説明

積層布帛およびその製造方法

【課題】高度な透湿性と防水性を有し、かつ優れた耐久性を有する積層布帛を提供する。
【解決手段】少なくとも布帛の片面に直径が1μm未満の繊維から成る不織布ウェッブを、接着剤Aを介して積層した積層布帛であって、接着剤Aが不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸しており、布帛と不織布ウェッブとの剥離強力が120cN/cm以上であることを特徴とする積層布帛。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高度な透湿性と防水性を有し、耐久性に優れた積層布帛、さらには1μm未満のナノフィバーを有するナノフィバー層を含む不織布ウェッブが接着剤を介して布帛に積層した積層布帛に関するものである。さらに詳しくは、本発明はフィッシングや登山衣等のアウトドアウェア、スキー・スノーボードウェア、ウインドブレーカー、アスレチックウェア、ゴルフウェア、テニスウェア、レインウェア、カジュアルウェア、作業衣、手袋や靴等といった衣料、グローブインサートやブーツインサート等の衣料資材分野、壁紙や屋根防水シートといった建築材料といった非衣料分野においても好適に用いることができる積層布帛に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、透湿性と防水性に優れる透湿防水加工積層布帛を得るためには、ポリウレタンをジメチルホルムアミド溶剤を用いて溶解し、コーティング等により布帛に積層した後に水中に導き凝固させ透湿性と防水性を合わせ有する皮膜を形成する所謂ポリウレタンの湿式コーティングや(特許文献1)、ポリマー鎖中に親水性部分を導入したり、高透湿性を有する親水性樹脂をブレンドした樹脂皮膜を布帛にラミネートするといった方法(特許文献2)、さらには、延伸膨張させた多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(特許文献3)を布帛に張り合わせる方法がとられている。
【0003】
しかしながら、これらはいずれも樹脂皮膜を使用した積層布帛であり、樹脂膜に透湿性と耐水圧の相反する機能を持たせるために高度な製造技術が必要であり、高いコストがかかっていた。また、樹脂皮膜であるがゆえ、膜面のタッチはプラスチック感が高くナチュラル感のないものであった。
【0004】
そこで、これらを改善するために布帛に不織布ウェッブを積層することも検討が進められてきた。具体的には、平均繊維径6〜50μmの合繊長繊維層に平均繊維径が0.1〜5μmの極細繊維からなる不織布を全面で積層一体化する方法(特許文献4)、さらには、不織布表面にエレクトロスピニング法によって形成されたナノファイバー層とホットメルト接着剤とを順次積層する方法(特許文献5)が提案されている。
【0005】
しかしながら、これらはいずれも不織布ウェッブを積層するがゆえに、不織布ウェッブの厚さ方向の裂け、すなわち、剥離強力が低いことに起因する耐久性の問題があり、実用化にいたっていないのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭55−80583号公報
【特許文献2】特開平7−9631号公報
【特許文献3】特公昭51−18991号公報
【特許文献4】特開2001−138425号公報
【特許文献5】特開2008−36985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、上記問題を解決し、不織布ウェッブを用いた簡便な方法により製造可能であって、かつ、高い剥離強力とともに高度な透湿性・防水性を兼ね備えた積層布帛を提供することを目的としている。すなわち、本発明は、上記従来技術の現状に鑑み、高度な透湿性と防水性を有し、かつ優れた耐久性を有する積層布帛を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記した課題を解消するために、次の(1)〜(9)のいずれかの構成を有する。
【0009】
(1)少なくとも布帛の片面に直径が1μm未満の繊維から成る不織布ウェッブを、接着剤Aを介して積層した積層布帛であって、該接着剤Aが該不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸しており、該布帛と該不織布ウェッブとの剥離強力が120cN/cm以上である積層布帛。
【0010】
(2)該接着剤Aは、面方向に関して、0.1〜100.0mmの面積の点状、または0.1〜10.0mmの太さの線状もしくは格子状に存在するとともに、該布帛に対し面積比率で10〜70%の割合で存在する、前記(1)記載の積層布帛。
【0011】
(3)該不織布ウェッブの該布帛と接する面とは反対の面の上に、積層布帛裏面に露出する裏地を有し、該不織布ウェッブと該裏地との間には接着剤Bを有し、該接着剤Bは、面方向に関して、0.1〜100.0mmの面積の点状、または0.1〜10.0mmの太さの線状もしくは格子状に存在するとともに、該裏地に対し面積比率で10〜70%の割合で存在し、かつ、該不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸している、前記(1)または(2)記載の積層布帛。
【0012】
(4)該不織布ウェッブの該布帛と接する面とは反対の面の上に、積層布帛裏面に露出する樹脂層を有し、該樹脂層は、0.1〜100.0mmの面積の点状、または0.1〜10.0mmの太さの線状もしくは格子状に存在するとともに、該不織布ウェッブに対し面積比率で10〜70%の割合で存在し、かつ、該不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸している、前記(1)または(2)記載の積層布帛。
【0013】
(5)該不織布ウェッブの該布帛と接する面とは反対の面の上に、積層布帛裏面に露出する無孔膜樹脂層を全面に亘って有している、前記(1)または(2)記載の積層布帛。
【0014】
(6)該不織布ウェッブのかさ高度が0.5〜5.0cm/gであり、JIS L1099−1998A−1法による透湿度が6000g/m・24hr以上、JIS L1099−1998B−1法による透湿度が15000g/m・24hr以上であり、かつ、JIS L1091−1998静水圧法による耐水圧が10.0kPa以上である、前記(1)から(5)のいずれかに記載の積層布帛。
【0015】
(7)エレクトロスピニング法で作製した直径が1μm未満の繊維から成る不織布ウェッブを用い、接着剤Aを、該不織布ウェッブ面もしくは該布帛面に塗布し、該布帛と該不織布ウェッブとを接着することにより前記(1)から(6)のいずれかに記載の積層布帛を得る積層布帛の製造方法。
【0016】
(8)該接着剤の不織布ウェッブ面もしくは布帛面への付与方法が、グラビアコーティング方式である、前記(7)記載の積層布帛の製造方法。
【0017】
(9)該布帛と該不織布ウェッブとを接着した後、撥水加工を施す、前記(7)または(8)記載の積層布帛の製造方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、不織布ウェッブを用いた簡便な方法により製造可能であり、かつ、高度な透湿性と防水性を維持しつつ、優れた耐久性を有する積層布帛を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の積層布帛は、少なくとも、基布となる布帛の片面に、直径が1μm未満の繊維からなる不織布ウェッブが、接着剤(以後、該布帛と該不織布ウェッブとを接着する接着剤を「接着剤A」と称することがある)を介して積層されたものである。
【0020】
基布となる布帛には、ポリエステル、ナイロン、アクリル、アセテート、レーヨン、ポリ乳酸などの化学繊維や綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、これらの混繊糸、混紡糸等が用いられる。また、織物、編物、不織布等いかなる形態であってもよく、上記の繊維を用いて交織、交編された布帛等が好適に用いられる。
【0021】
また、基布となる布帛には、撥水加工、制電加工、制菌加工、紫外線吸収加工、近赤外線吸収加工等、必要に応じた加工が施されていてもよい。
【0022】
一方、不織布ウェッブには、直径が1μm未満の繊維からなるものを用いる。直径が1μm未満の繊維とは、単繊維の直径が1μm未満であることを意味する。単繊維の直径が1μm以上の場合は、繊維と繊維の間隙が大きくなり耐水圧が低下したり、風合いが粗硬になる。さらに好ましくは、700nm以下である。但し、直径が5nm未満であると紡糸時の制御が難しく、製造コストが高くなる傾向があるため、直径5nm以上であることが好ましい。
【0023】
不織布ウェッブを構成する繊維には、繊維形成成分として用いることのできるものであればいかなる成分からなる繊維でも用いることができ、何ら限定されない。例えば、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニールアルコール、ナイロン、アクリロニトリル、アセテート、セルロース、ポリウレタン等を好適に用いることができる。また、これらの繊維は単一でも混繊でも用いることができる。
【0024】
上述の直径が1μm未満の極細繊維は、エレクトロスピニング法、フラッシュ紡糸法、複合紡糸法等により得られ、得られた繊維をシート状に整列させることにより不織布ウェッブが得られる。特にエレクトロスピニング法であれば、極細繊維を制御し易く不織布ウェッブを容易に得ることができることから、好適に用いることができる。
【0025】
エレクトロスピニング法では、溶液法または溶融法が用いられ、繊維を形成する成分により任意に選定できる。例えば、ポリウレタンであればジメチルホルムアミドを、ポリビニールアルコールであれば水を溶媒とした溶液法、ポリエステルやナイロン、熱可塑性ポリウレタンなど熱可塑性樹脂であれば溶融法を用いて、極細繊維を用いた不織布ウェッブを得ることができる。中でも、ポリウレタンがストレッチ性もあり好ましく用いられる。
【0026】
不織布ウェッブの厚さは5〜100μmが好ましい。さらに好ましくは、10〜30μmである。これより薄いと耐水圧が低くなり、これより厚いと透湿度や通気度が低くなり、また布帛と接着し積層した後、風合いが粗硬になる場合がある。
【0027】
また、不織布ウェッブ内における繊維の充填度は、必要とする透湿度と耐水圧および通気度の性能から自由に選定でき、目付やかさ高度で管理することができる。かさ高度は次式で示すとおり目付と厚さから計算する。
かさ高度=(t/w)×1000
ここに かさ高度 :cm/g
目付 w:g/m
試料の厚さ t:mm
【0028】
ただし、目付算出のための重量は、20℃65%RHの標準状態で24時間以上調湿して測定する。厚さは、下記の走査型電子顕微鏡を用いる方法により測定する。
【0029】
本発明においては、不織布ウェッブのかさ高度を0.5〜5.0cm/gにすることが好ましい。より好ましくは、0.8〜4.0cm/gの範囲であり、さらに1.0〜3.5cm/gの範囲が好ましい。不織布ウェッブのかさ高度をこの範囲にすることにより後述の防水・透湿性能が得られ易くなる。かさ高度が小さくなりすぎると透湿性が小さくなり、風合いが粗硬化する。また、大きくなると耐水圧が低くなり所望の防水性が得られなくなる。
【0030】
本発明においては、上記極細繊維から成る不織布ウェッブと基布となる布帛とが接着剤Aを介して積層接着されている。この際、接着剤Aが不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸していることが重要である。不織布ウェッブと布帛とをこのように接着することにより、不織布ウェッブと布帛の剥離強力を容易に120cN/cm以上にすることができる。その結果、積層布帛としてのタテおよびヨコ方向の引張強力は、布帛の引張強力に依存することになり、実用上問題ないものとなる。特にポリウレタン繊維を用いた不織布ウェッブはタテ、ヨコ方向ともストレッチ率が大きいためいかなる布帛の伸びにも追従でき、接着後の引張強力は衣服として用いる場合は全く問題のないものとなる。
【0031】
しかし、不織布ウェッブの厚さ方向に、接着剤Aが10%以上含浸していないと、剥離強力が低くなり易く、実用上問題が生じる。最も顕著な例が、縫い目の防水性を維持するため、縫い目部分に接着した目止めテープの剥離である。縫い目部分においては、目止めテープが、基布となる布帛上に積層された不織布ウェッブのさらに上に接着剤を介して積層接着される。不織布ウェッブと布帛の界面は後述する接着剤Aで固定され、また不織布ウェッブと目止めテープの界面は目止めテープの接着剤により固定されるが、不織布ウェッブ内の厚さ方向における強度は、不織布ウェッブ内の繊維同士のからみ具合のみに依存することになる。そのため、洗濯や着用の揉み作用により、不織布ウェッブの層内で剥離が生じ、しいては、目止めテープが不織布ウェッブの一部と接着した状態で剥離することになる。また、目止めテープを接着してない部位でも部分的に不織布ウェッブの層内で剥離が生じ、水ぶくれに似た部分剥離状の欠点が発生する。
【0032】
接着剤Aの、不織布ウェッブの厚さ方向への含浸率は90%までとすることが好ましい。含浸率が90%よりも高いと、接着剤Aが裏抜けして不織布ウェッブ面から飛び出る、すなわち積層布帛裏面に露出する可能性があり、見かけの悪いものとなったり、中衣や肌との接触ががさついたものとなる。含浸率は、望ましくは40〜90%の範囲であり、さらに望ましくは50〜90%の範囲である。この範囲にすることで安定した剥離強力と良好な見かけの品位が得られる。
【0033】
本発明において、不織布ウェッブの厚さや接着剤の厚さ方向の含浸程度は、走査型電子顕微鏡を用いて撮影した写真から測定する。具体的には、積層布帛を任意の箇所にてタテ、ヨコ、バイヤスのそれぞれにおいて厚み方向に切断し、不織布ウェッブの厚さ方向の全体が入る様に撮影する。その後、タテ、ヨコ、バイヤス方向における各断面写真において、繊維ウェッブの厚みと接着剤の含浸厚みを5個所で測定する。合計15個所の測定結果の加算平均値を、それぞれ不織布ウェッブの厚さ、接着剤の含浸厚みとする。含浸率は次式により計算する。
含浸率(%)={接着剤の含浸厚み(μm)/不織布ウェッブの厚さ(μm)}×100
【0034】
本発明においては、上述したように、接着剤Aを不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸させることにより、不織布ウェッブと布帛の剥離強力を120cN/cm以上にする。該剥離強力は、耐久性の観点からは高ければ高いほど望ましいが、一般的に剥離強力を向上させる手法は風合い硬化を招くことから、800cN/cm以下であることが好ましい。
【0035】
また、本発明においては、基布となる布帛と不織布ウェッブの間に介在する接着剤Aが、面方向に関して、0.1〜100.0mmの面積の点状のものであることが好ましい。面積の大きい方が剥離強力は高くなるが、風合いが粗硬になることから、好ましくは、0.5〜50.0mm、であり、1.0〜25.0mmの面積の点状がさらに好ましい。また、面方向において線状でもよく、0.1〜10.0mmの太さの線状または格子状のものであることが好ましい。上記同様に、さらに好ましくは1.0〜10.0mmであり、最も好ましくは1.0〜5.0mmの範囲である。なお、「面方向」とは積層布帛の面方向を意味する。したがって、ここでいう接着剤Aの面積や太さとは、例えば積層布帛を水平方向に配置した際の、接着剤Aの水平面への投影面における面積や太さを意味する。
【0036】
また、接着剤Aは、面方向において、基布となる布帛に対して面積比率で10〜70%の割合で設けることが、剥離強力の制御の精度を上げることや積層布帛の透湿度や通気度および耐水圧を高度なレベルで安定させるために好ましい。30〜70%であることがさらに好ましい。
【0037】
透湿度や通気度を上げるためには、接着剤Aの点や線の面積を小さくし、かつ接着剤Aの面積比率を小さくすることが好ましいが、剥離強力や耐水圧が小さくなる。一方で剥離強力や耐水圧を向上させるためには、接着剤Aの点や線の面積を大きくし、かつ面積比率を大きくすることが好ましく、最も好ましいのは全面接着層とするのが好ましいが、透湿度や通気度は低下する。この相反する機能性を程良く維持させるためには、接着剤Aを0.1〜100.0mmの面積の点状、または0.1〜10.0mmの太さの線状もしくは格子状に、面積比率で10〜70%で付与することが好ましい。
【0038】
点状とは円形、四角形、菱形、楕円形、三角形等いかなる形状でもよく、それらを組み合わせて配列し、図柄や文字状にしても、商標のロゴマーク状に配列する等してもよい。また、連続的なパターンを形成するように配列しても、ランダムに配置してもよい。また、線状とは、直線であっても、曲線であってもよい。面積比率とは接着剤による被覆率のことである。
【0039】
点状で付与する場合、接着剤Aの各点の塗布面積が0.1mmより小さいと接着性が低く、100.0mmより大きいと布帛の拘束点が大きくなるため風合いが粗硬になり、かつ透湿度も低くなる傾向がある。線状および格子状の太さも0.1mmより小さくなると接着性が低く、10.0mmの太さより大きくなると布帛の拘束点が大きくなるため風合いが粗硬になる場合がある。さらに接着剤Aによる被覆面積比率が10%より小さいと接着性が低く、70%より大きいと布帛の拘束点が多くなり合いが粗硬になる場合がある。
【0040】
本発明においては、上述の如く、不織布ウェッブに対し部分的に接着剤の支柱が入る構造となるため、不織布ウェッブに押圧加重がかかっても不織布ウェッブが潰れにくい構造となる。接着剤を用いず、支柱が入っていない不織布ウェッブでは押圧加重がかかると空隙がなくなり、圧縮されて復元されず、所謂つぶれた状態になり、しいては透湿度や通気性が大幅に低下する問題が生じる。
【0041】
本発明において、接着剤Aとしては、ウレタン系、エポキシ系、メラミン系、ナイロン系などを例示でき、また、一液型、二液型であっても良く、公知の接着剤等を用いることができる。中でも、ポリウレタン系の接着剤は、加工が容易であるため、好ましい。また、有機溶媒を用いないホットメルトタイプの接着剤も好適に用いることができる。
【0042】
また、本発明においては、他の態様として、上記のように少なくとも基布となる布帛の片面に直径が1μm未満の繊維から成る不織布ウェッブを接着剤Aを介して積層するとともに、不織布ウェッブの上記布帛接着面とは反対側の面の上に裏地を積層した積層布帛も例示できる。すなわち、少なくとも基布となる布帛の片面に直径が1μm未満の繊維から成る不織布ウェッブが接着剤Aを介して積層されており、接着剤Aが不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸しており、さらに不織布ウェッブの該布帛と接する面とは反対の面の上には、積層布帛裏面に露出する裏地を有し、該不織布ウェッブと該裏地との間には接着剤Bを有し、該接着剤Bが、面方向に関して、0.1〜100.0mmの面積の点状、または0.1〜10.0mm(好ましくは1.0〜10.0mm)の太さの線状もしくは格子状に付与されるとともに、該裏地に対し面積比率で10〜70%の割合で付与され、かつ、不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸している積層布帛である。このような構成によれば、上記した基本構成による効果に加え次のような効果が得られる。すなわち、表地面(すなわち布帛側)から含浸した接着剤と裏地面から含浸した接着剤の両方で不織布ウェッブの繊維層が固定されるため、不織布ウェッブ層内で剥離がさらに生じにくくなり、剥離強力120cN/cm以上をさらに達成し易く、かつ圧縮による潰れも生じにくくなる。特に、接着剤Bを0.1〜100.0mmの面積の点状、または0.1〜10.0mm(好ましくは1.0〜10.0mm)の太さの線状もしくは格子状に、面積比率で10〜70%に塗布することで、剥離強力の制御の精度を上げることができ、また、積層布帛の透湿度や通気度および耐水圧を高度なレベルで安定させることができる。
【0043】
そして、このような態様においては、表地面の接着剤Aの面積比率と裏地面の接着剤Bの面積比率をそれぞれ10〜70%に保つことが高い透湿性や通気性を維持するために重要である。しかしながら、例えば接着剤A、Bの含浸率が100%の場合、両者の面積比率を10〜70%に保つだけでは、透湿性や通気性を高めることが難しい場合がある。すなわち、含浸率が100%の場合は表地面に裏地面からの接着剤Bが露出するため、面積比率は(Aの面積比率)+(Bの面積比率)−(AとBの重なった面積比率)となり、接着剤A、Bの面積比率は、結果的に70%を越える場合が発生する。そのため、接着剤Aと接着剤Bの相対的な位置関係を調整し、接着剤A、Bの含浸率が100%の場合でも接着剤Aの面積比率と接着剤Bの面積比率が共に10〜70%に保たれるようにすることで、高い透湿性や通気性を維持することが好ましい。
【0044】
裏地には、ポリエステル、ナイロン、アクリル、アセテート、レーヨン、ポリ乳酸などの化学繊維や綿、麻、絹、羊毛等の天然繊維、これらの混繊、混紡等からなる布帛が好ましく用いられる。織物、編物、不織布等いかなる形態であってもよく、上記繊維の交織布帛、交編布帛等が好ましく用いられる。また、裏地に用いる布帛には、撥水加工、制電加工、制菌加工、紫外線吸収加工、近赤外線吸収加工等必要に応じた加工を施してあってもよい。縫い目の防水性維持のため目止めテープを用いる場合には、基布となる布帛、不織布ウェッブ、裏地、目止めテープがこの順に積層され、目止めテープは溶融樹脂により裏地に接着されるが、この溶融樹脂が裏地を通り越え不織布ウェッブまで届き易くなるよう、裏地には密度の粗い織・編物を用いることが好ましい。薄くて、粗いという観点からトリコットが好ましく、分散染料の移行昇華の問題がないナイロントリコットが好ましく、さらに目止めテープの溶融樹脂を溶かして接着するため、融点の高いナイロン66使いトリコットが最も好ましい。
【0045】
接着剤Bとしては、上述の接着剤Aと同様、ウレタン系、エポキシ系、メラミン系、ナイロン系などを例示でき、また、一液型、二液型であっても良く、公知の接着剤等を用いることができる。中でも、ポリウレタン系の接着剤は加工が容易であるという点で好ましく、また、有機溶媒を用いないホットメルトタイプの接着剤も好適に用いることができる。なお、接着剤Bには、接着剤Aと同一のものを選択してもよいし、また異なるものを選択してもよい。
【0046】
また、さらに他の態様として、上記のように少なくとも布帛の片面に直径が1μm未満の繊維から成る不織布ウェッブを、接着剤Aを介して積層するとともに、不織布ウェッブの上記布帛接着面とは反対側の面の上に樹脂層を設けた積層布帛も例示できる。すなわち、少なくとも基布となる布帛の片面に直径が1μm未満の繊維から成る不織布ウェッブが接着剤Aを介して積層されており、接着剤Aが不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸しており、さらに不織布ウェッブの該布帛と接する面とは反対側の面の上には、積層布帛裏面に例えば3〜30μm程度の高さで露出する樹脂層を有し、該樹脂層が、面方向に関して、0.1〜100.0mmの面積の点状、または0.1〜10.0mm(好ましくは1.0〜10.0mm)の太さの線状もしくは格子状に存在するとともに、該不織布ウェッブに対して面積比率で10〜70%の割合で存在し、かつ、不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸している積層布帛である。このような構成によれば、上記した基本構成による効果に加え、次のような効果が得られる。すなわち、裏面側(樹脂層側)が点状の接触になることからドライでサラサラした接触感が得られ、かつ不織布ウェッブにキズが付きにくくなるため防水性の耐久性向上に繋がる。また、接着剤Aと該樹脂層を構成する樹脂が不織布ウェッブの厚さ方向に含浸するため、剥離強力120cN/cm以上をより容易に達成することができる。なお、この態様においても、布帛面からの接着剤Aの面積比率と他の面からの樹脂層の面積比率との両者を10〜70%に保つことが、高い透湿性や通気性を維持するために重要である。
【0047】
樹脂層を構成する樹脂としては、上述の接着剤Aと同様の、ウレタン系、エポキシ系、メラミン系、ナイロン系などを例示でき、また、一液型、二液型の両者を例示できる。中でも、ポリウレタン系の樹脂は加工が容易であるという点で好ましく、また、有機溶媒を用いないホットメルトタイプの樹脂も好適に用いることができる。
【0048】
樹脂層を構成する樹脂には、顔料を添加して着色したり、アルミニュム粉末を添加して、体温の輻射反射効果による保温性向上性能を付与したり、ジルコニア等の遠赤外線放射セラミックを添加して、遠赤外線放射による保温性効果を付与することもできる。また、このような微粒子を添加することにより、滑りが良くドライ感のあるものにすることができる。さらに、樹脂層の耐摩耗性も向上する。
【0049】
この微粒子の粒径としては、5〜200μmが好ましい。微粒子が5μm以上であると、繊維ウェッブの繊維間隙より大きくなるため、微粒子が不織布ウェッブの内部には入り込まず不織布ウェッブの表面に設けた樹脂層のみに存在することになる。そのため、剥離強力には影響を及ぼさずに滑りやドライ感のみの改善が可能となる。但し、微粒子が200μmより大きいと、タッチが粗雑になり、洗濯や摩擦で脱落する可能性が大きくなる。微粒子の組成は、特に無機、有機に関わらず限定されない。微粒子の形状は、特に限定しないが、摩擦係数を低下させる観点から、鋭角な突起のないものが好ましく、さらには球状であることが好ましい。
【0050】
ここでいう粒径は、不織布ウェッブの表面に露出している部分の粒子の粒径であり、走査電子顕微鏡を用いて撮影した写真から、球の場合は直径、無定型の場合は最も短い短径を測定して得られた値である。
【0051】
また、かかる微粒子は、樹脂層中、10cmあたり10個以上、好ましくは、50個以上存在するように、添加することが好ましい。
【0052】
さらに他の態様として、上記のように少なくとも布帛の片面に直径が1μm未満の繊維から成る不織布ウェッブを接着剤Aを介して積層するとともに、不織布ウェッブの上記布帛接着面とは反対側の面の上に無孔膜樹脂層を設けた積層布帛も例示できる。すなわち、少なくとも、基布となる布帛の片面に直径が1μm未満の繊維から成る不織布ウェッブが接着剤Aを介して積層されており、接着剤Aが不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸しており、さらに不織布ウェッブの該布帛と接する面とは反対側の面の上に積層布帛裏面に露出する無孔膜樹脂層を全面に亘って積層した積層布帛を例示できる。換言すれば、不織布ウェッブの、基布となる布帛とは反対側の面の上をトップコーティングもしくはトップラミネートすることで得られる積層布帛である。このような構成によれば、積層布帛の裏面側にある無孔膜樹脂層により防水性をさらに向上でき、かつ耐久性の高いものとなる。
【0053】
上記無孔膜樹脂層には、ウレタン系、エポキシ系、メラミン系、ナイロン系など、また一液型、二液型であっても良く、公知の樹脂等種々用いることができるが、加工が容易であることからポリウレタン系が好ましい。
【0054】
以上のような本発明によれば、不織布ウェッブのかさ高度が0.5〜5.0cm/gであり、JIS L1099−1998A−1法による透湿度が6000g/m・24hr以上、JIS L1099−1998B−1法による透湿度が15000g/m・24hr以上であり、かつJIS L1091−1998静水圧法による耐水圧が10.0kPa以上である積層布帛を容易に得ることができる。
【0055】
A−1法による透湿度が6000g/m・24hr以上あることにより着用時の蒸れ感が解消できる。かかる透湿度は、より好ましくは8000g/m・24hr以上であり、さらに好ましくは、10000g/m・24hr以上である。A−1法による透湿度は高いほど蒸れ感がなくなり好ましいが、高度な技術が必要であり、また加工コストが高くなることから14000g/m・24hr以下であることが好ましい。
【0056】
またB−1法による透湿度が15000g/m・24hr以上の場合は、結露が発生しにくく、特に環境温度が低いところで着用すると結露による衣服の保温性の低下を好適に防ぐことができる。より好ましくは20000g/m・24hr以上である。B−1法による透湿度は高いほど結露がなくなり好ましいが、高度な技術が必要であり、また加工コストが高くなることから60000g/m・24hr以下であることが好ましい。
【0057】
そして、静水圧法による耐水圧が10.0kPa以上の場合は、防水性が高く、降雨時等の水が衣服内に侵入しにくい。さらに好ましくは20.0kPa以上である。耐水圧を上げると風合いが硬化することおよびコストの点で500.0kPa以下であることが好ましい。
【0058】
上記のような構成の本発明の積層布帛においては、JIS L−1096−1999通気度A法(フラジール形法)における通気度が、0.1cm/cm・s以上であることが望ましく、0.3cm/cm・s以上がより好ましい。通気度が、0.1cm/cm・s以上あることで放湿性や放熱性が向上した着用快適性の優れた衣服となる。上述の態様の中では、トップコーティングやトップラミネートを施したもの(すなわち無孔膜樹脂層を全面に亘って設けたもの)以外は、不織布ウェッブに含浸させる接着剤や樹脂を点や線状することにより通気性を持たせることが可能である。なお、不織布ウェッブ上に無孔膜樹脂層を全面形成した積層布帛は、通気性はないが高い耐水圧を有する。用途や所望の性能によりトップに無孔膜樹脂層を積層するか否かを使い分ければよい。これらの透湿度と耐水圧の関係および通気度は、不織布ウェッブのかさ高度が大きく影響する。
【0059】
次に、本発明の積層布帛の好ましい製造方法を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0060】
まず、離型紙上にエレクトロスピニング法で1μm未満の繊維からなる不織布ウェッブを形成する。エレクトロスピニング法は、作製に用いるポリマーにより溶液法、溶融法を選択すればよい。例えばポリウレタンであれば、ジメチルホルムアミドを溶媒として溶液法を用いることが一般的であり、本発明においても問題なく使用できる。離型紙は、紙やフィルムにシリコーン樹脂をコーティングしたものが望ましいが、特に限定されない。ただし、使用した溶媒が離型紙上に残留することもあり、該溶剤に耐性のある素材を用いることが好ましい。ポリウレタン溶液濃度と溶液の射出速度(紡糸速度)、紡糸口の印加電圧、離型紙の移動速度や重ね回数を調整することで、離型紙上に不織布ウェッブを所望の密度や厚さで得ることができる。
【0061】
離型紙上に不織布ウェッブを形成させた後は、該不織布ウェッブを30〜50℃の部屋で24時間から72時間程度エージングして熟成させる。次いで、好ましくは離型紙を剥離させ不織布ウェッブのみを次の巻き取り工程に供する。ここで離型紙を不織布ウェッブから剥離しなくても良いが、離型紙上に不織布ウェッブを形成させたまま長時間保管すると、離型紙を剥離しにくくなり、剥離時にピンホールが発生したり、厚さ斑が発生する可能性が高くなる。
【0062】
その後、基布となる布帛の上、または不織布ウェッブの上に上述の接着剤Aを塗布する。接着剤の塗布方法としては、ナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等を用いることができ、特にグラビアコーターは、比較的容易に点状または線状や格子状に塗布することができ、透湿性や通気度の観点で好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0063】
また、接着方式はウェットラミネート方式、ドライラミネート方式等、所望の特性により使い分ければよいが、好ましくは、不織布ウェッブの品位を良好にするために、布帛上に接着剤Aを塗布しドライラミネート方式とすることが好ましい。ウェットラミネート方式は、接着剤に使用した有機溶媒が不織布ウェッブの繊維を膨潤溶解させ、見かけの品位不良や耐水圧不良を発生させ易い。布帛上に接着剤Aを塗布しドライラミネート方式とすることで、接着剤用の溶媒がほとんどなくなった後に不織布ウェッブに接着剤がのることになるので、有機溶媒の影響を受けず、品位が悪化しにくい。また、有機溶媒を用いないホットメルトタイプの接着剤も好適に用いることができる。
【0064】
本発明においては、接着剤Aを不織布ウェッブの厚さ方向の10%以上に含浸させることが重要であるが、その観点からは、接着剤Aを塗布し布帛と不織布ウェッブとを重ね合わせた後に、かかる積層布帛に圧力をかけ、接着剤を押し込むことが好ましい。接着剤に使用する樹脂や溶媒濃度により異なるが、ウレタンの場合は、温度が110〜120℃の金属ロールとゴムロールとの間に接着剤を介在した布帛と不織布ウェッブとを通し、線圧29.4〜78.5N/cm程度を負荷し、圧着させる。線圧や温度が低いと不織布ウェッブへの含浸率が低くなり、線圧や温度が高いと接着剤の裏ぬけが発生したり、不織布ウェッブが押しつぶされたりする。
【0065】
このようにして得られた積層布帛には、パッディング法やキスローラー法で撥水加工を施すことも好適である。不織布ウェッブは均一の無孔質皮膜と異なるため、親水性の繊維形成素材を使用したものは耐水圧が低い。不織布ウェッブ内のナノファイバー一本、一本の表面が疎水性になった場合、特に高い耐水圧が得られる。耐水圧を高くする上で、撥水加工は好適である。撥水剤としてはフッ素系、シリコーン系等の公知のものが使用できる。
【0066】
そして、このようにして得られた2層構成の積層布帛の、不織布ウェッブ面に、接着剤Aを塗布したのと同様に接着剤Bを塗工し、さらに裏地を積層し圧着することにより、上述の、裏地を接着した3層構成の積層布帛が得られる。
【0067】
また、上述のようにして得られた2層構成の積層布帛の、不織布ウェッブ面に、接着剤Aを塗布したのと同様に樹脂を点状もしくは線状に不織布ウェッブ面より盛り上がる様に塗工し樹脂層を形成させることにより、上述の、裏面側に点状もしくは線状の樹脂層が露出している積層布帛が得られる。
【0068】
ここで、不織布ウェッブ面に接着剤や樹脂を付与する場合、ナイフコーター、バーコーター、グラビアコーター等を用いることで、接着剤や樹脂を点状や、線状、格子状に積層することができる。この場合においても、樹脂を不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸させることが剥離強力向上の観点で重要である。そのため、圧着する際の線圧や温度を適宜調整することにより樹脂の含浸量を調節することが好ましい。なお、温度や線圧を上げることにより含浸程度は高くなるが、樹脂粘度が低いと含浸せずにヨコに広がる場合もあり、不織布ウェッブの粗密に合わせ樹脂の粘度も調整することが好ましい。
【0069】
さらに、上述のようにして得られた2層構成の積層布帛の、基布となる布帛とは反対側の面の不織布ウェッブ面上に、全面に亘って、無孔質の樹脂をコーティングもしくはラミネートすることにより、上述の耐水圧の高い無孔膜樹脂層を有する積層布帛が得られる。なお、ラミネートする場合には、ドライラミネート法やウェットラミネート法のいずれの方法も用いることができる。
【実施例】
【0070】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、本発明における各種測定法は下記の通りである。
【0071】
(1)透湿度
JIS L1099−1998 塩化カルシウム法(A−1法)、および、JIS L1099−1998 酢酸カリウム法(B−1法)に基づいて測定した。ただし、両試験法とも24時間あたりの透湿量に換算した。
【0072】
(2)耐水圧
JIS L1092−1998 耐水度(静水圧法)20kPa以下をA法(低水圧法)、20kPaを超えるものをB法(高水圧法)で測定し、kPa単位に換算した。
【0073】
(3)撥水度
JIS L1092−1998 スプレー法に基づいて測定した。
【0074】
(4)通気度
JIS L1096−1999 通気性A法に基づいて測定した。
【0075】
(5)剥離強力
JIS L1066−2004 はく離強さを参考にして、次のとおり測定した。次の目止めテープを不織布ウェッブ面に接着し、目止めテープと繊維布帛をつかみ、その他はJIS L1066−2004のはく離強さの測定法に準じて測定した。
目止めテープ:サン化成工業(株)製 サンメルコBW−2(幅2.5cm)
接着条件 :乾アイロン120℃×15秒(あて布あり)
【0076】
(6)不織布ウェッブの厚さおよび接着剤の厚さ方向の含浸程度
不織布ウェッブの厚さおよび接着剤の厚さ方向の含浸程度は、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製 S−3400N)を用いて撮影した写真から測定した。具体的には、積層布帛を任意の箇所にてタテ、ヨコ、バイヤスのそれぞれにおいて厚み方向に切断し、不織布ウェッブの厚さ方向の全体が入る様に撮影した。その後、タテ、ヨコ、バイヤス方向における各断面写真において、繊維ウェッブの厚みと接着剤の含浸厚みを5個所で測定した。タテ、ヨコ、バイヤス方向の合計15個所の測定結果の加算平均値を、それぞれ不織布ウェッブの厚さ、接着剤の含浸厚みとした。含浸率は次式により計算した。
含浸率(%)={接着剤の含浸厚み(μm)/ウェッブの厚さ(μm)}×100
【0077】
(7)かさ高度
不織布ウェッブのかさ高度は次式で示すとおり目付と厚さから計算した。
かさ高度=(t/w)×1000
ここに かさ高度 :cm/g
目付 w:g/m
資料の厚さ t:mm
ただし、目付算出のための重量は20℃65%RHの標準状態で24時間以上調湿して測定した。厚さは、上記の走査型電子顕微鏡を用いる方法で測定した。なお、任意の5箇所からサンプリングし、加算平均した。
【0078】
(8)積層布帛の洗濯後の品位
タテ、ヨコとも45cmのサンプルを3枚作製し、JIS規格L−0217の(番号)103の方法に準じ、次の方法で洗濯処理し、タテ方向を垂直方向にして、室内にて吊り干し乾燥した。その後、部分剥離発生状況を確認した。
洗濯機 :2層式((株)東芝製 VH−M30(HS)ギンガ3.0を使用)
洗剤 :弱アルカリ性合成洗剤
洗剤濃度:1g/L
洗濯温度:40℃
浴比 :1:30
洗濯時間:5分
すすぎ :常温水オーバーフロー×2分×2回
水流 :標準条件
工程 :洗濯−脱水−すすぎ−脱水−すすぎ−脱水
【0079】
[実施例1]
44dtex−34フィラメントのナイロン6の丸断面のセミダル糸をタテ糸およびヨコ糸に使用し、タテ糸は糊付け処理を施し、密度が135×115本/2.54cmになる様にウォータージェットルームで製織した。ついで精練した後、プレセットにより密度が140×120本/2.54cmになる様に170℃で40秒間熱セットし、さらに染色、乾燥し160℃で仕上げセットした。これを基布となる布帛として用いた。
【0080】
また、目付35g/mのポリプロピレンフィルムにシリコーンコーティングした離型紙上に、エレクトロスピニング法(溶液法、溶媒ジメチルホルムアミド)で単繊維径300〜400nmのポリウレタン繊維からなる不織布ウェッブ(厚さ15μm、目付5.0g/m、かさ高度3.0cm/g)を作製し、48時間40℃の部屋で熟成エージングした後、離型紙を剥離し、張力をかけずに巻き取った。
【0081】
次に、接着剤Aとして、イシシアネートとして4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)を用いソフトセグメントにポリエチレングリコールを含むポリエーテル系ポリウレタン樹脂をメチルエチルケトン、トルエン、イソプロピルアルコール(1:1:0.5)の混合溶媒に溶解し23重量%としたものに、架橋剤としてシアヌル骨格を有するヘキサメチレンジイソシアネートの3量体を溶液重量に対して6部添加した接着剤を作製した。
【0082】
この接着剤溶液を上記布帛の上に、0.40mm×0.40mmの正方形(深さ20μm)が進行方向に対し45°の角度で、かつ、40メッシュで彫刻されたグラビアロールを備えたグラビアコーターにて塗布し、120℃で1分間乾燥した。その結果、接着剤は、布帛に対して点状に塗布され、各点は一辺0.40mmの正方形であり、長さ方向に対し45°の角度で配置された。また、接着剤の布帛に対する面積比率(被覆率)は40%であった。
【0083】
次いで、上記で得た不織布ウェッブを重ね、温度110℃の金属ロールとゴムロールとの間を通して線圧49N/cmを負荷した後、48時間室温でエージングを行った。その後、パッド、ドライ、キュア法で織物面に、アサヒガードAG710(フッ素系撥水剤、旭硝子(株)製)の5%水溶液を付着率60%になる様に付与し、120℃で1分間乾燥した後、170℃で40秒間熱処理して積層布帛を得た。
【0084】
得られた積層布帛は、不織布ウェッブの厚さ方向に10.5μm(含浸率70%)接着剤Aが含浸しており、A−1法透湿度10500g/m・24時間、B−1法透湿度24000g/m・24時間、耐水圧90kPa、と優れた透湿防水性能を有していた。また、剥離強力は、タテ方向260cN/cm、ヨコ方向230cN/cmであり、洗濯を5回しても不織布ウェッブに部分剥離等の発生がなく、良好な外観品位を維持していた。得られた測定値を表1に示す。
【0085】
[実施例2]
実施例1で得られた積層布帛の不織布ウェッブ面に、下記のように顔料を添加して白色に着色したポリウレタン樹脂(樹脂層)を、実施例1と同様のグラビアコーターを用いて塗布し、120℃で1分間熱処理した。その結果、ポリウレタン樹脂は、不織布ウェッブに対して点状に塗布され、各点は一辺が0.40mmの正方形であり、長さ方向に対し45°の角度で配置された。また、該ポリウレタン樹脂の不織布ウェッブに対する面積比率(被覆率)は40%であった。
【0086】
得られた積層布帛は、ポリウレタン樹脂層の不織布ウェッブへの厚さ方向の含浸深さが7.5μm(含浸率50%)であり、不織布ウェッブから突出して露出しているポリウレタン樹脂の高さが5μmであった。また、A−1法透湿度9200g/m・24時間、B−1法透湿度21000g/m・24時間、耐水圧95kPa、と優れた透湿防水性能を有していた。また、剥離強力はタテ方向310cN/cm、ヨコ方向280cN/cmであり、洗濯を5回しても不織布ウェッブに部分剥離等の発生がなく良好な外観品位を維持していた。得られた測定値を表1に示す。
【0087】
(樹脂層)
・ハイムレンY−262:100重量部(大日精化製、ポリエーテル系ポリウレタン、(厚さ12μmの透湿度(A−1)5,500g/m・hr))
・顔料:二酸化チタン顔料(白色)10重量部
・MEK:75重量部
・トルエン:75重量部。
【0088】
[実施例3]
実施例1で得られた積層布帛の不織布ウェッブ面に、実施例1で用いた接着剤を、接着剤Bとして、実施例1と同様のグラビアコーターにて塗布し、120℃で1分間乾燥した。その結果、接着剤Bは、不織布ウェッブに対して点状に塗布され、各点は一辺が0.40mmの正方形であり、長さ方向に対し45°の角度で配置された。また、接着剤Bの不織布ウェッブに対する面積比率(被覆率)は40%であった。
【0089】
別に、33dtex−24フィラメントのナイロン6・6の丸断面のセミダル糸を使用したシングルトリコットを染色加工し、29ウエル/2.54cm、46コース/2.54cmで仕上げた。該トリコットのシンカーループ面を上記の接着剤を塗布した不織布ウェッブ面に重ね、実施例1と同様に温度110℃の金属ロールとゴムロールとの間を通して線圧49N/cmを負荷した後、48時間室温でエージングを行った。
【0090】
得られた3層の積層布帛においては、接着剤Bが裏地面から不織布ウェッブの厚さ方向に10.0μm(含浸率67%)含浸しており、A−1法透湿度10000g/m・24時間、B−1法透湿度22000g/m・24時間、耐水圧90kPaと、優れた透湿防水性能を有していた。また、剥離強力は、タテ方向280cN/cm、ヨコ方向270cN/cmであり、洗濯を5回しても裏地の剥離の発生がなく良好な外観品位を維持していた。得られた測定値を表1に示す。
【0091】
[実施例4]
実施例1の撥水加工前の積層布帛の不織布ウェッブ面に、下記の塗工液を、クリアランス0.05mm、塗布量30g/m、ロールオンナイフ方式でコーティングし、130℃で3分間乾燥した後、165℃で2分キュアリングすることで無孔膜樹脂層を積層した。その後、実施例1と同様に、アサヒガードAG710(フッ素系撥水剤、旭硝子(株)製)の5%水溶液を付着率60%になる様に付与し、120℃で1分間乾燥した後、170℃で40秒間熱処理した後、48時間室温でエージングを行った。
【0092】
得られた積層布帛は、無孔膜樹脂層が不織布ウェッブの厚さ方向に3.0μm(含浸率20%)含浸しており、A−1法透湿度7000g/m・24時間、B−1法透湿度18000g/m・24時間、耐水圧300kPa、と優れた透湿防水性能を有していた。また、無孔膜樹脂層に目止めテープを接着して測定した剥離強力は、タテ方向230cN/cm、ヨコ方向200cN/cmであり、洗濯を5回しても部分剥離の発生がなく良好な外観品位を維持していた。得られた測定値を表1に示す。
【0093】
(塗工液)
(a)ポリイソシアネート成分として水添メチレンジイソシアネート、グリコール成分として数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール、内部乳化剤として2,2−ビスヒドロキシメチルブタン酸を用いて合成された平均粒子径65nmである自己乳化型ポリウレタンを42.1wt%、(b)ポリイソシアネート成分として水添メチレンジイソシアネート、グリコール成分として数平均分子量1000のポリエチレングリコール、内部乳化剤として2,2−ビスヒドロキシメチルプロピオン酸を用いて合成した平均粒径45nmの自己乳化型ポリウレタンを42.1wt%、(c)架橋剤として末端官能基にメチロール基を有するメラミン系架橋剤である“ベッカミンM−3”(大日本インキ(株)製商品名)を2wt%、(d)反応性末端にイソシアネート基を有するブロックイソシアネート系架橋剤である“BN−69”(第1工業製薬(株)製商品名)を5.6wt%、さらに、(d)マット剤として、平均粒径2.7μmの多孔性シリカをブレンド樹脂の固形分に対し10wt%添加し、ミキサーで撹拌、脱泡後、塗工液とした。
【0094】
[実施例5]
次の点を変更した以外は実施例1と同様に積層布帛を得て、評価した。すなわち、金属ロールとゴムロールの間を通すことで布帛と不織布ウェッブとの積層体に負荷する線圧を、35N/cmに変更した以外は、実施例1と同様に加工して積層布帛を得た。
【0095】
得られた積層布帛は、不織布ウェッブの厚さ方向に6.0μm(含浸率40%)接着剤Aが含浸しており、A−1法透湿度11000g/m・24時間、B−1法透湿度24000g/m・24時間、耐水圧90kPa、と優れた透湿防水性能を有していた。また、剥離強力は、タテ方向200cN/cm、ヨコ方向180cN/cmであり、洗濯を5回しても不織布ウェッブに部分剥離等の発生がなく、良好な外観品位を維持していた。得られた測定値を表1に示す。
【0096】
[実施例6]
次の点を変更した以外は実施例1と同様に積層布帛を得て、評価した。すなわち、金属ロールとゴムロールの間を通すことで布帛と不織布ウェッブとの積層体に負荷する線圧を、55N/cmに変更した以外は、実施例1と同様に加工して積層布帛を得た。
【0097】
得られた積層布帛は、不織布ウェッブの厚さ方向に13.5μm(含浸率90%)接着剤Aが含浸しており、A−1法透湿度10000g/m・24時間で、B−1法透湿度22000g/m・24時間、耐水圧90kPa、と優れた透湿防水性能を有していた。また、剥離強力は、タテ方向300cN/cm、ヨコ方向270cN/cmであり、洗濯を5回しても不織布ウェッブに部分剥離等の発生がなく、良好な外観品位を維持していた。得られた測定値を表1に示す。
【0098】
[実施例7]
次の点を変更した以外は実施例1と同様に積層布帛を得て、評価した。すなわち、ポリウレタン繊維からなる不織布ウェッブの厚さを4μm、目付を5.0g/m、かさ高度を0.8cm/gと変更し、かつ、温度110℃の金属ロールとゴムロールとの間を通す線圧を40N/cmに変更した以外は、実施例1と同様に加工して積層布帛を得た。
【0099】
得られた積層布帛は、不織布ウェッブの厚さ方向に2.8μm(含浸率70%)接着剤Aが含浸しており、A−1法透湿度13000g/m・24時間、B−1法透湿度28000g/m・24時間、耐水圧100kPa、と優れた透湿防水性能を有していた。また、剥離強力は、タテ方向250cN/cm、ヨコ方向230cN/cmであり、洗濯を5回しても不織布ウェッブに部分剥離等の発生がなく、良好な外観品位を維持していた。得られた測定値を表1に示す。
【0100】
[実施例8]
次の点を変更した以外は実施例1と同様に積層布帛を得て、評価した。すなわち、ポリウレタン繊維からなる不織布ウェッブの厚さを24μm、目付を5.0g/m、かさ高度を4.8cm/gと変更し、かつ、温度110℃の金属ロールとゴムロールとの間を通す線圧を40N/cmに変更した以外は、実施例1と同様に加工して積層布帛を得た。
【0101】
得られた積層布帛は、不織布ウェッブの厚さ方向に16.8μm(含浸率70%)接着剤Aが含浸しており、A−1法透湿度9500g/m・24時間、B−1法透湿度19000g/m・24時間、耐水圧25kPa、と優れた透湿防水性能を有していた。また、剥離強力は、タテ方向180cN/cm、ヨコ方向160cN/cmであり、洗濯を5回しても不織布ウェッブに部分剥離等の発生がなく、良好な外観品位を維持していた。得られた測定値を表1に示す。
【0102】
[実施例9]
次の点を変更した以外は実施例1と同様に積層布帛を得て、評価した。すなわち、ポリウレタン繊維からなる不織布ウェッブの厚さを1.5μm、目付を5.0g/m、かさ高度を0.3cm/gに変更した。次いで、実施例1と同様に加工して積層布帛を得た。
【0103】
得られた積層布帛は、不織布ウェッブの厚さ方向に1.05μm(含浸率70%)接着剤Aが含浸しており、A−1法透湿度3500g/m・24時間、B−1法透湿度10000g/m・24時間、耐水圧120kPa、と優れた透湿防水性能を有していた。また、剥離強力は、タテ方向290cN/cm、ヨコ方向240cN/cmであり、洗濯を5回しても不織布ウェッブに部分剥離等の発生がなく、良好な外観品位を維持していた。得られた測定値を表1に示す。
【0104】
[実施例10]
次の点を変更した以外は比較例3と同様に積層布帛を得て、評価した。すなわち、ポリウレタン繊維からなる不織布ウェッブの厚さを15μm、目付を2.5g/m、かさ高度を6.0cm/gに変更した。次いで、実施例1と同様に加工して積層布帛を得た。
【0105】
得られた積層布帛は、不織布ウェッブの厚さ方向に10.5μm(含浸率70%)接着剤Aが含浸しており、A−1法透湿度10000g/m・24時間、B−1法透湿度22000g/m・24時間、耐水圧8kPa、と優れた透湿防水性能を有していた。また、剥離強力は、タテ方向190cN/cm、ヨコ方向180cN/cmであり、洗濯を5回しても不織布ウェッブに部分剥離等の発生がなく、良好な外観品位を維持していた。得られた測定値を表1に示す。
【0106】
[比較例1]
次の点を変更した以外は実施例1と同様に積層布帛を得て、評価した。すなわち、接着剤Aとして湿気硬化型ホットメルトタイプのポリウレタンを用い、該接着剤を110℃に加熱溶解し、グラビアコーターで実施例1と同様の形状に塗布し、ゴムロールのみからなる圧着機で線圧19.6N/cmを負荷し、不織布ウェッブの厚さ方向に1.0μm(含浸率7%)含浸させた以外は、実施例1と同様に積層布帛を得た。
【0107】
得られた積層布帛の剥離強力は、タテ方向70cN/cm、ヨコ方向60cN/cmであり、洗濯5回で不織布ウェッブに部分剥離が発生し、洗濯後の品位は不良であった。
【0108】
[比較例2]
比較例1で得られた積層布帛の不織布ウェッブ面に、実施例2と同様に顔料添加により白色に着色したポリウレタン樹脂(樹脂層)を塗布した後、120℃で1分間乾燥し、比較例1同様にゴムロールのみからなる圧着機で線圧19.6N/cmを負荷し、その後48時間室温でエージングを行った。
【0109】
得られた積層布帛は、接着剤Aが不織布ウェッブの厚さ方向に1.0μm(含浸率7%)含浸していた。また、裏面からの樹脂層は、不織布ウェッブの厚さ方向に1.2μm(含浸率8%)含浸していた。また、剥離強力は、タテ方向80cN/cm、ヨコ方向60cN/cmであり、洗濯5回で不織布ウェッブに部分剥離が発生し、外観品位が不良となった。
【0110】
[比較例3]
次の点を変更した以外は実施例1と同様に積層布帛を得て、評価した。すなわち、ポリウレタン繊維からなる不織布ウェッブの厚さを1.5μm、目付を5.0g/m、かさ高度を0.3cm/gに変更した。また、接着剤Aとして、比較例1と同じ湿気硬化型ホットメルトタイプのポリウレタンを用い、該接着剤を110℃に加熱溶解し、グラビアコーターで実施例1と同様の形状に塗布し、ゴムロールのみからなる圧着機で線圧19.6N/cmを負荷し、接着剤Aを不織布ウェッブの厚さ方向に0.025μm(含浸率5%)含浸させた。これらの点以外は実施例1と同様に積層布帛を得て、評価した。
【0111】
得られた積層布帛の剥離強力は、タテ方向40cN/cm、ヨコ方向30cN/cmであり、風合いが粗硬で衣料や衣料用資材に使えるものではなかった。また、洗濯5回で不織布ウェッブに部分剥離が発生し、外観品位が不良となった。
【0112】
[比較例4]
次の点を変更した以外は比較例3と同様に積層布帛を得て、評価した。すなわち、ポリウレタン繊維からなる不織布ウェッブの厚さを15μm、目付を2.5g/m、かさ高度を6.0cm/gに変更した。また、接着剤Aとして、比較例1と同じ湿気硬化型ホットメルトタイプのポリウレタンを用い、該接着剤を110℃に加熱溶解し、グラビアコーターで実施例1と同様の形状に塗布し、ゴムロールのみからなる圧着機で線圧19.6N/cmを負荷し、接着剤Aを不織布ウェッブの厚さ方向に1.2μm(含浸率8%)含浸させた。これらの点以外は実施例1と同様に積層布帛を得た。
【0113】
得られた積層布帛の剥離強力は、タテ方向85cN/cm、ヨコ方向60cN/cmであり、耐水圧が低く、さらに洗濯5回で不織布ウェッブに部分剥離が発生し、外観品位が不良となった。
【0114】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明の積層布帛は、高度な透湿性と防水性を有し、耐久性に優れるため、フィッシングや登山衣等のアウトドアウェア、スキー・スノーボードウェア、ウインドブレーカー、アスレチックウェア、ゴルフウェア、テニスウェア、レインウェア、カジュアルウェア、作業衣、手袋や靴等といった衣料、グローブインサートやブーツインサート等の衣料資材分野、壁紙や屋根防水シートといった建築材料といった非衣料分野においても好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも布帛の片面に直径が1μm未満の繊維から成る不織布ウェッブを、接着剤Aを介して積層した積層布帛であって、該接着剤Aが該不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸しており、該布帛と該不織布ウェッブとの剥離強力が120cN/cm以上であることを特徴とする積層布帛。
【請求項2】
該接着剤Aは、面方向に関して、0.1〜100.0mmの面積の点状、または0.1〜10.0mmの太さの線状もしくは格子状に存在するとともに、該布帛に対し面積比率で10〜70%の割合で存在する、請求項1に記載の積層布帛。
【請求項3】
該不織布ウェッブの該布帛と接する面とは反対の面の上に、積層布帛裏面に露出する裏地を有し、該不織布ウェッブと該裏地との間には接着剤Bを有し、該接着剤Bは、面方向に関して、0.1〜100.0mmの面積の点状、または0.1〜10.0mmの太さの線状もしくは格子状に存在するとともに、該裏地に対し面積比率で10〜70%の割合で存在し、かつ、該不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸している、請求項1または2に記載の積層布帛。
【請求項4】
該不織布ウェッブの該布帛と接する面とは反対の面の上に、積層布帛裏面に露出する樹脂層を有し、該樹脂層は、0.1〜100.0mmの面積の点状、または0.1〜10.0mmの太さの線状もしくは格子状に存在するとともに、該不織布ウェッブに対し面積比率で10〜70%の割合で存在し、かつ、該不織布ウェッブの厚さ方向に10%以上含浸している、請求項1または2に記載の積層布帛。
【請求項5】
該不織布ウェッブの該布帛と接する面とは反対の面の上に、積層布帛裏面に露出する無孔膜樹脂層を全面に亘って有している、請求項1または2に記載の積層布帛。
【請求項6】
該不織布ウェッブのかさ高度が0.5〜5.0cm/gであり、JIS L1099−1998A−1法による透湿度が6000g/m・24hr以上、JIS L1099−1998B−1法による透湿度が15000g/m・24hr以上であり、かつ、JIS L1091−1998静水圧法による耐水圧が10.0kPa以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の積層布帛。
【請求項7】
エレクトロスピニング法で作製した直径が1μm未満の繊維から成る不織布ウェッブを用い、接着剤Aを、該不織布ウェッブ面もしくは該布帛面に塗布し、該布帛と該不織布ウェッブとを接着することにより請求項1〜6のいずれかに記載の積層布帛を得ることを特徴とする積層布帛の製造方法。
【請求項8】
該接着剤の不織布ウェッブ面もしくは布帛面への付与方法が、グラビアコーティング方式である、請求項7に記載の積層布帛の製造方法。
【請求項9】
該布帛と該不織布ウェッブとを接着した後、撥水加工を施す、請求項7または8に記載の積層布帛の製造方法。

【公開番号】特開2010−30289(P2010−30289A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−148413(P2009−148413)
【出願日】平成21年6月23日(2009.6.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【出願人】(392017624)平松産業株式会社 (15)
【Fターム(参考)】