空気入りタイヤ
【課題】タイヤ重量の増加、タイヤの生産性の低下等を来すことなく、カーカスプライ及びワイヤチェファ外端の、ゴム質からのセパレーションやプライコードの引抜けを有効に防止するとともに、ビード周りのゴム物性劣化を抑制して、ビード部耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】空気入りタイヤは、スチールコードからなる少なくとも一枚のカーカスプライ5を、トレッド部1からサイドウォール部2を経てビード部までトロイダルに延在させるとともに、各ビード部3に埋設したビードコア4の周りで、タイヤ半径方向の内側から外側へ巻返し、カーカスプライ5の各巻返し部分に、ビードコアの周面に沿ってそれに巻付く巻込み部7を備える。又、ゴム成分に、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層11を備える。
【解決手段】空気入りタイヤは、スチールコードからなる少なくとも一枚のカーカスプライ5を、トレッド部1からサイドウォール部2を経てビード部までトロイダルに延在させるとともに、各ビード部3に埋設したビードコア4の周りで、タイヤ半径方向の内側から外側へ巻返し、カーカスプライ5の各巻返し部分に、ビードコアの周面に沿ってそれに巻付く巻込み部7を備える。又、ゴム成分に、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層11を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、特に、プライコードの引抜け、カーカスプライの巻返し部分へのセパレーションの発生等を有効に防止し、更に充填剤に扁平クレイを用いたインナーライナー層を適用することでタイヤ重量を維持したままビード周りのゴム物性劣化を抑制して、ビード部耐久性を向上させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な重荷重用空気入りラジアルタイヤでは、タイヤの負荷転動に際するプライコードの引抜けを防止すべく、カーカスプライをビード部のビードコアの周りで、タイヤ半径方向の内側から外側へ大きく巻返し、その巻返し部分をゴム質中に埋込み固定することとしている。
【0003】
図12は、これを例示するビード部の略線横断面図である。図12(a)では、カーカスプライ31の巻返し部分31aの外端を、ワイヤチェファ32の同様の外端より半径方向外側に位置させ、図12(b)では、カーカスプライ巻返し部分31の外端より、ワイヤチェファ32の巻返し外端を半径方向外側に位置させている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、スティフナーゴムの耐劣化性向上に関しては、酸素濃度増加抑制のため、インナーライナー層のゲージアップが特に有効である(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−321289号公報
【特許文献2】特開2003−165303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述したような従来のビード部構造にあっては、カーカスプライ31の巻返し外端位置、又は、ワイヤチェファ32の外端位置を境として、タイヤ半径方向の内外側に剛性段差を生じることになるので、タイヤの負荷転動時に、ビード部からサイドウォール部にかけての繰返しの変形によって、各外端及びその近傍に応力が集中する。このため、その外端の、ゴム質からのセパレーションが発生し易く、このセパレーションが、図13(a)、(b)に示すようなビード部クラックcrの原因になるという問題があった。
【0006】
そこで、カーカスプライ31の巻返し部分の外端もしくは、ワイヤチェファ32の外端及びその近傍に生じる応力を緩和し、併せて、ビード部の剛性を高めて、そのビード部の変形を抑制することを目的に、ビードコア33の周りで、図示しない複数枚の有機繊維コード層をワイヤチェファ32に外接させて配置して、これらの有機繊維コード層で、前述した、カーカスプライ31の巻返し外端又は、ワイヤチェファ32の外端を覆ったり、ビードコア33の半径方向外側で、カーカスプライ31の本体部分と、巻返し部分31aとの間に配置するゴムステイフナ34、なかでも硬ゴムスティフナーの量を増やしたりすることが提案されている。しかし、これらによれば、タイヤの負荷転動時に、ビード部の発熱温度が一層高くなることにより、前述したセパレーションの発生に加えて、有機繊維コード層の外端にもセパレーションが発生するという問題があった他、タイヤ重量が増加し、タイヤの生産性が低下するという他の問題もあった。
【0007】
一方、上述したように、スティフナーゴムの耐劣化性向上に関しては、従来、インナーライナー層のゲージアップが特に有効であったが、ゲージアップすることにより、タイヤ重量が増加するため、走行時にケースゴム温度の上昇を引き起こす。その結果、ケースゴムの空気(酸素)増加速度が上がり、ビード周りのゴム物性劣化につながるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、タイヤ重量の増加、タイヤの生産性の低下等を来すことなく、カーカスプライ及びワイヤチェファ外端の、ゴム質からのセパレーションやプライコードの引抜けを有効に防止するとともに、ビード周りのゴム物性劣化を抑制して、ビード部耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の特徴は、スチールコードからなる少なくとも一枚のカーカスプライを、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部までトロイダルに延在させるとともに、各ビード部に埋設したビードコアの周りで、タイヤ半径方向の内側から外側へ巻返してなる空気入りタイヤにおいて、カーカスプライの各巻返し部分に、ビードコアの周面に沿ってそれに巻付く巻込み部と、ゴム成分に、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層とを備える空気入りタイヤであることを要旨とする。
【0010】
又、ゴム成分は、ブチル系ゴム40〜100重量%とジエン系ゴム60重量%以下とを含有するとともに、層状又は板状鉱物の配合量A(ゴム成分100重量部に対する配合重量部)は、インナーライナー層の厚みをD(mm)としたとき、1<A×D<200 ・・・(I)を満たすことが好ましい。
【0011】
又、ゴム成分は、ジエン系ゴム60〜100重量%を含有することが好ましい。
【0012】
又、ブチル系ゴムは、ハロゲン化ブチルゴムを含むことが好ましい。
【0013】
又、層状又は板状鉱物は、カオリン質クレイ又はセリサイト質クレイを含むことが好ましい。
【0014】
又、層状又は板状鉱物は、シリカ及びアルミナの含水複合体を含むことが好ましい。
【0015】
又、インナーライナー層は、ゴム成分100重量部に対して窒素吸着比面積(N2SA)が26〜170m2/gのカーボンブラック0.1〜40重量部と、軟化剤1重量部以上とを配合したゴム組成物からなることが好ましい。
【0016】
又、層状又は板状鉱物の配合量は、ゴム成分100重量部に対して20〜160重量部であり、かつ該鉱物とカーボンブラックとの合計量は60〜220重量部であることが好ましい。
【0017】
又、インナーライナー層は、ブチル系ゴムから選ばれた少なくとも一種からなるゴム成分100重量部に対して、クレイ10〜50重量部と、カーボンブラック10〜60重量部とを配合したゴム組成物からなることが好ましい。
【0018】
又、クレイ及びカーボンブラックの合計配合量が、50重量部以上であることが好ましい。
【0019】
又、カーボンブラックのヨウ素吸着量が40mg/g以下であり、かつ、ジブチルフタレート吸油量が100ml/100g以下であることが好ましい。
【0020】
又、ハロゲン化ブチルゴムが、臭素化ブチルゴム及び塩素化ブチルゴムから選ばれた少なくとも一種のゴムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、タイヤ重量の増加、タイヤの生産性の低下等を来すことなく、カーカスプライ及びワイヤチェファ外端の、ゴム質からのセパレーションやプライコードの引抜けを有効に防止するとともに、ビード周りのゴム物性劣化を抑制して、ビード部耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0023】
(空気入りタイヤの構造)
本実施形態に係る空気入りタイヤは、図1に示すように、トレッド部1と、トレッド部1に連続するサイドウォール部2と、サイドウォール部2の半径方向内側に連なるビード部3と、ビード部3に埋設した、横断面形状が六角形をなすビードコア4と、インナーライナー層11とを備える。
【0024】
ここでは、タイヤ赤道面に対して実質的に90°の角度で延在させた、強力が80〜300kgfの範囲、より好ましくは、100〜180kgfの範囲のスチールコードをプライコードとし、このプライコードからなる一枚のカーカスプライ5を、トレッド部1からサイドウォール部2を経てビード部3までトロイダルに延在させるとともに、ビードコア4の周りで、タイヤ半径方向の内側から外側へ巻返す。
【0025】
この巻返し態様としては、図1に示すように、タイヤ幅方向の内側から外側へ巻返す場合の他、図2に示すように、タイヤ幅方向の外側から内側へ巻返す場合があり、これらのいずれにあっても、カーカスプライの巻返し部分6は、ビードコア4の周面に沿ってそれに巻付く巻込み部7を有する。
【0026】
図1及び図2に示すそれぞれの巻込み部7はともに、ビードコア4の横断面輪郭形状と対応させて予め設けた三個所の塑性変形部P1、P2、P3を有する。この塑性変形部P1、P2、P3によって、特に巻込み部7の先端側部分で、ビードコア4の周面に十分近接し、かつ正確に倣ってビードコア4に巻付くこととなる。又、巻込み部7はいずれも、ビードコア4の断面輪郭の半周、例えば、そのビードコア4の、ビードベース3a側の半周を越えてビードコア周面に沿って延び、なかでも図1に示す巻込み部7の先端は、これに加えて、空気圧を充填したタイヤのリム組み姿勢で、ビードコア4の外周縁位置を越えて、それよりタイヤ幅方向内側に位置する。尚、ワイヤチェファ8は、ビードコア4の周りで、カーカスプライ5に外接させて配置される。
【0027】
このように構成されたタイヤでは、巻返し部分6に巻込み部7を設けたことにより、プライコードの引抜けを有効に防止して、併せて、ビードコア4及びリムRの作用の下で、その巻返し部分6のセパレーションを有効に防止することができる。
【0028】
加えて、プライコードの引抜けがこのようにして有効に防止されることの当然の帰結として、ワイヤチェファ8を必須の構成部材とする場合にあっても、その半径方向外端を、十分内周側に位置させることができ、これにより、その外端及びその近傍での変形量が少なくなるので、ワイヤチェファ外端のセパレーションのおそれも又効果的に除去されることになる。
【0029】
ここで、空気入りタイヤのこのような効果を担保するためには、図3に示すように、図1のビードコア4の断面図において、巻込み部7の先端を、ビードベース3aから離れた三辺a、b、cのいずれかの上に位置させることが好ましい。より好ましくは、その配設範囲を、辺aと辺bとの交点位置から、それらの各辺長の2/3の長さの範囲とする。
【0030】
又、図1及び図2に示す巻込み部7を、ビードコア4とビードフィラ9との間に挟み込むことで、その巻込み部7に対する拘束力を高めており、これによれば、上述した効果を一層高めることができる。
【0031】
ところで、巻込み部7をこのように挟み込むに当たって、巻返し部分6が、その巻込み部7の先端側に、図4に示すように、カーカスプライ5の本体部分に沿ってタイヤ半径方向外側へ延びてビードコア4から離隔する突出端部10を有する場合には、その突出部10を上述した挟み込みから解放することもできる。
【0032】
そして又、巻返し部6がこのような突出先端部10を有する場合には、その先端部10の先端を、ビード部3のリムフランジRfとの接触域ctの外周縁より半径方向内側に位置させることが好ましく、これによれば、タイヤの負荷転動に際する、先端及びその近傍の変形を、リムフランジRfによって有効に拘束することができる。
【0033】
以上、巻込み部7に三個所の塑性変形部P1、P2、P3を設ける場合について説明したが、このような塑性変形部は、図5に示すように一箇所(P1)とすることもでき、図6に示すように二個所(P1、P2)とすることもできる。更に、図7に示すような四個所(P1、P2、P3、P4)とすることもできる。
【0034】
ここで、四個所の塑性変形部P1、P2、P3 、P4を設ける場合において、図7に示すように、巻込み部7の先端部分をカーカスプライ本体部分とビードコア4との間に挟み込むときには、巻込み部7に対する拘束をとくに強めることができ、又、図8に示すように、巻込み部7の先端に、タイヤ幅方向外側に向けて折返した折返し部11を付設したときには、プライ端部に引っ張り歪が発生しないため、より引抜けにくく、又亀裂も発生しにくい。
【0035】
尚、図1〜図8において、横断面形状が六角形をなすビードコア4を例示したが、本実施形態に係る空気入りタイヤはこれに限らず、例えば、図9(a)に示すように、硬質ゴムにプレートビードを埋め込んだものに巻込み部を巻き付けた構造でもよく、図9(b)に示すように、丸ビードに巻込み部を巻き付けた構造でもよい。
【0036】
このように、本実施形態に係る空気入りタイヤでは、カーカスプライ5の巻返し部分6に、ビードコア4の周面に沿ってそれに巻付く巻込み部7を設けることで、その巻込み部7、ひいては、巻返し部分6のセパレーションを防止するとともに、プライコードの引抜けを防止することができる。又ビード部3の補強層数を有利に低減させて、ビード部3の発熱を抑制するとともに、タイヤ重量を軽減させることができ、併せて、タイヤの生産性を高めることができる。ところで、ワイヤチェファ8の半径方向外端へのセパレーションの発生は、プライコードの引抜けの心配がないことに基づき、ワイヤチェファの高さを低く設定することで十分に防止することができる。
【0037】
(インナーライナー用ゴム組成物)
次に、本実施形態に係る空気入りタイヤのインナーライナー層11に用いるゴム組成物について説明する。
【0038】
本実施形態に係るインナーライナー用ゴム組成物においては、ゴム成分に、アスペクト比が3以上、30未満の層状又は板状鉱物が配合される。本実施形態に係るゴム組成物において用いられるゴム成分としては、ブチル系ゴム及びジエン系ゴムのいずれも用いることができるが、ブチル系ゴムを用いる場合はハロゲン化ブチルゴムを含むものが好ましい。このハロゲン化ブチルゴムとしては、塩素化ブチルゴム,臭素化ブチルゴム及びその変性ゴムなどが含まれる。例えば塩素化ブチルゴムとしては「Enjay Butyl HT10−66」(エンジェイケミカル社製,商標)があり、臭素化ブチルゴムとしては「ブロモブチル2255」(エクソン社製、商標)がある。又、変性ゴムとしてイソモノオレフィンとパラメチルスチレンとの共重合体の塩素化又は臭素化変性共重合体を用いることができ、例えば「Expro50」(エクソン社製,商標)などとして入手可能である。このようなハロゲン化ブチルゴムとブレンドされるジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム,イソプレン合成ゴム(IR)、シス1,4−ポリブタジエン(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(1,2BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせてもよい。
【0039】
上記ゴム成分は、耐空気透過性の点からは、ブチル系ゴム40〜100重量%とジエン系ゴム60重量%以下であることが好ましく、このゴム成分からなるゴム組成物は、二輪車用、乗用車用、トラック用、バス用などに好適に使用される。
【0040】
又、特に航空機用タイヤや極低温条件で使用されるトラック・バス用タイヤに適用する場合には、ゴム成分としては、ジエン系ゴムを60〜100重量%含むものが好ましく、特に天然ゴム主体のゴム成分が好ましい。
【0041】
次に、本発明のゴム組成物に配合される層状又は板状鉱物は、天然品、合成品のいずれも適用され、アスペクト比が3以上30未満であれば特に限定はなく、例えばカオリン、クレイ、マイカ、長石、シリカ及びアルミナの含水複合体などが挙げられる。これらの中ではカオリン質クレイ及びマイカが好ましく、特にカオリン質クレイが好ましい。これら層状又は板状鉱物の粒径は0.2〜2μmのものが好ましく用いられるが、特にアスペクト比は5以上30未満であることが好ましく、更に8〜20であることが好ましい。アスペクト比を3以上とすることにより耐空気透過性の改質効果が充分に得られ、30未満とすることにより加工性の悪化を抑えることができる。
【0042】
ここで、「アスペクト比」は、無機充填剤を電子顕微鏡で観察し、任意の粒子50個について長径と短径を測定し、その平均長径aと平均短径bとよりa/bとして求められる。図10に、単位粒子の長径と短径を説明するための模式図を示す。
【0043】
又、本実施形態において、層状又は板状鉱物の配合量A(ゴム成分100重量部に対する配合重量部)は、インナーライナー層の厚みをD(mm)としたとき、次式(I)
1<A×D<200 ・・・(I)
を満足する量であることが好ましい。この配合量の範囲で、耐空気透過性の良好な改良効果が得られる。
【0044】
層状又は板状鉱物の配合量は、ゴム成分100重量部に対して10〜200重量部、特に20〜160重量部が好ましい。又、ゴム組成物において用いられるカーボンブラックは、ゴム成分100重量部に対して0〜60重量部、更に0〜40重量部が好ましく、特に5〜35重量部であることが好ましい。
【0045】
更に、層状又は板状鉱物とカーボンブラックとの合計量としては、50重量部以上が好ましいが、特に耐空気透過性、耐屈曲疲労性及び加工性を考慮して60〜220重量部であることが好ましい。
【0046】
カーボンブラックの種類は特に制限はなく、従来ゴム組成物の補強用充填剤として慣用されているものの中から任意のものを適宜選択して用いることができ、例えばFEF、SRF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられる。これらの中では窒素吸着比面積(N2SA)が26〜170m2/gのものが好ましい。尚、N2SAはASTMD3037−88に準拠して測定される。更に、カーボンブラックのヨウ素吸着量(IA)は40mg/g以下であることが好ましく、ジブチルフタレート吸油量(DBP)は100ml/100g以下であることが好ましい。ここに、IAはASTM D1510−95、DBPはASTM D2414−97に準拠してそれぞれ測定される。
【0047】
ここで、ゴム組成物の好ましい配合例として、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムから選ばれた少なくとも一種のブチル系ゴムからなるゴム成分100重量部に対して、クレイ10〜50重量部と、カーボンブラック10〜60重量部とを配合してなるインナーライナー用ゴム組成物が好ましい。又、この場合、クレイ及びカーボンブラックの合計配合量が、50重量部以上であるものを挙げることができる。
【0048】
更に、本発明のゴム組成物にはナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマオイル、ブローンアスファルトなどの軟化剤を配合してもよい。その配合量は特に制限されず、用途に応じて適宜配合されるが、例えば、カーボンブラックの配合量と層状又は板状鉱物の配合量の合計が比較的少ない場合(ゴム成分100重量部あたり100重量部程度まで)には、ゴム成分100重量部に対して1重量部以上、特に3〜20重量部配合してもよい。ここで、ナフテン系オイルは環分析(m−d−M法)による%CNが30以上のものであり、パラフィン系オイルは%CPが60以上のものである。
【0049】
又、本実施形態に係るゴム組成物においては、層状又は板状鉱物のゴムへの分散性を向上させるために、所望により、シランカプリング剤、ジメチルステアリルアミン、トリエタノールアミンなどの分散改良剤を添加することができる。その添加量としては、ゴム成分100重量部当たり0.1〜5重量部が好ましい。
【0050】
更に、本実施形態に係るゴム組成物には有機高分子樹脂からなる有機短繊維を配合することができる。このように有機短繊維を配合することにより、インナーライナー層の厚みが薄いタイヤを製造する際に生じる可能性がある内面コード露出を効率よく抑制することができる。この有機短繊維の平均径は1〜100μmで、平均長は0.1〜0.5mm程度であることが好ましい。この有機短繊維は、短繊維と未加硫ゴム成分とをあらかじめ練って得られる複合体(以下FRRと称することがある)として配合してもよい。
【0051】
このような有機短繊維の配合量はゴム成分100重量部あたり0.3〜15重量部が好ましい。この配合量を0.3重量部以上とすることにより内面コード露出の解消効果を十分得ることができ、5重量部以下とすることにより加工性への悪影響を抑えることができる。有機短繊維の材質には特に制限はなく、例えばナイロン6,ナイ66などのポリアミド、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリエチレンなどを挙げることができるが、これらの中では、ポリアミドが好ましい。
【0052】
又、有機短繊維を配合する場合には、得られるゴム組成物のモジュラスを増大させるために、ヘキサメチレンテトラミンやレゾルシンなどのゴムと繊維との接着向上剤を更に配合することができる。
【0053】
本実施形態に係るゴム組成物には、前述した配合剤以外にも、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを本発明の目的が損なわれない範囲で配合させることができる。
【0054】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常の方法で製造することができる。つまり、ゴム成分、層状又は板状鉱物、及び、必要に応じ適宜選択された充填剤や配合剤を、混練機を用いて混練する。
【0055】
層状又は板状鉱物とカーボンブラックなどの充填剤の総配合量が多い場合(たとえば100重量部を超える場合)は、まず、ゴム成分、層状又は板状鉱物とカーボンブラックなどの充填剤、加硫剤を除いたその他の配合剤を高温にて十分に混練し、次に、加硫剤を加えて低温にて練る方法が好ましい。この場合、高温練りは、必要に応じ、2ステージ以上に分けて行なうことができる。
【0056】
又、層状又は板状鉱物とカーボンブラックなどの充填剤の総配合量が少ない場合(たとえば100重量部以下である場合)は、ゴム成分を予備練りする工程(a)を導入することにより消費電力量を低減することができ、生産性をあげることができる。この場合、予備練りしたゴム成分と層状又は板状鉱物及びその他配合剤とを混練する工程(b)において、すべての配合薬品を同時に投入し、混練を1ステージで行なうことにより、更に生産性を上げることができて好ましい。
【0057】
上記ゴム成分を予備練りする工程(a)は、前述のゴム成分のみを、バンバリーミキサーなどの混練機で素練り処理する工程である。本実施形態においては、この素練り処理は10秒間以上行なうことが好ましい。この素練り処理時間を10秒間以上とすることにより、続いての混練処理工程におけるローター表面に層状又は板状鉱物の凝集塊の生成を抑えることができ、良好な加硫ゴム組成物の耐空気透過性及び耐屈曲疲労性を得ることができる。又、この素練り処理時間を長くすることは生産性が低下する方向であるので、素練り処理時間は10〜60秒間の範囲がより好ましい。又、この予備練り工程を施さずに混練工程を1ステージで行なうと、層状又は板状無機充填材の凝集塊がローター表面で生成し易くなり、加硫ゴム組成物の耐空気透過性及び耐屈曲疲労性が十分得られないことがある。
【0058】
一方、混練処理工程(b)は、素練り処理されたゴム成分に、前述の層状又は板状無機充填材とカーボンブラック及びその他配合剤を加え、混練処理する工程である。この混練工程を1ステージで行なう場合には、混練処理を1〜4分間とすることが好ましい。この混練処理時間が1分間未満では充填材の分散が不充分となるおそれがあり、又4分間を超えると混練処理中に加硫が一部始まり、加硫ゴム組成物の耐空気透過性や耐屈曲疲労性が低下する原因となる。
【0059】
又、この混練処理を1ステージで行なう場合には、混練終了時のゴム組成物の温度を130℃以下に制御することが好ましい。この温度が130℃を超えると混練処理中に加硫が起こり、加硫ゴム組成物の耐空気透過性や耐屈曲疲労性が低下するおそれが生じる。
【0060】
このような方法によると、充填材の分散性が良好で、耐空気透過性、耐屈曲疲労性、低温耐久性などに優れるゴム組成物を生産性よく製造することができる。
【0061】
混練機の種類は特に制限されず、バンバリーミキサー、インターミックスなどの密閉式混練機、ロールミキサーなど、通常ゴム業界で用いられるものから適宜選択することができるが、密閉式混練機が好ましい。
【0062】
このようにして得られた本発明のゴム組成物は、タイヤのインナーライナー用ゴム組成物として好適に用いられる。このゴム組成物は加硫後の−20℃、歪振幅0.1%下での動的弾性率が、800MPa以下であることが好ましく、更に好ましくは600MPa以下である。
【0063】
又、本実施形態に係る空気入りタイヤは、前述のゴム組成物をインナーライナー層に用いて通常の方法によって製造される。即ち、必要に応じて上記のような各種薬品を配合して得られる本発明のゴム組成物を未加硫のステージでインナーライナー用部材として押出し加工し、従来の製造工程により成形、加工する。本実施形態に係るゴム組成物をインナーライナー層に用いることにより、インナーライナー層の厚みが薄いタイヤ、つまり、インナーライナー層が薄ゲージ化されたタイヤを容易に製造することができる。
【0064】
図11は、本実施形態に係るゴム組成物により得られるインナーライナー層を備えたタイヤの部分断面を模式的に例示する図面である。図中、インナーライナー層11中に分散した層状又は板状鉱物の粒子12は、その面がインナーライナー層の厚さ方向と交差する向き(即ち、インナーライナー層の面と平行もしくは平行に近い向き)に配向している。矢印はタイヤ内部からカーカス層への空気の流れ(エア漏れ)である。インナーライナー層を通過しようとする空気が、層状又は板状鉱物粒子の存在によって迂回を強いられインナーライナー層を通過するまでの距離が長くなっている状態を示す。
【0065】
このように、本実施形態に係るゴム組成物により得られるインナーライナー層においては、ゴム組成物中に配合された層状又は板状鉱物が一定方向に配向する結果、タイヤ内部からの空気の通過を妨げ、低い空気透過性が達成されるものと考えられる。しかし、従来インナーライナー用ゴムに使用されてきたクレイなどのようにアスペクト比が大きいものを用いると、ゴム混練時に均一な分散が困難となり、凝集塊を生じる。この凝集塊が加硫ゴム組成物中で破壊核となってインナーライナー層の耐屈曲性や低温耐久性の低下を招き、タイヤ全体の耐久性を損なうことになってしまう。本実施形態においては、3以上30未満という特定のアスペクト比を有する板状又は層状鉱物を選択することにより、耐屈曲性や低温耐久性を損なうことなく空気透過性を低減させることが可能となった。更に、補強性充填剤としてのカーボンブラックを併用し、それぞれの、及び、その合計の配合量を一定に調整することにより、その効果を更に大きくすることができる。
【0066】
又、インナーライナー層11の厚みDはタイヤサイズに応じ適宜変えることができ、通常0.2〜2.5mmの範囲で用いられるが、好ましい範囲は、乗用車用タイヤでは0.2〜1.2mm、トラック・バス用タイヤでは0.8〜2.5mm、航空機用タイヤでは1〜2mmである。尚、タイヤ内部に充填する気体としては空気、窒素などが挙げられる。
【0067】
(作用及び効果)
本実施形態に係る空気入りタイヤは、カーカスプライの各巻返し部分に、ビードコアの周面に沿ってそれに巻付く巻込み部と、ゴム成分に、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層とを備える。
【0068】
カーカスプライが巻込み部を有することにより、カーカスプライ及びワイヤチェファ外端の、ゴム質からのセパレーションやプライコードの引抜けを有効に防止することができる。又、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層を有することにより、従来のブチル系ゴム配合のゴム組成物に比べ、耐空気透過性が著しく向上すると共に、ビード周りのゴム物性劣化を抑制して、ビード部耐久性を向上させることができる。又、加工性が向上し、タイヤ製造時における未加硫時のシート切れ性や穴空き性も改良される。又、このゴム組成物をインナーライナー用ゴムに用いた空気入りタイヤは、タイヤ内圧を保持しつつ、インナーライナー用ゴムの薄ゲージ化によるタイヤの軽量化が可能である。又、本実施形態に係るゴム組成物の製造方法によれば、層状又は板状無機充填材を含むゴム組成物を、物性を損なうことなく、生産性良く得ることができる。
【0069】
このように、カーカスプライが巻込み部を有し、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層を備えることにより、飛躍的にビード部耐久性を向上させることができる。
【0070】
又、ゴム成分は、ブチル系ゴム40〜100重量%とジエン系ゴム60重量%以下とを含有するとともに、層状又は板状鉱物の配合量A(ゴム成分100重量部に対する配合重量部)は、インナーライナー層の厚みをD(mm)としたとき、1<A×D<200 ・・・(I)を満たすことが好ましい。
【0071】
ブチル系ゴム40〜100重量%とジエン系ゴム60重量%以下とを含有するゴム組成物は、二輪車用、乗用車用、トラック用、バス用などに好適に使用され、(I)式を満たす配合量とすることにより、耐空気透過性の良好な改良効果が得られる。
【0072】
又、ゴム成分は、ジエン系ゴム60〜100重量%を含有することが好ましい。
【0073】
ジエン系ゴム60〜100重量%を含有するゴム組成物は、航空機用タイヤや極低温条件で使用されるトラック・バス用タイヤに好適に使用される。
【0074】
又、ブチル系ゴムは、ハロゲン化ブチルゴムを含むことが好ましい。
【0075】
又、層状又は板状鉱物は、カオリン質クレイ又はセリサイト質クレイを含むことが好ましい。
【0076】
又、層状又は板状鉱物は、シリカ及びアルミナの含水複合体を含むことが好ましい。
【0077】
又、インナーライナー層は、ゴム成分100重量部に対して窒素吸着比面積(N2SA)が26〜170m2/gのカーボンブラック0.1〜40重量部と、軟化剤1重量部以上とを配合したゴム組成物からなることが好ましい。
【0078】
又、層状又は板状鉱物の配合量は、ゴム成分100重量部に対して20〜160重量部であり、かつ該鉱物とカーボンブラックとの合計量は60〜220重量部であることが好ましい。
【0079】
又、インナーライナー層は、ブチル系ゴムから選ばれた少なくとも一種からなるゴム成分100重量部に対して、クレイ10〜50重量部と、カーボンブラック10〜60重量部とを配合したゴム組成物からなることが好ましい。
【0080】
又、クレイ及びカーボンブラックの合計配合量が、50重量部以上であることが好ましい。
【0081】
又、カーボンブラックのヨウ素吸着量が40mg/g以下であり、かつ、ジブチルフタレート吸油量が100ml/100g以下であることが好ましい。
【0082】
又、ハロゲン化ブチルゴムが、臭素化ブチルゴム及び塩素化ブチルゴムから選ばれた少なくとも一種のゴムであることが好ましい。
【実施例】
【0083】
次に、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0084】
本発明の効果を確かめるため、実施例1〜2及び比較例1〜7に係る空気入りタイヤを試作した。尚、各供試タイヤのサイズは、TBR285/60 R22.5であった。表1に、各供試タイヤのインナーライナー層に用いられるゴム組成物の配合組成を示す。
【表1】
【0085】
*2:「Enjay Butyl HT10−66」(エンジェイケミカル社製、商標)
*3:イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体のハロゲン化物(エクソン社製 商標「EXPRO50」)
*4:FRR(宇部興産(株)製 商標:「HE 0100」、天然ゴム:ナイロン短繊維=2:1(重量比))
*5:ナイロン6短繊維(ユニチカ(株)製 短繊維(平均径:3.3dtex、平均長:1mm))
*7:扁平クレイ(J.M.Huber社製 商標:「POLYFIL DL」(アスペクト比:10))(扁平クレイとは、カオリンクレイのアスペクト比が大きいもの)
*8:Si69;商標、デクサ社製
*9:分散改良剤(ジメチルステアリルアミン、花王(株)製 商標「DM80」)
各種試験の測定は、下記の方法に従って行った。
【0086】
(1)加硫ゴム組成物の耐空気透過性
JIS K7126−1987「プラスチックスフィルム及びシートの気体透過度試験方法」のA法(差圧式)により、インナーライナー層に用いられたゴム組成物の空気透過係数を測定し、その逆数を取って、比較例1を100とする指数値で示した。この値が大きいほど耐空気透過性は良好である。
【0087】
(2)ビード部耐発熱性
各供試タイヤを9.00×22.5のリムに装着し、最高空気圧を充填するとともに、最大負荷能力の2倍に相当する荷重を負荷したドラム上走行試験において、ドラム走行開始から2時間後に、プライ端付近の温度を、熱電対にて測定し、比較例1を100とする指数値で示した。この値が小さいほど耐発熱性は良好である。
【0088】
(3)タイヤ重量
比較例1を100とする指数値で示した。この値が小さいほどタイヤ重量が軽い。
【0089】
(4)プライ端酸素濃度
プライ端近傍のコーティングゴム中の酸素濃度を測定し、比較例1を100とする指数値で示した。尚、測定は、酸素劣化2ヶ月後において行った。
【0090】
(5)ドラム耐久性
各供試タイヤを9.00×22.5のリムに装着し、最高空気圧を充填するとともに、最大負荷能力の2倍に相当する荷重を負荷したドラム上走行試験において、ビード部故障(プライ端またはワイヤチェファ端のセパレーション)もしくはゴムチェファクラック等によって走行不能になるまでの走行距離を測定し、比較例1を100とする指数値で示した。この値が大きいほどドラム耐久性は良好である。尚、測定は、酸素を規定内圧までタイヤに充填し、60℃の恒温庫中に2ヶ月間静的に放置した。
【0091】
実施例1〜2及び比較例1〜7の測定条件及び結果を表2に示す。
【表2】
【0092】
(結果)
実施例1及び実施例2は、比較例1〜3と比較すると、ビード部発熱温度が低く、タイヤ重量が軽く、ビード部耐久性が向上することが分かった。このため、巻込み部7を有する空気入りタイヤは、ビード部耐久性が向上することが確認できた。
【0093】
又、実施例1は、比較例4及び5と比較すると、ビード部耐久性が向上することが分かった。このため、インナーライナー層に扁平クレイを有する空気入りタイヤは、ビード部耐久性が向上することが確認できた。
【0094】
同様に、実施例2は、比較例6及び7と比較すると、ビード部耐久性が向上することが分かった。このため、インナーライナー層に扁平クレイを有する空気入りタイヤは、ビード部耐久性が向上することが確認できた。
【0095】
従って、カーカスプライが巻込み部を有し、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層を備えることにより、飛躍的にビード部耐久性が向上することが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ回転軸を含む断面図である。
【図2】本実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ回転軸を含む他の断面図である。
【図3】図1のビードコアの拡大断面図である。
【図4】本実施形態に係る空気入りタイヤの要部横断面図である(その1)。
【図5】本実施形態に係る空気入りタイヤの要部横断面図である(その2)。
【図6】本実施形態に係る空気入りタイヤの要部横断面図である(その3)。
【図7】本実施形態に係る空気入りタイヤの要部横断面図である(その4)。
【図8】本実施形態に係る空気入りタイヤの要部横断面図である(その5)。
【図9】本実施形態に係る空気入りタイヤの要部横断面図である(その6)。
【図10】アスペクト比を説明するための図面である。
【図11】本実施形態に係るインナーライナー層中の層状又は板状鉱物の状態を模式的に示す図面である。
【図12】従来のビード部構造を例示する横断面図である。
【図13】ビード部クラックの発熱態様を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1…トレッド部、2…サイドウォール部、3…ビード部、3a…ビードベース、4…ビードコア、5…カーカスプライ、6…巻返し部分、7…巻込み部、8…ワイヤチェファ、9…ビードフィラ、10…突出先端部、11…インナーライナー層、12…層状又は板状鉱物の粒子、R…リム、Rf…リムフランジ、ct…接触域
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関し、特に、プライコードの引抜け、カーカスプライの巻返し部分へのセパレーションの発生等を有効に防止し、更に充填剤に扁平クレイを用いたインナーライナー層を適用することでタイヤ重量を維持したままビード周りのゴム物性劣化を抑制して、ビード部耐久性を向上させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的な重荷重用空気入りラジアルタイヤでは、タイヤの負荷転動に際するプライコードの引抜けを防止すべく、カーカスプライをビード部のビードコアの周りで、タイヤ半径方向の内側から外側へ大きく巻返し、その巻返し部分をゴム質中に埋込み固定することとしている。
【0003】
図12は、これを例示するビード部の略線横断面図である。図12(a)では、カーカスプライ31の巻返し部分31aの外端を、ワイヤチェファ32の同様の外端より半径方向外側に位置させ、図12(b)では、カーカスプライ巻返し部分31の外端より、ワイヤチェファ32の巻返し外端を半径方向外側に位置させている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
一方、スティフナーゴムの耐劣化性向上に関しては、酸素濃度増加抑制のため、インナーライナー層のゲージアップが特に有効である(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2002−321289号公報
【特許文献2】特開2003−165303号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述したような従来のビード部構造にあっては、カーカスプライ31の巻返し外端位置、又は、ワイヤチェファ32の外端位置を境として、タイヤ半径方向の内外側に剛性段差を生じることになるので、タイヤの負荷転動時に、ビード部からサイドウォール部にかけての繰返しの変形によって、各外端及びその近傍に応力が集中する。このため、その外端の、ゴム質からのセパレーションが発生し易く、このセパレーションが、図13(a)、(b)に示すようなビード部クラックcrの原因になるという問題があった。
【0006】
そこで、カーカスプライ31の巻返し部分の外端もしくは、ワイヤチェファ32の外端及びその近傍に生じる応力を緩和し、併せて、ビード部の剛性を高めて、そのビード部の変形を抑制することを目的に、ビードコア33の周りで、図示しない複数枚の有機繊維コード層をワイヤチェファ32に外接させて配置して、これらの有機繊維コード層で、前述した、カーカスプライ31の巻返し外端又は、ワイヤチェファ32の外端を覆ったり、ビードコア33の半径方向外側で、カーカスプライ31の本体部分と、巻返し部分31aとの間に配置するゴムステイフナ34、なかでも硬ゴムスティフナーの量を増やしたりすることが提案されている。しかし、これらによれば、タイヤの負荷転動時に、ビード部の発熱温度が一層高くなることにより、前述したセパレーションの発生に加えて、有機繊維コード層の外端にもセパレーションが発生するという問題があった他、タイヤ重量が増加し、タイヤの生産性が低下するという他の問題もあった。
【0007】
一方、上述したように、スティフナーゴムの耐劣化性向上に関しては、従来、インナーライナー層のゲージアップが特に有効であったが、ゲージアップすることにより、タイヤ重量が増加するため、走行時にケースゴム温度の上昇を引き起こす。その結果、ケースゴムの空気(酸素)増加速度が上がり、ビード周りのゴム物性劣化につながるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、タイヤ重量の増加、タイヤの生産性の低下等を来すことなく、カーカスプライ及びワイヤチェファ外端の、ゴム質からのセパレーションやプライコードの引抜けを有効に防止するとともに、ビード周りのゴム物性劣化を抑制して、ビード部耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の特徴は、スチールコードからなる少なくとも一枚のカーカスプライを、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部までトロイダルに延在させるとともに、各ビード部に埋設したビードコアの周りで、タイヤ半径方向の内側から外側へ巻返してなる空気入りタイヤにおいて、カーカスプライの各巻返し部分に、ビードコアの周面に沿ってそれに巻付く巻込み部と、ゴム成分に、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層とを備える空気入りタイヤであることを要旨とする。
【0010】
又、ゴム成分は、ブチル系ゴム40〜100重量%とジエン系ゴム60重量%以下とを含有するとともに、層状又は板状鉱物の配合量A(ゴム成分100重量部に対する配合重量部)は、インナーライナー層の厚みをD(mm)としたとき、1<A×D<200 ・・・(I)を満たすことが好ましい。
【0011】
又、ゴム成分は、ジエン系ゴム60〜100重量%を含有することが好ましい。
【0012】
又、ブチル系ゴムは、ハロゲン化ブチルゴムを含むことが好ましい。
【0013】
又、層状又は板状鉱物は、カオリン質クレイ又はセリサイト質クレイを含むことが好ましい。
【0014】
又、層状又は板状鉱物は、シリカ及びアルミナの含水複合体を含むことが好ましい。
【0015】
又、インナーライナー層は、ゴム成分100重量部に対して窒素吸着比面積(N2SA)が26〜170m2/gのカーボンブラック0.1〜40重量部と、軟化剤1重量部以上とを配合したゴム組成物からなることが好ましい。
【0016】
又、層状又は板状鉱物の配合量は、ゴム成分100重量部に対して20〜160重量部であり、かつ該鉱物とカーボンブラックとの合計量は60〜220重量部であることが好ましい。
【0017】
又、インナーライナー層は、ブチル系ゴムから選ばれた少なくとも一種からなるゴム成分100重量部に対して、クレイ10〜50重量部と、カーボンブラック10〜60重量部とを配合したゴム組成物からなることが好ましい。
【0018】
又、クレイ及びカーボンブラックの合計配合量が、50重量部以上であることが好ましい。
【0019】
又、カーボンブラックのヨウ素吸着量が40mg/g以下であり、かつ、ジブチルフタレート吸油量が100ml/100g以下であることが好ましい。
【0020】
又、ハロゲン化ブチルゴムが、臭素化ブチルゴム及び塩素化ブチルゴムから選ばれた少なくとも一種のゴムであることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、タイヤ重量の増加、タイヤの生産性の低下等を来すことなく、カーカスプライ及びワイヤチェファ外端の、ゴム質からのセパレーションやプライコードの引抜けを有効に防止するとともに、ビード周りのゴム物性劣化を抑制して、ビード部耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0023】
(空気入りタイヤの構造)
本実施形態に係る空気入りタイヤは、図1に示すように、トレッド部1と、トレッド部1に連続するサイドウォール部2と、サイドウォール部2の半径方向内側に連なるビード部3と、ビード部3に埋設した、横断面形状が六角形をなすビードコア4と、インナーライナー層11とを備える。
【0024】
ここでは、タイヤ赤道面に対して実質的に90°の角度で延在させた、強力が80〜300kgfの範囲、より好ましくは、100〜180kgfの範囲のスチールコードをプライコードとし、このプライコードからなる一枚のカーカスプライ5を、トレッド部1からサイドウォール部2を経てビード部3までトロイダルに延在させるとともに、ビードコア4の周りで、タイヤ半径方向の内側から外側へ巻返す。
【0025】
この巻返し態様としては、図1に示すように、タイヤ幅方向の内側から外側へ巻返す場合の他、図2に示すように、タイヤ幅方向の外側から内側へ巻返す場合があり、これらのいずれにあっても、カーカスプライの巻返し部分6は、ビードコア4の周面に沿ってそれに巻付く巻込み部7を有する。
【0026】
図1及び図2に示すそれぞれの巻込み部7はともに、ビードコア4の横断面輪郭形状と対応させて予め設けた三個所の塑性変形部P1、P2、P3を有する。この塑性変形部P1、P2、P3によって、特に巻込み部7の先端側部分で、ビードコア4の周面に十分近接し、かつ正確に倣ってビードコア4に巻付くこととなる。又、巻込み部7はいずれも、ビードコア4の断面輪郭の半周、例えば、そのビードコア4の、ビードベース3a側の半周を越えてビードコア周面に沿って延び、なかでも図1に示す巻込み部7の先端は、これに加えて、空気圧を充填したタイヤのリム組み姿勢で、ビードコア4の外周縁位置を越えて、それよりタイヤ幅方向内側に位置する。尚、ワイヤチェファ8は、ビードコア4の周りで、カーカスプライ5に外接させて配置される。
【0027】
このように構成されたタイヤでは、巻返し部分6に巻込み部7を設けたことにより、プライコードの引抜けを有効に防止して、併せて、ビードコア4及びリムRの作用の下で、その巻返し部分6のセパレーションを有効に防止することができる。
【0028】
加えて、プライコードの引抜けがこのようにして有効に防止されることの当然の帰結として、ワイヤチェファ8を必須の構成部材とする場合にあっても、その半径方向外端を、十分内周側に位置させることができ、これにより、その外端及びその近傍での変形量が少なくなるので、ワイヤチェファ外端のセパレーションのおそれも又効果的に除去されることになる。
【0029】
ここで、空気入りタイヤのこのような効果を担保するためには、図3に示すように、図1のビードコア4の断面図において、巻込み部7の先端を、ビードベース3aから離れた三辺a、b、cのいずれかの上に位置させることが好ましい。より好ましくは、その配設範囲を、辺aと辺bとの交点位置から、それらの各辺長の2/3の長さの範囲とする。
【0030】
又、図1及び図2に示す巻込み部7を、ビードコア4とビードフィラ9との間に挟み込むことで、その巻込み部7に対する拘束力を高めており、これによれば、上述した効果を一層高めることができる。
【0031】
ところで、巻込み部7をこのように挟み込むに当たって、巻返し部分6が、その巻込み部7の先端側に、図4に示すように、カーカスプライ5の本体部分に沿ってタイヤ半径方向外側へ延びてビードコア4から離隔する突出端部10を有する場合には、その突出部10を上述した挟み込みから解放することもできる。
【0032】
そして又、巻返し部6がこのような突出先端部10を有する場合には、その先端部10の先端を、ビード部3のリムフランジRfとの接触域ctの外周縁より半径方向内側に位置させることが好ましく、これによれば、タイヤの負荷転動に際する、先端及びその近傍の変形を、リムフランジRfによって有効に拘束することができる。
【0033】
以上、巻込み部7に三個所の塑性変形部P1、P2、P3を設ける場合について説明したが、このような塑性変形部は、図5に示すように一箇所(P1)とすることもでき、図6に示すように二個所(P1、P2)とすることもできる。更に、図7に示すような四個所(P1、P2、P3、P4)とすることもできる。
【0034】
ここで、四個所の塑性変形部P1、P2、P3 、P4を設ける場合において、図7に示すように、巻込み部7の先端部分をカーカスプライ本体部分とビードコア4との間に挟み込むときには、巻込み部7に対する拘束をとくに強めることができ、又、図8に示すように、巻込み部7の先端に、タイヤ幅方向外側に向けて折返した折返し部11を付設したときには、プライ端部に引っ張り歪が発生しないため、より引抜けにくく、又亀裂も発生しにくい。
【0035】
尚、図1〜図8において、横断面形状が六角形をなすビードコア4を例示したが、本実施形態に係る空気入りタイヤはこれに限らず、例えば、図9(a)に示すように、硬質ゴムにプレートビードを埋め込んだものに巻込み部を巻き付けた構造でもよく、図9(b)に示すように、丸ビードに巻込み部を巻き付けた構造でもよい。
【0036】
このように、本実施形態に係る空気入りタイヤでは、カーカスプライ5の巻返し部分6に、ビードコア4の周面に沿ってそれに巻付く巻込み部7を設けることで、その巻込み部7、ひいては、巻返し部分6のセパレーションを防止するとともに、プライコードの引抜けを防止することができる。又ビード部3の補強層数を有利に低減させて、ビード部3の発熱を抑制するとともに、タイヤ重量を軽減させることができ、併せて、タイヤの生産性を高めることができる。ところで、ワイヤチェファ8の半径方向外端へのセパレーションの発生は、プライコードの引抜けの心配がないことに基づき、ワイヤチェファの高さを低く設定することで十分に防止することができる。
【0037】
(インナーライナー用ゴム組成物)
次に、本実施形態に係る空気入りタイヤのインナーライナー層11に用いるゴム組成物について説明する。
【0038】
本実施形態に係るインナーライナー用ゴム組成物においては、ゴム成分に、アスペクト比が3以上、30未満の層状又は板状鉱物が配合される。本実施形態に係るゴム組成物において用いられるゴム成分としては、ブチル系ゴム及びジエン系ゴムのいずれも用いることができるが、ブチル系ゴムを用いる場合はハロゲン化ブチルゴムを含むものが好ましい。このハロゲン化ブチルゴムとしては、塩素化ブチルゴム,臭素化ブチルゴム及びその変性ゴムなどが含まれる。例えば塩素化ブチルゴムとしては「Enjay Butyl HT10−66」(エンジェイケミカル社製,商標)があり、臭素化ブチルゴムとしては「ブロモブチル2255」(エクソン社製、商標)がある。又、変性ゴムとしてイソモノオレフィンとパラメチルスチレンとの共重合体の塩素化又は臭素化変性共重合体を用いることができ、例えば「Expro50」(エクソン社製,商標)などとして入手可能である。このようなハロゲン化ブチルゴムとブレンドされるジエン系ゴムとしては、例えば天然ゴム,イソプレン合成ゴム(IR)、シス1,4−ポリブタジエン(BR)、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン(1,2BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)などが挙げられ、これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせてもよい。
【0039】
上記ゴム成分は、耐空気透過性の点からは、ブチル系ゴム40〜100重量%とジエン系ゴム60重量%以下であることが好ましく、このゴム成分からなるゴム組成物は、二輪車用、乗用車用、トラック用、バス用などに好適に使用される。
【0040】
又、特に航空機用タイヤや極低温条件で使用されるトラック・バス用タイヤに適用する場合には、ゴム成分としては、ジエン系ゴムを60〜100重量%含むものが好ましく、特に天然ゴム主体のゴム成分が好ましい。
【0041】
次に、本発明のゴム組成物に配合される層状又は板状鉱物は、天然品、合成品のいずれも適用され、アスペクト比が3以上30未満であれば特に限定はなく、例えばカオリン、クレイ、マイカ、長石、シリカ及びアルミナの含水複合体などが挙げられる。これらの中ではカオリン質クレイ及びマイカが好ましく、特にカオリン質クレイが好ましい。これら層状又は板状鉱物の粒径は0.2〜2μmのものが好ましく用いられるが、特にアスペクト比は5以上30未満であることが好ましく、更に8〜20であることが好ましい。アスペクト比を3以上とすることにより耐空気透過性の改質効果が充分に得られ、30未満とすることにより加工性の悪化を抑えることができる。
【0042】
ここで、「アスペクト比」は、無機充填剤を電子顕微鏡で観察し、任意の粒子50個について長径と短径を測定し、その平均長径aと平均短径bとよりa/bとして求められる。図10に、単位粒子の長径と短径を説明するための模式図を示す。
【0043】
又、本実施形態において、層状又は板状鉱物の配合量A(ゴム成分100重量部に対する配合重量部)は、インナーライナー層の厚みをD(mm)としたとき、次式(I)
1<A×D<200 ・・・(I)
を満足する量であることが好ましい。この配合量の範囲で、耐空気透過性の良好な改良効果が得られる。
【0044】
層状又は板状鉱物の配合量は、ゴム成分100重量部に対して10〜200重量部、特に20〜160重量部が好ましい。又、ゴム組成物において用いられるカーボンブラックは、ゴム成分100重量部に対して0〜60重量部、更に0〜40重量部が好ましく、特に5〜35重量部であることが好ましい。
【0045】
更に、層状又は板状鉱物とカーボンブラックとの合計量としては、50重量部以上が好ましいが、特に耐空気透過性、耐屈曲疲労性及び加工性を考慮して60〜220重量部であることが好ましい。
【0046】
カーボンブラックの種類は特に制限はなく、従来ゴム組成物の補強用充填剤として慣用されているものの中から任意のものを適宜選択して用いることができ、例えばFEF、SRF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられる。これらの中では窒素吸着比面積(N2SA)が26〜170m2/gのものが好ましい。尚、N2SAはASTMD3037−88に準拠して測定される。更に、カーボンブラックのヨウ素吸着量(IA)は40mg/g以下であることが好ましく、ジブチルフタレート吸油量(DBP)は100ml/100g以下であることが好ましい。ここに、IAはASTM D1510−95、DBPはASTM D2414−97に準拠してそれぞれ測定される。
【0047】
ここで、ゴム組成物の好ましい配合例として、ブチルゴム及びハロゲン化ブチルゴムから選ばれた少なくとも一種のブチル系ゴムからなるゴム成分100重量部に対して、クレイ10〜50重量部と、カーボンブラック10〜60重量部とを配合してなるインナーライナー用ゴム組成物が好ましい。又、この場合、クレイ及びカーボンブラックの合計配合量が、50重量部以上であるものを挙げることができる。
【0048】
更に、本発明のゴム組成物にはナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマオイル、ブローンアスファルトなどの軟化剤を配合してもよい。その配合量は特に制限されず、用途に応じて適宜配合されるが、例えば、カーボンブラックの配合量と層状又は板状鉱物の配合量の合計が比較的少ない場合(ゴム成分100重量部あたり100重量部程度まで)には、ゴム成分100重量部に対して1重量部以上、特に3〜20重量部配合してもよい。ここで、ナフテン系オイルは環分析(m−d−M法)による%CNが30以上のものであり、パラフィン系オイルは%CPが60以上のものである。
【0049】
又、本実施形態に係るゴム組成物においては、層状又は板状鉱物のゴムへの分散性を向上させるために、所望により、シランカプリング剤、ジメチルステアリルアミン、トリエタノールアミンなどの分散改良剤を添加することができる。その添加量としては、ゴム成分100重量部当たり0.1〜5重量部が好ましい。
【0050】
更に、本実施形態に係るゴム組成物には有機高分子樹脂からなる有機短繊維を配合することができる。このように有機短繊維を配合することにより、インナーライナー層の厚みが薄いタイヤを製造する際に生じる可能性がある内面コード露出を効率よく抑制することができる。この有機短繊維の平均径は1〜100μmで、平均長は0.1〜0.5mm程度であることが好ましい。この有機短繊維は、短繊維と未加硫ゴム成分とをあらかじめ練って得られる複合体(以下FRRと称することがある)として配合してもよい。
【0051】
このような有機短繊維の配合量はゴム成分100重量部あたり0.3〜15重量部が好ましい。この配合量を0.3重量部以上とすることにより内面コード露出の解消効果を十分得ることができ、5重量部以下とすることにより加工性への悪影響を抑えることができる。有機短繊維の材質には特に制限はなく、例えばナイロン6,ナイ66などのポリアミド、シンジオタクチック−1,2−ポリブタジエン、アイソタクチックポリプロピレン、ポリエチレンなどを挙げることができるが、これらの中では、ポリアミドが好ましい。
【0052】
又、有機短繊維を配合する場合には、得られるゴム組成物のモジュラスを増大させるために、ヘキサメチレンテトラミンやレゾルシンなどのゴムと繊維との接着向上剤を更に配合することができる。
【0053】
本実施形態に係るゴム組成物には、前述した配合剤以外にも、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを本発明の目的が損なわれない範囲で配合させることができる。
【0054】
本実施形態に係るゴム組成物は、通常の方法で製造することができる。つまり、ゴム成分、層状又は板状鉱物、及び、必要に応じ適宜選択された充填剤や配合剤を、混練機を用いて混練する。
【0055】
層状又は板状鉱物とカーボンブラックなどの充填剤の総配合量が多い場合(たとえば100重量部を超える場合)は、まず、ゴム成分、層状又は板状鉱物とカーボンブラックなどの充填剤、加硫剤を除いたその他の配合剤を高温にて十分に混練し、次に、加硫剤を加えて低温にて練る方法が好ましい。この場合、高温練りは、必要に応じ、2ステージ以上に分けて行なうことができる。
【0056】
又、層状又は板状鉱物とカーボンブラックなどの充填剤の総配合量が少ない場合(たとえば100重量部以下である場合)は、ゴム成分を予備練りする工程(a)を導入することにより消費電力量を低減することができ、生産性をあげることができる。この場合、予備練りしたゴム成分と層状又は板状鉱物及びその他配合剤とを混練する工程(b)において、すべての配合薬品を同時に投入し、混練を1ステージで行なうことにより、更に生産性を上げることができて好ましい。
【0057】
上記ゴム成分を予備練りする工程(a)は、前述のゴム成分のみを、バンバリーミキサーなどの混練機で素練り処理する工程である。本実施形態においては、この素練り処理は10秒間以上行なうことが好ましい。この素練り処理時間を10秒間以上とすることにより、続いての混練処理工程におけるローター表面に層状又は板状鉱物の凝集塊の生成を抑えることができ、良好な加硫ゴム組成物の耐空気透過性及び耐屈曲疲労性を得ることができる。又、この素練り処理時間を長くすることは生産性が低下する方向であるので、素練り処理時間は10〜60秒間の範囲がより好ましい。又、この予備練り工程を施さずに混練工程を1ステージで行なうと、層状又は板状無機充填材の凝集塊がローター表面で生成し易くなり、加硫ゴム組成物の耐空気透過性及び耐屈曲疲労性が十分得られないことがある。
【0058】
一方、混練処理工程(b)は、素練り処理されたゴム成分に、前述の層状又は板状無機充填材とカーボンブラック及びその他配合剤を加え、混練処理する工程である。この混練工程を1ステージで行なう場合には、混練処理を1〜4分間とすることが好ましい。この混練処理時間が1分間未満では充填材の分散が不充分となるおそれがあり、又4分間を超えると混練処理中に加硫が一部始まり、加硫ゴム組成物の耐空気透過性や耐屈曲疲労性が低下する原因となる。
【0059】
又、この混練処理を1ステージで行なう場合には、混練終了時のゴム組成物の温度を130℃以下に制御することが好ましい。この温度が130℃を超えると混練処理中に加硫が起こり、加硫ゴム組成物の耐空気透過性や耐屈曲疲労性が低下するおそれが生じる。
【0060】
このような方法によると、充填材の分散性が良好で、耐空気透過性、耐屈曲疲労性、低温耐久性などに優れるゴム組成物を生産性よく製造することができる。
【0061】
混練機の種類は特に制限されず、バンバリーミキサー、インターミックスなどの密閉式混練機、ロールミキサーなど、通常ゴム業界で用いられるものから適宜選択することができるが、密閉式混練機が好ましい。
【0062】
このようにして得られた本発明のゴム組成物は、タイヤのインナーライナー用ゴム組成物として好適に用いられる。このゴム組成物は加硫後の−20℃、歪振幅0.1%下での動的弾性率が、800MPa以下であることが好ましく、更に好ましくは600MPa以下である。
【0063】
又、本実施形態に係る空気入りタイヤは、前述のゴム組成物をインナーライナー層に用いて通常の方法によって製造される。即ち、必要に応じて上記のような各種薬品を配合して得られる本発明のゴム組成物を未加硫のステージでインナーライナー用部材として押出し加工し、従来の製造工程により成形、加工する。本実施形態に係るゴム組成物をインナーライナー層に用いることにより、インナーライナー層の厚みが薄いタイヤ、つまり、インナーライナー層が薄ゲージ化されたタイヤを容易に製造することができる。
【0064】
図11は、本実施形態に係るゴム組成物により得られるインナーライナー層を備えたタイヤの部分断面を模式的に例示する図面である。図中、インナーライナー層11中に分散した層状又は板状鉱物の粒子12は、その面がインナーライナー層の厚さ方向と交差する向き(即ち、インナーライナー層の面と平行もしくは平行に近い向き)に配向している。矢印はタイヤ内部からカーカス層への空気の流れ(エア漏れ)である。インナーライナー層を通過しようとする空気が、層状又は板状鉱物粒子の存在によって迂回を強いられインナーライナー層を通過するまでの距離が長くなっている状態を示す。
【0065】
このように、本実施形態に係るゴム組成物により得られるインナーライナー層においては、ゴム組成物中に配合された層状又は板状鉱物が一定方向に配向する結果、タイヤ内部からの空気の通過を妨げ、低い空気透過性が達成されるものと考えられる。しかし、従来インナーライナー用ゴムに使用されてきたクレイなどのようにアスペクト比が大きいものを用いると、ゴム混練時に均一な分散が困難となり、凝集塊を生じる。この凝集塊が加硫ゴム組成物中で破壊核となってインナーライナー層の耐屈曲性や低温耐久性の低下を招き、タイヤ全体の耐久性を損なうことになってしまう。本実施形態においては、3以上30未満という特定のアスペクト比を有する板状又は層状鉱物を選択することにより、耐屈曲性や低温耐久性を損なうことなく空気透過性を低減させることが可能となった。更に、補強性充填剤としてのカーボンブラックを併用し、それぞれの、及び、その合計の配合量を一定に調整することにより、その効果を更に大きくすることができる。
【0066】
又、インナーライナー層11の厚みDはタイヤサイズに応じ適宜変えることができ、通常0.2〜2.5mmの範囲で用いられるが、好ましい範囲は、乗用車用タイヤでは0.2〜1.2mm、トラック・バス用タイヤでは0.8〜2.5mm、航空機用タイヤでは1〜2mmである。尚、タイヤ内部に充填する気体としては空気、窒素などが挙げられる。
【0067】
(作用及び効果)
本実施形態に係る空気入りタイヤは、カーカスプライの各巻返し部分に、ビードコアの周面に沿ってそれに巻付く巻込み部と、ゴム成分に、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層とを備える。
【0068】
カーカスプライが巻込み部を有することにより、カーカスプライ及びワイヤチェファ外端の、ゴム質からのセパレーションやプライコードの引抜けを有効に防止することができる。又、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層を有することにより、従来のブチル系ゴム配合のゴム組成物に比べ、耐空気透過性が著しく向上すると共に、ビード周りのゴム物性劣化を抑制して、ビード部耐久性を向上させることができる。又、加工性が向上し、タイヤ製造時における未加硫時のシート切れ性や穴空き性も改良される。又、このゴム組成物をインナーライナー用ゴムに用いた空気入りタイヤは、タイヤ内圧を保持しつつ、インナーライナー用ゴムの薄ゲージ化によるタイヤの軽量化が可能である。又、本実施形態に係るゴム組成物の製造方法によれば、層状又は板状無機充填材を含むゴム組成物を、物性を損なうことなく、生産性良く得ることができる。
【0069】
このように、カーカスプライが巻込み部を有し、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層を備えることにより、飛躍的にビード部耐久性を向上させることができる。
【0070】
又、ゴム成分は、ブチル系ゴム40〜100重量%とジエン系ゴム60重量%以下とを含有するとともに、層状又は板状鉱物の配合量A(ゴム成分100重量部に対する配合重量部)は、インナーライナー層の厚みをD(mm)としたとき、1<A×D<200 ・・・(I)を満たすことが好ましい。
【0071】
ブチル系ゴム40〜100重量%とジエン系ゴム60重量%以下とを含有するゴム組成物は、二輪車用、乗用車用、トラック用、バス用などに好適に使用され、(I)式を満たす配合量とすることにより、耐空気透過性の良好な改良効果が得られる。
【0072】
又、ゴム成分は、ジエン系ゴム60〜100重量%を含有することが好ましい。
【0073】
ジエン系ゴム60〜100重量%を含有するゴム組成物は、航空機用タイヤや極低温条件で使用されるトラック・バス用タイヤに好適に使用される。
【0074】
又、ブチル系ゴムは、ハロゲン化ブチルゴムを含むことが好ましい。
【0075】
又、層状又は板状鉱物は、カオリン質クレイ又はセリサイト質クレイを含むことが好ましい。
【0076】
又、層状又は板状鉱物は、シリカ及びアルミナの含水複合体を含むことが好ましい。
【0077】
又、インナーライナー層は、ゴム成分100重量部に対して窒素吸着比面積(N2SA)が26〜170m2/gのカーボンブラック0.1〜40重量部と、軟化剤1重量部以上とを配合したゴム組成物からなることが好ましい。
【0078】
又、層状又は板状鉱物の配合量は、ゴム成分100重量部に対して20〜160重量部であり、かつ該鉱物とカーボンブラックとの合計量は60〜220重量部であることが好ましい。
【0079】
又、インナーライナー層は、ブチル系ゴムから選ばれた少なくとも一種からなるゴム成分100重量部に対して、クレイ10〜50重量部と、カーボンブラック10〜60重量部とを配合したゴム組成物からなることが好ましい。
【0080】
又、クレイ及びカーボンブラックの合計配合量が、50重量部以上であることが好ましい。
【0081】
又、カーボンブラックのヨウ素吸着量が40mg/g以下であり、かつ、ジブチルフタレート吸油量が100ml/100g以下であることが好ましい。
【0082】
又、ハロゲン化ブチルゴムが、臭素化ブチルゴム及び塩素化ブチルゴムから選ばれた少なくとも一種のゴムであることが好ましい。
【実施例】
【0083】
次に、本発明を実施例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0084】
本発明の効果を確かめるため、実施例1〜2及び比較例1〜7に係る空気入りタイヤを試作した。尚、各供試タイヤのサイズは、TBR285/60 R22.5であった。表1に、各供試タイヤのインナーライナー層に用いられるゴム組成物の配合組成を示す。
【表1】
【0085】
*2:「Enjay Butyl HT10−66」(エンジェイケミカル社製、商標)
*3:イソブチレン−パラメチルスチレン共重合体のハロゲン化物(エクソン社製 商標「EXPRO50」)
*4:FRR(宇部興産(株)製 商標:「HE 0100」、天然ゴム:ナイロン短繊維=2:1(重量比))
*5:ナイロン6短繊維(ユニチカ(株)製 短繊維(平均径:3.3dtex、平均長:1mm))
*7:扁平クレイ(J.M.Huber社製 商標:「POLYFIL DL」(アスペクト比:10))(扁平クレイとは、カオリンクレイのアスペクト比が大きいもの)
*8:Si69;商標、デクサ社製
*9:分散改良剤(ジメチルステアリルアミン、花王(株)製 商標「DM80」)
各種試験の測定は、下記の方法に従って行った。
【0086】
(1)加硫ゴム組成物の耐空気透過性
JIS K7126−1987「プラスチックスフィルム及びシートの気体透過度試験方法」のA法(差圧式)により、インナーライナー層に用いられたゴム組成物の空気透過係数を測定し、その逆数を取って、比較例1を100とする指数値で示した。この値が大きいほど耐空気透過性は良好である。
【0087】
(2)ビード部耐発熱性
各供試タイヤを9.00×22.5のリムに装着し、最高空気圧を充填するとともに、最大負荷能力の2倍に相当する荷重を負荷したドラム上走行試験において、ドラム走行開始から2時間後に、プライ端付近の温度を、熱電対にて測定し、比較例1を100とする指数値で示した。この値が小さいほど耐発熱性は良好である。
【0088】
(3)タイヤ重量
比較例1を100とする指数値で示した。この値が小さいほどタイヤ重量が軽い。
【0089】
(4)プライ端酸素濃度
プライ端近傍のコーティングゴム中の酸素濃度を測定し、比較例1を100とする指数値で示した。尚、測定は、酸素劣化2ヶ月後において行った。
【0090】
(5)ドラム耐久性
各供試タイヤを9.00×22.5のリムに装着し、最高空気圧を充填するとともに、最大負荷能力の2倍に相当する荷重を負荷したドラム上走行試験において、ビード部故障(プライ端またはワイヤチェファ端のセパレーション)もしくはゴムチェファクラック等によって走行不能になるまでの走行距離を測定し、比較例1を100とする指数値で示した。この値が大きいほどドラム耐久性は良好である。尚、測定は、酸素を規定内圧までタイヤに充填し、60℃の恒温庫中に2ヶ月間静的に放置した。
【0091】
実施例1〜2及び比較例1〜7の測定条件及び結果を表2に示す。
【表2】
【0092】
(結果)
実施例1及び実施例2は、比較例1〜3と比較すると、ビード部発熱温度が低く、タイヤ重量が軽く、ビード部耐久性が向上することが分かった。このため、巻込み部7を有する空気入りタイヤは、ビード部耐久性が向上することが確認できた。
【0093】
又、実施例1は、比較例4及び5と比較すると、ビード部耐久性が向上することが分かった。このため、インナーライナー層に扁平クレイを有する空気入りタイヤは、ビード部耐久性が向上することが確認できた。
【0094】
同様に、実施例2は、比較例6及び7と比較すると、ビード部耐久性が向上することが分かった。このため、インナーライナー層に扁平クレイを有する空気入りタイヤは、ビード部耐久性が向上することが確認できた。
【0095】
従って、カーカスプライが巻込み部を有し、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層を備えることにより、飛躍的にビード部耐久性が向上することが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ回転軸を含む断面図である。
【図2】本実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ回転軸を含む他の断面図である。
【図3】図1のビードコアの拡大断面図である。
【図4】本実施形態に係る空気入りタイヤの要部横断面図である(その1)。
【図5】本実施形態に係る空気入りタイヤの要部横断面図である(その2)。
【図6】本実施形態に係る空気入りタイヤの要部横断面図である(その3)。
【図7】本実施形態に係る空気入りタイヤの要部横断面図である(その4)。
【図8】本実施形態に係る空気入りタイヤの要部横断面図である(その5)。
【図9】本実施形態に係る空気入りタイヤの要部横断面図である(その6)。
【図10】アスペクト比を説明するための図面である。
【図11】本実施形態に係るインナーライナー層中の層状又は板状鉱物の状態を模式的に示す図面である。
【図12】従来のビード部構造を例示する横断面図である。
【図13】ビード部クラックの発熱態様を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0097】
1…トレッド部、2…サイドウォール部、3…ビード部、3a…ビードベース、4…ビードコア、5…カーカスプライ、6…巻返し部分、7…巻込み部、8…ワイヤチェファ、9…ビードフィラ、10…突出先端部、11…インナーライナー層、12…層状又は板状鉱物の粒子、R…リム、Rf…リムフランジ、ct…接触域
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチールコードからなる少なくとも一枚のカーカスプライを、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部までトロイダルに延在させるとともに、各ビード部に埋設したビードコアの周りで、タイヤ半径方向の内側から外側へ巻返してなる空気入りタイヤにおいて、
カーカスプライの各巻返し部分に、ビードコアの周面に沿ってそれに巻付く巻込み部と、
ゴム成分に、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層と
を備えることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ゴム成分は、ブチル系ゴム40〜100重量%とジエン系ゴム60重量%以下とを含有するとともに、前記層状又は板状鉱物の配合量A(ゴム成分100重量部に対する配合重量部)は、インナーライナー層の厚みをD(mm)としたとき、次式(I)
1<A×D<200 ・・・(I)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム成分は、ジエン系ゴム60〜100重量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ブチル系ゴムは、ハロゲン化ブチルゴムを含むことを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記層状又は板状鉱物は、カオリン質クレイ又はセリサイト質クレイを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記層状又は板状鉱物は、シリカ及びアルミナの含水複合体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記インナーライナー層は、前記ゴム成分100重量部に対して窒素吸着比面積(N2SA)が26〜170m2/gのカーボンブラック0.1〜40重量部と、軟化剤1重量部以上とを配合したゴム組成物からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記層状又は板状鉱物の配合量は、前記ゴム成分100重量部に対して20〜160重量部であり、かつ該鉱物と前記カーボンブラックとの合計量は60〜220重量部であることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記インナーライナー層は、ブチル系ゴムから選ばれた少なくとも一種からなるゴム成分100重量部に対して、クレイ10〜50重量部と、カーボンブラック10〜60重量部とを配合したゴム組成物からなることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記クレイ及び前記カーボンブラックの合計配合量が、50重量部以上であることを特徴とする請求項9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記カーボンブラックのヨウ素吸着量が40mg/g以下であり、かつ、ジブチルフタレート吸油量が100ml/100g以下であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記ハロゲン化ブチルゴムが、臭素化ブチルゴム及び塩素化ブチルゴムから選ばれた少なくとも一種のゴムである請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項1】
スチールコードからなる少なくとも一枚のカーカスプライを、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部までトロイダルに延在させるとともに、各ビード部に埋設したビードコアの周りで、タイヤ半径方向の内側から外側へ巻返してなる空気入りタイヤにおいて、
カーカスプライの各巻返し部分に、ビードコアの周面に沿ってそれに巻付く巻込み部と、
ゴム成分に、アスペクト比が3以上30未満の層状又は板状鉱物を配合したゴム組成物からなるインナーライナー層と
を備えることを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ゴム成分は、ブチル系ゴム40〜100重量%とジエン系ゴム60重量%以下とを含有するとともに、前記層状又は板状鉱物の配合量A(ゴム成分100重量部に対する配合重量部)は、インナーライナー層の厚みをD(mm)としたとき、次式(I)
1<A×D<200 ・・・(I)
を満たすことを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ゴム成分は、ジエン系ゴム60〜100重量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記ブチル系ゴムは、ハロゲン化ブチルゴムを含むことを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記層状又は板状鉱物は、カオリン質クレイ又はセリサイト質クレイを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記層状又は板状鉱物は、シリカ及びアルミナの含水複合体を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
前記インナーライナー層は、前記ゴム成分100重量部に対して窒素吸着比面積(N2SA)が26〜170m2/gのカーボンブラック0.1〜40重量部と、軟化剤1重量部以上とを配合したゴム組成物からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記層状又は板状鉱物の配合量は、前記ゴム成分100重量部に対して20〜160重量部であり、かつ該鉱物と前記カーボンブラックとの合計量は60〜220重量部であることを特徴とする請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記インナーライナー層は、ブチル系ゴムから選ばれた少なくとも一種からなるゴム成分100重量部に対して、クレイ10〜50重量部と、カーボンブラック10〜60重量部とを配合したゴム組成物からなることを特徴とする請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記クレイ及び前記カーボンブラックの合計配合量が、50重量部以上であることを特徴とする請求項9に記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記カーボンブラックのヨウ素吸着量が40mg/g以下であり、かつ、ジブチルフタレート吸油量が100ml/100g以下であることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
前記ハロゲン化ブチルゴムが、臭素化ブチルゴム及び塩素化ブチルゴムから選ばれた少なくとも一種のゴムである請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2006−117168(P2006−117168A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−308768(P2004−308768)
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】
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