説明

積層物ピッチ変更装置

【課題】一のピッチで一の容器に積層されている積層物を、他のピッチに変更して他の容器に積層状に収納する作業を効率的に行なうこと
【解決手段】ベースプレート3に所定のピッチで積層状に並置された多数のワーク51を吸着する吸着パッド25が設けられる。ベースプレートに駆動軸31に連動する可変スペーサ17の回転によりベースプレート間のピッチが可変となる。この際他の一群のベースプレートとの間に吸着パッドに連通する気密で連通路28が形成される。連通路28は隣接するベースプレートの通孔間に伸縮自在の弾性パッキング15が連設されることにより形成される。弾性パッキング、可変スペーサはベースプレートに連動して移動する。ベースプレートにはベースプレート間のピッチの固定を解除するためのばね9が設けられる。可変スペーサ17は円周面上において厚さの異なる部分が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、多数の薄い厚さのワークが所定のピッチで積層状に並置されている場合のワーク間のピッチを変更する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ソーラパネルのような薄い厚さのワークを一の容器から他の容器に写し変える場合、生産工程上の理由から、積層状に並べ置かれるワーク間のピッチが異なるときがある。
【0003】
このような場合、従来は人手により一枚々々異なるピッチの容器に移し変えを行っていた。しかしながら、このような対応では甚だ効率が悪い。そればかりでなく、例えば、ソーラパネルのような薄い厚さのワークにあっては、斜め方向に不測の外力がかかるとワークが容易に損傷するという難があった。
【0004】
またロボットにより上記移し変えをする場合にはこのような不測の力がかかるのを防止することができるが、やはり一枚々々移し変えるので効率を上げることができない。
【0005】
本願発明は、上記ワークの積層状態を維持したまま積層ピッチのみ変更する装置である。このような装置に関し、国際特許分類「B65H 3/00」において「ピッチ」「吸着」「可変」に関する技術を調査してみたが、有意情報を発見することができなかった。なお、参考情報は次の通りである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−253877号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明は、上記欠点を解消し、一のピッチ(例えば、小ピッチ)で一の容器に積層されている積層物を、他のピッチ(例えば、大ピッチ)に変更して他の容器に積層状に収納する作業を効率的に行なうことを目的とする。
【0008】
また上記移し変え作業を確実、安定的に行なうことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的達成のため、本願発明による積層物ピッチ変更装置は、所定のピッチで積層状に並置された多数の薄い厚さのワーク間のピッチを変更する装置であって、
多数のベースプレートが所定のピッチで積層状に並置された移動自在の可動支持部と、該可動支持部を駆動する駆動部とからなり、
上記各ベースプレートに上記ワークを支持する動作部材が設けられ、該動作部材は連通路から送られるパワーにより作動されて上記ワークを各個別に支持し、かつ、
上記各ベースプレートに駆動部の駆動軸に連動する回転自在の可変スペーサが設けられ、該可変スペーサの回転によりベースプレート間のピッチが可変となり、
さらに上記各ベースプレートに上記ワークが支持される際他の一群のベースプレートとの間に上記動作部材に連通する気密で伸縮自在の連通路が形成されることを特徴とする。
また、請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記連通路は隣接するベースプレートの通孔間に伸縮自在の弾性パッキングが連設されることにより形成されることを特徴とする。
また、請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記各弾性パッキングが上記各ベースプレートに連動して移動することを特徴とする。
また、請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記各可変スペーサが上記各ベースプレートに連動して移動することを特徴とする。
また、請求項1又は請求項2記載の積層物ピッチ変更装置において、上記各ベースプレートにベースプレート間のピッチの固定を解除するためのばねが設けられることを特徴とする。
また、請求項2記載の積層物ピッチ変更装置において、上記弾性パッキングは蛇腹状に形成されることを特徴とする。
また、請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記可変スペーサは円周面上において厚さの異なる部分が形成されており、回転により異なる厚さの部分が上記ベースプレートに接することによりベースプレート間のピッチを可変とすることを特徴とする。
また、請求項1乃至請求項7いずれか一記載の積層物ピッチ変更装置において、上記動作部材が上記ワークを吸着する吸着パッドからなることを特徴とする。
また、請求項1乃至請求項7いずれか一記載の積層物ピッチ変更装置において、上記動作部材が上記ワークを挟着する挟着部材からなることを特徴とする。
また、請求項5記載の積層物ピッチ変更装置において、上記ばねが板ばねであることを特徴とする。
また、請求項10記載の積層物ピッチ変更装置において、上記ばねが複数枚重ねからなることを特徴とする。
また、請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、一群のベースプレートは所定の個数毎に一のグループに形成されることを特徴とする。
また、請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記各ベースプレートに動作部材が一対設けられ、上記各ベースプレートには上記可変スペーサ及び該動作部材に連通する上記連通路が一対設けられることを特徴とする。
また、請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記動作部材は積層方向に直交する方向のワークの面を支持することを特徴とする。
また、請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記動作部材は積層方向に沿う方向のワークの面を支持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明によれば、積層物たるワークの積層状態を維持したまま積層ピッチのみ変更することができる。よって一のピッチ(例えば、小ピッチ)で一の容器に積層されている積層物を、他のピッチ(例えば、大ピッチ)に変更して他の容器に積層状に収納する作業(移し変え)を効率的に行なうことができる。
【0011】
上記移し変えは、積層物たるワークの積層状態を維持したまま、一気に行なうことができる。よって移し変え作業を確実、安定的に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本願発明による積層物ピッチ変更装置の実施の形態を示す一部省略要部切欠正面図である。
【図2】(A)はばねの縮小時における図1A−B−C−Dの断面図、(B)は(A)のB部拡大図、(C)はばねの拡張時における図1A−B−C−Dの断面図、(D)は(C)のD部拡大図である。
【図3】(A)は可変スペーサの小ピッチ時における図1E−F−G−H−I−Jの断面図、(B)は(A)のB部拡大図、(C)は可変スペーサの大ピッチ時における図1E−F−G−H−I−Jの断面図、(D)は(C)のD部拡大図である。
【図4】図3(A)の平面図である。
【図5】(A)はベースプレート及びその装着物を示す正面図、(B)は(A)のB−B拡大断面図である。
【図6】(A)は図1の吸着パッドの正面図、(B)は(A)の底面図、(C)は(A)の右側面図である。
【図7】(A)は可変スペーサの正面図、(B)は(A)のB−B断面図、(C)は(B)のC部拡大図である。
【図8】(A)は連通路の位置を示す図、(B)は連通路の他の位置を示す図、(C)は連通路のさらに他の位置を示す図である。
【図9】連通路の位置を示す平面図である。
【図10】本願発明による積層物ピッチ変更装置の動作フローを示す図である。
【図11】(A)は他の動作部材の正面図、(B)は(A)の底面図、(C)は(A)の右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、実施の形態を示す図面に基づき本願発明による積層物ピッチ変更装置をさらに詳しく説明する。なお、便宜上同一の機能を奏する部分には同一の符号を付してその説明を省略する。
【0014】
図1乃至図4に示すように、本願発明による積層物ピッチ変更装置は多数のベースプレート3が所定のピッチで積層状に並置された移動自在の可動支持部としての可動吸着部1と、該可動吸着部1を駆動する駆動部とからなる。上記可動吸着部1を構成する一群のベースプレート3は夫々同一構成の方形の板状片からなる。各ベースプレート3は図5に詳しく示すように中央部に一対の孔部5を設ける。該孔部5は、可変スペーサ17を小ピッチ19にしたとき、大ピッチ20が逃げられるように可変スペーサ17の半径より大の方形状の孔5aに形成される。該方形状の孔5aの外辺側の中央部には外方に向かって半円状の切欠5bが設けられ、駆動軸31が回転するときの逃げを形成する。各ベースプレート3の左右の両端部には上下に2個の円形の凹部7を設ける。該凹部7には、図2(B)、(D)に詳しく示すように皿状の板ばね9が4枚重ねで蛇腹状に装着される。該凹部7の間には円孔8が設けられ、該円孔8に丸棒からなるスライドガイド11が挿通される。各ベースプレート3の下端部には円形状の通孔13a、13b、13cが3個ずつ一対に設けられ、ここに伸縮自在の柔軟性素材からなる弾性パッキング15a、15b、15c(総称するときは「弾性パッキング15」という)を取り付ける。また上記通孔13a、13b、13cには、図2(A)乃至(D)に詳しく示すように、各々、貫通孔を有する継手40a、40b、40cが空気の出入れ自在に連結される。
【0015】
各ベースプレート3には上記切欠5bの中心に可変スペーサ17が配置される。該可変スペーサ17は角棒からなる回転可能の駆動軸31に挿通される。該可変スペーサ17は図7に示すように円板からなり、中央部に上記駆動軸31を挿通する正方形の中心孔18が設けられる。該可変スペーサ17は円周面の厚さが異なり、薄手の厚さd1を有する小ピッチ部19と厚手の厚さd2を有する大ピッチ部20を設けてなる。上記小ピッチ部19と上記大ピッチ部20とは傾斜部21を介して連続される。
【0016】
上記可変スペーサ17は各ベースプレート3に配置され、角棒からなる回転可能の駆動軸31に挿通される。これにより、上記可変スペーサ17は駆動軸31の回転に連動して回転し、隣接するベースプレート3に当接する小ピッチ部19又は大ピッチ部20の作用面が変更されるとともに、上記ベースプレート3の水平方向の移動に連動して水平方向に移動される。
【0017】
上記通孔13a、13b、13c(総称するときは「通孔13」という)のさらに下端部には、分配プレート23を上記ベースプレート3と交換可能に一体に固着する。該分配プレート23の下端部には動作部材としての吸着パッド25を交換可能に取り付ける。上記分配プレート23には通路26が、また上記吸着パッド25には通路27が内設される。
【0018】
上記ベースプレート3の通孔13に取り付けられる弾性パッキング15と、上記分配プレート23に内設される通路26と、上記吸着パッド25に内設される通路27により、伸縮自在の連通路28が形成される。該連通路28は上記吸着パッド25に設けられる吸着口29に連通する。本実施例の場合、各通孔13は第1通孔13aが1枚目乃至10枚目のワーク51に、第2通孔13bが同11枚目乃至20枚目のワーク51に、第3通孔13cが同21枚目乃至30枚目のワーク51に各対応するよう構成され、図8に斜線で示すように、夫々、第1連通路28a(図8(A))、第2連通路28b(図8(B))、第3連通路28c(図8(C))を形成する。
【0019】
図2及び図9において、32は上記各板ばね9を連通するガイドロッド、33は台座34に設けられ一群のベースプレート3の開き端に当接するストッパ、35は上記プッシュプレート41の開端部側に設けられるスライドブッシュ、36はワーク51間のピッチを決める進退自在のピッチ決めシリンダである。40aは1枚目乃至10枚目のワーク51用の第1継手、40bは11枚目乃至20枚目のワーク51用の第2継手、40cは21枚目乃至30枚目のワーク51用の第3継手である。各継手40a、40b、40cは、各々1枚目乃至10枚目のワーク51用の第1連通路28a、11枚目乃至20枚目のワーク51用の第2連通路28b、21枚目乃至30枚目のワーク51用の第3連通路28cに連結される。また各継手40a、40b、40cは、図示しない真空源に連結され、真空源からの駆動パワーを上記各連通路28a、28b、28cに伝える。図3及び図4において、37は上記駆動軸31を駆動せしめる回転アクチュエータ、38は該回転アクチュエータ37の駆動力を上記駆動軸31に伝達するカップリング、39は上記駆動軸31の両端部に設けられる軸受け、41は一群のベースプレート3の開端部に設けられる進退自在のプッシュプレート、43は一群のベースプレート3の基端部に設けられる固定の基準プレートである。図中、矢印Aは上記ピッチ決めシリンダ36の押圧方向を、矢印Bは上記板ばね9の復元力の方向を各示す。
【0020】
次に、図10に基づいて、一のピッチ(例えば小ピッチ)で小容器52に積層状態で収納されている積層物を、他のピッチ(例えば大ピッチ)に変更して大容器53に積層状態で収納する場合の動作について説明する。なお、予め可変スペーサ17の小ピッチ部19の寸法は小容器52に収納されるワーク51間のピッチに設定され、また可変スペーサ17の大ピッチ部20の寸法は大容器53に収納されるワーク51間のピッチに設定されている。
【0021】
まずピッチ決めシリンダ36を伸長させ、プッシュプレート41によりベースプレート3を基準プレート43側に押圧し、ベースプレート3間のピッチを小容器52に積層状態で収納されているワーク51間のピッチ(図2(A)(B)に示す小ピッチ)に対応させる(図10(A))。
【0022】
次いで、可動吸着部1を図10(A)に示す矢印C方向に垂直移動させ、小ピッチの小容器52内に挿入する。可動吸着部1の各ベースプレート3は、各吸着パッド25を各ワーク51間に挿入し、各吸着パッド25に各ワーク51を吸着する。各吸着パッド25は積層方向に直交する方向のワークの面、即ち、ワーク51の正面51a(図1に一点鎖線で示す)又は背面を吸着する。
【0023】
この吸着は、図示しない真空源により連通路28内を減圧し、各ワーク51を各吸着パッド25の吸着口29に吸着させる。このとき連通路28内の減圧は第1連通路28a、第2連通路28b、第3連通路28cを同時に作動させる。これにより、小容器52に積層状態で収納されている積層物50の可動吸着部1へのセットが完了する。
【0024】
次いで可動吸着部1を反矢印C方向に垂直移動させて小容器52から積層物50を出した後、可動吸着部1を水平方向に移動し、可動吸着部1をワーク51間のピッチが異なる大容器53まで移動する。
【0025】
この大容器53への移動中において、ベースプレート3間のピッチを図2(C)(D)に示す大ピッチに変更する。この過程を示すのが図10(B)(C)である。
【0026】
まず、各ベースプレート3は、各々、セットされている板ばね9の反力によりプッシュプレート41側に押圧されるので、可動吸着部1は開き端まで拡張する。図10(B)はこの状態を示す。
【0027】
次いで回転アクチュエータ37を回転させる。すると回転アクチュエータ37に挿通されている各可変スペーサ17が回転し、大ピッチ部20がベースプレート3に当接する。図10(C)はこの状態を示す。
【0028】
次いでピッチ決めシリンダ36を伸長させ、各可変スペーサ17と各ベースプレート3との当接即ち各ワーク51のピッチを図7(C)に示す大ピッチd2に固定する。図10(D)はこの状態を示す。
【0029】
この状態で可動吸着部1を図10(D)に示す矢印D方向に垂直移動させ、次いで各吸着パッド25の吸着を解除し、ワーク51を積層状態のまま大ピッチの大容器53に収納する(図10(D))。この移し変えにおける吸着解除のときも、連通路28の減圧の解除は第1連通路28a、第2連通路28b、第3連通路28cを同時に行なう。
【0030】
次いで、可動吸着部1を図10(D)に示す反矢印D方向に垂直移動させた後、ピッチ決めシリンダ36を縮小させると、各ベースプレート3は各々セットされている板ばね9の反力によりプッシュプレート41側に押圧されるので、可動吸着部1は開き端まで拡張する。これにより各ベースプレート3に当接されていた各可変スペーサ17の固定が解除される。図10(E)はこの状態を示す。
【0031】
次いで回転アクチュエータ37を回転させる。すると回転アクチュエータ37に挿通されている各可変スペーサ17が回転し、小ピッチ部19がベースプレート3に当接する。図10(F)はこの状態を示す。
【0032】
次いでピッチ決めシリンダ36を伸長させ、各可変スペーサ17と各ベースプレート3との当接即ち各ワーク51のピッチを図7(C)に示す小ピッチ21に固定する。これにより図10(A)に示す最初の状態に戻ったことになる。
【0033】
容器内に収納されたワーク数が多いときは、移し変え作業が終了するまで上記ステップを繰り返す。
【0034】
大ピッチに設定された容器53から小ピッチに設定された容器52への移し変えについても前記と同様であり、このときは図10(D)の状態からスタートし、図10(E)、図10(F)、図10(A)、図10(B)、図10(C)のように、上記したステップを経て図10(D)の状態に戻る。
【0035】
各吸着パッド25による各ワーク51の吸着は、各ベースプレート3の通孔13に伸縮自在の弾性パッキング15が取り付けられ、これにより構成された連通路28を介して上記動作が行われている。よって連通路28の気密性が保障されるので、一群の積層物50の移し変えをワーク51の積層状態を維持したまま行なうことができる。よって積層物50のピッチを変更した移し変えを円滑迅速効率的に行なうことができる。
【0036】
この点をさらに詳しく説明する。各連通路28は弾性パッキング15を介して各吸着パッド25の吸着口29まで連通されているところ、この弾性パッキング15はベースプレート3の移動に連動して水平方向にその位置を移動する。各弾性パッキング15の伸縮幅は、1個々々については僅小なものであるが、仮に各弾性パッキング15が移動しないとした場合には、基準プレート43側に隣接する弾性パッキング15aの移動量と開端部となるプッシュプレート41に隣接する弾性パッキング15nの移動量とでは大なる開きとなる。例えば各弾性パッキング15の伸縮幅を0.8mmとした場合、仮に各弾性パッキング15が移動しないとした場合には、弾性パッキング15aの移動量は0.8mmであるが、n個目が30個目のときの弾性パッキング15nの移動量は「0.8mm×(30−1)=23.2mm」の大なる移動量となる。よって、各弾性パッキング15が移動自在でない場合は、基準プレート43側から離れたところの弾性パッキング15を構成要素とする連通路28の減圧真空は破綻することになり、ワーク51の吸着が困難となる。しかしながら、本願発明においては、各弾性パッキング15はベースプレート3の移動に連動して水平方向に移動自在であるため、この程度(0.8mm)の伸縮幅は伸縮自在の弾性パッキング15が吸収する。よって、弾性パッキング15a(図2に示す(A)(C)に示す)の伸縮幅、弾性パッキング15n(図2に示す(A)(C)に示す)の伸縮幅はいずれの場合も0.8mmであって、弾性パッキング15の設置部位によって移動量が変更することはなく、常に連通路28の気密性が保障される。しかもこの連通路28の気密性の保障は弾性パッキング15の個数に影響されない。
【0037】
次に、上記実施の形態によれば、各ベースプレート3に吸着パッド25が一対設けられているため、ワーク51を吸着保持する際、例えば板ばね9の配置が左右対称かつスライドガイド11に対し上下対称となり、また可変スペーサ17の配置が左右対称となってバランスがとり易く、装置が機械的に一層安定する効果がある。
【0038】
次に、上記実施の形態では、積層物たるワークの積層状態を維持したまま30枚のワーク51の移し変えを一気に行なうことができる。よって、移し変え作業を確実、安定的に行うことができる。
【0039】
また上記実施の形態では一群のワーク51をグループ毎に3個の連通路28の管轄により処理するので、一のグループ例えば第1連通路28aに所属するベースプレート3に何らかの異常が生じた場合でも、他のグループに所属する第2連通路28b及び第3連通路28cの作動を継続することができる。よって、この点からも移し変え作業の効率化を図ることができる。またグループ毎に移し変え作業の内容を変更することも可能である。
【0040】
本願発明による積層物ピッチ変更装置は上記した実施の形態に制限されない。例えば、動作部材による支持は、吸着パッド25による吸着ではなく、図11に示すように挟着部材45による挟着により各ワーク51を支持するものであってもよい。図11の場合、挟着部材45はばね45cにより連結された一対の開閉自在の可動爪45a、45bからなり、基端部に上記連通路28に連通する通路46が設けられる。上記ばね45cは常時において開状態に付勢されている。上記連通路28内が真空源により減圧さればね45cの付勢力に打ち勝つと、可動爪45a、45bが「閉」となり、図11(A)(B)に一点鎖線で示すように、可動爪45a、45bワーク51の側面51bを挟持する。
【0041】
また、吸着パッド25、挟着部材45の如き動作部材は必ずしも一対を要するものではなく、1個であってもよく、また3個以上であってもよい。動作部材によるワークの支持面は任意であり、例えば、図11に示すように積層方向に沿う方向のワークの面、即ち、ワークの両側面51bからワーク51を挟着してもよい。
【0042】
連通路28の個数は任意であり、適用されるワークの枚数により適宜増減可能である。
【0043】
連通路28を複数設ける場合、その作動は順次に動作させることもできる。これは例えば真空源の容量が小の場合に有利である。
【0044】
弾性パッキング15は、図示実施の形態では蛇腹状のものを示したが、これに限定されず、例えば弾性力のあるゴムパッキング、オーリング等を用いることもできる。いずれにしてもベースプレート3の移動に連動して移動自在とされる。
【0045】
板ばね9の個数及びこれを載置する凹部7の個数も任意であり、設定されるピッチの寸法により適宜に増減可能である。
【0046】
可変スペーサ17の円周面に形成されるピッチ部も例えば大中小の3個以上とすることができる。例えばピッチ部を3個とする場合には、各ピッチ部は120°毎に設けるというように、ピッチ部の複数設置の場合にはピッチ部の設置部位を適宜に変更する。
【0047】
またピッチ部の設置割合は必ずしも等分にする必要はない。例えば、大小のピッチ部とする場合、大ピッチ部の設置割合を60%とし、小ピッチ部の設置割合を40%とすることもできる。また大中小のピッチ部とする場合、大ピッチ部の設置割合を40%とし、中ピッチ部の設置割合を35%とし、小ピッチ部の設置割合を25%とすることもできる。
【0048】
ベースプレート3間のピッチを変更する時期は任意である。図示実施の形態のようにワーク51の搬送中であってもよいが、搬送前の小容器52への可動支持部の垂直移動時に、また搬送後の大容器53への可動支持部の垂直移動時に、ベースプレート3間のピッチを変更してもよい。
【0049】
また可動支持部の移動方向は任意である。上記実施の形態では可動支持部を水平方向に移動する場合を述べたが、可動支持部を垂直方向に移動してもよいし、斜め方向に移動してもよい。
【0050】
可動支持部を構成するベースプレート3の積層方向は任意である。
【0051】
またベースプレート3の形状は任意である。
【0052】
各部の素材は任意であるが、ベースプレート3、可変スペーサ17、板ばね9は、耐久性の大なる素材、例えば金属系素材が望ましい。また弾性パッキング15は弾性力の大なる素材、例えばプラスチック素材、ゴム素材が望ましい。吸着パッド25は軽量性、加工性、耐薬品性の点及びワークよりも硬度が小なる素材、例えば適宜のプラスチック素材が望ましい。分配プレート23は、軽量性、加工性の点より、例えば適宜のプラスチック素材、軽量金属素材が望ましい。
【0053】
さらに、ワーク51に対し仕事する駆動パワーとしては、真空源によるだけでなく、例えば加圧源であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本願発明による積層物ピッチ変更装置は多数の薄い厚さのワークが所定のピッチで積層状に並置されている場合のワーク間のピッチを変更する装置、例えば、ソーラパネルの移し変えに活用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 可動吸着部
3 ベースプレート
5 孔部
5a 方形孔
5b 切欠
7 凹部
8 円孔
9 板ばね
11 スライドガイド
13 通孔
13a 第1通孔
13b 第2通孔
13c 第3通孔
15 弾性パッキング
15a 第1弾性パッキング
15b 第2弾性パッキング
15c 第3弾性パッキング
17 可変スペーサ
18 中心孔
19 小ピッチ部
20 大ピッチ部
21 傾斜部
23 分配プレート
25 吸着パッド
26 通路
27 通路
28 連通路
28a 第1連通路
28b 第2連通路
28c 第3連通路
29 吸着口
31 駆動軸
32 ガイドロッド
33 ストッパ
34 台座
35 スライドブッシュ
36 ピッチ決めシリンダ
37 回転アクチュエータ
38 カップリング
39 軸受け
40a 第1継手
40b 第2継手
40c 第3継手
41 プッシュプレート
43 基準プレート
45 挟着部材
45a 可動爪
45b 可動爪
45c ばね
46 通路
50 積層物
51 ワーク
52 小容器
53 大容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のピッチで積層状に並置された多数の薄い厚さのワーク間のピッチを変更する装置であって、
多数のベースプレートが所定のピッチで積層状に並置された移動自在の可動支持部と、該可動支持部を駆動する駆動部とからなり、
上記各ベースプレートに上記ワークを支持する動作部材が設けられ、該動作部材は連通路から送られるパワーにより作動されて上記ワークを各個別に支持し、かつ、
上記各ベースプレートに駆動部の駆動軸に連動する回転自在の可変スペーサが設けられ、該可変スペーサの回転によりベースプレート間のピッチが可変となり、
さらに上記各ベースプレートに上記ワークが支持される際他の一群のベースプレートとの間に上記動作部材に連通する気密で伸縮自在の連通路が形成されることを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項2】
請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記連通路は隣接するベースプレートの通孔間に伸縮自在の弾性パッキングが連設されることにより形成されることを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項3】
請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記各弾性パッキングが上記各ベースプレートに連動して移動することを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項4】
請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記各可変スペーサが上記各ベースプレートに連動して移動することを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載の積層物ピッチ変更装置において、上記各ベースプレートにベースプレート間のピッチの固定を解除するためのばねが設けられることを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項6】
請求項2記載の積層物ピッチ変更装置において、上記弾性パッキングは蛇腹状に形成されることを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項7】
請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記可変スペーサは円周面上において厚さの異なる部分が形成されており、回転により異なる厚さの部分が上記ベースプレートに接することによりベースプレート間のピッチを可変とすることを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7いずれか一記載の積層物ピッチ変更装置において、上記動作部材が上記ワークを吸着する吸着パッドからなることを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7いずれか一記載の積層物ピッチ変更装置において、上記動作部材が上記ワークを挟着する挟着部材からなることを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項10】
請求項5記載の積層物ピッチ変更装置において、上記ばねが板ばねであることを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項11】
請求項10記載の積層物ピッチ変更装置において、上記ばねが複数枚重ねからなることを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項12】
請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、一群のベースプレートは所定の個数毎に一のグループに形成されることを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項13】
請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記各ベースプレートに動作部材が一対設けられ、上記各ベースプレートには上記可変スペーサ及び該動作部材に連通する上記連通路が一対設けられることを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項14】
請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記動作部材は積層方向に直交する方向のワークの面を支持することを特徴とする積層物ピッチ変更装置。
【請求項15】
請求項1記載の積層物ピッチ変更装置において、上記動作部材は積層方向に沿う方向のワークの面を支持することを特徴とする積層物ピッチ変更装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−69908(P2013−69908A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207989(P2011−207989)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【特許番号】特許第5146707号(P5146707)
【特許公報発行日】平成25年2月20日(2013.2.20)
【出願人】(393005370)プラス精機株式会社 (4)
【Fターム(参考)】