説明

積載物固定具

【課題】複数段に積載された荷物を1枚のシートで巻きつけて荷崩れを良好に防止することができ、かつ、作業効率に非常に優れた積載物固定具を提供すること。
【解決手段】本発明の積載物固定具は、積載物の外周部に巻回される所定長さの帯状シートと;該帯状シートの一方の端部から先細りテーパー状に延びる中継部と;該中継部から連続して延び、係着手段を有する締め付け部と;該帯状シートの他方の端部に設けられた締め付け部通し部と;該帯状シートの長手方向の所定の位置で該帯状シートの幅方向に延出した仮止め部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積載物固定具に関する。より詳細には、本発明は、複数段に積載された荷物を1枚のシートで巻きつけて荷崩れを良好に防止することができ、かつ、作業効率に非常に優れた積載物固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、荷物の搬送は、作業性向上と保管場所の省スペース化のため、当該荷物を荷役用のパレットや台車上に数段に積載して行われる。この場合、何らかの方法で荷物の荷崩れを防止しなければ、荷物が崩れ落ちることにより搬送作業が中断され作業効率が著しく低下し、さらには、製品が損傷してしまう。荷崩れを防止するために、パレット上に積載された荷物をストレッチフィルムにより包装して搬送し、その後、このストレッチフィルムを剥がして、荷物をパレットから降ろすという方法が知られている。
【0003】
しかし、ストレッチフィルムを使用して荷崩れを防止する方法においては、剥がしたストレッチフィルムは再使用できず、経費と資源の無駄を生ずる。さらに、廃棄処理されたストレッチフィルムは分解することなく蓄積するので、多くの廃棄場所が必要となり、産業廃棄物として問題となる。一方、ストレッチフィルムの焼却処理を行う場合においては、焼却時のガス等により人体に悪影響を及ぼすことがあり、保健衛生上及び環境上問題となる。さらに、二酸化炭素の排出規制が世界的な要請となっている中、ストレッチフィルムの焼却は、時流に逆行するものである。加えて、ストレッチフィルムを用いる場合には、荷物の周囲を何回も巡りながら巻回固定しなければならず、作業がきわめて煩雑である。
【0004】
上記のような問題を解決するために、ベルト状の積載物固定具が数多く提案されている。例えば、特許文献1には、パレットに積載される荷物の外周面に巻きつけて荷崩れを防止するベルトが記載されている。この荷崩れ防止用ベルトは、ベルト本体と、ベルト本体の基端側に取り付けられたスルーリング(ベルト通し部)と、ベルト本体の引き出し端から中央に向けてその一面側に取り付けられた面ファスナー(雄)および面ファスナー(雌)とを備える。この荷崩れ防止用ベルトは、引き出し端をスルーリングに通した後、引き出し端を引き込み、折り返して、面ファスナーの雄と雌とを係着することにより、荷物の外周面を保持する。しかし、この荷崩れ防止用ベルトは幅が狭いので、数段に積載された荷物の荷崩れを防止することはできず、複数のベルトを別個に荷物に巻き付けなければならない。
【0005】
一方、特許文献2には、幅広の荷崩れ防止用ベルト(シート)が記載されている。このようなシートによれば、数段に積載された荷物を1枚のシートで巻きつけて荷崩れを防止することができる。しかし、このようなシートは複数の掛止部材を必要とするので、巻きつけの作業効率が非常に悪い。
【0006】
加えて、上記の従来技術はいずれも、巻き付け方によってベルトの留め具(例えば、スルーリング、掛止部材)の位置がずれてしまうので、巻き付け方が悪い場合には、留め具が荷物の角に位置してしまう。その結果、ベルトを適切に吊止できない場合や、巻き付けをやり直さなければならない場合がある。さらに、留め具が荷物の角に位置すると、隣接する荷物(積載物)を傷つけたり、積載物同士が引っかかったりする場合がある。
【特許文献1】特開2001−122322号公報
【特許文献2】特開平11−147531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、複数段に積載された荷物を1枚のシートで巻きつけて荷崩れを良好に防止することができ、かつ、作業効率に非常に優れた積載物固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の積載物固定具は、積載物の外周部に巻回される所定長さの帯状シートと;該帯状シートの一方の端部から先細りテーパー状に延びる中継部と;該中継部から連続して延び、係着手段を有する締め付け部と;該帯状シートの他方の端部に設けられた締め付け部通し部と;該帯状シートの長手方向の所定の位置で該帯状シートの幅方向に延出した仮止め部とを有する。
【0009】
好ましい実施形態においては、上記中継部のテーパー角は120°〜160°である。
【0010】
好ましい実施形態においては、上記締め付け部の幅は、上記帯状シートの幅の30%〜80%である。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記仮止め部は、上記帯状シートの締め付け部通し部側の端部から積載物の一辺長さの25%〜75%の位置に設けられている。
【0012】
好ましい実施形態においては、上記係着手段は、その最先端部および該最先端部から上記中継部に向かってそれぞれ設けられた相互に係着可能な面ファスナーで構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、帯状シートから締め付け部に向かって幅が狭くなるテーパー状の中継部を設けることにより、積載物固定具で荷物を締め付ける際の牽引力が非常に良好に帯状シートの幅方向全体に伝わる。その結果、非常に優れた結束力が得られ、荷崩れがきわめて良好に防止される。加えて、仮止め部を帯状シートの締め付け部通し部側の端部から所定の位置に設けることにより、仮止め部をパレット端部の積載物の間に挟みこめば、帯状シートを荷物の外周部に巻きつけると、締め付け部通し部が自動的にパレットの一辺の中央部に位置することとなる。したがって、シートを巻きつけながら位置を調整したり、締め付け位置がパレットの角に来てしまうことによりシートを巻き直したりする必要がなくなる。その結果、作業効率がきわめて優れたものとなる。さらに、締め付け部通し部が積載物の角に位置すると、隣接する積載物を傷つけたり、積載物同士が引っかかったりする場合があるが、仮止め部を設けることにより、締め付け部通し部が積載物の角に位置するのを防止することができるので、上記のような不具合を回避することができる。このようにして、複数段に積載された荷物を1枚のシートで巻きつけて荷崩れを良好に防止することができ、かつ、作業効率に非常に優れた積載物固定具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の好ましい実施形態による積載物固定具の表面を示す平面図である。図2は、図1の積載物固定具の裏面を示す平面図である。積載物固定具100は、例えばパレットや台車の上に複数段積載された荷物(以下、積載物ともいう)の外周部に巻回される帯状シート10を有する。帯状シート10は、積載物の外周部に巻き付け、かつ結束するに適切な長さを有する。例えば、荷物を1辺110cmのパレット上に積載する場合には、帯状シートの長さL1は、好ましくは400〜440cmである。このような長さであれば、荷物に巻き付けて締め付けた場合に、非常に優れた結束力が得られる。さらに、帯状シート10は、複数段に積載された荷物を1枚のシートで保持するに適切な幅を有する。例えば、帯状シートの幅W1は、好ましくは40〜100cmである。帯状シートは、任意の適切な材料で構成される。材料の具体例としては、ポリエステル(例えば、通常のポリエステル、再生PET)、ナイロン、生分解性樹脂(例えば、トウモロコシ由来のポリ乳酸)が挙げられる。帯状シートは、代表的には、その全体が厚手のポリエステルシートで構成される。この構成であれば、静電気が発生しにくいので積載物への悪影響が少なく、かつ、耐久性に優れる。例えば、このような帯状シートを用いた積載物固定具は、1000回以上の再使用が可能である。好ましい実施形態においては、帯状シート10の裏面は、綿布で構成される。この構成であれば、静電気の発生をさらに抑制することができる。なお、帯状シート10は、上記のように1枚のシートで構成してもよく、上記のようなシートの中間部に弾性材料からなる部分を介在させてもよい。このような構成とすることにより、荷物への巻き付け作業性がより容易になる。弾性材料からなる部分は、例えば、ポリウレタン弾性糸を織り込んだ織物で構成される。さらに、帯状シートは、必要に応じて、荷札を取り付けるためのポケットを設けてもよく、積載物の内容を確認できるような構成としてもよい。積載物の内容を確認できるような構成としては、例えば、帯状シートの少なくとも一部を透明素材やメッシュ生地で構成すること、帯状シートの一部に確認窓となる開口部を設けることが挙げられる。
【0015】
さらに、積載物固定具100は、帯状シート10の一方の端部から連続して延びる中継部20を有する。中継部20は、帯状シート10から締め付け部30に向かって幅が狭くなるテーパー状である。このような中継部を設けることにより、積載物固定具で荷物を締め付ける際の牽引力が非常に良好に帯状シートの幅方向全体に伝わる。その結果、非常に優れた結束力が得られ、荷崩れがきわめて良好に防止される。中継部のテーパー角θは、帯状シートの幅、締め付け部の幅、帯状シートと締め付け部の幅の比率等に応じて任意の適切な角度が採用される。1つの実施形態においては、テーパー角θは、好ましくは120°〜160°、さらに好ましくは130°〜150°である。このような範囲のテーパー角を有する中継部を設けることにより、荷物を締め付ける際の牽引力の帯状シートへの伝播がさらに優れたものとなり、その結果、結束力がさらに優れたものとなる。中継部20の材質は、帯状シート10と同様である。
【0016】
さらに、積載物固定具100は、中継部20から連続して延びる締め付け部30を有する。締め付け部30は、係着手段31を有する。1つの実施形態においては、係着手段31は、相互に係着可能な面ファスナー32および33で構成されている。図示例では、締め付け部の最先端部に面ファスナー(雄)32が設けられ、最先端部から中継部20に向かって面ファスナー(雌)33が設けられている。好ましくは、面ファスナーは、導電性繊維を織り込んで構成される。このような構成であれば、積載物固定具を荷物から取り外す際の静電気の発生を抑制することができるので、積載物への悪影響を少なくすることができる。締め付け部の幅W2は、好ましくは、上記帯状シートの幅W1の30%〜80%であり、さらに好ましくは30%〜50%である。W2/W1がこのような比率であれば、非常に優れた結束力が得られ得る。締め付け部の長さL2は、パレットサイズ、帯状シートの長さL1、テーパー角θ等に応じて適切に設定され得る。例えば、荷物を1辺110cmのパレット上に積載する場合には、締め付け部の長さL2は、好ましくは30〜50cmである。このような長さであれば、荷物に巻き付けて締め付けた場合に、非常に優れた結束力が得られる。なお、図示例においては、締め付け部の最先端部(面ファスナー32が設けられる部分)は2つの折り返し部として構成され、当該折り返し部にグラスファイバー棒が内包保持されて構成されている。この構成により、締め付け部の先端部分に引き輪が形成されるので、締め付け時の作業性が改善される。
【0017】
さらに、積載物固定具100は、帯状シート10の他方の端部(中継部20および締め付け部30が設けられていない側の端部)に締め付け部通し部40を有する。締め付け部通し部40は、例えば、帯状シート10の上下端部にそれぞれ折り返し部41および42が設けられ、当該折り返し部にグラスファイバー製の棒43が内包保持されて構成されている。帯状シートの端部とグラスファイバー棒との間に通し孔44が規定されている。帯状シートを荷物外周部に巻き付け、締め付け部を通し孔44に通した後、折り返して締め付け、面ファスナー32および33を係着することにより、荷物が結束されて荷崩れが防止される。なお、締め付け部通し部40は、通常のベルトのバックルのようなスルーリングとして構成してもよい。さらに、棒43は、アルミニウム、ステンレススチール、カーボンファイバー製であってもよい。
【0018】
さらに、積載物固定具100は、仮止め部50を有する。仮止め部50は、帯状シート10から幅方向に延出して設けられる。仮止め部50は、帯状シートの長手方向の任意の適切な位置に設けられる。このような構成によれば、仮止め部を積載物の間に挟みこむことにより、帯状シートの上部を適切な位置に保持しながら巻きつけることができる。したがって、1人が帯状シートの上部を保持しながらもう1人がシートを積載物に巻き付けるという作業が回避される。すなわち、1人での作業が可能となり、作業性が大幅に改善され得る。好ましくは、仮止め部50は、帯状シート10の締め付け部通し部40側の端部から積載物の一辺長さ(実質的には、パレットや台車の一辺長さ)の25%〜75%の位置に設けられている。さらに好ましくは、35%〜65%の位置に設けられている。このような構成によれば、仮止め部をパレット端部の積載物の間に挟みこむことにより、帯状シートを荷物の外周部に巻きつけると、締め付け部通し部40(通し孔44)が自動的にパレット等の一辺の中央部に位置することとなる。したがって、シートを巻きつけながら位置を調整したり、締め付け位置がパレット等の角に来てしまうことによりシートを巻き直したりする必要がなくなる。その結果、巻き付けの作業性がさらに大幅に改善され得る。さらに、締め付け部通し部が積載物の角に位置すると、隣接する積載物を傷つけたり、積載物同士が引っかかったりする場合があるが、仮止め部を設けることにより、締め付け部通し部が積載物の角に位置するのを防止することができるので、上記のような不具合を回避することができる。なお、本明細書において「パレット端部の積載物の間」とは、図3(a)および(b)に示すように、積まれた荷物の集合体において四隅の角に位置する荷物と荷物との間を意味する。したがって、「パレット端部」は、積載物がパレットをはみ出して積載される場合および/またはパレットを余らせて積載される場合には、パレット端部近傍を包含する。好ましくは、仮止め部は、滑りにくい材料で構成されるか、あるいは、滑り止め処理が施される。このような材料の具体例としては、スチレン系エラストマーの不織布が挙げられる。滑り止め処理の具体例としては、仮止め部先端へのラバーシート51の貼り付けが挙げられる。
【0019】
必要に応じて、積載物固定具100は、収納用結束部材60をさらに含む。収納用結束部材60は、任意の適切な位置に設けられる。1つの実施形態においては、収納用結束部材60は、締め付け部通し部40のグラスファイバー棒43に取り付けられる。収納用結束部材60は、例えば、面ファスナー(雄)61および面ファスナー(雌)62で構成される。このような構成によれば、積載物固定具を使用後回収する際に、丸めた状態で結束することができるので、積載物固定具をコンパクトな状態で運搬・回収することができる。
【0020】
以下、図3(a)〜(d)を参照して、本発明の積載物固定具の使用方法について説明する。まず、図3(a)に示すように、仮止め部50をパレット端部の積載物の間に挟みこむ。次に、図3(b)に示すように、仮止め部の位置を維持したまま(通常、仮止め部は、特別な操作を施すことなく当初の位置に維持される)、帯状シート10を積載物に巻回する。さらに、図3(c)に示すように、締め付け部30を締め付け部通し部40の通し孔44に通し、折り返して積載物を締め付ける。ここで、本発明によれば、仮止め部50をパレット端部に位置させることにより、締め付け部通し部40が自動的にパレットの一辺の中央部に位置することとなる。したがって、シートを巻きつけながら位置を調整したり、締め付け位置がパレットの角に来てしまうことによりシートを巻き直したりする必要がなくなる。その状態で面ファスナー32および33を係着することにより、図3(d)に示すように積載物が結束される。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明の積載物固定具は、パレットや台車上に複数段積載される荷物の荷崩れ防止に好適に利用される。さらに、本発明の積載物固定具は再利用可能であるので、ストレッチフィルムのように廃棄・焼却の必要がない。したがって、地球温暖化ガスの排出削減等、環境保全にも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の好ましい実施形態による積載物固定具の表面を示す平面図である。
【図2】図1の積載物固定具の裏面を示す平面図である。
【図3】本発明の積載物固定具を用いて荷物を結束する際の作業手順を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0023】
10 帯状シート
20 中継部
30 締め付け部
31 係着手段
32 面ファスナー
33 面ファスナー
40 締め付け部通し部
50 仮止め部
100 積載物固定具


【特許請求の範囲】
【請求項1】
積載物の外周部に巻回される所定長さの帯状シートと;
該帯状シートの一方の端部から先細りテーパー状に延びる中継部と;
該中継部から連続して延び、係着手段を有する締め付け部と;
該帯状シートの他方の端部に設けられた締め付け部通し部と;
該帯状シートの長手方向の所定の位置で該帯状シートの幅方向に延出した仮止め部と
を有する、積載物固定具。
【請求項2】
前記中継部のテーパー角が120°〜160°である、請求項1に記載の積載物固定具。
【請求項3】
前記締め付け部の幅が、前記帯状シートの幅の30%〜80%である、請求項1または2に記載の積載物固定具。
【請求項4】
前記仮止め部が、前記帯状シートの締め付け部通し部側の端部から積載物の一辺長さの25%〜75%の位置に設けられている、請求項1から3のいずれかに記載の積載物固定具。
【請求項5】
前記係着手段が、その最先端部および該最先端部から前記中継部に向かってそれぞれ設けられた相互に係着可能な面ファスナーで構成されている、請求項1から4のいずれかに記載の積載物固定具。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2008−94405(P2008−94405A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−275352(P2006−275352)
【出願日】平成18年10月6日(2006.10.6)
【出願人】(506303845)エコビズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】