml)の突起の先端が挿入され、上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行くことができ、シート成形体の横方向連結構造体を構成することができる。この場合は、連結部のジョイントは、上記のMhでジョイントした場合に比較して、ジョイント結合は緩いが、ジョイント作業、又はその取り外し作業が容易である。従来の緩衝材用中空突起Spのみでも連結が可能であるが、中空突起Spの数が多く、作業性が悪いので、数が少ない連結機能に特化した中空突起Mh,Mlを設けることにより、作業性が格段と良くなった。
【0027】
このように横方向連結構造体とするシート成形体においては、その端部には中空突起を設けない部分が存在することが望ましい。特に4隅においては、前後左右のシート成形体が重なるために多重になる場合があり、連結の妨げになるので、あらかじめ4隅には中空突起を設けないことが望ましい。また、必ずしも4隅でなくとも端部であれば、同様の作用をすることもできる。端部に中空突起を設けない場合、単にシート上に中空突起を設けないばかりでなく、4隅のシートそのものを切り取って除いておくこともできる。
【発明の効果】
【0028】
本発明は、従来の多数の中空突起(Sp)を有するシート成形体に、積層用の中空突起Mh、Mlを設けることにより密接積層構造体となり、シート成形体を積層して貯蔵や輸送する際、上下のシートができるだけコンパクトに密着して安定して貯蔵や輸送ができ、輸送後は取り外しを容易にした。それは従来の中空突起Spより圧倒的に少ない積層用中空突起Mh、Mlを設けることにより、積層や取り外し作業が格段と容易になった。また本発明は、本出願人の先発明である特許文献5に示されているように、シート成形体を構成するそれぞれの突起が高さを異にする場合、その高さを異にする中空突起で品物を上下から挟み、品物を入れ子の状態で固定したい場合に、本発明の空間設置積層構造体をとることにより、中空突起シート構造体を精密機器などの品物を中に入れた形態での輸送に用い、また、最終用途として商品包装形態として使用することができるようにした。また本発明では、一つの構造のシート成形体で密接積層構造体と空間設置積層構造体の2種類の構造をとることができ、シート成形体のみを貯蔵や輸送する場合は、密接積層構造体を利用し、シートの販売先で、商品を入れて入れ子状態で貯蔵や輸送や最終包装形態にする場合は空間設置積層構造体を採用するなど、一つの構造のシート成形体で多面的な活用が図れる。さらに本発明においては、これら中空突起Mh及びMlを利用して、成形されたシートを横方向に連結して、シート成形体の面積を簡便に安定して確実に拡げていくことを可能にした。また、本発明では、積層や連結された上層の中空突起に下層の中空突起が挿入されている状態から、作業性良く簡単にその挿入状態を外し、上層と下層とを分離を容易にしていく手段も提供する。さらに、本発明の高い中空突起(Mh)と低い中空突起(Ml)を着色することにより視覚的に際立たせ、明確にでき、シート成形体の積層や連結作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、従来の緩衝材用中空突起Spの例。
【図2】図2は、従来の緩衝材用中空突起Spの他の例。
【図3】図3は、従来の緩衝材用中空突起Spのさらに他の例。
【図4】図4は、従来の緩衝材用中空突起Spのさらに他の例。
【図5】図5は、本発明のシート成形体が、内部に緩衝材用中空突起Spを有し、周辺部に積層用高い中空突起Mhを有する例を示す斜視図。
【図6】図6は、本発明のシート成形体が、内部に緩衝材用中空突起Spを有し、周辺部に積層用高い中空突起Mhと低い中空突起Mlを有する例を示す斜視図。
【図7】図7は、本発明のシート成形体が、シートの内部に積層用高い中空突起Mhを有する例を示す斜視図。
【図8】図8は、本発明のシート成形体の周辺部に積層用高い中空突起Mhと低い中空突起Mlを有する他の例を示す斜視図。
【図9】図9は、本発明のシート成形体の周辺部に積層用高い中空突起Mhと低い中空突起Mlを有するさらに他の例を示す斜視図。
【図10】図10は、従来の緩衝材用中空突起Spと、本発明の積層又は連結に使用される高い中空突起Mhと低い中空突起Mlとの,相対的な高さの関係を示す断面図。
【図11】図11は、本発明の積層用高い中空突起Mhの先端部に開孔部を有する例を示す断面図。
【図12】図12は、本発明の積層用高い中空突起Mhの先端部または内部に離型剤を有する例を示す断面図。
【図13】図13は、本発明の密接積層構造体の例を示す斜視図。
【図14】図14は、本発明の空間設置積層構造体の例を示す斜視図。
【図15】図15は、本発明の空間設置積層構造体の入れ子構造の例を示す断面図。
【図16】図16は、横方向連結構造体の例を示す斜視図。
【図17】図17は、横方向連結構造体の他の例を示す平面図。
【図18】図18は、横方向連結構造体のさらに他の例を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下本発明の例を、図面で示す実施例に基づいて説明する。図1、図2、図3、図4は、従来の緩衝材用中空突起Spの例を示す。図1は、緩衝材用中空突起Spがシート1の片面方向に中空突起2a、2b、2c、・・・が存在する場合の例を示す。図2は緩衝材用中空突起Spがシート3の両面方向に、中空突起4a、4b、4c、・・・と中空突起5a、5b、5c、・・・が存在する場合の例を示す。図3は、緩衝材用中空突起Spがシート6の片面方向に高さが異なる中空突起7a、7b、7c、・・・が存在する例を示す。図4は、緩衝材用中空突起Spがシート8の両面方向に高さが異なる中空突起9a、9b、9c、・・・と高さが異なる中空突起10a、10b、10c、・・・からなる例を示す。これらは一例で、他に、両面突起の片面は一様な高さの中空突起で、他の面は高さが異なる中空突起とすることができ、これらも緩衝材用中空突起Spの一種である。以下の図面においては、これらのSpを全て示すのは煩雑であるので、一点鎖線で囲ってSpで示す。
【0031】
図5は、本発明のシート成形体11が、内部に緩衝材用中空突起Spを有し、シート成形体11の周辺部に高い中空突起Mh12a、12b、12c、・・・からなる例を示す斜視図である。これらの高い中空突起Mh12の高さHは、必ずしも一様な高さである必要はないが、内部の緩衝材用中空突起Spを構成する中空突起よりも高さが高いことを特徴とする。また、高い中空突起Mh12の数は、内部の緩衝材用中空突起Spを構成する中空突起よりも非常に少なく、後述するシート成形体の積層や連結用に使用される。
【0032】
図6は、本発明のシート成形体13が、内部に緩衝材用中空突起Spを有し、シート成形体13の周辺部に高い中空突起Mh14a、14b、14c、・・・と、低い中空突起Ml15a、15b、15c、・・・からなる例を示す斜視図である。これらの低い中空突起はMl15の高さHも、必ずしも一様な高さである必要はなく、内部の緩衝材用中空突起Spを構成する中空突起よりも高さと同等又はそれ以下でもよい。また、高い中空突起Mh14、低い中空突起Ml15の数は、内部の緩衝材用中空突起Spを構成する中空突起よりも非常に少なく、後述するシート成形体13の積層や連結用に使用される。なお、端部に配置された積層や連結に使用される高い中空突起Mhや低い中空突起Mlは、必ずしも1列である必要はなく、シートの大きさ等で、2列又は3列に設けることもできる。
【0033】
図7は、本発明のシート成形体16の内部に緩衝材用中空突起Spと共に高い中空突起Mh17a、17b、17c、・・・を有する例を示す斜視図である。この図では、高い中空突起Mh17のみを示したが、高い中空突起Mhと低い中空突起Mlが混在していていもよい。高い中空突起Mh17は、後述するシート成形体16の積層に使用される。
【0034】
図8は、本発明のシート成形体21の周辺部に高い中空突起Mh22a、22b、22c、・・・と、低い中空突起Ml23a、23b、23c、・・・を有する例を示す斜視図である。この図のシート成形体18を90度、又は180度回転を繰り返しつつ積層していくことで、後述の空間設置積層構造体を構成できることを特徴とする。
【0035】
図9も、本発明のシート成形体を90度、又は180度回転しつつ積層していくことで、後述の空間設置積層構造体を構成できる例をシートの斜視図で示す。シート成形体24の周辺部に高い中空突起Mh25a、25b、25c、・・・と、低い中空突起Ml26a、26b、26c・・・が混在している。このシート成形体24を、90度、又は180度回転することで、MhとMlの位置が入れ替わり、後述の空間設置積層構造体を構成できる。なおこの図では、高い中空突起Mh25a、25b、25c、・・・と、低い中空突起Ml26a、26b、26c・・・の先端が着色材でコートされている例で示した。着色材は、高い中空突起Mhは赤、低い中空突起Mlは青のように、色分けすることもできる。高い中空突起Mhと低い中空突起Lの両方が着色されている必要はなく、どちらか片方が着色されていればよい。また、高い中空突起Mhに着色する場合、全ての中空突起Mhに着色する必要はなく、よく使用される4隅など、一部であってもよい。
【0036】
図10は、従来の緩衝材用中空突起Spと、本発明の積層又は連結に使用される高い中空突起Mhと低い中空突起Mlとの,相対的な高さの関係を断面図で示す。この図では、従来の緩衝材用中空突起Spの例として、シートの両面に緩衝材用中空突起Sp31a、31b、31c、32a、32bが突起している。そして本発明の積層又は連結に使用される高い中空突起Mh33と低い中空突起Ml34も断面図で示す。これらのSp、Mh、Mlを構成する中空突起は、図に示すように、シート35が変形して、内部が空洞の突起を形成している。そして、Mhの突起の高さHmh、Mlの突起の高さHml、Spの突起の高さHspは、突起の高さの1/2における位置の突起の巾Wよりも2W以上大きいことが好ましく、3倍以上高いことがさらに好ましい。本発明の高い中空突起Mhの高さHmhは、Hml、Hspよりも高いことを特徴とする。
【0037】
図11図のA図は、本発明の高い中空突起Mh41の先端部がカットされて、孔42が開孔されている例を示す。図Bは、本発明の高い中空突起Mh43の先端に孔44が開けられて開孔している例を断面図で示す。これら先端部は、必ずしも頂点を意味するものではなく、これらの中空突起の高さHの上部H/3の部分を意味する。図Cは、発明の高い中空突起Mh45の高さHの上部H/3部に孔46が開けられて開孔している例を断面図で示す。これらの図は高い中空突起Mhの場合で示したが、低い中空突起Mlの場合でも同様である。このように開孔されていることにより、積層や連結のために上層の中空突起MhまたはMlに挿入されている下層の中空突起MhやMlの取り外しの際に減圧することがないので、取り外し作業がスムーズになる。
【0038】
図12図のA図は、本発明の高い中空突起Mh47の先端部の表面に離型剤48がコートされている例を断面図で示す。B図は、高い中空突起49の先端部の内部の表面に離型剤50がコートされている例を断面図で示す。図は、高い中空突起Mhの場合で示したが、低い中空突起Mlの場合でも同様である。図では離型剤は厚く描いているが、数ミクロンメータ或いはそれ以下であっても充分である。このように離型剤が存在していることにより、積層や連結のため上層の中空突起MhまたはMlに挿入されている下層の中空突起MhやMlの取り外し作業がスムーズになる。なお、図11に示した開孔と、この離型剤とを併用することもできる。
【0039】
図13は、本発明の密接積層構造体の例を斜視図で示す。下層のシート成形体51の高い中空突起Mh52a、52b、52c・・・(点線で示す)の先端が、上層のシート成形体53の高い中空突起54a、54b、54c、・・・の突起の中に挿入されて、密着構造積層構造体55となる。この図は2層の場合を示したが、3層以上の多層も同様に積層構造体とすることができる。
【0040】
図14は、本発明の空間設置積層構造体の例を斜視図で示す。下層のシート成形体61は、高い中空突起Mh62a、62b、62c・・・と低い中空突起Ml63a、63b、63c・・・(点線で示す)からなる。上層のシート成形体65は、高い中空突起66a、66b、66c、・・・と、低い中空突起Ml67a、67b、67c、・・・からなる。下層の高き中空突起Mh62の先端は、上層の低い中空突起Ml67の突起の中に挿入されて、空間設置積層構造体68となる。なお、上層のシート成形体65を180度回転して積層すると、密接積層構造体とすることができる。この図は2層の場合を示したが、3層以上の多層も同様に積層構造体とすることができる。
【0041】
図15は、空間設置積層体の入れ子構造の例を断面図で示す。最下層のシート成形体71は、両面突起の緩衝材用中空突起Spと、高い中空突起Mh72と低い中空突起73を有している。このシート成形体71を180度回転したのが下から2番目の層のシート成形体74であり、高い中空突起Mh75と低い中空突起76は、シート成形体71の高い中空突起Mh72と低い中空突起73とが180回転されて位置している。シート成形体71の高い中空突起72の先端は、上層のシート成形体74の低い成形体Ml76の突起の中に挿入されて、シート成形体71とシート成形体74の間に物品77が入れ子の状態で収納されている。同様に下から3層目のシート成形体78は、シート成形体74を180度回転させたものであり、シート成形体74とシート成形体78の間に物品79が入れ子の状態で収納されている。同様にして、シート成形体80を設け、物品81、82が収納できる。最上層は、同様なシート成形体を設けてもよいが、エアーバッグやクッション材等の他の緩衝材83を使用してもよい。
【0042】
図16は、横方向連結構造体の例を斜視図で示す。シート成形体91は複数の高い中空突起Mh92a、92b、92c・・・が端部に存在し、また、シート成形体93は複数の高い中空突起Mh94a、94b、94c、・・・が端部に存在する。このシート成形体91とシート成形体93のお互いの中央部は重ならず端部のみで、シート成形体91の高い中空突起92a、92b、92c・・・(点線で示す)の先端が、上層のシート成形体93の高い中空突起Mh94a、94b、94c・・・によって形成される内部の空洞に挿入され、上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行く。このような作業を繰り返すことにより、シート成形体を平面的に連結して面積を拡げていくことができる。
【0043】
図17は、横方向連結構造体の他の例を平面図で示す。シート成形体101、102、103、104が端部で、中空突起Mh、Mlによって連結されている。シート成形体101は、端部においてシート成形体102、104の上に重なって横方向に連結されている。シート成形体103は、端部においてシート成形体102、1044の下層となって重なり、横方向に連結されている。この図では、上層のシート成形体の高い中空突起Mhによって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の低い中空突起Mlの突起の先端が挿入されるように構成されている。また、各シート成形体の4隅に切り欠き部105a、105b、105c・・・を有しており、その部分が多重に重なることがないようになっている。同様に他のシート成形体102、103、104も4隅に切り欠き部を有する。なお、この図では、4隅部分は切り落とされている例を示したが、単に中空突起を設けないことによって、多重に重なる際の弊害を防止することもできる。
【0044】
図18は、横方向連結構造体のさらに他の例を平面図で示す。シート成形体111、112、113の端部で、中空突起Mh、Ml(図示していない)によって縦方向に連結されている。同様に、シート成形体114、115、116が端部で、中空突起Mh、Ml(図示していない)によって縦方向に連結されている。シート成形体111、112、113とシート成形体114、115、116は、それらの中間において、シート成形体117、118によって連結されているが、シート成形体117、118の4隅は、シート成形体111、112、113、114、115、116の4隅とは重なっていない。これらの全てのシート成形体の端部の中間部には切り欠き部119a、119b、120a、120b、121a、121b、122a、122b、123a、123b、124a、124b、125a、125b、126a、126bを有している。そのようにすることにより、シート成形体112とシート成形体117、118の多重重なり部は、3重に重なる中空突起部がなくなり、多重に重なる際の弊害を防止することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の緩衝材用途の中空突起を有するシート成形体は、複数のシート成形体を積層や連結する場合に使用される。
【符号の説明】
【0046】
1:シート、 2:中空突起、 3:シート、 4:中空突起、 5:中空突起、
6:シート、 7:中空突起、 8:シート、 9:中空突起、 10:中空突起。
11:シート成形体、 12:高い中空突起Mh、 13:シート成形体、
14:高い中空突起Mh、 15:低い中空突起Ml、
16:シート成形体、 17:高い中空突起Mh。
21:シート成形体、 22:高い中空突起Mh、 23:低い中空突起Ml、
24:シート成形体、 25:高い中空突起Mh、 26:低い中空突起Ml。
31、32:緩衝材用中空突起Sp、33:高い中空突起Mh、
34:低い中空突起Ml、 35:シート成形体。
41、43、45:高い中空突起Mh、 42、44、46:孔、
47、49:高い中空突起Mh、48、50:離型剤。
51、53:シート成形体、 52、54:高い中空突起Mh、
55:密接積層構造体。
61、65:シート成形体、 62、65:高い中空突起Mh、
63、67:低い中空突起Ml、 68:空間設置積層構造体。
71、74、78、80:シート成形体、 72、75:高い中空突起Mh、
73、76:低い中空突起Ml、77、79、81、82:物品、 83:緩衝材。
91、93:シート成形体、 92、94:高い中空突起Mh。
101、102、103、104:シート成形体、 105:切り欠き部。
111、112、113、114、115、116、117、118:シート成形体、
119、120、121、122、123、124、125、126、127、128:切り欠き部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートの一部が変形されることによって緩衝材用に使用される多数の中空突起(Sp)が形成されているシート成形体であって、
該シート成形体のシートの片方の面側に突出しており、積層又は連結に使用され、緩衝用中空突起(Sp)より高い複数の中空突起(Mh)を有することを特徴とする、積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体。
【請求項2】
前記多数の中空突起(Sp)とは別に、前記シート成形体の前記高い中空突起(Mh)と同じシート面側に突出しており、積層又は連結に使用され、該高い中空突起(Mh)より低い中空突起(Ml)を複数有することを特徴とする、請求項1記載の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体。
【請求項3】
前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の突起の先端部である、高さHの上部H/3の部分が開孔されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体。
【請求項4】
前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の突起の表面/又は内部に離型剤がコートされていることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体。
【請求項5】
前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の少なくとも一部の突起の表面に、着色材がコートされていることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体。
【請求項6】
前記シート成形体の前記高い中空突起(Mh)と、前記低い中空突起(Ml)とが該シート成形体の端部に存在することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体。
【請求項7】
前記シート成形体の多層が上下重なるように積層されることにより、上層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入されることにより、上下層のシート成形体が密接して積層されていることを特徴とする、請求項1記載のシート成形体よりなる密接積層構造体。
【請求項8】
前記シート成形体の多層が上下重なるように積層されることにより、上層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の先端が挿入されるように上下層のシート成形体が積層されて、上下のシート間に一定の空間が設けられることを特徴とする、請求項2記載のシート成形体よりなる空間設置積層構造体。
【請求項9】
前記シート成形体の2層が上下重なるように積層される際、上層の該シート成形体と下層の該シート成形体とが同じ向きでそのまま積層される場合(平行積層)と、上層の該シート成形体が下層の該シート成形体を90度又は180回転されて、下層のシート成形体に積層される場合(回転積層)により、下記AとBとの二つの構造の積層構造体となることを特徴とする、請求項2記載の積層可能な中空突起を有するシート成形体。
A.上層の該シート成形体の複数の前記高い中空突起(Mh)の内部の空洞に、下層の該シート成形体の複数の該高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入され、上層の該シート成形体の複数の前記低い中空突起(Ml)の内部の空洞に、下層の該シート成形体の複数の該低い中空突起(Ml)の突起の先端が挿入され、上下層の該シート成形体が密接して積層されている密接積層構造体。
B.上層の該シート成形体の複数の該低い中空突起(Ml)の内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の該高い中空突起(Mh)の先端が挿入され、上層の該シート成形体の複数の該高い中空突起(Mh)の内部の空洞に、下層の該シート成形体の複数の該低い中空突起(Ml)の先端が挿入され、上下の該シート間に一定の空間が設けられて積層されている空間設置積層構造体。
【請求項10】
前記複数の高い中空突起Mhが前記シート成形体の端部に存在し、
該シート成形体の2層が該シート成形体の中央部は重ならず端部のみ積層されて、2層を平面的に横方向へ連結されていく際、
上層の該シート成形体の該高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層の該シート成形体の該高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入され、
上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行くことを特徴とする、請求項1記載のシート成形体の横方向連結構造体。
【請求項11】
前記複数の高い中空突起Mhと前記複数の低い中空突起Mlとが前記シート成形体の端部に存在し、
該シート成形体の2層が該シート成形体の中央部は重ならず端部のみ積層して、2層を平面的に横方向へ連結される際、
上層のシート成形体の該高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の該低い中空突起(Ml)の突起の先端が挿入され、
上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行くことを特徴とする、請求項2記載のシート成形体の横方向連結構造体。
【請求項12】
前記シートの端部には中空突起を設けていない部分を有する前記シート成形体からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の連結可能なシート成形体。
【請求項1】
樹脂シートの一部が変形されることによって緩衝材用に使用される多数の中空突起(Sp)が形成されているシート成形体であって、
該シート成形体のシートの片方の面側に突出しており、積層又は連結に使用され、緩衝用中空突起(Sp)より高い複数の中空突起(Mh)を有することを特徴とする、積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体。
【請求項2】
前記多数の中空突起(Sp)とは別に、前記シート成形体の前記高い中空突起(Mh)と同じシート面側に突出しており、積層又は連結に使用され、該高い中空突起(Mh)より低い中空突起(Ml)を複数有することを特徴とする、請求項1記載の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体。
【請求項3】
前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の突起の先端部である、高さHの上部H/3の部分が開孔されていることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体。
【請求項4】
前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の突起の表面/又は内部に離型剤がコートされていることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体。
【請求項5】
前記高い中空突起(Mh)及び/又は前記低い中空突起(Ml)の少なくとも一部の突起の表面に、着色材がコートされていることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体。
【請求項6】
前記シート成形体の前記高い中空突起(Mh)と、前記低い中空突起(Ml)とが該シート成形体の端部に存在することを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の積層又は連結可能な中空突起を有するシート成形体。
【請求項7】
前記シート成形体の多層が上下重なるように積層されることにより、上層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入されることにより、上下層のシート成形体が密接して積層されていることを特徴とする、請求項1記載のシート成形体よりなる密接積層構造体。
【請求項8】
前記シート成形体の多層が上下重なるように積層されることにより、上層のシート成形体の複数の低い中空突起(Ml)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の高い中空突起(Mh)の先端が挿入されるように上下層のシート成形体が積層されて、上下のシート間に一定の空間が設けられることを特徴とする、請求項2記載のシート成形体よりなる空間設置積層構造体。
【請求項9】
前記シート成形体の2層が上下重なるように積層される際、上層の該シート成形体と下層の該シート成形体とが同じ向きでそのまま積層される場合(平行積層)と、上層の該シート成形体が下層の該シート成形体を90度又は180回転されて、下層のシート成形体に積層される場合(回転積層)により、下記AとBとの二つの構造の積層構造体となることを特徴とする、請求項2記載の積層可能な中空突起を有するシート成形体。
A.上層の該シート成形体の複数の前記高い中空突起(Mh)の内部の空洞に、下層の該シート成形体の複数の該高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入され、上層の該シート成形体の複数の前記低い中空突起(Ml)の内部の空洞に、下層の該シート成形体の複数の該低い中空突起(Ml)の突起の先端が挿入され、上下層の該シート成形体が密接して積層されている密接積層構造体。
B.上層の該シート成形体の複数の該低い中空突起(Ml)の内部の空洞に、下層のシート成形体の複数の該高い中空突起(Mh)の先端が挿入され、上層の該シート成形体の複数の該高い中空突起(Mh)の内部の空洞に、下層の該シート成形体の複数の該低い中空突起(Ml)の先端が挿入され、上下の該シート間に一定の空間が設けられて積層されている空間設置積層構造体。
【請求項10】
前記複数の高い中空突起Mhが前記シート成形体の端部に存在し、
該シート成形体の2層が該シート成形体の中央部は重ならず端部のみ積層されて、2層を平面的に横方向へ連結されていく際、
上層の該シート成形体の該高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層の該シート成形体の該高い中空突起(Mh)の突起の先端が挿入され、
上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行くことを特徴とする、請求項1記載のシート成形体の横方向連結構造体。
【請求項11】
前記複数の高い中空突起Mhと前記複数の低い中空突起Mlとが前記シート成形体の端部に存在し、
該シート成形体の2層が該シート成形体の中央部は重ならず端部のみ積層して、2層を平面的に横方向へ連結される際、
上層のシート成形体の該高い中空突起(Mh)によって形成される内部の空洞に、下層のシート成形体の該低い中空突起(Ml)の突起の先端が挿入され、
上層と下層が端部で積層されて横方向に連結されて行くことを特徴とする、請求項2記載のシート成形体の横方向連結構造体。
【請求項12】
前記シートの端部には中空突起を設けていない部分を有する前記シート成形体からなることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の連結可能なシート成形体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−225241(P2011−225241A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−96200(P2010−96200)
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月19日(2010.4.19)
【出願人】(000199979)川上産業株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
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