説明

空気式ポジショナ用の安全オーバーライド回路およびその使用方法

システムおよびプロセスによって、安全オーバーライドの最中の空気式ポジショナの性能を高めることができる。ある実装形態においては、システムおよびプロセスは、入力制御信号を受け取り、その入力制御信号を使用して空気式ポジショナの制御回路を作動させ、入力制御信号に少なくとも部分的に基づいて制御回路で信号/圧力コンバータ用の制御信号を生成する機能を含むことができる含むことができる。このシステムおよびプロセスは、入力信号に基づいて空気式ポジショナの危険動作条件を検知し、その危険動作条件の検知に応答してコンバータを安全状態に移行させるように制御信号を修正する機能を含むこともできる。このシステムおよびプロセスは、コンバータが安全状態にある間、制御回路を入力制御信号によって引き続き作動させたままにする機能をさらに含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に空気式デバイスに関し、より具体的には空気式ポジショナに関する。
【背景技術】
【0002】
空気式デバイス(pneumatic device)は、商業および工業のさまざまな状況で使用されている。空気式デバイスは、それらの多様な用途のために、安全および/またはシステム運用上の理由からそれらの動作が決定的に重要となる状況で動作する場合が多い。一般的な空気式デバイスには、レンチ、エレベータ(lift)、およびポジショナ(positioner)が含まれる。
【0003】
空気式ポジショナ(pneumatic positioner)は、空圧弁やエアフロー・デバイスなどを含む多様なデバイスにおいて使用することができる。動作中には、温度や圧力が安全な動作の上限を超えるなどの危険動作条件が発生するおそれがある。そのような場合には、ポジショナを遮断することが望ましいことがあり、これは通常、空気式ポジショナを安全状態に移行させること、および電子部品から電力を取り除くことを含む。空気式ポジションを安全状態に移行させることは、たとえば、危険動作条件が検知されたときにポジションを大気へ排気することによって達成することができる。
【発明の要約】
【0004】
本開示では、空気式ポジショナ用の遮断オーバーライド回路(shutdown override circuit)およびその使用方法について述べる。ある一般的な態様では、安全オーバーライドを空気式ポジショナにおいて実施するプロセスは、入力制御信号を受け取るステップと、入力制御信号を使用して空気式ポジショナの制御回路を作動させるステップと、入力制御信号に少なくとも部分的に基づいて制御回路で信号/圧力コンバータ用の制御信号を生成するステップとを含むことができる。このプロセスはまた、入力信号に基づいて空気式ポジショナの危険動作条件を検知するステップと、危険動作条件の検知に応答してコンバータを安全状態(safe state)に移行させるように制御信号を修正するステップと、コンバータが安全状態にある間、制御回路を入力制御信号によって引き続き作動させたままにするステップとを含むことができる。このプロセスは、アナログ回路、デジタル回路、またはそれらの組合せによって実施することができる。ある実装形態では、このプロセスは、修正された制御信号に応答してコンバータの出力ポートを大気圧まで排気するステップをさらに含むことができる。
【0005】
危険動作条件(unsafe operating condition)を検知するステップは、たとえば、入力トリップ信号が起動したことを検知するステップを含むことができる。特定の実装形態では、危険動作条件を検知するステップは、入力制御信号の電流レベルが閾値の外にあることを検知するステップを含むことができる。入力制御信号の電流レベルが閾値の外にあることを検知するステップは、入力制御信号に基づいて特性電圧を生成するステップと、基準電圧を特性電圧と比較するステップと、その比較に基づいて入力制御信号の電流レベルが閾値より下に下がったことを判定するステップとを含むことができる。
【0006】
このプロセスはまた、空気式ポジショナの危険動作条件を感知するステップと、その検知に基づいてコンバータを安全状態に移行させるように制御信号を修正するステップとを含むことができる。
【0007】
別の一般的な態様においては、空気式ポジショナは、コンバータ、制御回路、および安全オーバーライド回路を含むことができる。コンバータは、制御信号に応答して出力ポートにおける圧力を生成するように動作可能とすることができる。制御回路は、入力制御信号を使用して作動することができ、入力制御信号に少なくとも部分的に基づいてコンバータ用の制御信号を生成するように動作可能とすることができる。安全オーバーライド回路は、入力信号に応答してコンバータ用の制御信号を修正するように動作可能とすることができ、修正された制御信号は、コンバータを安全状態に移行させ、コンバータが安全状態にある間、安全オーバーライド回路は、制御回路を入力制御信号によって引き続き作動させたままにする。コンバータは、たとえば、出力ポートを大気圧まで排気することによって安全状態に移行することができる。制御回路は、少なくとも1つの外部デバイスからのデジタル信号を伝達および受信するように動作可能とすることができる。
【0008】
ある実装形態では、コンバータによって生成された圧力によって制御される弁を含むことができる。安全オーバーライド回路は、外部で生成されたトリップ信号および/または入力制御信号によって制御することができる。安全オーバーライド回路は、たとえば、入力制御信号を表す特性電圧を基準電圧と比較するように動作可能な比較回路を含むことができる。
【0009】
特定の実装形態では、空気式ポジショナの危険動作条件を検知するように動作可能な少なくとも1つのセンサを含むことができ、制御回路は、その検知に基づいてコンバータを安全状態に移行させるように制御信号を修正することができる。
【0010】
別の態様においては、空気式ポジショナ用の安全オーバーライドは、第1の入力、第2の入力、およびトランジスタを含むことができる。第1の入力は、入力信号を受け取るように動作可能とすることができ、第2の入力は、信号/圧力コンバータ用の制御信号を受け取るように動作可能とすることができる。トランジスタは、たとえばMOSFETとすることができ、第1の端子、第2の端子、および第3の端子を含むことができ、第1の端子は、入力信号に基づいて決定される電圧を有し、第2の端子は、第2の入力に結合され、および第3の端子は、出力信号/圧力コンバータ信号を伝達するように動作可能であり、トランジスタは、制御信号がそのトランジスタを通じて第3の端子に流れることを防ぐように第1端子の電圧によって制御可能である。
【0011】
ある実装形態では、回路は、トランジスタの第1の端子に結合された第1の抵抗端子と、第2の入力に結合された第2の抵抗端子とを有する少なくとも1つの抵抗を含むこともできる。安全オーバーライド回路は、複製のオーバーライド回路をさらに含むことができ、それぞれの複製のオーバーライド回路は、それぞれの第1の入力、それぞれの第2の入力、およびそれぞれのトランジスタを有する。
【0012】
入力信号は、たとえば、外部で生成されたトリップ信号および/または外部で生成された制御信号とすることができる。制御信号は、たとえば、外部制御信号から生成された電流とすることができる。回路は、トランジスタに結合されている比較回路であって、入力信号電流を表す特性電圧を基準電圧と比較するように動作可能な比較回路を含むことができる。
【0013】
安全オーバーライドのデバイスおよび技術は、従来のシステムに関連する1つまたは複数の欠点を軽減したり解消したりすることができる。たとえば、安全オーバーライドのデバイスおよび技術は、不適切な入力信号に応答して制御信号を止めるための有効なオペレーションを提供する一方で、ポジショナ用の動力を依然として保持することができる。したがって空気式デバイスは、不適切な入力信号による問題に苛まれるおそれのあるプログラムおよび制御電子機器に関わることなく、安全状態に移行することができる。その一方で、そのプログラムおよび電子機器もまた、引き続き機能することができる。したがってポジショナは、遮断モードにある間に診断および/または状況の更新を提供することができる。別の例としては、安全オーバーライドのデバイスおよび技術は、セキュリティーを高めるための冗長性を提供することができる。
【0014】
1つまたは複数の実装形態の詳細が、添付の図面および以降の説明に記載されている。本開示の詳細な特徴は、それらの説明および図面から、ならびに特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、安全オーバーライド回路200を含む空気式ポジショナ100の実装形態の一例を示している。この実装形態においては、安全オーバーライド回路200は、起動条件に応答して電気/圧力(E/P)コンバータ102の出力圧力を大気圧まで戻す。空気式ポジショナ100は、入力信号106によって制御され、この入力信号106は、次いでE/Pコンバータ102用の制御回路108を作動させるために使用される。特定の実装形態では、入力信号106は、他の情報を空気式ポジショナ100に伝達するために使用することもできる。一般に制御回路108は、E/Pコンバータ102に、そのE/Pコンバータ102の出力ポート110において圧力を生成させ、その圧力は、制御下にある機器(equipment
under control: EUC)112を操作するために使用される。動作中に危険条件が検知された場合、安全オーバーライド回路200は、E/Pコンバータ102用の制御信号115を遮断する一方で、入力信号106がE/Pコンバータ102用の制御回路108を引き続き作動させたままにする。記載の実装形態の詳細な特徴について、以降でさらに詳しく述べる。
【0016】
E/Pコンバータ102は、E/Pコンバータ102の出力ポート110における圧力を調整する任意の電気制御式のデバイスとすることができる。この実装形態においては、E/Pコンバータ102は、加圧された空気供給源(air supply)116を使用して圧力の出力を生成する。典型的な空気供給源116は、150psiまで加圧することができる。一般に、制御信号を、他の電気制御式の機器で典型的に使用されるレベルに対応させるために、アナログ電流信号(たとえば0.1mA〜1.6mA)が、空気式ポジショナ102の制御に使用される。しかし原則として、任意の電流範囲を使用することができ、あるいはE/Pコンバータ102を、出力圧力を生成するための電圧制御式のデバイスや他の電子制御式の機器に置き換えることさえできる。したがって、以降の説明では電流/圧力コンバータの例について論じるかもしれないが、記載の実装形態は、他の電気/圧力コンバータや他の信号/圧力コンバータでも機能するように適切に修正することができるということを理解されたい。E/Pコンバータ102の出力圧力は、出力圧力の利得を生成するために使用される空気式リレー118に適用することができる。E/Pコンバータ102または空気式リレー118は、排気装置120を有することができ、この排気装置120は、出力ポート110を大気へ排気して、出力ポート110の圧力を大気圧まで戻すことができる。
【0017】
EUC 112は、E/Pコンバータ102の出力圧力によって機械的に操作できる任意のデバイスとすることができる。たとえばEUC 112は、さまざまな位置に移動する空圧制御式の弁とすることができる。空気式ポジショナ100と、EUC 112との間には、任意の適切な形態の空気式または他の機械的接続を採用することができる。特定の実装形態では、EUC 112は、「初期設定状態」または「安全状態」を有し、入力圧力が大気圧まで戻されたときに、EUC 112は、その「初期設定状態」または「安全状態」に戻る。たとえば、EUC 112が弁である場合には、その弁は、入力圧力が大気レベルまで戻ったことに応答して開位置または閉位置に移動することができる。
【0018】
制御回路108は、E/Pコンバータ102の制御や操作に役立つ任意のハードウェアおよび/またはソフトウェアを含むことができる。記載の実装形態では、制御回路108は、とりわけアナログ/デジタル(A/D)コンバータ124と、圧力制御装置126と、HARTモデム128と、電力コンバータ132とに連結された処理モジュール122を含み、この処理モジュール122は、入力信号106から動力を得て、空気式ポジショナ100のさまざまな部品を作動させる。一般に処理モジュール122は、入力信号106と、さまざまなセンサ130(130A、130B、130C、...、130Kの総称)から収集された情報とに基づいてE/Pコンバータ102用の圧力制御装置126を制御する。危険条件(たとえば、1つまたは複数の検査の最中における範囲外の信号、位置、温度、基準電圧、および/または圧力値、メモリ障害、ならびに/あるいはE/Pコンバータおよび/またはリレー感度の劣化)が検知された場合には、処理モジュール122は、圧力制御装置126によって出力された制御信号114を遮断することができる。処理モジュール122は、エラー通知信号131を生成することもできる。他の通信デバイス(たとえばHARTモデム128)を介して、さらなる障害の識別および分析を実施することもできる。
【0019】
処理モジュール122は、任意の適切なアルゴリズムや他の一式の命令に従って情報を操作するのに役立つハードウェアおよび/またはソフトウェアの任意の集まりとすることができる。処理モジュール122は、処理モジュール122が他の任意の電子デバイスから情報を受け取ること、その情報を使用してオペレーションを実行すること、および他の電子デバイスに伝達される信号を生成することを可能にするための任意の数や種類のプロセッサ、メモリ・モジュール、インターフェースなどを含むことができる。詳細には、処理モジュール122は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル・シグナル・プロセッサ(DSP)、および特定用途向け集積回路(ASIC)を含むことができる。処理モジュール122は、揮発性または不揮発性の情報ストレージ(information storage)を含むことができ、その例としては、磁気メモリ、フラッシュ・メモリ、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、および読取専用メモリ(ROM)が含まれる。処理モジュール122は、入力信号106に含めて伝達されるコマンドなどのメッセージを受け取るためのHARTモデム128を使用することもできる。特定の実装形態では、処理モジュール112は、HARTモデム128から受け取ったコマンドに基づいてプログラムすることができる電子的消却・プログラム可能型読取専用メモリ(EEPROM)を含むことができる。処理モジュール122は、デジタル処理モジュール122として示されているが、他の実装形態では、1つまたは複数の類似の機能を実行するアナログ回路で代用することができる。
【0020】
A/Dコンバータ124は、必要に応じてアナログ信号をデジタル信号に変換して、それらの信号を処理モジュール122によって処理できるようにする。処理モジュール122と他の部品との間の信号を、それら部品によって使用できる形態に変換するために、さまざまな他のA/DコンバータやD/Aコンバータを採用することもできる。たとえば、処理モジュール122がメッセージを他のHARTデバイスに送信する場合には、D/Aコンバータを使用して、処理モジュール122のデジタル出力を4〜20mAのアナログ信号に変換することができる。同様に、処理モジュール122が空気式ポジショナ100の外部のデバイスからデジタル情報を送受信できるようにするために、モデム、ネットワーク・インターフェース・カード、および/または無線送受信機など、他のインターフェースを使用することもできる。
【0021】
圧力制御装置126は、処理モジュール122から受け取ったコマンドに応答してE/Pコンバータ102用の制御信号114を生成するための任意のハードウェアおよび/またはソフトウェアとすることができる。圧力制御装置126は、E/Pコンバータ102の出力ポート110に結合されている圧力センサ130Aからフィードバックを受け取って、それに応じて制御信号114を調節することができる。制御信号114は、圧力制御装置126から安全オーバーライド回路200まで伝達され、それによって安全オーバーライド回路200は、電気/圧力コンバータ102用の制御信号115を生成できるようになる。
【0022】
特定のモードのオペレーションでは、危険条件が検知されなければ、制御信号115は、制御信号114と実質的に同じものかもしれない。しかし危険条件が検知された場合には、安全オーバーライド回路200は、E/Pコンバータ102を安全状態にするための制御信号115を生成することができる。ある実装形態では、この後者のオペレーションは、制御信号114を修正するステップを含むことができる。「修正する」という表現は、本開示で使用される際には、E/Pコンバータ102からの特定の応答をもたらすために制御信号114をブーストすること、減衰すること、変形すること、遮断すること、変換すること、あるいはその他の形で操作することを含むことができる。
【0023】
センサ130は、空気式ポジショナ100および/またはEUC 112に関連する条件を監視する。そのようなセンサ130の例としては、圧力センサ、温度センサ、電圧センサ、および湿度センサが含まれる。図1に示されている空気式ポジショナ100の実装形態に図示されているように、さまざまな場所からさまざまな種類の情報を収集するために、センサ130のアレイを使用することができる。記載の実装形態では、圧力センサ130Bが、E/Pコンバータ102への空気供給源116の圧力を監視する。一対の圧力センサ130Cおよび130Dが、EUC 112の高圧力および低圧力を監視する。別の圧力センサ130Eが、空気式ポジショナ100の周辺環境の大気圧を監視する。電圧センサ130Fが、入力信号106の基準電圧レベルを監視する。温度センサ130Gが、空気式ポジショナ100の内部温度を監視する。温度センサ130Gは、サーモカップル、抵抗方式の感温デバイス(resistive imperature−sensitive device)、温度計、あるいは他の任意の適切な感温デバイスとすることができる。位置センサ130Hが、EUC 112の物理的な位置を監視し、この物理的な位置を使用して、たとえば空気式コントローラ100を較正することや、EUC 112の障害を検知することができる。位置センサ130Hは、たとえば、EUC 112に磁気的に結合されているホール効果センサや他の適切な種類のセンサとすることができる。ポテンシオメータ134もまた、EUC 112に物理的に結合されることによって、EUC 112の物理的な位置を監視することができる。位置センサ130Iが、ポテンシオメータ134の抵抗を監視する。特定の実装形態では、位置センサ130Hおよびポテンシオメータ134は、さまざまな応用例においてEUCの位置を監視するために使用することができる。たとえば、位置センサ130Hは、空気式コントローラ100が弁に直接装着されている場合に使用することができ、ポテンシオメータ134は、空気式コントローラ100が弁から離れて装着されている場合に使用することができる。電圧センサ130Jおよび130Kは、外部条件付与信号(external conditioning signal)136や、処理モジュール122からのリセット信号138など、空気式コントローラ100によって使用される特定の電圧信号に応答して特性電圧を生成する。センサ130によって収集された情報は、E/Pコンバータ102の適正な制御のためにフィードバックを提供することや、危険動作条件を検知することなどの作業のために使用することができる。
【0024】
これらのセンサは、たとえば、ポジショナ100が弁の位置を制御していることを点検するために使用することができる。遮断弁(たとえば緊急遮断の状況で作動する弁)に共通する問題は、弁が長期間にわたって作動されないことがあり、通常の(すなわち遮断されていない)状況で作動できなくなる場合があるということである。この点検は、必要なとき(たとえばトリップ信号が起動したときや、入力制御信号が限界を超えたとき)に弁が作動することを確信できるように、通常の安全な動作中に実施することができる。この点検は、危険がないときに実施されるため、システムを遮断することなく問題を修復することができる。この点検は、弁をわずかに移動させるステップや、弁の位置に対する作動装置の圧力を比較するステップ、あるいは弁が必要に応じて作動することを点検するための他の診断手段を含むことができる。
【0025】
安全オーバーライド回路200は、空気式ポジショナ100の他の部品を作動させる入力信号106の機能を中断させることなくE/Pコンバータ102に対する制御信号114の伝達を中断したり修正したりすることができる電子部品の任意の集まりとすることができる。安全オーバーライド回路200は、別個のプリント基板上など、制御回路108から離れて配置することもでき、あるいは制御回路108の1つまたは複数の部品に統合することもできる。安全オーバーライド回路200はまた、デジタル部品、アナログ部品、あるいはそれらの組合せを使用して実装することができる。記載の実装形態では、トリップ信号104が、安全オーバーライド回路200の動作を制御する。トリップ信号104は、外部の制御機構によって調整することができ、その外部の制御機構は、ポジショナ100を含む調整のプロセスおよび/または機能のさまざまな部分から受け取ったデータを判定の根拠とすることができる。安全オーバーライド回路200は、たとえば、トリップ信号104を受信したこと、トリップ信号104の状態の変化(高から低への移行など)を検知したこと、トリップ信号104の遮断を検知したこと、あるいはトリップ信号104に基づく他の多くのトリガー方法のうちの任意の方法に応答してトリガーすることができる。制御信号114に関して実行される修正は、「安全状態」に関連する処置(この例としては、初期設定状態へ移行することや、E/Pコンバータの現在の状態を凍結することが含まれる)をE/Pコンバータ102に行わせる任意の適切な修正とすることができ、これは、どの種類の制御信号115が適切な処置をもたらすかに依存する。たとえば、いくつかのE/Pコンバータは、制御信号が遮断されると大気へ排気するが、この場合は、(大気への排気が所望の安全状態だとすれば)制御信号の遮断が安全状態をもたらすことになる。
【0026】
あるモードのオペレーション・オペレーションにおいては、安全オーバーライド回路200は、入力信号106を受け取り、その入力信号106を制御回路108に提供する。制御回路108は、電力コンバータ132を使用して入力信号106によって作動し、その入力信号106に少なくとも部分的に基づいて適切な制御信号114を生成する。この制御信号114は、安全オーバーライド回路200に提供され、安全オーバーライド回路200は、制御信号115をE/Pコンバータ102に提供する。処理モジュール122が、作動中にセンサ130からの情報を監視する。センサ130によって計測された値のうちのいずれかが安全な範囲を超えるなどの危険条件が検知された場合には、処理モジュール122は、エラー通知信号131を生成する。このエラー通知信号は、たとえばデジタル出力の状態を設定することができる。また処理モジュールは、圧力制御装置126の制御信号114を、E/Pコンバータ102の安全状態をもたらすように設定することができる。
【0027】
安全オーバーライド回路200が、E/Pコンバータ102の安全状態をもたらすこともできる。これを行うために、安全オーバーライド回路200は、トリップ信号104、入力信号106、または他の任意の適切な条件を示す信号を監視することができる。これらの信号の1つが危険条件を示す場合には、安全オーバーライド回路は、制御回路108からの制御信号114をオーバーライドすることによって、E/Pコンバータ102を安全状態に移行させることができる。その一方で、安全オーバーライド回路200は、入力信号106が制御回路108に引き続き提供されるままにすることができる。したがって制御回路108は、引き続き動力を得ることができる。したがって、システム診断および状況報告など、ポジショナの電子的な機能を引き続き提供することができる。
【0028】
図2は、安全オーバーライド回路200の実装形態の一例を示している。安全オーバーライド回路200は、信頼性向上のための2つの複製のオーバーライド回路202を含む。したがって、オーバーライド回路202の一方が故障した場合には、他方が、引き続き安全機能を提供することができる。
【0029】
各オーバーライド回路202は、トリップ信号104を受け取る第1の入力204と、入力信号106に応答して制御回路108によって生成される入力E/P制御信号114を受け取る第2の入力206とを有する。各オーバーライド回路202は、制御信号114の経路にトランジスタ208を配置している。トランジスタ208は、制御端子210(ここでは電圧レギュレータとして図示されている)における制御信号に応答して電流フローを制止したり受け入れたりする任意の適切な電流制御式または電圧制御式の電子部品とすることができる。たとえばトランジスタ208は、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)のゲート端子に印加される電圧によって制御されるMOSFETなどのp型またはn型の電界効果トランジスタ(FET)とすることができる。トランジスタ208の制御に使用される電圧信号は、電圧レギュレータ210によってトランジスタ208にとって適切な電圧レベルまで引き下げられたトリップ信号104である。したがって、たとえばトランジスタ208が5ボルトのMOSFETであるならば、24ボルトのトリップ信号104を5ボルト引き下げることができる。引き下げられたトリップ信号104からの電流が、制御信号114(ここから出力E/P制御信号115が生成される)を大幅に変更することを防ぐために、オーバーライド回路202内で抵抗212および214が使用される。たとえば抵抗212は、電流フローを最小にするために1MΩなどの比較的高い抵抗値を有するように選択することができる。
【0030】
トランジスタ208は、作動中には、トリップ信号104からの引き下げられた電圧が維持されている限り電流フローを受け入れる。トリップ信号104が遮断されると、トランジスタ208を通る電流フローが遮断され、したがってE/Pコンバータ102への制御信号115が遮断される。制御信号115の遮断に応答して、E/Pコンバータ102は、大気へ排気するなど、安全状態に移行する。こうしてオーバーライド回路202は、トリップ信号104に応答して制御信号114を停止するための効果的なオペレーションを提供する。
【0031】
図3は、安全オーバーライド回路200の実装形態の別の例を示している。この実装形態の例では、2つのトランジスタ220が、それぞれの比較回路222または224によってそれぞれ制御されている。比較回路222および224は、図3に示されているop−amp比較回路など、基準入力信号を閾値入力信号と比較して、その比較に応答してそれぞれのトランジスタ220を制御する出力を生成するための任意の回路とすることができる。記載の実装形態では、安全オーバーライド回路200は、空気式ポジショナ100への入力信号106から生成された入力電流226を受け取る。抵抗228は、入力電流226を表す特性電圧の降下をもたらすように構成されている。ダイオード230および抵抗232は、入力電流226に比例する電圧を発生させる。電圧レギュレータ238が、抵抗228と共に一定の基準電圧を形成し、抵抗232にわたる電圧が、その基準電圧と比較される。抵抗234および電圧236によって、比較回路222および224の出力の高い値と低い値が規定される。
【0032】
比較回路222および224はそれぞれ、作動中には、入力電流226を表す特性電圧と、それぞれの基準電圧との比較を行う。入力電流226が低すぎることに起因して、または入力電流226が高すぎたために電圧レギュレータ238のうちの1つまたは複数が入力電流226を分流して接地したことに起因して、特性電圧が基準電圧よりも下降した場合には、比較回路222または224は、それぞれのトランジスタ220を停止し、したがってE/Pコンバータ102への電流フローが遮断される。比較回路222または224は、どちらもE/Pコンバータ102への電流フローを遮断することができるため、図3に示されている安全オーバーライド回路200の実装形態の例は、保安性を高めるための冗長性を提供する。安全オーバーライド回路200をトリガーするために使用される入力電流226は、空気式ポジショナ100への入力信号106から生成されるため、安全オーバーライド回路200は、別個のトリップ信号104を使用することなくトリガーすることができる。
【0033】
特定の実装形態では、図2〜図3によって示されている安全機能を1つの安全オーバーライド回路内に(たとえば同じ回路基板上に)提供することができる。しかし実用においては、安全機能のうちの1つしか使用されない可能性もある。さらに安全オーバーライド回路は、複製の回路を有することによって冗長性を備えるものとして図示されているが、複製ではない回路によって冗長性を備えると有利なことがあり、それによって、双方の回路が同じ条件によって影響を受ける可能性を低くすることができる。しかしある実装形態では、冗長性は不要である。
【0034】
図4は、空気式ポジショナにおいて安全オーバーライドを実施するための例示的なプロセス300を示している。プロセス300は、空気式ポジショナの用の入力信号を受け取ることから始まる(オペレーション302)。ある例においては、入力信号は、4mA〜20mAのアナログ制御信号とすることができる。プロセス300は、引き続き入力信号から動力を得て制御回路を作動させ(オペレーション304)、危険条件がないか検査する(オペレーション306)。危険条件は、たとえば範囲外のセンサ値であるかもしれない。危険条件が検知された場合には、プロセス300は、安全なE/P制御信号を生成するよう求める(オペレーション308)。その一方で、危険条件が検知されない場合には、プロセス300は、入力信号をE/P制御信号に変換するよう求める(オペレーション310)。
【0035】
プロセス300は、引き続き安全オーバーライド回路を介してE/PコンバータにE/P制御信号を伝達する(オペレーション312)。プロセス300はまた、空気式ポジショナ用の(1つまたは複数の)入力信号を監視するよう求める(オペレーション314)。それらの(1つまたは複数の)入力信号は、制御信号、トリップ信号、あるいはポジショナに提供される他の任意の信号を含むことができる。危険条件が検知されない場合(オペレーション316)、危険条件が検知されるか、または入力信号が除去される(オペレーション318)まで、オペレーション302〜314が繰り返される。危険条件は、たとえば入力信号(たとえば24ボルトのトリップ信号)の消失、および/または範囲外の制御信号(たとえば4mA〜20mA信号が使用されている場合の4mA未満の信号)であるかもしれない。
【0036】
危険条件の検知に応答して、プロセス300は、安全オーバーライド回路をトリガーするよう求める(オペレーション320)。安全オーバーライド回路がトリガーされることによって、E/Pコンバータは、電気/圧力コンバータを大気へ排気するなど、安全状態に移行し(オペレーション322)、その一方で、引き続き入力信号から動力が与えられる(オペレーション324)。ユーザの介入、トリップ信号104の回復、あるいは他の多くの可能な指標によって示されて、危険条件が是正されたと判定された場合(オペレーション326)には、空気式ポジショナは、オペレーション302〜314へ戻ることができる。そうでない場合には、空気式ポジショナの動作を元に戻すために外部の介入が適用されるまで、安全状態をしばらくの間維持することができる(オペレーション328)。
【0037】
空気式ポジショナにおいて安全オーバーライドを実施する上述のプロセスは、数多くの可能なプロセスの1つである。そのようなプロセスを実施する際には、記載されている方法の特定のオペレーションを再構成することや、削除すること、および/またはさらなるステップを追加することができる。たとえば、プロセッサで判定された障害条件に応答して安全制御信号を生成しなくてもよい。別の例としては、危険条件が検知されたときにユーザに通知を提供することもできる。上述した空気式ポジショナ100のさまざまな実装形態のいずれかと整合する他のモードのオペレーションも、空気式ポジショナにおいて安全オーバーライドを実施する可能な方法に含まれる。したがって上述のプロセスは、可能な方法を網羅する記載ではなく、説明の単なる一例として提示されている。
【0038】
本開示では、ある実装形態および一般に関連する方法について述べたが、当業者には、これらの実装形態および方法の改変や並べ替えは明らかであろう。たとえば、記載の機能を実行する上で別の回路を使用することもでき、別の形態の制御信号を使用することもでき、そしてさまざまな方法で制御信号を変換したり、処理したり、あるいはその他の形で操作したりすることもできる。したがって実装形態の例に関する上述の説明は、本発明の範囲を排他的に規定するものではない。したがって、記載の実装形態に加えて、他の変更、代用、および改変を、ここで特許請求される発明概念の範囲を判断するために使用される添付の特許請求の範囲内に含めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】安全オーバーライド回路を備える空気式ポジショナの実装形態の一例を示すブロック図である。
【図2】安全オーバーライド回路の特定の実装形態の回路図である。
【図3】安全オーバーライド回路の別の実装形態の回路図である。
【図4】空気式ポジショナにおいて安全オーバーライドを実施するための例示的なプロセスを示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御信号に応答して出力ポートにおける圧力を生成するように動作可能なコンバータと、
入力制御信号を使用して作動し、前記入力制御信号に少なくとも部分的に基づいて前記コンバータ用の制御信号を生成するように動作可能な制御回路と、
入力信号に応答して前記コンバータ用の制御信号を修正するように動作可能な安全オーバーライド回路であって、前記修正された制御信号が前記コンバータを安全状態に移行させ、前記コンバータが前記安全状態にある間、前記安全オーバーライド回路が前記制御回路を前記入力制御信号によって引き続き作動させたままにする安全オーバーライド回路と
を備える空気式ポジショナ。
【請求項2】
前記コンバータによって生成された圧力によって制御される弁をさらに備える、請求項1に記載のポジショナ。
【請求項3】
前記安全オーバーライド回路が、外部で生成されたトリップ信号によって制御される、請求項1に記載のポジショナ。
【請求項4】
前記安全オーバーライド回路が、前記入力制御信号によって制御される、請求項1に記載のポジショナ。
【請求項5】
前記安全オーバーライド回路が、前記入力制御信号を表す特性電圧を基準電圧と比較するように動作可能な比較回路を備える、請求項4に記載のポジショナ。
【請求項6】
前記制御回路が、少なくとも1つの外部デバイスからのデジタル信号を伝達および受信するように動作可能である、請求項1に記載のポジショナ。
【請求項7】
前記コンバータが、前記出力ポートを大気圧まで排気することによって前記安全状態に移行する、請求項1に記載のポジショナ。
【請求項8】
前記空気式ポジショナの危険動作条件を検知するように動作可能な少なくとも1つのセンサをさらに備え、前記制御回路が、前記検知に基づいて前記コンバータを安全状態に移行させるように前記制御信号を修正することができる、請求項1に記載のポジショナ。
【請求項9】
空気式ポジショナにおいて実行される方法であって、
入力制御信号を受け取るステップと、
前記入力制御信号を使用して前記空気式ポジショナの制御回路を作動させるステップと、
前記入力制御信号に少なくとも部分的に基づいて前記制御回路で信号/圧力コンバータ用の制御信号を生成するステップと、
入力信号に基づいて前記空気式ポジショナの危険動作条件を検知するステップと、
前記危険動作条件の検知に応答して前記コンバータを安全状態に移行させるように前記制御信号を修正するステップと、
前記コンバータが前記安全状態にある間、前記制御回路を前記入力制御信号によって引き続き作動させたままにするステップと
を含む方法。
【請求項10】
前記修正された制御信号に応答して前記コンバータの出力ポートを大気圧まで排気するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
危険動作条件を検知するステップは、入力トリップ信号が起動したことを検知するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
危険動作条件を検知するステップは、前記入力制御信号の電流レベルが閾値の外にあることを検知するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記入力制御信号の電流レベルが閾値の外にあることを検知するステップは、
前記入力制御信号に基づいて特性電圧を生成するステップと、
基準電圧を前記特性電圧と比較するステップと、
前記比較に基づいて前記入力制御信号の前記電流レベルが前記閾値より下に下がったことを判定するステップと
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記空気式ポジショナの危険動作条件を感知するステップと、
前記検知に基づいて前記コンバータを安全状態に移行させるように前記制御信号を修正するステップと
をさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項15】
空気式ポジショナ用の安全オーバーライド回路であって、
入力信号を受け取るように動作可能な第1の入力と、
信号/圧力コンバータ用の制御信号を受け取るように動作可能な第2の入力と、
第1の端子、第2の端子、および第3の端子を備え、前記第1の端子が、前記入力信号に基づいて決定される電圧を有し、前記第2の端子が、前記第2の入力に結合され、および前記第3の端子が、出力信号/圧力コンバータ信号を伝達するように動作可能なトランジスタであって、前記制御信号が前記トランジスタを通じて第3の端子に流れることを防ぐように前記第1端子の電圧によって制御可能なトランジスタと
を備える回路。
【請求項16】
前記トランジスタの前記第1の端子に結合された第1の抵抗端子と、前記第2の入力に結合された第2の抵抗端子とを有する少なくとも1つの抵抗器をさらに備える、請求項15に記載の回路。
【請求項17】
前記トランジスタがMOSFETである、請求項15に記載の回路。
【請求項18】
前記安全オーバーライド回路が、複製のオーバーライド回路を備え、それぞれの複製のオーバーライド回路が、それぞれの第1の入力、それぞれの第2の入力、およびそれぞれのトランジスタを有する、請求項15に記載の回路。
【請求項19】
前記入力信号が、外部で生成されたトリップ信号を含む、請求項15に記載の回路。
【請求項20】
前記入力信号が、外部で生成された制御信号を含む、請求項15に記載の回路。
【請求項21】
前記制御信号が、前記入力信号から生成された電流を含む、請求項20に記載の回路。
【請求項22】
前記トランジスタに結合されている比較回路であって、前記入力信号電流を表す特性電圧を基準電圧と比較するように動作可能な比較回路をさらに備える、請求項20に記載の回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−526289(P2009−526289A)
【公表日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553422(P2008−553422)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【国際出願番号】PCT/US2007/003218
【国際公開番号】WO2007/092476
【国際公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【出願人】(502122473)ドレッサ、インク (24)
【Fターム(参考)】