説明

空気浄化フィルタおよび空気浄化装置

【課題】触媒による臭気の分解作用を用いた空気浄化フィルタにおいて、触媒が熱によって劣化することなく、またヒータと触媒のフィルタのための容積を削減する空気浄化フィルタおよび空気浄化装置とすることを目的とする。
【解決手段】触媒として二酸化マンガン7を吸着剤としてゼオライト4表面に担持した二酸化マンガン担持ゼオライト9を、正温度特性体1を塗布したPTCヒータ12表面に接着した空気浄化フィルタとする。通電によって、正温度特性体1が一定温度まで発熱し、吸着剤が吸着した臭いを触媒が分解する。温度が一定までしか上がらない材料のため、触媒が異常加熱によって劣化することがない空気浄化フィルタを提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内のガスを吸着する空気浄化フィルタと空気浄化フィルタを搭載した空気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、悪臭を除去するための脱臭フィルタとして、活性炭などに代表される物理吸着を主体とする吸着剤を様々な方法でフィルタ構造化した脱臭フィルタが主流である。
【0003】
一方で再生使用可能な脱臭フィルタとしては、白金系合金などからなる酸化触媒と臭気系吸着剤と混合しフィルタ化したものが知られているが、触媒活性を得るために、最低でも200℃以上の温度を必要とする。
【特許文献1】特開昭63−240923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような従来の空気浄化フィルタは吸着剤の吸着容量が飽和するとガスを吸着できなくなり、フィルタを交換するなどの手間とコストが必要であり、メンテナンスが必要ないものが求められている。
【0005】
また、吸着剤に触媒を担持し、吸着剤が吸着したガスをヒータによって加熱された触媒が分解することによってメンテナンス性を改善した空気浄化フィルタが知られているが、ニクロム線ヒータなどのヒータで加熱する際、ヒータへの入力が大きいなどによって、温度がかかりすぎると、たとえば二酸化マンガンでは535℃で分解し、触媒として機能できなくなってしまう。しかしながら吸着剤は水などを吸着するために、ヒータで加熱しても水の気化熱によって温度が上がらない場合もあり、触媒を活性化するための温度を与えるために、ヒータへの入力設定値を決定するのが困難であり、一定の温度を与えるのが難しいという課題があった。
【0006】
また、ヒータが必要で吸着剤と触媒からなる空気浄化フィルタの近傍にヒータを設置するためにそのためのスペースが必要であるといった課題があった。
【0007】
そのため、本発明では、触媒の活性分解によってガスを分解することで、フィルタのメンテナンス性を改善し、また触媒が劣化しないように、加熱温度を触媒がガスを分解できる温度に保てる空気浄化フィルタを提供することを目的としている。また、ヒータと吸着剤と分解触媒のスペースを小さくした空気浄化フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気浄化フィルタは上記目的を達成するために、正温度特性体と二酸化マンガンなどの触媒を混合し、通気構造体に形成したフィルタとする。正温度特性体に通電することで、触媒を加熱させ、触媒に活性を与えるものである。なお、正温度特性体は、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータなどがあり、電流を流すと自己発熱によって抵抗が増大し、ある一定の温度で抵抗が急激に増大する材料である。そのため、一定の温度以上になると、電流が流れなくなる。そのため、一定の温度以上には温度が上がらないため、本目的の触媒の加熱温度を一定にする目的を達成できるものである。
【0009】
なお、PTCにはチタン酸バリウムに添加物を加えたセラミック型PTCや低融点ポリマーにカーボン、ニッケルなどを混合分散させたポリマーPTCなどが知られている。本発明では目的の温度に合い、且つ触媒によって劣化しない、例えばセラミック型PTCが望ましい。
【0010】
なお、通気構造体としてはセラミックのシートを波型と平型に加工し交互に積層したコルゲートハニカム基材にバインダなどを介して正温度特性体と触媒を担持したものや、正温度特性体と触媒とバインダ成分などを混合して、押し出し成型によってハニカム状にしたものや、金属板でハニカム構造体に加工したものの表面に正温度特性体をバインダとともに付着させ、その表面に触媒を同じくバインダで接着したものなどがある。
【0011】
また、正温度特性体に触媒とゼオライトや活性炭などのガス吸着剤を加えることで、吸着剤に一旦臭気成分であるガスを吸着し、濃縮することが出来るため、濃縮されたことによって、触媒との接触確率が上がるために、多くのガスが触媒によって分解できることになり、さらに脱臭性能を向上させることが出来る。また、正温度特性体に間欠に電流を流すことで、電流を流してない間は、冷却されているため吸着剤による吸着ができ、電流を流した場合は触媒が活性化するため吸着したガスを分解することが出来るようになる。
【0012】
また、本発明の空気浄化フィルタでは吸着剤であるゼオライトの結晶構造中に存在する交換性カチオンにマンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオンのうち少なくともいずれかひとつの金属イオンを取り込んだ金属イオン交換ゼオライトとすると金属イオン交換ゼオライトはガスの吸着性能を示しながら、熱を与えることで触媒活性も示す。そのため、金属イオン交換ゼオライトは、吸着剤と触媒の両方の働きが出来る。そのため、吸着剤と触媒の二つの材料を混合する手間が省ける。また、吸着剤を触媒の混合は、均一にすることが、均一になることで活性は最適になるため必要であるが、金属イオン交換ゼオライトは、一つの材料で吸着剤と触媒の役割を果たすため、均一にするという煩雑さが無いため良い。また、前記金属イオン交換ゼオライトは一般に弱く、高温になりすぎると構造が壊れやすい欠点があるが、正温度特性体であれば、高温に温度が上がりすぎることが無いため、構造が壊れることが少なくなる。
【0013】
また、触媒や触媒と吸着剤、触媒化したゼオライトなどを正温度特性体を接着するために導電性ポリマーなど導電性物質を用いることで、正温度特性体間の通電を均一にして、温度発生ムラをなくし、温度による触媒の分解効率を高めることが出来る。
【0014】
また、本発明の空気浄化フィルタでは、正温度特性体の通気体と吸着剤と触媒の通気構造体を分け、通気前方に正温度特性体の通気体、後方に吸着剤と触媒の通気構造体としても、上記空気浄化フィルタと同様の効果が得られる。
【0015】
また、本発明の空気浄化フィルタを搭載し、前記空気浄化フィルタに通気するためのファンなどを備えることで、室内などの空気を浄化できる空気浄化装置とでき、またファンで送風しながらも空気浄化フィルタの正温度特性体に通電の入り、切りを制御することで、切っている場合は室内のガスを吸着し、入れている場合はガスを分解するというモードを設けることができる。常に通電しないことで消費電力をおさえ、入り切りによって吸着剤が飽和しない程度に触媒によって分解することで、脱臭性能を維持することが出来る。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、触媒が吸着したガスを分解することで、取替えなどのメンテナンス作業が不要であり、かつ正温度特性体による加熱であるため、温度が一定以上かからないために、使用時の熱による触媒劣化がなく、空気中のガスを吸着もしくは分解して清浄な空気を供給する空気浄化フィルタを提供することが出来る。
【0017】
また、加熱装置である正温度特性体と触媒もしくは自己温度制御材料と吸着剤と触媒を混合した一体の通気構造体であるフィルタとすることによって、加熱再生の装置のためのスペースが不要となり、小型の空気浄化フィルタを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の請求項1記載の発明は、正温度特性体表面に触媒を担持した通気構造体である空気浄化フィルタであり、PTCサーミスタなどとして知られる正温度特性体と触媒とが混合された材料を含む通気構造体である。
【0019】
PTCサーミスタの材料は前述のとおり、チタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックPTCや低融点ポリマーにカーボン、ニッケルなどの導電性材料を混合分散させたポリマーPTCなどであり、本発明では目的の温度に合い、且つ触媒によって劣化しないものであれば良く、セラミックPTCが良い。また触媒としては、二酸化マンガンや、マンガンと銅とコバルトと銀などで構成される複数金属の酸化物や、金や白金、金や白金の合金などの熱触媒活性を有するものがよい。
【0020】
また、通気構造体としてはセラミックのシートを波型と平型に加工し交互に積層したコルゲートハニカム基材にバインダなどを介して正温度特性体と触媒を担持したものや、正温度特性体と触媒とバインダ成分などを混合して、押し出し成型によってハニカム状にしたものや、金属板でハニカム構造体に加工したものの表面に正温度特性体をバインダとともに付着させ、その表面に触媒を同じくバインダ、例えばコロイダルシリカやカーボン樹脂などで接着したものなどが望ましい。
【0021】
また、本発明の請求項2記載の発明は、正温度特性体表面に触媒とさらに吸着剤を担持した通気構造体である前記空気浄化フィルタであり、正温度特性体と触媒と吸着剤とが混合された材料を含む通気構造体である。前述の請求項1の発明の触媒だけでなく、触媒と吸着剤とを混合することによって、正温度特性体が低温の場合も、吸着剤が通気からガスを吸着することができ、正温度特性体が高温になったときに濃縮されたガスを触媒が分解することが出来るものである。
【0022】
また、本発明の請求項3記載の発明は、正温度特性体と触媒と吸着剤との混合において、触媒が吸着剤表面に担持されている前記空気浄化フィルタであり、触媒が吸着剤表面に担持するため、吸着剤が吸着したガスを触媒が分解しやすいため、分解効率が向上する。
【0023】
また、本発明の請求項4記載の発明は、吸着剤の平均粒子径が触媒の平均粒子径の10倍から100倍以下であることを特徴とする前記空気浄化フィルタであり、吸着剤への触媒の担持の際、バインダによって吸着剤と触媒を接着担持する場合には、バインダが吸着剤の吸着表面および触媒の活性表面を覆って、ガスとの接触を断ってしまうことが起こり、ガスの吸着や分解が起こりにくくなるために、脱臭性能が低下する。しかし、吸着剤の平均粒子径が触媒の平均粒子径の10倍から100倍以下であれば、吸着剤に対して触媒が、バインダが無くとも静電力で付着することが出来る大きさである。そのため、バインダによって吸着剤の表面が覆われることが無いため、吸着剤の性能をそのまま発揮できる。そのため、ガスの吸着能力が向上した空気浄化フィルタを提供できる。
【0024】
また、本発明の請求項5記載の発明は、各材料を接着するのが導電性物質である前述の空気浄化フィルタであり、接着剤が、非導電性であると、正温度特性体に電気を流した際、非導電部分や、接着剤によって正温度特性体が変形した部分が抵抗となり、均一な電流が流れにくくなり、正温度特性体からの温度が不均一になる。逆に、触媒のみもしくは触媒と吸着剤とを正温度特性体を接着するために導電性ポリマーなど導電性物質を用いることで、正温度特性体間の通電を均一にして、温度発生ムラをなくし、温度による触媒の分解効率を高めることが出来る。
【0025】
また、本発明の請求項6記載の発明は、吸着剤がゼオライトである前述の空気浄化フィルタであり、ゼオライトにはガス吸着選択性があり、対象とするガスによってゼオライトの細孔径を選ぶなどすることによって、対象とするガスを選択的に吸い取り、また触媒によって分解することが出来る。また、ゼオライトは無機物質で触媒に侵されにくいというメリットも有する。特にガス吸着に関しては、シリカアルミナ比が高く10以上である疎水性ゼオライトが、有機ガスを吸着する上で望ましい。
【0026】
また、本発明の請求項7記載の発明は、吸着剤が活性炭である前述の空気浄化フィルタであり、活性炭は吸着剤のかなでも比較的安価で比表面積も大きく、多くのガスを吸着するのに有利である。
【0027】
また、本発明の請求項8記載の発明は、触媒が二酸化マンガンであることを特徴とする前述の空気浄化フィルタであり、二酸化マンガンは常温酸化触媒でもあるが、200℃程度まで加熱するとさらに活性が増す。正温度特性体が250℃程度まで加熱可能なため、分解触媒として望ましい。また、二酸化マンガンは金や白金などの貴金属触媒とくらべ安価であるため、生産性という点においても望ましい材料である。
【0028】
また、本発明の請求項9記載の発明は、吸着剤と触媒の混合した水分散液であるスラリーを作成し、前記スラリーをろ過、必要ならば洗浄し、乾燥して吸着剤表面に触媒を担持した触媒担持吸着剤を作成し、前記触媒担持吸着剤を正温度特性体の表面に担持して作成する製造方法によって作成した前述の空気浄化フィルタである。触媒が粒子状の物質など、固体材料である場合、吸着剤表面に触媒を担持するために、触媒を一定の範囲の大きさになるようにボールミルなどの粉砕手段によって粉砕し、これを吸着剤と混合した分散スラリーとすることで、吸着剤上に触媒を担持することが出来るものである。また、触媒が溶液中でイオン化するような場合、吸着剤を触媒イオンの溶液に浸し、これを乾燥、必要であれば焼成して吸着剤上に触媒を微粒子状態で担持することが可能である。
【0029】
また、こうして得た触媒担持吸着剤を正温度特性体にバインダなどを介して接着することで前述の空気浄化フィルタが得られるものである。
【0030】
また、本発明の請求項10記載の発明は、ゼオライトの結晶構造中にマンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオンのうち少なともいずれかひとつの金属イオンを取り込んだ金属イオン交換ゼオライトを正温度特性体表面に担持した空気浄化フィルタであり、吸着剤であるゼオライトがはじめから持つナトリウムイオンなどの交換性カチオンとマンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオンのうち少なくともいずれかひとつの金属イオンとを交換して、前記金属イオンを取り込んだ金属イオン交換ゼオライトとする。金属イオン交換ゼオライトは触媒活性も示すため、吸着剤と触媒の両方の働きが出来る。さらに、金属イオン交換ゼオライトは一般に弱く、高温になりすぎると構造が壊れやすい欠点があるが、正温度特性体であれば、高温に温度が上がりすぎることが無いため、構造が壊れることが少なくなる。
【0031】
また、本発明の請求項11記載の発明は、金属イオン交換ゼオライトを作成するためにゼオライトをマンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオンのうち少なくともいずれかひとつの金属イオン水溶液に混合してこれを攪拌し、ゼオライト中の交換性カチオンと前記マンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオンのうち少なくともいずれかひとつの金属イオンとイオン交換を行った後、乾燥して金属イオン交換ゼオライトを得る方法を用いルものであり、得られた金属イオン交換ゼオライトを正温度特性体表面に担持した通気構造体とする製造方法で得られる空気浄化フィルタである。ゼオライト中の交換性カチオンとマンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオンなどの二価金属イオンと交換する場合、高濃度の二価金属イオン溶液にゼオライトをいれて長時間攪拌することで交換することができる。分散液を長時間攪拌することで簡単に触媒機能を有する金属イオン交換ゼオライトを得ることが出来る。
【0032】
さらに本発明の請求項12記載の発明は、前述の金属イオン交換ゼオライトを作成した分散溶液を正温度特性体に塗布すること得られる空気浄化フィルタであり、正温度特性体表面に簡単に触媒作用を有する金属イオン交換ゼオライトを担持することが出来、製造コストが低減できるものである。
【0033】
また、本発明の請求項13記載の発明は、正温度特性体を備える通気構造体とその通気後方に吸着剤と触媒を備える通気構造体とを、通気方向に対して、通気の向きが同じになるように重ね合わせて構成する空気浄化フィルタであり、正温度特性体に担持しにくい触媒、吸着剤などに対して、必ずしも接触させずとも通気後方に触媒、吸着剤の通気体を配することで触媒を温めることができるものである。正温度特性体を通気することで温風が作られ、通気方向が重ねあわされることで、触媒も温風で温められるためである。
【0034】
また、本発明の請求項14記載の発明は、前述の空気浄化フィルタの通風路中に通気用の送風機を備えた空気浄化装置であり、前述の空気浄化フィルタを備え、室内中の空気を吸い取り、脱臭、浄化して清浄空気を供給できる空気浄化装置と出来る。
【0035】
また、本発明の請求項15記載の発明は、前述の空気浄化装置の正温度特性体への通電の入り切りの切り替えもしくは正温度特性体への通電の入力電圧および電流を変化させることによって、通電の場合の温度によって触媒を活性させるモードと非通電の場合の通気のみ行うモードもしくは空気浄化フィルタが吸着剤を有する場合は吸着剤に吸着させるモードとを切り替える制御を備えたものであり、非通電の場合は室内のガスを吸着し、通電の場合はガスを分解するというモードを設けることができる。
【0036】
常時通電しないことで消費電力をおさえ、入り切りによって吸着剤が飽和しない程度に触媒によって随時分解することで、脱臭性能を維持することが出来る。
【0037】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0038】
(実施の形態1)
図1に示すように、正温度特性体1としてチタン酸バリウムに添加物を加えたセラミックPTCや低融点ポリマーにカーボン、ニッケルなどの導電性材料を混合分散させたポリマーPTCなどと、触媒2として、二酸化マンガンや、マンガンと銅とコバルトと銀などで構成される複数金属の酸化物や、金や白金、金や白金の合金などの熱触媒活性を有する材料とを混合し、その他シリコンポリマーや導電性ポリマーなどの接着剤3とを混合し、押し出し成型によって、通気孔のあいたハニカム構造体を作成し、空気浄化フィルタ4とする。なお、接着剤3として、正温度特性体1に対して均一に電流が流れるようにカーボン樹脂など導電性を有する材料が望ましい。
【0039】
なお、触媒2は、250℃以下で熱触媒活性を示すものが望ましく、ボールミルなどの手法で微細化が簡易に行うことができ、かつ安価である二酸化マンガンが望ましい。
【0040】
フィルタに通気を行い、ガスと触媒2を接触させる。また、正温度特性体1に通電し、発熱させる。それによって触媒2が温められて活性化し、通気中のガスを分解することが出来、通気の脱臭ができる。
【0041】
(実施の形態2)
図2に示すように、実施の形態1で示した正温度特性体1と触媒2とゼオライトや活性炭などのガス吸着特性を有する吸着剤5と接着剤3とを混合し、押し出し成型によって通気孔のあいたハニカム構造体を作成し、空気浄化フィルタ6とする。
【0042】
フィルタに通気を行い、ガスと吸着剤5を接触させる。吸着剤5にガスは吸着される。また、触媒2に接触させる。また、正温度特性体1に通電し、発熱させる。熱によって吸着剤5中に濃縮されたガスは脱離し高濃度のガスとなる。また、熱によって触媒2が温められて活性化する。前記の高濃度のガスが、触媒2と反応し分解する。高濃度のガスのほうが触媒2の分解反応が効率よく進むため、効率よく、脱臭が出来る。
【0043】
(実施の形態3)
触媒として二酸化マンガン7を水中で分散し、湿式ボールミル等の微細化手段によって二酸化マンガン7をスラリー化する。前記二酸化マンガンスラリーに微細化した二酸化マンガン7の10倍から100倍の大きさの粒子径を持つゼオライト8を混合し、分散させる。ゼオライト8への二酸化マンガン7の担持の際、バインダによってゼオライト8と二酸化マンガン7を接着担持する場合には、バインダがゼオライト8の吸着表面および二酸化マンガン7の活性表面を覆って、ガスとの接触を断ってしまうことが起こり、ガスの吸着や分解が起こりにくくなるために、脱臭性能が低下する。しかし、ゼオライト8の平均粒子径が二酸化マンガン7の平均粒子径の10倍から100倍以下であれば、ゼオライト8に対して二酸化マンガン7が、バインダが無くとも静電力で付着することが出来る大きさである。そのため、バインダによってゼオライト8の表面が覆われることが無いため、ゼオライト8の性能をそのまま発揮できる。
【0044】
前記二酸化マンガン7とゼオライト8の混合スラリーをろ過し、乾燥して二酸化マンガン担持ゼオライト9を得る。
【0045】
また、アルミなどの導電性金属10を、波型に加工し、電通及び通気孔の大きさが均一になるように積層し、前記正温度特性体1を、カーボンポリマーなどの導電材料11を接着剤として前記導電性金属の表面に塗布し、PTCヒータ12を作成する。
【0046】
図3に示すように、PTCヒータ12表面上に前記二酸化マンガン担持ゼオライト9を接着剤13を用いて接着し、空気浄化フィルタ14を得る。
【0047】
前記、空気浄化フィルタ14に通気を行い、ゼオライト8に通気中のガスを吸着させる。また、PTCヒータ12に通電し、正温度特性体1を発熱させる。熱によってゼオライト8中に濃縮されたガスは脱離し高濃度のガスとなる。また、熱によって二酸化マンガン7が温められて活性化する。前記の高濃度のガスが、二酸化マンガン7と反応し分解する。高濃度のガスのほうが二酸化マンガン7の分解反応が効率よく進むため、効率よく、脱臭が出来る。
【0048】
(実施の形態4)
吸着剤としてゼオライトを、マンガンイオンとコバルトイオンとをマンガンとコバルトの存在率が2:1となるマンガンコバルト水溶液に分散し、常温で24時間以上攪拌し、マンガンコバルトイオン交換ゼオライトスラリーを作成する。ゼオライトの交換イオンの総数に対してマンガンイオンとコバルトイオンの総数が1/2から10倍以下となるように、ゼオライトの量とマンガンコバルト水溶液の濃度を決定するのが望ましい。マンガンとコバルトは2価のイオンであるため、1価のゼオライトの交換イオンと100%交換するとイオンの個数としては1/2量が必要になる。また、多すぎる場合、触媒効果が低い上に材料比がかかるため10倍程度でよい。
【0049】
なお、マンガンとコバルト以外に、銅や亜鉛イオン、もしくはどれか単独であっても良い。
【0050】
えられたマンガンコバルトイオン交換ゼオライトスラリーをろ過し、余剰のマンガンイオン、コバルトイオンと、交換したゼオライト中のカチオンを、蒸留水にて洗浄したのち、乾燥し、マンガンコバルトイオン交換ゼオライト15を得る。
【0051】
図4に示すように、これを実施の形態3で示したPTCヒータ12表面上に同様に接着し、空気浄化フィルタ16を得る。
【0052】
前記、空気浄化フィルタ16に通気を行い、マンガンコバルトイオン交換ゼオライト15に通気中のガスを吸着させる。また、PTCヒータ12に通電し、正温度特性体1を発熱させる。熱によってマンガンコバルトイオン交換ゼオライト15が温められて活性化する。そしてマンガンコバルトイオン交換ゼオライト15中に吸着したガスを分解することが出来る。
【0053】
(実施の形態5)
実施の形態4で作成したマンガンコバルトイオン交換ゼオライトスラリーに接着成分を加え、実施の形態3で示したPTCヒータ12表面に塗布して、マンガンコバルトイオン交換ゼオライト15を接着して、空気浄化フィルタを得る(図示せず)。
【0054】
前記、空気清浄フィルタに通気を行い、マンガンコバルトイオン交換ゼオライト15に通気中のガスを吸着させる。また、PTCヒータ12に通電し、正温度特性体1を発熱させる。熱によってマンガンコバルトイオン交換ゼオライト15が温められて活性化する。そしてマンガンコバルトイオン交換ゼオライト15中に吸着したガスを分解することが出来る。
【0055】
(実施の形態6)
セラミックシートを波型と平型に加工したシートを交互に積層して作成したコルゲートハニカム構造体の表面及びセラミック内部に実施の形態3で示した前記二酸化マンガン担持ゼオライト9を担持して、触媒担持吸着剤ハニカム17を得る。
【0056】
図5に示すように、実施の形態3で示したPTCヒータ12と前記触媒担持吸着剤ハニカム17を、通気方向を合わせ、PTCヒータ12が通気上方となるように接着し、空気浄化フィルタ18を得る。
【0057】
前記、空気浄化フィルタ18に通気を行い、通気の後段にある触媒担持吸着剤ハニカムの吸着剤にガスを吸着させる。また、PTCヒータ12に通電し、正温度特性体1を発熱させる。通気空気が温められ、通気後段にある触媒担持吸着剤ハニカムが温められる。熱によってゼオライト8中に濃縮されたガスは脱離し高濃度のガスとなる。熱によってゼオライト8中に濃縮されたガスは脱離し高濃度のガスとなる。また、熱によって二酸化マンガン7が温められて活性化する。前記の高濃度のガスが、二酸化マンガン7と反応し分解する。高濃度のガスのほうが二酸化マンガン7の分解反応が効率よく進むため、効率よく、脱臭が出来る。
【0058】
なお、前記の触媒担持吸着剤ハニカム17は、二酸化マンガン担持ゼオライト9だけでなく、実施の形態1で示した触媒もしくは実施の形態2で示した吸着剤と触媒、もしくは実施の形態4で示したマンガンコバルトイオン交換ゼオライト15を担持した触媒担持吸着剤ハニカムであってもよい。
【0059】
(実施の形態7)
実施の形態1から6のいずれかに示した空気浄化フィルタ19を、図6に示すように、筐体20中に備え、ファンなどの送風手段21を備えた空気浄化装置22とする。なお、空気浄化フィルタは、正温度特性体1に通電するために、電源装置23を備え、制御装置24によって、前記空気浄化フィルタ19に対して、正温度特性体1への通電を入切できる制御装置を備えることによって、非通電の場合は室内のガスを吸着し、通電の場合はガスを分解するというモードを設けることができるようになり、常時通電しないことで消費電力をおさえ、入り切りによって吸着剤が飽和しない程度に触媒によって随時分解することで、脱臭性能を維持することが出来るため望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
PTCとして知られる正温度特性体と吸着剤、熱分解特性をもつ触媒とを混合した空気浄化フィルタによって、メンテナンス性がよく、過剰加熱による触媒の劣化のない空気浄化フィルタと、前記空気浄化フィルタを搭載した空気浄化装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態1の空気浄化フィルタの概略図
【図2】本発明の実施の形態2の空気浄化フィルタの概略図
【図3】本発明の実施の形態3の空気浄化フィルタの概略図
【図4】本発明の実施の形態4の空気浄化フィルタの概略図
【図5】本発明の実施の形態6の空気浄化フィルタの概略図
【図6】本発明の実施の形態7の空気浄化装置の概略図
【符号の説明】
【0062】
1 正温度特性体
2 触媒
3 接着剤
4 空気浄化フィルタ
5 吸着剤
6 空気浄化フィルタ
7 二酸化マンガン
8 ゼオライト
9 二酸化マンガン担持ゼオライト
10 導電性金属
11 導電材料
12 PTCヒータ
13 接着剤
14 空気浄化フィルタ
15 マンガンコバルトイオン交換ゼオライト
16 空気浄化フィルタ
17 触媒担持吸着剤ハニカム
18 空気浄化フィルタ
19 空気浄化フィルタ
20 筐体
21 送風手段
22 空気浄化装置
23 電源装置
24 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正温度特性体表面に触媒を担持した通気構造体であることを特徴とする空気浄化フィルタ。
【請求項2】
正温度特性体表面に触媒と吸着剤を担持した通気構造体であることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化フィルタ。
【請求項3】
吸着剤表面に触媒を担持したことを特徴とする請求項2に記載の空気浄化フィルタ。
【請求項4】
吸着剤の平均粒子径が触媒の平均粒子径の10倍以上100倍以下であることを特徴とする請求項2もしくは3のいずれかに記載の空気浄化フィルタ。
【請求項5】
担持を接着剤を用いて接着し、その接着剤が導電性物質であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の空気浄化フィルタ。
【請求項6】
吸着剤がゼオライトであることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の空気浄化フィルタ。
【請求項7】
吸着剤が活性炭であることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の空気浄化フィルタ。
【請求項8】
触媒が二酸化マンガンであることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の空気浄化フィルタ。
【請求項9】
吸着剤と触媒の混合した水分散液であるスラリーを作成し、前記スラリーを乾燥して吸着剤表面に触媒を担持した触媒担持吸着剤を作成し、正温度特性体の表面に前記触媒担持吸着剤を担持する製造方法によって作成したことを特徴とする請求項2乃至8のいずれかに記載の空気浄化フィルタ。
【請求項10】
ゼオライトの結晶構造中にマンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオンのうち少なともいずれかひとつの金属イオンを取り込んだ金属イオン交換ゼオライトを正温度特性体表面に担持した通気構造体であることを特徴とする請求項1に記載の空気浄化フィルタ。
【請求項11】
ゼオライトとマンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオンのうち少なくともいずれかひとつの金属イオンとを混合して、分散した水溶液を攪拌し、ゼオライト結晶構造中に存在する交換性カチオンと前記マンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオンのうち少なくともいずれかひとつの前記金属イオンとをイオン交換を行った後、乾燥して前記ゼオライト結晶構造中に前記金属イオンを取り込んだ金属イオン交換ゼオライトを作成する製造方法によって作成したことを特徴とする請求項10に記載の空気浄化フィルタ。
【請求項12】
ゼオライトとマンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオンのうち少なくともいずれかひとつの金属イオンとを混合して、分散した水溶液と導電ポリマーとの混合分散溶液で、ゼオライト結晶構造中に存在する交換性カチオンと前記マンガンイオン、コバルトイオン、銅イオン、亜鉛イオンのうち少なくともいずれかひとつの前記金属イオンとをイオン交換を行った後、上記溶液を正温度特性体上に塗布する製造方法によって作成したことを特徴とする請求項10に記載の空気浄化フィルタ。
【請求項13】
少なくとも正温度特性体を備える通気構造体とその通気方向後方に吸着剤と触媒を備える通気構造体とが、通気方向に対して通気の向きが同じに重なっている構成であることを特徴とする空気浄化フィルタ。
【請求項14】
通風路と通気用送風機を備え、前記通風路中に請求項1乃至13のいずれかに記載の空気浄化フィルタを備えることを特徴とする空気浄化装置。
【請求項15】
正温度特性体への通電の入り切りの切り替えもしくは、前記正温度特性体への通電の入力電圧および電流を変化させることによって、温度によって触媒を活性させるモードと通気のみ行うモードもしくは空気浄化フィルタが吸着剤を有する場合は吸着剤に吸着させるモードとを切り替える制御であることを特徴とする請求項14記載の空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−69426(P2010−69426A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−240497(P2008−240497)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】