説明

空気−油セパレータ

【課題】本発明は、空気−油セパレータを提供する。
【解決手段】本空気−油セパレータ(180)は、空気及び油の混合物を有する第1の領域(58)と、空気−油混合物からの油の少なくとも幾らかの分離が生じる第2の領域(78)と、回転構成要素(62)上に設置されかつ第1の領域及び第2の領域と流れ連通状態になった少なくとも1つの多方向注入プラグ(290)とを含み、多方向注入プラグは、該多方向注入プラグから吐出された空気−油混合物の少なくとも一部が回転構成要素の回転方向に対して接線方向である速度成分を有するように配向された吐出ヘッド(206)を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、総括的にはガスタービンエンジンに関し、より具体的には、ガスタービンエンジンの軸受を潤滑及び冷却するのに使用した油を回収するための空気−油セパレータに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは一般的に、コアを含み、コアは、該コアに流入する空気を加圧するようになった圧縮機と、そこで燃料が加圧空気と混合されかつ次に燃焼されて高エネルギーガスストリームを生成する燃焼器と、ガスストリームからエネルギーを取出して圧縮機を駆動する高圧タービンとを有する。航空機ターボファンエンジンでは、コアの下流に設置した低圧タービンが、ガスストリームからより多くのエネルギーを取出してファンを駆動するようにする。ファンは通常、エンジンが発生する主推進力を供給する。
【0003】
エンジン内においては、エンジンの圧縮機並びに高圧及び低圧タービン内のステータに対してロータを正確に設置しかつ回転可能に取付けるために、軸受が使用される。軸受は、サンプと呼ばれるエンジンの油含有部分内に封入される。
【0004】
軸受の過熱を防止するためには、潤滑油を供給しかつシールを設けて、エンジン流路内の高温空気が軸受サンプに到達するのを防止する必要があり、また潤滑油流量は、それらの高い相対回転速度のために軸受が内部で発生する熱を運び去るのに十分でなければならない。
【0005】
油消費量は、エンジンサンプをシール(密封)するために用いる方法に起因する。この密封方法には、サンプ内に流入しかつ該サンプから流出する空気流れ回路が存在することが欠かせない。この流れは、油を適切に分離しかつサンプに送給して戻さない限り、最終的に回収不能な油を含む。1つの具体的な構成では、前方エンジンサンプは、前方ファンシャフトを通して通気されかつ中心通気管を通してエンジン外に通気される。一旦空気/油混合物がサンプから流出すると、混合物は旋回して、ファンシャフトの内側上に油を付着させる。空気/油混合物内に含まれた油は、通気空気の速やかな逸出のために通気孔を通してサンプ内に該油を遠心分離して戻すことができない場合には喪失される。
【0006】
幾つかの従来型の設計は、油がサンプに再流入するための専用経路を形成することがその機能でありかつ前方ファンシャフト設計内に組み込まれた通路であるウィープ孔を使用することによって油回収を可能にしている。その他の従来型の設計では、ファンシャフトは、通気孔のみであって専用ウィープ孔を有していない。幾つかの従来型の設計は、空気−油混合物をチャンバ内に半径方向に注入して油と空気とを分離するようにしかつその中の通路を通して分離油を導くウィーププラグを回転シャフト内で使用している。このウィーププラグは、該ウィーププラグ内の中心通路を通って空気−油混合物がセパレータ空洞に半径方向に流入するのを可能にする。空気−油混合物が旋回しながらより小さい半径になるにつれて、遠心力は、より大量の油粒子をシャフトの内径に押し戻すと同時に、空気は、通気孔出口を通って逸出する。しかしながら、これらの従来型の設計では、軸方向距離が半径方向入口位置と空気の通気孔入口との間で短い場合には、空気−油分離は非常に不十分なものになる。通気孔又はウィーププラグを通ってチャンバに流入する空気−油混合物の半径方向運動量が高いためにまた通気孔出口に対する軸方向距離が短いために、空気−油混合物の渦流運動のための滞留時間は短くなる。渦流運動のための十分な滞留時間がない状態では、空気−油混合物からの油分離が不十分になることが判明した。
【特許文献1】米国特許第5,201,845号公報
【特許文献2】米国特許第6,033,450号公報
【特許文献3】米国特許第6,705,349号公報
【特許文献4】米国特許第6,996,968号公報
【特許文献5】米国特許第7,124,857号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空気−油混合物の半径方向運動量を減少させかつ接線方向運動量を増加させる空気−油セパレータシステムを有することは望ましい。軸方向に短いサンプを有するエンジンシステムにおいて油を除去するのに有効である空気−油セパレータを有することは望ましい。既存のハードウェアを変更せずに既存のサンプ構造体においてより効率的に油を回収する方法を有することは望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の必要性は、本発明による空気−油セパレータによって満たすことができ、本空気−油セパレータは、空気及び油の混合物を有する第1の領域と、空気−油混合物からの油の少なくとも幾らかの分離が生じる第2の領域と、回転構成要素上に設置されかつ第1の領域及び第2の領域と流れ連通状態になった少なくとも1つの多方向注入プラグとを含み、多方向注入プラグは、該多方向注入プラグから吐出された空気−油混合物の少なくとも一部が回転構成要素の回転方向に対して接線方向である速度成分を有するように配向された吐出ヘッドを有する。
【0009】
本発明とみなされる主題は、提出した特許請求の範囲において具体的に指摘しかつ明確に特許請求している。本発明は、本発明の好ましくかつ例示的な実施形態により、添付の図面に関連させてなした以下の詳細な説明において、その更なる目的及び利点と共に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
様々な図全体にわたって同じ参照番号が同様の要素を示す図面を参照すると、図1は、その中に本発明の空気−油セパレータシステム180を組み込んだその全体を参照符号10で表したガスタービンエンジンを示しており、本空気−油セパレータシステム180は、図3〜図5に詳細に示すような多方向注入プラグ290を含む。エンジン10は、縦方向中心線又は軸線11と、軸線11の周りに同心にかつ該軸線11に沿って同軸に配置された環状の外側固定ケーシング14とを有する。エンジン10は、ガス発生器コア16を含み、ガス発生器コア16は、それら全てが直列軸方向流れ関係でエンジン10の縦方向軸線又は中心線11の周りに同軸に配置された複数段圧縮機18と、燃焼器20と、単段又は複数段のいずれかになった高圧タービン22とから構成される。環状の外側駆動シャフト24は、圧縮機18と高圧タービン22とを固定相互連結する。
【0011】
コア16は、燃焼ガスを発生させるのに有効である。圧縮機18からの加圧空気は、燃焼器20内で燃料と混合されかつ点火され、それによって燃焼ガスを発生する。幾らかの仕事が、高圧タービン22によってこれらのガスから取り出され、高圧タービン22は、圧縮機18を駆動する。燃焼ガスの残りの部分は、コア16から低圧タービン26内に吐出される。
【0012】
内側駆動シャフト38は、外側固定ケーシング14に相互連結された後方軸受32及び差動軸受40を介してまた好適な前方軸受42を介して外側駆動シャフト24に対して回転するように取付けられる。内側駆動シャフト38は次に、前方ファンシャフト62を回転可能に駆動し、前方ファンシャフト62は次に、前方ファンロータ44及び幾つかのケースではブースタロータ45を駆動する。ファンブレード48及びブースタブレード54は、ファンロータ44及びブースタロータ45に取付けられてそれらと共に回転するようになる。
【0013】
図2を参照すると、前方軸受42の周りに軸受サンプ58が形成されたガスタービンエンジン10の領域を示している。軸受サンプ58は一般的に、固定フレーム59に相互連結された環状の外側構造体60と、内側駆動シャフト38の前方端部を前方ファンロータ44に剛的相互連結した前方ファンシャフト62とによって形成される。前方軸受42の環状の内側レース42Aと連結された前方ファンシャフト62は、前方軸受42の環状の外側レース42Bに連結された軸受サンプ58の環状の外側固定構造体60に対して内側駆動シャフト38と共に回転する。
【0014】
図2に示すように、前方ファンシャフト62上に付加的軸受52を取付けて、ファン/ブースタロータ44、45を支持することが可能である。軸受52の内側レース52Aは、前方ファンシャフト62の後方端部に取付けられ、一方、外側レース52Bは、固定支持構造体61に取付けられる。油供給導管(図示せず)は、軸受52に油供給150を行う。加圧空気は、カーボンシール66を通って軸受サンプに流入する。
【0015】
従来型の円周方向ラビリンス又はカーボン空気及び油シール64、66は、前方軸受42に隣接させてかつ相対回転する前方ファンシャフト62の前方端部と環状の外側固定構造体60の前方端部との間に設けられて、軸受サンプ58の前方端部をシールする。油は、前方軸受42に対して、従って油供給導管68を通してサンプ58内にポンプ圧送される。加圧空気100は、例えばブースタ流路のような空気供給システムから空気を受けた加圧空気空洞57から空気/油シール64に注入されて、カーボン油シール66を通して油が漏洩するのを防止する。
【0016】
軸受サンプ58に流入する注入加圧空気100の一部分は、サンプ圧力を適当なバランスに維持するような制御方式でサンプ58から通気させなければならない。しかしながら、加圧空気は、サンプ58内で油の粒子と混合した状態になる。軸受サンプ58内の空気−油混合物は、図2に符号120として示している。空気−油混合物120が、油粒子を分離しかつ除去しないで外部に通気された場合には、油の大量の喪失が発生することになる。
【0017】
図2には、空気−油混合物から油を分離することによって航空機エンジンにおける油消費量を減少させるためのシステムの例示的な実施形態を示している。本システムは、それを通して油供給110をサンプ内に流す油供給導管68を含む。本システムからの油の漏洩を防止するために、加圧空気空洞57からシールを通してサンプ58内に加圧空気100が流される。回転前方ファンシャフト62は、その厚さを貫通してほぼ半径方向に延びる1つ又はそれ以上の通気孔84を有する。一般的に、ファンシャフト62は、その周辺部の周りでバンド内に配置された複数のこれら孔84を有する。多方向注入プラグ290は、図2の軸線方向断面図及び図4の斜視図に示すように、回転シャフト62の通気孔84内に挿入される。多方向注入プラグ290は、中心通路200を通して半径方向に空気−油混合物流れ140を受け、該プラグ290内の半径方向流れを接線方向に向けて配向し直し、かつ空気−油混合物140をセパレータ空洞78内に注入する。図2に示すこの例示的な実施形態では、セパレータ空洞78は、ファスナ76で前方ファンシャフト62に取付けられたカバー74が境界となった状態で、前方ファンシャフト62内に形成される。
【0018】
セパレータ空洞78内において、回転空気/油混合物は、該回転空気/油混合物が空気通気孔出口に向けて軸方向に流れるにつれて、旋回しながらより小さい半径になる。この空気−油混合物の渦流旋回190は、高い接線方向速度を生じかつ空気及び油粒子に作用する大きな遠心力を生じる。これらの遠心力は、シャフト62の内径に対してより大量の油粒子を半径方向外方に(図2に符号192として示す)押し出す。分離された油粒子は、多方向注入プラグ290上に設けた溝ような溝によってセパレータチャンバ78から除去される。溝及び/又は孔はまた、回転シャフト62上に設けて油除去を可能にすることができる。空気粒子は、例えば図2に符号80として示すような通気孔出口を通してセパレータ空洞78から除去される(図2に符号194として示す)。セパレータ空洞78から油を除去する好ましい方法は、これらプラグの内側通路を通って流れる空気−油混合物の比較的高い質量流量を必要としない状態で該油をシャフト62の外径に戻す経路を形成するチャネル230、240を多方向注入プラグ290の外側面上に設けることによるものである。
【0019】
前述のように、滞留時間及び接線方向速度は、空気−油混合物からの油粒子の渦流式分離の有効性を決定する2つの重要な要因である。多方向注入プラグ290は、従来型の通気孔設計又は従来型の半径方向プラグを使用するものと比べて、セパレータ空洞78に流入する空気−油混合物の接線方向速度とより大きな半径における接線方向流れの滞留時間とを増大させる。これは、多方向注入プラグ290内において流れを方向転換させて図4に示すようにシャフト回転方向における接線方向速度成分を与えることによって達成される。従って、空気−油混合物が多方向注入プラグ290内を流れる時に、該空気−油混合物は、回転シャフトによってそれに与えられた接線方向速度に加えて付加的な接線方向速度を取得する。
【0020】
空気−油混合物流れの接線方向速度の増大は、セパレータ空洞78内でより強力な渦流及びより高い遠心加速度を生じて、空気/油混合物から油粒子を分離する。空気は、半径方向ではなくて接線方向に注入されるので、空気/油混合物は、渦流式セパレータ出口に到達する前に非常に長い経路に従うことになり、従って、空気−油混合物の滞留時間は、従来型の構成の滞留時間よりも大きくなる。新規な多方向注入プラグ290は、遠心加速度及び滞留時間を増大させる利点を有するだけでなく、油粒子78の初期内向き半径方向運動量を減少させ、従って外方に通気するのに先立って油粒子の除去を可能にする。
【0021】
図4には、回転シャフト62内に円周方向に配列された多方向注入プラグ290を使用した本発明の例示的な実施形態を示している。図4では、図示したX軸は、軸方向を表し、Y軸は、半径方向を表し、またZ軸は、シャフト62の回転方向を正とした接線方向を表す。以下に詳細に記載した多方向注入プラグ290は、各プラグが、負のY方向に該プラグ内に半径方向に流入する空気−油混合物流れを受け、かつその流れの方向を該流れが接線方向軸Zに対して角度Aでシャフト62の回転方向に沿ったほぼ接線方向にプラグからセパレータ空洞78内に流出するように配向し直すように配置される。一般的に、多方向注入プラグ290から流出する空気−油混合物ストリームの配向角度は、Z軸に対する接線方向成分、X軸に対する軸方向成分、及びY軸に対する半径方向成分を有するように選択される。本発明の例示的な実施形態では、24個のプラグを使用し、角度Aは約32度になるように選択し、角度Bは約58度であり、また角度Cは約90度である。可能な限り小さい角度Aを有することが望ましいが、多方向注入プラグ290から出てくる流れが回転方向のプラグの直ぐ前の次のプラグに衝突しないようになる約32度の角度が好ましい。前述のように、油粒子は、多方向注入プラグ290の回転によって形成された渦流運動によりセパレータ空洞内で空気−油混合物から分離され、かつシャフト62の内表面に沿って半径方向外方に導かれる(図2を参照)。油粒子は、プラグの外側面上の溝230に流入しかつサンプ空洞58内に流入して戻る。サンプの底部に設置された従来型の掃気システム(例示の目的で図2に符号115で示す)は、サンプ空洞の底部から油を除去して、軸受潤滑システム内にポンプ圧送して戻す前にさらに処理するようにする。
【0022】
次に図3を参照すると、多方向注入プラグ290は、第1の端部296及び第2の端部298を有しかつそれらの間で延びる軸線294を形成した単体構造の本体292を有する。ほぼ円筒形の中心通路200は、第1の端部296から第2の端部298まで軸方向に本体292を貫通する。第1の端部296には、平坦表面286を有するプラットホーム204が配置される。ほぼ円筒形の細長部分231は、第1の端部296と遠位端部212との間で延びる。細長セクション231とプラットホーム204との接合部には、環状の溝214が配置される。プラットホーム上の平坦表面286は、多方向注入プラグ290を据付けた時に、多方向注入プラグ290とその他の近くの構造体との間に間隙空間を形成する。プラットホーム204の下方に配置された溝117は、多方向注入プラグ290を取り外す時にてこ操作するための工具用の表面を形成する。
【0023】
一対のスロット222は、細長部分231の対向する側面内に形成される。スロット222は、細長部分231の遠位端部212で始まり、細長セクション231の長さに沿って部分的に下方に延びる。スロット222は、細長セクション231を2つの突起224に分割する。突起224の各々は、該突起224の両側においてその遠位端部212に形成された一対の面取りした表面220を有する。環状の突出リップ226は、突起224の各々の遠位端部212から延びる。この図示した実施例は2つのスロット222を示しているが、3つ又はそれ以上のスロット222を細長セクション231内に形成して該細長セクションを3つ又はそれ以上の突起224に分割することができることに注目されたい。細長セクション231の外表面228内には、少なくとも1つのウィープ通路230が形成される。ウィープ通路230は、ほぼ半円形断面を有する溝の形態のものであるが、その他の形状を用いることもできる。ウィープ通路は、細長セクション231の遠位端部に配置された出口232を有する。ウィープ通路は次に、プラットホーム204に向かって軸方向に延びる。ウィープ通路230は、細長セクション231とプラットホーム204との間に設置された環状の溝214と交差する。ウィープ通路230は、溝214と流れ連通状態になっている。プラットホーム204は、本体230の第1の端部296の近くにおいてプラットホーム204の表面上に設置された幾つかのウィープ通路240を有する。ウィープ通路240は、溝214と流れ連通状態になっている。これらのウィープ通路230、240及び溝214は、空気−油混合物から分離された油がセパレータ空洞78から戻るのを可能にする。
【0024】
多方向注入プラグ290は、屈曲部分205を有する吐出ヘッド206を有する。吐出ヘッド屈曲部分205は、セパレータ空洞78に流入するのに先立ってそれを通って空気−油混合物が流れる内部通路208を有する。空気−油混合物202は、出口オリフィス210においてセパレータ空洞78内に吐出される。吐出ヘッド内部通路208及び出口オリフィス210は、あらゆる所望の配向角度A、B及びCをもたらすような適当な形状にされる。図3に示す例示的な実施形態では、吐出ヘッド内部通路208は、該通路内の流れの方向に対して垂直なほぼ円形形状を有する。出口オリフィス210もまた、出口における流れ方向に対して垂直なほぼ円形形状を有する。
【0025】
前述のように、多方向注入プラグ290は、選択配向角度A、B及びCで空気−油混合物をセパレータ空洞に導入する。エンジン組立て時に、多方向注入プラグ290を正しい配向で確実に組立てることが重要である。これは、図5に示すようにプラットホーム204の側面上に平坦表面286を設けることによって達成される。この平坦表面286は、ファンシャフト62上のフランジ88と整列する。この特徴により、多方向注入プラグ290を不適切な方向に据付けようとした場合に干渉が生じる。それに代えて、平坦表面286は、吐出ヘッド206又は本体292或いはその他の好適な部位上のような多方向注入プラグ290の別の適切な部位上に別の好適な平担表面と係合するように設置して、誤組立を回避することができる。
【0026】
多方向注入プラグ290は、およそ149℃(300°F)であるサンプ58内では一般的である温度に耐えかつエンジン潤滑油による腐食に抗することができる材料で製作される。また、ファンシャフト62は、その特性を損なってはならない寿命制限部品となる可能性があるので、多方向注入プラグ290は、ファンシャフト62の摩耗を引き起こすのではなくそれ自体が摩耗することになる材料で製作しなければならない。さらに、多方向注入プラグ290の重量は最小にして、全体的にエンジン10の余分な重量を回避すると共にファンシャフト62におけるアンバランスの問題を排除するのが好ましい。1つの好適な材料は、米国デラウエア州19898ウィルミントン所在のE.I.DuPont de Nemours and Companyから入手可能なVESPELポリイミドである。別の好適な材料は、米国サウスカロライナ州29615グリーンビル、Suite A、3Caledon Court所在のVictrex USA Inc.,から入手可能なPEEKポリエーテルエーテルケトンである。一般的に、上述の要件を満たすあらゆる材料を使用することができ、例えばアルミニウム又はその他の比較的軟質金属もまた、好適な材料とすることができる。多方向注入プラグ290は、例えば射出成形又は圧縮成形によるニアネットシェイプ後の機械加工、或いは材料ブランクからの機械加工のようなあらゆる公知の方法によって形成することができる。
【0027】
一般的には、渦流式セパレータの油分離効率は、油粒子サイズと共に増大する傾向があり、また15ミクロン又はそれ以上の大きな油粒子では100パーセントに近づくことができることが判明した。しかしながら、本明細書に記載した実施形態は、15ミクロンよりも小さい油粒子を分離する上でも高効率であることが、従来型の計算流体力学分析を用いて判明した。例えば、巡航状態下の航空機エンジンにおいて、10ミクロンの油粒子サイズの場合に、本発明を用いた油分離効率が95パーセントよりも高いのに対して、従来型の方法を用いた油分離効率は20パーセントよりも低いことが分析的に判明した。
【0028】
様々な特定の実施形態に関して本発明を説明してきたが、本発明が特許請求の範囲の技術思想及び技術的範囲内の変更で実施することができることは、当業者には分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ガスタービンエンジンの縦方向軸線方向断面図。
【図2】本発明の空気−油セパレータシステムの例示的な実施形態を組み込んだ、図1のガスタービンエンジンの軸受サンプ領域の拡大軸線方向断面図。
【図3】本発明の多方向注入プラグの例示的な実施形態の斜視図。
【図4】本発明の空気−油セパレータシステムの例示的な実施形態における多方向注入プラグの配列の斜視図。
【図5】その中に据付けた本発明の多方向注入プラグの例示的な実施形態を有するガスタービンエンジンファン前方シャフトの一部分の断面図。
【符号の説明】
【0030】
10 エンジン
11 縦方向軸線
14 ケーシング
16 コア
18 圧縮機
20 燃焼器
22 高圧タービン
24 外側駆動シャフト
26 低圧タービン
32 後方軸受
40 差動軸受
42 前方軸受
52 軸受
38 内側駆動シャフト
42A 環状の内側レース
42B 環状の外側レース
52A 内側レース
52B 外側レース
44 ファンロータ
45 ブースタロータ
48 ファンブレード
54 ブースタブレード
57 加圧空気空洞
58 サンプ
59 フレーム
60 環状の外側構造体
61 固定支持構造体
62 シャフト
64、66 油シール
68 油供給導管
74 カバー
76 ファスナ
78 セパレータ空洞
80 通気孔出口
84 通気孔
88 フランジ
100 加圧空気
110、150 油供給
117 溝
214 環状の溝
120、140、202 空気−油混合物
180 空気−油セパレータシステム
190 渦流旋回
200 中心通路
204 プラットホーム
205 屈曲部分
206 吐出ヘッド
208 内部通路
210 出口オリフィス
212 遠位端部
220 表面
222 スロット
224 突起
226 環状の突出リップ
228 外表面
230、240 チャネル、ウィープ通路
231 細長部分又は細長セクション
232 出口
286 平坦表面
290 多方向注入プラグ
292 本体
294 長手方向軸線
296、298 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気及び油の混合物を有する第1の領域(58)と、
前記空気−油混合物からの前記油の少なくとも幾らかの分離が生じる第2の領域(78)と、
回転構成要素(62)上に設置されかつ前記第1の領域(58)及び第2の領域(78)と流れ連通状態になった少なくとも1つの多方向注入プラグ(290)と、を含み、
前記多方向注入プラグ(290)が、該多方向注入プラグから吐出された前記空気−油混合物の少なくとも一部が前記回転構成要素の回転方向に対して接線方向である速度成分を有するように配向された吐出ヘッド(206)を有する、
空気−油セパレータ(180)。
【請求項2】
前記第2の領域(78)の少なくとも一部が、前記回転構成要素(62)の内側に設置される、請求項1記載の空気−油セパレータ(180)。
【請求項3】
複数の多方向注入プラグ(290)が、前記回転構成要素(62)内において円周方向に設置される、請求項1又は2に記載の空気−油セパレータ(180)。
【請求項4】
前記多方向注入プラグ(290)から吐出された前記空気−油混合物の少なくとも一部が、前記回転構成要素(62)の回転方向における接線方向速度成分を有する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の空気−油セパレータ(180)。
【請求項5】
前記空気−油混合物から分離された前記油の少なくとも一部が、前記多方向注入プラグ(290)上に設置された少なくとも1つの溝(230)を通して送られる、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の空気−油セパレータ(180)。
【請求項6】
前記多方向注入プラグ(290)が、組立て時に該多方向注入プラグを選択角度配向で設置するための手段を有する、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の空気−油セパレータ(180)。
【請求項7】
航空機エンジンにおける油消費量を減少させるためのシステム(185)であって、
油供給導管(68)と、
空気及び油の混合物を有するサンプ空洞(58)と、
前記サンプ空洞(58)の外側に設置されかつ該サンプ空洞(58)内に空気を供給する加圧空気空洞(57)と、
前記サンプ空洞(58)の内側に少なくとも部分的に設置された回転構成要素(62)と、
前記サンプ空洞(58)の内側に設置されたセパレータ空洞(78)と、
前記セパレータ空洞から油を除去するための手段と、
前記回転構成要素(62)上に設置されかつ前記サンプ空洞(58)及びセパレータ空洞(78)と流れ連通状態になった少なくとも1つの多方向注入プラグ(290)と、を含み、
前記多方向注入プラグ(290)が、該多方向注入プラグから吐出された前記空気−油混合物の少なくとも一部が前記回転構成要素の回転方向に対して接線方向である速度成分を有するように配向された吐出ヘッド(206)を有する、
システム(185)。
【請求項8】
前記セパレータ空洞(78)の少なくとも一部が、その上に軸受(42)を取付けた回転シャフトの内側に設置される、請求項7記載のシステム(185)。
【請求項9】
複数の多方向注入プラグ(290)が、前記回転構成要素(62)内において円周方向に設置される、請求項7又は8に記載のシステム(185)。
【請求項10】
前記多方向注入プラグ(290)から吐出された前記空気−油混合物の少なくとも一部が、前記回転構成要素(62)の回転方向における接線方向速度成分を有する、請求項7乃至9のいずれか1項に記載のシステム(185)。
【請求項11】
前記空気−油混合物から分離された前記油の少なくとも一部が、前記多方向注入プラグ(290)上に設置された少なくとも1つの溝(230)を通して送られる、請求項7乃至10のいずれか1項に記載のシステム(185)。
【請求項12】
前記多方向注入プラグ(290)が、組立て時に該多方向注入プラグを選択角度配向で設置するための手段を有する、請求項7乃至11のいずれか1項に記載のシステム(185)。
【請求項13】
プラットホーム(204)と、
前記プラットホーム(204)の第1の側面(251)上に配置され、かつ長手方向軸線(294)と中心通路(200)を形成した内表面(261)及び外表面(262)を有する壁(228)とを有するほぼ円筒形の本体(292)と、
前記プラットホーム(204)の第2の側面(252)上に配置され、かつ前記長手方向軸線(294)に対して平行でない中心軸線(253)を有する出口オリフィス(210)を有する吐出ヘッド(206)と、
前記壁(228)の外表面(262)内に配置された少なくとも1つのウィープ通路(230)と、
を含む、多方向注入プラグ(290)。
【請求項14】
前記壁(228)の外表面(262)から半径方向外向きに延びる少なくとも1つのほぼ環状のリップ(226)をさらに含む、請求項13記載の多方向注入プラグ(290)。
【請求項15】
前記壁(228)の一部分を少なくとも2つの長手方向に延びる突起(224)に分割した少なくとも2つのスロット(222)をさらに含む、請求項13又は14に記載の多方向注入プラグ(290)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−133310(P2009−133310A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−300306(P2008−300306)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】