説明

空気流量測定装置

【課題】空気流量測定装置の製造後、外部からマイコンのプログラムバージョンの確認ができ、そしてマイコンの故障検知と物理量計測装置の故障検知を同時に簡単かつ安価に提供すること。
【解決手段】吸気管内の吸入空気流量を計測する空気流量検出部と、前記吸気管内の物理量を検出する物理量計測部を一体で構成する空気流量測定装置であって、前記空気流量検出部から出力される電気信号を所定の種類の電気信号に変換する電気処理回路を有する第1の基板と、前記第1の基板に搭載され前記物理量計測部から出力された電気信号を所定の種類の電気信号に変換するマイコンと、前記第1の基板に外部から電源給電させる電源駆動回路と、を有し、前記電源駆動回路からの電源供給開始直後のタイミングで前記物理量計測部の電気信号が出力されるコネクタ端子から少なくとも一度プログラムIDを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の空気流量測定装置に一体化されるマイコンのプログラムバージョンの確認手段と故障検知手段に係り、物理量計測装置の故障検出する手段を有する空気流量測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関用の空気流量計測装置に一体化される物理量としては、例えば特許文献1に記載の発熱抵抗体式空気流量測定装置と圧力検出装置を一体化した技術が知られている。
【0003】
さらに内燃機関用の空気流量測定装置に、圧力検出装置、更には湿度検出装置などを一体化してなる複数の物理量を計測可能なセンサとしては、例えば、特許文献2に圧力計測装置と湿度計測装置を一体化した例が示されている。
【0004】
このように、内燃機関用の空気流量計測装置は物理量計測装置が一体化され多機能化している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4416012号公報
【特許文献2】特開2010−43883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、電子制御燃料噴射システムを用いた自動車が一般化しているが、この場合エンジンルーム内の内部には様々なセンサや制御機器が配置されている。また、この場合、各種のセンサや制御機器およびそれらをコントロールするためのコントローユニットなどを相互に接続するワイヤーハーネスも複雑である。
【0007】
このため、複数のセンサや制御機器を一体化することによる部品点数の低減やエンジンルーム内部の景観向上などが望まれ、例えば、前記の空気流量測定装置と温度検出装置、更には圧力検出装置や湿度検出装置なども一体化し、コネクタの共用化する方法などはその一例であり、これにより車両への部品組み付け工数の低減や、ワイヤーハーネスの簡略化が可能となる。
【0008】
そして、物理量計測装置から出力された電気信号をマイコンなどの機器に一括で取り込みシリアル通信などの方法によりエンジンコントロールユニットに所定の種類に変換した電気信号を伝達することでワイヤーハーネス自身及びコネクタ端子数の低減が可能となる。
【0009】
今後、各種の物理量計測装置を制御するためのマイコンなども一体化が進み以下のような様々な技術課題が発生する。
【0010】
まず、第1の課題として、各種の物理量計測装置の増加に伴いマイコンに書き込むプログラムが変更されたものを実装する場合、既に市場に送られた製品とプログラムバージョンの違った製品を区別するために、マイコンに書き込まれたプログラムのバージョンを外部から確認できる手段が必要であった。
【0011】
第2の課題として、各種物理量検出装置が一つでも故障すると、本来計測している物理量ではない値を使用して各種のエンジン制御を実行してしまう恐れがある。また、マイコン自身の故障であった場合を考えると、各種物理量計測装置の故障であるのかマイコンの故障であるのか判断できず、内燃機関の制御システムに対し悪影響を及ぼしてしまう。そのため、マイコンの故障であるのかを判断できる手段を有しかつ物理量検出装置の故障を検知できる手段が必要であった。
【0012】
しかしながら、従来技術では以下の問題があった。
【0013】
第1の課題に対しては、マイコン表面にレーザーマーキングで実施し、プログラムバージョンを目視確認しているが、空気流量測定装置として製品が完成すると、例えば、カバーなどの材料で覆われてしまうために目視での確認できない問題があった。
【0014】
この対策として外部よりマイコンのプログラムバージョンを確認するために空き端子からID等を外部に出力させて確認する手段は良く知られているが、そのために別途端子を設けるとコネクタ端子数の増加やコネクタ自体の大型化によるコスト上昇が容易に想像される。
【0015】
第2の課題に対しては、個々の物理量を常に監視できる自動車用制御ユニットがあり、この場合、検出した物理量を診断することは可能になるが、製品として高くなる問題があった。
【0016】
そこで本発明の目的は上記課題に鑑み、空気流量測定装置の製造後、外部からマイコンのプログラムバージョンの確認ができ、そしてマイコンの故障検知と物理量計測装置の故障検知を同時に簡単かつ安価に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、物理量計測装置の電気的物理変換処理に用いられるマイコンに着目した。
【0018】
本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例として、吸気管内の吸入空気流量を計測する空気流量測定装置と、吸気管内の物理量を検出する物理量計測装置を一体で構成する装置であって、空気流量測定装置から出力された電気信号を所定の種類の電気信号に変換する電気処理回路を有する第1の基板と、物理量計測装置から出力された電気信号を所定の種類の電気信号に変換するマイコンを第1の基板に有し、且つ、第1の基板に外部から電源給電させる電源駆動回路を持ち、電源供給開始直後のタイミングで物理量計測部の電気信号が出力されるコネクタ端子から少なくとも一度はプログラムIDを出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、空気流量計測装置において、空気流量測定装置の製造後、外部からマイコンのプログラムバージョンの確認ができ、そしてマイコンの故障検知と物理量計測装置の故障検知を同時に簡単かつ安価に提供することができる。これにより地球環境に優しく、低燃費且つ、排出ガスのクリーンなエンジン制御システムを市場に送り込むことが可能になる。更には、内燃機関制御装置の部品点数削減による資源物資量の低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例による空気流量測定装置構成を示す正面側からの図。
【図2】本発明の一実施例による空気流量測定装置構成を示す裏面側からの図。
【図3】本発明の一実施例による空気流量測定装置構成を示すブロック図。
【図4】本発明の一実施例によるマイコンのバーション確認の手段、及び故障検知の手段を示すフロー図。
【図5】本発明の一実施例による物理量計測装置の故障検知の手段を示すフロー図。
【図6】本発明の一実施例による電気信号を示すタイミングチャート図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例の図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0022】
本発明の一実施例について、はじめに図1及び図2を用いて本発明の一実施例の空気流量計測装置の構成について説明する。図1は、本実施例の空気流量測定装置の構成図の例であり、図2は図1を裏面から見た図である。
【0023】
空気流量測定装置1はハウジング構成部材2の他に、金属材料等からなるベース部材15、回路基板4を保護するためのカバー構成部材12、空気流量を計測するための空気流量検出部8、空気流量検出部8を設置するための空気通路6から構成されている。空気流量測定装置1は吸気管に設けられた挿入口より挿入され、空気流量検出部8が吸気管内に設けられるように設置される。
【0024】
空気通路6の内部において、副空気通路5が開口し、更に前記空気通路をバイパスするように副空気通路5が構成されている。前記、副空気通路5の内部に物理量検出部9を搭載し、その物理量検出部は、回路基板4上にダイボンド材(図示なし)などを使用して実装固定されている。
【0025】
空気流量測定装置1に関する電気的な信号は、空気流量検出部8からターミナル部材7,ボンディング部材3,回路基板4,ボンディング部材3、などを経てコネクタ端子14に接続され、エンジンコントロールユニット等と電気的に接続されている。
【0026】
また、物理量検出部9からの電気信号は回路基板4に実装されているマイコン10と電気的に接続され、マイコン10内部の電気処理回路を用いて所定の電気信号に変換して出力され、ボンディング部材3を経てコネクタ端子14に接続され、エンジンコントロールユニット等と電気的に接続されている。
【0027】
なお、空気流量測定装置の構成部材について上記実施例に限定するものではなく、当該の構成部材以外の部材を搭載する空気流量測定装置についても、同様の効果を得られる。
【0028】
ここで、一般的に、空気流量測定装置の製造工程での検査は外観検査や動作確認などの工程がある。基板クミの工程では目視によりプログラムのバージョンを確認することができたが、一旦製品が完成すると、ハウジング構成部材2とカバー構成部材12が接着剤13などで接着されているため、カバー構成部材12を取り外すこと容易ではなく、マイコン10の外観に記載されているプログラムバージョンのレーザーマーキング11を、目視による確認ができないという問題がある。
【0029】
次に、図3乃至図6を用いて本発明の一実施例である空気流量計測装置の動作について説明する。図3は、本発明の一実施例による空気流量測定装置構成を示すブロック図、図4は、本発明の一実施例によるマイコンのバーション確認の手段、及び故障検知の手段を示すフロー図、図5は、本発明の一実施例による物理量計測装置の故障検知の手段を示すフロー図、図6は、本発明の一実施例による電気信号を示すタイミングチャート図である。
【0030】
図3に示されるように、空気流量測定装置1は、吸入空気の流量を検出する空気流量検出手段とその他の物理量を検出する物理量検出手段とを有している。空気流量検出手段で検出された検出信号は電気的処理回路で処理されエンジンコントロールユニットへ出力される。
【0031】
物理量検出手段はマイコン10と電気的に接続されており、物理量検出手段で検出した検出信号はマイコン10に入力される。マイコン10は、電気的信号演算処理手段,出力信号選択手段,出力信号発生手段,動作時間計測手段,プログラムID記憶手段を備えている。物理量検出手段で検出された信号がマイコン10に入力されマイコン10で処理された後、エンジンコントロールユニットへ出力される。
【0032】
本発明の一実施例では、図6に示す電気信号100のように、新たにコネクタ端子14の本数を増やすのではなく、物理量検出部から検出された電気信号100を出力させるコネクタ端子14を用いて、マイコンのプログラムバージョンを示すプログラムIDを電源供給の直後に、少なくとも1度は出力させる構成をとっている。なおプログラムIDは少なくとも2bit以上のデータ長であることが望ましい。
【0033】
更にコネクタ端子14から出力された電気信号100を図4に示した判定条件a101,判定条件b102で確認する。すなわち、ステップ101でプログラムIDの電気信号が出力されるか否かを判定し、出力される場合はステップ102に進む。次にステップ102でプログラムIDとプログラムバージョンとが一致するか否かを判定する。一致した場合は、マイコンの実装に問題がなく合格となる。このとき一致しない場合はマイコンの実装に間違いがあることになる。
【0034】
このような構成により、空気流量測定装置の製造後、外部からマイコンのプログラムバージョンの確認ができる。
【0035】
なお、図6に示すように、プログラムIDはデータを変更する、あるいはデータ長を増加したとしても出力開始から終了までの時間t1を固定とし、エンジンコントロールユニット等で物理量として取り込む時間t3までに出力されるのが望ましい。なお、時間t3は500m以内と設定することが望ましい。さらに、プログラムIDの出力終了から物理量検出部からの出力信号の出力開始までの時間t2を自由に設定できることが望ましい。
【実施例2】
【0036】
次に、図4乃至6を用いて、マイコンのプログラムバージョンの確認手段だけではなく、マイコンの故障検知、及び物理量計測装置の故障検知できる手段を有する空気流量計測装置の例を説明する。
【0037】
図6に示されたプログラムIDが出力されない場合は、図4に示されるステップ101の条件分岐でNoとなりマイコン10の故障またはマイコン10と回路基板4との接触不良の可能性があることがわかる。
【0038】
また、図6に示すタイミングチャートで物理量の電気信号100について、計測物理量のデータ出力について、図5のステップ103で、電気的信号演算処理後の電気信号が出力されるか否かを判定し、出力された場合は、物理量計測装置として問題なく合格となる。しかし、出力されない場合は物理量計測装置の故障またはマイコン10と物理量計測装置間の配線の接続不良の可能性と判定される。
【0039】
実施例2では、このような構成を備えることにより、実施例1に加え、物理量検出装置の故障検知がコネクタ端子14の増加なしに、マイコンの故障検知と物理量計測装置の故障検知を同時に確認でき所望の効果を得ることが可能になる。
【符号の説明】
【0040】
1 空気流量測定装置
2 ハウジング構成部材
3 ボンディング部材
4 回路基板
5 副空気通路
6 空気通路
7 ターミナル部材
8 空気流量検出部
9 物理量検出部
10 マイコン
11 レーザーマーキング
12 カバー構成部材
13 接着剤
14 コネクタ端子
15 ベース部材
100 電気信号
101 判定条件a プログラムIDの出力確認
102 判定条件b プログラムバージョン一致確認
103 判定条件c 物理量の電気信号確認

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気管内の吸入空気流量を計測する空気流量検出部と、前記吸気管内の物理量を検出する物理量計測部を一体で構成する空気流量測定装置であって、
前記空気流量検出部から出力される電気信号を所定の種類の電気信号に変換する電気処理回路を有する第1の基板と、
前記第1の基板に搭載され前記物理量計測部から出力された電気信号を所定の種類の電気信号に変換するマイコンと、
前記第1の基板に外部から電源給電させる電源駆動回路と、を有し、
前記電源駆動回路からの電源供給開始直後のタイミングで前記物理量計測部の電気信号が出力されるコネクタ端子から少なくとも一度プログラムIDを出力することを特徴とする空気流量測定装置。
【請求項2】
エンジンコントロールユニットと前記物理量計測部との出力信号を電気的に接続する信号線を用いてプログラムIDの電気信号と物理量検出部で検知された電気信号を出力させることを特徴とする請求項1に記載の空気流量測定装置。
【請求項3】
エンジンコントロールユニットが物理量としての電気信号の読み込みを開始するまでに、少なくとも一度は前記プログラムIDを出力させることを特徴とする請求項1記載の空気流量測定装置。
【請求項4】
前記プログラムIDの設定は、マイコンのプログラミング書き込み時に一度だけ設定可能であることを特徴とした請求項1記載の空気流量測定装置。
【請求項5】
前記プログラムIDのデータを変えてもプログラムID出力開始から終了までの時間は固定であることを特徴とする請求項1記載の空気流量測定装置。
【請求項6】
前記プログラムIDの開始は立ち下がりから始まることを特徴とする請求項1記載の空気流量測定装置。
【請求項7】
前記プログラムIDの終了は立ち上がりで終わることを特徴とする請求項1記載の空気流量測定装置。
【請求項8】
前記プログラムIDのデータ長が増加してもプログラムIDの開始から終了までの時間は固定であることを特徴とする請求項1記載の空気流量測定装置。
【請求項9】
前記プログラムID出力終了から電気的物理量の出力開始までの時間を設定できることを特徴とする請求項1記載の空気流量測定装置。
【請求項10】
前記プログラムIDを少なくとも2bit以上のデータ長であることを特徴とする請求項1記載の空気流量測定装置。
【請求項11】
前記電源供給開始から前記物理量計測部で計測された電気的物理量の出力開始まで、500ms以内に開始することを特徴とする請求項1記載の空気流量測定装置。
【請求項12】
請求項1乃至11に記載の空気流量計測装置であって、前記マイコンの故障検知手段と、前記物理量計測部の故障検知手段を有することを特徴とする空気流量測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−168068(P2012−168068A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30357(P2011−30357)
【出願日】平成23年2月16日(2011.2.16)
【出願人】(509186579)日立オートモティブシステムズ株式会社 (2,205)
【Fターム(参考)】