説明

空気入りタイヤ

【課題】通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】ビードコア、並列された複数の補強コードが被覆ゴムに埋設された1枚以上のカーカスプライを有するカーカス層、トレッドゴム層、インナーライナー、サイド補強層及びビードフィラーを具える空気入りタイヤであって、該補強コードがセルロース系繊維を原料とし、50cN/dtex以上のコード弾性率(180℃の温度及び補強コード1本あたり29.4Nの力を加えた応力時)で表される剛性を有し、(A)ゴム成分と、その100質量部に対し、(B)カーボンブラック55質量部以上を含み、かつ加硫ゴム物性において、100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上及び正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値が6.0以下であるゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴム特性において、100%伸張時弾性率がある値以上であり、かつ正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値がある値以下のゴム組成物を、特にサイド補強層及び/又はビードフィラーに用い、カーカス層に特定のセルロース系繊維を用いてなる、通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤ、特にランフラットタイヤにおいて、サイドウォール部の剛性向上のために、ゴム組成物単独又はゴム組成物と繊維等の複合体によるサイド補強層が配設されている。(例えば、特許文献1参照)
空気入りタイヤは、パンク等によりタイヤの内部圧力(以下、内圧という)が低下した場合での走行、いわゆるランフラット走行状態になると、タイヤのサイドウォール部やビードフィラーの変形が大きくなり、発熱が進み、場合によっては200℃以上に達する。このような状態では、サイド補強層を具えた空気入りタイヤであっても、サイド補強層やビードフィラーが破壊限界を超え、タイヤ故障に至る。
このような故障に至るまでの時間を長くする手段として、サイド補強層やビードフィラーに用いるゴム組成物に硫黄を高配合し、ゴム組成物を高弾性化することにより、タイヤのサイドウォール部やビードフィラーの変形量を抑える手法があるが、タイヤの通常走行時の転がり抵抗が高くなり低燃費性が低下する問題がある。
【0003】
これに対し、特許文献2では、各種変性共役ジエン−芳香族ビニル共重合体及び耐熱向上剤等を含有するゴム組成物をサイド補強層及びビードフィラーに用いることが提案されている。
さらに、特許文献3では、特定の共役ジエン系重合体とフェノール系樹脂を含
有するゴム組成物をサイド補強層及びビードフィラーに用いることが提案されている。
これらは、いずれもサイド補強層及びビードフィラーに用いたゴム組成物の弾性率を高くすると共に、高温時の弾性率低下を抑えることを目的としたものであり、ランフラット耐久性の大幅な改良が得られるものの、通常走行時の転がり抵抗性が著しく悪化してしまう。
【0004】
一方、上記故障に至るまでの時間を稼ぐ手段として、配設サイド補強層及びビードフィラーの最大厚さを増大するなど、ゴムの体積を増大させるものがあるが、このような方法をとると、通常走行時の乗り心地の悪化、重量の増加および騒音レベルの増大などの好ましくない事態が発生する。
前述の事態、例えば乗り心地の悪化を回避するために、配設するサイド補強層及びビードフィラーの体積を減少させると、ランフラット時の荷重を支えきれず、ランフラット時にタイヤのサイドウォール部分の変形が非常に大きくなり、ゴム組成物の発熱増大を招き、結果としてタイヤはより早期に故障に至る問題があった。
また、配合する材料を変えることにより使用するゴムをより低弾性化させた場合も同様に、ランフラット時の荷重を支え切れず、タイヤのサイドウォール部分の変形が非常に大きくなり、ゴム組成物の発熱増大を招き、結果としてタイヤはより早期に故障に至ってしまうのが実状である。
【0005】
ところで近年、レーヨンあるいはリヨセルといったセルロース系繊維は、室温時に高弾性を有し、かつ高い接着力を有することから、タイヤへの適用が検討されている。なかでもリヨセルはレーヨンに比べても高弾性を有することから、タイヤへの適用の検討が特に注目されている(例えば、特許文献4及び5参照)。しかし、これらの特許文献で開示される空気入りタイヤはランフラット耐久性や乗り心地の点で十分とはいえず、乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させるといった、これらの相反する性能を高いレベルで両立しうる空気入りタイヤの開発が望まれている。
【0006】
【特許文献1】特開平11−310019号公報
【特許文献2】WO02/02356パンフレット
【特許文献3】特開2004−74960号公報
【特許文献4】特開2004−66930号公報
【特許文献5】特開2005−199763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況下で、通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記の好ましい性質を有する空気入りタイヤを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、加硫ゴム物性において、100%伸張時弾性率がある値以上であり、かつ正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値がある値以下のゴム組成物を、特にサイド補強層及び/又はビードフィラーに用い、カーカス層に特定のセルロース系繊維を用いてなる空気入りタイヤがその目的に適合し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
すなわち、本発明は、
(1)ビードコア、並列された複数の補強コードが被覆ゴムに埋設された1枚以上のカーカスプライを有するカーカス層、トレッドゴム層、インナーライナー、サイド補強層及びビードフィラーを具える空気入りタイヤであって、該補強コードがセルロース系繊維を原料とし、50cN/dtex以上のコード弾性率(180℃の温度及び補強コード1本あたり29.4Nの力を加えた応力時)で表される剛性を有し、(A)ゴム成分と、その100質量部に対し、(B)カーボンブラック55質量部以上を含み、かつ加硫ゴム物性において、100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上及び正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値が6.0以下であるゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤ、
(2)ゴム組成物において、(B)カーボンブラックが、FEF級グレード、FF級グレード、HAF級グレード、ISAF級グレード及びSAF級グレードの中から選ばれる少なくとも一種である上記(1)に記載の空気入りタイヤ、
(3)(B)カーボンブラックがFEF級グレードである上記(2)に記載の空気入りタイヤ、
(4)ゴム組成物において、(A)ゴム成分が、アミン変性共役ジエン系重合体を含むものである上記(1)〜(3)のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
(5)アミン変性共役ジエン系重合体が、プロトン性アミン変性共役ジエン系重合体である上記(4)に記載の空気入りタイヤ、
(6)アミン変性共役ジエン系重合体が、一級アミン変性共役ジエン系重合体である上記(4)又は(5)に記載の空気入りタイヤ、
(7)一級アミン変性共役ジエン系重合体が、共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミン化合物を反応させて得られたものである上記(6)に記載の空気入りタイヤ、
(8)共役ジエン系重合体が、有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得られたものである上記(7)に記載の空気入りタイヤ、
(9)共役ジエン系重合体が、ポリブタジエンである上記(8)に記載の空気入りタイヤ、
(10)保護化一級アミン化合物が、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシランである上記(7)〜(9)のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
(11)補強コードの上撚り係数が、0.3〜0.7である上記(1)〜(10)のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
(12)補強コードの下撚り係数が、0.3〜0.7である上記(1)〜(11)のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
(13)上撚り係数と下撚り係数とが、異なることを特徴とする上記(12)に記載の空気入りタイヤ、
(14)上撚り係数が、下撚り係数より大きいことを特徴とする上記(13)に記載の空気入りタイヤ、
(15)セルロース系繊維が、レーヨン又はリヨセルからなるものである上記(1)〜(14)のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
(16)補強コードが、300℃以上の融点を有する有機繊維からなるものである上記(1)〜(15)のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
(17)サイド補強層に、前記ゴム組成物を用いてなる上記(1)〜(16)のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
(18)ビードフィラーに、前記ゴム組成物を用いてなる上記(1)〜(17)のいずれかに記載の空気入りタイヤ、及び
(19)サイド補強層及びビードフィラーに、前記ゴム組成物を用いてなる上記(1)〜(18)のいずれかに記載の空気入りタイヤ、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加硫ゴム物性において、100%伸張時弾性率が10MPa以上であり、かつ正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値が6.0以下のゴム組成物を、特にタイヤのサイド補強層及び/又はビードフィラーに用い、カーカス層に特定のセルロース系繊維を用いることにより、通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
[空気入りタイヤ]
先ず、本発明の空気入りタイヤを以下、図面に基づいて説明する。図1は、本発明の空気入りタイヤの一実施態様の断面を示す模式図である。
図1において、本発明の空気入りタイヤの好適な実施態様は、一対のビードコ1、1'(1’は図示せず)間にわたってトロイド状に連なり、両端部が該ビードコア1をタイヤ内側から外側へ巻き上げられ、かつ並列された複数の補強コードが被覆ゴムに埋設された少なくとも1枚のラジアルカーカスプライからなるカーカス層2と、該カーカス層2のサイド領域のタイヤ軸方向外側に配置されて外側部を形成するサイドゴム層3と、該カーカス層2のクラウン領域のタイヤ径方向外側に配置されて接地部を形成するトレッドゴム層4と、該トレッドゴム層4と該カーカス層2のクラウン領域の間に配置されて補強ベルトを形成するベルト層5と、該カーカス層2のタイヤ内方全面に配置されて気密膜を形成するインナーライナー6と、一方の該ビードコア1から他方の該ビードコア1'へ延びる該カーカス層2本体部分と該ビードコア1に巻き上げられる巻上部分との間に配置されるビードフィラー7と、該カーカス層のサイド領域の該ビードフィラー7側部からショルダー区域10にかけて、該カーカス層2と該インナーライナー6との間に、タイヤ回転軸に沿った断面形状が略三日月形である、少なくとも1枚のサイド補強層8とを具える空気入りタイヤである。この空気入りタイヤのサイド補強層8及び/又はビードフィラー7に本発明に係るゴム組成物を用い、かつカーカス層2を構成するカーカスプライの補強コードに特定のセルロース系繊維を用いることにより、本発明の空気入りタイヤは、上述の作用効果を奏することができる。
【0011】
[ゴム組成物]
前述した本発明の空気入りタイヤにおいては、サイド補強層8及び/又はビードフィラー7に、(A)ゴム成分と、その100質量部に対し、(B)カーボンブラック55質量部以上を含み、かつ加硫ゴム物性において100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上及び正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値が6.0以下であるゴム組成物を用いることができる。
((A)ゴム成分)
本発明に係るゴム組成物における(A)ゴム成分としては、共役ジエン系重合体をアミン変性したアミン変性共役ジエン系重合体を含むものを好ましく用いることができ、このようなアミン変性共役ジエン系重合体を30質量%以上、好ましくは50質量%以上の割合で含むものを用いることができる。ゴム成分が上記変性共役ジエン系重合体を30質量%以上含むことにより、得られるゴム組成物は低発熱化し、ランフラット走行耐久性が向上した空気入りタイヤ与えることができる。
【0012】
このアミン変性共役ジエン系重合体としては、分子内に、変性用官能基として、アミン系官能基であるプロトン性アミノ基及び/又は脱離可能基で保護されたアミノ基を導入したものが好ましく、さらにケイ素原子を含む官能基を導入したものが好ましく挙げられる。
前記ケイ素原子を含む官能基としては、ケイ素原子にヒドロカルビルオキシ基及び/又はヒドロキシ基が結合してなるシラン基を挙げることができる。
このような変性用官能基は、共役ジエン系重合体の重合開始末端、側鎖及び重合活性末端のいずれかに存在すればよいが、本発明においては、好ましくは重合末端、より好ましくは同一重合活性末端に、プロトン性アミノ基及び/又は脱離可能基で保護されたアミノ基と、ヒドロカルビルオキシ基及び/又はヒドロキシ基が結合したケイ素原子、特に好ましくは、1又は2個のヒドロカルビルオキシ基及び/又はヒドロキシ基が結合したケイ素原子とを有するものである。
【0013】
前記プロトン性アミノ基としては、1級アミノ基、2級アミノ基及びそれらの塩の中から選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
一方、脱離可能基で保護されたアミノ基としては、例えばN,N−ビス(トリヒドロカルビルシリル)アミノ基及びN−(トリヒドロカルビルシリル)イミノ基を挙げることができ、好ましくはヒドロカルビル基が炭素数1〜10のアルキル基であるトリアルキルシリル基を挙げることができ、特に好ましくはトリメチルシリル基を挙げることができる。
脱離可能基で保護された1級アミノ基(保護化一級アミノ基ともいう。)の例としては、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノ基を挙げることができ、脱離可能基で保護された2級アミノ基の例としてはN−(トリメチルシリル)イミノ基を挙げることができる。このN−(トリメチルシリル)イミノ基含有基としては、非環状イミン残基、及び環状イミン残基のいずれであってもよい。
【0014】
上記したアミン変性共役ジエン系重合体のうち、1級アミノ基で変性された一級アミン変性共役ジエン系重合体としては、共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミン化合物を反応させて得られた、保護化一級アミノ基で変性された一級アミン変性共役ジエン系重合体が好適である。
【0015】
<共役ジエン系重合体>
変性に用いる共役ジエン系重合体は、共役ジエン化合物単独重合体であってもよく、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物との共重合体であってもよい。
前記共役ジエン化合物としては、例えば1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、1,3−ブタジエンが特に好ましい。
また、共役ジエン化合物との共重合に用いられる芳香族ビニル化合物としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロへキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、スチレンが特に好ましい。
前記共役ジエン系重合体としては、ポリブタジエン又はスチレン−ブタジエン共重合体が好ましく、ポリブタジエンが特に好ましい。
【0016】
共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミンを反応させて変性させるには、該共役ジエン系重合体は、少なくとも10%のポリマー鎖がリビング性又は擬似リビング性を有するものが好ましい。このようなリビング性を有する重合反応としては、有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させる反応か、あるいは有機溶媒中でランタン系列希土類元素化合物を含む触媒による共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを配位アニオン重合させる反応が挙げられる。前者は、後者に比較して共役ジエン部のビニル結合含有量の高いものを得ることができるので好ましい。ビニル結合量を高くすることによって耐熱性を向上させることができる。
【0017】
上述のアニオン重合の開始剤として用いられる有機アルカリ金属化合物としては、有機リチウム化合物が好ましい。有機リチウム化合物としては、特に制限はないが、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物が好ましく用いられ、前者のヒドロカルビルリチウムを用いる場合には、重合開始末端にヒドロカルビル基を有し、かつ他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。また、後者のリチウムアミド化合物を用いる場合には、重合開始末端に窒素含有基を有し、他方の末端が重合活性部位である共役ジエン系重合体が得られる。
【0018】
前記ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えばエチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチルフェニルリチウム、4−フェニルブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応性生物等が挙げられるが、これらの中で、特にn−ブチルリチウムが好適である。
【0019】
一方、リチウムアミド化合物としては、例えばリチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム−N−メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。これらの中で、カーボンブラックに対する相互作用効果及び重合開始能の点から、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピぺリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド等の環状リチウムアミドが好ましく、特にリチウムヘキサメチレンイミド及びリチウムピロリジドが好適である。
これらのリチウムアミド化合物は、一般に、二級アミンとリチウム化合物とから、予め調製したものを重合に使用することができるが、重合系中(in−Situ)で調製することもできる。また、この重合開始剤の使用量は、好ましくは単量体100g当たり、0.2〜20ミリモルの範囲で選定される。
【0020】
前記有機リチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によって共役ジエン系重合体を製造する方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。
具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族、脂環族、芳香族炭化水素化合物等の炭化水素系溶剤中において、共役ジエン化合物又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を、前記リチウム化合物を重合開始剤として、所望により、用いられるランダマイザーの存在下にアニオン重合させることにより、目的の活性末端を有する共役ジエン系重合体が得られる。
また、有機リチウム化合物を重合開始剤として用いた場合には、前述のランタン系列希土類元素化合物を含む触媒を用いた場合に比べ、活性末端を有する共役ジエン系重合体のみならず、活性末端を有する共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物の共重合体も効率よく得ることができる。
【0021】
前記炭化水素系溶剤としては、炭素数3〜8のものが好ましく、例えばプロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、イソブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−へキセン、2−へキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
また、溶媒中の単量体濃度は、好ましくは5〜50質量%、より好ましくは10〜30質量%である。尚、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物を用いて共重合を行う場合、仕込み単量体混合物中の芳香族ビニル化合物の含量は55質量%以下の範囲が好ましい。
【0022】
また、所望により用いられるランダマイザーとは共役ジエン系重合体のミクロ構造の制御、例えばブタジエン−スチレン共重合体におけるブタジエン部分の1,2結合、イソプレン重合体における3,4結合の増加等、あるいは共役ジエン化合物一芳香族ビニル化合物共重合体における単量体単位の組成分布の制御、例えばブタジエンースチレン共重合体におけるブタジエン単位、スチレン単位のランダム化等の作用を有する化合物のことである。このランダマイザーとしては、特に制限はなく、従来ランダマイザーとして一般に使用されている公知の化合物の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。具体的には、ジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、オキソラニルプロパンオリゴマー類[特に2,2−ビス(2−テトラヒドロフリル)−プロパンを含む物等]、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピぺリジノエタン等のエーテル類及び三級アミン類等を挙げることができる。また、カリウムtert−アミレート、カリウムtert−ブトキシド等のカリウム塩類、ナトリウムtert−アミレート等のナトリウム塩類も用いることができる。
【0023】
これらのランダマイザーは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、その使用量は、リチウム化合物1モル当たり、好ましくは0.01〜1000モル当量の範囲で選択される。
この重合反応における温度は、好ましくは0〜150℃、より好ましくは20〜130℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つに十分な圧力で操作することが望ましい。すなわち、圧力は重合される個々の物質や、用いる重合媒体及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0024】
<変性剤>
本発明においては、上記のようにして得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体の活性末端に、変性剤として、保護化一級アミン化合物を反応させることにより、一級アミン変性共役ジエン系重合体を製造することができる。上記保護化一級アミン化合物としては、保護化一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が好適である。
当該変性剤として用いられる保護化一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物としては、例えばN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジメトキシシラン及びN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルメチルジエトキシシラン等を挙げることができ、好ましくは、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン又は1−トリメチルシリル−2,2−ジメトキシ−1−アザ−2−シラシクロペンタンである。
【0025】
また、変性剤としては、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−メチル−N−トリメチルシリルアミノプロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピロリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(ピペリジン−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(イミダゾール−2−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N−トリメチルシリル(4,5−ジヒドロイミダゾール−5−イル)プロピル(メチル)ジエトキシシランなどの保護化二級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物;N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルエチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−エチリデン−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(1−メチルプロピリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(4−N,N−ジメチルアミノベンジリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N−(シクロヘキシリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミンなどのイミノ基を有するアルコキシシラン化合物;3−ジメチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリエトキシ)シラン、3−ジエチルアミノプロピル(トリメトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリエトキシ)シラン、2−ジメチルアミノエチル(トリメトキシ)シラン、3−ジメチルアミノプロピル(ジエトキシ)メチルシラン、3−ジブチルアミノプロピル(トリエトキシ)シランなどのアミノ基を有するアルコキシシラン化合物なども挙げられる。
これらの変性剤は、一種単独で用いてもよく、二種以上組み合わせて用いてもよい。またこの変性剤は部分縮合物であってもよい。
ここで、部分縮合物とは、変性剤のSiORの一部(全部ではない)が縮合によりSiOSi結合したものをいう。
【0026】
前記変性剤による変性反応において、該変性剤の使用量は、好ましくは0.5〜200mmol/kg・共役ジエン系重合体である。同使用量は、さらに好ましくは1〜100mmol/kg・共役ジエン系重合体であり、特に好ましくは2〜50mmol/kg・共役ジエン系重合体である。ここで、共役ジエン系重合体とは、製造時又は製造後、添加される老化防止剤等の添加剤を含まないポリマーのみの質量を意味する。変性剤の使用量を前記範囲にすることによって、充填材、特にカーボンブラックの分散性に優れ、加硫後の耐破壊特性、低発熱性が改良される。
なお、前記変性剤の添加方法は、特に制限されず、一括して添加する方法、分割して添加する方法、あるいは、連続的に添加する方法等が挙げられるが、一括して添加する方法が好ましい。
また、変性剤は、重合開始末端や重合終了末端以外に重合体主鎖や側鎖のいずれに結合させることもできるが、重合体末端からエネルギー消失を抑制して低発熱性を改良しうる点から、重合開始末端あるいは重合終了末端に導入されていることが好ましい。
【0027】
<縮合促進剤>
本発明では、前記した変性剤として用いる保護化一級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物が関与する縮合反応を促進するために、縮合促進剤を用いることが好ましい。
このような縮合促進剤としては、第三アミノ基を含有する化合物、又は周期律表(長周期型)の3族、4族、5族、12族、13族、14族及び15族のうちのいずれかの属する元素を一種以上含有する有機化合物を用いることができる。さらに縮合促進剤として、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ビスマス(Bi)、アルミニウム(Al)、及びスズ(Sn)からなる群から選択される少なく
とも一種以上の金属を含有する、アルコキシド、カルボン酸塩、又はアセチルアセトナート錯塩であることが好ましい。
ここで用いる縮合促進剤は、前記変性反応前に添加することもできるが、変性反応の途中及び又は終了後に変性反応系に添加することが好ましい。変性反応前に添加した場合、活性末端との直接反応が起こり、活性末端に保護された第一アミノ基を有するヒドロカルビロキシ基が導入されない場合がある。
縮合促進剤の添加時期としては、通常、変性反応開始5分〜5時間後、好ましくは変性反応開始15分〜1時間後である。
【0028】
縮合促進剤としては、具体的には、テトラメトキシチタニウム、テトラエトキシチタニウム、テトラ−n−プロポキシチタニウム、テトライソプロポキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウム、テトラ−n−ブトキシチタニウムオリゴマー、テトラ−sec−ブトキシチタニウム、テトラ−tert−ブトキシチタニウム、テトラ(2−エチルヘキシル)チタニウム、ビス(オクタンジオレート)ビス(2−エチルヘキシル)チタニウム、テトラ(オクタンジオレート)チタニウム、チタニウムラクテート、チタニウムジプロポキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムジブトキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムトリブトキシステアレート、チタニウムトリプロポキシステアレート、チタニウムエチルヘキシルジオレート、チタニウムトリプロポキシアセチルアセトネート、チタニウムジプロポキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリプロポキシエチルアセトアセテート、チタニウムプロポキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムトリブトキシアセチルアセトネート、チタニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、チタニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、チタニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、チタニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、チタニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)チタニウムオキサイド、ビス(ラウレート)チタニウムオキサイド、ビス(ナフテネート)チタニウムオキサイド、ビス(ステアレート)チタニウムオキサイド、ビス(オレエート)チタニウムオキサイド、ビス(リノレート)チタニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)チタニウム、テトラキス(ラウレート)チタニウム、テトラキス(ナフテネート)チタニウム、テトラキス(ステアレート)チタニウム、テトラキス(オレエート)チタニウム、テトラキス(リノレート)チタニウム等のチタニウムを含む化合物を挙げることができる。
【0029】
また、縮合促進剤としては、例えば、トリス(2−エチルヘキサノエート)ビスマス、トリス(ラウレート)ビスマス、トリス(ナフテネート)ビスマス、トリス(ステアレート)ビスマス、トリス(オレエート)ビスマス、トリス(リノレート)ビスマス、テトラエトキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム、テトラ(2−エチルヘキシル)ジルコニウム、ジルコニウムトリブトキシステアレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムトリブトキシエチルアセトアセテート、ジルコニウムブトキシアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ジルコニウムテトラキス(アセチルアセトネート)、ジルコニウムジアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、ビス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ラウレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ナフテネート)ジルコニウムオキサイド、ビス(ステアレート)ジルコニウムオキサイド、ビス(オレエート)ジルコニウムオキサイド、ビス(リノレート)ジルコニウムオキサイド、テトラキス(2−エチルヘキサノエート)ジルコニウム、テトラキス(ラウレート)ジルコニウム、テトラキス(ナフテネート)ジルコニウム、テトラキス(ステアレート)ジルコニウム、テトラキス(オレエート)ジルコニウム、テトラキス(リノレート)ジルコニウム等を挙げることができる。
【0030】
また、トリエトキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、トリ(2−1エチルヘキシル)アルミニウム、アルミニウムジブトキシステアレート、アルミニウムジブトキシアセチルアセトネート、アルミニウムブトキシビス(アセチルアセトネート)、アルミニウムジブトキシエチルアセトアセテート、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、トリス(2−エチルヘキサノエート)アルミニウム、トリス(ラウレート)アルミニウム、トリス(ナフテネート)アルミニウム、トリス(ステアレート)アルミニウム、トリス(オレエート)アルミニウム、トリス(リノレート)アルミニウム等を挙げることができる。
【0031】
上述の縮合促進剤の内、チタン化合物が好ましく、チタン金属のアルコキシド、チタン金属のカルボン酸塩、又はチタン金属のアセチルアセトナート錯塩が特に好ましい。
この縮合促進剤の使用量としては、前記化合物のモル数が、反応系内に存在するヒドロカルビロキシ基総量に対するモル比として、0.1〜10となることが好ましく、0.5〜5が特に好ましい。縮合促進剤の使用量を前記範囲にすることによって縮合反応が効率よく進行する。
【0032】
本発明における縮合反応は、上述の縮合促進剤と、水蒸気又は水の存在下で進行する。水蒸気の存在下の場合として、スチームストリッピングによる脱溶媒処理が挙げられ、スチームストリッピング中に縮合反応が進行する。
また、縮合反応を水溶液中で行ってもよく、縮合反応温度は85〜180℃が好ましく、さらに好ましくは100〜170℃、特に好ましくは110〜150℃である。
縮合反応時の温度を前記範囲にすることによって、縮合反応を効率よく進行完結することができ、得られる変性共役ジエン系重合体の経時変化によるポリマーの老化反応等による品質の低下等を抑えることができる。
【0033】
なお、縮合反応時間は、通常、5分〜10時間、好ましくは15分〜5時間程
度である。縮合反応時間を前記範囲にすることによって縮合反応を円滑に完結することができる。
なお、縮合反応時の反応系の圧力は、通常、0.01〜20MPa、好ましくは0.05〜10MPaである。
縮合反応を水溶液中で行う場合の形式については特に制限はなく、バッチ式反応器を用いても、多段連続式反応器等の装置を用いて連続式で行ってもよい。また、この縮合反応と脱溶媒を同時に行っても良い。
本発明の変性共役ジエン系重合体の変性剤由来の一級アミノ基は、上述のように脱保護処理を行うことによって生成する。上述したスチームストリッピング等の水蒸気を用いる脱溶媒処理以外の脱保護処理の好適な具体例を以下に詳述する。
すなわち、一級アミノ基上の保護基を加水分解することによって遊離した一級アミノ基に変換する。これを脱溶媒処理することにより、一級アミノ基を有する変性共役ジエン系重合体を得ることができる。なお、該縮合処理を含む段階から、脱溶媒して乾燥ポリマーまでのいずれかの段階において必要に応じて変性剤由来の保護された一級アミノ基の脱保護処理を行うことができる。
【0034】
<変性共役ジエン系重合体>
このようにして得られた変性共役ジエン系重合体はムーニー粘度(ML1+4,100℃)が、好ましくは10〜150、より好ましくは15〜100である。ムーニー粘度が10未満の場合は耐破壊特性を始めとするゴム物性が十分に得られず、150を超える場合は作業性が悪く配合剤とともに混練りすることが困難である。
また、前記変性共役ジエン系重合体を配合した本発明に係る未加硫ゴム組成物のムーニ−粘度(ML1+4,130℃)は、好ましくは10〜150、より好ましくは30〜100である。
本発明に係るゴム組成物に用いられる変性共役ジエン系重合体は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、即ち分子量分布(Mw/Mn)が1〜3であることが好ましく、1.1〜2.7であることがより好ましい。
変性共役ジエン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)を前記範囲内にすることで該変性共役ジエン系重量体をゴム組成物に配合しても、ゴム組成物の作業性を低下させることがなく、混練りが容易で、ゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。
【0035】
また、本発明に係るゴム組成物に用いられる変性共役ジエン系重合体は、数平均分子量(Mn)が100,000〜500,000であることが好ましく、150,000〜300,000であることがさらに好ましい。変性共役ジエン系重合体の数平均分子量を前記範囲内にすることによって加硫物の弾性率の低下、ヒステリシスロスの上昇を抑えて優れた耐破壊特性を得るとともに、該変性共役ジエン系重合体を含むゴム組成物の優れた混練作業性が得られる。
本発明に係るゴム組成物に用いられる変性共役ジエン系重合体は一種用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
<他のゴム成分>
(A)ゴム成分において、上記変性共役ジエン系重合体と併用されるゴム成分としては、天然ゴム及び他のジエン系合成ゴムが挙げられ、他のジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、スチレン−イソプレン共重合体(SIR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDM)及びこれらの混合物が挙げられる。また、他のジエン系合成ゴムの一部又は全てが多官能型変性剤、例えば四塩化スズのような変性剤を用いることにより分岐構造を有しているジエン系変性ゴムであることがより好ましい。
【0037】
((B)カーボンブラック)
本発明に係るゴム組成物においては、(B)成分としてカーボンブラックを、前述の(A)ゴム成分100質量部に対して、55質量部以上の割合で用いることを要す。カーボンブラックの量が55質量部未満では充分な補強効果が発揮されず、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性において、後で説明する100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上にならない場合がある。また、カーボンブラックの量が多すぎると、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性において、後で説明する正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値が6.0以下にならない場合がある。したがって、当該カーボンブラックの好ましい量は55〜70質量部であり、より好ましくは60〜70質量部である。
当該カーボンブラックとしては、得られるゴム組成物の加硫ゴム物性が、上記の加硫ゴム物性を満たすためには、FEF級グレード、FF級グレード、HAF級グレード、ISAF級グレード及びSAF級グレードの中から選ばれる少なくとも一種を用いることが好ましく、特にFEF級グレードが好適である。
【0038】
さらに、本発明に係るゴム組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で、所望により、通常ゴム工業界で用いられる各種薬品、例えば加硫剤、加硫促進剤、プロセス油、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華、ステアリン酸などを含有させることができる。
上記加硫剤としては、硫黄等が挙げられ、その使用量は、(A)ゴム成分100質量部に対し、硫黄分として0.1〜10.0質量部が好ましく、さらに好ましくは1.0〜5.0質量部である。0.1質量部未満では加硫ゴムの破壊強度、耐摩耗性、低発熱性が低下するおそれがあり、10.0質量部を超えるとゴム弾性が失われる原因となる。
本発明で使用できる加硫促進剤は、特に限定されるものではないが、例えば、M(2−メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド)等のチアゾール系、DPG(ジフェニルグアニジン)等のグアニジン系、あるいはTOT(テトラキス(2−エチルへキシル)チウラムジスルフィド)等のチウラム系の加硫促進剤等を挙げることができ、その使用量は、(A)ゴム成分100質量部に対し、0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.2〜3.0質量部である。
【0039】
また、本発明に係るゴム組成物で使用できる軟化剤として用いるプロセス油としては、例えば、パラフィン系、ナフテン系、アロマチック系等を挙げることができる。引張強度、耐摩耗性を重視する用途にはアロマチック系が、ヒステリシスロス、低温特性を重視する用途にはナフテン系又はパラフィン系が用いられる。その使用量は、(A)ゴム成分100質量部に対して、0〜100質量部が好ましく、100質量部以下であれば加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)が悪化するのを抑制することができる。
さらに、本発明に係るゴム組成物で使用できる老化防止剤としては、例えば3C(N−イソプロピル−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、6C[N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン]、AW(6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン)、ジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物等を挙げることができる。その使用量は、(A)ゴム成分100質量部に対して、0.1〜5.0質量部が好ましく、さらに好ましくは0.3〜3.0質量部である。
【0040】
(ゴム組成物の加硫ゴム物性)
本発明に係るゴム組成物は、加硫ゴム物性として、100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上であることを要する。この弾性率(M100)が10MPa未満では、ランフラット走行時のタイヤの撓み保持が不充分となり、タイヤのランフラット走行耐久性が低下する。好ましいM100は10.5MPa以上であり、その上限は特に制限はないが、通常13MPa程度である。
なお、上記100%伸張時弾性率(M100)は、下記の方法で測定した値である。
<100%伸張時弾性率(M100)の測定方法>
ゴム組成物を160℃、12分間の条件で加硫処理して得られた厚さ2mmのスラブシートについて、JIS K 6251に基づき、100%伸張時弾性率を測定する。
【0041】
また、上記加硫ゴム物性として、正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値[Σtanδ(28〜150℃)]が6.0以下であることを要す。このtanδのΣ値が6.0を超えると、ランフラット走行時のタイヤの発熱が大きく、タイヤのランフラット走行耐久性が低下する。Σtanδ(28〜150℃)の下限に特に制限はないが、通常5程度である。
なお、上記Σtanδ(28〜150℃)は、下記の方法で測定した値である。
<Σtanδ(28〜150℃)の測定方法>
ゴム組成物を160℃、12分間の条件で加硫処理して得られた厚さ2mmのスラブシートから、幅5mm、長さ40mmのシートを切り出し、試料とした。この試料について、上島製作所社製スペクトロメーターを用い、チャック間距離10mm、初期歪200μm、動的歪1%、周波数52Hz、測定開始温度25〜200℃の測定条件にて正接損失tanδを測定し、図2に示すように、温度とtanδとの関係をグラフ化し、斜線部分の面積を求め、その値をΣtanδ(28〜150℃)とする。
【0042】
(ゴム組成物の調製)
本発明に係るゴム組成物は、前記配合処方により、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練り機を用いて混練りすることによって得られ、成形加工後、加硫を行い、図1における空気入りタイヤのサイド補強層8及び/又はビードフィラー7として用いられる。
【0043】
[セルロース系繊維]
本発明のタイヤにおいて、カーカス層は、並列された複数の補強コードが被覆ゴムに埋設された1枚以上のカーカスプライを有するものであり、該補強コードは、セルロース系繊維を原料とし、50cN/dtex以上のコード弾性率(180℃の温度及び補強コード1本あたり29.4Nの力を加えた応力時)で表される剛性を有することを要する。これは、50cN/dtex未満のコード弾性率で表される剛性では、ランフラット走行時にタイヤの撓みが大きくなるため、ランフラット耐久性能が低下する場合があるからである。
【0044】
この剛性は、補強コードの応力−伸び曲線を用いて求めることができる。図3は補強コードの応力(荷重)−伸び曲線の一例を示すグラフである。図3に示すように、タイヤの内圧充填から荷重時にコード1本当たりにかかる力を3kgf(約29.4N)と見積り、180℃の温度での応力(荷重)−伸び曲線Cの約29.4N応力時における接線Sを描き、接線Sの傾きをコード弾性率として算出する。なお、単位「N/%(180℃・29.4N)」と単位「N/dtex(180℃・29.4N)」とで示すコード弾性率は、同じ補強コードの応力−伸び曲線を用いて求められるものであり、例えば、1840dtex/3のコード構造では、約34.3N(3.5kgf)/%(180℃・29.4N)が50cN/dtex(180℃・29.4N)に対応する。
【0045】
セルロース系繊維を原料とした補強コードは、セルロース系繊維のコードをディップ(以下、DIPという。)処理することにより作製することができる。具体的には、繊維のコードを、DIP張力を用いることによって、すなわち、所定の張力をかけた状態でDIP処理することにより、繊維の伸張方向に対して所定の剛性を有する補強コードが得られる。例えば、0.71cN/dtex以上のDIP張力にまで上げて、DIP処理を行うことにより、約39.2N(4kgf)/%(180℃・29.4N)以上のコード弾性率を有する補強コードが得られる。従来のレーヨン糸あるいはリヨセル糸では、かかるDIP張力でDIP処理したものは存在しない。
このような伸張引張り剛性が高い、すなわち高剛性の補強コードをカーカスプライに用いることにより、通常内圧時のバネはほとんど変化せず、ランフラット走行時の縦バネを特異的に向上させることが可能となり、前記ゴム組成物との相乗効果によりランフラット走行時の撓み量を抑制し、ランフラット耐久性能を向上させることができる。つまり、タイヤの重量が増加し空気内圧を充填したとき、すなわち内圧充填(以下、INFという。)時の乗り心地を損なわずにランフラット耐久性能を向上させることができる。
【0046】
補強コードの上撚り係数及び下撚り係数は、各々0.3〜0.7の範囲が好ましく、0.35〜0.7の範囲がより好ましく、0.4〜0.7の範囲がさらに好ましい。ここで、上撚り係数及び下撚り係数は、以下の式により算出される係数である。一般に、補強コードの強度、疲労性は、用いられる繊維の撚り係数に依存し、撚り係数が小さいと強度は向上するが疲労性は低下し、逆に撚り係数が大きいと疲労性は向上するが強度は低下するという、相反する関係にある。補強コードの上撚り係数及び下撚り係数が上記範囲内にあれば、コードの強度と疲労性とを良好に維持することができるので好ましい。
また、補強コードの上撚り係数と下撚り係数とは異なっていることが好ましく、上撚り係数が下撚り係数よりも大きいことがより好ましい。上撚り係数と下撚り係数とが異なることにより、上記したコードの強度と疲労性とを良好に維持することができ、優れたランフラット耐久性及び乗り心地が得られるので好ましい。
【0047】
【数1】

【0048】
(式中、Nt1:下撚り係数、Nt2:上撚り係数、N:撚り数(回/10cm)、D1:コードの総dtex、D2:コードの総dtexの半分、ρ:コードの比重を表す。)
【0049】
補強コードの原料として用いられるセルロース系繊維としては、レーヨン、リヨセルなどの繊維を好ましく挙げることができる。リヨセル繊維は、例えば、原料のセルロースから溶剤紡糸法により得られるセルロース系繊維であり、例えば、特公昭60−28848号公報、特表平11−504995号公報などに記載されるように、有機溶媒中に溶解されたセルロースと水などの非溶媒を含む溶液を、空気中又は非沈殿性媒体中に紡糸し、その際に紡糸口金から出た繊維形成溶液を送り出す速度より速い速度で引張り、3倍以上の延伸倍率で延伸した後に、非溶媒で処理することにより得られるものである。
【0050】
補強コードは、300℃以上の融点を有する有機繊維であることが好ましい。そのような有機繊維としては、セルロース系繊維が挙げられ、なかでもレーヨン繊維、リヨセル繊維が好ましく、リヨセル繊維がより好ましい。補強コードを構成する有機繊維の融点が上記の範囲内であれば、ランフラット走行時のタイヤ内の温度が非常に高温となっても、プライコードの溶融が生じることがない。
【0051】
(空気入りタイヤの作製)
本発明のタイヤは、上記した本発明に係るゴム組成物が用いられ、かつカーカスプライを構成する補強コードが上記したセルロース系繊維を原料とするものであり、好ましくは、本発明に係るゴム組成物をサイド補強層8及び/又はビードフィラー7に用いて通常のランフラットタイヤの製造方法によって製造される。すなわち、前記のように各種薬品を含有させた本発明に係るゴム組成物が未加硫の段階で各部材に加工され、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形され、生タイヤが成形される。この生タイヤを加硫機中で加熱加圧して、タイヤが得られる。
【0052】
カーカス層2は、図1に示されるように、少なくとも1枚のカーカスプライからなるものであり、2枚以上の複数のカーカスプライからなることもできる。その場合、一方のカーカスプライの端部は、ビードコア1の周りで折り返されて折り返し端部を形成することができ、その折り返し端部の外側で、サイドゴム層3内に他方のカーカスプライを配することができる。
このようにして得られた本発明の空気入りタイヤは、通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させたものとなる。
【実施例】
【0053】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、諸特性は下記の方法に従って測定した。
《未変性又は変性共役ジエン系重合体の物性》
<ミクロ構造の分析法>
赤外法(モレロ法)により、ビニル結合含有量(%)を測定した。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)の測定>
GPC[東ソー製、HLC−8020]により検出器として屈折計を用いて測定し、単分散ポリスチレンを標準としたポリスチレン換算で示した。なお、カラムはGMHXL[東ソー製]で、溶離液はテトラヒドロフランである。
【0054】
<一級アミノ基含有量(mmol/kg)の測定>
先ず、重合体をトルエンに溶解した後、大量のメタノール中で沈殿させることにより重合体に結合していないアミノ基含有化合物をゴムから分離した後、乾燥した。本処理を施した重合体を試料として、JIS K7237に記載された「全アミン価試験方法」により全アミノ基含有量を定量した。続けて、前記処理を施した重合体を試料として「アセチルアセトンブロックド法」により二級アミノ基及び三級アミノ基の含有量を定量した。試料を溶解させる溶媒には、o−ニトロトルエンを使用、アセチルアセトンを添加し、過塩素酢酸溶液で電位差滴定を行った。全アミノ基含有量から二級アミノ基及び三級アミノ基の含有量を引いて一級アミノ基含有量(mmol)を求め、分析に使用したポリマー質量で割ることにより重合体に結合した一級アミノ基含有量(mmol/kg)を求めた。
【0055】
《ゴム組成物の加硫ゴム物性》
100%伸張弾性率(M100)及び正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値[Σtanδ(28〜150℃)]は、明細書本文に記載した方法に従って測定した。
《補強コードの評価》
補強コードの弾性率は、上記したように補強コードの応力−伸び曲線を用いて、25℃及び180℃におけるタイヤの内圧充填〜荷重時に補強コード1本あたりにかかる力を3kgfと見積もり、3kgf応力時における応力−伸び曲線の接線を描き、算出した。
《空気入りタイヤの評価》
<ランフラット耐久性>
各供試タイヤ(タイヤサイズ215/45ZR17の乗用車ラジアルタイヤ)を常圧でリム組みし、内圧230kPaを封入してから38℃の室内中に24時間放置後、バルブのコアを抜き、内圧を大気圧として、荷重4.17kN(425kg)、速度89km/h、室内温度38℃の条件でドラム走行テストを行なった。各供試タイヤの故障発生までの走行距離を測定し、比較例1の走行距離を100として、以下の式により、指数表示した。指数が大きい程、ランフラット耐久性が良好である。
ランフラット耐久性(指数)=(供試タイヤの走行距離/比較例1のタイヤの走行距離)×100
<乗り心地性(INF時縦バネの評価)>
タイヤの縦バネ定数の評価私見の方法は、荷重−撓み曲線状における、ある荷重値の接線の傾きを、その荷重に対する縦バネ定数(kg/mm)とし、縦バネ定数指数は、比較例1の縦バネ定数を100とした時の比率で表す。その値が大きいほど乗り心地性は良好である。
【0056】
製造例1 一級アミン変性ポリブタジエン
(1)ポリブタジエンの製造
窒素置換された5Lオートクレーブに、窒素下、シクロヘキサン1.4kg、1,3−ブタジエン250g、2,2−ジテトラヒドロフリルプロパン(0.0285mmol)シクロヘキサン溶液として注入し、これに2.85mmolのn−ブチルリチウム(BuLi)を加えた後、攪拌装置を備えた50℃温水浴中で4.5時間重合を行なった。1,3−ブタジエンの反応転化率は、ほぼ100%であった。この重合体溶液を、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール1.3gを含むメタノール溶液に抜き取り重合を停止させた後、スチームストリッピングにより脱溶媒し、110℃のロールで乾燥して、ポリブタジエンを得た。得られたポリブタジエンについてミクロ構造(ビニル結合量)、重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。その結果、ビニル結合量は14%、Mwは150、000、Mw/Mnは1.1であった。
(2)一級アミン変性ポリブタジエンの製造
上記(1)で得られた重合体溶液を、重合触媒を失活させることなく、温度50℃に保ち、一級アミノ基が保護されたN,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1129mg(3.364mmol)を加えて、変性反応を15分間行った。最後に反応後の重合体溶液に、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾールを添加した。次いで、スチームストリッピングにより脱溶媒及び保護された一級アミノ基の脱保護を行い、110℃に調温された熟ロールによりゴムを乾燥し、一級アミン変性ポリブタジエンを得た。得られた変性ポリブタジエンについてミクロ構造(ビニル結合量)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)及び第一アミノ基含有量を測定した。その結果、ビニル結合量は14%、Mwは150、000、Mw/Mnは1、2、一級アミノ基含有量は4.0mmol/kgであった。
【0057】
製造例2 DMBTESPA変性ポリブタジエン
製造例1において、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシラン1129mg(3.364mmol)をN−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン3.364mmolに変更した以外は、製造例1と同様にして、DMBTESPA変性ポリブタジエンを得た。
【0058】
実施例1
第1表に示す配合A〜Hの配合組成を有する8種のゴム組成物を調製し、それぞれ加硫ゴム物性、すなわちM100及びΣtanδ(28〜150℃)を求めた。これらの結果を第1表に示す。
次に、セルロース系繊維(レーヨン)のコードを、0.71cN/dtexのDIP張力でひいてDIP処理(温度:149℃、時間:180秒)し、50cN/dtex(180℃・29.4N)以上のコード弾性率で表される剛性を有する補強コードを作成し、この補強コードをカーカスプライに適用して、タイヤを成型する。ここで、繊維コード種:1840dtex/3、38×38、繊維コードのDIP液は、F/Rモル比:1.98、RF/L固体質量%:16.0、(NaOH+NH4OH)/Rモル比:0.80のものを使用し、下撚り数30(下撚り係数:0.45)、上撚り数38(上撚り係数:0.57)である。
上記した配合A〜Hの8種のゴム組成物を、図1に示すサイド補強層8及びビードフィラー7に配設し、タイヤ中へのカーカスプライの打ち込み:35本/cmとして、それぞれタイヤサイズ215/45ZR17の乗用車用ラジアルタイヤを定法に従って製造し、それらのタイヤについてランフラット耐久性及び乗り心地性を評価した。それらの結果を第2表に示す。
【0059】
実施例2〜32、比較例1、2
第2表〜第4表に示すゴム組成物、補強コードを用いて、実施例1と同様にして乗用車用ラジアルタイヤを製造した。製造したタイヤについて、ランフラット耐久性及び乗り心地性を評価した。それらの結果を第2表〜第5表に示す。
【0060】
【表1】

[注]
1)天然ゴム:TSR20
2)未変性ポリブタジエン:JSR社製BR01
3)一級アミン変性ポリブタジエン:製造例1で得られたもの
4)カーボンブラック:FEF(N550)、旭カーボン社製「旭#60」
5)プロセスオイル:アロマティックオイル、富士興産社製「アロマックス#3」
6)老化防止剤6C:N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製「ノクラック6C」
7)加硫促進剤DZ:N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド、大内新興化学工業社製「ノクセラーDZ」
8)加硫促進剤TOT:テトラキス(2−エチルへキシル)チウラムジスルフィド、大内新興化学工業社製「ノクセラーTOT−N」
9)DMBTESPA変性ポリブタジエン:製造例2で得られたもの
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】

【0063】
【表4】

【0064】
【表5】

【0065】
第2表〜第5表の結果から、本発明に係るゴム組成物を、サイド補強層及びビードフィラーに用い、かつ補強コードにセルロース系繊維を用いてなる本発明の空気入りタイヤは、乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させ得ることが分かる。また、実施例3及び実施例7と、その他の実施例との対比により、下撚り係数と上撚り係数とは異なっている方が、ランフラット耐久性及び乗り心地のいずれの評価においても優れていることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の空気入りタイヤは、加硫ゴム物性において、100%伸張時弾性率がある値以上であって、正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値がある値以下であり、かつカーボンブラックを多量に含むゴム組成物を、特にサイド補強層及び/又はビードフィラーに用い、カーカス層に特定のセルロース系繊維を用いることにより、通常走行時の転がり抵抗性と乗り心地を損なうことなく、ランフラット耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の空気入りタイヤの一実施態様の断面を示す模式図である。
【図2】ゴム組成物の加硫ゴム物性におけるΣtanδ(28〜150℃)を求めるための説明図である。
【図3】補強コードの応力(荷重)−伸び曲線の一例を示すグラフである。
【符号の説明】
【0068】
1、1' ビードコア
2 カーカス層
3 サイドゴム層
4 トレッドゴム層
5 ベルト層
6 インナーライナー
7 ビードフィラー
8 サイド補強層
10 ショルダー区域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビードコア、並列された複数の補強コードが被覆ゴムに埋設された1枚以上のカーカスプライを有するカーカス層、トレッドゴム層、インナーライナー、サイド補強層及びビードフィラーを具える空気入りタイヤであって、該補強コードがセルロース系繊維を原料とし、50cN/dtex以上のコード弾性率(180℃の温度及び補強コード1本あたり29.4Nの力を加えた応力時)で表される剛性を有し、(A)ゴム成分と、その100質量部に対し、(B)カーボンブラック55質量部以上を含み、かつ加硫ゴム物性において、100%伸張時弾性率(M100)が10MPa以上及び正接損失tanδの28℃〜150℃におけるΣ値が6.0以下であるゴム組成物を用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
ゴム組成物において、(B)カーボンブラックが、FEF級グレード、FF級グレード、HAF級グレード、ISAF級グレード及びSAF級グレードの中から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
(B)カーボンブラックがFEF級グレードである請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
ゴム組成物において、(A)ゴム成分が、アミン変性共役ジエン系重合体を含むものである請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
アミン変性共役ジエン系重合体が、プロトン性アミン変性共役ジエン系重合体である請求項4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
アミン変性共役ジエン系重合体が、一級アミン変性共役ジエン系重合体である請求項4又は5に記載の空気入りタイヤ。
【請求項7】
一級アミン変性共役ジエン系重合体が、共役ジエン系重合体の活性末端に、保護化一級アミン化合物を反応させて得られたものである請求項6に記載の空気入りタイヤ。
【請求項8】
共役ジエン系重合体が、有機アルカリ金属化合物を開始剤とし、有機溶媒中で共役ジエン化合物単独、又は共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とをアニオン重合させて得られたものである請求項7に記載の空気入りタイヤ。
【請求項9】
共役ジエン系重合体が、ポリブタジエンである請求項8に記載の空気入りタイヤ。
【請求項10】
保護化一級アミン化合物が、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシランである請求項7〜9のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項11】
補強コードの上撚り係数が、0.3〜0.7である請求項1〜10のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項12】
補強コードの下撚り係数が、0.3〜0.7である請求項1〜11のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項13】
上撚り係数と下撚り係数とが、異なることを特徴とする請求項12に記載の空気入りタイヤ。
【請求項14】
上撚り係数が、下撚り係数より大きいことを特徴とする請求項13に記載の空気入りタイヤ。
【請求項15】
セルロース系繊維が、レーヨン又はリヨセルからなるものである請求項1〜14のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項16】
補強コードが、300℃以上の融点を有する有機繊維からなるものである請求項1〜15のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項17】
サイド補強層に、前記ゴム組成物を用いてなる請求項1〜16のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項18】
ビードフィラーに、前記ゴム組成物を用いてなる請求項1〜17のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【請求項19】
サイド補強層及びビードフィラーに、前記ゴム組成物を用いてなる請求項1〜18のいずれかに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−70119(P2010−70119A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241311(P2008−241311)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】