説明

空気中で安定なアルカリまたはアルカリ土類金属供給装置

アルカリまたはアルカリ土類金属の供給装置(10;20;30;40;50;60)に関し、ゲッター材料(13;23;33;43;53;63)およびアルカリまたはアルカリ土類金属源(12;22;32;42;53;63)の堆積物を含み、アルカリまたはアルカリ土類金属源はゲッター材料の堆積物により雰囲気ガスから保護される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雰囲気ガス、特に空気、に安定な、アルカリまたはアルカリ土類金属供給装置(dispensers)に関し、その装置は小型化された装置の製作での使用に適する。
【背景技術】
【0002】
数多くの産業用途は、異なる物理的形態、たとえば装置の表面上へ堆積された固体薄膜の形態、または蒸気の形態、でのアルカリまたはアルカリ土類金属の存在を必要とする。とりわけ、フォトカソード(光電陰極)を想起でき、そこでは能動素子(active element)はアルカリ金属(またはアルカリ金属を含む金属間化合物)から作製される表面である;CRT(陰極線管、ブラウン管)、そこでは管の内側表面へのアルカリ土類金属(通常バリウム)の堆積物は、ガスのトラップとして作用し、管の内側を要求される真空度に保持する;原子時計、そこでは電磁放射は、アルカリ金属(ルビジウムまたはもっと一般的にはセシウム)の蒸気を通過する;特許出願WO 2006/084113に記載されるような原子干渉計、ならびに特許出願EP 1865283に記載されるような原子ジャイロスコープ;ならびにトンネル効果にもとづく冷凍ユニット、そこでは冷却はカソードとアノード間の電子の輸送により、そして少なくともカソードの電子放出表面上のアルカリ金属の堆積物は、カソードの仕事関数(work function)、したがってシステムの作動に要求されるエネルギー、を減少させるのを助ける;「熱トンネル」(”thermotunneling”)と呼ばれる、このメカニズムについての詳細情報は、Applied Physics Letters, vol. 78, no.17 (2001),2572-2574頁に発表された、Y. Hishinuma等の「Refrigeration by combined tunneling and thermionic emission in vacuum: use of nanometer scale design」の記事に見出され得るが、実際のデバイスでの使用例は米国特許6,876,123 B2に示されている。
【0003】
アルカリまたはアルカリ土類金属は、大気ガスおよび水分との高反応性のために、取り扱いまたは出荷が容易ではない。これらの金属の供給装置は長時間用いられ、安定な化合物の形態金属を含む。アルカリ金属の供給装置は、そこではこれらの金属は、その塩(たとえばクロム酸塩、バナジン酸塩、チタン酸塩等)の形態で存在するが、たとえば米国特許3,579,459および6,753,648 B2、ならびに特許出願EP 1598844 A1 に記載されている。安定な化合物BaAlを含む、バリウムの供給装置は、数多くの特許に記載されており、その中で2,3引用すると、米国特許2,824,640および4,642,516が挙げられる;化合物CaAlを含む、カルシウムの供給装置は、たとえば米国特許6,583,559 B1に記載されて
いる。
【0004】
しかしながら、上記の文献に開示される供給装置はすべて嵩だか(bulky)であり、たとえば、上記のHishinuma の記事に記載される熱トンネル冷凍ユニットのような、小型化されたデバイス、またはApplied Physics Letters, vol. 84, no.14 (2004),2694-2696頁に発表された、Li-Anne Liew等の「Microfabricated alkali atom vapor cells」の論文に記載されているような、小型化された原子時計、の製造において使用するのに、またはそれらの小型化されたものに挿入するために使用するのにも適していない。
【0005】
前述の産業用途も、適切な作動(working)を必要とし、デバイスの内部キャビティは真空または反応性ガスの無い雰囲気に保持される。熱トンネル冷凍ユニットの場合には、カソードとアノード間のガスの存在は電子の移動を妨げ、対流による熱の逆移動を生じさせ得る。通常、これらのユニットは、10−1ヘクトパスカル(hPa)よりも良好な真空、好ましくは10−4hPaの範囲、を要求する。原子時計の場合には、キャビティ内に存在するガスは、アルカリ金属の蒸気と反応し得、それにより遊離金属蒸気の量を減少させ、時計の作動を悪化させる。これらの(および他の)デバイスの製造プロセスは、一般的に、キャビティの排気、外側からの浸透のような現象、漏れ(leaks)およびキャビティの表面からのガス抜き、の段階を含むという事実にもかかわらず、デバイス寿命の間にキャビティに望ましくないガスを再導入する。この課題に取り組むために、キャビティ内側にゲッター材料、すなわち化学的に反応し、ガス状種を強く固定することができる材料、を添加することが知られている。ゲッター材料は、チタン、ジルコニウム、バナジウム、ハフニウムもしくはニオブ、またはこれらの合金(主として、チタンおよび/またはジルコニウム)と、遷移元素、希土類およびアルミニウムから選ばれる一種以上の金属とであるのが通常である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO 2006/084113
【特許文献2】EP 1865283
【特許文献3】米国特許6,876,123
【特許文献4】米国特許3,579,459および6,753,648
【特許文献5】米国特許6,753,648
【特許文献6】EP 1598844
【特許文献7】米国特許2,824,640
【特許文献8】米国特許4,642,516
【特許文献9】米国特許6,583,559
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Applied Physics Letters, vol. 78, no.17 (2001),2572-2574頁
【非特許文献2】Applied Physics Letters, vol. 84, no.14 (2004),2694-2696頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、雰囲気ガス、特に空気、に安定な、アルカリまたはアルカリ土類金属供給装置、特に小型化されたデバイスの内側での使用に適用され、またはその装置の製造のための方法に適用される、を提供すること、ならびにそのような供給装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これらおよび他の目的は、第1の態様において、アルカリまたはアルカリ土類金属の供給装置に関する本発明に従って達成され、ゲッター材料の堆積物を備える支持体(support)を含み、アルカリまたはアルカリ土類金属がそのゲッター材料の堆積物により雰囲気から保護される元素金属の形態で供給装置内に存在することを特徴とする。
【0010】
本発明の供給装置は2つの主な様式(modalities)にしたがって実現され得る。第1の様式において、アルカリまたはアルカリ土類金属は、金属の堆積物の形態で供給装置内に存在し、ゲッター材料の堆積物により完全に被覆されている。第2の様式において、アルカリまたはアルカリ土類金属は、少なくともゲッター材料の堆積物の一部の内側に分散されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の様式にしたがって実現される本発明の供給装置の断面図。
【図2】第1の様式における本発明の代替の態様を構成する供給装置の断面図。
【図3】第1の様式における本発明の代替の態様を構成する供給装置の断面図。
【図4】第1の様式における本発明の代替の態様を構成する供給装置の断面図。
【図5】第2の様式にしたがって実現される本発明の供給装置の断面図。
【図6】図5の支持体の変形例の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面において、示されている種々の要素の寸法および寸法比は正確なものではなく、図面が読みやすいように変更されている;特に、ゲッター材料の堆積物およびアルカリまたはアルカリ土類金属の堆積物、の高さは、そのような要素の表現をわかりやすくするために、大きく増加されている。
【0013】
本発明の供給装置の支持体は、供給装置の製造プロセス、ならびに供給装置が使用されるデバイスの製造方法の両方と両立するものであれば、幅広い種々の材料で実現され得る。支持体を実現するために最も適した材料は、金属、合金、半導体、ガラスまたはセラミック材料であり、そして特にコバール(鉄、ニッケル、コバルトおよび他の少量の元素に基づく合金)、ケイ素、ゲルマニウム、炭化ケイ素、サファイア、石英、ガラス、パイレックス(商標)、リン化インジウム、ヒ化ガリウムである。しかし、支持体がポリマー(たとえば箔の形態)のような他の材料で実現され得る用途が生じることも可能である。
【0014】
本発明による供給装置は、本質的にいかなるアルカリまたはアルカリ土類金属の放出
(release)のためにも製造され得る。ベリリウムは高蒸発温度と毒性のために、フランシウムおよびラジウムは放射能のために、あまり好ましくはないが、これらの金属の供給装置が本発明により製造されることを排除するものではない。通常の産業用途での使用のために最も好適な金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムである。以下の説明において、簡潔にするために、アルカリおよびアルカリ土類金属は単に蒸発しやすい(evaporable)金属として呼ぶことがある;さらに、以下の説明の部分において、たとえばセシウムの使用について言及がなされるが、いかなる教示も他の蒸発しやすい金属に同様に適用され得る。
【0015】
本発明の実現に適したゲッター材料は、単一の金属により構成され得るが、複数の金属組成を有するものであってもよい。単一の金属の場合には、ハフニウム、ニオブ、バナジウム、そして好ましくはチタンまたはジルコニウムである。複数の金属の場合には、チタンおよび/またはジルコニウムに基づき、遷移元素、希土類およびアルミニウムから選ばれた少なくとももう一つの元素との合金が用いられるのが通常であり、たとえば米国特許3,203,901(特にZr 84%-Al 16%の質量%組成の合金)に記載されるZr-Al合金、米国特許4,071,335のZr-Ni合金(特にZr 75.7%-Ni 24.3%の質量組成の合金)、米国特許4,306,887のZr-Fe合金(特にZr 76.6%-Fe 23.4%の質量組成の合金)、米国特許4,312,669のZR-V-Fe合金(特にZr 70%-V 24.6-Fe 5.4%の質量組成の合金)、米国特許4,668,424のZr-Ni-A-M合金(Aは一種以上の希土類元素を表わし、Mはコバルト、銅、鉄、アルミニウム、スズ、チタンおよびケイ素から選ばれる一種以上の元素を示す。)、に記載されるZr-Al合金、米国特許5,961,750(特にZr 80.8%-Co 14.2%-A 5%の質量%組成の合金)に記載されるZr-Co-A合金(Aはイットリウム、ランタン、希土類またはそれらの混合物)、そして米国特許6,468,043のZR-V-Ti合金である。
【0016】
この分野で知られているように、ゲッター材料は、適切な作動のために、活性化(activation)といわれる、約300〜600℃(材料の組成に依存する)の温度での熱処理を必要とする。この処理は、製造後すぐにゲッター表面により収着された(sorbed)酸素、窒素または炭素の、材料粒子の内側部分への拡散を生じさせ、ガスの収着に活性な、金属原子の新鮮な表面を露出させる。
【0017】
図1は、もっと基本的な態様において、第1の様式により実現される本発明の支持体の断面図である。
【0018】
供給装置10は支持体11を含み、その上にはゲッター材料堆積物13により被覆されたセシウム堆積物12が形成されている。セシウム堆積物の厚さは1〜100ナノメーター(nm)、好ましくは10〜50nmであり、一方ゲッター材料堆積物は100nm〜10マイクロメーター(μm)、好ましくは20nm〜5μmの厚さを有する。
【0019】
このような構成で、ゲッター材料堆積物13は、支持体11と共同でセシウム堆積物12を機械的に、そして化学的に保護する。機械的には、セシウムが放出される最終デバイスの製造プロセスの間に生じ得る溶融につづいて、たとえばセシウム堆積物が支持体11上を移動することをゲッター材料堆積物が回避する;化学的には、ゲッター材料は上記プロセスの間に存在し得る微量有害ガスを収着し、セシウムがそれらと反応するのを回避する。
【0020】
ゲッター材料堆積物を砕く(fracture)、同一の熱処理は同様に活性化を生じさせるので、セシウム蒸発時にキャビティ内側の雰囲気には潜在的に有害なガス不純物は本質的にない。しかし、熱トンネル冷凍ユニットの特定の場合には、セシウム蒸発時にゲッター活性化が完全でなくても許容し得る。なぜなら、キャソード上に堆積された金属薄膜の酸化は仕事関数値をさらに向上させる(2.14から1.2eVに低下させ、金属セシウムからその酸化物に変化させる。)。
【0021】
ゲッター材料堆積物の寸法はセシウム堆積物のまわりに必ずしも均一である必要は無く、特にセシウム堆積物の横側面上のゲッター材料の厚さは、セシウム堆積物上方の層の厚さより大きくてもよい。
【0022】
図2〜4は図1に一般的に示された供給装置の好適な代替の態様を示す。図2は、第1の好適な態様による、本発明の供給装置20の断面図を示す。この場合、セシウム堆積物22は支持体11に直接接触はしておらず、支持体とセシウム堆積物の間にバリア層24が挟まれている。そのバリア層の機能は、支持体材料へのセシウムの拡散(蒸発収率を低下させる)を回避することである;セシウム堆積物22の上方にゲッター材料堆積物23が存在する。堆積物23と層24の支持体11上の横方向寸法は同一であり、これらは
セシウム堆積物を完全に囲んでいる。
【0023】
セシウムおよびゲッター材料の堆積物の厚さについては、前述のものと同一であるが、バリア層24の厚さは約100nm〜10μmである;その実現に適した材料は、タンタル、白金、金(またはそれらの組み合わせ)、前述のゲッター材料のいずれか、窒化タンタルおよび窒化ケイ素である。
【0024】
図3は、第2の好適な態様による、本発明の供給装置30の断面図を示す。この場合、バリア層34およびセシウム堆積物32は同一の横方向寸法を有し、支持体11と接触するゲッター材料堆積物33に両方が囲まれている。したがって、バリア層は側面のみがゲッター材料と接触しているが、セシウム堆積物は、上方および側面をゲッター材料で、そして下方をバリア層で閉じ込められている。この第2の態様はさらに好適であることがわかる。なぜならその製造プロセスは詳細に後述するように、図2の供給装置の製造プロセスよりももっと便利だからである。
【0025】
図4は、図3の供給装置の変形例を示す。この供給装置40において、上方の堆積物43およびバリア層44は、ともにセシウム堆積物42で囲まれており、ゲッター材料から製造される(好適には、しかし必ずしも同一組成である必要はない)。この態様はゲッター材料の量を増加させ、したがって不純物収着能力を増加させるので有利である。バリア層44の厚さは、セシウム堆積物を被覆する堆積物43の厚さより大きいのが好適である。この条件はバリア層44としての効率を確かにする。なぜならシステムの加熱中、セシウムは堆積物43を越えるよりも、もっと大きいゲッター材料の厚さを越えて支持体11に達するべきだからである;これは、堆積物43は層44よりももっと容易に砕けるという事実によっても助けられる。なぜなら層44は支持体自体への付着(adhesion)により横方向の移動において制限されているからである。堆積物43と層44の両方とも約100nm〜10μmの厚さを有し、一方セシウム堆積物は前述と同一の厚さを有する。図4は図3の変形例を示すが、この態様(ゲッター材料は堆積物43と層44の両方に用いられている)は、図2に関して述べられている堆積物の製造にも適用され得る(すなわち、同一の横方向寸法を持つ、バリア層およびゲッター材料堆積物を用いる。)。
【0026】
図5は、もっと基本的な態様において、第2の様式により実現される本発明の支持体の断面図を示す。この場合、支持体11上にゲッター材料の堆積物53が存在し、その中へ蒸発しやすい金属が拡散される。蒸発しやすい金属はゲッター構造によりトラップされ、封入され、適切な熱処理中に放出されるが、第1の様式により実現される支持体で生じることと同様である。この態様によって蒸発しやすい金属を内側に分散させたゲッター材料の堆積物は、約100nm〜10μmの厚さを有し、堆積物の全質量の1〜20質量%、好ましくは3〜10質量%、の金属を有する。
【0027】
この様式においてもなおバリア層を使用し得る。バリア層は、蒸発しやすい金属が支持体と接触して存在する容積を分離する。この種の構造は図6に示される:供給装置60は支持体により形成され、支持体の上にはバリア層64が存在し、その上にゲッター材料の堆積物63があり、そこでは蒸発しやすい金属が分散されている。層64の厚さは100nm〜10μmであり得る。バリア層64は堆積物63に用いられた同一のゲッター材料、または異なる材料、から製造され得、この機能を成し遂げるために前述の材料から選ばれる。
【0028】
明らかに、前述のすべての態様において、種々の層および堆積物の厚さの合計は、供給装置が存在しなければならない最終デバイスの実現と、またはその製造プロセスと、両立しなければならない。たとえば、熱トンネル冷凍ユニットにおいては、カソードとアノードは互いに非常に近接しており、数十ナノメーターのオーダーの距離を置いているに過ぎない;この場合、もし電極の一つ(たとえばカソード)が供給装置の同一の支持体11に設けられると、本発明の供給装置を構成する、異なる堆積物および層の厚さの合計は、2つの電極より短くてはいけないし、好ましくは支持体11上の電極の厚さより大きくないものでなければならない。
【0029】
本発明の供給装置は、一体化されたヒーターを含み得る(図面には示されていない)。この態様では、ゲッター活性化および蒸発しやすい金属の蒸発のプロセスのさらに良好な制御が可能である;さらに、供給装置の支持体が最終デバイスのキャビティの壁の一部を形成する場合には、一体化されたヒーターの存在は、デバイスの寿命中、収着能力を回復させるために、ゲッターの次の再活性化を可能にもする。ヒーターは、ゲッター材料の堆積と蒸発しやすい金属が得られるのと反対側の、支持体11の面上に置かれた抵抗(たとえば、単一もしくは多くの線の抵抗材料ペーストをスクリーン印刷することにより形成される)であってもよい。あるいは、支持体の堆積物が存在するのと同一面上にヒーターを有することは可能であり、電力供給のためのフィードスルー(電流導入端子)を設け、ヒーター領域に本発明の特性の堆積物を形成する;マイクロ構造デバイス(micromechanical devices)のキャビティにおけるゲッター層を加熱するために、この種の解決は本出願人による特許出願WO 2004/065289に記載されている。
【0030】
その第2の態様において、本発明は上述の供給装置の製造方法にある。本発明の供給装置は、支持体の領域を限定して、その上に堆積がマスキングにより形成され、種々の材料の連続した堆積を行なう、半導体産業の一般的な技術を用いて製造される。
【0031】
蒸発しやすい金属源として、たとえば本出願人による特許出願WO 2006/057021に記載されているような、制御された熱蒸発に基づくものを使用できる。堆積プロセス時間は製造される層の厚さを制御し、一方堆積がその上に形成される領域は支持体の適切なマスキングにより選択される。周知のように、マスキングは機械的であってもよく、すなわち自立性のマスクで実現され得、開口を有する薄い金属箔が通常であり、マスク上の開口は所望の堆積物の開口に相当する、形状、寸法および配置を有する;あるいは、選択的に除去され得るポリマー材料を用いて、たとえばUV照射で増感後に化学的エッチングにより増感(または非増感)領域を除去して、支持体上に直接、その場で製造されるマスクを採用し得る。通常100μm未満の、小さな横側面寸法を持つ堆積物が得られるべき時には、上記の第2の種類のマスキングが、もっと適切であり、一方上記の第1の種類のマスキングはもっと大きい寸法に対して十分である。
【0032】
蒸発しやすい金属の堆積後、ゲッター材料層の堆積は通常スパッタにより実行される;スパッタ法は薄膜の堆積の分野で広く知られており、ここでは詳しい説明は必要ではない。ゲッター材料への適用は、たとえば米国特許6,468,043および特許出願WO 2006/109343に記載されている。ガス収着速度の良好な値を得るために最適化された、多孔質のゲッター層を得るために、後者の文献で教示された特定の条件にしたがって操作するのが好適である。すなわち、チャンバー内で比較的高いガス(通常アルゴン)圧力、およびターゲットと支持体の間に印加される低い電力で作動し、そして好ましくはその上に堆積され、ターゲットと支持体間を大きな距離とする;逆に、バリア機能性を有するゲッター層(たとえば、前述の層44)の製造のために、スパッタ法の通常の条件(すなわちチャンバーの低ガス圧、高い印加電力、冷却されない支持体およびターゲット−支持体の小さな距離)であるような条件で密な堆積を得るように操作するのが好ましい。
【0033】
第1の様式において、本発明を実現するために、蒸発しやすい金属の堆積物の横側面寸法が上方のゲッター材料層の寸法よりも小さくすることが必要である;結果として、少なくとも2つの異なるマスクを使用することが必要であり、第1のマスクは蒸発しやすい金属を堆積するために比較的小さい寸法の開口を有し、第2のマスクはゲッター材料層を堆積するために比較的大きい寸法の開口を有する。
【0034】
図2の支持体の場合、第2のマスク(比較的幅広い開口)がバリア層(24)の堆積を行う最初に用いられ、ついで蒸発しやすい金属(22)の堆積のために第1のマスクが用いられ、そして最後に第2のマスクがゲッター材料層(23)の堆積のために再び使用される。バリア層は、ゲッター材料で実現されないとき、蒸発、スパッタおよび「化学蒸着」のような方法で堆積され得、高密度で良好なバリア性を有する層を得ることができる。
【0035】
製造プロセスの観点から、図3の支持体が好ましいことがわかる。それは、バリア層(34)の製造、ついで蒸発しやすい金属(32)の堆積のために、第1のマスク(比較的小さな寸法の開口を有する)を使用し、その後、ゲッター材料(33)の堆積のために第2のマスクを使用することを可能にするからである。このようにして、次の堆積でマスクの正確な位置合わせの必要に加えて非生産的時間(dead-times)およびばらつき(criticalities)を意味する、マスク交換の操作が省略される。
【0036】
上記のプロセスにおいて、蒸発しやすい金属およびゲッター材料の堆積を形成するための堆積チャンバーは同一であってもよく、または支持体は2つの接続されたチャンバー内で移動されてもよく、その一つはスパッタプロセスに、残りの一つは蒸発プロセスに用いられる。
【0037】
図5に示されるように製造されような支持体の場合には、蒸発しやすい金属の内側に分散されたゲッター材料の上方の層はスパッタ法のみを用いて製造され得、所望の金属をその中に分散させたゲッター材料の代わりのターゲットで作られたターゲットで始め、またはスパッタ法でゲッター材料の堆積、そして蒸発で蒸発しやすい金属の堆積を、同時に実行する共堆積による。この第2の操作態様は知られており、実行するのに適切な堆積システムであり、たとえば米国ニュージャージー州HobokenのPlasmion Corp.により製造されるIonCellシステムである。
【0038】
図6に関して記載される供給装置(供給装置60)の製造の場合、単一チャンバー内で
、連続プロセスの間に行われるのが最良であり、最初に純ゲッター材料の層64を堆積し、層64が所望の所望の厚さに到達すると、所望の蒸発しやすい金属と同一のゲッター材料の共堆積を開始する。
【0039】
本発明の供給装置は一つずつ製造され得るが、好ましくは半導体産業の通常の方法で製造されるのが好適であり、共通の支持体(たとえばシリコンウエハー)上で、適切なマスキング(この分野で周知)を用いて、多数の供給装置が製造され、ついで最終の供給装置を製造するためにプロセスの終わりに適切に単一化される;単数の供給装置を有するウエハーは、もう一つのウエハーと結合され得、最終デバイス(たとえば熱トンネル冷凍ユニット)の能動素子の対応する数を有し、そしてその2つのウエハーのアセンブリーは、完成したときに単一のデバイスに分離される(この分野で「ダイシング」として知られている。)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雰囲気ガスに安定なアルカリまたはアルカリ土類金属の供給装置(10;20;30;40;50;60)であり、ゲッター材料(13;23;33;43;53;63)の堆積物を備える支持体(11)を含み、アルカリまたはアルカリ土類金属がそのゲッター材料の堆積物により雰囲気から保護される元素金属の形態で供給装置内に存在する供給装置。
【請求項2】
支持体(11)が、金属、合金、半導体、ガラスまたはセラミック材料から選ばれる材料で実現される請求項1に記載の供給装置。
【請求項3】
材料がコバール、ケイ素、ゲルマニウム、炭化ケイ素、サファイア、石英、ガラス、パイレックス(商標)、リン化インジウムおよびヒ化ガリウムから選ばれる請求項2に記載の供給装置。
【請求項4】
アルカリまたはアルカリ土類金属が、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムから選ばれる請求項1に記載の供給装置。
【請求項5】
ゲッター材料が、ハフニウム、ニオブ、バナジウム、チタン、ジルコニウム、およびチタンおよび/またはジルコニウムに基づき、遷移元素、希土類およびアルミニウムから選ばれた少なくとももう一つの元素との合金、から選ばれる請求項1に記載の供給装置。
【請求項6】
アルカリまたはアルカリ土類金属が、ゲッター材料(13;23;33;43)の堆積物により完全に被覆された堆積物(12;22;32;42)の形態で供給装置に存在する請求項1に記載の供給装置。
【請求項7】
アルカリまたはアルカリ土類金属の堆積物と支持体の間に、さらにバリア層(24;34;44)を含む請求項6に記載の供給装置。
【請求項8】
バリア層がタンタル、白金、金、それらの金属の組み合わせ、窒化タンタル、窒化ケイ素またはゲッター材料で実現される請求項7に記載の供給装置。
【請求項9】
アルカリまたはアルカリ土類金属の堆積物の厚さが1〜100nmである請求項6に記載の供給装置。
【請求項10】
厚さが10〜50nmである請求項9に記載の供給装置。
【請求項11】
ゲッター材料の堆積物の厚さが100nm〜1μmである請求項6に記載の供給装置。
【請求項12】
バリア層が100nm〜1μmの厚さを有する請求項7に記載の供給装置。
【請求項13】
ゲッター材料の堆積物(23;43)およびバリア層(24;44)が同一の横方向寸法を有する請求項7に記載の供給装置(20;40)。
【請求項14】
アルカリまたはアルカリ土類金属の堆積物(32)およびバリア層(34)が同一の横方向寸法を有する請求項7に記載の供給装置(30)。
【請求項15】
アルカリまたはアルカリ土類金属がゲッター材料の堆積物(53;63)の少なくとも一部の内側に分散されている請求項1に記載の供給装置。
【請求項16】
アルカリまたはアルカリ土類金属堆積物の質量%が該堆積物の全質量の1〜20質量%である請求項15に記載の供給装置。
【請求項17】
該質量%が3〜10質量%である請求項16に記載の供給装置。
【請求項18】
ゲッター材料の該堆積物(63)と該支持体の間に、さらにバリア層(64)を含む請求項15に記載の供給装置(60)。
【請求項19】
該バリア層がタンタル、白金、金、それらの金属の組み合わせ、窒化タンタル、窒化ケイ素またはゲッター材料で実現される請求項18に記載の供給装置。
【請求項20】
ゲッター材料の該堆積物が100nm〜1μmの厚さを有する請求項15に記載の供給装置。
【請求項21】
該バリア層が100nm〜1μmの厚さを有する請求項18に記載の供給装置。
【請求項22】
堆積がその上に生じる支持体の領域をマスキングで限定して、堆積されるべき材料の連続した堆積を行う、請求項1に記載の供給装置の製造方法。
【請求項23】
アルカリまたはアルカリ土類金属が金属の堆積物(12;22;32;42)の形態であるように、供給装置が製造され、該堆積物は金属の蒸発と支持体上での凝縮により得られる請求項22に記載の方法。
【請求項24】
アルカリまたはアルカリ土類金属の堆積物の上方にあるゲッター材料堆積物(13;23;33;43)がスパッタで実現され、チャンバー内で比較的高いガス圧力、およびターゲットと支持体の間に印加される低い電力で作動する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
スパッタ操作が、その上に堆積が生じる支持体を冷却し、ターゲットと支持体間を大きな距離として実行される請求項24に記載の方法。
【請求項26】
バリア層は、蒸発、スパッタおよび「化学蒸着」から選ばれる方法で製造される請求項22に記載の方法。
【請求項27】
供給装置は、アルカリまたはアルカリ土類金属の堆積物がゲッター材料堆積物(53;63)の内側に分散されるように製造され、該堆積物はゲッター材料および該アルカリまたはアルカリ土類金属からなるターゲットのスパッタにより得られる請求項22に記載の方法。
【請求項28】
供給装置は、アルカリまたはアルカリ土類金属の堆積物がゲッター材料堆積物(53;63)の内側に分散されるように製造され、該堆積物は、ゲッター材料のスパッタと蒸発しやすい金属の同時蒸発とにより得られる請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−519017(P2010−519017A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549861(P2009−549861)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【国際出願番号】PCT/IB2008/000307
【国際公開番号】WO2008/099256
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(500275854)サエス ゲッターズ ソチエタ ペル アツィオニ (54)
【Fターム(参考)】