説明

空気式防舷材用のセンサ収納容器および空気式防舷材

【課題】センサを防舷材袋部の内部に設置する作業およびセンサを交換する作業を容易にする空気式防舷材用のセンサ収納容器および空気式防舷材を提供する。
【解決手段】口金具4を貫通する貫通孔4aに、所定の突出位置で保持される容器本体8を防舷材袋部2の外部に突出移動可能に取り付け、貫通孔4aを塞ぐ蓋部11と、容器本体8と貫通孔4aとのすき間をシールする第1シール材12と、容器本体8が防舷材袋部2の内部に設置された時に、容器本体8の内部と外部とを連通させる連通孔9と、容器本体8が所定の突出位置で保持された時に、連通孔9を通じた防舷材袋部2の内部と外部との連通を遮断する第2シール材13とを設け、容器本体8にセンサ14を収納した後、蓋部11によって貫通孔4aを塞ぐことにより、センサ14をセンサ収納容器7に収納した状態で防舷材袋部2の内部に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気式防舷材用のセンサ収納容器および空気式防舷材に関し、さらに詳しくは、センサを防舷材袋部の内部に設置する作業およびセンサを交換する作業を容易に行なうことができる空気式防舷材用のセンサ収納容器および空気式防舷材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気式防舷材は、内部に空気を密封して衝撃緩和等の所定性能を得るようにしている。そのため、正常に機能させるには内圧を把握しておくことが好ましい。近年、防舷材袋部の内部に設置した空気圧センサの検知信号を無線通信で受信することにより、空気式防舷材の内圧を把握する方法が種々提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
従来、空気圧センサは、袋体の中や口金具に不動状態に固定されて設置されていたので、空気圧センサの設置作業や交換作業を行なうには、防舷材を陸揚げして内部の空気を抜いた後、口金具を外す必要があった。そのため、空気圧センサを防舷材袋部の内部に設置する作業および交換する作業には、多大な時間および労力を要するという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−43226号公報
【特許文献2】特開2007−178214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、センサを防舷材袋部の内部に設置する作業およびセンサを交換する作業を容易に行なうことができる空気式防舷材用のセンサ収納容器および空気式防舷材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため本発明の空気式防舷材用のセンサ収納容器は、空気式防舷材の口金具に取り付けられて、防舷材袋部の内部に設置される空気式防舷材用のセンサ収納容器であって、前記口金具を貫通する貫通孔に、防舷材袋部の外部に突出移動可能に取り付けられて、所定の突出位置で保持される容器本体と、前記貫通孔を塞ぐ蓋部と、前記容器本体と貫通孔とのすき間をシールする第1シール材と、前記容器本体が防舷材袋部の内部に設置された時に、容器本体の内部と外部とを連通させる連通孔と、前記容器本体が所定の突出位置で保持された時に、前記連通孔を通じた防舷材袋部の内部と外部との連通を遮断する第2シール材とを備えたことを特徴とする。
【0007】
本発明の空気式防舷材は、上記したセンサ収納容器を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、口金具を貫通する貫通孔に、防舷材袋部の外部に突出移動可能に取り付けられて、所定の突出位置で保持される容器本体を設けたので、所定の突出位置で保持されている状態の容器本体にセンサを容易に出し入れできる。それ故、センサを防舷材袋部の内部に設置する場合は、センサを入れた容器本体を防舷材袋部の内部に押し込んだ後、貫通孔を蓋部で塞げばよい。センサを交換する場合は、蓋部を取外して容器本体を防舷材袋部の外部に突出移動させて所定の突出位置で保持した状態にする。この状態で容器本体からセンサを取出せばよい。容器本体が防舷材袋部の内部に設置された時に、容器本体の内部と外部とを連通させる連通孔を設けているので、防舷材袋部の内部に設置されたセンサは、防舷材の内部情報(圧力、温度等)を精度良く検知できる。
【0009】
上記のセンサの設置作業および交換作業中は、容器本体と貫通孔とのすき間をシールする第1シール材と、容器本体が所定の突出位置で保持された時に、連通孔を通じた防舷材袋部の内部と外部との連通を遮断する第2シール材とを備えているので、防舷材の内圧をほぼそのまま維持できる。
【0010】
したがって、本発明によってセンサの設置作業および交換作業を、従来に比して時間を短縮化するとともに軽労化できる。
【0011】
本発明の収納容器では、例えば、前記容器本体が一端を開口した有底筒状体で他端側にフランジ部を有し、前記連通孔が容器本体の周壁の形成された連通孔であり、前記第2シール材が、前記フランジ部またはフランジ部に対向する口金具の部位の少なくとも一方に取り付けられている仕様にする。この仕様によれば、容器本体が防舷材袋部の外部に突出移動した際に、フランジ部がフランジ部に対向する口金具の部位に当接するので、フランジ部が容器本体を所定の突出位置に保持するストッパになる。また、フランジ部がストッパとして機能したと同時に、第2シール材が、連通孔を通じた防舷材袋部の内部と外部との連通を遮断する。
【0012】
また、例えば、前記所定の突出位置で保持されている容器本体の口金具の底面からの突出長さが、口金具の深さ以下に設定されている仕様にする。この仕様によれば、容器本体が常時、口金具の外部に突出しないので、防舷材を運搬、保管する場合などに容器本体が損傷する危険性が低減する。これに伴って、防舷材袋部を小さく折り畳む作業も容易になる。
【0013】
前記容器本体には、空気式防舷材の内部情報を検知する各種センサを収容できるが、例えば、空気式防舷材の外部にある受信機と無線通信するセンサが収容される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の空気式防舷材を縦断面で例示する全体概要図である。
【図2】口金具の周辺を例示する縦断面図である。
【図3】口金具の周辺を例示する平面図である。
【図4】本発明のセンサ収納容器の容器本体が所定の突出位置で保持される状態を例示する縦断面で例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の空気式防舷材用のセンサ収納容器および空気式防舷材を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0016】
図1〜図4に例示するように本発明の空気式防舷材1(以下、防舷材1という)は、本発明のセンサ収納容器7を備えている。防舷材1は、ゴムを主材料として、両端にボウル状の鏡部3を備えて、円筒状に形成された防舷材袋部2を有している。この実施形態では、一方の鏡部3に口金具4が設けられているが、両側の鏡部3に設けられることもある。
【0017】
センサ収納容器7は口金具4に取り付けられている。口金具4は、円筒凹状の金具部材であり、口金具4の開口はボルト等で取付られる金具蓋部5で覆われる。口金具4には、センサ収納容器7の他に、例えば、安全弁6、内圧確認バルブ16、給気用バルブ17が取り付けられている。そして、センサ収納容器7には、空気圧センサや温度センサ等のセンサ14が収納される。
【0018】
このセンサ14は、検知した防舷材1の内部情報を無線通信で防舷材1の外部にある受信機15に送信する。例えば、センサ14により防舷材1の内圧や内部温度等を検知し、その検知データを発信して受信機15で受信することにより、外部から容易に防舷材1の内圧や内部温度等を把握することができる。
【0019】
センサ14が送信する検知データ信号の電波をシールドしないために、容器本体8は非金属製であることが好ましい。例えば、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、PVC樹脂、PP樹脂等の樹脂により容器本体8は形成される。
【0020】
センサ収納容器7は、センサ14が収納される容器本体8と、口金具4にボルト等で取付られて貫通孔4aを塞ぐ蓋部11と、第1シール材12と、第2シール材13とを備えている。容器本体8は、例えば、一端を開口した有底筒状体であり、円筒状や角筒状のものを使用することができる。また、容器本体8には周壁を貫通する連通孔9が設けられている。
【0021】
この実施形態では容器本体8の他端側に、周壁よりも外周側に広がるフランジ部10が設けられている。フランジ部10は、周方向に連続する環状であっても周方向に断続するでもよい。また、容器本体8の一端側の周壁には、突出するストッパ8aが設けられている。
【0022】
容器本体8は、口金具4を貫通する貫通孔4aに、防舷材袋部2の外部に突出移動可能に取り付けられている。即ち、容器本体8は、貫通孔4aに対して筒軸方向にスライド可能に設けられている。この容器本体8は、防舷材袋部2の外部側に突出移動するとフランジ部10が、フランジ部10よりも外径が小さい貫通孔4aを通り抜けることができずに口金具4に当接して、所定の突出位置で保持される構造になっている。
【0023】
第1シール材12は、例えば、貫通孔4aの周壁面に取り付けられるゴム製のOリングである。この第1シール材12が容器本体8の周壁外面に接することによって、容器本体8と貫通孔4aとのすき間が気密にシールされる。
【0024】
第2シール材13は、例えば、フランジ部10の鍔面に取り付けられるゴム製のOリングである。後述するように、この第2シール材13によって、容器本体8が所定の突出位置で保持された時に、連通孔9を通じた防舷材袋部2の内部と外部との連通が遮断される。
【0025】
センサ14を防舷材袋部2の内部に設置する場合は、図4に例示するように貫通孔4aに挿入されて、所定の突出位置で口金具4に保持されている容器本体8にセンサ14を収納する。この状態では、容器本体8は、防舷材1の内圧によって外部に向かって押圧されている。これにより、第2シール材13が口金具4の端面に当接して当接面どうしが気密にシールされつつ、容器本体8が所定の突出位置で口金具4に保持されている。それ故、連通孔9を通じて防舷材袋部2の内部と外部とが連通することがなく、内部に充填された空気が漏れ出ることがない。
【0026】
次いで、センサ14を収納した容器本体8を防舷材袋部2の内部に向かって押し込む。空気を充填して使用する状態での防舷材1の内圧は、5kPa〜80kPa程度なので、容器本体8は手作業で押し込むことができる。ここで、容器本体8と貫通孔4aとのすき間は、第1シール材12によって気密にシールされているので、防舷材袋部2の内部に充填された空気が漏れ出ることがない。
【0027】
ストッパ8aを設けておくと、容器本体8を押し込んだ際に、ストッパ8aが貫通孔4aに形成された係止溝に係止する。そのため、容器本体8全体が貫通孔4aを通過して防舷材袋部2の内部に落ち込むことを防止できる。
【0028】
次いで、蓋部11を口金具4に取り付けて貫通孔4aを塞ぐ。容器本体8は、防舷材1の内圧によって蓋部11に向かって押圧される。このようにして、センサ14は、防舷材袋部2の内部に設置される。その後、口金具4に金具蓋部5を取り付けることで、図2に例示する状態になる。
【0029】
防舷材袋部2の内部に設置されたセンサ14を交換する場合は、上記したセンサ14の設置作業と逆の手順を行なう。その際に、蓋部11を口金具4から取り外すと、防舷材1の内圧によって自然に容器本体8が突出移動して所定の突出位置で停止し、その状態で保持される。
【0030】
図2に例示するように容器本体8が防舷材袋部2の内部に設置された時には、連通孔9を通じて容器本体8の内部と外部とが連通する。これにより、防舷材袋部2の内部に設置されたセンサ14は、防舷材1の内部情報(圧力、温度等)を精度良く検知することができる。
【0031】
上述したとおり、本発明によれば、所定の突出位置で保持されている状態の容器本体8にセンサ14を容易に出し入れできる。また、第1シール材12と第2シール材13を設けたので、センサ14の設置作業および交換作業中は、防舷材1の内圧をほぼそのまま維持できる。これにより、防舷材1の使用現場でそのまま、センサ14の設置作業および交換作業を実施できる。
【0032】
それ故、センサ14の設置作業および交換作業に際して、防舷材1を陸揚げして内部の空気を抜く必要がなく、作業に要する時間を従来に比して短縮し、かつ、作業を軽労化できる。
【0033】
第2シール材13は、フランジ部10ではなく、フランジ部10に対向する口金具4の部位に取り付けることもできる。或いは、フランジ部10およびフランジ部10に対向する口金具4の部位に第2シール材13を取り付けることもできる。
【0034】
所定の突出位置で保持されている容器本体8の口金具4の底面からの突出長さLは、口金具4の深さD以下に設定するとよい。この仕様にすると、容器本体8が常時、口金具4の外部に突出しないので、防舷材1を運搬、保管する場合など、容器本体8が何かに接触して損傷する危険性が低減する。これに伴って、防舷材袋部2を小さく折り畳む作業も容易になる。
【0035】
容器本体8の保護の観点からは、突出長さLを口金具4の有効深さD1以下に設定することがより好ましい。有効深さD1とは、口金具1の深さDから金具蓋部5の厚さを差し引いた値である。この場合、金具蓋部5を取り付けても容器本体8が金具蓋部5に接触することがない。
【0036】
尚、容器本体8は防舷材1の外部にある受信機15と無線通信しないタイプのセンサを収容するために用いることもできる。
【符号の説明】
【0037】
1 空気式防舷材
2 防舷材袋部
3 鏡部
4 口金具
4a 貫通孔
5 金具蓋部
6 安全弁
7 センサ収納容器
8 容器本体
8a ストッパ
9 連通孔
10 フランジ部
11 蓋部
12 第1シール材
13 第2シール材
14 センサ
15 受信機
16 内圧確認バルブ
17 給気用バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気式防舷材の口金具に取り付けられて、防舷材袋部の内部に設置される空気式防舷材用のセンサ収納容器であって、前記口金具を貫通する貫通孔に、防舷材袋部の外部に突出移動可能に取り付けられて、所定の突出位置で保持される容器本体と、前記貫通孔を塞ぐ蓋部と、前記容器本体と貫通孔とのすき間をシールする第1シール材と、前記容器本体が防舷材袋部の内部に設置された時に、容器本体の内部と外部とを連通させる連通孔と、前記容器本体が所定の突出位置で保持された時に、前記連通孔を通じた防舷材袋部の内部と外部との連通を遮断する第2シール材とを備えたことを特徴とする空気式防舷材用のセンサ収納容器。
【請求項2】
前記容器本体が一端を開口した有底筒状体で他端側にフランジ部を有し、前記連通孔が容器本体の周壁の形成された連通孔であり、前記第2シール材が、前記フランジ部またはフランジ部に対向する口金具の部位の少なくとも一方に取り付けられている請求項1に記載の空気式防舷材用のセンサ収納容器。
【請求項3】
前記所定の突出位置で保持されている容器本体の口金具の底面からの突出長さが、口金具の深さ以下に設定されている請求項1または2に記載の空気式防舷材用のセンサ収納容器。
【請求項4】
前記容器本体に、空気式防舷材の外部にある受信機と無線通信するセンサが収容される請求項1〜3のいずれかに記載の空気式防舷材用のセンサ収納容器。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のセンサ収納容器を備えた空気式防舷材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−76609(P2013−76609A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−216049(P2011−216049)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【特許番号】特許第5077471号(P5077471)
【特許公報発行日】平成24年11月21日(2012.11.21)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】