説明

積層型コイル

【課題】 コイルパターンの径を大きくし、かつ積層体の外周面に絶縁膜を形成した積層型コイルにおいて、絶縁性をより確実にする。
【解決手段】 積層型コイル100は、矩形状の絶縁層1と、コイルパターン2とが、それぞれ複数、交互に積層され、一体化されてなる積層体3と、スルーホール4aと、コイルパターン2が、スルーホール4aを介して相互に接続されて、積層体3の内部に形成されたコイル5と、外部電極6a、6bと、積層体3の外周面に形成された絶縁膜7とを備え、スルーホール4aの少なくとも1つが、積層体3の表面に部分的に露出しているが、そのスルーホール4aは、絶縁層1の外周縁のうちの1辺に接しているが、その1辺以外の他の辺には接しないように形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型コイルにかかり、さらに詳しくは、コイルパターンの径を大きくし、かつ積層体の外周面に絶縁膜を形成した積層型コイルに関する。
【背景技術】
【0002】
近時、電気・電子分野において、小型化が可能で、量産性にも優れる、積層型コイルが多く使用されている。この積層型コイルは、複数の絶縁層と、複数のコイルパターンとを、所望の順番に積層し、一体化し、コイルパターンをスルーホールを介して順に接続することにより、積層体の内部にコイルを形成したものである。コイルパターンの外周縁は、一般に、積層体の外周面に露出することがないよう、絶縁層の外周縁よりも内側に、ギャップを設けて形成される。なお、絶縁層には、磁性体または非磁性体が用いられる。
【0003】
この積層型コイルにおいて、コイルパターンを大きくすることにより、コイル特性を向上できることが知られている。
【0004】
たとえば、絶縁層が磁性体からなる磁芯型の積層型コイルにおいて、コイルパターンの幅を同一に保ったまま、コイルパターンの内径および外径を大きくすると、コイルの直流重畳特性を向上させることができる。
【0005】
また、絶縁層が非磁性体からなる空芯型の積層型コイルにおいて、コイルパターンの幅を同一に保ったまま、コイルパターンの内径および外径を大きくすると、コイルのQ値を大きくすることができる。
【0006】
また、磁芯型および空芯型の積層型コイルにおいて、内径を同一に保ったまま、コイルパターンの幅を大きく(外径を大きく)すると、コイルパターンの直流抵抗を小さくすることができ、コイルのQ値を大きくすることができる。
【0007】
しかしながら、積層型コイルにおいて、コイルパターンを大きくすると、積層体の全体形状が大きくなってしまうという問題がある。
【0008】
そこで、特許文献1(特開2000‐133521号公報)では、この問題を解決したものとして、コイルパターンは大きくするが、コイルパターンの外周縁と絶縁層の外周縁のギャップを零にすることにより、積層体の全体形状を大きくすることを回避した積層型コイルが提案されている。そして、コイルパターンが積層体の外周面に露出する問題については、積層体の外周面に、絶縁性樹脂からなる絶縁膜を形成することにより解決している。
【0009】
図5〜8に、特許文献1に開示された積層型コイル400を示す。ただし、図5は斜視図、図6は図5の破線X‐X部分の断面図、図7は図5の破線Y‐Y部分の断面図、図8は分解斜視図である。なお、図8においては、外部電極と絶縁膜の図示を省略している。
【0010】
図5〜8に示すように、積層型コイル400は、磁性体または非磁性体からなり、4つの角部Cを有する矩形状の絶縁層101と、コイルパターン102とが、所望の順番に積層され、一体化されて積層体103が形成されている。コイルパターン102は、径が大きく形成されており、外周縁が、全周にわたり、絶縁層101の外周縁に接している。すなわち、コイルパターン102の外周縁と、絶縁層101の外周縁との間のギャップは、零になっている。そして、コイルパターン102が、絶縁層101の1つの角部Cに設けられた、絶縁層101を貫通して形成されたビアホール104aを介して接続されて、積層体103内にコイル105が形成されている。なお、積層体103の両端近傍にはコイルパターン102は積層されず、コイル105を外部に引出すためのスルーホール104bが形成された複数の絶縁層101が積層されている。
【0011】
そして、積層体103の両端には、1対の外部電極106a、106bが形成され、外部電極106aはコイル105の一方の端部に、外部電極106bはコイル105の他方の端部に、それぞれ接続されている。また、積層体103の外周面には、絶縁性樹脂からなる絶縁膜107が形成されている。絶縁膜107は、積層体103の外周面に露出した、コイルパターン102の外周縁やスルーホール104aを、外部から絶縁するために設けられたものである。
【0012】
なお、かかる構造からなる積層型コイル400において、絶縁層101を磁性体で形成した場合、コイルは磁芯型となるが、コイルパターン102の外周縁が積層体103の外周面に達しているため、開磁路型のコイルとなる。したがって、磁気飽和が起こりにくく、直流電流が流れた時のインダクタンスの低下が抑えられ、直流重畳特性が改善されたものになる。
【0013】
この従来の積層型コイル400は、たとえば、次の方法で製造される。
【0014】
多数個の積層型コイル400を一括して製造するために、絶縁層101のもととなる、複数枚の、マザーグリーンシート(図示せず)を準備する。そして、各マザーグリーンシートに、複数個の積層型コイル400用の、スルーホール104aまたは104bと、必要に応じてコイルパターン102とを形成する。スルーホール104a、104bは、たとえば、マザーグリーンシートに予め形成した孔に導電性ペーストを埋め込むことにより形成する。コイルパターン102は、たとえば、マザーグリーンシートの表面に、導電性ペーストを所定の形状にスクリーン印刷することにより形成する。
【0015】
次に、所定のスルーホール104a、104b、コイルパターン102が形成されたマザーグリーンシートを、所定の順番に積層し、加圧し、積層体ブロック(図示せず)を形成する。
【0016】
次に、積層体ブロックを、複数の未焼成の積層体103にカットする。
【0017】
次に、複数の未焼成の積層体103を、所定のプロファイルで焼成して、複数の積層体103を得る。
【0018】
次に、積層体103の両端面に外部電極106a、106bを形成し、さらに積層体103の外周面に絶縁膜107を形成して、積層型コイル400は完成する。外部電極106a、106bは、たとえば、積層体103の端部を導電性ペーストに浸漬し、導電性ペーストを塗布し、焼付けることにより形成する。絶縁膜107は、たとえば、熱硬化性のエポキシ樹脂を浸漬(ディップ)や印刷により塗布し、加熱して硬化させることにより形成する。なお、外部電極106a、106bは、さらに、めっきにより外層が形成される場合もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2000‐133521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
上述した従来の積層型コイル400は、上述した構造とすることにより、全体形状を大きくすることなく、コイルパターンを大きくし、コイル特性の向上をはかることが可能になっている。
【0021】
しかしながら、従来の積層型コイル400には、次のような問題があった。すなわち、積層型コイル400は、積層体103の外周面に絶縁膜107を形成するが、図7に示すように、絶縁層101の4つの角部Cのうちの1つに設けられたスルーホール104aが、絶縁膜107により完全には被覆されず、外部に露出してしまうという問題があった。
【0022】
そして、スルーホール104aが外部に露出してしまう原因は、次のように考えられる。
【0023】
まず、上述のとおり、絶縁層101とスルーホール104aとは、同時に焼成されて形成されるが、絶縁層101となるセラミックなどのグリーンシートと、スルーホール104aとなる導電ペーストとでは、一般に、グリーンシートの方が焼成時の収縮率が大きい。すなわち、焼成時に絶縁層101となるグリーンシートが大きく収縮するため、スルーホール104aは、絶縁層101から外側に突出した状態で形成される。
【0024】
そして、スルーホール104aが形成される絶縁層101の角部Cは、積層体103において、絶縁膜107が付着しにくく、絶縁膜107の膜厚が最も小さくなる部分である。すなわち、上述のとおり、絶縁膜107は、エポキシ樹脂を塗布し、加熱して硬化させる方法などにより形成されるが、塗布したエポキシ樹脂は、表面張力により、積層体103の外周面中央部分、すなわち、絶縁層101の各辺の中央部分に移動してしまい、積層体103の稜線部分、すなわち、絶縁層101の角部Cにおいて不足してしまう。この結果、絶縁膜107の膜厚は、絶縁層101の角部Cにおいて最も小さくなる。
【0025】
すなわち、収縮率の差により、スルーホール104aは、絶縁層101から外側に突出した状態で形成され、しかも、スルーホール104aは、絶縁膜107の膜厚が最も小さくなる、絶縁層101の角部Cに形成されているため、スルーホール104aが絶縁膜107から外部に露出してしまうのである。
【0026】
そして、スルーホール104aが絶縁膜107から外部に露出してしまうと、積層型コイル400は、絶縁が不十分な不良品になってしまうという問題があった。また、外部電極106a、106bの外層をめっきにより形成する場合には、この部分でめっきが成長してしまい、不良品になってしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明の積層型コイルは、上述した従来の問題を解決するためになされたものである、その手段として、本発明の積層型コイルは、矩形状の絶縁層と、コイルパターンとが、それぞれ複数、交互に積層され、一体化されてなる積層体と、絶縁層を貫通して形成されたスルーホールと、コイルパターンが、スルーホールを介して相互に接続されて、積層体の内部に形成されたコイルと、積層体の両端に形成され、コイルの両端とそれぞれ接続された1対の外部電極と、積層体の外周面に形成された絶縁膜とを備えるとともに、スルーホールの少なくとも1つが、積層体の表面に、部分的に露出している積層型コイルにおいて、積層体の表面に露出しているスルーホールを、絶縁層の外周縁のうちの1辺に接して形成し、その1辺以外の他の辺には接しないように形成した。すなわち、積層体の表面に部分的に露出しているスルーホールを、絶縁膜の厚みが小さくなる、絶縁層の角部以外の部分に形成するようにした。この結果、本発明の積層型コイルは、スルーホールが絶縁膜から外部に露出することがない。
【0028】
なお、スルーホールは、絶縁層の外周縁のうちの1辺の、中央を含む1/3の範囲内の部分に接して形成されることが好ましい。絶縁層の外周縁の1辺の、中央を含む1/3の範囲内の部分であれば、絶縁膜の厚みが十分に大きいので、スルーホールが絶縁膜から外部に露出するのを、確実に防止することができるからである。
【0029】
また、スルーホールは、絶縁層の外周縁のうちの1辺の、中央に接して形成されることがより好ましい。絶縁層の外周縁の1辺の中央であれば、絶縁膜の厚みが最も大きいので、スルーホールが絶縁膜から外部に露出するのを、より確実に防止することができるからである。
【発明の効果】
【0030】
本発明の積層型コイルは、上述した構成とすることにより、全体形状を大きくすることなく、コイルパターンを大きくして、コイル特性の向上をはかることができ、しかも、スルーホールが絶縁膜から外部に露出することがないため、絶縁不良で不良品となることがない。
【0031】
なお、コイルパターンを大きくすることにより、次のコイル特性が向上する。磁芯型の積層型コイルにおいて、コイルパターンの幅を同一に保ったまま、コイルパターンの内径および外径を大きくすると、コイルの直流重畳特性が向上する。空芯型の積層型コイルにおいて、コイルパターンの幅を同一に保ったまま、コイルパターンの内径および外径を大きくすると、コイルのQ値を大きくすることができる。磁芯型および空芯型の積層型コイルにおいて、内径を同一に保ったまま、コイルパターンの幅を大きく(外径を大きく)すると、コイルパターンの直流抵抗を小さくすることができ、コイルのQ値を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態にかかる積層型コイル100を示す斜視図である。
【図2】図1に示した積層型コイル100を示す断面図であり、図1の破線X‐X部分を示す。
【図3】図1に示した積層型コイル100を示す分解斜視図である。なお、図3においては、外部電極6a、6bと絶縁膜7との図示を省略している。
【図4】図4(A)は、本発明の変形例にかかる積層型コイル200を示す断面図である。図4(B)は、さらに別の変形例にかかる積層型コイル300を示す断面図である。
【図5】従来の積層型コイル400を示す斜視図である。
【図6】図5に示した積層型コイル400を示す断面図であり、図5の破線X‐X部分を示す。
【図7】図5に示した積層型コイル400を示す断面図であり、図5の破線Y‐Y部分を示す。
【図8】図5に示した積層型コイル400を示す分解斜視図である。なお、図8においては、外部電極106a、106bと絶縁膜107との図示を省略している。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、図面とともに、本発明を実施するための形態について説明する。
【0034】
[実施形態]
図1〜3に、本発明の実施形態にかかる積層型コイル100を示す。ただし、図1は斜視図、図2は図1の破線X‐X部分の断面図、図3は分解斜視図である。なお、図3においては、外部電極6a、6bと絶縁膜7の図示を省略している。
【0035】
図1〜3に示すように、積層型コイル100は、4つの角部Cを有する矩形状の絶縁層1と、コイルパターン2とが、交互に積層され、一体化されて積層体3が形成されている。積層体3の大きさは任意であるが、たとえば、縦0.6mm、横1.0mm、長さ1.9mmとする。
【0036】
絶縁層1には、たとえば、フェライトなどの磁性体や、誘電体セラミックなどの非磁性体を用いることができる。絶縁層1に磁性体を用いた場合には、積層型コイル100は磁芯型になる。絶縁層1に非磁性体を用いた場合には、積層型コイル100は空芯型になる。絶縁層1の大きさは任意であるが、たとえば、縦0.6mm、横1.0mm、厚さ40μmとする。
【0037】
コイルパターン2には、たとえば、銀、パラジウム、銅、金、銀パラジウムなどを用いることができる。コイルパターン2の形状および長さは、積層される位置により異なる。コイルパターン2の幅の大きさは任意であるが、たとえば、100μmとする。
【0038】
コイルパターン2は、外周縁が、絶縁層1の外周縁に接している。すなわち、コイルパターン2の外周縁と、絶縁層1の外周縁との間のギャップは、零になっている。
【0039】
そして、コイルパターン2が、絶縁層1を貫通して形成されたスルーホール4aを介して接続されて、積層体3内にコイル5が形成されている。なお、積層体3の両端近傍にはコイルパターン2は積層されず、コイル5を外部に引出すためのスルーホール4bが形成された複数の絶縁層1が積層されている。スルーホール4a、4bは、本実施形態においては、円筒形をしている。
【0040】
スルーホール4aは、絶縁層1の4つの角部C以外の部分において、絶縁層1の外周縁のうちのいずれか1辺のみに接して形成されている。たとえば、スルーホール4aは、図2の図面上において、絶縁層1の下側に位置する辺のみに接しており、左側に位置する辺、上側に位置する辺、右側に位置する辺には接していない。なお、スルーホール4aは、焼成時の収縮差により、絶縁層1から外側に突出した状態で形成される場合が多い。
【0041】
そして、積層体3の両端には、1対の外部電極6a、6bが形成され、外部電極6aはコイル5の一方の端部に、外部電極6bはコイル5の他方の端部に、それぞれ接続されている。外部電極6a、6bには、たとえば、銅、銀、ニッケルなどを用いることができる。また、外部電極6a、6bは、単層に限らず、材料を変えて、多層に形成することもできる。
【0042】
また、積層体3の外周面には、エポキシ樹脂などの絶縁性樹脂からなる絶縁膜7が形成されている。絶縁膜7の厚みは、積層体3の大きさにもよるが、積層体3の外周面の中央付近において、たとえば、50〜100μm程度になる。しかしながら、絶縁膜7の厚みは、積層体3の稜線部分、いいかえれば絶縁層1の4つの角部C近傍において、従来と同様に、小さくなっている。
【0043】
しかしながら、本実施形態においては、スルーホール4aは、絶縁膜7の厚みが小さくなる、絶縁層1の角部Cには形成されておらず、絶縁膜7の厚みが最も大きくなる、絶縁層1の1辺の中央に接して形成されているため、外部に露出して、積層型コイル100の絶縁性を低下させてしまうことがない。
【0044】
かかる構造からなる、本発明の実施形態にかかる積層型コイル100は、たとえば、次の方法で製造される。
【0045】
まず、多数個の積層型コイル100を一括して製造するために、絶縁層1のもととなる、複数枚の、マザーグリーンシート(図示せず)を準備する。マザーグリーンシートは、磁性体または非磁性体と結合材などを混練して作成したスラリー状の原料を、ドクターブレードなどを用いて、シート状にしたものである。
【0046】
次に、各マザーグリーンシートに、複数個の積層型コイル100用の、スルーホール4aまたは4bと、必要に応じてコイルパターン2とを形成する。スルーホール4a、4bは、たとえば、マザーグリーンシートに予め形成した孔に導電性ペーストを埋め込むことにより形成する。コイルパターン2は、たとえば、マザーグリーンシートの表面に、導電性ペーストを所定の形状にスクリーン印刷することにより形成する。
【0047】
次に、所定のスルーホール4a、4b、コイルパターン2が形成されたマザーグリーンシートを、所定の順番に積層し、加圧し、積層体ブロック(図示せず)を形成する。
【0048】
次に、積層体ブロックを、複数の未焼成の積層体3にカットする。カット後に、未焼成の積層体3にバレル研磨を施し、カットの際に発生したバリを取るようにしても良い。
【0049】
次に、複数の未焼成の積層体3を、所定のプロファイルで焼成して、複数の積層体3を得る。
【0050】
なお、上記のように、積層体ブロックを形成し、その積層体ブロックを複数の未焼成の積層体3にカットし、それらの積層体3を焼成するという順番ではなく、積層体ブロックを形成し、その積層体ブロックを焼成し、焼成済の積層体ブロックを個々の積層体3にカットするという順番であっても良い。
【0051】
次に、積層体3の両端面に外部電極6a、6bを形成する。外部電極6a、6bは、たとえば、積層体3の端部を導電性ペーストに浸漬して、導電性ペーストを塗布し、焼付けることにより形成する。
【0052】
次に、積層体3の外周面に絶縁膜7を形成する。絶縁膜7は、積層体3の外周面に、たとえば、熱硬化性のエポキシ樹脂を、浸漬(ディップ)や印刷により塗布し、加熱して硬化させることにより形成する。
【0053】
この後、さらに、外部電極6a、6b上に、めっきなどにより、外層を形成するようにしても良い。
【0054】
なお、積層体3への、外部電極6a、6bの形成と、絶縁膜7の形成とは、順番を入れ替えても良い。また、外部電極6a、6b上に、めっきなどにより、外層を形成する場合には、絶縁膜7を形成する前に、形成するようにしても良い。
【0055】
以上、本発明の実施形態にかかる積層型コイル100、および、その製造方法の一例について説明した。しかしながら、本発明がこれらの内容に限定されることはなく、発明の主旨に沿って、種々の変更をなすことができる。
【0056】
たとえば、絶縁層1やコイルパターン2の、形状、大きさ、層数などは任意であり、上記の内容には限定されない。また、スルーホール4a、4bの、形状、大きさも任意であり、上記内容には限定されない。
【0057】
また、積層体3の稜線部(絶縁層1の角部C)は、バレル研磨が施されることにより、丸みが形成されていても良い。
【0058】
[変形例]
図4(A)に、本発明の変形例にかかる積層型コイル200を示す。ただし、図4(A)は、積層型コイル200の断面図である。
【0059】
積層型コイル200は、上述した実施形態にかかる積層型コイル100のスルーホール4aの形状を変更した。ただし、その他の部分については積層型コイル100と同様にした。
【0060】
積層型コイル200においては、スルーホール14aは、円筒形ではなく、円筒形を縦方向に平面で2つに分断し、その片方のみを取り出した形状からなる。
【0061】
すなわち、積層型コイル200では、多数個の積層型コイル200を一括して製造するための、多数個の絶縁層1のもととなるマザーグリーンシートの、隣接する絶縁層1の境界上に径の大きな円筒形のスルーホール(図示せず)を形成し、それらのマザーグリーンシートを、積層し、加圧して、積層体ブロック(図示せず)を形成し、その積層体ブロックを複数の未焼成の積層体3にカットする際に、径の大きな円筒形のスルーホールを2つに分断して、スルーホール14aを得ている。
【0062】
このように、スルーホールの形状は任意であり、上述した実施形態にかかる積層型コイル100のように、円筒形のスルーホール4aには限られない。たとえば、この変形例にかかる積層型コイル200のように、円筒形を縦方向に平面で分断し、その片方のみを残した形状からなるスルーホール14aであっても良い。あるいは、スルーホールは、角柱形状などであっても良い。
【0063】
次に、図4(B)に、本発明のさらに別の変形例にかかる積層型コイル300を示す。ただし、図4(B)は、積層型コイル300の断面図である。
【0064】
積層型コイル300は、上述した実施形態にかかる積層型コイル100のスルーホール4aの形成位置を変更した。
【0065】
積層型コイル300においては、スルーホール24aは、絶縁層1の角部Cに近づけて形成されている。ただし、スルーホール24aは、絶縁層1の角部Cには近づけられているが、その角部Cには達していない。すなわち、スルーホール24aは、図4(B)の図面上において、絶縁層1の下側に位置する辺には接しているが、左側に位置する辺には接していない。また、スルーホール24aの形成位置を変更したことにともなって、コイルパターン2の形成位置も変更されている。ただし、コイルパターン2の長さ自体は変更されていない。
【0066】
このように、スルーホールは、絶縁層1の1辺の中央に接して形成されている必要はなく、絶縁層1の角部C以外の部分であれば、絶縁層1の1辺のどの部分に接して形成されていても良い。ただし、絶縁膜7の厚みを考慮すると、スルーホールの外部への露出防止のためには、絶縁層1の1辺の中央を含む1/3の範囲内の部分に接して形成されていることが好ましく、絶縁層1の1辺の中央に接して形成されていることがより好ましい。
【符号の説明】
【0067】
1:絶縁層
C:絶縁層1の角部
2: コイルパターン
3:積層体
4a、14a、24a、4b:スルーホール
5:コイル
6a、6b:外部電極
7:絶縁膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の絶縁層と、コイルパターンとが、それぞれ複数、交互に積層され、一体化されてなる積層体と、
前記絶縁層を貫通して形成されたスルーホールと、
前記コイルパターンが、前記スルーホールを介して相互に接続されて、前記積層体の内部に形成されたコイルと、
前記積層体の両端に形成され、前記コイルの両端とそれぞれ接続された1対の外部電極と、
前記積層体の外周面に形成された絶縁膜と、を備えるとともに、
前記スルーホールの少なくとも1つが、前記積層体の表面に、部分的に露出している積層型コイルにおいて、
前記積層体の表面に露出しているスルーホールは、前記絶縁層の外周縁のうちの1辺に接して形成されているが、当該1辺以外の他の辺には接していないことを特徴とする積層型コイル。
【請求項2】
前記積層体の表面に露出しているスルーホールと一端が接続された前記コイルパターンは、その外周縁の少なくとも一部が、前記絶縁層の外周縁に接して形成されていることを特徴とする、請求項1に記載された積層型コイル。
【請求項3】
前記積層体の表面に露出しているスルーホールが、前記絶縁層の外周縁のうちの前記1辺の、中央を含む1/3の範囲内の部分に接して形成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載された積層型コイル。
【請求項4】
前記積層体の表面に露出しているスルーホールが、前記絶縁層の外周縁のうちの前記1辺の、中央に接して形成されていることを特徴とする、請求項3に記載された積層型コイル。
【請求項5】
前記絶縁膜が絶縁性樹脂からなることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載された積層型コイル。
【請求項6】
前記積層体の表面に露出しているスルーホールが、前記絶縁膜により完全に覆われ、当該絶縁膜から外部には露出していないことを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載された積層型コイル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate