説明

空気浄化装置

【課題】両面に光触媒層が形成されたシート片を互い違いに折り曲げてなるプリーツ状部材の襞が湾曲板状を呈する場合にあっても、襞の表面への光の照射に支障をきたさない空気浄化装置を提供すること。
【解決手段】空気浄化装置は、光触媒層が形成された両面を有するシート片(9)を互い違いに折り曲げてなる、複数の空間(11)を有する1又は複数のプリーツ状部材(3)と、プリーツ状部材が、その空間がその第1の開放面(15)で塞がれるように収容されたハウジング(5)と、ハウジング内に配置された、プリーツ状部材の空間の第2の開放面(17)に向けて光を放射可能である、光触媒層を活性化させるための1又は複数の光源(7)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気浄化装置、特に、空調装置の空気流路又は排気ガス処理装置のガス流路に付設して用いるのに適した、環境空気中の有害ガスを分解除去するための空気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
環境空気の汚染に対する社会的関心の高まりから、空気浄化技術の研究が精力的に行われている。その一つとして、本発明者等が開発した有害ガスの除去処理技術がある。この技術は、酸化チタン(TiO2)のような光触媒と、拡散スクラバの原理、すなわち空気中に存する窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)のような有害ガス及び微粒子がそれぞれ有する拡散係数の相違を利用して前記有害ガスを分離、捕集するという原理とを組み合わせてなる平行板型の空気浄化装置として実現されている(特開2002−126451号公報及び特開2003−251147号公報参照)。なお、前記拡散スクラバの原理はいわゆる乾式の有害ガスの捕集・除去法の原理に係り、水のような溶液に前記有害ガスを拡散させるいわゆる湿式拡散スクラバの原理を含まない。
【0003】
この空気浄化装置は、光触媒が塗布された対向面を有する互いに平行な一対の基板と、前記光触媒に光を照射しこれを活性化させるための、両基板間に配置された紫外線ランプのような光源とを備える。両基板の間隔及び大きさは、後記Gormley-Kennedy理論式(P.G.Gormley, M. Kennedy, Proceedings of the Royal Irish Academy, Vol.52A, 163-169, (1949))に基づいて算出される有害ガスの除去効率ができる限り大きい値となるように設定される。両基板間の間隔は、例えば5mm程度の狭い値に設定される。
前記有害ガスの除去効率(f)を算出するために用いられるGormley-Kennedy理論式は、次のとおりである。
f=1−[0.910exp(−3.77μ)+0.0531exp(−42.8μ)]、μ=bDL/aQ (f:除去効率、D:対象とするガスの拡散係数(cm2/秒)
ここにおいて、a:平行板の間隔(cm)、L:平行板の長さ(cm)、μ:沈着パラメータ、Q:大気吸引流量(cm3/秒)、b:平行板の幅(cm))である。
【0004】
この空気浄化装置によれば、汚染された空気が両基板間に通されるとき、該空気中の微粒子よりも大きい拡散係数の値を有する有害ガスが両基板の対向面上に拡散し、光源からの光の照射によって活性化された光触媒により酸化、分解される。これにより、前記空気中から有害ガスを除去することができる。他方、前記有害ガスより拡散係数の小さい前記微粒子は両対向面上に拡散することなく両基板間を通過し、両基板間からその外部に放出される。
【0005】
ところで、前記平行な両基板は極めて耐腐食性の高いものであることが求められるため、好ましくは耐蝕性に優れまた機械的強度に優れたステンレス鋼板が用いられる。しかし、汚染された空気の処理量を増加させるべく空気浄化装置の大型化を図ると、その保守に要する負担が増大し、また両ステンレス鋼鈑の再使用のために行われる洗浄、乾燥等の作業負担が増大するとともに、装置重量も大きくなるという問題がある。また、有害ガスであるNO2やHNO3を良好に吸着保持するための吸着剤粒子を光触媒に混ぜて使用する場合、光触媒をステンレス鋼板の全面に均一に塗布する必要があり、コストの増大を招く。
【0006】
そこでこのような問題を解消すべく、装置の大型化を図ることなしに大量の空気の処理を可能とし、また空気中の窒素酸化物(NOx)等の有害ガスを高い効率で除去することを可能とし、さらに光触媒を塗布した基材の洗浄、再使用が容易である新たな空気浄化装置を提案した(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−131553号公報
【0007】
図7に示すように、この空気浄化装置200では、ステンレス鋼鈑からなる平行な基板の代わりに、両面に光触媒層が形成された不織布、紙、プラスチックフィルム等の軽量な素材からなる基材であるシート片202を互い違いに折り曲げてなるプリーツ状部材204を用いる。これにより、空気浄化装置200が小型、軽量なものとされ、大量の空気を処理可能なものとされ、また空気中の窒素酸化物(NOx)等の有害ガスについての高い除去効率を達成可能なものとされている。
【0008】
プリーツ状部材204は、シート片202を互い違いに折り曲げることにより生じた複数の襞222と、これらの襞222により仕切られたV字形の断面形状を有する複数の空間206とを有する。各空間206は、後述するように、浄化対象である有害ガスを含む空気Aを流すための通路とされる。各空間206は、第1の開放面208と該第1の開放面に連なる、互いに相対する一対の第2の開放面210(ただし、一方の開放面のみを示す。)とからなる3つの開放面を有し、各空間206は第2の両開放面210の一方から他方に向けて伸びている。
【0009】
また、空気浄化装置200は、プリーツ状部材204を収容する、互いに相対する2つの開口212を有する枠体からなるハウジング214を備える。ハウジング214内において、プリーツ状部材204の各空間206が、その第1の開放面208において、ハウジング214の互いに相対する両側壁216により閉鎖されており、これにより各空間206はその第2の両開放面210をそれぞれ出入り口とする空気Aのための流動用通路を規定する。また、各空間206の第2の両開放面210がそれぞれハウジング214の両開口212に相対している。これにより、ハウジング214の両開口212の一方およびその他方を通して、ハウジング214の外部の空気Aをプリーツ状部材204の各空間206内に導入し、また各空間206の外部に導くことができる。
【0010】
さらに、空気浄化装置200は、プリーツ状部材204の各襞222の表裏両面を覆う前記光触媒層を活性化させるためにこれに光を照射するための一対の光源218を備える。両光源218は、それぞれ、ハウジング214の外部にその両側壁216に向けて光200を放射可能であるように配置されている。ハウジング214の両側壁216は透光性を有し、紫外線光源218から放射された光220は各側壁216を透過してハウジング214内のプリーツ状部材204の各空間206内にその第1の開放面208から入射し、プリーツ状部材204の前記光触媒層を照射する。
【0011】
この空気浄化装置200によれば、空気Aがプリーツ状部材204の各空間206内をその第2の両開放面210の一方からその他方に向けて流動するとき、空気A中の有害ガスが前記光触媒層上に拡散し、光220の照射を受けて活性化された状態にある前記光触媒層で分解され、空気A中から除去される。前記有害ガスの除去処理は、プリーツ状部材204の空間206に空気Aを送り込むことにより連続的に行うことができ、このため、前記平行な基板を使用する空気浄化装置におけると同様、低空気抵抗下での大量の空気Aの処理が可能である。空気Aの処理過程においてプリーツ状部材204の前記光触媒層に捕捉された硝酸成分等は、プリーツ状部材204をケーシング214の外部に取り出して水等で洗浄することにより回収することができる。また、洗浄後のプリーツ状部材204は、これを乾燥させることにより、再使用に供することができる。
【0012】
ところで、シート片202を互い違いに折り曲げてなるプリーツ状部材204は、シート片202自体が有する形態保持性能や復元性能の程度、プリーツ状部材204が置かれる環境の温度や湿度の影響等により経時的に、あるいはシート片202自体又はその折曲げ精度上の寸法誤差のために当初から、実際には、V字形の各空間206の横断面で見てこれを規定する襞222が図8に示すように平板状ではなく、図9に示すように湾曲板状を呈することとなり、あるいは湾曲板状を呈していることがある。
【0013】
襞222が平板状であれば、その表面が平坦であるため、プリーツ状部材204の空間206にその第1の開放面208からその奥に向けて入射する光220は襞222の表面に沿って進行することができる。これにより、襞222の表面を規定する前記光触媒層が隈なく照らされる。これに対し、襞222が湾曲板状を呈していると、襞222の表面が起伏しているため、襞222の表面に沿っての光220の進行が妨げられる。その結果、襞222の表面の一部に影が生じ、その部分における前記光触媒層の活性化の低下及びこれに伴う空気清浄効率の低下を余儀なくされる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、両面に光触媒層が形成されたシート片を互い違いに折り曲げてなるプリーツ状部材の襞が湾曲板状を呈する場合にあっても、襞の表面への光の照射に支障をきたさない空気浄化装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(請求項1に記載の発明)
空気浄化装置に係る請求項1に記載の発明は、光触媒層が形成された両面を有するシート片を互い違いに折り曲げてなり、折り曲げにより生じたV字形の断面形状を有する複数の空間であって第1の開放面及び該第1の開放面に連なる、互いに相対する一対の第2の開放面からなる3つの開放面を有する複数の空間とこれらの空間を仕切る複数の襞とを備える1又は複数のプリーツ状部材と、該プリーツ状部材が、各空間がその第1の開放面で塞がれるように収容されたハウジングであって各空間の第2の両開放面にそれぞれ相対する一対の開口を有するハウジングと、該ハウジング内に配置された、前記プリーツ状部材の空間の少なくとも一方の第2の開放面に向けて光を放射可能である、前記光触媒層を活性化させるための1又は複数の光源とを含むことを特徴とする。
【0016】
請求項1に記載の発明によれば、本発明に係る空気浄化装置による浄化対象である窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、アンモニア、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等からなる有害ガスを含む空気をハウジングの両開口から該ハウジング内のプリーツ状部材の各空間に通すことにより除去することができる。前記プリーツ状部材の各空間はV字形の横断面形状を有し、その3つの開放面のうちの第1の開放面において塞がれており、残りの2つの第2の開放面を出入り口とする前記空気のための流路を規定する。各空間内に導入された前記空気中の有害ガスは、各空間を仕切る襞の表面を覆う、光源からの光の照射を受けて活性化された光触媒層上に拡散し、該光触媒の働きにより分解され、前記空気中から除去される。本発明においては、前記従来の空気浄化装置におけると同様、前記光触媒層が形成されたシート片を互い違いに折り曲げてなる前記プリーツ状部材を採用していることから、大量の空気の浄化処理が可能であり、また空気中の前記有害ガスを高い効率で除去することができ、さらに前記プリーツ状部材の洗浄、再使用が容易である
【0017】
本発明にあっては、前記光触媒層を活性化させるための光源が前記プリーツ状部材の空間の第2の開放面すなわち前記空気のための流路の出入口の一方に向けて光を放射可能であるように配置されている。このことから、前記プリーツ状部材の1の折り山からこれに相対する他の折り山に向けて波打ち、このために両折り山間の襞が湾曲板状を呈している場合であっても、前記光源から放射された光は、前記襞の波打つ表面上を前記空間の第2の開放面の一方からその他方、すなわち前記空気の出入り口の一方からその他方に向けて進行することができる。その結果、前記襞の表面を覆う前記光触媒層の全面が隈なく照らされ、前記光触媒層の活性化の低下及びこれに伴う空気清浄効率の低下が回避される。
【0018】
(請求項2に記載の発明)
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記プリーツ状部材が互いに間隔を置いて配置された2つの第1のプリーツ状部材と、第1の両プリーツ状部材間に配置された第2のプリーツ状部材であって該第2のプリーツ状部材の各空間の第2の両開放面間の長さ寸法が前記第1のプリーツ状部材の各空間の第2の開放面間の長さ寸法の2倍である第2のプリーツ状部材とからなり、前記光源が各第1のプリーツ状部材と前記第2のプリーツ状部材との間に配置されていることを特徴とする。
【0019】
請求項2に記載の発明によれば、第1の各プリーツ状部材と第2のプリーツ状部材との間に配置された光源により、第1の各プリーツ状部材についてその空間の第2の両開放面間の長さ寸法すなわちその全長に渡っての前記光触媒層への光の放射を可能とするほか、さらに各光源により前記第2のプリーツ状部材の空間の全長の両半分のそれぞれに渡っての前記光触媒層への光の照射を行うことができる。また、前記光源は浄化されるべき空気の流通経路上にあって空気流に曝されることとなるが、前記光源に触れる空気は前記第1のプリーツ状部材を経て、あるいは前記第1及び第2の両プリーツ状部材を経て浄化されていることから、前記光源への有害ガスの付着の程度を軽減することができる。
【0020】
(請求項3に記載の発明)
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明の構成要素を備えた上で、前記第2のプリーツ状部材が、互いに重ね合わされた2つの他の第1のプリーツ状部材からなることを特徴とする。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、空気浄化装置を構成する上で、前記空間の第2の両開放面間の長さ寸法が異なる複数種類のプリーツ状部材ではなく、単一種類のプリーツ状部材を準備することで足りるものとすることができる。
【0022】
(請求項4に記載の発明)
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1項に記載の発明の構成要素を備えた上で、さらに前記プリーツ状部材がその各空間がその第1の開放面で塞がれるように保持されたホルダを含み、該ホルダは前記プリーツ状部材の各空間の第2の両開放面にそれぞれ相対する一対の開口を有することを特徴とする。
【0023】
請求項4に記載の発明によれば、ホルダに保持されたプリーツ状部材はその空間が第1の開放面において閉鎖され、また第2の両開放面がそれぞれ前記保持枠の両開口に相対するように置かれていることから、前記ホルダをその両開口がそれぞれ前記ハウジングの両開口に相対するようにして配置することにより、前記プリーツ状部材を前記ハウジング内に容易に取り付けることができ、またその取り外しを容易に行うことができる。さらに、前記プリーツ状部材の交換を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、両面に光触媒層が形成されたシート片を互い違いに折り曲げてなるプリーツ状部材を有する空気浄化装置において、前記プリーツ状部材の襞が湾曲板状を呈する場合にあっても、前記襞の表面への光の照射に支障をきたさないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1を参照すると、本発明に係る空気浄化装置が全体に符号1で示されている。図示の空気浄化装置1は複数のプリーツ状部材3と、これらのプリーツ状部材3が収容されたハウジング5と、プリーツ状部材5における後記光触媒層を活性化させるための紫外線ランプや、蛍光ランプ、ブラックライトブルー蛍光ランプ、発光ダイオード(LED)のような複数の光源7とを備える。
【0026】
図1に示す例では、複数(4つ)のプリーツ状部材3が、ハウジング5内において、3段の互いに平行な平面上のそれぞれに配置されている。各平面上の複数のプリーツ状部材3は、該プリーツ状部材の後記襞13が互いに相対するように直列に配列されている。また、段相互間に2本の管状の光源7が各段の複数のプリーツ状部材3の配列方向へ伸びるように配置されている。プリーツ状部材3の数量及びプリーツ状部材3が配置される前記平面の段数はそれぞれ任意に設定することができる。
【0027】
図2に示すように、プリーツ状部材3は光触媒層(図示せず)が形成された両面を有するシート片9、図示の例では細長い矩形状のシート片9を互い違いに折り曲げてなり、シート片9の折り曲げにより生じたV字形の横断面形状を有する複数の空間11と、折り山12と折り山12との間を伸び、複数の空間11を互いに仕切る複数の襞13とを備える。プリーツ状部材3の各空間11は、矩形状の第1の開放面15と、該第1の開放面に連なりかつ互いに相対する一対の二等辺三角形状の第2の開放面17とを有する。シート片9の折り曲げは襞13同士が互いに相対しかつ整列するようになされており、これにより、各空間11の第2の両開放面17の一方とその他方とがそれぞれ互いに平行な一対の平面上にある。
【0028】
シート片9は紙やプラスチックフィルム、不織布等からなる。前記不織布は、例えばポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリオレフィン系繊維、フェノール系繊維等の合成繊維、ガラス繊維、金属繊維、アルミナ繊維、炭素繊維、活性炭素繊維等の無機繊維、木材パルプ、麻パルプ、コットンリンターパルプ等の天然繊維、再生繊維、あるいはこれらの繊維に撥水性や難燃性等の機能を付与した繊維等からなる。ただし、光源7が紫外線を放射する紫外線光源からなる場合には、該光源から照射される紫外線によって劣化せず、また水洗いして繰り返し使用できるものが好ましい。
【0029】
また、前記光触媒層は、光触媒粒子をシート片9の両面に塗布し、あるいは練り込むことにより形成することができる。前記光触媒は特に限定されないが、代表的な酸化チタン(TiO2)が好ましい。酸化チタン粒子をシート片9に塗布する場合、バインダーとして二酸化ケイ素、過酸化ケイ素等のケイ素化合物を主成分とするものや、シリコーン樹脂、弗素樹脂等を使用することができ、特に耐酸化性に優れ、かつ透光性を有するポリテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0030】
TiO2光触媒の量に対するバインダーの割合が多くなるとプリーツ状部材3によるNOxの除去効率が低下するのでバインダーの量は、TiO2光触媒の量に対して1:1より少ないことが望ましい。少なすぎると十分な接着力が得られないので、1:0.2程度以上が好ましい。
【0031】
不織布、紙、プラスチックフィルムの表面に光触媒層を塗布するには、光触媒微粒子とバインダーの水分散体からなる塗布液を浸漬法又はロールコーターやスプレー法等の塗布法で紙や不織布の表面に塗布し、乾燥又はポリテトラフルオロエチレンの融点の220℃より低い温度で1〜10分間加熱する。ただし、触媒面積の大きい粗な塗布層を形成できるスプレー法が好ましい。
【0032】
図1に示す空気浄化装置1においては、4つのプリーツ状部材3がホルダ19に保持された状態でハウジング5内に収容されている。複数のプリーツ状部材3は、これらをホルダ19で保持することなしに、ハウジング5内に収容することも可能であるが、プリーツ状部材3をホルダ19内に保持する図示の例によれば、ホルダ19を使用しない場合と比べて、複数のプリーツ状部材3をハウジング5内に並べて収容することが容易であり、またプリーツ状部材3の交換を容易に行うことができる。
【0033】
図2に示すように、ホルダ19は細長い矩形の四辺に沿って伸びる枠体からなり、互いに相対する一対の開口21を有する。前記枠体は互いに相対する二対の側壁23,25を有する。また、ホルダ19は、その短い両側壁23間に等しい間隔を置いて配置され、ホルダ19の内部を4つの空間に仕切る3つの仕切り板27を有する。
【0034】
4つのプリーツ状部材3はそれぞれホルダ19の前記4つの空間内に受け入れられている。ホルダ19内に受け入れられた各プリーツ状部材3は、その複数の折り山12においてホルダ19の長い両側壁25に接しており、これにより各プリーツ状部材3の各空間11がその第1の開放面15において閉鎖されている。プリーツ状部材3をホルダ19で保持することなしにこれをハウジング5内に直接に配置する場合は、プリーツ状部材3をその複数の折り山12においてハウジング5の後記一対の側壁35に接するようにする。これにより各プリーツ状部材3の各空間11がその第1の開放面15において閉鎖される。
【0035】
ホルダ19内に受け入れられた各プリーツ状部材3は、ホルダ19の長い両側壁25に設けられこれらの上下の両縁部から互いに他の一方に向けて伸びる2対のフランジ29によりホルダ19内に保持されている(図3参照)。これにより、4つのプリーツ状部材3の空間11の互いに相対する第2の両開放面17が、それぞれ、ホルダ19の両開口21に相対している。このため、各プリーツ状部材3の各空間11は、空気浄化装置1において、その第2の両開放面17を出入口とする、窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)、アンモニア、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドのような有害ガスを含む空気のための流路を規定する。前記有害ガスは、後述するように、前記空気が前記流路を通過する間に分解、除去される。プリーツ状部材3の各空間11内への前記空気の導入は、ホルダ19の両開口21の一方を通して行われ、また空間11内に導入された前記空気の排出は他方の開口21を通して行われる。
【0036】
ホルダ19に保持されるプリーツ状部材3の空間11の第1の開放面15の幅寸法aの大きさは任意に定めることができる。例えば、図4に示すように、図3に示すプリーツ状部材3に比べて空間11がより密なもの、すなわち幅寸法aがより小さいものとすることができる。これによれば、前記空気の流路の総表面積すなわち前記有害ガスの前記光触媒層に対する接触面積をより大きいものとし、その除去効率を増大させることができる。ただし、空間11を密にすると、これを通る空気の流動抵抗が増大し、前記有害ガスの除去量の低下を招く前記空気の流量低下が生じるから、これを考慮する必要がある。
【0037】
図5に示すように、プリーツ状部材3を収容するハウジング5は、プリーツ状部材3のホルダ19と同様、矩形の四辺に沿って伸びる枠体からなる。前記枠体は、互いに相対する一対の開口31を有する。各開口31は、ホルダ19の平面形状(ホルダ19をその開口21の側から見たときの外形)にほぼ等しい平面形状を有し、ハウジング5は両開口31を規定する互いに相対する二対の側壁33,35間に、プリーツ状部材3が保持されたホルダ19を収容することができる。
【0038】
ハウジング5内には、その一対の側壁33に、両開口31間(図上において上下間)に3段に配置された互いに相対する三対のブラケット37が互いに間隔を置いて設けられている。各対のブラケット37にホルダ19を掛け渡すことにより、ホルダ19をハウジング5内に保持することができる。このとき、ホルダ19はその両開口21がそれぞれハウジング5の両開口31に相対する。これにより、前記有害ガスを含む空気を、ハウジング5の両開口31の一方を通してホルダ19の両開口21の一方に導入し、またハウジング5の他方の開口31を通してホルダ19の他方の開口21から排出することができる。
【0039】
図5に示す例では、前記したように、図上において上方位置、下方位置及びこれらの間の中間位置にそれぞれ三対のブラケット37が配置されているところ、前記上方位置のブラケット37と前記中間位置のブラケット37との間の間隔が、前記中間位置のブラケット37と前記下方位置のブラケット37との間の間隔の2倍に設定されている。この設定の下、図1に示すように、前記上方位置のブラケット37及び前記下方位置のブラケット37のそれぞれに1つのホルダ19が載置され、前記中間位置のブラケット37には2段重ねの2つのホルダ19が載置されている。その結果、図6に示すように、プリーツ状部材3がそれぞれ保持された1つのホルダ19と、2つのホルダ19と、1つのホルダ19とが三段に配置される。これによれば、ハウジング5内にその両開口31の一方から導入された前記空気は、例えば前記下方位置の1つのホルダ19内の各プリーツ状部材(第1のプリーツ状部材)3の空間11と、前記中間位置の上下2つのホルダ19内の各プリーツ状部材(第2のプリーツ状部材)3の空間11と、前記上方位置の1つのホルダ19内の各プリーツ状部材(第1のプリーツ状部材)3の空間11とを順次に経て流れ、最後にハウジング5の他の開口31を通ってハウジング5の外部に出る。
【0040】
前記空気は、各ホルダ19内のプリーツ状部材3の空間11を流動する間に浄化される。すなわち、前記空気がプリーツ状部材3の空間11を通過するとき、前記空気に含まれた有害ガスが、空間11を規定するプリーツ状部材3の襞13(図2)の表面に拡散する。襞13の表面に拡散した前記有害ガスは、光源7からの光の照射を受けて活性化された襞13の表面を覆う前記光触媒層により分解され、前記空気中から除去される。図1に示す例では、プリーツ状部材3が三段に配置されており、前記空気の浄化を段階的に高めることができる。なお、前記空気中に含まれた微粒子は襞13の表面に拡散することなく、したがって前記光触媒層により分解されることなくそのままプリーツ状部材3の空間11外に放出される。
【0041】
図1に示す例においては、前記光触媒層を活性化させるための互いに平行な二対の管状の光源7がハウジング5の両側壁33に支持されこれらの側壁33を水平に伸びている。二対の光源7は、それぞれ、前記上方位置のホルダ19と前記中間位置のホルダ19との間に配置され、また前記中間位置のホルダ19と前記下方位置のホルダ19との間に配置され、ホルダ19内のプリーツ状部材3の空間11の第2の開放面17に面している。このことから、光源7が発する光は第2の両開放面17の一方から空間11内に入射し、他方の第2の開放面17に達し、これにより空間11を規定する襞13の表面上の前記光触媒層を照射する。第2の開放面17から入射した光は、これが第1の開放面15から入射する場合と異なり、襞13が湾曲板状を呈する場合すなわちプリーツ状部材3の各襞13がこれを規定する両折り山12の一方からその他方に向けて波打つ場合にあってもその表面の凹凸に妨げられることなく該凹凸に沿って進行し、襞13の表面すなわち前記光触媒層を隈なく照射する。これにより、従来における前記光触媒層の活性化の低下及びこれに伴う空気の浄化効率の低下を防止することができる。
【0042】
また、図1に示す例によれば、前記中間位置にある二段重ねのプリーツ状部材(第2のプリーツ状部材)3の上下の両空間11の足し合わせた長さ寸法、すなわち両空間11の上下の第2の開放面17間の長さ寸法が、前記上方位置にある一段のプリーツ状部材(第1のプリーツ状部材)3及び前記下方位置にある一段のプリーツ状部材(第1のプリーツ状部材)3の空間11の長さ寸法c(図2)の2倍の大きさを有する。これにより、前記光触媒層の総面積をより大きいものとし、前記有害ガスをより多量に除去することができる。さらに、空気浄化装置1を構成する上で、長さ寸法cが異なる複数種類のプリーツ状部材ではなく、単一種類のプリーツ状部材を準備することで足りるものとすることができる。ただし、プリーツ状部材3を二段重ねとすることに代えて、2cの長さ寸法を有する単一のプリーツ状部材とすることを妨げない。また、プリーツ状部材3の長さ寸法cは任意に設定することができる。
【0043】
さらに、第1の各プリーツ状部材3と第2のプリーツ状部材3との間に配置された光源7により、第1の各プリーツ状部材3についてその空間11の長さ寸法すなわちその全長cに渡っての前記光触媒層への光の放射を可能とするほか、さらに各光源7により第2のプリーツ状部材3の空間11の全長の両半分のそれぞれに渡っての前記光触媒層への光の照射を行うことができる。なお、光源7は、その発する光がプリーツ状部材3の空間11の第2の両開放面17の一方からその他方に至るものであれば、管状のものに代えて例えば球状のものとし、また、光源7の数量を任意に定めることができる。
【0044】
前記したプリーツ状部材3による前記有害ガスの理論除去効率は、前記従来の平行基板を用いた平行板型拡散スクラバについて適用されたGormley-Kennedy理論式を用いて算出することができる。プリーツ状部材3のサイズはGormley-Kennedy理論式により設計でき、大きなものから小さなものまで可能であるが、空気処理量が100〜500m/h程度の場合には、空間11の第1の開放面15の開き間隔は0.5〜3cm程度が適当である。
【0045】
平行板型拡散スクラバの理論除去効率は、Gormley及びKennedy(Gormley P., Kennedy M.:Proc. R. Ir. Acad., 52A, 163-169 (1949))によって導かれた以下に示す式によって求めることができる。
【0046】
f=(1−C/C)x100・・・(1)
C/C={0.910exp(−3.77μ)+0.0531exp(−42.8μ)+・・・}・・・(2)
μ=bDL/aQ・・・(3)
(f:理論捕集効率(%)、C:除去成分の入口濃度、C:除去成分の出口濃度、μ:沈着パラメータ、D:対象とするガスの拡散係数(cm2/秒)、Q:大気吸引流量(cm3/秒)、L:プレート有効長(cm)、b:プレートの幅(cm)、a:プレート間隔(cm))。
【0047】
しかし、プリーツ状部材3は前記平行基板と形状が異なるため、(1)〜(3)式を用いてそのまま求めることができない。そこで、Possanziniら(M. Possanzini et al.:Atmos. Environ., 17, 2605-2610 (1983))が提唱したレイノルズ数を用いて沈着パラメータを表すことで、プリーツ状部材3についてGormley-Kennedyの式の適用を行った。
【0048】
C/C={0.819exp(−14.6272μ)+0.0976exp(−89.22μ)+・・・}・・・(4)
μ=DL/γRed・・・(5)
Re=Vd/γ・・・(6)
Q=VS・・・(7)
(γ:大気の動的粘度(=0.152Cm2/秒:20℃、1atmにおいて)、Re:レイノルズ数、d:管の直径(cm)、V:空気流速(cm/秒)、S:空気流路の断面積)
【0049】
よって、沈着パラメータμは、
μ=DLS/Qd2・・・(8)
と表すことができる。
【0050】
ここで、(4), (5)式は管状の基材を用いる管状型拡散スクラバに適用されるものであるため、管状基材の直径dの代わりに相当直径δの概念を用いることでプリーツ状部材3への応用が可能となる。
【0051】
δ=4S/I・・・(9)
(δ:相当直径(cm)、S:空気流路の断面積(cm2)、I:横断面の周囲長(cm))
【0052】
したがって、プリーツ状部材3の第1の開放面における間隔a及びプリーツ状部材3の幅bより算出したδは、
S=axb/2、I=2(a2+b21/2を(9)式に代入して、
δ=ab/(a2+b21/2・・・(10)
となる。これを(8)式に代入することでプリーツ状部材3の沈着パラメータμは、
μ=DL(a2+b2)/2abQ・・・(11)
と表すことができる。
【0053】
実際に、プリーツ状部材3の長さL=10cm、間隔a=0.5cm及び 幅b=5cmのプリーツ状部材3のNO, NO2理論除去効率を算出すると、プリーツ状部材3の沈着パラメータは(11)式より、
μ=Dx10x((0.5)2+52)/2x0.5x5xQ=50.5D/Q・・・(12)
と表すことができる。
【0054】
プリーツ状部材3にあっては、(12)式を(4)式へ代入することで、理論除去効率を算出することができる。
【0055】
自動車トンネル、自動車道路沿道、地下駐車場等において、高濃度のNOx等を除去する場合は、空気浄化装置1の性能低下を防ぎ、耐久性を保つためには、共存するVOC(ベンゼン、トルエン等)を別途取り除く必要がある。そこで、本発明の空気浄化装置1には、その上流部に活性吸着剤などを用いるVOC除去装置を設けたシステム構成とすることが好ましい。このVOC除去装置としては、特に限定されないが、前記平行板型拡散スクラバーを用いて光触媒層に代えて活性炭層を設けた装置を用いてもよく、また、本発明の空気浄化装置1と同様な装置を用い、コシのある紙や不織布やプラスチックフィルムからなるシート面に光触媒層に代えて活性炭吸着層を設けて波型やプリーツ状型に成形したものや紙や不織布やプラスチックフィルムに代えて活性炭繊維シートを用いて波型やプリーツ状型に成形したものを用いてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明に係る拡散スクラバの原理を利用した空気浄化装置の構造は根本的に簡便であり、既存の空調施設等に簡単に組み込むことができ、従って、温度・湿度の調整の為に行って
きたビル等における空調と同時に本装置により有害ガス成分を除去処理し、質の高い生活環境を提供することができる。又、本装置はビルの空調設備に組み込むばかりでなく、VOCの除去装置と組み合わせることにより自動車トンネル、地下駐車場、工事車両からの窒素酸化物の効率的な除去処理が行える。更に、装置自身は簡単に小型化できるので、一般家庭での可搬型空気浄化装置としても使用できること等極めて応用範囲が多岐に亘る。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明に係る空気浄化装置の一例を示す部分分解斜視図である。
【図2】複数のプリーツ状部材及びこれらを保持するためのホルダの斜視図である。
【図3】ホルダ内に保持された複数のプリーツ状部材の斜視図である。
【図4】ホルダ内に保持された、空間の密度が大きい複数のプリーツ状部材の斜視図である。
【図5】プリーツ状部材を収容するためのハウジングとこれに支持された複数の光源とを示す斜視図である。
【図6】三段に配置されたホルダ内に収容されたプリーツ状部材の斜視図である。
【図7】従来の空気浄化装置を示す概略図である。
【図8】理想的なプリーツ状部材の部分拡大断面図である。
【図9】実際のプリーツ状部材の部分拡大断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 空気浄化装置
3 プリーツ状部材
5 ハウジング
7 光源
9 シート片
11 空間
13 襞
15 第1の開放面
17 第2の開放面
19 ホルダ
21 ホルダの開口
31 ハウジングの開口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光触媒層が形成された両面を有するシート片を互い違いに折り曲げてなり、折り曲げにより生じたV字形の断面形状を有する複数の空間であって第1の開放面及び該第1の開放面に連なる、互いに相対する一対の第2の開放面からなる3つの開放面を有する複数の空間とこれらの空間を仕切る複数の襞とを備える1又は複数のプリーツ状部材と、
前記プリーツ状部材が、各空間がその第1の開放面で塞がれるように収容されたハウジングであって各空間の第2の両開放面にそれぞれ相対する一対の開口を有する
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置された、前記プリーツ状部材の空間の少なくとも一方の第2の開放面に向けて光を放射可能である、前記光触媒層を活性化させるための1又は複数の光源とを含む
ことを特徴とする、空気浄化装置。
【請求項2】
前記プリーツ状部材が互いに間隔を置いて配置された2つの第1のプリーツ状部材と、第1の両プリーツ状部材間に配置された第2のプリーツ状部材であって該第2のプリーツ状部材の各空間の第2の両開放面間の長さ寸法が前記第1のプリーツ状部材の各空間の第2の開放面間の長さ寸法の2倍である第2のプリーツ状部材とからなり、前記光源が各第1のプリーツ状部材と前記第2のプリーツ状部材との間に配置されている
ことを特徴とする、請求項1に記載の空気浄化装置。
【請求項3】
前記第2のプリーツ状部材は、互いに重ね合わされた2つの他の第1のプリーツ状部材からなる
ことを特徴とする、請求項2に記載の空気浄化装置。
【請求項4】
さらに、前記プリーツ状部材がその各空間がその第1の開放面で塞がれるように保持されたホルダを含み、該ホルダは前記プリーツ状部材の各空間の第2の両開放面にそれぞれ相対する一対の開口を有する
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−183919(P2009−183919A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−29228(P2008−29228)
【出願日】平成20年2月8日(2008.2.8)
【出願人】(508042663)株式会社STAC (2)
【出願人】(000217675)電元オートメーション株式会社 (12)
【Fターム(参考)】