説明

積層型OLED用中間電極

【課題】本発明は、積層型OLED構成の利点を発揮することが可能な中間電極の組成または構成を提供することを目的とする。
【解決手段】積層型OLEDは、第1の電極と、第2の電極と、第1および第2の電極間に配設された複数のルミネセンス領域と、連続的なルミネセンス領域間に配設された中間電極とを含む。少なくとも1つの中間電極は、第1の電荷注入層と第2の電荷注入層との間に配設された金属−有機混合層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、様々な例示的実施形態において、有機発光デバイス(OLED)に関する。詳細には、本開示は、積層型OLEDの構成に関する。
【背景技術】
【0002】
参照として全体開示を本明細書に組み込む同時係属出願第11/133,975号(整理番号A4037−US−NP)は、そのうちの1つがエミッタである正孔輸送材料と、電子輸送材料と、任意選択でドーパントとの混合物を含む少なくとも1つのルミネセンス領域を含む積層型OLEDの構成を記載している。参照として全体開示を本明細書に組み込む同時係属出願第11/133,977号(整理番号A3618−US−NP)は、金属−有機混合層と、電子受容性材料とを含む、OLEDなどの表示デバイスに適したアノードを記載している。
【0003】
有機発光デバイス(OLED)は、表示応用分野の有望な技術の代表である。有機発光デバイスは通常、第1の電極と、1つまたは複数のエレクトロルミネセンス有機材料を含むルミネセンス領域と、第2の電極とを含み、第1の電極および第2の電極のうち一方が正孔注入アノードとして機能し、他方の電極が電子注入カソードとして機能し、第1の電極および第2の電極のうち一方が前面電極であり、他方の電極が背面電極である。前面電極は、透明(または少なくとも部分的に透明)であり、背面電極はたいてい、光に対し高反射性である。第1の電極と第2の電極との間に電圧を印加すると、ルミネセンス領域および透明な前面電極を介して光が放たれる。
【0004】
2つ以上の個々のOLEDを、積層構成をなして積み重ねて積層型OLEDを形成することが望ましい。積層型OLED構成は、隣り合うルミネセンス領域間に配設された中間電極を含む。つまり、積層型OLEDは、2つの電極間に配設されたルミネセンス領域によって画定された個々のOLEDを複数含む。積層において、ある個別のOLEDの上部電極は、その積層内の別のOLEDの底部電極も兼ねて機能する。連続したルミネセンス領域は、中間電極を共有する。
【0005】
積層型OLEDは、あらゆる色を放つトゥルー・カラー画素を形成するように、様々な色を放つことができる。例えば、Burrowsらは、「Appl.Phys.Lett.69、2959(1996)」において、赤、緑、または青を発光する個々のOLEDを積層して色調調整可能な縦型の一体化画素を開示している。
【0006】
例えばMatsumotoら(「SID 03 Digest、979(2003)」)によって例証された積層型単色OLEDも可能である。積層型単色OLEDは、高エレクトロルミネセンス効率を有するOLED構成を潜在的に提供する。
【0007】
中間電極は通常、透明である。さらに、中間電極は、場合によって片側では電子注入コンタクトとして作用し、もう片側では正孔注入コンタクトとして作用する必要がある。中間電極において必要とされる特色をすべて発揮するために、中間電極は通常、多層からなり、例えばITOやVなど熱蒸着法で蒸着させるのが難しい材料でできている。したがって、積層型OLEDの製造には、例えばスパッタリングなど、より積極果敢な追加の技術が必要とされる。必要とされる、より積極果敢な追加の技術のために、OLEDの製造コストが上がり、積層型OLEDのより脆弱な他の有機層を破損する危険性も増す。
【0008】
【特許文献1】同時係属出願第11/133,975号(整理番号A4037−US−NP)
【特許文献2】同時係属出願第11/133,977号(整理番号A3618−US−NP)
【非特許文献1】Burrowsら著「Appl.Phys.Lett.69、2959(1996)」
【非特許文献2】Matsumotoら著「SID 03 Digest、979(2003)」
【特許文献3】米国特許第4539507号
【特許文献4】米国特許第4720432号
【特許文献5】米国特許第4769292号
【特許文献6】米国特許第4885211号
【特許文献7】米国特許第5247190号
【非特許文献3】Berniusら著、「Developmental Progress of Electroluminescent Polymeric Materials and Devices」Proceedings of SPIE Conference on Organic Light Emitting Materials and Devices III、デンバー、コロラド、1999年7月、第3797巻、129頁
【特許文献8】米国特許第5151629号
【特許文献9】米国特許第5150006号
【特許文献10】米国特許第5141671号
【特許文献11】米国特許第5846666号
【特許文献12】米国特許第5516577号
【特許文献13】米国特許第6465115号
【特許文献14】欧州特許出願公開第1009044A2号
【特許文献15】米国特許第5972247号
【特許文献16】米国特許第5935721号
【特許文献17】米国特許第6479172号
【特許文献18】米国特許出願第08/829398号
【特許文献19】米国特許出願第09/489144号
【特許文献20】米国特許第6057048号
【特許文献21】米国特許第5227252号
【特許文献22】米国特許第5276381号
【特許文献23】米国特許第5593788号
【特許文献24】米国特許第3172862号
【特許文献25】米国特許第4356429号
【特許文献26】米国特許第5516577号
【特許文献27】米国特許第5601903号
【特許文献28】米国特許第5935720号
【非特許文献4】Kidoら著「White light emitting organic electroluminescent device using lanthanide complexes」、Jpn.J.Appl.Phys.、第35巻、L394〜L396頁(1996年)
【非特許文献5】Baldoら著「Highly efficient organic phosphorescent emission from organic electroluminescent devices」、Letters to Nature、第395巻、151〜154頁(1998年)
【特許文献29】米国特許第5728801号
【特許文献30】米国特許第4356429号
【特許文献31】米国特許第4539507号
【特許文献32】米国特許第5942340号
【特許文献33】米国特許第5952115号
【特許文献34】米国特許第6130001号
【特許文献35】米国特許第6392250号
【特許文献36】米国特許第6392339号
【特許文献37】米国特許第6614175号
【特許文献38】米国特許第6753098号
【特許文献39】米国特許第6759146号
【特許文献40】米国特許第4885211号
【特許文献41】米国特許第5429884号
【特許文献42】米国特許第5703436号
【特許文献43】米国特許第5707745号
【特許文献44】米国特許第6841932号
【特許文献45】米国特許出願第10/401238号(米国公開特許出願第2003/0234609号)
【特許文献46】米国特許第6423429号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、積層型OLEDは、既存の積層型OLED構成の利点を発揮することが可能な中間電極の組成または構成を提供する必要がある。光吸収性能を有する中間電極を提供する必要もある。物理的気相成長法に適用でき、積層型OLED内での使用に適した中間電極の組成または構成を提供する必要もある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示は、その様々な実施形態において、第1の電極と、第2の電極と、第1および第2の電極間に配設された複数のルミネセンス領域と、連続的なルミネセンス領域間に配設された1つまたは複数の中間電極とを含み、1つまたは複数の中間電極のうち少なくとも1つが、第1の電荷注入層と、第2の電荷注入層と、第1および第2の電荷注入層間に配設された金属−有機混合層とを含む金属−有機混合層電極である、積層型OLEDに関する。
【0011】
さらに、本開示は、その様々な実施形態において、アノードと、カソードと、アノードとカソードとの間に配設された複数のルミネセンス領域と、連続的なルミネセンス領域間に配設された中間電極とを含み、少なくとも1つの中間電極がi)正孔注入層と、ii)電子注入層と、iii)正孔注入層と電子注入層との間に配設された金属−有機混合層とを別々に含む、積層型OLEDに関する。
【0012】
以下に、これらおよび他の非限定的特色および特徴を、より詳細に記載する。
【0013】
図面の簡単な説明において、これらの図面は、本明細書に開示するいくつかの例示的実施形態を説明するためのものであって、それらを限定するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本開示は、積層型OLED構成に関する。本開示による積層型OLED構成は、基板と、第1の電極と、第2の電極と、第1および第2の電極間に配設された複数のルミネセンス領域と、連続的なルミネセンス領域間に配設された1つまたは複数の中間電極とを含む。中間電極のうち少なくとも1つは、金属材料と有機材料との混合物を含む金属−有機混合層(MOML)を含む。中間電極は、金属−有機混合層の一部として電荷注入材料をさらに含んでいてもよいし、電荷注入材料は、望ましいまたは必要な電荷注入機能を積層型OLEDに与えるように、金属−有機混合層とルミネセンス領域との間に配設された、別の層であってもよい。
【0015】
本開示による積層型OLEDの範囲を理解する上での混乱を避けるために、下記の基準を使用することができる。
【0016】
(1)「層」という用語は、隣接する層の組成とは異なる組成を全体的に有する単一のコーティングを意味する。
【0017】
(2)「領域」という用語は、単一の層および、例えば2つでも、3つ以上でも、複数の層を意味し、かつ/あるいは1つまたは複数の「ゾーン」を意味する。
【0018】
(3)電荷輸送ゾーン(つまり、正孔輸送ゾーンおよび電子輸送ゾーン)および発光ゾーンとの関連で使用される用語「ゾーン」は、単一の層、複数の層、層内の単一の機能域、または層内の複数の機能域を意味する。
【0019】
(4)全体的に、2つの電極間にある表示デバイスの領域および層、または表示デバイスを作動させるために必要な電荷伝導プロセスに関与する表示デバイスの領域および層はすべて、カソード、ルミネセンス領域、アノードまたは中間電極の一部とみなす。
【0020】
(5)全体的に、表示デバイスの電荷伝導プロセスに関与せず、第1および第2の電極外にあると見られる層(例えば、基板)は、電極の一部とはみなさない。しかし、このような層(例えば、基板)は、それでもなお、表示デバイスの一部とみなすことができる。
【0021】
(6)ただし、キャッピング領域(これは、電極を周囲環境から保護する)は、キャッピング領域が表示デバイスの電荷伝導プロセスに関与しているかどうかに関係なく、電極の一部とみなす。
【0022】
(7)電荷をルミネセンス領域に注入するどんな領域または層(例えば、電子注入領域および正孔注入領域)も、電極の一部とみなす。
【0023】
(8)MOMLが同程度に、電極またはルミネセンス領域の一部と見られる場合、MOMLは電極の一部ということにする。
【0024】
(9)隣接する(つまり、接触している)複数のMOMLを含む実施形態では、MOMLのうちいくつかまたはすべてが同程度に電極またはルミネセンス領域の一部と見られる場合、MOMLは電極の一部とみなすことにする。
【0025】
(10)不純物(MOMLを構成する2つの材料成分内でも、3つの材料成分内でも、4つ以上の材料成分内でも少量存在することがある)は全体的に、MOMLの指定成分とみなさない。例えば、金属材料および有機化合物のうち2つの指定成分からなる「2元MOML」内の不純物の存在によって、MOMLが「2元MOML」であることの指定は変更されない。
【0026】
(11)「発光領域」および「ルミネセンス領域」は差し替えて使用することができる。
【0027】
図1に、本開示による積層型OLEDの実施形態を示す。OLED100は、基板110と、第1の電極120と、第2の電極130と、第1の電極120と第2の電極130との間に配設されたルミネセンス領域140、150および160と、ルミネセンス領域140と150との間に配設された中間電極170と、ルミネセンス領域150と160との間に配設された中間電極180とを含む。第1および第2の電極は、アノードおよびカソードのうち1つから選択することができる。いくつかの実施形態では、第1および第2の電極は、それぞれアノードである。他の実施形態では、第1および第2の電極は、それぞれカソードである。さらに別の実施形態では、第1の電極がアノードで第2の電極がカソード、または第1の電極がカソードで第2の電極がアノードである。
【0028】
中間電極170または180のうち少なくとも1つは、金属−有機混合層を含む。図1の積層型OLED100では、各中間電極170および180が、金属−有機混合層174および184をそれぞれ含む。各中間電極170および180において、金属−有機混合層174は、電荷注入層172と176との間に配設され、金属−有機混合層184は、電荷注入層182と186との間に配設されている。
【0029】
電荷注入層(例えば、図1における実施形態の172、176、182および186)は、ルミネセンス領域にすぐ隣接する層の電荷輸送機能との関連で必要とされる電荷注入層の機能に応じて、電子注入層でもあり得るし正孔注入層でもあり得る。いくつかの実施形態では、ルミネセンス領域は、個別の正孔輸送層または電子輸送層、あるいは例えば、米国特許第4539507号、米国特許第4720432号および米国特許第4769292号、または同時係属出願第11/133,975号(整理番号A4037−US−NP)に開示されているOLEDなどのゾーンを含むことができる。したがって、中間電極の電荷注入層の組成は、積層型OLED内で必要機能を提供するように所望通りに選択される。例えば、中間電極は片側では電子注入層として働くことが要求され、もう片側では正孔注入層として働くことが要求され得る。別の実施形態では、中間電極は、両側で電子注入層として、または両側で正孔注入層として作用することが要求され得る。例えば、すぐ隣接する層のルミネセンス領域が正孔輸送機能を有する場合、中間電極の選択された電荷注入層は、正孔注入層であり、正孔注入材料を含む。あるいは、すぐ隣接するルミネセンス領域が電子輸送ゾーンとして機能する場合、中間電極の選択された電荷注入層は、電子注入層であり、電子注入材料を含む。
【0030】
図2および図3に積層型OLEDを示す。ここでは、所与の中間電極の各電荷注入層は、同じまたは類似の電荷注入機能を有する。つまり、中間電極は、その両側で同じ電荷注入機能を有する。図2を参照すると、積層型OLED200は、基板210と、アノード220と、ルミネセンス領域240と、ルミネセンス領域240上に配設された中間電極270と、中間電極270上に配設されたルミネセンス領域250と、ルミネセンス領域250上に配設された中間電極280と、中間電極280上に配設されたルミネセンス領域260と、ルミネセンス領域260上に配設されたカソード230とを含む。中間電極270は、電子注入層272と276との間に配設された金属−有機混合層274を含む。中間電極280は、正孔注入層282と286との間に配設された金属−有機混合層284を含む。最上部電極230は、ルミネセンス領域260の組成または構成に基づき、正孔注入機能または電子注入機能が必要とされるかどうかに応じて、カソードまたはアノードのうちの1つであることができる。
【0031】
図3を参照すると、積層型OLED300は、基板310と、カソード320と、アノード330と、カソード320と最上部電極330との間に配設されたルミネセンス領域340、350および360と、ルミネセンス領域340と350との間に配設された中間電極370と、ルミネセンス領域350と360との間に配設された中間電極380とを含む。中間電極370は、正孔注入層372と376との間に配設された金属−有機混合層374を含む。中間電極380は、電子注入層382と386との間に配設された金属−有機混合層384を含む。最上部電極330は、ルミネセンス領域360の組成および/または構成に応じて、カソードまたはアノードのうちの1つであることができる。
【0032】
電荷注入機能が同じまたは類似の電荷注入層を有する中間電極では、各電荷注入層は同じ組成でもよいし互いに異なる組成でもよい。
【0033】
図4および図5に積層型OLEDを示す。ここでは、中間電極は、互いに異なる機能を有する電荷注入層を含む。つまり、中間電極は、片側に電子注入機能を有する電荷注入層を有し、もう片側に正孔注入機能を有する電荷注入層を有する。図4を参照すると、積層型OLED400は、基板410と、アノード420と、カソード430と、アノード420上に配設されたルミネセンス領域440と、ルミネセンス領域440上に配設された中間電極470と、中間電極470上に配設されたルミネセンス領域450と、ルミネセンス領域450上に配設された中間電極480と、中間電極480上かつカソード430と中間電極480との間に配設されたルミネセンス領域460とを含む。中間電極470は、電子注入層472と正孔注入層476との間に配設された金属−有機混合層474を含む。中間電極480は、電子注入層482と正孔注入層486との間に配設された金属−有機混合層484を含む。
【0034】
図5を参照すると、積層型OLED500は、基板510と、カソード520と、アノード530と、カソード520とアノード530との間に配設されたルミネセンス領域540、550および560と、ルミネセンス領域540と550との間に配設された中間電極570と、ルミネセンス領域550と560との間に配設された中間電極580とを含む。中間電極570は、正孔注入層572と電子注入層576との間に配設された金属−有機混合層574を含む。中間電極580は、正孔注入層582と電子注入層586との間に配設された金属−有機混合層584を含む。
【0035】
いくつかの実施形態、例えば図4および図5における実施形態では、中間電極が互いに機能の異なる電荷注入層を含む場合(つまり、金属−有機混合層が正孔注入層と電子注入層との間に介在している場合)、例えば図4における中間電極470と480との間、および図5における中間電極570と580との間など、第1および第2の電極間にだけ外部順バイアス電圧を印加することにより積層全体に外部順バイアス電圧を印加することによって、積層型OLEDを作動させることができる。あるいは、例えば第1の電極と第1の中間電極との間(例えばアノード420と中間電極470との間(図4)、またはカソード520と中間電極570との間(図5))、第1の中間電極と第2の中間電極との間(例えば中間電極470と480との間(図4)、または中間電極570と580との間(図5))、および第2の中間電極と第2の電極との間(例えば、中間電極480とカソード430との間(図4)、または中間電極580とアノード530との間(図5))などに外部順バイアス電圧を印加することにより積層の個々の構成単位それぞれの両端間に別々に外部順バイアス電圧を印加することによって、積層型OLEDを作動させることもできる。
【0036】
いくつかの実施形態では、中間電極のそれぞれが、同じまたは類似の機能を有する電荷注入層を個々に含む場合(つまり、金属−有機混合層が2つの正孔注入層間または2つの電子注入層間に介在している場合)、例えば第1のアノードと第1の中間電極との間(例えば、アノード220と中間電極270との間(図2)、またはカソード320と中間電極370との間(図3))、第1の中間電極と第2の中間電極との間(例えば、中間電極270と280との間(図2)、または中間電極370と380との間(図3))、および第2の中間電極と第2の電極との間(例えば、中間電極280とカソード230との間(図2)、または中間電極380とアノード330との間(図3))などに外部順バイアス電圧を印加することにより、積層の個々の構成単位それぞれの両端間に別々に外部順バイアス電圧を印加することによって、積層型OLEDを作動させることができる。
【0037】
図1〜図5に示す実施形態は、本開示による積層型OLEDの実行可能な実施形態の単なる説明的な例であって、その実施形態を限定するものではないことが分かるであろう。どんな層、領域またはゾーンの構成をも、特定の目的または目当ての使用のために所望通りに選択することができる。各実施形態は、3つのルミネセンス領域を有する積層型OLEDを示しているが、積層型OLEDは、ルミネセンス領域を2つでも、3つでも、4つでも、5つ以上でも含むことができることが分かるであろう。したがって、例えば、図1、図2または図3において、各積層型OLEDは、ルミネセンス領域160、260、または360を削除することもできるし、ルミネセンス領域160、260および360と、上部電極130、230および330との間に、追加のルミネセンス領域および中間電極を、それぞれさらに配設することもできる。
【0038】
いくつかの実施形態では、中間電極は、第1の電荷注入層と第2の電荷注入層との間に配設された金属−有機混合層を含み、第1の電荷注入層は正孔注入層であり、第2の電荷注入層は電子注入層である。さらに別のいくつかの実施形態では、中間電極は、第1の電荷注入層と第2の電荷注入層との間に配設された金属−有機混合層を含むことができ、第1および第2の電荷注入層のそれぞれは、同じ電荷注入機能(つまり、正孔注入機能または電子注入機能)を有する。
【0039】
2つ以上の中間電極を含む積層型OLEDでは、中間電極のうち少なくとも1つがMOMLを含む。他の中間電極は、必要な機能を提供する他のどんな適切な電極材料でもよい。中間電極として適切な他の材料は、それだけに限らないが、アノードおよびカソード材料に関して本明細書で記載するもの、ならびにその全体を参照として本明細書に組み込む同時係属出願第11/133,975号(整理番号A4037−US−NP)に記載の中間電極を含む。
【0040】
アノードは、インジウム・スズ酸化物(ITO)、酸化スズ、金および白金など適切な正電荷注入電極を含むことができる。アノード形成に適した他の材料は、それだけに限らないが、導電性炭素と、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどのπ共役高分子とを含み、これらは例えば、約4eV以上、いくつかの実施形態では約4eV〜約6eVの仕事関数を有する。
【0041】
アノードは、どんな適切な形をも有することができる。例えば、透明またはほぼ透明なガラス板またはプラスチック・フィルムなどの光透過性基板の上に、薄い導電層をコーティングすることができる。有機発光デバイスのいくつかの実施形態は、ガラス上にコーティングされた酸化スズまたはインジウム・スズ酸化物から形成された光透過性アノードを含むことができる。また、厚さが例えば、約200Å未満の非常に薄い光透過性金属アノードを使用することもでき、いくつかの実施形態では、その厚さが約50Å〜約175Å、別の実施形態では、約75Å〜約150Åである。こうした薄いアノードは、金、白金などの金属を含むことができる。さらに、導電性炭素または、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロールなどの共役高分子からなる透明または半透明の薄い層を使用してアノードを形成することができる。アノードの追加の適切な形は、その全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第4885211号に開示されている。
【0042】
アノードの厚さは、約1nm〜約5000nmの範囲を取ることができる。アノードの好ましい厚さは、アノード材料の光学定数に応じて決まる。一実施形態では、アノードの厚さ範囲は約30nm〜約300nmである。ただし、この範囲外の厚さも使用することができる。
【0043】
いくつかの実施形態において、当該表示デバイスのルミネセンス領域は、少なくとも1つのエレクトロルミネセンス有機材料を含む。適切な有機エレクトロルミネセンス材料は、例えば、ポリ(p−フェニレンビニレン)PPV、ポリ(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシルオキシ)1,4−フェニレンビニレン)MEHPPVおよびポリ(2,5−ジアルコキシフェニレンビニレン)PDMeOPVなどのポリフェニレンビニレン類、ならびにその全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第5247190号に開示されている他の材料と、ポリ(p−フェニレン)PPP、ラダー−ポリ−パラ−フェニレン(LPPP)、およびポリ(テトラヒドロピレン)PTHPなどのポリフェニレン類と、ポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジイル)およびポリ(2,8−(6,7,12,12−テトラアルキルインデノフルオレン)などのポリフルオレン類、ならびにフルオレン−アミン系共重合体などのフルオレン類を含む共重合体とを含む(例えば、その開示全体を参照として本明細書に組み込む、Berniusら著、「Developmental Progress of Electroluminescent Polymeric Materials and Devices」Proceedings of SPIE Conference on Organic Light Emitting Materials and Devices III、デンバー、コロラド、1999年7月、第3797巻、129頁を参照)。
【0044】
ルミネセンス領域において使用することのできる有機エレクトロルミネセンス材料の別の種類として、それだけに限らないが、その全体をそれぞれ本明細書に参照として組み込む米国特許第4539507号、米国特許第5151629号、米国特許第5150006号、米国特許第5141671号および米国特許第5846666号に開示されている金属オキシノイド化合物が挙げられる。実例としては、トリス(8−ヒドロキシキノリネート)アルミニウム(AlQ3)やビス(8−ヒドロキシキノラート)−(4−フェニルフェノラート)アルミニウム(BAlq)などがある。この種類の材料の他の例としては、トリス(8−ヒドロキシキノリネート)ガリウム、ビス(8−ヒドロキシキノリネート)マグネシウム、ビス(8−ヒドロキシキノリネート)亜鉛、トリス(5−メチル−8−ヒドロキシキノリネート)アルミニウム、トリス(7−プロピル−8−キノリノラート)アルミニウム、ビス[ベンゾ{f}−8−キノリネート]亜鉛、およびビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリネート)ベリリウムなどと、ビス(8−キノリンチオラート)亜鉛、ビス(8−キノリンチオラート)カドミウム、トリス(8−キノリンチオラート)ガリウム、トリス(8−キノリンチオラート)インジウム、ビス(5−メチルキノリンチオラート)亜鉛、トリス(5−メチルキノリンチオラート)ガリウム、トリス(5−メチルキノリンチオラート)インジウム、ビス(5−メチルキノリンチオラート)カドミウム、ビス(3−メチルキノリンチオラート)カドミウム、ビス(5−メチルキノリンチオラート)亜鉛、ビス[ベンゾ{f}−8−キノリンチオラート]亜鉛、ビス[3−メチルベンゾ{f}−8−キノリンチオラート]亜鉛、ビス[3,7−ジメチルベンゾ{f}−8−キノリンチオラート]亜鉛などの金属チオキシノイド化合物など、米国特許第5846666号(その全体を参照として本明細書に組み込む)に開示されている金属チオキシノイド化合物とがある。好ましい材料は、ビス(8−キノリンチオラート)亜鉛、ビス(8−キノリンチオラート)カドミウム、トリス(8−キノリンチオラート)ガリウム、トリス(8−キノリンチオラート)インジウムおよびビス[ベンゾ{f}−8−キノリンチオラート]亜鉛である。
【0045】
ルミネセンス領域において使用することのできる有機エレクトロルミネセンス材料のさらに別の種類として、その全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第5516577号に開示されているものなどのスチルベン誘導体が挙げられる。適切なスチルベン誘導体の例は、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニルである。
【0046】
ルミネセンス領域において使用することのできる有機エレクトロルミネセンス材料のさらなる種類として、例えば、2−t−ブチル−9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン、9,10−ジ−(2−ナフチル)アントラセン、9,10−ジ−フェニルアントラセン、9,9−ビス[4−(9−アントリル)フェニル]フッ素、および9,9−ビス[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フッ素などのアントラセン類が挙げられる。他の適切なアントラセン類は、その開示全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第6465115号(欧州特許出願公開第1009044A2号に対応)、米国特許第5972247号、米国特許第5935721号および米国特許第6479172号に開示されている。
【0047】
ルミネセンス領域においての使用に適した適切な有機エレクトロルミネセンス材料の別の種類として、その全体を参照として本明細書に組み込む米国特許出願第08/829398号に開示されているオキサジアゾール金属キレート類がある。これらの材料は、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[5−ビフェニル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[5−ビフェニル−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラート]リチウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−トリル−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−トリル−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[5−(p−t−ブチルフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[5−(p−t−ブチルフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(3−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(4−フルオロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[5−(4−クロロフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(4−メトキシフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシ−4−メチルフェニル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−α−(2−ヒドロキシナフチル)−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−ピリジル−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−p−ピリジル−1,3,4−オキサジアゾラート]ベリリウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(2−チオフェニル)−1,3,4−オキサジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾラート]亜鉛、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−フェニル−1,3,4−チアジアゾラート]ベリリウム、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾラート]亜鉛、およびビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)−5−(1−ナフチル)−1,3,4−チアジアゾラート]ベリリウムなどと、その全体を参照としてそれぞれ本明細書に組み込む、2000年1月21日出願の米国特許出願第09/489144号および米国特許第6057048号に開示されたものを含むチアジン類とを含む。
【0048】
ルミネセンス領域は、ドーパントとして約0.01重量パーセント〜約25重量パーセントのルミネセンス材料をさらに含むことができる。ルミネセンス領域において使用することのできるドーパント材料の例は、例えばクマリン、ジシアノメチレン・ピラン類、ポリメチン、オキサベンザントレン、キサンテン、ピリリウム、カルボスチル、およびペリレンなどの蛍光材料である。蛍光材料の別の好ましい種類として、キナクリドン色素類がある。キナクリドン色素類の実例として、その全体を参照としてそれぞれ本明細書に組み込む米国特許第5227252号、米国特許第5276381号および米国特許第5593788号に開示されている、キナクリドン、2−メチルキナクリドン、2,9−ジメチルキナクリドン、2−クロロキナクリドン、2−フルオロキナクリドン、1,2−ベンゾキナクリドン、N,N’−ジメチルキナクリドン、N,N’−ジメチル−2−メチルキナクリドン、N,N’−ジメチル−2,9−ジメチルキナクリドン、N,N’−ジメチル−2−クロロキナクリドン、N,N’−ジメチル−2−フルオロキナクリドン、N,N’−ジメチル−1,2−ベンゾキナクリドンなどがある。使用することのできる蛍光材料の別の種類としては、縮合環蛍光色素類がある。代表的で適切な縮合環蛍光色素類として、その全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第3172862号に開示されている、ペリレン、ルブレン、アントラセン、コロネン、フェナントレセン、およびピレンなどが挙げられる。また、蛍光材料として、その全体を参照としてそれぞれ本明細書に組み込む米国特許第4356429号および米国特許第5516577号に開示されている、1,4−ジフェニルブタジエンおよびテトラフェニルブタジエンなどのブタジエン類と、スチルベン類などとが挙げられる。使用することのできる蛍光材料の他の例としては、その全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第5601903号に開示されているものがある。
【0049】
さらに、発光ルミネセンス領域において使用することのできるルミネセンス・ドーパントには、例えば、4−(ジシアノメチレン)−2−l−プロピル−6−(1,1,7,7−テトラメチルユロリジル−9−エチル)−4H−ピラン(DCJTB)など米国特許第5935720号(その全体を参照として本明細書に組み込む)に開示されている蛍光色素類と、例えば、トリス(アセチルアセトナート)(フェナントロリン)テルビウム、トリス(アセチルアセトナート)(フェナントロリン)ユーロピウム、およびトリス(テノイルトリスフルオロアセトナート)(フェナントロリン)ユーロピウムなどのランタニド金属キレート複合体と、その全体を参照として本明細書に組み込む、Kidoら著「White light emitting organic electroluminescent device using lanthanide complexes」、Jpn.J.Appl.Phys.、第35巻、L394〜L396頁(1996年)に開示されているものと、その全体を参照として本明細書に組み込む、Baldoら著「Highly efficient organic phosphorescent emission from organic electroluminescent devices」、Letters to Nature、第395巻、151〜154頁(1998年)に開示されているものなど、例えば、強いスピン−軌道結合につながる重金属原子を含む有機金属化合物などの燐光材料とがある。適切な例として、2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H23H−フォルピン白金(II)(PtOEP)およびfac−トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(Ir(ppy)3)などがある.
ルミネセンス領域は、正孔輸送特性を有する1つまたは複数の材料も含むことができる。ルミネセンス領域において使用することのできる正孔輸送材料の例としては、その全体を参照として本明細書に組み込む、米国特許第5728801号に開示されている、ポリピロール、ポリアニリン、ポリ(フェニレンビニレン)、ポリチオフェン、ポリアリールアミンおよびこれらの誘導体、ならびに周知の半導体性有機材料と、その全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第4356429号に開示されている1,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン銅(II)などのポルフィリン誘導体と、銅フタロシアニンおよび銅テトラメチル・フタロシアニンと、亜鉛フタロシアニンと、酸化チタン・フタロシアニンと、マグネシウム・フタロシアニンなどとがある。
【0050】
ルミネセンス領域において使用することのできる正孔輸送材料の具体的な種類として、その全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第4539507号に開示されているものなど芳香族第3アミン類が挙げられる。適切な代表的芳香族第3アミン類は、それだけに限らないが、ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン、N,N,N−トリ(p−トリル)アミン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニル・シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(4−メトキシフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N,N’,N’−テトラ−p−トリル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ−1−ナフチル−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(「NPB」)およびこれらの混合物などを含む。芳香族第3アミン類の別の種類として、多環芳香族アミン類がある。これらの多環芳香族アミン類の例には、それだけに限らないが、N,N−ビス[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]アニリン、N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−m−トルイジン、N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−p−トルイジン、N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]アニリン、N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−m−トルイジン、N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−p−トルイジン、N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−クロロフェニルアミノ)−4−ビフェニリル]−m−トルイジン、N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−クロロフェニルアミノ)−4−ビフェニリル]−m−トルイジン、N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−クロロフェニルアミノ)−4−ビフェニリル]−p−トルイジン、N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−p−クロロアニリン、N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−p−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−m−クロロアニリン、N,N−ビス−[4’−(N−フェニル−N−m−トリルアミノ)−4−ビフェニリル]−1−アミノナフタレン、およびこれらの混合物などと、例えば4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニルおよび4,4’−ビス(3−メチル−9−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニルなどの4,4’−ビス(9−カルバゾリル)−1,1’−ビフェニル化合物などとがある。
【0051】
ルミネセンス領域において使用することのできる正孔輸送材料の別の種類として、例えば、5,11−ジ−ナフチル−5,11−ジヒドロインドロ[3,2−b]カルバゾールおよび2,8−ジメチル−5,11−ジ−ナフチル−5,11−ジヒドロインドロ[3,2−b]カルバゾールなど、その全体を参照として本明細書にそれぞれ組み込む米国特許第5942340号および米国特許第5952115号に開示されているものなどのインドロ−カルバゾール類と、N,N,N’N’−テトラアリールベンジジン類とがあり、後者の場合、アリールは、フェニル、m−トリル、p−トリル、m−メトキシフェニル、p−メトキシフェニル、1−ナフチルおよび2−ナフチルなどから選択することができる。N,N,N’N’−テトラアリールベンジジンの実例としては、N,N−ジ−1−ナフチル−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、およびN,N’−ビス(3−メトキシフェニル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミンなどがある。一実施形態では、ルミネセンス領域において使用することのできる正孔輸送材料は、ナフチル−置換ベンジジン誘導体である。
【0052】
ルミネセンス領域は、電子輸送特性を有する1つまたは複数の材料も含むことができる。ルミネセンス領域において使用することのできる電子輸送材料の例には、本明細書に組み込むBerniusらのProceedings of SPIE Conference on Organic Light Emitting Materials and Devices III、デンバー、コロラド、1999年7月、第3797巻、129頁に開示されている、ポリ(9,9−ジ−n−オクチルフルオレン−2,7−ジイル)、およびポリ(2,8−(6,7,12,12−テトラアルキルインデノフルオレン)などのポリフルオレン類、ならびにフルオレン−アミン系共重合体などのフルオレン類を含む共重合体が含まれる。
【0053】
ルミネセンス領域において使用することのできる電子輸送材料の他の例は、金属オキシノイド化合物、オキサジアゾール金属キレート化合物、トリアジン化合物、およびスチルベン化合物から選択することができる。これらの例は、先に詳しく記載した。
【0054】
いくつかの実施形態では、ルミネセンス領域が、有機エレクトロルミネセンス材料に加え、1つまたは複数の正孔輸送材料および/または1つまたは複数の電子輸送材料を含む場合は、有機エレクトロルミネセンス材料、正孔輸送材料、および/または電子輸送材料を、例えば、米国特許第4539507号、米国特許第4720432号および米国特許第4769292号に開示されているOLEDのように、別々の層に形成してもよいし、例えば、米国特許第6130001号、米国特許第6392250号、米国特許第6392339号、米国特許第6614175号、米国特許第6753098号および米国特許第6759146号に開示されているOLEDのように、同じ層内に形成して2種類以上の材料からなる複数の混合ゾーンを形成してもよい。これらの特許の開示全体は、参照として本明細書に組み込む。積層型OLEDのルミネセンス領域における混合領域の使用については、その全体を参照として本明細書に組み込む同時係属特許出願第11/133,975号(整理番号A4037−US−NP)に記載されている。
【0055】
本開示によるどんな表示デバイスのルミネセンス領域も、本明細書に開示する材料など、どんな適切な材料をも含むことができる。例えば、ルミネセンス領域は、次のうち1つの材料、または2つ以上の材料の混合物を含むことができる。それらの材料は、分子性(小分子)エレクトロルミネセンス材料、高分子系エレクトロルミネセンス材料、および無機エレクトロルミネセンス材料である。分子性(小分子)エレクトロルミネセンス材料および高分子系エレクトロルミネセンス材料の例は、本明細書に開示している。無機エレクトロルミネセンス材料は、例えば、ZnS、ZnSe、ZnTe、CdS、CdSeおよびCdTeなどの蛍光物質を含み、Cu、Mnおよびランタニド類などのドーパントをさらに含むことができる。無機エレクトロルミネセンス材料の他の例には、GaAs、GaP、GaAsP、GaAlAs、InGa、SiC、GaN、AlInGaP、InGaNおよびInSeなどが含まれ、Zn、O、NおよびSiなどのドーパントをさらに含むことができる。
【0056】
ルミネセンス領域の厚さは、例えば約1nm〜約1000nmと様々であり得る。いくつかの実施形態では、ルミネセンス領域は、約20nm〜約200nmの厚さを有する。他の実施形態では、ルミネセンス領域は、約50nm〜約150nmの厚さを有する。積層型OLEDの個々のルミネセンス領域の厚さを、目当ての目的に対して所望通りに選択することができる。いくつかの実施形態では、各ルミネセンス領域は、同じ厚さでも互いに異なる厚さでもよい。
【0057】
カソードは、例えば、約4eV〜約6eVの仕事関数を有する高仕事関数成分、または例えば、約2.5eV〜約4eVの仕事関数を有する金属など低仕事関数成分を含め、どんな適切な金属をも含むことができる。カソードは、低仕事関数(約4eV未満)金属と、他の少なくとも1つの金属との組合せを含むことができる。低仕事関数金属の第2の金属、つまり他の金属に対する効果的な割合は、約0.1重量パーセント未満〜約99.9重量パーセント、より具体的には、約3〜約45重量パーセントである。低仕事関数金属の実例には、それだけに限らないが、リチウムまたはナトリウムなどのアルカリ金属と、ベリリウム、マグネシウム、カルシウムまたはバリウムなどの2A族またはアルカリ土類金属と、スカンジウム、イットリウム、ランタン、セリウム、ユーロピウム、テルビウムまたはアクチニウムなどの希土類金属およびアクチニド族金属を含むIII族金属とが含まれる。リチウム、マグネシウムおよびカルシウムは、好ましい低仕事関数金属である。その開示全体を参照のために本明細書に組み込む米国特許第4885211号のMg−Ag合金のカソードは、1つの適切なカソード構造を開示している。別のカソード構造は、その開示全体を参照のために本明細書に組み込む米国特許第5429884号に記載されており、そこでは、アルミニウムおよびインジウムなどの他の高仕事関数金属を有するリチウム合金からカソードが形成される。カソードの別の適切な材料は、アルミニウム金属である。
【0058】
カソードは、例えば、インジウム・スズ酸化物(ITO)など少なくとも1つの透明な導電材料、および例えば、その開示全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第5703436号および米国特許第5707745号に開示されているものなど他の材料を含むことができる。
【0059】
カソードは、金属−有機混合層も含むことができ、その開示全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第6841932号および米国特許出願第10/401238号に記載されている構成を有する。
【0060】
カソードの厚さは、例えば、約10nm〜約500nm、より具体的には、約25nm〜約300nmであるが、これらの範囲外の厚さを使用することもできる。カソードは、どんな適切な薄膜形成方法をも使用して形成することができる。カソードを形成するための例示的方法は、真空内での蒸着法、電子線蒸着法、およびスパッタリング蒸着法を含む。
【0061】
本開示による積層型OLEDまたは表示デバイスの少なくとも1つの中間電極は、2つの電荷注入層間に配設されたMOMLを含む。MOMLを含む中間電極の構成は、目当ての目的または使用に対して所望通りに選択することができる。一実施形態では、正孔注入層と電子注入層との間にMOMLが配設されている。別の実施形態では、2つの正孔注入層間にMOMLが配設されている。さらに別の実施形態では、2つの電子注入層間にMOMLが配設されている。中間電極は、複数のMOMLを含むこともできる。積層型OLEDが複数の中間電極を含み、少なくとも2つの中間電極がMOMLを含むいくつかの実施形態では、MOMLおよび/または各電荷注入層の構成および組立ては、同じでもよいし異なっていてもよい。
【0062】
MOMLは、金属材料および有機材料を含む。中間電極内での使用に適した金属−有機混合層は、その開示全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第6841932号および米国特許出願第10/401238号(米国公開特許出願第2003/0234609号)に開示されているものを含む。
【0063】
MOMLの金属含有材料は、例えば、金属および無機金属化合物を含む。本明細書で使用しているように、「金属含有材料の金属」という言い回し(このような言い回しが特定の元素金属のリストの前にくる場合)は、元素金属および無機金属化合物の金属成分のどちらをも意味する。こうした金属は、それだけに限らないが、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Sn、Pb、Sb、Bi、Se、Te、Ce、Nd、Sm、およびEuであり得る。いくつかの実施形態では、「金属」という用語は、S、Se、およびTeを含む。いくつかの実施形態では、金属合金を使用してMOMLを形成することができる。金属合金のうち1つの金属を金属含有材料とみなし、その金属合金の他の1つまたは複数の金属を、MOMLの1つまたは複数の追加成分とみなす。例えば、有機金属と組み合わせた2元金属合金を3元MOMLとみなす。
【0064】
MOMLの無機金属化合物は、金属ハロゲン化物(例えば、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物)、金属酸化物、金属水酸化物、金属窒化物、金属硫化物、金属炭化物、および金属ホウ化物でよい。適切な金属ハロゲン化物は、それだけに限らないが、例えば、LiF、LiCl、LiBr、Lil、NaF、NaCl、NaBr、Nal、KF、KCl、KBr、Kl、RbF、RbCl、CsF、CsCl、MgF、CaF、SrF、AlF、AgCl、AgF、およびCuClでよい。適切な金属酸化物は、それだけに限らないが、LiO、CaO、CsO、In、SnO、ZnO、ITO、CuO、CuO、AgO、NiO、TiO、Y、ZrO、およびCrでよい。適切な金属水酸化物は、それだけに限らないが、例えば、AgOHでよい。適切な金属窒化物は、それだけに限らないが、LaN、YN、およびGaNでよい。適切な金属硫化物は、それだけに限らないが、ZnS、Sb、Sb、およびCdSでよい。適切な金属炭化物は、それだけに限らないが、LiC、FeC、およびNiCでよい。金属ホウ化物は、それだけに限らないが、CaBでよい。
【0065】
MOMLの無機材料は、例えば(i)C、Si、およびGeなどの非金属元素材料、(ii)SiC、SiO、SiO、およびSiなど、これらの非金属元素材料の無機化合物、ならびに(iii)本明細書に記載するような無機金属化合物を含む。(MOML用成分リスト内の)金属に対し別の成分カテゴリーがあるので、金属は無機材料として分類されない。
【0066】
本明細書に記載するように、いくつかの金属化合物は導電性および光吸収性があることが知られている。したがって、いくつかの実施形態では、有機化合物とこうした金属化合物との混合物によって、当該OLEDの所望の特徴を実現することができる。いくつかの実施形態では、MOML内で使用する金属含有材料は金属化合物、具体的には例えば、AgO、CuO、CuO、FeO、Fe、Fe、NiO、V、ZnS、ZnO、In、およびSnOなど導電性および光吸収性をどちらも有する金属化合物でよい。
【0067】
MOMLに適した有機材料は、例えば、表示デバイスのルミネセンス領域を製造する際に使用されるエレクトロルミネセンス材料でよい。このようなエレクトロルミネセンス材料は本明細書に記載している。例えば、MOMLに適した有機材料は、金属オキシノイド類、金属キレート類、芳香族第3アミン類、インドロ−カルバゾール類、ポルフィリン類、フタロシアニン類、トリアジン類、アントラセン類、およびオキサジアゾール類などの分子性(小分子)有機化合物と、ポリチオフェン類、ポリフルオレン類、ポリフェニレン類、ポリアニレン類、およびポリフェニレンビニレン類などの高分子化合物とを含むことができる。やはりMOML内で使用することのできる他の有機化合物は、ポリポリカーボネート類、ポリエチレン類、ポリスチレン類、有機色素類および顔料類(例えば、ペリノン類、クマリン類、および他の縮合芳香族環化合物)を含む。
【0068】
MOMLは、(2つの成分を有する)「2元MOML」、(3つの成分を有する)「3元MOML」、(4つの成分を有する)「4元MOML」、または5つ以上の成分を有する他のMOMLでよい。2元、3元および4元MOMLは、その開示全体を参照として本明細書に組み込む米国特許第6841932号および米国特許出願第10/401238号に記載されている。これらの実施形態では、金属含有材料、有機化合物および他のあらゆる追加の成分は、MOMLが1つまたは複数の所望の特性を持つべきであることに基づいて選択される。光反射を減少させることの他に、MOMLは、例えば、導電性であることなどを含め1つまたは複数の追加の所望の特性、および表示デバイス内のMOMLの位置によって必要とされ得る他の機能を果たすためにMOMLが持たなければならない他のあらゆる特性(例えば、MOMLがルミネセンス領域に隣接する電極の一部である場合、電荷を効率的に注入できる必要もあること)を任意選択で有することができる。表示デバイスが複数のMOMLを含む場合、各MOMLは、(諸成分およびそれらの濃度に関し)同じ材料組成でもよいし、互いに異なる材料組成でもよい。
【0069】
特定のタイプのMOML内の諸成分に適した材料リストは一部重複することが分かる。例えば、「3元MOML」では、第2の成分に適した材料(例えば、有機材料)は、第3の成分の「有機材料」の選択肢と同じである。さらに、「3元MOML」では、第1の成分に適した材料(例えば、無機金属含有材料)は、第3の成分の「金属」および「無機金属」の選択肢と重複する。しかし、ある特定のタイプのMOML内の諸成分に適した材料のリストが重複していても、そのタイプのMOMLの選択された各成分が互いに異なる限り、つまり各選択された成分が他に同じものがない限り、矛盾はない。
【0070】
一般に、MOMLは、約5vol%〜約95vol%の有機化合物と、約95vol%〜約5vol%の金属含有材料とからなることができる。他の実施形態では、MOMLは、約5vol%〜約30vol%の金属含有材料と、約70vol%〜約95vol%の有機金属とを含むことができる。より好ましい範囲は、選択される個々の材料に応じて決まる。
【0071】
いくつかの実施形態では、MOMLは、MOMLの厚さ全体にわたって、全体的に均一の組成を有する。全体的に均一な組成を得るためには、「調整された混合比法」(例えば、スピン・コーティング法および共蒸着法)を使用することによってMOMLを作成することができる。したがって、いくつかの実施形態では、例えば、同時に別々の蒸発源から蒸発される互いに異なる成分のそれぞれの蒸発速度を調整することによって、互いに異なる成分の混合比があるレベルまで調整されるという意味では、MOMLは調整された組成の混合物である。いくつかの実施形態では、MOML内の互いに異なる成分の比は全体的に同じにとどまり、時間と共に変化しない(つまり、MOML内の各成分の比は、製造直後に測定したとしても、2、3日後およびそれ以降のそれらの比と等しい)。
【0072】
他の実施形態では、MOMLは、そのMOMLの厚さ全体にわたって非均一な組成を有することができる。(例えば、MOML形成中のMOML材料の共蒸着速度を変えることによって)共蒸着法を、MOMLの非均一な組成を生むために使用することができる。MOMLのある実施形態では、内部層拡散または中間層拡散が原因で、長時間にわたり、全体的に均一な組成(「調整された混合比法」によって作成した場合)から非均一な組成への変化が起こり得る。さらに、材料の中間層拡散を使用してMOMLを作成することができる。次の理由から、拡散はMOML作製のあまり好ましい手法ではない。(a)拡散には相当な時間を要する(数日、数週間、数ヶ月、またはそれ以上)。(b)混合比は、時間と共に変化する。そして(c)MOML材料の所望の比率をあまり調整することができない。
【0073】
いくつかの実施形態では、同じ成分からなるが異なる濃度を有する隣り合うMOMLは、成分のうち1つの濃度が、MOMLの製造中または製造直後に計測されるMOMLの厚さの方向に平行に5nm以下の長さにわたって少なくとも5%だけ変化しても、非均一な組成を有する単一のMOMLではなく、まぎれもない複数のMOMLととらえられる。
【0074】
いくつかの実施形態では、MOMLは全体的にほぼ透明かつ導電性である。導電性のMOMLは、断面(つまり、MOMLの厚さにわたる断面)のオーミック抵抗が、例えば約100,000オーム以下、具体的には約5,000オーム以下である。いくつかの実施形態では、MOMLの断面オーミック抵抗は1,000オーム以下である。しかし、他の実施形態では、MOMLは非導電性とみなすことができ、例えば、本明細書に記載する実例の範囲より高いあたりにオーミック抵抗値を有する。
【0075】
一般に、MOMLはほぼ透明であり得る。いくつかの実施形態では、ほぼ透明なMOMLは、例えば、少なくとも50%の透過率、通常は可視光線範囲の少なくとも一部(つまり400〜700nmの範囲の電磁放射)にわたり少なくとも75%の透過率を有することができる。
【0076】
あらゆる適切な技術および装置を使用して、MOMLおよび表示デバイスの残りの部分を形成することができる。例えば、熱蒸着法(つまり、物理的気相成長法−「PVD」)、スピン・コーティング法、スパッタリング法、電子ビーム法、電気アーク法、および化学的気相成長法(「CVD」)などを使用することができる。最初の2つの技術、特にPVDは、より望ましい手法であるといえる。PVDの場合、例えば、MOMLの成分を同時蒸発させ、材料のそれぞれの蒸着速度を別々に調整して所望の混合比を得ることによってMOMLを形成することができる。特定の材料の組合せに対し、試行錯誤してこうした好ましい混合比を求めることができる。「調整された混合比法」という言い回しは、スピン・コーティング法および同時蒸着法を意味する。同時蒸着法は、熱蒸着法(つまり、物理的気相成長法−「PVD」)、スパッタリング法、電子ビーム法、電気アーク法、および化学的気相成長法(「CVD」)を意味する。
【0077】
中間電極の電子注入層は、どんな適切な電子注入材料をも含むことができる。適切な電子注入材料は、本明細書に記載するカソードを実施するのに適した材料を含む。他の適切な電子注入材料は、それだけに限らないが、Ca、Li、K、Na、Mg、Al、In、Y、Sr、Cs、Cr、Ba、Scおよびこれらの化合物などの金属を含む。電子注入材料は無機材料でもよく、それだけに限らないが、SiO、SiO、LiF、CsF、MgF、BaO,およびこれらの混合物を含む。一実施形態では、電子注入材料は、MgとAgとの混合物である。
【0078】
中間電極の正孔注入層は、あらゆる適切な正孔注入材料を含む。いくつかの実施形態では、正孔注入層は、本明細書に記載の、アノードとして適切な正孔注入材料を含むことができる。
【0079】
他の実施形態では、正孔注入材料は、ルミネセンス領域内の有機化合物を酸化させることのできる電子受容性材料を含む。適切な電子受容性材料は、その全開示を参照として本明細書に組み込む、Kidoらに付与された米国特許第6423429号に記載されているものなどの無機化合物を含む。このような無機化合物は、FeCl、AlCl、GaCl、InCl、SbCl、およびこれらの組合せなど、ルイス酸を含む。適切な電子受容性有機材料は、それだけに限らないが、トリニトロフルオレノン、および2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン(F−TCNQ)を含む。上記の電子受容性材料を含む正孔注入層は、任意選択で正孔輸送材料などの有機材料を含むことができる。適切な正孔輸送材料は、それだけに限らないが、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、4,4’,4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(mTDATA)、2,5−ジ−t−ブチルフェニル−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(BP−TPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、銅フタロシアニン(CuPc)、バナジル−フタロシアニン(VOPc)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、およびポリアニリン(PAni)などを含め、本明細書で先に記載したものを含む。このような正孔注入層は、諸蒸着技術に適している。電子受容性材料と、任意選択で正孔輸送材料とを含むいくつかのアノード構成は、その開示全体を参照として本明細書に組み込む同時係属出願第11/133,977号(整理番号A3618−US−NP)に記載されている。いくつかの実施形態では、中間電極の正孔注入層は、1種類の電子受容性材料のみ、またはいくつかの電子受容性材料の組合せを含む。他の実施形態では、中間電極の正孔注入層は、1種類の電子受容性材料、またはいくつかの電子受容性材料と1種類の正孔輸送材料との組合せを含む。いくつかの実施形態では、中間電極の正孔注入層において正孔輸送材料に対する電子受容性材料の比は、約10:90〜約90:10体積パーセントである。
【0080】
中間電極の厚さは、特定の目的または目当ての使用に対し所望通りに選択することができる。いくつかの実施形態では、中間電極の厚さは、延べ約5nm〜約250nmである。いくつかの実施形態では、第1および第2の電荷注入層間に配設されたMOMLを含む中間電極の厚さは、約10nm〜約100nmである。いくつかの実施形態では、MOMLの厚さは、約5nm〜約100nmである。さらに、MOMLの厚さおよび/または金属濃度を、所望のレベルの透明性または導電性を提供するように選択することができる。一般に、MOMLは厚さが減少するにつれて、かつ/または金属濃度が増大するにつれて、より透明であり、より導電的である。電荷注入層は、個々に約0.1nm〜約50nmの厚さを有することができる。他の実施形態では、電荷注入層は、個々に約1nm〜約25nmの厚さを有する。
【0081】
いくつかの実施形態では、次の実例のPVD手順を使用して、MOMLを形成することができる。それらは、(i)無機金属化合物と、有機化合物と、任意選択のあらゆる追加の成分とを同時蒸発させる。(ii)元素金属と、有機化合物と、任意選択のあらゆる追加の成分とを同時蒸発させ、そこで、そのプロセス中またはMOML内で、元素金属を(i)の無機金属化合物に変換させる。さらに(iii)(ii)の元素金属の異なる無機化合物と、有機化合物と、任意選択のあらゆる追加の成分とを同時蒸発させ、そこで、そのプロセス中またはMOML内で、その異なる無機金属化合物を(i)の無機金属化合物に変換させる。あるいは、例えば、無機含金属化合物と他のあらゆる任意選択の成分とを含む高分子溶液をスピン・コーティングすることによって、MOMLを形成することもできる。
【0082】
次のいくつかの実施例を参照して、本開示による積層型OLEDをさらに説明する。これらの実施例は単に、積層型OLEDを説明するためのものであって、その実施形態を限定するものではない。
【実施例】
【0083】
本開示による中間電極を使用する積層型OLEDデバイスI、IIおよびIIIを作製した。それらは図6に示す全体構造を有していた。図6に示すように、積層型OLED600は、ガラス基板610、ITOアノード620、ルミネセンス領域(1)630、ルミネセンス領域(2)650、カソード660、およびルミネセンス領域(1)とルミネセンス領域(2)との間に配設された中間電極640を含む。中間電極640は、電子注入層642と正孔注入層646との間に配設されたMOML644を含んでいた。各デバイスは、真空(5×10−6Torr.)においてITOをコーティングしたガラス基板上で物理的気相成長法を使用して作製した。この場合アノードは、底部アノードの役割を果たした。カソード660は、MgとAgとの混合物であった。各ルミネセンス領域および中間電極の各層の組成および厚さを表1に示す。
【0084】
各デバイスを25mA/cmで駆動することによって、各デバイスの発光特性を評定した。各デバイスのルミネッセンスおよび駆動電圧も表1に示す。
【0085】
【表1】

【0086】
表1に示すように、MOMLを含む中間電極を含む各積層型OLEDは、非常に高い輝度を呈した。各デバイスの安定性テストも、各デバイスが、数千時間の半減期において高安定性を実証できることを示した。
【0087】
特定の実施形態をいくつか説明してきたが、本出願人または他の当業者は、目下予想していない、または予想することができない代替例、修正例、変更例、改善例、および実質的な同等物を思い付くであろう。したがって、添付の出願時の特許請求の範囲、および補正され得る特許請求の範囲は、このような代替例、修正例、変更例、改善例、および実質的な同等物をすべて包含するものとする。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本開示による積層型OLEDの一実施形態の概略断面図である。
【図2】本開示による積層型OLEDの別の実施形態の概略断面図である。
【図3】本開示による積層型OLEDのさらなる実施形態の図である。
【図4】本開示による積層型OLEDのさらに別の実施形態の概略断面図である。
【図5】本開示による積層型OLEDのさらに別の実施形態の概略断面図である。
【図6】実施例I〜IIIの積層型OLEDの構成を示す概略断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1および第2の電極間に配設された複数のルミネセンス領域と、
連続的なルミネセンス領域間に配設された1つまたは複数の中間電極と
を含み、前記1つまたは複数の中間電極うち少なくとも1つが、第1の電荷注入層と、第2の電荷注入層と、前記第1および第2の電荷注入層間に配設された金属−有機混合層とを含む金属−有機混合層電極である、積層型OLED。
【請求項2】
前記金属−有機混合層電極の前記第1および第2の電荷注入層が、正孔注入層および電子注入層からなる群から個別に選択される、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項3】
前記金属−有機混合層電極の前記金属−有機混合層が、約5から約95体積パーセントの量の金属材料と、約5〜約95体積パーセントの量の有機材料とを別々に含む、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項4】
前記金属−有機混合層電極の前記金属−有機混合層が、約5から約30体積パーセントの量の金属材料と、約95〜約70体積パーセントの量の有機材料とを含む、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項5】
前記第1の電荷注入層が電子注入層であり、前記第2の電荷注入層が正孔注入層である、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項6】
前記第1の電荷注入層が正孔注入層であり、前記第2の電荷注入層が電子注入層である、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項7】
前記第1の電荷注入層が正孔注入層であり、前記第2の電荷注入層が正孔注入層である、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項8】
前記第1の電荷注入層が電子注入層であり、前記第2の電荷注入層が電子注入層である、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項9】
前記中間電極のうち少なくとも1つまたは複数が、FeCl、AlCl、InCl、GaCl、SbCl、トリニトロフルオレノン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシクロキノジメタン、およびこれらの組合せからなる群から選択された電子受容性材料を含む正孔注入層を含む、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項10】
前記正孔注入層が、N,N’−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N’−ジフェニル−ベンジジン(NPB)、4,4’4”−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(mTDATA)、2,5−ジ−t−ブチルフェニル−N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(BP−TPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)、銅フタロシアニン(CuPc)、バナジル−フタロシアニン(VOPc)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリアニリン(PAni)、およびこれらの組合せからなる群から選択された正孔輸送材料をさらに含む、請求項9に記載の積層型OLED。
【請求項11】
前記中間電極のうち少なくとも1つまたは複数が、Ca、Li、K、Na、Mg、Al、In、Y、Sr、Cs、Cr、Ba、Sc、Si、およびこれらの化合物からなる群から選択された材料を含む電子注入層を含む、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項12】
前記金属−有機混合層電極の前記金属−有機混合層が、Li、Na、K、Rb、Ls、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Co、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Sn、Pb、Sb、Bi、Se、Te、Ce、Nd、Sm、Eu、およびこれらの組合せからなる群から選択された金属を含む金属材料を含む、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項13】
前記各電荷注入層が、約0.1から約50nmの厚さを別々に有する、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項14】
前記中間電極のそれぞれの前記金属−有機混合層が、約5から約100nmの厚さを別々に有する、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項15】
前記1つまたは複数の中間電極が、約5から約250nmの厚さを別々に有する、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項16】
前記OLEDが、第1および第2の電荷注入層間に配設された金属−有機混合層を含む2つ以上の中間電極を含み、それぞれの中間電極の前記各電荷注入層が、類似の電荷注入機能を有する、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項17】
前記OLEDが、第1および第2の電荷注入層間に配設された金属−有機混合層を含む2つ以上の中間電極を含み、前記各電荷注入層が、互いに異なる電荷注入機能を有する、請求項1に記載の積層型OLED。
【請求項18】
請求項1に記載の積層型OLEDを含む表示デバイス。
【請求項19】
アノードと、
カソードと、
前記アノードと、前記カソードとの間に配設された複数のルミネセンス領域と、
連続的なルミネセンス領域間に配設された中間電極と
を含み、少なくとも1つの中間電極が、i)正孔注入層と、ii)電子注入層と、iii)前記正孔注入層と前記電子注入層との間に配設された金属−有機混合層とを別々に含む、積層型OLED。
【請求項20】
前記正孔注入層および前記電子注入層が、約0.1から約50nmの厚さをそれぞれ別々に有し、前記金属−有機混合層が、約5から約100nmの厚さを有する、請求項19に記載の積層型OLED。
【請求項21】
中間電極の前記金属−有機混合層が、Li、Na、K、Rb、Ls、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、La、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Tc、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Co、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、In、Sn、Pb、Sb、Bi、Se、Te、Ce、Nd、Sm、Eu、およびこれらの組合せからなる群から選択された金属を含む金属材料を含み、前記電子注入層が、Ca、Li、K、Na、Mg、Al、In、Y、Sr、Cs、Cr、Ba、Sc、Si、およびこれらの化合物からなる群から選択された材料を含み、前記正孔注入層が、FeCl、AlCl、InCl、GaCl、SbCl、トリニトロフルオレノン、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、およびこれらの組合せからなる群から選択された電子受容性材料を含む、請求項19に記載の積層型OLED。
【請求項22】
請求項19に記載の積層型OLEDを含む表示デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−332048(P2006−332048A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−138562(P2006−138562)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(501426046)エルジー.フィリップス エルシーデー カンパニー,リミテッド (732)
【Fターム(参考)】