説明

積層板

【課題】優れた外観を有する積層板を提供することである。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、メタクリル樹脂層(B)と、ゴム状重合体を含有するメタクリル樹脂層(C)とが、この順に積層されてなる積層板であり、これにより押出流れ方向に沿って発生する線状欠陥を目立ち難くすることができ、それゆえ積層板の外観を優れたものにすることができる。前記メタクリル樹脂層(B)の厚さが、3〜70μmであり、積層板全体の厚さが、0.2〜3mmである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂層を含む積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂板は、透明性や耐衝撃性等に優れているので、エクステリア用途や看板用途をはじめ、照明用途やディスプレイにおける前面板用途等の様々な分野で使用されている。
【0003】
しかしながら、ポリカーボネート樹脂板は、耐久性や表面硬度に劣るという問題がある。この問題を解決するため、ポリカーボネート樹脂層の一方の面にアクリル樹脂層を積層した積層板が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、アクリル樹脂層は耐衝撃性に劣り、割れるおそれがあることから、ポリカーボネート樹脂層の両面に、メタクリル樹脂100重量部に対して架橋アクリル系弾性体を25重量部の割合で含有するメタクリル樹脂層を積層した積層板も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
これらの積層板は、通常、押出成形して得られる。特に、架橋アクリル系弾性体等のゴム状重合体を含有するメタクリル樹脂層と、ポリカーボネート樹脂層とを押出成形して積層一体化する技術は非常に有用であり、利用範囲も広い。
【0005】
しかしながら、ポリカーボネート樹脂層とゴム状重合体を含有するメタクリル樹脂層とを押出成形して積層一体化すると、ポリカーボネート樹脂層とメタクリル樹脂層との界面において、押出流れ方向に沿って線状の欠陥が多数発生し、外観が悪化することがあった。このような外観の悪化は、特に、積層板をディスプレイにおける前面板として使用する場合に問題であり、その改善が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−025589号公報
【特許文献2】特開平11−58627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、優れた外観を有する積層板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、以下の知見を見出した。すなわち線状欠陥は、メタクリル樹脂層に含有されているゴム状重合体に起因するものであり、ポリカーボネート樹脂層およびゴム状重合体を含有するメタクリル樹脂層を構成する各々の溶融樹脂を積層して押し出す際に、ポリカーボネート樹脂層とメタクリル樹脂層との界面に押出流れ方向に沿って発生する。
【0009】
本発明者は、この押出流れ方向に沿って発生する線状欠陥を目立ち難くすればよいと考え、鋭意検討を重ねた。その結果、ポリカーボネート樹脂層の屈折率と、メタクリル樹脂層の屈折率との差が大きいことに起因して、両層の界面に位置している線状欠陥が目立ち易くなっているという知見を得た。
【0010】
そして、この知見に基づき、さらに鋭意研究を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂層とゴム状重合体を含有するメタクリル樹脂層との間に、メタクリル樹脂層を介在させれば、線状欠陥は、屈折率の差が大きいポリカーボネート樹脂層との界面ではなく、屈折率の差が小さいか、または実質同一である介在させたメタクリル樹脂層との界面に発生するようになり、その結果、線状欠陥が目立ち難くなることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の積層板は、以下の構成からなる。
(1)ポリカーボネート樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、メタクリル樹脂層(B)と、ゴム状重合体を含有するメタクリル樹脂層(C)とが、この順に積層されてなることを特徴とする積層板。
(2)前記メタクリル樹脂層(B)の厚さが、3〜70μmである前記(1)に記載の積層板。
(3)積層板全体の厚さが、0.2〜3mmである前記(1)または(2)に記載の積層板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、押出流れ方向に沿って発生する線状欠陥を目立ち難くすることができ、それゆえ積層板の外観を優れたものにすることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態にかかる積層板の製造方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の積層板は、ポリカーボネート樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、メタクリル樹脂層(B)と、ゴム状重合体を含有するメタクリル樹脂層(C)とが、この順に積層されてなるものである。
【0015】
ポリカーボネート樹脂層(A)を構成するポリカーボネート樹脂としては、例えば二価フェノールとカルボニル化剤とを界面重縮合法や溶融エステル交換法等で反応させることにより得られるものの他、カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法等で重合させることにより得られるもの、環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0016】
前記二価フェノールとしては、例えばハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0017】
中でも、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンから選ばれる二価フェノールを単独で、または2種以上用いるのが好ましく、特に、ビスフェノールAの単独使用や、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパンおよびα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンから選ばれる1種以上の二価フェノールとの併用が好ましい。
【0018】
前記カルボニル化剤としては、例えばホスゲン等のカルボニルハライド、ジフェニルカーボネート等のカーボネートエステル、二価フェノールのジハロホルメート等のハロホルメート等が挙げられ、必要に応じてそれらの2種以上を用いることもできる。
【0019】
一方、上述したポリカーボネート樹脂層(A)の少なくとも一方の面に積層されるメタクリル樹脂層(B)を構成するメタクリル樹脂としては、メタクリル酸メチル単位を主成分とするもの、具体的にはメタクリル酸メチル単位を通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上含むメタクリル酸メチル樹脂であるのが好ましく、メタクリル酸メチル単位100重量%のメタクリル酸メチル単独重合体であってもよいし、メタクリル酸メチルと、該メタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体との共重合体であってもよい。
【0020】
前記メタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体としては、例えばメタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等のメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル類や、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル等のアクリル酸エステル類等が挙げられる。また、スチレンや置換スチレン類、例えばクロロスチレン、ブロモスチレン等のハロゲン化スチレン類や、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のアルキルスチレン類等も挙げられる。さらに、メタクリル酸、アクリル酸等の不飽和酸類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等も挙げられる。これらメタクリル酸メチルと共重合し得る他の単量体は、それぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
メタクリル樹脂層(B)は、ゴム状重合体を含有していてもよく、樹脂成分としてメタクリル樹脂を含有し、さらにゴム状重合体を含有するメタクリル樹脂組成物から構成されていてもよい。このメタクリル樹脂組成物におけるメタクリル樹脂としては、上述したメタクリル樹脂層(B)を構成するメタクリル樹脂で例示したのと同じメタクリル樹脂が挙げられる。ゴム状重合体としては、後述するメタクリル樹脂層(C)を構成するメタクリル樹脂組成物で例示するのと同じゴム状重合体が挙げられる。メタクリル樹脂層(B)を構成するメタクリル樹脂組成物に含有されるゴム状重合体の組成と、メタクリル樹脂層(C)を構成するメタクリル樹脂組成物に含有されるゴム状重合体の組成は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0022】
メタクリル樹脂層(B)を構成するメタクリル樹脂組成物におけるゴム状重合体の含有量としては、メタクリル樹脂およびゴム状重合体の合計100重量%を基準にして、2重量%以下とするのが好ましい。ゴム状重合体の含有量があまり多いと、ポリカーボネート樹脂層(A)とメタクリル樹脂層(B)との界面に線状欠陥が多く発生し、線状欠陥が目立つおそれがある。
【0023】
メタクリル樹脂層(B)の表面に積層されるメタクリル樹脂層(C)は、メタクリル樹脂組成物で構成されている。このメタクリル樹脂組成物は、樹脂成分としてメタクリル樹脂を含有する。このメタクリル樹脂としては、上述したメタクリル樹脂層(B)を構成するメタクリル樹脂で例示したのと同じメタクリル樹脂が挙げられる。メタクリル樹脂層(B)を構成するメタクリル樹脂の組成と、メタクリル樹脂層(C)に含まれるメタクリル樹脂の組成は、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよいが、両層の屈折率の差を小さくする上で、同一組成であるのが好ましい。
【0024】
メタクリル樹脂組成物は、必須成分としてゴム状重合体を含有する。ゴム状重合体としては、例えばポリブタジエンゴム、アクリロニトリル/ブタジエン共重合ゴム、スチレン/ブタジエン共重合ゴム等のジエン系ゴム、アクリル系ゴム、エチレン/プロピレン/非共役ジエン系ゴム等が挙げられる。また、これらのゴム状重合体にメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等の単量体をグラフト重合させてなるグラフト共重合体も好適に用いられる。グラフト共重合体とする場合、ゴム状重合体とグラフトさせる単量体との割合は、通常、前者が5〜80重量部、後者が95〜20重量部である。これらのグラフト共重合体としては、例えば特開昭55−147514号公報や特公昭47−9740号公報等に記載されているものを用いることができる。
【0025】
また、グラフト共重合体の好ましい例として、ゴム状重合体を内層とし、グラフト重合鎖を外層とする多層構造重合体を挙げることができる。この場合、内層のゴム状重合体としては、アクリル系ゴムを用いるのが好ましく、このアクリル系ゴムは、アクリル酸アルキルの単独重合体であってもよいし、アクリル酸アルキル50重量%以上とアクリル酸アルキル以外の単量体50重量%以下との共重合体であってもよい。ここで、該アクリル酸アルキルとしては、例えばアクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。また、アクリル酸アルキル以外の単量体としては、例えばメタクリル酸アルキル、アルコキシアクリル酸アルキル、アクリル酸シアノエチル、アクリルアミド、アクリル酸ヒドロキシアルキル、メタクリル酸ヒドロキシアルキル、アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、さらにメタクリル酸アリル等の架橋性の単量体を用いることもできる。アクリル系ゴムのガラス転移点(Tg)は25℃未満であるのがよい。
【0026】
また、前記外層のグラフト重合鎖は、アルキル基の炭素数が1〜4であるメタクリル酸アルキルの単独重合体や、該メタクリル酸アルキル50重量%以上と該メタクリル酸アルキル以外の単量体50重量%以下との共重合体であるのが好ましい。ここで、該メタクリル酸アルキルとしては、メタクリル酸メチルが好ましく用いられる。また、該メタクリル酸アルキル以外の単量体としては、例えば炭素数が5以上のメタクリル酸アルキル、アクリル酸アルキル、スチレン、置換スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、さらにメタクリル酸アリル等の架橋性の単量体を用いることもできる。この外層重合体のガラス転移点(Tg)は25℃以上であるのがよい。
【0027】
さらに、前記外層重合体と同様の重合体を、内層のアクリル系ゴムのさらに内側に存在させることもできる。上述のような多層構造重合体は、その全体の重量を基準として、アクリル系ゴム層を20〜60重量%含有するものがよい。これらの多層構造重合体としては、例えば特公昭55−27576号公報、特開平6−80739号公報、特開昭49−23292号公報等に記載されているものを用いることができる。
【0028】
メタクリル樹脂組成物におけるゴム状重合体の割合は、メタクリル樹脂およびゴム状重合体の合計100重量%を基準にして、通常3〜50重量%、好ましくは4〜30重量%、より好ましくは5〜20重量%である。ゴム状重合体の割合があまり少ないと、積層板が割れ易くなる。また、ゴム状重合体の割合があまり多いと、積層板の表面硬度が低下するおそれがあるとともに、線状欠陥が多く発生する傾向にあるので好ましくない。
【0029】
なお、上述したポリカーボネート樹脂層(A),メタクリル樹脂層(B),(C)には、それぞれ必要に応じて、例えばアルキルスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセライド、ポリエーテルエステルアミド等の帯電防止剤、ヒンダードフェノール等の酸化防止剤、燐酸エステル等の難燃剤、パルミチン酸、ステアリルアルコール等の滑剤、ヒンダードアミン等の光安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、マロン酸エステル系紫外線吸収剤、蓚酸アニリド系紫外線吸収剤、酢酸エステル紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤、光拡散剤、染料、蛍光増白剤等を添加してもよく、これらの添加剤は、必要に応じてそれらの2種以上を用いてもよい。
【0030】
前記添加剤を配合する方法としては、例えば樹脂と添加剤とをヘンシェルミキサーやタンブラー等で機械的に混合した後、溶融混練する方法等が挙げられる。また、この溶融混練は、例えば一軸または二軸の押出機や各種ニーダー等を用いて行うことができる。
【0031】
積層板は、ポリカーボネート樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、メタクリル樹脂層(B),(C)がこの順で積層されるように共押出成形で積層一体化することにより、好適に製造される。この共押出成形は、3基の一軸または二軸の押出機を用いて、ポリカーボネート樹脂層(A),メタクリル樹脂層(B),(C)の各材料をそれぞれ溶融混練した後、フィードブロックダイやマルチマニホールドダイ等を介して積層することにより行うことができる。積層一体化された溶融樹脂は、例えばロールユニット等を用いて冷却固化すればよい。共押出成形により製造した積層板は、粘着剤や接着剤を用いた貼合により製造した積層板に比べて、二次成形し易い点で好ましい。
【0032】
積層板の層構成としては、ポリカーボネート樹脂層(A)の一方の面に、メタクリル樹脂層(B),(C)がこの順に積層されてなる3種3層構造であってもよいし、ポリカーボネート樹脂層(A)の両面にそれぞれ、メタクリル樹脂層(B),(C)がこの順に積層されてなる3種5層構造であってもよい。
【0033】
以下、本発明の積層板の製造方法にかかる一実施形態について、ポリカーボネート樹脂層(A)の一方の面に、メタクリル樹脂層(B),(C)がこの順に積層されてなる3種3層構造の積層板を共押出成形で製造する場合を例に挙げ、図1を参照して詳細に説明する。
【0034】
図1に示すように、まず、ポリカーボネート樹脂層(A)およびメタクリル樹脂層(B),(C)の各材料を、それぞれ別個の押出機1,2,3で加熱して溶融混練し、それぞれフィードブロック4に供給して溶融積層一体化した後、ダイ5から押出す。
【0035】
次いで、ダイ5から押出したシート状ないしフィルム状の溶融樹脂を、略水平方向に対向配置した第1冷却ロール6と第2冷却ロール7の間に挟み込む。第1,第2冷却ロール6,7は、少なくとも一方がモータ等の回転駆動手段に接続されており、両ロールが所定の周速度で回転するように構成されている。両ロールのうち、第2冷却ロール7は、両ロール間で挟持された後のシート状ないしフィルム状の積層板が巻き掛けられる、巻き掛けロールである。
【0036】
第1,第2冷却ロール6,7としては、例えば剛性を有する金属ロール、弾性を有する金属弾性ロール等が挙げられる。前記金属ロールとしては、例えばドリルドロール、スパイラルロール等が挙げられる。前記金属弾性ロールとしては、例えば軸ロールと、この軸ロールの外周面を覆うように配置され溶融樹脂に接触する円筒形の金属製薄膜とを備え、これら軸ロールと金属製薄膜との間に水や油等の温度制御された流体が封入されたものや、ゴムロールの表面に金属ベルトを巻いたもの等が挙げられる。
【0037】
第1,第2冷却ロール6,7は、金属ロールおよび金属弾性ロールから選ばれる1種で構成してもよいし、金属ロールと金属弾性ロールとを組み合わせて構成してもよい。
【0038】
リタデーション値が低減された積層板を得る場合には、第1,第2冷却ロール6,7を金属ロールと金属弾性ロールとの組み合わせで構成するのが好ましい。すなわち、溶融樹脂を金属ロールと金属弾性ロールとの間に挟持すると、金属弾性ロールが溶融樹脂を介して金属ロールの外周面に沿って凹状に弾性変形し、金属弾性ロールと金属ロールとが溶融樹脂を介して所定の接触長さで接触する。これにより、金属ロールと金属弾性ロールとが、溶融樹脂に対して面接触で圧着するようになり、これらロール間に挟持される溶融樹脂は面状に均一加圧されながら製膜される。その結果、製膜時の歪みが低減され、リタデーション値の低減された積層板が得られる。
【0039】
金属ロールと金属弾性ロールとを組み合わせる場合には、金属弾性ロールを第1冷却ロール6、金属ロールを第2冷却ロール7とするのが好ましい。これにより、得られる積層板のリタデーション値をより低減することができる。
【0040】
上述した第1冷却ロール6と第2冷却ロール7の間に挟み込んだ溶融樹脂を、第2冷却ロール7および第3冷却ロール8の順に巻き掛ける。具体的には、第2冷却ロール7に巻き掛けられた溶融樹脂を、第2冷却ロール7と第3冷却ロール8との間に通して第3冷却ロール8に巻き掛けるようにする。これにより、溶融樹脂が緩やかに冷却されるので、得られる積層板のリタデーション値を低減することができる。なお、第2冷却ロール7と第3冷却ロール8との間は、所定の間隙を設けて解放状態にしてもよいし、所定の間隙を設けずに溶融樹脂が両ロール間に挟み込まれるようにしてもよい。
【0041】
第3冷却ロール8としては、特に限定されるものではなく、従来から押出成形で使用されている通常の金属ロールを採用することができる。具体例としては、ドリルドロールやスパイラルロール等が挙げられる。第3冷却ロール8の表面状態は、鏡面であるのが好ましい。なお、第3冷却ロール8以降に第4冷却ロール,第5冷却ロール,・・・と複数本の冷却ロールを設け、第3冷却ロール8に巻き掛けたシート状ないしフィルム状の積層板を順次、次の冷却ロールに巻き掛けるようにしてもよい。
【0042】
第3冷却ロール8に巻き掛けて緩やかに冷却した積層板を、図示しない引取りロールによって引取り、これを巻き取ると、本発明の積層板が得られる。積層板全体の厚さは、0.2〜3mmであるのが好ましく、0.3〜2mmであるのがより好ましく、0.4〜1.5mmであるのがさらに好ましい。積層板の厚さがあまり薄いと、成形し難くなり、また積層板の厚さがあまり大きいと、成形時に要する冷却時間が長くなり、生産性が低下する。
【0043】
また、この積層板において、ポリカーボネート樹脂層(A)の厚さとしては、20〜2,900μmであるのが好ましく、メタクリル樹脂層(B)の厚さとしては、3〜70μmであるのが好ましく、メタクリル樹脂層(C)の厚さとしては、5〜200μmであるのが好ましい。特に、メタクリル樹脂層(B)の厚さがあまり薄いと、メタクリル樹脂層(C)に含有されるゴム状重合体が、メタクリル樹脂層(B)を突き抜けてポリカーボネート樹脂層(A)に入り込み、その結果、ポリカーボネート樹脂層(A)の屈折率と、ゴム状重合体の屈折率との差に起因して線状欠陥が目立ち易くなる傾向にあるので好ましくない。また、メタクリル樹脂層(B)の厚さがあまり大きいと、積層板の耐衝撃性が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0044】
積層板の構成が、ポリカーボネート樹脂層(A)の両面にそれぞれ、メタクリル樹脂層(B),(C)がこの順に積層されてなる3種5層構造である場合には、上述した3種3層構造の場合と同じ理由から、積層板全体の厚さは、0.2〜3mmであるのが好ましく、0.3〜2mmであるのがより好ましく、0.4〜1.5mmであるのがさらに好ましく、この積層板において、ポリカーボネート樹脂層(A)の厚さとしては、20〜2,900μmであるのが好ましく、メタクリル樹脂層(B)の各々の厚さとしては、3〜70μmであるのが好ましく、メタクリル樹脂層(C)の各々の厚さとしては、5〜200μmであるのが好ましい。
【0045】
積層板の構成が3種5層構造である場合、ポリカーボネート樹脂層(A)の一方の面に積層されているメタクリル樹脂層(B)の厚さと、ポリカーボネート樹脂層(A)の他方の面に積層されているメタクリル樹脂層(B)の厚さは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。これと同様に、ポリカーボネート樹脂層(A)の一方の面に積層されているメタクリル樹脂層(B)の表面に積層されているメタクリル樹脂層(C)の厚さと、ポリカーボネート樹脂層(A)の他方の面に積層されているメタクリル樹脂層(B)の表面に積層されているメタクリル樹脂層(C)の厚さは、互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。積層板の厚さは、溶融状態の積層板の厚さや、冷却ユニットが備えるロールやベルトの間隔、周速度等を調整することにより、任意に調整することができる。
【0046】
得られた積層板は、エクステリア用途や看板用途をはじめ、照明用途やディスプレイにおける前面板用途等に好適に用いることができ、特にディスプレイにおける前面板として好適に用いることができる。また、本発明にかかる積層板は、例示した用途に限定されず、外観が重視される分野において、好適に用いることができる。
【0047】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
以下の実施例および比較例で使用した押出装置の構成は、次の通りである。
・押出機1:スクリュー径65mm、一軸、ベント付きの押出機(東芝機械(株)製)を用いた。
・押出機2:スクリュー径45mm、一軸、ベント付きの押出機(日立造船(株)製)を用いた。
・押出機3:スクリュー径45mm、一軸、ベント付きの押出機(日立造船(株)製)を用いた。
・フィードブロック4:3種3層分配型のフィードブロック(日立造船(株)製)を用いた。
・ダイ5:リップ幅1400mm、リップ間隔1mmのTダイ(日立造船(株)製)を用いた。
・第1,第2,第3冷却ロール6,7,8:横型、面長1400mm、径300mmφの冷却ロールを用いた。
【0049】
第1,第2,第3冷却ロール6,7,8について、より具体的に説明すると、第1冷却ロール6には金属弾性ロールを用いた。該金属弾性ロールには、軸ロールの外周面を覆うように金属製薄膜が配置され、軸ロールと金属製薄膜との間に流体が封入されているものを採用した。
【0050】
軸ロール、金属製薄膜および流体は、次の通りである。
・軸ロール:ステンレス鋼製のものを用いた。
・金属製薄膜:厚さ2mmのステンレス鋼製の鏡面金属スリーブを用いた。
・流体:油であり、この油を温度制御することによって、金属弾性ロールを温度制御可能にした。より具体的には、温度調節機のON−OFF制御により前記油を加熱、冷却して温度制御可能にし、軸ロールと金属製薄膜との間に循環させた。
【0051】
第2,第3冷却ロール7,8には、高剛性の金属ロールを用いた。該金属ロールは、表面状態が鏡面であるステンレス鋼製のスパイラルロールである。
【0052】
実施例および比較例で使用した樹脂は、以下の3種類である。
・樹脂1:熱変形温度(Th)140℃の住友ダウ(株)製のポリカーボネート樹脂「カリバー301−10」を用いた。
・樹脂2:熱変形温度(Th)100℃の住友化学(株)製のポリメタクリル酸メチル(PMMA)樹脂「スミペックスMH」を用いた。
・樹脂3:メタクリル酸メチル/アクリル酸メチル=98/2(重量比)の共重合体86重量%と、下記参考例で得たゴム状重合体14重量%との混合物を用いた。
【0053】
[参考例]
(ゴム状重合体の製造)
まず、内容積5Lのガラス製反応容器に、イオン交換水1700g、炭酸ナトリウム0.7gおよび過硫酸ナトリウム0.3gを仕込んで窒素気流下に撹拌した。次いで、分散剤(花王(株)製の「ペレックスOT−P」)4.46g、イオン交換水150g、メタクリル酸メチル150gおよびメタクリル酸アリル0.3gを加えた後、75℃に昇温して150分間撹拌を続けた。
【0054】
次いで、アクリル酸ブチル689g、スチレン162gおよびメタクリル酸アリル17gの混合物と、過硫酸ナトリウム0.85g、分散剤(花王(株)製の「ペレックスOT−P」)7.4gおよびイオン交換水50gの混合物とを、別々に90分間かけて添加し、さらに90分間重合を続けた。
【0055】
重合完了後、さらにメタクリル酸メチル326gおよびエチルアクリレート14gの混合物と、過硫酸ナトリウム0.34gを溶解させたイオン交換水30gとを、別々に30分間かけて添加した。
【0056】
添加終了後、さらに60分間保持し重合を完了した。得られたラテックスを0.5重量%塩化アルミニウム水溶液に投入してゴム状重合体を凝集させた。これを温水にて5回洗浄後、乾燥してゴム状重合体を得た。
【0057】
[実施例1〜4および比較例1]
<積層板の作製>
まず、押出機1,2,3、フィードブロック4、ダイ5、第1,第2,第3冷却ロール6,7,8を図1に示すように配置した。次いで、樹脂層(A)として表1に示す種類の樹脂を押出機1にて溶融混練し、樹脂層(B)として表1に示す種類の樹脂を押出機2にて溶融混練し、樹脂層(C)として表1に示す種類の樹脂を押出機3にて溶融混練し、それぞれをフィードブロック4に供給した。
【0058】
そして、押出機1からフィードブロック4に供給される樹脂層(A)の一方の面に、押出機2からフィードブロック4に供給される樹脂層(B)が積層され、この樹脂層(B)の表面に、押出機3からフィードブロック4に供給される樹脂層(C)が積層されたフィルム状の溶融樹脂を、ダイ5から押出した。
【0059】
次いで、ダイ5から押出したフィルム状の溶融樹脂を、対向配置した第1冷却ロール6と第2冷却ロール7との間に挟み込み、第3冷却ロール8に巻き掛けて成形・冷却し、樹脂層(A)の一方の面に、樹脂層(B)および樹脂層(C)がこの順に積層され、かつ表1に示す厚さを有する3層構造の積層板を得た。
【0060】
なお、第1冷却ロール6の表面温度は120℃、第2冷却ロール7の表面温度は125℃、第3冷却ロール8の表面温度は130℃であった。これらの温度は、各冷却ロールの表面温度を実測した値である。また、表1中の押出機1,2,3における「厚み」は、樹脂層(A),(B),(C)の各厚みを示しており、「総厚み」は、得られた積層板の総厚みを示している。
【0061】
<評価>
得られた各積層板(実施例1〜4および比較例1)について、線状欠陥および落球強度を評価した。各評価方法を以下に示すとともに、その結果を表1に示す。
【0062】
(線状欠陥の評価方法)
まず、得られた積層板から400×500mmのサイズに試験片を切り出した。次いで、この試験片を、黒色のシート上に載置した。このとき、試験片の両表層に位置する樹脂層(A),(C)のうち、樹脂層(C)を上側、樹脂層(A)を下側にし、樹脂層(A)が黒色のシートに接触するようにした。次いで、外光を遮断するとともに、試験片の樹脂層(C)の表面に対して斜め45度上方に三波長型白色蛍光灯を配置した。そして、前記三波長型白色蛍光灯から試験片の樹脂層(C)の表面に白色光を照射し、試験片に存在する線状欠陥の個数を目視観察して評価した。
【0063】
(落球強度の評価方法)
まず、得られた積層板から60×60mmのサイズに試験片を切り出した。次いで、この試験片の両表層に位置する樹脂層(A),(C)のうち、樹脂層(C)を上側(落球側)、樹脂層(A)を下側とし、重量36gで直径20mmφの金属球を、樹脂層(C)の表面からの高さを5cmずつ増加させながら試験片に落下させた。そして、試験片に亀裂が生じる高さを、落球強度として評価した。試験片に亀裂が生じる高さが高いほど、耐衝撃性に優れていることを示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から明らかなように、実施例1〜4は、樹脂層(B)がゴム状重合体を14重量%含有するメタクリル樹脂層からなる比較例1よりも、目視観察された線状欠陥の個数が著しく少ないのがわかる。
【0066】
なお、実施例1〜4のうち実施例3において目視観察された線状欠陥の個数が他の実施例よりも若干多いのは、実施例3における樹脂層(B)の厚さが薄いことに起因するものと推察される。また、実施例4において落球強度における高さが他の実施例よりも若干低いのは、実施例4における樹脂層(B)の厚さが大きいことに起因するものと推察される。
【符号の説明】
【0067】
1,2,3 押出機
4 フィードブロック
5 ダイ
6 第1冷却ロール
7 第2冷却ロール
8 第3冷却ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネート樹脂層(A)の少なくとも一方の面に、メタクリル樹脂層(B)と、ゴム状重合体を含有するメタクリル樹脂層(C)とが、この順に積層されてなることを特徴とする積層板。
【請求項2】
前記メタクリル樹脂層(B)の厚さが、3〜70μmである請求項1に記載の積層板。
【請求項3】
積層板全体の厚さが、0.2〜3mmである請求項1または2に記載の積層板。

【図1】
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【公開番号】特開2012−192703(P2012−192703A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60119(P2011−60119)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】