説明

空気流の方向制御を備えた呼吸装置組立品

呼吸装置組立品は、呼吸装置組立品を着用するユーザーのために呼吸可能な空気空間を画定するシェルを有する。呼吸装置組立品は、呼吸可能な空気空間の中に空気を供給するために、シェル内に空気送達導管を有する。空気送達導管は空気出口を有し、これは、空気出口を出る空気の方向が第1の空気流の方向と第2の空気流の方向との間で制御可能であるように、構成において調節可能であるか、又は位置において調節可能なそれに関連した羽根を有するかのいずれかである。呼吸装置組立品がユーザーによって着用されている間、ユーザーは空気出口を出る空気の方向を制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概して、本開示は、ユーザーの頭部に着用されて、ユーザーのために呼吸可能な空気を提供する呼吸装置組立品に関する。
【背景技術】
【0002】
呼吸装置は周知であり、多数の用途を有する。例えば、特定のタイプの呼吸装置は、煙の充満した環境、火若しくは塵の充満した環境、鉱山、有毒な環境、又は研究室などの汚染された環境において、ユーザーの呼吸を補助するために使用されることがある。また、呼吸装置は、シリコーンチップ(silicone chips)の製造に用いられるクリーンルームでの作業時など、ユーザーが周囲の空気を汚染するのを防ぐのが望ましい場合にも着用されることがある。
【0003】
一部の呼吸装置は、危険な環境での作業時に、又は鉱山、工業環境、若しくは建設現場などで、ユーザーが落下片若しくは廃棄片に当たる恐れのある場合、衝撃に対して少なくともいくらか保護することが意図されているハードシェル部分を含む。別のタイプの呼吸装置は、例えば、実験室又はクリーンルームでの作業時など、衝撃からの頭部の保護が必要であると考えられないときに、ソフトシェルを採用している。
【0004】
呼吸装置フードは通常、フードが着用される環境に好適な軟質の可撓性材料で作られており、フードの下端部にエプロン又はスカートが提供され、ユーザーの肩領域に広がる場合もある。このタイプのフードは、ユーザーの作業している環境からユーザーを隔離するために、ボディスーツと共に使用されることがある。エプロン又はスカートは、ボディスーツとの接合部として機能することが多く、ユーザーを周囲の環境条件から保護する。呼吸装置ヘッドカバーは、ユーザーの頭部全体を被覆せず、一般的に、ユーザーの耳の上方及びユーザーの耳の前でユーザーの顎の周囲を下方に延びる。フード又はヘッドカバーは、一般にバイザーと呼ばれる、それを通してユーザーが見ることができる透明な領域を前側に有する。バイザーは、フード又はヘッドカバーの一体部分であることがあり、又はそれは損傷した場合にそれが取り外して交換できるように、取り外し可能であることがある。
【0005】
呼吸装置ハードシェル部分は、通常、呼吸装置を着用する環境に好適な硬質の不撓性材料で作られている。例えば、このような材料には、鋼鉄などの金属材料又はハードポリマーが挙げられる。呼吸装置ハードシェル部分は一般的に、少なくともユーザーの頭頂部にわたって延び、その全側面の周囲に縁部、又はそこから前方に延びるひさしを有することがあり、これによってユーザーの顔面領域をわたって追加的に保護する。更に、このような呼吸装置は、ユーザーの後頭部及び側頭部から下向きに延びる保護側部を含むこともある。このような側部は、不撓性材料で形成されることも、可撓性材料で形成されることもある。ハードシェル部分を有する呼吸装置組立品は、ユーザーが呼吸装置の外を見れるようにするバイザーを含むこともある。バイザーは、透明の場合がある。しかしながら、溶接に使用する場合など、場合によっては、バイザーは薄く色付けされていたり、又はそれは、自動暗化フィルター(ADF)などのフィルター又はシャッターを含むことがある。バイザーは、呼吸装置組立品の一体部品であってもよく、又はそれは損傷した場合にそれが(is)取り外して交換できるように、取り外し可能であることがある。
【0006】
呼吸装置シェルは、ユーザーのために呼吸可能な空気空間の領域を提供することが意図される。したがって、シェルは、ユーザーの頭部及び/又は首領域の周囲で封止されるのも通常である。呼吸装置の内部には、少なくとも1つの空気源によって、呼吸可能な空気が提供される。給気管は、ユーザーから切り離されている外部空気源に接続されていることもあるが、多くの用途においては、給気管は、ユーザーによって、例えばバックパック内又はベルトに携行される可搬式空気源に接続される。1つの形態では、可搬式空気源は、電池で作動するモーター駆動のファン及びフィルターを含むターボ装置を備える。可搬式空気源は、所定の期間にわたって、ユーザーに呼吸可能な空気供給源を提供することが意図される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
空気は1つ以上の出口から呼吸装置内に分配され得る。しかしながら、一般的な呼吸装置のユーザーは、出口(単数又は複数)からの空気流の方向を制御できない場合がある。ある人が心地良い微風と感じるものが、他の人は冷たい隙間風と見なすことがある。場合によっては、空気流の特定の分配は、例えばユーザーの目の乾燥など、実際にユーザーに不快感を引き起こす場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
呼吸装置組立品は、ユーザーの頭部の少なくとも一部分を被覆するよう成形された保護用シェルと、シェルとユーザーの頭部との間に画定された空間の中に空気流を送達するための出口と、出口からの空気流が第1の方向に誘導される第1の位置及び出口からの空気流が第2の異なる方向に誘導される第2の位置との間で調節可能である、出口での羽根と、含む。
【0009】
別の態様において、呼吸装置組立品は、ユーザーの頭部の少なくとも一部分を被覆するように成形された保護用シェルと、シェルとユーザーの頭部との間に画定された空間の中に空気流を送達するための出口と、を含み、この出口は、出口からの空気流が第1の方向に誘導される第1の出口構成と、出口からの空気流が第2の異なる方向に誘導される第2の出口構成との間で調節可能である。
【0010】
本要約は、下記の「発明を実施するための形態」において更に説明される簡略化した形態の概念の選択肢を紹介するために提供されている。本要約は、請求項に記載の主題の重要な特徴又は本質的な特徴を特定することを意図しないし、請求項に記載の主題の開示された各実施形態又はあらゆる実施を記載することを意図せず、また、請求項に記載の主題の範囲を決定する際の助けとして使用することを意図するものでもない。他の多くの新たな利点、特徴、及び関係は、本明細書が進行するにつれて明らかになるであろう。以下の図及び説明は、例示的な実施形態を、より具体的に実証する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
開示される主題は、添付図面を参照して更に説明され、同様の構造は種々の図にわたって同様の参照番号によって示される。
【図1】ユーザーの頭部を被覆するための呼吸装置フードを有する、呼吸装置組立品の側面図。
【図2】ユーザーの頭部を被覆するためのハードシェルヘルメットを有する、呼吸装置組立品の実施形態の側面図。
【図3】図2において線3−−3に沿って取られた部分断面図。
【図4】呼吸装置(respiratory)組立品で使用するための空気流マニホールドの一部分の斜視図であり、空気流マニホールドの出口での羽根構造体の代替の実施形態を示している、斜視図。
【図5】図4において線5−−5に沿って取られた部分的な断面図であり、フード又はヘルメット構造体のシェルも断面に示されている、部分的な断面図。
【図6】図4の羽根構造体の代替的な実施形態の部分的な斜視図。
【図7】例えば、ハードシェルヘルメットを有する呼吸装置組立品の代替的な実施形態の斜視図。
【図7A】図7の区分7Aの拡大された斜視図。
【図8】例えば、ハードシェルヘルメットを有する呼吸装置組立品の代替的な実施形態の側面図。
【図9】代替的な羽根の位置制御構成の模式図。
【0012】
上記の図面は、開示された主題の1つ以上の実施形態を記載するが、他の実施形態もまた本開示の中で述べられるように企図される。全ての場合において、本開示は、制限事項としてではなく、代表的な例として開示された主題を提示する。本開示の原則の範囲及び趣旨に含まれる、多数の他の変更及び実施形態が当業者によって考案され得ることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
用語解説
以下に記載される用語は、定義されるような意味を持つ。
【0014】
フード及びヘッドカバーという用語は、少なくともユーザーの顔面を被覆する、緩くフィットするフェースピースを指す。
【0015】
ヘルメット、安全帽及びバンプキャップという用語は、ユーザーの頭部にさまざまな度合いの衝撃保護をもたらすことを意図されている頭部カバーを指し、ヘルメットが最大の保護を、バンプキャップが最小の保護をもたらす。
【0016】
形状非安定性とは、ある形状をとり得るが、付加的な支持体がなくとも単独でその形状を維持できる必要は必ずしもない構造の特徴を意味する。
【0017】
形状安定性とは、構造物が画定された形状を有し、その構造物が可撓性でもよいが、それ自体でその形状を維持できる構造物の特性を意味する。
【0018】
呼吸可能な空気空間とは、空気が吸入され得る、少なくともユーザーの鼻及び口周辺の空間を意味する。
【0019】
保護用シェルとは、少なくとも呼吸可能な空気空間を含む、呼吸装置組立品の内部を呼吸装置組立品の周囲環境から分離するバリアを意味する。
【0020】
マニホールドとは、空気入口、及びこの空気入口と連通する1つ以上の別個の空気導管を有する空気流プレナムを意味し、各空気導管は少なくとも1つの空気出口を有する。
【0021】
羽根は、空気流出口に隣接して配置された可動構造体を意味し、これは出口に対する構造体の位置によって、出口を出る空気の流れ方向を決定する。
【0022】
コントローラーは、羽根の位置を、その対応する空気流の出口に対して調節するために使用される装置又はシステムを意味する。
【0023】
代表的な呼吸装置組立品10は、図1に示されている。この場合において、呼吸装置組立品10は、呼吸装置組立品10用の保護用シェルSとして機能するフード12を含む。呼吸装置組立品10は、それがユーザー18の頭部16に適合するように寸法設定され得るように、1つ以上の寸法に調整可能であるヘッドハーネス14を更に含む。フード12は、頭部16全体にわたっていないとしても、ユーザー18の頭部16の少なくとも前頭部及び頭頂部にわたって延びるように寸法設定される。図1に示されているフード12は、ユーザー18の頭部16を全体的に被覆しており、ユーザー18によって着用される完全な保護用ボディスーツ19と組み合わせて使用されてもよい。呼吸装置組立品は、ユーザーの頭頂及び前頭部分のみを被覆する(耳、首及び肩は露出されたままである)頭部カバーを含むものなど、代替的な構成を有してもよい。ある代表的な実施形態において、保護用シェルは形状非安定性であって、形状安定性空気マニホールド20を組み込んでもよい。
【0024】
空気マニホールド20は、ヘッドハーネス14によって支持され、それに取り外し可能に接続されてもよい。図1に例示されるように、ユーザーの頭部16上に接続され、装着されるとき、ヘッドハーネス14は、空気マニホールド20をユーザーの頭部16に対して所望の位置で支持する。
【0025】
空気マニホールド20は、空気入口導管26及び少なくとも1つの空気送達導管28を有する。一実施形態において、空気入口導管26は、ユーザーの頭部16の後側に隣接して配置され、保護用シェルSの外に延びる。空気入口導管26は、空気送達導管28と流体連通し、空気送達導管は空気出口32を有する。一実施形態において、空気出口32は、ユーザー18の頭部16の顔面領域34に隣接している。図1でマニホールド20上に1つの空気送達導管28が図示されているが、任意の数(例えば、1つ、2つ、3つ等)のこのような導管が提供され、各導管が対応する空気出口を有してもよいことが理解される。更に、いくつかの実施形態において、マニホールドは、ユーザーの額に隣接する、それぞれの空気送達導管の1つ以上の出口、及びユーザーの鼻及び口(例えばユーザーの鼻と口の各側上に)に隣接する、それぞれの空気送達導管の1つ以上の出口を有してもよい。保護用シェルSは、その前側に配置され、それを通してユーザーが見ることができるバイザー36を含む。マニホールド20の空気入口導管26は、空気ホース40を介して、呼吸可能な供給源(supply of breathable)と流体連通し、これは次に、ユーザー18用の呼吸可能な空気の供給源42に接続される。このような供給源42は、特定の用途に所望される場合のように、呼吸可能な空気の加圧タンク、電動空気浄化呼吸装置(PAPR)、又は他の送気式の(supplied)呼吸可能な空気源の形態を取ってもよい。図1に図示されている実施形態において、マニホールド20は、ユーザー18によって着用されるベルト上に携行されるPAPR空気及び/又は動力供給源Pに連結されている。空気は、ホース40を通じて空気供給源42からマニホールド20の空気入口導管26の中に流れる。空気は、次に、マニホールド20の各空気送達導管28を通じて、その空気出口32から各導管28の外へ流れ、ユーザー18の頭部16の周囲で、保護用シェルSによって画定された呼吸可能な空気空間44の中に流れる。呼吸可能な空気はしたがって、吸入目的のためにマニホールド20によってユーザーの顔面領域34に送達され、いくつかの実施形態において、顔面領域34には、空気が吸入され得るユーザーの鼻の周囲の空間だけではなく、ユーザーの目及び額の周囲などユーザーの顔面の周囲の他の領域も含む。
【0026】
このような空気の導入のために、保護用シェルS内の気圧は、典型的にはシェルの外側の気圧を僅かに超えることがある。したがって、一部の代表的実施形態において、フードは一般に、ユーザーの頭部16、空気マニホールド20及びヘッドハーネス14の周囲で、図1に示された形状にまで拡大することができる。典型的には、空気は、呼気ポート(図示せず)を介して、又は保護用シェルSの下縁部(例えばユーザー18の首及び/又は肩の周囲)に隣接する許容漏出によって、又は一部の実施形態において、保護用シェルを通じて、保護用シェルSから逃れることが可能である。呼吸装置組立品10は、したがって、非形状非安定性の保護用シェルS内の呼吸可能な空気空間44をユーザーに提供し、形状安定性マニホールド20によって、ユーザーの顔面に隣接して空気が送達される。しかしながら、他の例示の実施形態において、保護用シェルS及びマニホールド20のいずれか若しくは両方は、その任意の部分が形状安定性又は形状非安定性であってもよい。
【0027】
ユーザーの頭部に関してマニホールド20の位置は、ヘッドハーネス14上のその装着によって、ユーザーに対して固定される。したがって、マニホールド20の空気出口32の位置は、ユーザーに対する(また、より具体的には、ユーザーの顔面領域34に対する)位置に固定される。呼吸装置組立品10を介した、空気出口32から外への空気流の方向は羽根によって制御されてもよく、これは空気出口32に隣接して配置され、空気出口32から外への、異なる空気流出口経路を画定するために調整可能である。
【0028】
図2は、マニホールド20と組み合わせて使用される安全帽25を有する、代表的な呼吸装置組立品110を示す。代表的な呼吸装置組立品110の保護用シェルSは、形状安定性の構成を有し、(少なくとも一部分において)ある程度まで耐衝撃性であり得る。図2は、ユーザーの頭頂部のみを、その顔面領域と共に被覆するように寸法設定されている安全帽25を示す。代替の安全帽のスタイルは、ユーザーの頭部全体を被覆するものを含む。呼吸装置組立品110をユーザーの頭部にフィットさせ、その上の安全帽及びマニホールドを支持し、位置決めするためにヘッドハーネス(図2に示されている代表的なヘッドハーネス114など)が提供される。ヘッドハーネス114は、安全帽及び/又はマニホールドから取り外し可能であってよい。安全帽25は、その前側に配置されたバイザー136を含み、それを通してユーザーは見ることができる。その保護用シェルS内に呼吸可能な空間134が画定されるように、安全帽25はユーザーの頭部及び/又は首の周囲で封止されてもよい。空気は、空気入口26を介してマニホールド20の空気送達導管28の中に供給され、そこから出て、導管28上の空気出口32を介して呼吸可能な空気空間134の中に流れる。呼気ポート(図示せず)若しくは安全帽25の下部に隣接して画定された封止の周りの制御された空気漏出、又は特定の用途に適している任意の他の方法で、呼吸可能な空気空間を通って空気を循環させるために提供されてもよい。
【0029】
図1、図2、及び図3は、空気送達導管28の空気出口32の外への空気流の方向を制御するための代表的な羽根構造体を示す。羽根50は、導管28内の空気流チャンネル52を横断して延び、それに枢動可能に装着される。羽根50は、導管28の壁部内に枢動可能に受容されるスピンドル56を含む又は受容する、ハブ54を有する。羽根パネル58は、ハブ54に取り付けられて、空気出口32に隣接するチャネル52を横断して、かつチャネル52に沿って延びる。羽根作動装置パドル又はコントローラー60は、羽根パネル58と異なる方向でハブ54から突出する。示された実施形態において、パドル60は、羽根パネル58にほぼ垂直に延びるが、他の角度をなす向きが所望されてもよい。パドル60は、導管28の上壁のスロット62を通って延び、例えば、図3で、実線及び破線によって示されているように、導管28に対するパドル60の枢動動作を可能にする。パドル60の枢動動作は、図3の矢印64に沿ってもよい。パドル60の動作は、羽根パネル58の動作を発生させる。チャネル52に対する羽根パネル58の位置によって、空気出口32からの空気流が第1の方向又は第2の異なる方向に誘導され得るように、空気出口32を出る空気流の方向は変更される。
【0030】
スロット62内のパドル60の枢動動作を可能にしながら、導管28内のスロット62は、スロット62を通る空気流を制限するためのガスケットを含んでもよい。パドル60はまた、スロット66を通って保護用シェルS内に延びてもよい。この場合において、スロット66内のパドル60の動作を可能にしながら、スロット66は、スロット66を通る可能性のある空気流を制限するためのガスケットも含んでもよい。
【0031】
呼吸装置組立品がユーザーによって着用されている間、羽根50は、導管28の空気出口32を出る空気流の方向を制御するために、そのユーザーによってアクセス可能である。ユーザーは、呼吸装置組立品を取り外す必要なく、又は呼吸装置組立品をユーザーの頭部の上に装着する前に、空気流の方向を事前に調整する必要なく、パドル60を操作して、空気流の方向を1つの方向から別の方向へと変更することができる。シェルSが織物などの形状非安定性材料から形成される場合において、可撓性材料を通してパドル60をただ掴んで、それを操作することが可能であり、それによって、ユーザーによるパドル60への操作可能なアクセスを可能にするために、シェルS内の開口部又はスロットは必要ではないことがある。
【0032】
それぞれ個々のユーザーはこのように、呼吸装置組立品内の空気流を制御し、呼吸可能な空気空間内で、ユーザーが快適な環境であると見なすものを得ることができる。空気出口を出る空気流の方向を調整できることによって、ユーザーは、その空気流の感知される冷却効果を変更することができ、また空気流を調整し、空気流の特定の方向性によって生じ得るいずれかの可能性のある不快感を最小限に抑えることができる。
【0033】
図4及び図5は、呼吸装置組立品の羽根150のための代替の形態を示す。この配置において、羽根150は、本体170の形態で空気出口32を横断して延びる。本体170は、円筒の形であってもよく、スピンドル172を介してその端部で、導管28に対して、かつ導管28内に枢動可能に装着されて、したがって、そのチャネル52を横断して延びる。複数の羽根チャネル174は本体170を通じて延び、チャネル52(矢印175)を通じて流れ、空気出口32を出る(空気流矢印176によって示されているような)空気のために利用可能な、唯一の経路を提供する。パドル又はコントローラー160は本体170から外側に延び、羽根チャネル174の位置を操作するときに使用される。図3に示されている羽根50のパドル60のように、図4及び図5の羽根150のパドル160は、導管28内で関連するスロット162及び166、並びにシェルSをそれぞれ通じて延びる。スロット162及び166は、上記のとおり、空気流の封止目的のために関連するガスケットを有してもよい。パドル160は、したがって、図5に示されているように、矢印164の方向でマニホールド28に対して可動である。パドル160が、図5で点腺で示されている位置に枢動されたとき、羽根チャネル174が同様に枢動され、空気出口32を出る空気流の方向は、したがって、一般的に図5で矢印176aによって示されるとおりである。パドル160は、呼吸装置組立品を着用しているユーザーによって操作されてもよい。したがって、図4及び図5に示される羽根150は、ユーザーが呼吸装置組立品を着用している間、呼吸装置組立品内の呼吸可能な空気空間の中への空気流の方向を制御するための代替の構成を提供する。
【0034】
図6は、図4及び図5の羽根150に類似である羽根150aの向きを調節するための代替的な手段を示す。この配置において、羽根150a上にはパドル160が供給されていない。むしろ、ノブ又はコントローラー180が、スピンドル172aに接続され、これは次に羽根150aの本体170aの末端部に接続される。ノブ180(これは円筒系のノブ、又はレバー、又はあるその他のユーザーが把持可能な及び/又は操作可能なハンドルの形をとってもよい)は、スピンドル172aの軸の周りで回転されて、導管28に対して、かつ導管28内で本体170aを枢動させる。したがって、羽根150a上の複数の羽根チャネル174の向きは、呼吸装置組立品を着用している間、ユーザーが調節することができる。ノブ180は、呼吸装置組立品が着用されている間、ユーザーによってアクセス可能であり、例えば、図6に示されるように、呼吸装置組立品のシェルSの外側に延びる。
【0035】
羽根の枢動動作の範囲(羽根が、例えば、羽根50、羽根150、又は羽根150aなど、どの構造体を有していても)は、ある点において制限され得る。例えば、マニホールド28内のスロットの寸法は、羽根50又は羽根150の動作の範囲を制限することがある。あるいは、マニホールド28又は羽根それ自体上で突出部を備える1つ以上のフィンが、その枢動動作の範囲を制限してもよい。また、要素が提供されて、空気流の方向制御のために、羽根がその第1の位置又は第2の位置において配置されたという触覚性表示(又は、更には可聴な「クリック表示」)をユーザーに提供してもよい。2つの羽根位置のみが言及されているが、その許容される枢動の範囲内で、羽根は空気出口32に対して、任意の数の、角度をなす向きに配置されてもよい。
【0036】
図7は、マニホールド220が空気送達導管228、229及び230などの複数の空気送達導管を有する、代替の呼吸装置組立品210を示す。空気送達導管228、229及び230は全て、空気入口導管226と流体連通し、これは呼吸装置組立品210に呼吸可能な空気の供給源を送達するために空気ホース40と流体連通している。図7は、保護用シェルSを画定するための安全帽225を有する呼吸装置組立品を示しているが、バンプキャップ、ヘルメット、フード又はヘッドカバーを含むものなど、他の任意の種類の呼吸装置組立品が使用されてもよい。
【0037】
各空気送達導管228、229及び230は、シェルS内の呼吸可能な空気空間234に空気を送達するための空気出口232、233、235をそれぞれ有する。出口232を出る空気流の方向を制御するために、羽根は、空気導管228の空気出口232に隣接して提供される。呼吸装置組立品がユーザーによって着用されている間、羽根は、ユーザーによって制御されることができ、上記の羽の1つ、又はそれと機能的に同等のものの形態をとってもよい。
【0038】
空気送達導管229及び230は、呼吸装置組立品の各側を下に延び、それらの対応の空気出口233及び235をユーザーの口及び/又は鼻領域に隣接して、その各側に有することができる。この空気出口を出る空気流の方向を制御するために、各空気出口は、それと関連する羽根を有し、呼吸装置組立品がユーザーによって着用されている間、各羽根はユーザーによって操作可能である。例えば、図7Aに示されているように、空気出口235は、導管230の壁部内に枢動可能に受容される、スピンドル256を含む又は受容するハブ254を有する羽根250を含む。1つ以上のチャネル258がハブ254を通じて延び、ハブ254は、空気出口235に隣接する導管230内にチャネル259を横断して、かつチャネル259に沿って延びる。ノブ280の回転が、空気出口235に対して羽根チャネル258を枢動させるように、ノブ若しくはコントローラー280、又は他の好適なユーザーが操作可能な部材は、スピンドル256に接続される。これにより羽根チャネル258を枢動するこによって空気出口235を出る空気流の方向を制御する。呼吸装置組立品を着用している間、ノブ280は、ユーザーによって、呼吸装置組立品のシェルSの外側でアクセス可能であるか、又は、シェルSを通じて操作可能である。羽根250はまた、導管229上の空気出口233のために供給されもよい。したがって、図7及び図7Aで示されている呼吸装置組立品は、呼吸可能な空気空間の中への空気流の送達が、ユーザーの額に隣接する領域と、ユーザーの口又は鼻の領域との間で分離することができる、マニホールドを示す。空気が呼吸可能な空気空間の中に送達される1つ以上の出口のそれぞれで、羽根が供給されて、(呼吸装置組立品を着用している間)ユーザーは、マニホールドの各空気送達導管を出る空気流の方向の別個の制御が可能になる。
【0039】
図8は、マニホールド320が、複数の空気送達導管328及び330を有する代替の呼吸装置組立品310を示す。空気送達導管328及び330は、空気入口導管326と流体連通し、これは呼吸装置組立品310への呼吸可能な空気の供給源を送達するために空気ホース40と流体連通する。図8は側面図であり、(呼吸装置組立品310の左側の)上部導管328及び1つの側面導管330のみを示す。一実施形態において、他の側面導管が呼吸装置組立品310の右側に提供される。空気送達導管328は、呼吸装置組立品310によって形成された、シェルS内に画定された呼吸可能な空気空間334に空気を送達するための、ユーザーの額領域に隣接する空気出口332を有する。図8に示されているように、シェルSは、安全帽325によって画定されるが、バンプキャップ、ヘルメット、フード又はヘッドカバーを含むものなど、任意の他の種類の呼吸装置組立品が使用されてもよい。上記のとおり、羽根は、空気出口332に隣接して提供され、ユーザーの額に隣接する出口332を出る空気流の方向を、ユーザーの判断で、呼吸装置組立品310がユーザーに着用されている間、制御することができる。
【0040】
空気送達導管330は、それが空気送達導管328、肘形部分343及び下部345と流体連通している上部341を有する。空気出口347は、空気送達導管330の下部345の遠位端で配置されている。下部345上の空気出口347の位置は、出口からの空気流が第1の方向に誘導される第1の出口構成と、出口からの空気流が第2の異なる方向に誘導される第2の出口構成との間で調節可能である。下部345は、肘形部分343の操作により上部341に対して可動である。肘形部分343は可撓性であり、上部341に対して下部345の動作を可能にする。これは、送達導管330の下部345が、呼吸装置組立品310のバイザー336と共に動作できるようにする。肘形部分343は、いったん動かされると十分な固定保持を有し、これが下部345を上部341に対して所望の位置に保持する。例えば、図8は下部345を、第1の下方位置において実線で、また第2の上方位置において点線で示す。下方位置において、空気出口347を出る空気流は、ほぼ矢印351の方向に移動し、その一方で、上方位置において、空気出口347を出る空気流はほぼ矢印353の方向に移動する。空気出口347はしたがって、下部345と共に、図8において、ほぼ矢印355の方向に可動である。
【0041】
示された実施形態において、空気出口347はユーザーの鼻及び口に隣接して、かつ呼吸装置組立品310の前側部分でバイザー336に隣接している。空気送達導管330の下部345の動作は、下部345をシェルSの外側の操作可能な要素につなぐことによって、又は、それを通してユーザーが下部345の位置を操作できる材料の下部345に隣接するシェルSの材料を形成することによって、呼吸装置組立品310を着用している間、ユーザーによって実施することができる。このように、図8において示されている呼吸装置組立品310は、ユーザーが呼吸装置組立品を着用している間、呼吸装置組立品内の呼吸可能な空気空間の中への空気流の方向を制御するための代替的な配置を示す。
【0042】
本明細書で開示される呼吸装置組立品は、いくつかの実施形態に関して記載されてきたが、当業者は、開示の呼吸装置組立品の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形式上及び詳細に変更がなされてもよいことを理解するであろう。例えば、例示された羽根は、例示のみを意図しており、他の羽根の形が企図される。マニホールドの、その対応の空気送達導管の空気出口を出る空気流の方向を制御できる限り、羽根構造体のための任意の好適な形が十分であろう。シェルが形状非安定性部分を含む呼吸装置組立品において、形状非安定性部分は、例えば、織物、紙、ポリマー(例えば、織布材料、不織布材料、スパンボンド材料(例えばポリプロピレン又はポリエチレン)若しくはポリウレタン又はPVCでコーティングされた編布基材)又はこれらの組み合わせなどの材料から形成されてもよい。ハードシェル部分を含む代替的な実施形態において、ハードシェルの部分は、例えば、ポリマー(例えば、ABS、ナイロン、ポリカーボネート若しくはポリアミド、又はこれらの混合物)、好適な樹脂での炭素繊維、好適な樹脂でのガラス繊維、又はこれらの組み合わせなどの材料から形成されてもよい。
【0043】
更に、上記で開示されるコントローラーは全て、本来機械的である一方で(例えば、操作されたパドル又はノブによって決定される羽根の位置)、電気機械など、羽根用の他のコントローラーもまた企図される。例えば、電気機械装置は、羽根の動作を制御するために使用されてもよい。このような実施形態は図9において示されているが、ここで、呼吸装置組立品のシェルSは、その中にマニホールドMを有する。この例示的な実施形態において、羽根V、及びコントローラーCの少なくとも一部は、したがって、呼吸装置組立品のシェルS内に存在する。コントローラーC(サーボモーターなどの)は、シェルSの外側の作動装置Aを操作するユーザーによって発信されるリモート信号Siに応じて羽根Vを動かす。信号Siは、ケーブル、有線接続、又は無線(radio)の「無線通信(wireless communication)」のいずれかを通じて送信されることができる。このような用途において、無線で制御された羽根Vは、作動装置Aに関連して、ユーザーが操作する送信器Tから送信される制御信号Siを受信するために無線受信器を使用する。このように、コントローラーCは、シェルS内にあり、シェルSの外側の作動装置Aによって生成される信号Siに応じて羽根Vの動作を発生させる。上記のとおり、羽根は2つ以上の位置の間で動作し、空気出口を出る空気流の方向を制御してもよく、又は複数の位置を有してもよい。コントローラーCの作動装置Aは、ユーザーのためのアクセス及び起動のために、呼吸装置組立品上、若しくはPAPR送風コントローラー上に都合良く配置されてもよく、又は別個の手持ち式送信装置の中に組み込まれてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸装置組立品であって、
ユーザーの頭部の少なくとも一部分を被覆するように成形された保護用シェルと、
前記シェルと前記ユーザーの頭部との間に画定される空間の中に空気流を送達するための出口と、
前記出口からの前記空気流が第1の方向に誘導される第1の位置と、前記出口からの前記空気流が第2の異なる方向に誘導される第2の位置との間で調節可能である、前記出口での羽根と、を含む、呼吸装置組立品。
【請求項2】
前記シェルがユーザーによって着用されている間、前記羽根をその第1の位置と第2の位置との間で動かすためのコントローラーを更に含む、請求項1に記載の呼吸装置組立品。
【請求項3】
前記出口で複数の羽根を更に含む、請求項1に記載の呼吸装置組立品。
【請求項4】
前記シェルが前記ユーザーによって着用されている間、前記保護シェルの少なくとも一部分は、それを通して前記ユーザーが見ることができるバイザーを含む、請求項1に記載の呼吸装置組立品。
【請求項5】
前記出口が、前記保護用シェルの前記バイザーに隣接している、請求項4に記載の呼吸装置組立品。
【請求項6】
前記保護用シェルが、フード又はヘッドカバーを含む、請求項1に記載の呼吸装置組立品。
【請求項7】
前記保護用シェルが、ハードシェル部分を含む、請求項1に記載の呼吸装置組立品。
【請求項8】
複数の前記出口を更に含み、2つ以上の前記出口が、関連付けられた羽根を有する、請求項1に記載の呼吸装置組立品。
【請求項9】
前記保護シェル外の作動装置を有するコントローラーを更に含み、前記コントローラーは、ユーザーが前記作動装置を操作することよって発信されるリモート信号に応じて前記羽根を調節することができる、請求項1に記載の呼吸装置組立品。
【請求項10】
呼吸装置組立品であって、
ユーザーの頭部の少なくとも一部分を被覆するように成形された保護用シェルと、
前記シェルと前記ユーザーの頭部との間に画定された空間の中に空気流を送達するための出口と、を含み、前記出口は、前記出口からの前記空気流が第1の方向に誘導される第1の出口構成と、前記出口からの前記空気流が第2の異なる方向に誘導される第2の出口構成との間で調節可能である、呼吸装置組立品。
【請求項11】
前記保護シェルがユーザーによって着用されている間、前記出口は、その第1の出口位置と第2の出口位置との間で可動である、請求項10に記載の呼吸装置組立品。
【請求項12】
前記シェルがユーザーによって着用されている間、前記保護シェルの少なくとも一部分は、それを通してユーザーが見ることができるバイザーを含む、請求項10に記載の呼吸装置組立品。
【請求項13】
前記出口が、前記保護シェルの前記バイザーに隣接している、請求項12に記載の呼吸装置組立品。
【請求項14】
前記保護用シェルが、フード又はヘッドカバーを含む、請求項10に記載の呼吸装置組立品。
【請求項15】
前記保護用シェルが、ハードシェル部分を含む、請求項10に記載の呼吸装置組立品。
【請求項16】
複数の前記出口を更に含む、請求項10に記載の呼吸装置組立品。
【請求項17】
前記保護シェル外の作動装置を有するコントローラーを更に含み、前記コントローラーは、ユーザーが前記作動装置を操作することによって発信されるリモート信号に応じて前記出口を調節することができる、請求項10に記載の呼吸装置組立品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図7A】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−502704(P2011−502704A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534073(P2010−534073)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/079138
【国際公開番号】WO2009/064555
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】