説明

穴開きヘッドレスト用の表皮

【課題】 内径が細い筒状の表皮片に、環縫いによるダブルステッチ縫いを可能とする穴開きヘッドレスト用の表皮を提供することである。
【手段】 ダブルステッチの二本の上糸1A、1Bに対して一本の下糸2を環縫いし、下糸2を表皮と一体の発泡体製パッドに一体に固着したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穴開きヘッドレストに使用する表皮に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用シートに備えるヘッドレストには、前面中央に前後方向に貫通する穴を有するものがあり、このヘッドレストは多数の筒状に縫製した表皮片をドーナツ状になるように接ぎ合わせて形成して内部に芯材(ステー)を挿入した後、ドーナツ状の表皮内にパッド成形用の発泡液を注入して表皮と一体成形している。
【0003】
そして、以上の表皮は環縫いによる縫い合わせによって縫製しているものがある(例えば、特開2003−103076号公報参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−103076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記穴開きヘッドレスト用の表皮において、ヘッドレストの外観品質を向上させるために、筒状の表皮片にダブルステッチ縫いを環縫いミシンで縫うと、上糸用の二本のミシン針を間隔をあけて設け、この二本のミシン針に対応する下糸用の二ケのボビンを収容する共にミシンテーブルより上方にポスト状に突出する突出体をミシンテーブルに設ける必要がある。
【0006】
そして、前記筒状の表皮片の内部に前記突出体を挿入して二本のミシン針で二本の上糸を平行に、突出体内の各ボビン内から繰り出させる二本の下糸に絡ませて環縫いすることが必要がある。
【0007】
ところが、前記筒状の表皮片の内周が細いと、前記突出体が筒状の表皮片内に挿入できない。そのため、細い筒状の表皮片にはダブルステッチで環縫いすることができない不具合が生じる。
【0008】
従って、内周が細い筒状の表皮片をドーナツ状に縫製するヘッドレスト用表皮には環縫いミシンによるダブルステッチ縫いは行えない不具合があった。
【0009】
そこで、本発明は斯様な不具合を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的を達成するための本発明に係る穴開きヘッドレスト用の表皮は、複数の筒状に縫製した表皮片を接ぎ合わせて構成し、その内部にパッド成形用発泡液を注入してパッドを成形する穴開きヘッドレスト用の表皮であって、前記筒状の表皮片には平行な二本の上糸と、この二本の上糸に環縫いされる一本の下糸からなるダブルステッチ縫いを有し、前記下糸は前記パッドに一体に固着してなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、穴開きヘッドレスト用の表皮において一本の下糸に対して二本針による上糸二本を環縫いミシンでダブルステッチ縫いする構成であるから、下糸用のボビンが一つで済む。そのため、このボビンを収容する突出体は、その外周を細く形成でき、内周が細い筒状の表皮片に、環縫いによるダブルステッチ縫いが可能となる。
【0012】
また、一本の下糸はパッドに一体に固着されているため、下糸がほつれることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
図1は本発明に係る表皮を使用して成形した穴開きヘッドレストを示し、図中Hは前面中央に前後方向に貫通する穴、Sはヘッドレストの内部に埋設し脚部が外部に突出するステー、Pは表皮とステーSとを一体に発泡成形した発泡体製のパッドを各々示す。
【0014】
以上の表皮は表皮材、発泡体製ワディング、ワディングカバーの積層体などこの種のヘッドレストに使用される従来周知の材質で、まず、表皮片を構成する上部A1、左右の側部A2、A3を一体に筒状に縫製し、これに別の表皮片を構成する筒状に縫製した下部Bを接ぎ合わせることにより、ドーナツ状に成形するものである。
【0015】
以上の上部A1、左右の側部A2、A3が矢印方向である周方向に対して直交方向にダブルステッチ縫い1A、1Bを施してヘッドレストの外観品質を向上させている。
【0016】
以上のダブルステッチ縫い1A、1Bは、図2に示すように、二本の上糸1A、1Bに対してこの二本の上糸1A、1Bに絡む一本の下糸2とで環縫いされている。
【0017】
従って、環縫いミシンには各上糸1A、1Bのミシン針30、31と、その下方のミシンテーブル盤上に、前記下糸2用のボビンなどを収容するポスト状の突出体4が設けてある。
【0018】
この環縫いミシンのミシン針、突出体など環縫い用の部材は従来周知の構造のものであるが、従来の環縫いによるダブルステッチ縫いは二本の間隔をあけて設けた上糸用のミシン針と、この各ミシン針に対応する下糸用のボビン等を収容する突出体が必要であった。
【0019】
従って、従来の縫いは、各上糸に対応する下糸を各々絡ませて環縫いする構造であるため、各下糸に対応するボビン等2ケを収容する突出体が必要なため、突出体の外径が大きくなる。
【0020】
そのため、環縫いする際、突出体に、この突出体の外径より小径の内径を有する前記筒状に縫製した表皮片を構成する上部A1、左右側部A2、A3及び筒状の下部Bが入らず、環縫いすることができない。
【0021】
しかし、前記本発明に係る環縫いによるダブルステッチ縫いでは、上糸1A、1Bに対して下糸2が一本であるため、下糸2用のボビン等を収容する突出体4の外周Wが細くなる。
【0022】
従って、細い筒状の上部A1、左右側部A2、A3及び下部Bが突出体4に入り、筒状の上部A…などの表皮片を環縫いによるダブルステッチ縫いを行うことができる。
【0023】
そして、下糸2は内部に注入した発泡液の発泡成形によってパッドPに表皮内面と共に一体に固着される。この下糸2の固着により、下糸2の上糸1A、1Bからのほつれを防止できる。
【0024】
なお、図2において、図中10,11は縫糸101によって筒状に縫製した表皮片A2の一端部と他端部を各々示す。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明は自動車用の穴開きヘッドレストの他に、アームレストなど筒状に表皮を縫製し、内部にパッド成形用の発泡液を注入して表皮と一体に発泡体を成形するものにおいても利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る表皮を使用して成形した穴開きヘッドレストの部分切欠斜視図である。
【図2】本発明の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0027】
1A、1B…上糸、2…下糸、A1、A2、A3、B…筒状の表皮片、P…パッド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の筒状に縫製した表皮片を接ぎ合わせて構成し、その内部にパッド成形用発泡液を注入してパッドを成形する穴開きヘッドレスト用の表皮であって、
前記筒状の表皮片には平行な二本の上糸と、この二本の上糸に環縫いされる一本の下糸からなるダブルステッチ縫いを有し、前記下糸は前記パッドに一体に固着してなる穴開きヘッドレスト用の表皮。
























【図1】
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【図2】
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