説明

空気入りタイヤ

【課題】ベルト端における歪エネルギー損失を抑制し、タイヤの諸性能を維持しながら、転がり抵抗をさらに低減した空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】1対のビードコア間でトロイド状に延びるカーカスを骨格とし、このカーカスの径方向外側に、複数のベルト層からなるベルトおよび、タイヤ赤道面に沿って延びる複数の周方向溝が形成されたトレッドを具える空気入りタイヤにおいて、前記トレッドは、少なくとも1層のトレッドゴム層からなり、前記複数のベルト層の端部うち、タイヤ幅方向最外側に位置する端部を覆うように、前記ベルトと前記トレッドゴム層との間に、ゴムシートが配置され、60℃における前記ゴムシートの損失正接は、前記トレッドゴム層の損失正接より低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、転がり抵抗を低減させた空気入りタイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化をはじめとする環境問題を考慮した開発が活発に行われており、その一例として、自動車の低燃費化が挙げられる。これを達成するための一つの手段として、タイヤの転がり抵抗の低減があり、従来から、様々な技術開発が行われている。
【0003】
タイヤは負荷転動時に、トレッド部、サイドウォール部その他に曲げ変形、剪断変形等が発生し、変形エネルギーが熱エネルギーとして消費されることによって、エネルギー損失が発生する。このエネルギー損失は、トレッド部を構成するトレッドゴム内にて特に多く発生するので、これを低減させることが、タイヤの転がり抵抗の効果的な低減につながることになる。直接的な改良方法として、トレッドゴムを、損失正接(tanδ)が小さいものに変更することが挙げられる。しかし、この方法では、耐摩耗性能をはじめとするタイヤの諸性能が犠牲になることも知られている。一方、転がり抵抗を増加させる発生源であるゴムを減らすために、トレッド部の厚さを薄くする方法も容易に考えられるが、この場合はタイヤの摩耗までの寿命を十分に確保できないことが問題になる。
例えば、特許文献1では、タイヤの断面形状を工夫して転がり抵抗を低減することが提案されている。この提案によって、操縦安定性、耐摩耗性、耐久性等を確保しつつ転がり抵抗の低減を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−1360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
トレッドゴムで発生する歪エネルギー損失を詳細に解析すると、せん断変形(タイヤ周方向およびタイヤ幅方向)による歪エネルギー損失が支配的であり、特にショルダー部のベルト端において歪エネルギー損失が大きいことが分かった。
そこで、本発明は、ベルト端における歪エネルギー損失を抑制し、タイヤの諸性能を維持しながら、転がり抵抗をさらに低減した空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、以下のとおりである。
(1)1対のビードコア間でトロイド状に延びるカーカスを骨格とし、このカーカスの径方向外側に、複数のベルト層からなるベルトおよび、タイヤ赤道面に沿って延びる複数の周方向溝が形成されたトレッドを具える空気入りタイヤにおいて、
前記トレッドは、少なくとも1層のトレッドゴム層からなり、
前記複数のベルト層の端部うち、タイヤ幅方向最外側に位置する端部を覆うように、前記ベルトと前記トレッドゴム層との間に、ゴムシートが配置され、
60℃における前記ゴムシートの損失正接は、前記トレッドゴム層の損失正接より低い、
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【0007】
(2)前記カーカスは、前記1対のビードコア間でトロイド状に延びるカーカス本体部から、前記ビードコアの周りにタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返されて、前記ベルトと前記カーカス本体部との間まで延びるカーカス折返し部を有することを特徴とする上記(1)に記載の空気入りタイヤ。
【0008】
(3)前記ゴムシートのタイヤ幅方向内側端部は、前記複数の周方向溝のうちタイヤ幅方向最外側の周方向溝のタイヤ幅方向外側端部より10mm以上タイヤ幅方向外側にあり、
前記ゴムシートのタイヤ幅方向外側端部は、前記複数のベルト層の端部うち、タイヤ幅方向最外側に位置する端部より10mm以上20mm以下タイヤ幅方向外側にある、
ことを特徴とする上記(1)または(2)に記載の空気入りタイヤ。
【0009】
(4)前記トレッドは、ベースゴム層と、該ベースゴム層の径方向外側のキャップゴム層と、からなり、
60℃における前記ゴムシートの損失正接tanδgと、前記ベースゴム層の損失正接tanδbと、前記キャップゴム層の損失正接tanδcとは、
tanδg<tanδb<tanδc
の関係を満足することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施例に係る空気入りタイヤのトレッド半部の幅方向断面図である。
【図2】本発明の第2実施例に係る空気入りタイヤのトレッド半部の幅方向断面図である。
【図3】本発明の第3実施例に係る空気入りタイヤのトレッド半部の幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の空気入りタイヤを詳細に説明する。
図1に本発明の第1実施例に係る空気入りタイヤのトレッド半部の幅方向断面図を示す。本発明の空気入りタイヤは、1対のビードコア間でトロイド状に延びるカーカス2を骨格とし、このカーカス2の径方向外側に、2層の傾斜ベルト層3a、3bからなるベルトおよびトレッド6を具える。カーカス2は、カーカスプライの端部がビード部で終端するローターンアップ構造である。2層の傾斜ベルト層3a、3bは、タイヤ赤道面CLに対して斜めに、かつ層間で互いに交差する向きに延びるコードの多数本をゴムで被覆したものである。トレッド6には、タイヤ赤道面CLに沿って延びる複数の周方向溝9が形成されている。
トレッド6は1層のトレッドゴム層であるキャップゴム層6Cからなるシングル構造である。
また、2層の傾斜ベルト層3a、3bの端部うち、タイヤ幅方向最外側に位置する端部3aEを覆うように、2層の傾斜ベルト層3a、3bのうち径方向最外側の傾斜ベルト層3bとキャップゴム層6Cとの間に、ゴムシート7が配置されている。60℃におけるゴムシート7の損失正接は、キャップゴム層6Cの損失正接より低い。
【0012】
図2に本発明の第2実施例に係る空気入りタイヤのトレッド半部の幅方向断面図を示す。第2実施例に係る空気入りタイヤでは、第1実施例に係る空気入りタイヤの構成要素と同一の構成要素には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
カーカス2は、カーカスプライの端部がサイドウォール中央部まで延びるハイターンアップ構造である。
トレッド6はベースゴム層6Bと、このベースゴム層6Bの径方向外側のキャップゴム層6Cと、からなるキャップ/ベース構造である。
また、2層の傾斜ベルト層3a、3bの端部うち、タイヤ幅方向最外側に位置する端部3aEを覆うように、2層の傾斜ベルト層3a、3bのうち径方向最外側の傾斜ベルト層3bとベースゴム層6Bとの間に、ゴムシート7が配置されている。60℃におけるゴムシート7の損失正接は、ベースゴム層6Bの損失正接およびキャップゴム層6Cの損失正接より低い。
【0013】
図3に本発明の第3実施例に係る空気入りタイヤのトレッド半部の幅方向断面図を示す。第3実施例に係る空気入りタイヤでは、第1実施例および第2実施例に係る空気入りタイヤの構成要素と同一の構成要素には、同一の参照符号を付してその説明を省略する。
カーカス2は、1対のビードコア間でトロイド状に延びるカーカス本体部2hから、ビードコアの周りにタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返されて、ベルトとカーカス本体部2hとの間まで延びるカーカス折返し部2oを有する、エンベロープ構造である。
ベルトは、2層の傾斜ベルト層3a、3bおよび2層の周方向ベルト層4a、4bからなる。2層の周方向ベルト層4a、4bは、タイヤ赤道面CLに沿って延びるコードの多数本をゴムで被覆したものである。周方向ベルト層4aは、2層の傾斜ベルト層3a、3bの端部を覆うように、タイヤ赤道面CLをまたがって配置されている。周方向ベルト層4bは、ショルダー部のみに配置され、タイヤ赤道面CLを含むトレッドセンター部では途切れている。
2層の傾斜ベルト層3a、3bおよび2層の周方向ベルト層4a、4bの端部うち、タイヤ幅方向最外側に位置する端部4aE、4bEを覆うように、2層の傾斜ベルト層3a、3bおよび2層の周方向ベルト層4a、4bのうち径方向最外側の周方向ベルト層4bとベースゴム層6Bとの間に、ゴムシート7が配置されている。
また、ショルダー部において、傾斜ベルト層3aとカーカス折返し部2oとの間にクッションゴム8が配置されている。
【0014】
以下、本発明の作用を説明する。
上述したとおり、路面に接するキャップゴム層6Cの損失正接を小さいものに変更することは、耐摩耗性等が犠牲になるため有効な手段ではない。そこで、第1実施例では、ショルダー部のベルト端の位置に、キャップゴム層6Cの損失正接より低い損失正接を有するゴムシート7を配置することにより、この位置における歪エネルギー損失を抑制し、転がり抵抗の低減を実現している。
第2実施例のように、トレッド6にキャップ/ベース構造を採用した場合、一般的には、ベースゴム層6Bの損失正接(tanδ)を、キャップゴム層6Cの損失正接より小さいものとして発熱を抑えている。そこで、ショルダー部のベルト端における歪エネルギー損失を抑制するために、この位置におけるゴム、すなわち、ベースゴム層6Bを厚くすることが考えられる。そこで、ベースゴム層6Bをタイヤ幅方向全域にわたって全体的に厚くすると、その分キャップゴム層6Cが薄くなることになるので、キャップゴム層6Cにより所期した性能、例えば、耐摩耗性能および耐久性能を悪化させるおそれがある。一方、ショルダー部のベースゴム層6Bのみを厚くすると、トレッド6のコンター形状の複雑化やそれに伴う製品寸度のバラツキが多くなり、諸性能の悪化および製品不良が増加するおそれがある。
それゆえ、本発明では、ベースゴム層6Bとは別体で、ベースゴム層6Bの損失正接より小さい損失正接を有するゴムシート7を、ショルダー部のベルト端を覆うように配置することにより、上述した問題を解消することができる。また、ゴムシート7を貼る工程は、容易であるため、生産性の低下は最小限に抑えられる。
特に、第3実施例に係る空気入りタイヤの場合、エンベロープ構造を採用しているため、歪が集中するベルト端の下にカーカス折返し部2oが存在する。このため、エンベロープ構造の空気入りタイヤでは、ハイターンアップ構造やローターンアップ構造の空気入りタイヤに比較して転がり抵抗が増加しやすい。そこで歪エネルギーが最も発生しやすいベルト端を損失正接の低いゴムシート7で覆うことにより、歪により発生する熱を効率的に抑制することができるので、本発明の効果が顕著に発揮される。
【0015】
図3に示すように、ゴムシート7のタイヤ幅方向内側端部7IEは、タイヤ幅方向最外側の周方向溝9のタイヤ幅方向外側端部より10mm以上タイヤ幅方向外側にあることが好ましい。ショルダー部に位置する周方向溝9付近の陸部は、タイヤ転動時に圧縮等の変形が繰り返し起こる。それゆえ、ゴムシート7をこの周方向溝9の付近に、すなわち、ゴムシート7のタイヤ幅方向内側端部7IEをタイヤ幅方向最外側の周方向溝9のタイヤ幅方向外側端部より10mm未満の位置に配置すると、耐久性が劣るおそれがある。
一方、ゴムシート7のタイヤ幅方向外側端部7OEは、2層の傾斜ベルト層3a、3bおよび2層の周方向ベルト層4a、4bの端部うち、タイヤ幅方向最外側に位置する端部4aE、4bEより10mm以上20mm以下タイヤ幅方向外側にあることが好ましい。周方向ベルト層4a、4bの端部4aE、4bEは、成型時に径方向外側に跳ね上がる傾向にあるため、端部7OEが端部4aE、4bEより10mm未満の位置に配置されると、この跳ね上がり現象により、作業性が低下、及び製品不良が増加するおそれがある。また、本発明ではゴムシート7を追加している分、サイドゴム10を薄くして、製品時の空気入りタイヤのゲージを維持している。それゆえ、端部7OEを端部4aE、4bEより20mm超の位置に配置すると、サイドゴム10を薄くする領域が拡大し、成型時に不良が生じやすく、作業性が低下するおそれがある。
それゆえ、各種性能を維持しながら転がり抵抗を低減するために、ゴムシート7の長さおよび配置位置を上記のように規定している。
【0016】
60℃におけるゴムシート7の損失正接tanδgと、ベースゴム層6Bの損失正接tanδbと、キャップゴム層6Cの損失正接tanδcとは、
tanδg<tanδb<tanδc
の関係を満足することが好ましい。
ゴムの損失正接を低下させると、発熱性が低下するため、転がり抵抗が低減して、転がり抵抗性能が向上する。しかし、ゴムの損失正接を低下させると、ウェット性能も低下することが分かっている。それゆえ、キャップゴム層6Cの損失正接tanδcを変更せず、ウェット性能を維持したまま、歪が大きく、エネルギー損失が大きい位置に、最も損失正接が低いゴムシート7を配置することにより、効率よく転がり抵抗性能を向上することができる。
【0017】
本発明の空気入りタイヤは、上述した第1実施例〜第3実施例に限定されるものではない。例えば、ベルトは、3層の傾斜ベルト層を有することもできる。また、図3では、周方向ベルト層4a、4bの端部4aE、4bEはタイヤ幅方向に同一の位置にあるが、ずれていてもよい。また、カーカス2を2層のカーカスプライから構成し、1層のカーカスプライをハイターンアップ構造とし、もう1層のカーカスプライをローターンアップ構造とすることもできる。
【実施例】
【0018】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。
発明例タイヤおよび比較例タイヤ(いずれも、タイヤサイズ:195/65R15)を試作し、以下に説明する各種性能を評価した。
【0019】
発明例タイヤ1−1〜1−3および比較例タイヤ1−1〜1−3について、ゴムシート7の有無による転がり抵抗を測定した。
発明例タイヤ1−1は、図3に示す構造および表1に示す仕様を有する。
比較例タイヤ1−1は、ゴムシート7を有さない点以外、発明例タイヤ1−1と同様である。
発明例タイヤ1−2は、カーカス2がハイターンアップ(HTU)構造である点以外、発明例タイヤ1−1と同様である。
比較例タイヤ1−2は、ゴムシート7を有さない点以外、発明例タイヤ1−2と同様である。
発明例タイヤ1−3は、カーカス2がローターンアップ(LTU)構造である点以外、発明例タイヤ1−1と同様である。
比較例タイヤ1−3は、ゴムシート7を有さない点以外、発明例タイヤ1−3と同様である。
【0020】
(転がり抵抗試験)
転がり抵抗試験は、各供試タイヤを標準リムに組み付け、内圧を210kPaに調整した後、直径1.7mの鉄板表面を持つドラム試験機(速度:80km/h)を用いて、車軸の転がり抵抗力を求めることにより行った。この転がり抵抗の測定はISO18164に準拠し、スムースドラム、フォース式にて実施したものである。転がり抵抗が小さい程、性能が良好であることを示している。
【0021】
【表1】

【0022】
表1より、カーカス構造によらず、ゴムシート7を有する発明例タイヤでは、転がり抵抗が低減していることが分かる。
また、エンベロープ構造の場合、ゴムシート7を有する発明例タイヤ1−1は、ゴムシート7を有さない比較例タイヤ1−1より、転がり抵抗が2.3%改善していることが分かる。ハイターンアップ構造の場合、ゴムシート7を有する発明例タイヤ1−2は、ゴムシート7を有さない比較例タイヤ1−2より、転がり抵抗が1.2%改善していることが分かる。ローターンアップ構造の場合、ゴムシート7を有する発明例タイヤ1−3は、ゴムシート7を有さない比較例タイヤ1−3より、転がり抵抗が1.2%改善していることが分かる。
【0023】
発明例タイヤ2−1〜2−4について、ゴムシート7の長さおよび/または配置位置を変更して溝底クラックの発生率とベルト下エアの発生率を測定した。
発明例タイヤ2−1〜2−4は、図3に示す構造および表2に示す仕様を有する。
(溝底クラックの発生率およびベルト下エアの発生率の確認)
各発明例タイヤにつき、100本のタイヤを製造し、得られた各供試タイヤを標準リムに組み付け、内圧を210kPaに調整した後、車両に装着して5万kmの走行試験を行い、タイヤ幅方向最外側の周方向溝9の溝底のクラックの発生状況を確認した。
また、溝底クラックの発生状況を確認後、各供試タイヤにつき、タイヤ赤道面CLに沿って切断し、傾斜ベルト層3aの下のエアの発生状況を確認した。
表2中、溝からの距離とは、ゴムシート7のタイヤ幅方向内側端部7IEの、周方向溝9のタイヤ幅方向外側端部からの距離であり、ベルト端からの距離とは、ゴムシート7のタイヤ幅方向外側端部7OEの、周方向ベルト層4a、4bの端部4aE、4bEからの距離である。
【0024】
【表2】

【0025】
表2より、ゴムシート7のタイヤ幅方向内側端部7IEがタイヤ周方向溝9のタイヤ幅方向外側端部より10mm以上タイヤ幅方向外側にあり、かつ、ゴムシート7のタイヤ幅方向外側端部7OEが、周方向ベルト層4a、4bの端部4aE、4bEより10mm以上20mm以下タイヤ幅方向外側にある発明例タイヤ2−1では、溝底クラック発生率およびベルト下エア発生率がともに0%であることが分かる。
【0026】
発明例タイヤ3−1、3−2および比較例タイヤ3−1〜3−4について、ゴムシート7の有無および、ゴムシート7とベースゴム層(BASE)6Bとキャップゴム層(CAP)6Cとの損失正接を変更して、転がり抵抗およびウェットブレーキ性能を測定した。
発明例タイヤ3−1、3−2および比較例タイヤ3−1〜3−4は、図3に示す構造および表3に示す仕様を有する。
(ウェットブレーキ性能)
各供試タイヤを標準リムに組み付け、内圧を車両指定圧に調整した後、車両に装着して、平均水深さ2mmの滞水路面を速度80km/hで走行した後に急ブレーキをかけて、制動距離を測定した。結果は、発明例タイヤ3−1の性能を100として指数表示した。なお、数値(減速度指数)が大きいほど性能に優れていることを示す。
【0027】
【表3】

【0028】
表3より、ゴムシート7を有し、かつ、ゴムシート7とベースゴム層6Bとキャップゴム層6Cとの損失正接が、ゴムシート<ベースゴム層<キャップゴム層の関係を満足する発明例タイヤ3−1が、転がり抵抗を低く維持するとともに、ウェットブレーキ性能にも優れていることが分かる。
【符号の説明】
【0029】
2 カーカス
3a 傾斜ベルト層
3b 傾斜ベルト層
4a 周方向ベルト層
4b 周方向ベルト層
6 トレッド
6C キャップゴム層
6B ベースゴム層
7 ゴムシート
8 クッションゴム
9 周方向溝
10 サイドゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1対のビードコア間でトロイド状に延びるカーカスを骨格とし、このカーカスの径方向外側に、複数のベルト層からなるベルトおよび、タイヤ赤道面に沿って延びる複数の周方向溝が形成されたトレッドを具える空気入りタイヤにおいて、
前記トレッドは、少なくとも1層のトレッドゴム層からなり、
前記複数のベルト層の端部うち、タイヤ幅方向最外側に位置する端部を覆うように、前記ベルトと前記トレッドゴム層との間に、ゴムシートが配置され、
60℃における前記ゴムシートの損失正接は、前記トレッドゴム層の損失正接より低い、
ことを特徴とする空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記カーカスは、前記1対のビードコア間でトロイド状に延びるカーカス本体部から、前記ビードコアの周りにタイヤ幅方向内側から外側に向かって折り返されて、前記ベルトと前記カーカス本体部との間まで延びるカーカス折返し部を有することを特徴とする請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ゴムシートのタイヤ幅方向内側端部は、前記複数の周方向溝のうちタイヤ幅方向最外側の周方向溝のタイヤ幅方向外側端部より10mm以上タイヤ幅方向外側にあり、
前記ゴムシートのタイヤ幅方向外側端部は、前記複数のベルト層の端部うち、タイヤ幅方向最外側に位置する端部より10mm以上20mm以下タイヤ幅方向外側にある、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記トレッドは、ベースゴム層と、該ベースゴム層の径方向外側のキャップゴム層と、からなり、
60℃における前記ゴムシートの損失正接tanδgと、前記ベースゴム層の損失正接tanδbと、前記キャップゴム層の損失正接tanδcとは、
tanδg<tanδb<tanδc
の関係を満足することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の空気入りタイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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